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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160806
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】積層体、包装袋および包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241108BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241108BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076195
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】植木 貴之
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AC15
3E086AD01
3E086AD06
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB62
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA12
3E086CA13
3E086CA28
3E086CA29
3E086CA31
3E086CA32
3E086CA35
4F100AK01A
4F100AK07B
4F100AK07D
4F100AK25A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH66D
4F100EJ08A
4F100EJ37D
4F100EJ38B
4F100GB15
4F100GB16
4F100JB12A
4F100JJ03
4F100JL12C
4F100JL14C
(57)【要約】
【課題】基材およびシーラント層がそれぞれポリプロピレンを主成分として含有する積層体であって、耐熱性に優れる積層体を提供する。
【解決手段】第1面および第2面を有する基材と、基材の第1面上に設けられた電子線硬化樹脂層と、基材の第2面上に設けられたシーラント層と、を備え、基材は、ポリプロピレンを主成分として含有し、シーラント層は、ポリプロピレンを主成分として含有する、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有する基材と、
前記基材の第1面上に設けられた電子線硬化樹脂層と、
前記基材の第2面上に設けられたシーラント層と、
を備え、
前記基材は、ポリプロピレンを主成分として含有し、
前記シーラント層は、ポリプロピレンを主成分として含有する、
積層体。
【請求項2】
前記電子線硬化樹脂層の厚さが、0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記電子線硬化樹脂層が、(メタ)アクリレートの硬化物を含有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材が、2軸延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体が、前記基材と前記シーラント層との間に、蒸着フィルム層をさらに備え、前記蒸着フィルム層が、延伸ポリプロピレンフィルムと、前記延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面上に設けられた蒸着膜と、を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体全体におけるポリプロピレンの含有割合が、80質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
包装材料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
蓋材である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記シーラント層が、イージーピール性を有する、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体を備える包装袋。
【請求項11】
ボイル処理またはレトルト処理された包装袋である、請求項10に記載の包装袋。
【請求項12】
収容部を有するポリプロピレン製容器本体と、
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体からなる蓋材と、
を備える、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体、包装袋および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料として、基材とシーラント層とを備える積層体が用いられている(例えば、特許文献1参照)。例えば、ポリオレフィンフィルムは、柔軟性および透明性を有すると共にヒートシール性に優れることから、シーラント層として用いられている。延伸ポリエステルフィルムまたは延伸ポリアミドフィルムは、強度および耐熱性に優れることから、基材として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-202519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷低減の観点から、包装材料をリサイクルすることが求められている。リサイクルの観点からは、基材とシーラント層とがそれぞれ同種の樹脂材料により構成されること(モノマテリアル化)が好ましい。本開示者らは、基材およびシーラント層がそれぞれポリプロピレンを主成分として含有する積層体について検討した。しかしながら、本開示者らは、この場合、基材とシーラント層との耐熱性に充分な差を設けることができず、例えばヒートシール処理時に積層体が熱によるダメージを大きく受け、包装材料としての機能を損なう場合があることを見出した。
【0005】
本開示の解決課題の一つは、基材およびシーラント層がそれぞれポリプロピレンを主成分として含有する積層体であって、耐熱性に優れる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の積層体は、第1面および第2面を有する基材と、基材の第1面上に設けられた電子線硬化樹脂層と、基材の第2面上に設けられたシーラント層と、を備え、基材は、ポリプロピレンを主成分として含有し、シーラント層は、ポリプロピレンを主成分として含有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基材およびシーラント層がそれぞれポリプロピレンを主成分として含有する積層体であって、耐熱性に優れる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図3図3は、包装容器の一実施形態を示す斜視図である。
図4図4は、包装容器の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上であり、また、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例では、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0010】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
以下の説明において登場する各成分(例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン、α-オレフィン、樹脂材料、添加剤、金属および無機酸化物)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0012】
本明細書において、ある層における「主成分」とは、当該層中の含有割合が好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0013】
[積層体]
本開示の積層体は、
第1面および第2面を有する基材と、
基材の第1面上に設けられた電子線硬化樹脂層と、
基材の第2面上に設けられたシーラント層と、
を備える。
【0014】
基材は、ポリプロピレンを主成分として含有する。シーラント層は、ポリプロピレンを主成分として含有する。基材のポリプロピレンとシーラント層のポリプロピレンとは、同一でもよく、異なってもよい。本開示の積層体は、一実施形態において、包装材料である。ポリプロピレンを主成分として含有する基材と、ポリプロピレンを主成分として含有するシーラント層と、を備える積層体を用いて少なくとも一部が作製される包装袋や、該積層体からなる蓋材は、リサイクル性に優れ、使用済みの包装袋または蓋材を回収した後、基材とシーラント層とを分離する必要がない。また、このような包装袋または蓋材は、例えば、レトルト処理適性およびボイル処理適性に優れる。
【0015】
図1に示す積層体1は、電子線硬化樹脂層20と、第1面および第2面を有する基材10と、接着層Aと、シーラント層40と、を厚さ方向にこの順に備える(以下、単に「この順に備える」ともいう)。電子線硬化樹脂層20は、基材10の第1面上に設けられている。シーラント層40は、接着層Aを介して、基材10の第2面上に設けられている。接着層Aは、所望により設けられている。積層体1は、基材10の第2面上に、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよい。
