(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160807
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】トイレ室
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
E04H1/12 301
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076201
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】中川 明男
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025BA05
2E025BB05
2E025BC01
(57)【要約】
【課題】室内に入室したユーザのブースまでの動線を規制可能なトイレ室を提供する。
【解決手段】トイレ室1は、床11と、上記床11から起立して室内10を区画する複数の壁20と、上記壁20を貫通する第1開口30および第2開口40と、上記第1開口30および上記第2開口40が位置しない上記壁20に沿って並んでおり、内部空間57に通ずる出入口151を有する複数のブース50と、複数の上記ブース50の内部空間57にそれぞれ位置する便器152と、上記第1開口30および上記第2開口40と上記ブース50の出入口151との間に位置しており、複数の上記ブース50に沿って延びる複数の第1仕切板60と、を備えており、複数の上記第1仕切板60は、複数の上記ブース50の上記出入口151に沿った通路を区画する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床と、
上記床から起立して室内を区画する複数の壁と、
上記壁を貫通する第1開口および第2開口と、
上記第1開口および上記第2開口が位置しない上記壁に沿って並んでおり、内部空間に通ずる出入口を有する複数のブースと、
複数の上記ブースの内部空間にそれぞれ位置する便器と、
上記第1開口および上記第2開口と上記ブースの出入口との間に位置しており、複数の上記ブースに沿って延びる複数の第1仕切板と、を備えており、
複数の上記第1仕切板は、複数の上記ブースの上記出入口に沿った通路を区画するトイレ室。
【請求項2】
上記第1開口および上記第2開口と、複数の上記第1仕切板との間の上記床の一部領域に位置する複数の第1洗面台をさらに備えており、
上記第1仕切板は、上記通路と上記一部領域とを連通する第3開口を有する請求項1に記載のトイレ室。
【請求項3】
複数の上記壁により区画される上記室内は、平面視において外形が四角形であり、
複数の上記ブースは、少なくとも第1方向に沿う第1ブース列と、上記第1方向と交差する第2方向に沿う第2ブース列と、に並ぶ請求項1または2に記載のトイレ室。
【請求項4】
上記ブースが位置しない上記壁に沿って並ぶ複数の第2洗面台と、
上記第1開口および上記第2開口と上記第2洗面台との間に位置する第2仕切板と、をさらに備えた請求項1または2に記載のトイレ室。
【請求項5】
複数の上記ブースのそれぞれは、上記出入口の開閉状態を示す表示部をさらに有する請求項1または2に記載のトイレ室。
【請求項6】
上記表示部は、上記第1仕切板の上端よりも高い位置にある請求項5に記載のトイレ室。
【請求項7】
上記第1仕切板は、少なくとも透光性の材料を含む請求項1または2に記載のトイレ室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブースが位置するトイレ室に関する。
【背景技術】
【0002】
壁部を貫通する開口と、壁部に沿って並び、内部に便器を有するブースとを備える衛生建物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。衛生建物の平面視における中心位置には洗面台が位置している。ユーザは、開口からトイレ室内へ入室した後、洗面台の周囲を通路として移動することで、空いているブースへ入室できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開口から入室したユーザは、洗面台の周囲を任意に移動するので、開口からブースまでのユーザの動線が定まらない。