(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160823
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】寝具用敷シーツ
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20241108BHJP
D04B 21/10 20060101ALI20241108BHJP
D04B 21/20 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A47G9/02 P
D04B21/10
D04B21/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076227
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598044556
【氏名又は名称】藤井株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西山 茉里
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹晴
【テーマコード(参考)】
3B102
4L002
【Fターム(参考)】
3B102BA12
4L002AA02
4L002AA07
4L002AB01
4L002AB02
4L002AC07
4L002CA00
4L002CA01
4L002CA02
4L002CA03
4L002CB02
4L002EA02
4L002EA03
4L002FA00
(57)【要約】
【課題】垂直方向の通気性及び水平方向の通気性に優れ、就寝時に汗を蒸散しやすい寝具用敷シーツを提供する。
【解決手段】本発明は、経編のメッシュ生地で構成される寝具用敷シーツであって、寝具用敷シーツ1は、ベースの経編のメッシュ生地3及び幅方向に配列されている複数列の凸部2を含み、凸部2は、連続する複数のひだ(2a、2b、2c)で形成され、ひだは袋状に折り返された経編のメッシュ生地で形成され、前記複数のひだは一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なる、ことを特徴とする寝具用敷シーツに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経編のメッシュ生地で構成される寝具用敷シーツであって、
前記寝具用敷シーツは、ベースの経編のメッシュ生地及び幅方向に配列されている複数列の凸部を含み、
前記凸部は、垂直方向に伸びて連続する複数のひだで形成され、前記ひだは袋状に折り返された経編のメッシュ生地で形成され、
前記複数のひだは一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なる、ことを特徴とする寝具用敷シーツ。
【請求項2】
前記凸部間の間隔PAと各々のひだの長さPBの比PA/PBは、1より大きく25未満である、請求項1に記載の寝具用敷シーツ。
【請求項3】
前記寝具用敷シーツは、セルロース繊維及びポリエステル繊維を含み、寝具用敷シーツを100質量%とした場合、前記セルロース繊維の含有量は50~80質量%である請求項1又は2に記載の寝具用敷シーツ。
【請求項4】
前記経編のメッシュ生地は、単繊維繊度が1.1dtexのポリエステルマルチフィラメント糸を含む、請求項1又は2に記載の寝具用敷シーツ。
【請求項5】
前記寝具用敷シーツは、JIS L1096 8.26A:2010法(フラジール形法)で測定される通気度が150~500cm3/(cm2・s)である請求項1又は2に記載の寝具用敷シーツ。
【請求項6】
前記寝具用敷シーツは、5mmHgの垂直方向の荷重を掛けた際、荷重面と前記寝具用敷シーツの表面の間に水平方向の隙間があり、水平方向の基準長さ10cmかつ垂直方向の基準長さ2cmの単位面積200cm2あたりの隙間面積が10~500mm2である請求項1又は2に記載の敷用シーツ。
【請求項7】
前記複数のひだは、長いひだAと短いひだBを含み、ひだAの間にひだBが存在するか又はひだBの間にひだAが存在する、請求項1又は2に記載の寝具用敷シーツ。
【請求項8】
前記凸部間の間隔PAは5~100mmであり、各々のひだの長さPBは2~10mmである、請求項1又は2に記載の寝具用敷シーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性が高く、マットレスや敷き布団などの寝具の敷シーツとして好適に用いることができる寝具用敷シーツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マットレスや敷き布団などの寝具の敷シーツとしては、吸湿性に優れる綿等のセルロース繊維を用いた布帛が広く使用されていた。近年、夏等の熱い季節には、冷感生地を寝装品に用いることが行われている。例えば、特許文献1には、シーツや敷きパッド等に、織布又は、不織布からなる生地と、該生地の片面又は、両面に配された冷感材料を有する冷感生地を用いることが提案されている。