【0016】
図2に示す積層体1は、電子線硬化樹脂層20と、第1面および第2面を有する基材10と、接着層A1と、蒸着フィルム層30と、接着層A2と、シーラント層40と、をこの順に備える。蒸着フィルム層30は、延伸ポリプロピレンフィルム32と、蒸着膜34と、を備える。積層体1は、基材10の第2面上に、図示せぬ印刷層をさらに備えてもよい。
【0017】
<基材>
基材は、ポリプロピレンを主成分として、すなわち好ましくは50質量%超の範囲で含有する。ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体等のプロピレンランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)およびプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のプロピレンブロックコポリマー(ブロックポリプロピレン)のいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。ポリプロピレンは、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンでもよい。
【0018】
本開示においてポリプロピレンとは、プロピレンホモポリマー、または、全繰返し構成単位中、プロピレン由来の構成単位の含有割合が任意のコモノマー由来の構成単位の含有割合よりも大きい重合体をいう。この重合体において、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば50モル%以上でもよく、60モル%以上でもよく、70モル%以上でもよく、80モル%以上でもよい。上記含有割合は、NMR法により測定される。
【0019】
プロピレンホモポリマーとは、プロピレンのみの重合体である。プロピレンランダムコポリマーとは、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィン等とのランダム共重合体である。プロピレンブロックコポリマーとは、プロピレンからなる重合体ブロックと、プロピレン以外のα-オレフィン等からなる重合体ブロックと、を有する共重合体である。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2以上20以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンが挙げられる。プロピレンランダムコポリマーとしては、例えば、プロピレン-エチレンランダムコポリマーが挙げられる。プロピレンブロックコポリマーとしては、例えば、プロピレン-エチレンブロックコポリマーが挙げられる。
【0020】
ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンでもよく、シンジオタクチックポリプロピレンでもよく、アタクチックポリプロピレンでもよい。基材の耐熱性という観点から、基材に含まれるポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレンおよびシンジオタクチックポリプロピレンが好ましく、アイソタクチックポリプロピレンがより好ましい。
【0021】
ポリプロピレンの中でも、包装材料の透明性の観点からはプロピレンランダムコポリマーが好ましく、包装材料の剛性および耐熱性を重視する場合はプロピレンホモポリマーが好ましい。包装材料の耐衝撃性を重視する場合はプロピレンブロックコポリマーが好ましい。
【0022】
ポリプロピレンの密度は、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。本開示において密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。ポリプロピレンの融点(Tm)は、強度および耐熱性などの観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下であり、例えば120℃以上170℃以下である。本開示においてTmは、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0023】
ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性および加工性の観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.2g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下であり、例えば0.1g/10分以上50g/10分以下である。ポリプロピレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0024】
基材におけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上または90質量%以上である。
【0025】
基材は、ポリプロピレン以外の樹脂材料を含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン以外のポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0026】
基材は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、相溶化剤、顔料および改質用樹脂が挙げられる。
【0027】
基材には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、基材と他の層との密着性を向上できる。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理;ならびに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
基材の表面に、易接着層を設けてもよい。
【0028】
基材は、延伸処理が施された基材、すなわち延伸基材でもよく、延伸処理が施されていない基材、すなわち未延伸基材でもよい。未延伸基材とは、意図的な延伸処理を受けていない基材(延伸することにより分子を配向させたものでない基材)を意味する。押出成形やフィルム巻取り時に必然的にフィルムが引っ張られる場合も未延伸基材に包含される。
【0029】
延伸基材は、例えば、強度、耐熱性および透明性に優れる。延伸処理は、1軸延伸でもよく、2軸延伸でもよい。機械方向(基材の流れ方向、MD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下であり、例えば2倍以上10倍以下である。幅方向(MD方向に対して垂直な方向、TD方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下であり、例えば2倍以上10倍以下である。延伸倍率を2倍以上とすることにより、例えば、基材の強度、耐熱性および透明性を向上でき、また、基材への印刷適性を向上できる。基材の破断限界という観点からは、延伸倍率は10倍以下であることが好ましい。
【0030】
基材は、一実施形態において、未延伸ポリプロピレンフィルム、1軸延伸ポリプロピレンフィルム、または2軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0031】
基材のヘイズ値は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。基材のヘイズ値は小さいほど好ましいが、例えば、その下限値は0.1%または1%でもよい。基材のヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して測定される。
【0032】
基材の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、例えば5μm以上50μm以下である。厚さが下限値以上の基材は、例えば、強度、耐熱性およびリサイクル性に優れる。厚さが上限値以下の基材は、例えば、加工性に優れる。本明細書において、基材および各層の厚さ等は、積層体の表面に対する垂直断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得られるSEM画像に基づき測定される10箇所の厚さの平均値である。
【0033】
基材は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。基材は、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層を2層以上備えてもよい。ポリプロピレン層の層数は、好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上であり、好ましくは7層以下、より好ましくは5層以下であり、例えば2層以上7層以下である。
【0034】
基材は、例えば、プロピレンホモポリマーを主成分として含有する第1の樹脂層と、プロピレンホモポリマーを主成分として含有する第2の樹脂層と、プロピレンホモポリマーを主成分として含有する第3の樹脂層と、をこの順に備える。このような基材は、耐熱性に優れる。
【0035】