例えば、入室したユーザは最も近くにある空きブースへ移動するが、別のユーザが同じ空きブースへ向かって移動していると、空きブースに先に到着したユーザが空きブースを使用することとなり、ユーザ間で競争が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、利便性を保ちつつ、トイレ室を利用するユーザがブースに至るまでの動線を規制する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1に係るトイレ室は、床と、上記床から起立して室内を区画する複数の壁と、上記壁を貫通する第1開口および第2開口と、上記第1開口および上記第2開口が位置しない上記壁に沿って並んでおり、内部空間に通ずる出入口を有する複数のブースと、複数の上記ブースの内部空間にそれぞれ位置する便器と、上記第1開口および上記第2開口と上記ブースの出入口との間に位置しており、複数の上記ブースに沿って延びる複数の第1仕切板と、を備えており、複数の上記第1仕切板は、複数の上記ブースの上記出入口に沿った通路を区画するトイレ室である。
【0007】
第1開口から室内に入った複数のユーザは、通路に沿って複数のブースの出入口の間を移動するので、第1開口から空いているブースまでのユーザの動線が規制される。先に室内に入ったユーザから順に、空いているブースに到達できる。これにより、第1開口からブースに至るまでのユーザ間の秩序を維持することができる。ブースから出たユーザは、第2開口を通じてトイレ室から出る。第1開口と第2開口とによりユーザの流れが分けられるので、トイレ室に出入りするユーザの移動が円滑になる。
【0008】
(2) 請求項2に係るトイレ室は、上記第1開口および上記第2開口と、複数の上記第1仕切板との間の上記床の一部領域に位置する複数の第1洗面台をさらに備えており、上記第1仕切板は、上記通路と上記一部領域とを連通する第3開口を有する請求項1に記載のトイレ室である。
【0009】
上記構成によれば、ブースから通路へ出たユーザは、第1仕切板の有する第3開口から第1洗面台が位置する一部領域に移動できる。
【0010】
(3) 請求項3に係るトイレ室は、複数の上記壁により区画される上記室内は、平面視において外形が四角形であり、複数の上記ブースは、少なくとも第1方向に沿う第1ブース列と、上記第1方向と交差する第2方向に沿う第2ブース列と、に並ぶ請求項1または2に記載のトイレ室である。
【0011】
上記構成によれば、トイレ室においてブースが効率的に配置される。
【0012】
(4) 請求項4に係るトイレ室は、上記ブースが位置しない上記壁に沿って並ぶ複数の第2洗面台と、上記第1開口および上記第2開口と上記第2洗面台との間に位置する第2仕切板と、をさらに備えた請求項1または2に記載のトイレ室である。
【0013】
上記構成によれば、例えば化粧直しなど、手洗いなどに比べると占有時間が長い使用を希望するユーザが、第2洗面台を使用することにより、第1洗面台が位置する領域が混雑することが抑制される。
【0014】
(5) 請求項5に係るトイレ室は、複数の上記ブースのそれぞれは、上記出入口の開閉状態を示す表示部をさらに有する請求項1または2に記載のトイレ室である。
【0015】
上記構成によれば、ブースの空室状態が容易に確認できる。
【0016】
(6) 請求項6に係るトイレ室は、上記表示部は、上記第1仕切板の上端よりも高い位置にある請求項5に記載のトイレ室である。
【0017】
上記構成によれば、第1開口においてブースの使用状態が容易に確認できる。
【0018】
(7) 請求項8に係るトイレ室によれば、上記第1仕切板は、少なくとも透光性の材料を含む請求項1または2に記載のトイレ室。
【0019】
上記構成によれば、通路の視認性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るトイレ室によれば、トイレ室を利用するユーザがブースに至るまでの動線を規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2は、第1開口30からトイレ室1の室内の後方側を視たときの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具現化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0023】