一方、汗による不快感を抑えるため、生地表面に凹凸を付けて生地の通気性を高めることが行われている。例えば、特許文献2には、複数の帯状の布基材を縫着手段を用いて連結し、縫着箇所を突出部に形成することで、布地表面に凹凸を形成し、該布地に通気性を付与することが記載されている。特許文献3には、表裏の地組織と、地組織を連結する連結糸からなる立体編物において、表裏少なくとも一面の地組織を高低差の大きな凹凸部を有するよう形成し、凸部については明瞭な断面曲率を有する湾曲形状を形成できる程度に、地糸が適宜間隔をあけて振られ、且つ凹部については地糸が適宜間隔をあけて糸抜きされた開口部が形成されている立体編物が記載されている。特許文献4には、ラッセル編機にて製造した緯方向に畦状に延びる凸部を形成した編物地が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-146173号公報
【特許文献2】特開2005-068612号公報
【特許文献3】特開2003-183957号公報
【特許文献4】特開2012-092456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の冷感生地は、寝具の敷シーツとして用いた場合、通気性が劣り、汗が蒸散しにくい問題があった。特許文献2の場合、凸部において、生地が何層も重なり、通気性が劣る問題があった。特許文献3及び4に記載の生地において、凸部は荷重が掛かるつぶれやすく、通気性が劣る問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するため、垂直方向の通気性及び水平方向の通気性に優れ、汗を蒸散しやすい寝具用敷シーツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、経編のメッシュ生地で構成される寝具用敷シーツであって、前記寝具用敷シーツは、ベースの経編のメッシュ生地及び幅方向に配列されている複数列の凸部を含み、前記凸部は、垂直方向に伸びて連続する複数のひだで形成され、前記ひだは袋状に折り返された経編のメッシュ生地で形成され、前記複数のひだは一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なる、ことを特徴とする寝具用敷シーツに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、垂直方向の通気性及び水平方向の通気性に優れ、汗を蒸散しやすい寝具用敷シーツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1例の寝具用敷シーツの模式的斜視図である。
【
図2】本発明の1例の寝具用敷シーツの模式的断面図である。
【
図3】本発明の1例の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた場合の模式的断面図である。
【
図4】本発明の1例の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた場合の模式的断面図である。
【
図5】本発明の1例の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた場合の荷重面とシーツの表面間の隙間の面積を測定する方法における1例の画像である。
【
図6】本発明の1例の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた場合の荷重面とシーツの表面間の隙間の面積を測定する方法における1例の画像である。
【
図7】本発明の1例の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた場合の荷重面とシーツの表面間の隙間の面積を測定する方法における1例の画像である。
【
図8】実施例1の寝具用敷シーツ(ひだを有する経編のメッシュ生地)の編組織図である。
【
図9】実施例1の寝具用敷シーツ(ひだを有する経編のメッシュ生地)の表面写真(50倍)である
【
図10】実施例1の寝具用敷シーツの経編のメッシュ生地部分の表面写真(スケール0.5mm)である。
【
図11】実施例1の寝具用敷シーツのひだ部分の表面写真(スケール0.5mm)である。
【