基材は、例えば、プロピレンホモポリマーを主成分として含有する第1の樹脂層と、プロピレンホモポリマーを主成分として含有する第2の樹脂層と、プロピレンランダムコポリマーを主成分として含有する第3の樹脂層と、をこの順に備える。このような基材は、第2面に対する印刷性、印刷層の密着性に優れる。
【0036】
基材は、例えば、プロピレンホモポリマーを主成分として含有する第1の樹脂層と、プロピレンホモポリマーを主成分として含有する第2の樹脂層と、プロピレンホモポリマーおよびプロピレンランダムコポリマーの混合物を主成分として含有する第3の樹脂層と、をこの順に備える。このような基材は、耐熱性に優れるとともに、第2面に対する印刷性、印刷層の密着性に優れる。上記混合物におけるプロピレンランダムコポリマーの含有割合は、例えば、1質量%以上でもよく、5質量%以上でもよく、10質量%以上でもよく、15質量%以上でもよく、20質量%以上でもよく、25質量%以上でもよく、30質量%以上でもよく、また、99質量%以下でもよく、95質量%以下でもよく、90質量%以下でもよく、85質量%以下でもよく、80質量%以下でもよく、75質量%以下でもよく、70質量%以下でもよく、例えば1質量%以上99質量%以下でもよい。
第1の樹脂層が、基材の第1面を構成する。
第3の樹脂層が、基材の第2面を構成する。
【0037】
本開示の積層体は、一実施形態において、上述した多層構造を有する基材の第1面上に電子線硬化樹脂層を備える。したがって、このような積層体は、耐熱性により一層優れ、積層体の一方の表層(電子線硬化樹脂層)と他方の表層(シーラント層)との耐熱性に大きな差を設けることができ、ヒートシール処理時の積層体の変形を良好に抑制できる。
【0038】
基材は、例えば、ポリプロピレンまたはその樹脂組成物をTダイ法またはインフレーション法等により製膜してフィルムを作製した後、該フィルムを所望により延伸することにより作製できる。
【0039】
本開示の積層体は、基材の第2面上に、後述する蒸着膜を備えてもよく、基材の第2面上に、後述する蒸着膜およびバリアコート層を備えてもよい。したがって、本開示の積層体は、その一部の積層構成として、電子線硬化樹脂層と、基材と、蒸着膜と、をこの順に備えてもよく、電子線硬化樹脂層と、基材と、蒸着膜と、バリアコート層と、をこの順に備えてもよい。蒸着膜およびバリアコート層の詳細は後述するとおりであり、本欄での説明は省略する。
【0040】
<電子線硬化樹脂層>
電子線硬化樹脂層は、電子線硬化性化合物を含有する層に電子線(EB)を照射して、該化合物を硬化させて形成された層である。電子線硬化性化合物は、電子線の照射を受けて硬化する化合物である。電子線硬化樹脂層は、電子線照射により電子線硬化性化合物が硬化した硬化物を含有する層である。
【0041】
本開示の積層体は、一実施形態において、一方の表層として電子線硬化樹脂層を備える。電子線硬化樹脂層は、溶融温度が高く耐熱性に優れる。ポリプロピレンを主成分として含有する基材は耐熱性が充分ではなく、例えばヒートシール処理時に基材に反りおよびシワなどの変形が発生する場合がある。基材の第1面上に電子線硬化樹脂層を設けることで、耐熱性を向上できる。したがって、一方の表層として電子線硬化樹脂層、および他方の表層としてシーラント層を備える積層体は、一方の表層として基材、および他方の表層としてシーラント層を備える積層体よりも、両表層間の耐熱性(例えば溶融温度)に大きな差を有する。例えば、ヒートシール処理時における上述した変形を抑制できる。これにより、例えば本開示の積層体を蓋材として用いる場合に、該蓋材をカップなどの硬い被着体にヒートシール処理により熱融着させた後に、内容物の漏れを良好に抑制できる。本開示の積層体は、いわゆるモノマテリアル包装材料におけるヒートシール温度をより高くすることができる。また、本開示の積層体は、内容物の充填加工適性および加熱殺菌時の耐性を有し、環境包材の広がりに大きく寄与できる。
【0042】
電子線硬化性化合物を含有する層は、例えば、電子線硬化性化合物および所望により溶剤を含有するコート剤を基材の第1面に塗布して形成できる。電子線硬化樹脂層の場合は、光重合開始剤を必要とする紫外線硬化性化合物の硬化と異なり、電子線硬化性化合物の硬化の際に光重合開始剤を必要としない。光重合開始剤は、食品衛生に影響しえる。本開示の積層体は、光重合開始剤のブリードアウトの問題を回避でき、安全性がより高い。
【0043】
電子線硬化性化合物としては、(メタ)アクリレートが好ましく、例えば、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーおよび多官能(メタ)アクリレートプレポリマーなどの、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能(メタ)アクリレートにおける(メタ)アクリロイル基数は、耐熱性を向上でき、また硬化収縮が生じにくいという観点から、好ましくは2以上15以下、より好ましくは2以上8以下、さらに好ましくは2以上6以下である。
【0044】
多官能(メタ)アクリレートにおけるモノマー、オリゴマーおよびプレポリマーの量比や種類を変更することにより、電子線硬化樹脂層の硬度を調整できる。例えばオリゴマーおよびプレポリマーを多く用いることにより、電子線硬化樹脂層の硬度は小さくなる傾向にある。例えばモノマーの使用量を低減することにより、電子線硬化樹脂層からの低分子成分のマイグレーションを抑制できる傾向にある。
【0045】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーおよび多官能(メタ)アクリレートプレポリマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートおよびポリブタジエン(メタ)アクリレートが挙げられる。本開示において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方を包含し、「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を包含する。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとポリソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレートと反応させて得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、あるいは、ポリオールとポリソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートと反応させて得ることもできる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートおよびカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、およびアジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物が挙げられる。ポリソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0048】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリテート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、および(メタ)アクリロイルイソシアネートが挙げられる。
【0049】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化し官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、例えば、ビスフェノールA型(またはF型)エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、およびノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。
【0050】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族モノマー;トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート骨格を有するモノマー;ならびにこれらの変性体が挙げられる。上記変性体としては、例えば、エチレンオキサイド(EO)変性体、プロピレンオキサイド(PO)変性体およびカプロラクトン(CL)変性体が挙げられる。上記変性体としては、具体的には、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、CL変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびCL変性トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0051】
コート剤の粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレートモノマーを希釈剤として用いてもよい。希釈剤としては、単官能(メタ)アクリレートモノマーの他、通常の溶剤を用いてもよい。コート剤は、例えばその塗布性を向上させるという観点から、溶剤を含有してもよい。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサンおよびオクタンなどの炭化水素系溶剤;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびデカノールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ステアリン酸ブチル、安息香酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチルおよび乳酸ブチルなどのエステル系溶剤;ならびに水が挙げられる。溶剤は、これらの2種以上の混合物でもよい。