また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。トイレ室1に関する方向として、上下方向7、前後方向8、および左右方向9が与えられている。前後方向8および左右方向9は、共に、上下方向7に直交する横方向であって、相互に直交している。前後方向8は、詳しくは後述する床11の長方形の外形の短辺方向である。左右方向9は、床11の長方形の長辺方向である。また、トイレ室1の利用者を「ユーザ」と示す。
【0024】
[トイレ室1の全体構成]
図1および
図2に示されるように、トイレ室1は、駅、空港、商業施設、あるいはオフィスビルなどの公共施設に設置される公衆トイレである。また、トイレ室1は、独立して屋外に位置してもよい。トイレ室1には、公共施設を利用する複数のユーザが同時に入室および利用できるように、複数の便器152(洋式便器)およびシンクが設置される。トイレ室1は、例えば、左右方向9に延びる1つの直線状の第1通路100に沿って位置する。トイレ室1の室内10へは、第1通路100からアクセス(入退場)可能になっている。トイレ室1は、床11と、複数の壁20と、第1開口30と、第2開口40と、ブース50と、第1仕切板60と、第1洗面台70と、第2洗面台80と、を備える。
【0025】
[床11]
図1に示されるように、床11は、平面視における外径が矩形である。床11は、例えば、左右方向9に長い長方形である。床11の前端は、第1通路100の後端に沿って(隣接して)左右方向9に延びる。床11上には、トイレ室1内の各設備が配置される。床11の前後方向8および左右方向9の寸法は、後述するブース50および後述する第2洗面台80を複数並設可能な大きさである。
【0026】
[壁20]
壁20は、床11から起立する。壁20は、例えば、矩形の床11の各辺の位置から上方に向けて起立する。すなわち、壁20は、矩形の床11の四辺のそれぞれから上方に向けて起立する。壁20の平面視における外形は矩形である。
図1において、壁20は、前壁22、後壁23、左壁24、および右壁25を有する。
【0027】
前壁22は、床11の前端縁から上方に起立して、図示しない天井まで延びる。後壁23は、床11の後端縁から上方に起立して、図示しない天井まで延びる。左壁24は、床11の左端縁から上方に起立して、図示しない天井まで延びる。右壁25は、床11の右端縁から上方に起立して、図示しない天井まで延びる。前壁22、後壁23、左壁24、右壁25、床11、および天井は、トイレ室1の室内10を区画する。すなわち、前壁22、後壁23、左壁24、右壁25、床11、および天井によって囲まれる領域がトイレ室1の室内10である。前壁22は、第1通路100に沿って延び、トイレ室1の室内10と、第1通路100とを隔てる。複数の壁20によって区画される室内10は、平面視において外径が四角形である。
【0028】
[第1開口30、第2開口40]
第1開口30および第2開口40は、壁20に位置する。本実施形態において、第1開口30および第2開口40は、前壁22に位置する。第1開口30および第2開口40は、前壁22を貫通する。具体的には、第1開口30および第2開口40は、前壁22を前後方向8に沿って貫通する。第1開口30および第2開口40の下端は、例えば、床11によって区画される。換言すると、第1開口30および第2開口40の下端の位置は、床11である。第1開口30および第2開口40は、近接する。本実施形態において、第1開口30および第2開口40は、前壁22の中央近傍に位置しており、左右方向9において近接する。第1開口30は、例えば、第1通路100から室内10へ入場する入口である。第2開口40は、例えば、室内10から第1通路100へ退出する出口である。本実施形態において、第1開口30は、第2開口40に対して右側に位置する。第2開口40は、第1開口30に対して左側に位置する。
【0029】
[ブース50]
ブース50は、平面視における外径が概ね矩形に区画された空間である。ブース50は、第1開口30および第2開口40の位置しない壁20に沿って並ぶ。ブース50は、前後方向8(第1方向の一例)に沿う第1ブース列51と、前後方向8と交差する左右方向9(第2方向の一例)に沿う第2ブース列52と、に並ぶ。本実施形態において、ブース50は、前壁22以外の壁20に沿って並ぶ。具体的には、第1ブース列51は、右壁25の前端から後端に沿って並ぶ。第2ブース列52は、後壁23の右端から左端に沿って並ぶ。第1ブース列51に含まれる各ブース50は、水平方向の一方(右方)が右壁25によって区画される。第2ブース列52に含まれる各ブース50は、水平方向の一方(後方)が後壁23によって区画される。
【0030】