図12】実施例1の寝具用敷シーツの凸部を構成する複数のひだを立ち上げた場合の部分断面写真(スケール1mm)である。
【
図13】実施例1の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた後の部分断面写真(スケール1mm)である。
【
図14】実施例2の寝具用敷シーツの凸部を構成する複数のひだを立ち上げた場合の部分断面写真(スケール1mm)である。
【
図15】実施例2の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた後の部分断面写真(スケール1mm)である。
【
図16】実施例3の寝具用敷シーツの凸部を構成する複数のひだを立ち上げた場合の部分断面写真(スケール1mm)である。
【
図17】実施例3の寝具用敷シーツに垂直方向の荷重を掛けた後の部分断面写真(スケール1mm)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発明者らは、寝具用敷シーツの垂直方向の通気性及び水平方向の通気性を高めるために鋭意検討した。その結果、寝具用敷シーツにおいて、ベースを経編のメッシュ生地で形成し、袋状に折り返された経編のメッシュ生地で形成されたひだを垂直方向に伸びるようにして複数連続的に形成することで凸部とし、連続する複数のひだが一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なるようにすることで、垂直方向の通気性及び水平方向の通気性に優れ、汗を蒸散しやすい、特に就寝時に汗を蒸散しやすい寝具用敷シーツが得られることを見出した。ベース及び凸部のいずれもメッシュ生地で形成されることで垂直方向の通気性が良好になる。また、複数の連続するひだが一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なることで、垂方向の荷重すなわち上から荷重が掛かった場合でも、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なった状態で荷重を受けることになるため、ひだが完全に潰れず、凸部を維持し、ベースとの凹凸構造により、荷重面とシーツの表面の間に水平方向の隙間(以下において、単に水平方向の隙間とも記す。)を有することになり、水平方向の通気性が良好になる。本明細書において、寝具用敷シーツの長さ方向とは長手方向を意味し、幅方向とは長手方向に直交する方向を意味し、垂直方向とは厚さ方向を意味し、水平方向とは垂直方向に直交する方向を意味し、上下方向は厚さ方向と一致する。また、本明細書において、複数とは2以上を意味する。本明細書において、凸部間の間隔は、隣接する凸部間の距離を意味し、ひだの長さは、袋の長手方向の大きさを意味する。
【0010】
寝具用敷シーツにおいて、凸部は、幅方向に沿って2列以上配置されていればよく、特に限定されない。身体の接する面積と水平方向の通気の観点から、身体の一部分への効果を期待する上においては、凸部は2列以上であることが好ましく、身体全体への効果を期待する上においては、4列以上であることがより好ましく、10列以上であることがさらに好ましい。また、垂直方向の通気の観点から、凸部は120列以下であることが好ましく、110列以下であることがより好ましく、100列以下であることがさらに好ましい。また、凸部は、寝具用敷シーツの幅方向に沿って配置されればよく、寝具用敷シーツの幅方向の全長をAとした場合、凸部の幅方向の長さは、A×10%~A×100%であることが好ましい。凸部の幅方向の長さが、A×10%以上ある場合、寝具用敷シーツ上に人が横たわった際、四肢、頚椎等の身体の幅が小さい箇所の通気性を確保する事ができる。凸部の幅方向の長さは、同じ列において、凸部が幅方向に断続的に配置された場合、合算した長さを表す。
【0011】
各凸部において、複数のひだが垂直方向に伸びて連続的形成されることにより、垂直方向の荷重が掛かり、複数のひだが一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なる。寝具用敷シーツに垂直方向の荷重が掛かる場合、複数のひだは必ず、一方向、すなわち編立時に重力方向に倒れる。
【0012】
各凸部において、ひだの数は、2以上あればよく、特に限定されないが、垂直方向の通気性及び生産性の観点から、2~20であることが好ましく、より好ましくは2~15であり、さらに好ましくは2~10であり、さらにより好ましくは2~8であり、さらにより好ましくは2~6であり、さらにより好ましくは2~5である。また、各列の凸部において、ひだの数は同じでもよく、異なってよい。複数の連続するひだからなる凸部は、例えば、タック編みにて袋状のひだを連続して2つ以上形成することで形成することができる。
【0013】