【0052】
電子線硬化樹脂層は、例えば、以下のようにして形成する。基材の第1面にコート剤を所望の厚さで塗布し、溶剤を用いた場合は乾燥して溶剤を除去して、塗膜(未硬化樹脂層)を形成する。乾燥条件は、例えば、40℃以上120℃以下で10秒間以上10分間以下である。次いで、該塗膜に電子線を照射して電子線硬化性化合物を硬化させる。電子線照射は電子線硬化性化合物を硬化することができれば、基材のどちらの面からでも可能である。このようにして、電子線硬化樹脂層を形成できる。
【0053】
コート剤を基材の第1面に塗布する方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法や、スプレー法、スピンコート法、ダイコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法が挙げられる。
【0054】
電子線の加速電圧については、電子線硬化性化合物の種類および層の厚さ等に応じて適宜選定し得る。電子線の加速電圧は、好ましくは70kV以上300kV以下である。電子線の照射線量は、好ましくは1kGy以上300kGy以下、より好ましくは5kGy以上200kGy以下、さらに好ましくは10kGy以上100kGy以下である。電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0055】
電子線硬化樹脂層における電子線硬化性化合物の硬化物の含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。このような電子線硬化樹脂層を備える積層体は、例えば、耐熱性に優れる。電子線硬化樹脂層は、例えば、(メタ)アクリレートの硬化物を含有する。
【0056】
電子線硬化樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0057】
電子線硬化樹脂層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、よりさらに好ましくは0.7μm以上、特に好ましくは1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下、よりさらに好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下であり、例えば0.1μm以上10μm以下である。このような電子線硬化樹脂層を備える積層体は、例えば、耐熱性に優れる。
【0058】
<蒸着フィルム層>
本開示の積層体は、上述した基材とシーラント層との間に、蒸着フィルム層をさらに備えてもよい。蒸着フィルム層は、延伸ポリプロピレンフィルムと、延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面上に設けられた蒸着膜と、を備える。蒸着フィルム層を備える積層体は、例えば、ガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れる。また、金属蒸着膜である蒸着膜を備える積層体は、例えば、輝度に優れる。
【0059】
蒸着フィルム層は、蒸着膜が基材側を向き、延伸ポリプロピレンフィルムがシーラント層側を向くように配置されていることが好ましい。これにより、ヒートシール処理時の蒸着膜に対する熱の影響を抑制でき、また蒸着膜に対する内容物の影響を抑制できる。
【0060】
(延伸ポリプロピレンフィルム)
延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを主成分として、すなわち好ましくは50質量%超の範囲で含有する。ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマーおよびプロピレンブロックコポリマーのいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。ポリプロピレンは、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンでもよい。ポリプロピレンの詳細は上述したとおりであり、本欄での説明は省略する。
【0061】
延伸ポリプロピレンフィルムにおけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上または90質量%以上である。このような延伸ポリプロピレンフィルムを備える積層体は、例えば、リサイクル性に優れる。
【0062】
延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン以外の上記樹脂材料を含有してもよい。延伸ポリプロピレンフィルムは、上記添加剤を含有してもよい。
【0063】
延伸ポリプロピレンフィルムには、上記表面処理が施されていてもよい。
延伸ポリプロピレンフィルムの表面に、易接着層を設けてもよい。
【0064】
延伸ポリプロピレンフィルムは、延伸処理が施されたポリプロピレンフィルムである。延伸処理は、1軸延伸でもよく、2軸延伸でもよい。延伸処理の詳細は上述したとおりであり、本欄での説明は省略する。延伸ポリプロピレンフィルムは、一実施形態において、1軸延伸ポリプロピレンフィルム、または2軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0065】
延伸ポリプロピレンフィルムのヘイズ値は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。延伸ポリプロピレンフィルムのヘイズ値は小さいほど好ましいが、例えば、その下限値は0.1%または1%でもよい。
【0066】
延伸ポリプロピレンフィルムは、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層を2層以上備えてもよい。ポリプロピレン層の層数は、好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上であり、好ましくは7層以下、より好ましくは5層以下であり、例えば2層以上7層以下である。
【0067】
延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、例えば5μm以上100μm以下である。厚さが下限値以上のフィルムは、例えば、強度、耐熱性およびリサイクル性に優れる。厚さが上限値以下のフィルムは、例えば、加工性に優れる。
【0068】
延伸ポリプロピレンフィルムは、例えば、ポリプロピレンまたはその樹脂組成物をTダイ法またはインフレーション法等により製膜してフィルムを作製した後、該フィルムを延伸することにより作製できる。
【0069】
(蒸着膜)
蒸着膜としては、例えば、1種または2種以上の金属を含む蒸着膜、1種または2種以上の無機酸化物を含む蒸着膜、および、1種または2種以上の金属と1種または2種以上の無機酸化物とを含む蒸着膜が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、クロム、スズ、ニッケル、銅、銀、金およびプラチナが挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムおよび酸化炭化珪素(炭素含有酸化珪素)が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム蒸着膜、酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着膜、酸化ケイ素(シリカ)蒸着膜、または酸化炭化珪素蒸着膜が好ましい。
【0070】
蒸着膜の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下であり、例えば1nm以上150nm以下である。厚さが下限値以上の蒸着膜を備える積層体は、例えば、ガスバリア性に優れる。厚さが上限値以下の蒸着膜を備える積層体は、例えば、蒸着膜におけるクラックの発生を抑制でき、また、リサイクル性に優れる。
【0071】
蒸着膜がアルミニウム蒸着膜である場合は、アルミニウム蒸着膜の光学濃度(OD値)は、好ましくは2.0以上3.5以下である。このような蒸着膜を備える積層体は、例えば、生産性を維持しつつ、ガスバリア性に優れる。OD値は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定される。
【0072】
蒸着膜には、上記表面処理が施されていてもよい。
【0073】
蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、ならびにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)が挙げられる。蒸着膜は、物理気相成長法および化学気相成長法の両者を併用して形成される、異種の蒸着膜を2層以上含む複合膜でもよい。蒸着膜は、1回の蒸着工程により形成される単層でもよく、複数回の蒸着工程により形成される多層でもよい。蒸着膜が多層である場合、各層は同一の成分から構成されてもよく、異なる成分から構成されてもよい。各層は、同一の方法により形成してもよく、異なる方法により形成してもよい。