隣接するブース50の間には、上下方向7に広がる主面を有する板体である間仕切53が位置する。隣接するブース50同士は、区画される一方に位置する壁20から室内10に向けて延びる間仕切53によって区画される。なお、本実施形態において、右壁25と後壁23とによって区画される角部54と、後壁23と左壁24とによって区画される角部54とには、他のブース50よりもより広い床面積を有する多目的トイレ55が位置する。多目的トイレ55は、隣接する2つの壁20によって二方を区画される。ブース50は、出入口151と、便器152と、表示部153と、を有する。なお、
図1において、右壁25の前端縁に隣接するブース50は、用具室であり、便器152などが配置されていない。
【0031】
[出入口151]
出入口151は、ブース50の外部からブース50の内部空間57に通じる。出入口151は、間仕切53の延出方向先端の間に位置する。出入口151の左右端および下端は、隣接する間仕切53の延出方向先端と、床11とによって区画される。出入口151の上端は、天井に向けて開放されている。
【0032】
出入口151には、例えば、開閉扉154が位置する。開閉扉154は、例えば、板状の開き戸155または板状の引き戸156であり、閉じた状態において隣接する間仕切53の間を延出方向に交差する方向で延びる。開閉扉154は、出入口151を開いた開状態と、出入口151を閉じた閉状態とのいずれかの状態をとる。開閉扉154は、開状態において、隣接する間仕切53の延出方向先端の間を開放する。開状態において、ブース50の内部空間57には、出入口151からの出入りが可能である。開閉扉154は、閉状態において、隣接する間仕切53の延出方向先端の間を閉じる。閉状態において、ブース50の内部空間57には、出入口151からの出入りが不能である。閉状態において、開閉扉154は、図示しない錠前を用いた施錠により一方の間仕切53に移動不能に係止(施錠)される。開閉扉154は、錠前による係止の解除(開錠)まで閉状態を維持する。
【0033】
開閉扉154が開き戸155である場合、開き戸155は、例えば、他方の間仕切53における延出方向一端に軸止される。開き戸155は、ブース50の内部空間57に向けて回動する方向に付勢されている。開き戸155は、付勢により、他方の間仕切53に向けて回動且つ接触することにより、開状態に維持される。開き戸155は、付勢に抗して回動されて、錠前により一方の間仕切53に係止されることで、閉状態に維持される。
【0034】
開閉扉154が引き戸156である場合、引き戸156は、例えば、隣接する間仕切53の先端の間を移動されることで、開状態と閉状態との間で切り替わる。引き戸156は、例えば、3つの板体が隣接する間仕切53の延出方向先端の間に沿って連動して移動することで、出入口151の一部を開く開状態と、出入口151を閉じる閉状態との間で切り替わる。引き戸156は、閉状態において、錠前により移動不能に係止(施錠)されることで、閉状態を維持する。
【0035】
[便器152]
便器152は、ブース50の床11に載置される。便器152は、ブース50を区画する壁20に近接する。便器152は、例えば、洋式便器である。
【0036】
[表示部153]
図2に示されるように、表示部153は、出入口151の近傍に位置する。表示部153は、例えば、他方の間仕切53の延出方向先端に支持される。表示部153は、例えば、表示灯であり、出入口151(開閉扉154)の開閉状態を示す。表示部153は、例えば、赤色と緑色とのいずれかを点灯可能である。表示部153は、開閉扉154の開閉状態に応じて、開閉扉154と接触または非接触となる図示しないスイッチを有する。開状態にある開閉扉154がスイッチと非接触となることで、表示部153は、開状態を示す緑色に点灯する。閉状態にある開閉扉154がスイッチと接触することで、表示部153は、閉状態を示す赤色に点灯する。すなわち、表示部153は、緑色を点灯することでブース50が未使用であることを示す。表示部153は、赤色を点灯することでブース50が使用中であることを示す。
図2に示されるように、表示部153は、後述する第1仕切板60の上端よりも高い位置にある。
【0037】
[第1仕切板60]
図1に示されるように、第1仕切板60は、板体である。第1仕切板60の平面視における外形は、例えば、矩形である。第1仕切板60は、例えば、少なくとも透光性の材料を含む。本実施形態において、第1仕切板60は、全体が透光性の材料によって構成される。透光性の材料は、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、AS樹脂、シリコーン樹脂、無機ガラス、または透明セラミックスなどである。