寝具用敷シーツにおいて、凹凸感をより高め、水平方向の隙間の面積を大きくする観点から、各凸部において、凸部間の間隔PA各々のひだの長さPBの比PA/PB(以下において、単にPA/PBとも記す。)は、1より大きく25未満であることが好ましく、1.5~20であることがより好ましく、1.8~15であることがさらに好ましく、2.2~10であることがさらにより好ましい。
【0014】
各凸部において、各ひだの長さは、PA/PBが上述した範囲を満たす範囲内で適宜決めればよく、例えば、2~10mm程度であることが好ましく、2.5~8mm程度であることがより好ましく、3~7mm程度であることがさらに好ましく、3~6mm程度であることが特に好ましい。寝具用敷シーツに垂直方向の荷重がかかった場合に、荷重面と寝具用敷シーツの表面の間に水平方向の隙間を形成しやすい観点から、各凸部において、複数のひだは一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なるが、完全には覆わない、すなわち部分的に重なることが好ましい。また、各凸部において、各ひだ(袋部)の長さは、複数のひだが一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と部分的に重なる範囲内で、できるだけ短い方が、生地の目付も軽くなり生産効率も向上する。隣接するひだの長さの比は、1:0.3~1:3であることが好ましく、1:0.5~1:2であることがより好ましい。
【0015】
各凸部において、複数のひだは、長いひだAと短いひだBを含み、ひだAの間にひだBが存在するか又はひだBの間にひだAが存在することが好ましい。このような構造であることで、寝具用敷シーツに上から荷重をかかった場合に、荷重面と寝具用敷シーツの表面の間に形成された水平方向の隙間が大きくなりやすい。
【0016】
凸部間の間隔は、特に限定されないが、例えば、5~100mm程度であることが好ましく、8~80mm程度であることがより好ましく、10~60mm程度であることがさらに好ましく、12~40mm程度であることがさらにより好ましく、12~30mmであることがさらにより好ましい。凸部間の間隔が狭い方が単位長さ当たりの凸部が多くなり、凹凸感が増すことになる。凸部間の間隔が10cmを超える場合、寝具用敷シーツ上に人が横たわった際、身体と寝具用敷シーツの密着性が高まり、水平方向及び垂直方向の通気性を感じにくい恐れがある。凸部間の間隔が0.5cmを下回る場合、ひだが密集することにより、メッシュ生地の通気性が阻害される恐れがある。
【0017】
寝具用敷シーツは、ベースの経編のメッシュ生地及び幅方向に配列されている複数列の凸部に加えて、凸部を形成しないひだを含んでもよい。凸部を形成しないひだとは、一つのみのひだや、2つ以上のひだではあるが、上から荷重が掛かり、複数のひだが一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重ならないひだを意味する。
【0018】
寝具用敷シーツは、凸部間の間隔PA、ひだの長さPB、及びPA/PBの好ましい範囲を満たす箇所を含めばよく、全ての箇所に幅方向に配列された複数例の凸部が存在する必要、及び幅方向に配列された複数例の凸部の全てが上述した凸部間の間隔PA、ひだの長さPB、及びPA/PBの範囲を満たす必要はない。例えば、水平方向及び垂直方向の通気性をより向上させる観点から、寝具用敷シーツ上に人が横たわった際、身体が接する面積の50%以上に幅方向に配列された複数例の凸部が存在し、これらの凸部が上述した凸部間の間隔PA、ひだの長さPB、及びPA/PBの好ましい範囲を満たすことが望ましく、身体が接する面積の60%以上に幅方向に配列された複数例の凸部が存在し、これらの凸部が上述した凸部間の間隔PA、ひだの長さPB、及びPA/PBの好ましい範囲を満たすことがより望ましく、身体が接する面積の70%以上に幅方向に配列された複数例の凸部が存在し、これらの凸部が上述した凸部間の間隔PA、ひだの長さPB、及びPA/PBの好ましい範囲を満たすことがさらに望ましく、身体が接する面積の80%以上に幅方向に配列された複数例の凸部が存在し、これらの凸部が上述した凸部間の間隔PA、ひだの長さPB、及びPA/PBの好ましい範囲を満たすことがさらに望ましく、身体が接する面積の90%以上に幅方向に配列された複数例の凸部が存在し、これらの凸部が上述した凸部間の間隔PA、ひだの長さPB、及びPA/PBの好ましい範囲を満たすことがさらにより望ましい。
【0019】