【0074】
(バリアコート層)
蒸着フィルム層は、蒸着膜上に、バリアコート層をさらに備えてもよい。すなわち、蒸着フィルム層は、延伸ポリプロピレンフィルムと、蒸着膜と、バリアコート層と、をこの順に備えてもよい。このような蒸着フィルム層は、例えば、ガスバリア性に優れ、また、例えば蒸着膜が酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素などの無機酸化物を含む場合は、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0075】
バリアコート層は、一実施形態において、ガスバリア性樹脂を含有する。ガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリウレタン、ならびに(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0076】
バリアコート層におけるガスバリア性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。このようなバリアコート層を備える積層体は、例えば、ガスバリア性に優れる。
バリアコート層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0077】
ガスバリア性樹脂を含有するバリアコート層の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下であり、例えば0.01μm以上10μm以下である。厚さが下限値以上のバリアコート層を備える積層体は、例えば、ガスバリア性に優れる。厚さが上限値以下のバリアコート層を備える積層体は、例えば、加工適性およびリサイクル性に優れる。
【0078】
バリアコート層は、例えば、ガスバリア性樹脂などの材料を水または適当な有機溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、蒸着膜の表面に塗布して乾燥することにより形成できる。
【0079】
バリアコート層は、他の実施形態において、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、必要に応じてシランカップリング剤とを混合し、必要に応じて水、有機溶剤およびゾルゲル法触媒を添加して得られたガスバリア性組成物を、蒸着膜の表面に塗布して乾燥することにより形成されるガスバリア性塗布膜である。ガスバリア性塗布膜は、上記金属アルコキシド等がゾルゲル法によって加水分解および重縮合された加水分解重縮合物を含む。このようなバリアコート層を蒸着膜上に備える積層体は、例えば、蒸着膜が無機酸化物を含む場合は、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0080】
金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシラン等のアルコキシシランが挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有高分子が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn-ブチルアルコールが挙げられる。ゾルゲル法触媒としては、酸またはアミン系化合物が好ましい。
【0081】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、例えば0.01μm以上10μm以下である。このようなガスバリア性塗布膜を備える積層体は、例えば、ガスバリア性に優れ、無機酸化物を含む蒸着膜におけるクラックの発生を抑制でき、また、リサイクル性および加工性に優れる。
【0082】
<印刷層>
本開示の積層体は、基材および蒸着フィルム層などの表面に、印刷層を備えてもよい。印刷層において形成される画像としては、例えば、文字、柄、記号およびこれらの組合せが挙げられる。印刷層は、例えば、バイオマス由来のインキを用いて形成してもよい。これにより、例えば、環境負荷をより低減できる。
【0083】
印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法およびフレキソ印刷法などの従来公知の印刷法が挙げられる。これらの中でも、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
【0084】
印刷層は、基材のいずれの面上に形成されていてもよい。印刷層と外気との接触を抑制でき、印刷層の経時的な劣化を抑制できることから、印刷層は、基材におけるシーラント層側の面上に形成されていることが好ましい。印刷層は、蒸着フィルム層のいずれの面上に形成されていてもよい。
【0085】
<接着層>
本開示の積層体は、基材とシーラント層との間、基材と蒸着フィルム層との間、蒸着フィルム層とシーラント層との間などの任意の層間に、接着層を備えてもよい。このような積層体は、例えば、層間の密着性に優れる。
【0086】
接着層は、例えば、接着剤により構成される、接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、および非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤でもよく、溶剤型の接着剤でもよい。接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤およびフェノール系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のポリウレタン系接着剤がより好ましい。
【0087】
接着層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下、特に好ましくは5μm以下であり、例えば0.1μm以上10μm以下である。
【0088】
接着層は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法などの従来公知の方法により、対象物の表面に接着剤を塗布し、所望により乾燥することにより形成できる。本開示の積層体は、例えば、基材とシーラントフィルムとを、または基材と蒸着フィルムとシーラントフィルムとを、無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法により貼り合わせて製造してもよく、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合わせて製造してもよい。蒸着フィルムは、蒸着フィルム層に相当する。シーラントフィルムは、シーラント層に相当する。
【0089】
<シーラント層>
シーラント層は、ポリプロピレンを主成分として、すなわち好ましくは50質量%超の範囲で含有する。ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマーおよびプロピレンブロックコポリマーのいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。ポリプロピレンは、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンでもよい。ポリプロピレンの詳細は上述したとおりであり、本欄での説明は省略する。
【0090】
シーラント層におけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上または90質量%以上である。このようなシーラント層を備える積層体は、例えば、リサイクル性に優れる。
【0091】
シーラント層は、ポリプロピレン以外の上記樹脂材料を含有してもよい。
シーラント層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0092】
シーラント層は、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸の樹脂フィルムであり、より好ましくは未延伸の共押出樹脂フィルムであり、シーラント層を構成する各層は、共押出樹脂層である。上記樹脂フィルムは、例えば、Tダイ法またはインフレーション法等を利用することにより作製できる。
【0093】
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。シーラント層は、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層を2層以上備えてもよい。ポリプロピレン層の層数は、好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上であり、好ましくは7層以下、より好ましくは5層以下であり、例えば2層以上7層以下である。
【0094】
シーラント層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、よりさらに好ましくは30μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりさらに好ましくは80μm以下であり、例えば5μm以上200μm以下である。シーラント層が多層構造を有する場合、その総厚さが上記範囲にあることが好ましい。
【0095】