【0038】
第1仕切板60は、第1開口30および第2開口40と、ブース50との間に複数が位置する。複数の第1仕切板60は、連続するように繋がれている。複数の第1仕切板60は、ブース50に沿って延びる。複数の第1仕切板60は、例えば、ブース50の出入口151に沿って延びる。複数の第1仕切板60と、各ブース50の出入口151とによって区画される領域は、各ブース50に入室するユーザが歩行するための第2通路56(通路の一例)である。本実施形態おいて、複数の第1仕切板60はさらに、後述する複数の第2洗面台80にも沿って延びる。これにより、第1仕切板60の平面視における外形は、例えば、前方を開放するU字状である。第1仕切板60が透明な材料によって構成されることで、第2通路56に存在するユーザまたは図示しない物体の有無を第1仕切板60を通して第1開口30側の室内10から確認(視認)できる。これにより、第2通路56がブース50および第1仕切板60で区画されていても、室内10のセキュリティが向上する。ここで、「確認(視認)できる」とは、第1仕切板60の透光性の材料を通して、第2通路56に存在するユーザまたは物体を識別可能な程度まで明確に確認できることに限定されない。「確認(視認)できる」とは、第2通路56に存在するユーザまたは物体をシルエットなどで存在を確認できる程度であってもよい。
【0039】
第1仕切板60は、第2通路56と床11の一部領域61とを連通する第3開口62を有する。ここで、「床11の一部領域61」は、例えば、第1仕切板60よりも前方に位置する領域であって、第1仕切板60を隔ててブース50とは逆に位置する領域である。本実施形態において、「床11の一部領域61」とは、例えば、第1仕切板60によって三方を区画される矩形の領域である。本実施形態における「床11の一部領域61」では、前端が、第1仕切板60の最も前方に位置する端を繋いだ仮想線63によって区画される。
【0040】
第3開口62は、例えば、連続する複数の第1仕切板60の少なくとも一部の間に位置する隙間である。第3開口62の下端は、床11によって区画される。第3開口62の上端は、天井に向けて開放されている。第3開口62の水平方向における幅は、例えば、ユーザの通行を許容する大きさである。第1仕切板60の上端の位置は、ブース50の間仕切53の上端よりも低い。具体的には、第1仕切板60の上端の位置は、表示部153の位置よりも低い。これにより、
図2に示されるように、表示部153の状態は、第1開口30の位置から視認可能である。
【0041】
[第1洗面台70]
第1洗面台70は、いわゆるシンクである。第1洗面台70は、平面視における外径が概ね矩形である。第1洗面台70は、複数位置する。複数の第1洗面台70は、床11の一部領域上に位置する。複数の第1洗面台70は、例えば、床上に載置される支持台72によって床11の上面よりも上方に支持される。支持台72の平面視における外形は、矩形である。第1洗面台70は、支持台72によって、第1仕切板60の上端よりも低い位置に支持される。これにより、ユーザが床11の一部領域61または第1開口30から第1仕切板60を介して第2通路56を視る際に、第1洗面台70がユーザの視界を遮ることを抑制できる。また、第1洗面台70が第1開口30から表示部153を視るユーザの視界を遮ることを抑制できる。
【0042】
本実施形態では、複数の第1洗面台70は、支持台72上に、前後方向8で一対、左右方向9に複数位置している。前後方向で一対に並ぶ複数の第1洗面台70の間には、支持台72の上面から上方に突出して左右方向9に延びる鏡73が位置する。鏡73の上端の位置は、第1仕切板60の上端よりも低い。床11の一部領域61に位置する複数のユーザは、第1洗面台70のそれぞれで同時に手を洗うことができる。
【0043】
[第2洗面台80]
第2洗面台80は、いわゆるシンクである。第2洗面台80は、壁20に沿って複数位置する。具体的には、第2洗面台80は、第1開口30および第2開口40の位置しない壁20に沿って複数位置する。本実施形態において、第2洗面台80は、左壁24の前端から後端の多目的トイレ55に隣接する位置まで、左壁24に沿って複数位置する。第2洗面台80のそれぞれの間には、上下方向7に延びる板状の第2仕切板81が位置する。第2洗面台80は、第2仕切板81によって隣りの第2洗面台80と仕切られる。第2仕切板81の上端は、例えば、ユーザの身長よりも十分に高い位置にあり、非透光性の材料で構成されている。これにより、第2洗面台80は、隣の第2洗面台80にいるユーザから見えないようになっている。