寝具用敷シーツは、垂直方向の通気性に優れ、汗、特に就寝時の寝汗の蒸散性がより向上する観点から、JIS L 1096 8.26A:2010法(フラジール形法)にて測定される通気度が150cm3/(cm2・s)以上であることが好ましく、160cm3/(cm2・s)以上であることがより好ましく、170cm3/(cm2・s)以上であることがさらに好ましく、180cm3/(cm2・s)以上であることが特に好ましい。また、生地の破裂強度観点から、JIS L 1096 8.26A:2010法(フラジール形法)にて測定される通気度が800cm3/(cm2・s)以下であることが好ましく、450cm3/(cm2・s)以下であることがより好ましく、400cm3/(cm2・s)以下であることがさらに好ましく、350cm3/(cm2・s)以下であることが特に好ましい。
【0020】
寝具用敷シーツは、水平方向の通気性に優れ、汗、特に就寝時の寝汗の蒸散性がより向上する観点から、5mmHgの垂直方向の荷重を掛けた際、荷重面と寝具用敷シーツの表面の間に水平方向の隙間があり、水平方向の基準長さ10cmかつ垂直方向の基準長さ2cmの単位面積200cm2あたりの隙間面積(以下、単に、単位面積当たりの隙間面積とも記す。)が10mm2以上であることが好ましく、20mm2以上であることがより好ましく、30mm2以上であることがさらに好ましく、40mm2以上であることが特に好ましい。また、単位面積当たりの隙間面積は500mm2以下であることが好ましく、400mm2以下であることがより好ましく、300mm2以下であることがさらに好ましく、100mm2以下であることが特に好ましい。単位面積当たりの隙間面積が500mm2以上の場合は、荷重がかかっても凸部を構成するひだがほとんど潰れず、凹凸構造が強く肌あたりが悪くなる恐れがある。ここで、5mmHgとは、仰臥時に人の荷重により、肩、腕、及びふくらはぎ等の部位に掛かる程度の圧力であり、5mmHgの垂直方向の荷重を掛けることで、人が寝具用敷シート上に寝た際を模擬することができる。すなわち、5mmHgの垂直方向の荷重を掛けた際、荷重面と寝具用敷シーツの表面の間に水平方向の隙間があるとは、人が寝具用敷シート上に寝た際に人と寝具用敷シーツの間に水平方向の隙間があることを意味する。本明細書において、単位面積当たりの隙間面積は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【0021】
経編のメッシュ生地を構成する繊維には、特に限定されないが、吸湿性に優れる観点から、親水性繊維を用いてもよく、水分拡散性の観点から、親水性繊維と疎水性繊維を併用してもよい。親水性繊維としては、特に限定されないが、例えばセルロース繊維を好適に用いることができる。セルロース繊維は、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維及び半合成再生セルロース繊維のいずれでもよい。天然セルロース繊維としては、例えば、綿、麻等が挙げられる。再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、及びリヨセル等が挙げられる。半合成再生セルロース繊維としては、例えば、アセテート、及びトリアセテート等が挙げられる。疎水性繊維としては、特に限定されないが、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維(ナイロン繊維とも称される)等を用いることができる。
【0022】
経編のメッシュ生地は、汗、特に就寝時の寝汗を吸収しやすく、かつ蒸散しやすい観点から、セルロース繊維糸と疎水性繊維糸で構成されることが好ましく、綿糸とポリエステルマルチフィラメント糸で構成されていることがより好ましい。セルロース繊維糸は、繊度が143~565dtex(130~550デニール)でもよく、綿糸の場合は、16~40番手のものを適宜用いることができる。綿糸は、カード糸でもよく、コーマ糸でもよい。ポリエステルマルチフィラメント糸は、水分拡散性をより高める観点から、ハイカウント糸を含むことが好ましい。ハイカウント糸は、一般的に、単繊維繊度が1.1dtex(1デニール)以下のマルチフィラメント糸を意味し、単繊維繊度が1.1dtex(1デニール)以下のポリエステルマルチフィラメント糸やポリアミドマルチフィラメント糸等が挙げられ、単繊維繊度が1.1dtex以下のポリエステルマルチフィラメント糸が好ましく、単繊維繊度が0.11~0.55dtexのポリエステルマルチフィラメント糸がより好ましい。ハイカウント糸は、総繊度が33~550dtexでもよい。
【0023】
ベースの経編のメッシュ生地は、耐久性の観点から、単繊維繊度が1.1dtexを超え、総繊度が77~330dtexの引裂き強度を有するマルチフィラメント糸を含むことが好ましく、このようなマルチフィラメント糸としては、ポリエステルマルチフィラメント糸やポリアミドマルチフィラメント糸等が挙げられる。
【0024】