シーラント層は、低温ヒートシール性を改善するという観点から、ヒートシール改質剤を含有してもよい。ヒートシール改質剤としては、シーラント層を構成するポリプロピレンと相溶性に優れる成分であれば特に限定されないが、例えば、融点の低いオレフィン系ポリマー、具体的にはオレフィン系コポリマーが挙げられる。また、超低密度ポリエチレンを用いてもよい。
【0096】
オレフィン系コポリマーとしては、ポリプロピレンと相溶性を有し、融点が低ければ特に限定されず、例えば、オレフィン系エラストマーおよびオレフィン系プラストマーが挙げられる。
【0097】
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-α-オレフィンコポリマーなどのポリエチレン系エラストマー、およびプロピレン-α-オレフィンコポリマーなどのポリプロピレン系エラストマーが挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2以上8以下のα-オレフィンが挙げられる。
【0098】
ポリプロピレン系エラストマーの融点(Tm)は、ヒートシール性の向上という観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下である。Tmの下限は特に限定されないが、例えば70℃、80℃または90℃である。
【0099】
プラストマーは、エラストマー(外力を加えたときに、その外力に応じて変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状に回復する性質を有する高分子)に対する用語であり、エラストマーのような弾性変形を示さず、容易に塑性変形する高分子である。
【0100】
オレフィン系プラストマーとしては、例えば、ポリエチレン系プラストマーが挙げられる。ポリエチレン系プラストマーとは、例えば、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンとを共重合して得られるポリエチレンである。α-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび4-メチル-1-ペンテン等の炭素数4以上8以下のα-オレフィンが好ましい。ポリエチレン系プラストマーとしては、具体的には、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体およびエチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0101】
ポリエチレン系プラストマーの融点(Tm)は、ヒートシール性の向上という観点から、好ましくは115℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは105℃以下である。Tmの下限は特に限定されないが、例えば50℃、60℃または70℃である。
【0102】
オレフィン系コポリマーの密度は、好ましくは0.850g/cm3以上、より好ましくは0.860g/cm3以上、さらに好ましくは0.870g/cm3以上であり、好ましくは0.920g/cm3以下、より好ましくは0.915g/cm3以下、さらに好ましくは0.910g/cm3以下であり、例えば0.850g/cm3以上0.920g/cm3以下である。
【0103】
オレフィン系コポリマーのMFRは、製膜性および加工適性という観点から、好ましくは0.2g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下であり、例えば0.2g/10分以上20g/10分以下である。オレフィン系コポリマーのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0104】
シーラント層全体におけるヒートシール改質剤の含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、例えば1質量%以上30質量%以下である。このようなシーラント層は、例えば、ヒートシール性に優れる。
【0105】
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
多層構造を有するシーラント層は、一実施形態において、基材側とは反対側の表面層がポリプロピレンおよびヒートシール改質剤を含有する。該表面層におけるヒートシール改質剤の含有割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%未満であり、例えば10質量%以上55質量%以下である。該表面層におけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%超であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下であり、例えば45質量%以上90質量%以下である。このような表面層を備えるシーラント層は、例えば、ヒートシール性およびリサイクル適性に優れる。
【0106】
上記表面層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下であり、例えば1μm以上20μm以下である。このような表面層を備えるシーラント層は、例えば、ヒートシール性およびリサイクル適性に優れる。
【0107】
シーラント層は、一実施形態において、イージーピール性(易剥離性)を有してもよい。イージーピール性を有するシーラント層を備える積層体は、例えば、包装容器を構成する蓋材として好適である。イージーピール性とは、例えば、蓋材を容器本体にヒートシール処理して融着させた後における、容器本体からの蓋材の易剥離性をいう。イージーピール性を付与する機構としては、例えば、界面剥離機構、層間剥離機構および凝集剥離機構が挙げられ、何れの機構も採用できる。これらの中でも、蓋材として使用した場合にレトルト処理およびボイル処理等の熱殺菌処理を可能とする観点からは、凝集剥離機構が好ましい。具体的には、ポリプロピレンと、ポリプロピレンと相溶しないまたは部分的に相溶しない樹脂と、の混合物からシーラント層を形成することで、イージーピール性を付与できる。
【0108】
ポリプロピレンとしては、レトルト処理適性およびボイル処理適性の観点からは、プロピレンブロックとエチレンブロックとを有するブロックコポリマーまたはプロピレン-エチレンランダムコポリマーが好ましく、イージーピール性の観点からは、プロピレン-エチレンランダムコポリマーが好ましい。
【0109】
ポリプロピレンと相溶しないまたは部分的に相溶しない樹脂(以下「非相溶性樹脂」ともいう)としては、例えば、ポリエチレン、ポリブテンおよびポリスチレンが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。シーラント層を、ポリプロピレンと非相溶性樹脂との混合物から形成することにより、シーラント層に海島構造を発現させてイージーピール性を付与できる。一実施形態において、海島構造は、ポリプロピレンからなる海部分と、非相溶性樹脂からなる島部分と、を含む。
【0110】
海島構造は、例えば、ポリプロピレンと非相溶性樹脂との量比を調整することにより発現させることができる。ポリプロピレンと非相溶性樹脂との合計100質量部に対して、ポリプロピレンが好ましくは40質量部以上90質量部以下、より好ましくは60質量部以上80質量部以下、非相溶性樹脂が好ましくは10質量部以上60質量部以下、より好ましくは20質量部以上40質量部以下の範囲であれば、海島構造を良好に発現させることができる。リサイクル性の観点、さらにはレトルト処理適性およびボイル処理適性の観点からは、ポリプロピレンの割合が高い方が好ましい。
【0111】
シーラント層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。例えば、積層体からなる蓋材の場合には、多層構造を有するシーラント層における容器本体と接する層のみにイージーピール性を付与してもよい。シーラント層は、イージーピール性を有する層と、ポリプロピレンを主成分として含有する他の層と、を備えてもよい。イージーピール性を有する層を層Aと称し、他の層を層Bと称する。
【0112】
層Aは、主成分としてポリプロピレンを含有し、さらに非相溶性樹脂を含有する。層Aが、このような非相溶性樹脂を含有することで、積層体のレトルト処理適性およびボイル処理適性を向上できる。層Aにおけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下であり、例えば50質量%超90質量%以下である。これにより、積層体のレトルト処理適性およびボイル処理適性をより向上できる。層Aにおける非相溶性樹脂の含有割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%以下であり、例えば10質量%以上50質量%未満である。これにより、適度なイージーピール性を得ることができる。
【0113】
層Aの主成分であるポリプロピレンのMFRは、好ましくは5g/10分以上30g/10分以下である。層Aの主成分であるポリプロピレンは、適度なシール強度を得るという観点から、プロピレン-エチレンランダムコポリマーが好ましい。非相溶性樹脂のMFRは、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは4g/10分以下、より好ましくは3g/10分以下であり、例えば0.1g/10分以上4g/10分以下である。非相溶性樹脂としては、密度が0.940g/cm3以上のポリエチレンが好ましく、密度が0.940g/cm3以上0.965g/cm3以下のポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。