【0044】
[ブース50を使用する一人のユーザの流れ]
ユーザは、第1通路100から第1開口30を通ることでトイレ室1に入室する。
図2に示されるように、トイレ室1に入室したユーザは、ブース50の上部に位置する表示部153を確認することで、空いている(未使用の)ブース50のおおよその位置を把握することができる。
【0045】
空いているブース50を把握したユーザは、第1洗面台70(支持台72)と、前壁22との間を右方に移動する。ユーザは、第1仕切板60の位置を超えると、各ブース50の出入口151にアクセス可能な第2通路56の入口58に到達する。ユーザは、第1仕切板60と第1ブース列51との間の第2通路56に入る。ユーザは、第2通路56を通ることで、第1ブース列51および第2ブース列52に含まれる複数のブース50の出入口151の前を通過する。ユーザは、表示部153を用いて把握したブース50、または把握後に未使用になったブース50に到達することで、ブース50に入室できる。ブース50にユーザが入室すると、開閉扉154が閉じられる。開閉扉154が閉じられると、表示部153の点灯は、緑点灯から赤点灯に変化する。これにより、ブース50が使用中であることを他のユーザに知らせることができる。
【0046】
ユーザがブース50から退出すると、開閉扉154が開かれて、表示部153が緑点灯に変わる。ブース50から退出したユーザは、第1仕切板60に位置する第3開口62から一部領域61に位置する第1洗面台70に移動する。第1洗面台70で手を洗ったユーザは、第2開口40から第1通路100に退出する。これにより、ユーザは、ブース50を利用することができる。
【0047】
[ブース50を使用する連続する複数のユーザの流れ]
複数のユーザが続けてブース50を利用する場合、複数のユーザは、順に、第1通路100から第1開口30を通り、トイレ室1に入場する。複数のユーザは、第1開口30から室内10に入室した位置で室内10を見渡して、表示部153の表示から空いている(未使用の)ブース50のおおよその位置を確認できる。空いているブース50の大まかな位置を把握した複数のユーザは、順に空いているブース50に向けて移動を開始する。第1開口30と各ブース50との間(床11の一部領域61)には、第1洗面台70と支持台72とが位置する。そのため、複数のユーザは、第1洗面台70および支持台72を回り込むように、前壁22に沿って右方に向けて移動を開始する。複数のユーザは、第1仕切板60の位置を超えると、各ブース50の出入口151にアクセス可能な第2通路56の入口58に到達する。
【0048】
複数のユーザは、おおよその位置を把握しているブース50に向けて移動するために、第2通路56に入り、第1ブース列51の前を移動する。先頭を歩くユーザは、第1ブース列51を見渡しながら歩けるので、第1ブース列51全体の開閉扉154の開閉状況および表示部153の点灯状況(すなわち、ブース50の空き状況)を確認しながら進むことができる。先頭のユーザは、第1ブース列51において、把握したブース50または進行方向前方において把握後に未使用に変わったブース50に入室できる。先頭のユーザは、第1ブース列51に空きがない場合、第1ブース列51に繋がる第2ブース列52の出入口151の前を移動して、把握したブース50または進行方向前方において把握後に未使用に変わったブース50に入室できる。
【0049】
第1仕切板60と第1ブース列51および第2ブース列52によって、第2通路56の進行方向の左右が区画されている。そのため、先頭の次を歩くユーザは、第1仕切板60を超えて先頭を歩くユーザを追い抜くことが難しく、先頭のユーザを追い越して空いているブース50に入室することは難しい。先頭の次を歩くユーザは、先頭のユーザがブース50に入室することで先頭のユーザとなり、進行方向前方において空いているブース50を確認して入室することができる。このように、先頭の次を歩くユーザが先頭を歩くユーザを追い越すことが難しいので、トイレ室1に入室してブース50に至るまでのユーザの移動の秩序を保つことができる。
【0050】
ブース50から退出したユーザは、第2通路56を横切って最も近い第3開口62を通り、第1洗面台70に直接移動することができる。第1洗面台70で手を洗ったユーザは、第2開口40を通って、トイレ室1から退室できる。これにより、ブース50から退出したユーザは、速やかにトイレ室1から退室できる。