寝具用敷シーツの目付は特に限定されないが、例えば、生地の破裂強度と通気の観点から、80~400g/m2でもよく、100~350g/m2でもよい。
【0025】
寝具用敷シーツは、タテ編機を使用して、メッシュ状地組織を編成するとともに、その地組織の編み付けと送り出しを行うことで袋状のひだを形成することで作製することができる。編み付けと送り出しを一定コースごとに交互に繰り返すことにより、ベース部分とひだ部分を形成することができる。
【0026】
具体的には、寝具用敷シーツは、4枚筬以上のタテ編機を使用して編成してもよい。タテ編機としては、トリコット編機を好適に用いることができる。後筬L1とL2に供給した糸でメッシュ状地組織を編成し、前筬L3(L4)に供給した糸で編付け又は糸の送り出しを行う。L1とL2に供給した糸でメッシュ状地組織を編成し、L3(L4)に供給した糸で編付けを行うことで、L1、L2及びL3(L4)に供給した糸で編成されたベースの経編のメッシュ生地ができる。L1とL2に供給した糸のみで編成を行い、L3は糸の送り出しのみを行い、L3の糸の送り出し量を、少なくすることでL1とL2に供給した糸で編成したメッシュ状地組織部分がたわみ、袋状のひだができる。ひだはL1とL2に供給した糸で編成されたメッシュ状地組織で形成され、ひだの周囲長は編立のコース数に依存し、ひだ部分のL1とL2のコース数は10~50コースが望ましく、10~20コースがより望ましい。その後、数コースL1とL2に供給した糸でメッシュ状地組織を編成し、L3(L4)に供給した糸で編付けを行うことで、L1、L2及びL3(L4)に供給した糸でベースの経編のメッシュ生地を編成した後、次のひだを編成する。ひだとひだの間のベースの経編のメッシュ生地は、コース数が多いほどひだとひだの間隔が広くなり、ひだの間隔が開いてしまう。凸部となる連続したひだを形成するには、コース数は少ないほうが良いが、1コースだと滑脱が起こりやすくなるため、2コース以上が望ましい。凸部の滑脱を抑制するため、ひだとひだの間に2コース以上分のメッシュ組織を入れる場合、全てのひだの長さが2mm未満であると、複数の連続するひだが一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重ならず、通気性の効能を得ることができない。ひだとひだの間のベースの経編のメッシュ生地のコース数は、ひだの連続性及び滑脱を抑制する観点から、2~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、2~10であることがさらに好ましい。ひだを編成するときのL1とL2の糸のふり幅を大きくすることで、コース当たりの糸量が増え、質量を持たせ、ひだの部分にこしを持たせてもよい。例えば、ひだを編成するときのL1とL2の糸のふり幅はベースの経編のメッシュ生地におけるメッシュ状地組織部分のふり幅より大きくしてもよく、1.2倍以上又は1.5倍以上にしてもよい。
【0027】
より具体的には、後ろ筬(L1、L2)には、上述したセルロース繊維糸好ましくは綿糸、又は、上述したセルロース繊維糸好ましくは綿糸及びハイカウント糸を供給して、目の粗いメッシュ状地組織を編成するとともに、前筬(L3、L4)には引裂き強度を有するマルチフィラメント糸を供給し、メッシュ状地組織への糸の編みつけと糸の送り出しを繰り返すことで、表裏の少なくとも一面にプリーツ状ひだ(凸上畝)が形成された経編のメッシュ生地を得ることができる。メッシュ状地組織において、メッシュのサイズはヨコ×タテで0.3mm×0.5mm~4.5mm×6.5mmでもよく、0.4mm×0.7mm~1.5mm×2.5mmでもよい。本明細書において、「メッシュ状地組織におけるメッシュのサイズ」は、メッシュ状地組織をマイクロウォッチャー(例えば、キーエンス社製、型番「VHX-8000」)で観察し、任意に選択した5個のメッシュのヨコ及びタテのそれぞれの最大サイズを測定し、それらを平均したものである。
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の1以上の実施形態に係る寝具用敷シーツを説明する。しかし、本発明は、これらの図面に示されるものに限定されない。図面において、同一符号は同一又は相当部分を示しており、繰り返し説明は省略する。
【0029】
図1は本発明の1例の寝具用敷シーツの模式的斜視図であり、
図2は同寝具用敷シーツの模式的断面図である。該実施形態の寝具用敷シーツ1は、経編のメッシュ生地10で構成されており、幅方向に配列されている複数列の凸部2、及びベースの経編のメッシュ生地3を含む。凸部2は、垂直方向に伸びて連続する複数のひだ2a、2b及び2cで形成され、複数のひだ2a、2b及び2cは、袋状に折り返された経編のメッシュ生地で形成される。ひだの長さは、袋の長さを意味し、