【0114】
層Bにおけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上または90質量%以上である。
【0115】
層Aの厚さは、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であり、例えば3μm以上30μm以下である。シーラント層全体の厚さに対する層Aの厚さ(層Aの厚さ/シーラント層の厚さ)は、好ましくは1/11以上、より好ましくは1/6以上であり、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下であり、例えば1/11以上1/2以下である。
【0116】
<積層体の層構成>
本開示の積層体の層構成の具体例を、以下に示す。
(1)電子線硬化樹脂層と、基材と、所望により印刷層と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体
(2)電子線硬化樹脂層と、基材と、蒸着膜と、所望により印刷層と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体
(3)電子線硬化樹脂層と、基材と、蒸着膜と、バリアコート層と、所望により印刷層と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体
(4)電子線硬化樹脂層と、基材と、所望により印刷層と、接着層と、蒸着フィルム層と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体
(5)電子線硬化樹脂層と、基材と、蒸着膜と、所望により印刷層と、接着層と、蒸着フィルム層と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体
(6)電子線硬化樹脂層と、基材と、蒸着膜と、バリアコート層と、所望により印刷層と、接着層と、蒸着フィルム層と、接着層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体
【0117】
上記(1)~(6)の積層体において、基材は例えば2軸延伸ポリプロピレンフィルムであり、蒸着フィルム層は2軸延伸ポリプロピレンフィルムと蒸着膜とを備える。上記(1)~(6)の積層体において、シーラント層は例えばイージーピール性を有する層を備える。
【0118】
本開示の積層体全体におけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは88質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。このような積層体は、例えば、モノマテリアル化した包装袋または蓋材を作製でき、これらのリサイクル性を向上できる。ポリプロピレンの含有割合の上限は特に限定されないが、例えば99質量%でもよい。
【0119】
[包装材料]
本開示の積層体は、包装材料として好適に使用できる。包装材料は、例えば、包装袋を作製するために使用でき、また蓋材として使用できる。包装容器は、収容部を有する容器本体と、収容部を封止するように容器本体に接合(ヒートシール)された蓋材と、を備える。これらの包装袋および蓋材は、上述したようにレトルト処理適性およびボイル処理適性にも優れる。
【0120】
包装袋および包装容器は、ヒートシール部を有する。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シールおよび超音波シールが挙げられる。
【0121】
包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型およびガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。包装袋の具体例として、小袋およびスタンディングパウチが挙げられる。包装袋は、易開封部を備えてもよい。易開封部としては、例えば、包装袋の引き裂きの起点となるノッチ部や、包装袋を引き裂く際の経路として、レーザー加工やカッターなどにより形成されたハーフカット線が挙げられる。包装袋中に内容物を収容した後、包装袋の開口部をヒートシールすることにより、包装袋を密封できる。
【0122】
包装袋または包装容器中に収容される内容物としては、例えば、液体、固体、粉体およびゲル体が挙げられる。内容物は、飲食品でもよく、化学品、化粧品、医薬品、金属部品および電子部品等の非飲食品でもよい。内容物としては、具体的には、ソース、醤油、ドレッシング、ケチャップ、シロップ、料理用酒類、食用油、マヨネーズ、他の液体または粘稠体の調味料;液体スープ、粉末スープ、果汁類;香辛料;液体飲料、ゼリー状飲料、インスタント食品、他の飲食品;シャンプー、リンス、コンディショナー、ハンドソープ、ボディソープ、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、防虫剤、洗剤;クリーム;金属部品および電子部品が挙げられる。
【0123】
一実施形態において、本開示の積層体を、基材が外側、シーラント層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。他の実施形態において、複数の本開示の積層体をシーラント層同士が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を作製できる。包装袋の全部が上記積層体で構成されてもよく、包装袋の一部が上記積層体で構成されてもよい。
【0124】
一実施形態において、包装容器における蓋材として、本開示の積層体が用いられる。包装容器は、収容部を有する容器本体と、収容部を封止するように容器本体に接合された蓋材と、を備える。蓋材は、本開示の積層体からなる。蓋材のシーラント層と、容器本体の例えばフランジ部とが、接合されている。容器本体の形状としては、例えば、カップ型および有底円筒形状が挙げられる。蓋材は、上述したように優れたレトルト処理適性およびボイル処理適性を有する。
【0125】
容器本体は、例えば、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、ポリスチレン製、ポリエチレンテレフタレート製または紙製であり、蓋材とともに容器本体のリサイクル性を向上せるという観点から、ポリプロピレン製であることが好ましい。
【0126】
図3および図4に、蓋材60と容器本体61とを備える包装容器62を示す。容器本体61は、本体部63とフランジ部64とを備える。本体部63は、一実施形態において、上面に円形の開口部65を有する有底筒形状を有し、本体部63により画定される空間に、内容物66が収容されている。フランジ部64は、開口部65の外周縁から外周方向に延びる略平面に形成されている。蓋材60を構成する積層体は、シーラント層が容器本体61のフランジ部64と接するように重ねられ、フランジ部64の少なくとも一部に密着して、シール部が形成されている。これにより、開口部65が、蓋材60により封止される。蓋材60は、一実施形態において、フランジ部64から外周側に突出する摘持部67を有してもよい。
【0127】
スタンディングパウチは、一実施形態において、胴部(側面シート)と、底部(底面シート)とを備える。側面シートと底面シートとは、同一部材により構成されてもよく、別部材により構成されてもよい。底面シートが側面シートの形状を保持することにより、パウチに自立性が付与され、スタンディング形式のパウチとすることができる。側面シートと底面シートとによって囲まれる領域内に、内容物を収容するための収容空間が形成される。スタンディングパウチにおいて、胴部のみが本開示の積層体により構成されてもよく、底部のみが本開示の積層体により構成されてもよく、胴部および底部の両方が本開示の積層体により構成されてもよい。
【0128】
一実施形態において、側面シートは、本開示の積層体が備えるシーラント層が最内層となるように製袋することにより形成できる。一実施形態において、側面シートは、本開示の積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、両側の側縁部をヒートシールして製袋することにより形成できる。
【0129】
他の実施形態において、側面シートは、本開示の積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、重ね合わせた積層体の両側の側縁部における積層体間に、シーラント層が外側となるようにV字状に折った積層体2枚をそれぞれ挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。このような作製方法によれば、側部ガセット付きの胴部を有するスタンディングパウチが得られる。
【0130】
一実施形態において、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に本開示の積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。より具体的には、底面シートは、製袋された側面シート下部の間に、シーラント層が外側となるようにV字状に折った積層体を挿入し、ヒートシールすることにより形成できる。
【0131】