【0051】
[第2洗面台80を利用するユーザの流れ]
ユーザは、第1通路100から第1開口30を通ることでトイレ室1に入室する。トイレ室1に入室したユーザは、第1洗面台70と前壁22との間を通り、第2通路56の入口58まで移動する。ユーザは、第2通路56を通り、左壁24前の第2洗面台80の位置へ移動する。第2洗面台80の使用を終えたユーザは、第2開口40から第1通路100に退出する。第2洗面台80は、占有時間の長いユーザにとって使用しやすいように第2仕切板81で仕切られているので、第1洗面台70が占有されて混雑することを抑制できる。
【0052】
(本実施形態の作用効果)
第1開口30から室内10に入った複数のユーザは、第2通路56に沿って複数のブース50の出入口151の前を移動するので、第1開口30から空いているブース50までのユーザの動線が規制される。先に室内10に入ったユーザから順に、空いているブース50に到達できる。これにより、ブース50に至るまでのユーザ間の秩序を維持することができる。ブース50から出たユーザは、第2開口40を通じてトイレ室1から出る。第1開口30と第2開口40とによりユーザの流れが分けられるので、トイレ室1に出入りするユーザの移動が円滑になる。
【0053】
ブース50が有する便器152は、全て洋式便器である。これにより、トイレ室1を男女兼用とすることができる。男女別にそれぞれ設けられるトイレ室1のように、一方のトイレ室1のみが混雑するといった状況を回避できるので、トイレ室1の混雑を緩和することができる。
【0054】
ブース50から第2通路56へ出たユーザは、第3開口62から第1洗面台70が位置する領域に移動できる。
【0055】
ブース50が第1ブース列51および第2ブース列52に並ぶので、トイレ室1においてブース50が効率的に配置される。
【0056】
例えば化粧直しなど、手洗いなどに比べると占有時間が長い使用を希望するユーザが、第2洗面台80を使用することにより、第1洗面台70が位置する領域が混雑することが抑制される。
【0057】
表示部153がブース50の施錠状態を示すので、ブース50の空室状態が容易に確認できる。
【0058】
表示部153の位置が第1仕切板60の上端位置よりも高いので、第1開口30においてブース50の使用状態が容易に確認できる。
【0059】
第1仕切板60が透光性の材料からなるので、第1開口30および第1洗面台70からの第2通路56の視認性が向上する。男女兼用のトイレ室1において、セキュリティが向上するとともに、ユーザの安心感を向上することができる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態において、第1仕切板60は、左壁24(第2洗面台80)と、第1洗面台70との間には位置せずともよい。これにより、ユーザは、第2通路56を経由せずに、第1開口30から第2洗面台80に直接向かうことができる。第2洗面台80に向かうユーザと、ブース50に向かうユーザとの動線を分けることで、第2通路56が混雑することを抑制できる。
【0061】
上記実施形態において、表示部153が表示灯であるとしたが、これに限定されない。表示部153は、例えば、文字などを表示する掲示板であってもよい。また、表示部153の点灯色は、赤色および緑色に限定されず、空室と入室中とを区別できれば種々の色が使われてもよい。
【0062】
上記実施形態において、第1仕切板60は、前壁22と第1洗面台70との間にも位置してよい。これにより、第2通路56は、前壁22と新たな第1仕切板60との間から第1開口30まで延長される。第1開口30から入室したユーザをブース50まで導きやすくなる。
【0063】
上記実施形態において、床11の平面視における外形は、矩形に限定されない。床11の平面視における外形は、多角形であってよい。多角形の床11の各辺から起立する壁20の内面は平面であり、ブース50は、第1開口30および第2開口40の位置する壁20とは異なる壁20の内面に沿って位置してよい。ブース50は、第1開口30から入室したユーザが室内10を見渡したときに、表示部153を視認できない壁20に沿っては位置しない。これにより、ユーザは、第1開口30から空いているブース50の全体を見渡すことができる。
【0064】