図2において、PBで示されている。凸部間の間隔は、隣接する凸部間の間隔を意味し、例えば、ひだを立ち上げた状態の寝具用敷シーツの断面において、隣接する凸部間の距離を測定すればよく、
図2において、PAで示されている。
【0030】
該実施形態において、凸部2は、垂直方向に伸びて連続する複数のひだ2a、2b及び2cで形成され、複数のひだが一方向(編立時の重力方向)に倒れた場合、上に位置するひだ2aの袋部が下に位置するひだ2bの袋部と部分的重なり、上に位置するひだ2bの袋部が下に位置するひだ2cの袋部と部分的に重なることで、
図3に示すように、垂直方向の荷重100が掛かり、複数のひだ2a、2b及び2cが一方向(編立時の重力方向)に倒れた場合でも、凸部2とベースの経編のメッシュ生地3による凹凸構造が維持され、荷重面と寝具用敷シーツの表面の間に水平方向の隙間20が形成され、水平方向の通気性に優れる。また、凸部間の間隔PAと各々のひだの長さPBの比PA/PBが1より大きく25未満であることにより、垂直方向の荷重100が掛かり、複数のひだが一方向(編立時の重力方向)に倒れた場合でも、凸部2間の間隔が維持されやすい。該実施形態において、各凸部は3つのひだで形成されるが、ひだの数は2以上であればよく、2~4であることが望ましい。
【0031】
図4は本発明の他の1例の寝具用敷シーツの模式的断面図である。該実施形態の寝具用敷シーツの凸部12は、垂直方向に伸びて連続する複数のひだ12a、12b及び12cで形成され、複数のひだ12a、12b及び12cが一方向(編立時の重力方向)に倒れた場合、上に位置するひだ12aの袋部が下に位置するひだ12bの袋部を完全に覆い、上に位置するひだ12bの袋部が下に位置するひだ12cの袋部と部分的に重なることで、垂直方向の荷重が掛かり、複数のひだが一方向(編立時の重力方向)に倒れた場合でも、凸部12とベースの経編のメッシュ生地13による凹凸構造が維持され、荷重面と寝具用敷シーツの表面の間に水平方向の隙間20が形成され、水平方向の通気性に優れる。また、凸部間の間隔PAと各々のひだの長さPBの比PA/PBが1より大きく25未満であることで、垂直方向の荷重100が掛かり、複数のひだが一方向(編立時の重力方向)に倒れた場合でも、凸部12間の間隔が維持されやすい。
【0032】
寝具用敷シーツにおいて、垂直方向の通気性の観点から、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部を完全に覆うことなく、部分的に重なることが好ましい。
【0033】
寝具用敷シーツは、例えば、マットレスや敷布団の等の寝具の敷シーツとして好適に用いることができる。
【実施例0034】
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0035】
まず、実施例及び比較例で用いた測定評価方法を説明する。
【0036】
(隙間面積)
生地を水平な台の上に置き、台紙を生地の表面に配置して垂直方向(寝具用敷用シーツの厚さ方向)に5mmHg(666.6Pa)の荷重を掛けた際の荷重面(台紙の押し付け面)と生地の表面の間に生じる水平方向の隙間について、水平方向の基準長さ10cmかつ垂直方向の基準長さ2cmの単位面積200cm
2当たりの面積を測定し、隙間面積とした。
隙間面積は、具体的には、下記のとおりに測定した。
(1)サンプル生地(幅×長さ=20cm×20cm)を水平な台の上に置き、台紙を寝具用敷用シーツの表面に配置して垂直方向(寝具用敷用シーツの厚さ方向)に5mmHg(666.6Pa)の荷重を掛けた。
(2)台紙の後にライトを設置した後、部屋を暗室にし、ライトが設置された反対側から、サンプル生地の10cmの水平方向の基準長さ、及び直径8mmの白色の基準シール(基準面積)が画角に入るように撮影を行った。水平方向の基準長さは、所定の凸部の左端部から水平方向10cmの長さである。
(3)撮影した画像を画像変換ソフトのJtrimで読み込み、基準長さの印に合わせて画像をトリミングした。
図5に、1例のトリミング後の画像を示した。
(4)トリミング後の画像を、ガンマ値0.1でガンマ補正した後、2階調化の機能を用いて画像を黒と白の2色の白黒画像に変換した。これにより、光が漏れている隙間部分は白、それ以外の部分は黒に画像変換した。その後、ヒストグラム表示で白色画素数を確認することで、水平方向の基準長さ10cmかつ垂直方向の基準長さ2cmの単位面積200cm
2あたりの隙間部分のピクセル数を算出した。
図6に、単位面積200cm
2を有する白黒画像を示した。ここで、垂直方向の基準長さは、生地の上に置いた台紙の底辺から上下に1cmmずつの計2cmmである。