一実施形態において、上記積層体を2枚準備し、これらをシーラント層同士が向かい合うようにして重ね合わせ、次いで、もう1枚の上記積層体をシーラント層が外側となるようにV字状に折り、これを向かい合わせとなった積層体の下部に挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成する。次いで、底部に隣接する2辺をヒートシールすることにより、胴部を形成する。このようにして、一実施形態のスタンディングパウチを形成できる。
【0132】
本開示は、例えば以下の[1]~[12]に関する。
[1]第1面および第2面を有する基材と、前記基材の第1面上に設けられた電子線硬化樹脂層と、前記基材の第2面上に設けられたシーラント層と、を備え、前記基材は、ポリプロピレンを主成分として含有し、前記シーラント層は、ポリプロピレンを主成分として含有する、積層体。
[2]前記電子線硬化樹脂層の厚さが、0.1μm以上10μm以下である、前記[1]に記載の積層体。
[3]前記電子線硬化樹脂層が、(メタ)アクリレートの硬化物を含有する、前記[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記基材が、2軸延伸ポリプロピレンフィルムである、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層体。
[5]前記積層体が、前記基材と前記シーラント層との間に、蒸着フィルム層をさらに備え、前記蒸着フィルム層が、延伸ポリプロピレンフィルムと、前記延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面上に設けられた蒸着膜と、を備える、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層体。
[6]前記積層体全体におけるポリプロピレンの含有割合が、80質量%以上である、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の積層体。
[7]包装材料である、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の積層体。
[8]蓋材である、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の積層体。
[9]前記シーラント層が、イージーピール性を有する、前記[8]に記載の積層体。
[10]前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の積層体を備える包装袋。
[11]ボイル処理またはレトルト処理された包装袋である、前記[10]に記載の包装袋。
[12]収容部を有するポリプロピレン製容器本体と、前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の積層体からなる蓋材と、を備える、包装容器。
【実施例0133】
以下、実施例に基づき本開示の積層体について具体的に説明するが、本開示の積層体は実施例によって限定されない。以下、「質量部」を単に「部」とも記載する。
【0134】
以下の実施例で用いた材料について説明する。
・コート剤:
Elex-one(登録商標) Gloss Varnish(東洋インキ製)
電子線硬化性化合物を含むコート剤
・基材:
OPP-PFR両処理品(Argha karya製、厚さ18μm、プロピレンホモポリマー層、プロピレンホモポリマー層およびプロピレンホモポリマー層の3層を備える2軸延伸ポリプロピレンフィルム、両面が38dyne以上のコロナ処理されたOPP)
・蒸着フィルム:
IB-OPP(大日本印刷製、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルムと、該フィルム上に設けられたシリカ蒸着膜およびバリアコート層と、を備える蒸着フィルム)
・イージーピール性シーラントフィルム:
ポリプロピレン系フィルム(凝集剥離機構(ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物からなる海島構造)を有するイージーピール性シーラントフィルム、厚さ50μm)
・接着剤:
溶剤型接着剤(ロックペイント製、RU76 Glymo Free)
【0135】
[実施例1]
2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP-PFR両処理品)の第1面に、コート剤(Elex-one(登録商標) Gloss Varnish)を塗布し、厚さ1.5μmのコート層を形成した。電子線照射装置(岩崎電気・ESI製)を用いて、加速電圧110kV、照射線量30kGyの条件にて、コート層に対して電子線照射を行い、電子線硬化樹脂層を形成した。
【0136】
第1面上に電子線硬化樹脂層が形成された2軸延伸ポリプロピレンフィルムの第2面に、接着剤(RU76)をドライラミネート条件でコート量3g/m2となるように塗布し、蒸着フィルム(IB-OPP)のバリアコート層の面と貼り合わせた。蒸着フィルムの2軸延伸ポリプロピレンフィルムの面に、接着剤(RU76)をドライラミネート条件でコート量3g/m2となるように塗布し、シーラント層となるイージーピール性シーラントフィルムと貼り合わせた。
以上のようにして、蓋材フィルムを作製した。
【0137】
フランジ部(外径:80mm、内径:70mm、フランジ部の幅:5mm)を備えるポリプロピレン製カップ容器を準備した。蓋材フィルムを100mm×100mmのサイズに切り出した。切り出された蓋材フィルムをカップ容器のフランジ部上に、蓋材フィルムのシーラント層がフランジ部の上面と接するようにフリーテンションの状態で載せ、リング状のシールヘッドを有するヒートシール機を用いて、シール温度170℃、シール時間1.0秒間、シール圧力1kgf/cm2の条件でヒートシール処理を2回実施し、包装容器を作製した。
【0138】
冷却後にポリプロピレン製カップ容器上での蓋材フィルムの状態およびダメージレベルを確認するために、蓋材フィルムの反り具合、および目視によるダメージレベルの確認を行った。
【0139】
[実施例2]
ヒートシール処理のシール温度を170℃から180℃に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0140】
[実施例3]
蒸着フィルム(IB-OPP)のバリアコート層の面と反対側である第1面に、コート剤(Elex-one(登録商標) Gloss Varnish)を塗布し、厚さ1.5μmのコート層を形成した。電子線照射装置(岩崎電気・ESI製)を用いて、加速電圧110kV、照射線量30kGyの条件にて、コート層に対して電子線照射を行い、電子線硬化樹脂層を形成した。
【0141】
第1面上に電子線硬化樹脂層が形成された蒸着フィルム(IB-OPP)のバリアコート層の面に、接着剤(RU76)をドライラミネート条件でコート量3g/m2となるように塗布し、シーラント層となるイージーピール性シーラントフィルムと貼り合わせた。
以上のようにして、蓋材フィルムを作製した。
【0142】
フランジ部を備えるポリプロピレン製カップ容器を準備した。蓋材フィルムを100mm×100mmのサイズに切り出した。切り出された蓋材フィルムをカップ容器のフランジ部上に、蓋材フィルムのシーラント層がフランジ部の上面と接するようにフリーテンションの状態で載せ、リング状のシールヘッドを有するヒートシール機を用いて、シール温度170℃、シール時間1.0秒間、シール圧力1kgf/cm2の条件でヒートシール処理を2回実施し、包装容器を作製した。
【0143】
[比較例1]
2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP-PFR両処理品)の第2面に、接着剤(RU76)をドライラミネート条件でコート量3g/m2となるように塗布し、蒸着フィルム(IB-OPP)のバリアコート層の面と貼り合わせた。蒸着フィルムの2軸延伸ポリプロピレンフィルムの面に、接着剤(RU76)をドライラミネート条件でコート量3g/m2となるように塗布し、シーラント層となるイージーピール性シーラントフィルムと貼り合わせた。以上のようにして、蓋材フィルムを作製した。この蓋材フィルムを用いて、実施例1と同様にして包装容器を作製した。
【0144】
[比較例2]
ヒートシール処理のシール温度を170℃から180℃に変更したこと以外は比較例1と同様に行った。
【0145】
[蓋材フィルムの反りに関する定量評価方法]
冷却後にポリプロピレン製カップ容器のフランジ部の上面から蓋材フィルムの反りがどの程度発生しているかを、ノギスで測定した。
【0146】
[蓋材フィルムの熱ダメージに関する目視評価方法]
上記蓋材フィルムの反りに関する定量評価方法を行った後、目視で蓋材フィルムのヒートシール処理におけるダメージレベルを確認した。
【0147】
【表1】
【0148】
シール温度170℃および180℃のいずれにおいても、実施例の積層体からなる蓋材フィルムを、カップ容器のフランジ部の上面に、安定に綺麗にヒートシールすることができた。シール温度170℃および180℃のいずれにおいても、比較例の積層体からなる蓋材フィルムをカップ容器のフランジ部の上面にヒートシールすると、蓋材フィルムの表面がヒートシール処理時に熱負けして、カップ容器上で上側に大きく反っていた。
【符号の説明】
【0149】
1 :積層体
10:基材
20:電子線硬化樹脂層
30:蒸着フィルム層
32:延伸ポリプロピレンフィルム
34:蒸着膜
40:シーラント層
A、A1、A2:接着層
60:蓋材
61:容器本体
62:包装容器
63:本体部
64:フランジ部
65:開口部
66:内容物
67:摘持部
図1
図2
図3
図4