上記実施形態において、トイレ室1は、第1洗面台70と第2洗面台80との両方を備えるとしたが、いずれか一方を備えてもよい。例えば、トイレ室1において、洗面台が第1洗面台70の位置に集約されて、第2洗面台80の位置に左壁24に沿うブース50が追加されてもよい。また、トイレ室1において、洗面台が第2洗面台80の位置に集約されて、床11の一部領域61が待ち合わせ用のスペースや休憩用のスペースとされてもよい。
【0065】
上記実施形態において、表示部153が第1仕切板60の上端よりも高い位置にあるとしたが、これに限定されない。表示部153は、第1仕切板60の上端よりも低い位置にあり、第1仕切板60の透光性の材料を通して視認可能になっていてもよい。
【0066】
上記実施形態において、第1仕切板60の全体が透光性の材料で構成されるとしたが、これに限定されない。透光性の材料は、第1仕切板60の一部を構成してもよい。「第1仕切板60の一部」とは、第1仕切板60のうち、両主面のいずれにも露出する部分の一部であり、露出する主面のいずれか一方に入射した光を他方の主面から出射可能な部分である。透光性の材料は、例えば、第1仕切板60の厚さ方向において重なる、両主面それぞれの一部の領域を区画する。透光性の材料の平面視における外形は、例えば、円形や多角形などであってもよい。透光性の材料は、第1仕切板60の中央部、上端部、下端部、左端部、および右端部の少なくとも一か所に位置してよい。一例として、透光性の材料は、平面視における外径が矩形であり、第1仕切板60の左端部または右端部において、両主面の上端から下端まで上下方向7に沿って延びるように位置してもよい。これにより、第2通路56の状況を床11の一部領域61(第1開口30)側から視認可能にしつつ、第2通路56の一部を視認不能にすることで、セキュリティの向上とユーザのプライバシー保護とをバランスよく確保できる。
【0067】
上記実施形態において、第1仕切板60は、透光性の材料を含まなくてもよい。第1仕切板60は、例えば、スリット、格子、厚さ方向に貫通する開閉可能な窓などにより、床11の一部領域61から第2通路56を視認可能になっていてもよい。上記スリット、格子、厚さ方向に貫通する開閉可能な窓などは、第1仕切板60の一部に位置していてよい。
【0068】
[請求項1]
床と、
上記床から起立して室内を区画する複数の壁と、
上記壁を貫通する第1開口および第2開口と、
上記第1開口および上記第2開口が位置しない上記壁に沿って並んでおり、内部空間に通ずる出入口を有する複数のブースと、
複数の上記ブースの内部空間にそれぞれ位置する便器と、
上記第1開口および上記第2開口と上記ブースの出入口との間に位置しており、複数の上記ブースに沿って延びる複数の第1仕切板と、を備えており、
複数の上記第1仕切板は、複数の上記ブースの上記出入口に沿った通路を区画するトイレ室。
【0069】
[請求項2]
上記第1開口および上記第2開口と、上記第1仕切板との間の上記床の一部領域に位置する複数の第1洗面台をさらに備えており、
上記第1仕切板は、上記通路と上記一部領域とを連通する第3開口を有する請求項1に記載のトイレ室。
【0070】
[請求項3]
複数の上記壁により区画される上記室内は、平面視において外形が四角形であり、
複数の上記ブースは、少なくとも第1方向に沿って並ぶ第1ブース列と、上記第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ第2ブース列と、を有する請求項1または2に記載のトイレ室。
【0071】
[請求項4]
上記ブースが位置しない上記壁に沿って並ぶ複数の第2洗面台と、
上記第1開口および上記第2開口と上記第2洗面台との間に位置する第2仕切板と、をさらに備えた請求項1または2に記載のトイレ室。
【0072】
[請求項5]
複数の上記ブースのそれぞれは、上記出入口の開閉状態を示す表示部をさらに有する請求項1または2に記載のトイレ室。
【0073】
[請求項6]
上記表示部は、上記第1仕切板の上端よりも高い位置にある請求項5に記載のトイレ室。
【0074】
[請求項7]
上記第1仕切板は、少なくとも透光性の材料を含む請求項1または2に記載のトイレ室。
【符号の説明】
【0075】
1・・・トイレ室
10・・・室内
11・・・床
20・・・壁
30・・・第1開口
40・・・第2開口
50・・・ブース
51・・・第1ブース列
52・・・第2ブース列
56・・・第2通路(通路)
60・・・第1仕切板
62・・・第3開口
70・・・第1洗面台
80・・・第2洗面台
81・・・第2仕切板
151・・・出入口
152・・・便器
153・・・表示部