図6において、L1は水平方向の基準長さを意味し、H1は台紙の底辺から上の垂直方向の1cmの長さを意味し、H2は台紙の底辺から下の垂直方向の1cmの長さを意味する。
(5)(3)でトリミング後の画像を、隙間部分が入らず、基準シールが入るように再度トリミングし、ガンマ値0.1でガンマ補正した後、2階調化の機能を用いて画像を黒と白の2色の白黒画像に変換した。これにより、基準シールのみが白、それ以外の部分は黒に画像変換した。その後、ヒストグラム表示で白色画素数を確認することで、基準シールのピクセル数を算出した。
図7に、基準シールを含む白黒画像を示した。
(6)基準シールの面積を基準シールのピクセル数で割ることで、1ピクセルあたりの面積を算出し、隙間部分のピクセル数とかけ合わせることで、隙間面積を算出した。
(7)(1)~(6)の測定をサンプル生地の3箇所の異なる部分に対して行い、その平均値を求め、該サンプル生地の隙間面積とした。
【0037】
(ひだの長さ)
ひだの長さPBはひだの袋部分にノギスを差し込みその長さを計測した。
【0038】
(凸部間の間隔PA)
凸部を構成するひだを立ち上げた後、隣接する凸部における隣接するひだ間の距離を計測し、凸部間の間隔PAとした。
【0039】
(垂直方向の通気度)
JIS L1096 8.26A:2010法(フラジール形法)にて通気度を測定した。
【0040】
(水平方向の通気性)
(1)蒸気試験装置を作製した。蒸気試験装置の仕組みとしては、スイッチを入れると加湿器の蒸気が該装置内に流れ込み、蒸気試験装置の底辺とサンプル生地の表面の間に水平方向の隙間があれば該隙間部から加湿器の蒸気が漏れる仕組みとなっている。
(2)蒸気試験装置を、サンプル生地を水平な台の上に置き、該蒸気試験装置の平らな底辺がサンプル生地の表面に接するように配置した。該蒸気試験装置によるサンプル生地への垂直方向の荷重は5mmHg(666.6Pa)となるようにした。
(3)蒸気試験装置にスイッチを入れ、蒸気の漏れの程度を下記の基準で評価した。
A:蒸気が漏れている
B:蒸気の漏れがない。
【0041】
(水分変化量)
(1)直径5cmにカットしたろ紙(アドバンテック東洋社製、品名「定性ろ紙No.1」)をイオン交換水をいれたビーカーに完全に漬かるようにいれ、10分間放置した。
(2)側地付きブレスエアー(登録商標)マットレスの上にサンプル生地を乗せ、サンプル生地の上に十分に湿潤させたろ紙(重量:W1)を乗せ、その上からガラス板をのせ30分後放置した後、ろ紙の重量(W2)を測定した。ガラス板によるサンプル生地への垂直方向の荷重は5mmHg(666.6Pa)となるようにした。
(3)下記式にて、ろ紙の水分変化量を算出した。上記において、ガラス板は人を、濡れたろ紙は寝汗を模擬したものであり、ろ紙の水分変化量が大きい程、サンプル生地が汗の蒸散性に優れることを意味する。
水分変化量(g)=W1-W2
【0042】
(実施例1)
4枚筬のタテ編機(トリコット編機)を用い、
図8に示す編組織図に基づいて、ひだを有する経編のメッシュ生地を作製した。
図9は実施例1のひだを有する経編のメッシュ生地をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、型番「VHX-S770」)観察した表面写真(20倍)である。具体的には、後ろ筬(L1、L2)には、綿糸(30番手)とハイカウント糸(ポリエステルマルチフィラメント糸、70デニール、フィラメント数216本、単繊維繊度0.32デニール)を供給して、目の粗いメッシュ状地組織(メッシュのサイズ:ヨコ×タテ=0.86mm×1.37mm)を編成するとともに、前筬(L3)にはポリエステルマルチフィラメント糸(300デニール、フィラメント数144本)を供給し、表面にひだの長さPB1、PB2及びPB3がそれぞれ4mm、3mm及び4mmの連続したひだを3つ(22a、22b、22c)形成しつつ、凸部の間隔PAが20mmとなるようにメッシュ状地組織への糸の編みつけと糸の送り出しを繰りし、ひだを有する経編のメッシュ生地(目付230g/m
2)を作製した。なお、隣接凸部22の間には、凸部を構成しないひだ4が形成されている。
図8及び10に示すように、ベースの経編のメッシュ生地3は、L1、L2、L3に供給した糸で編成され、
図8及び11に示すように、ひだ22a、22b及び22cは、L1、L2に供給した糸で編成され、ひだとひだの間のベースの経編のメッシュ生地もL1、L2、L3に供給した糸で編成される。なお、凸部を構成しないひだ4は、L1、L2に供給した糸で編成される。
図10及び11は、それぞれ、ベースの経編のメッシュ生地部分及びひだ部分の表面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、型番「VHX-S770」)観察した表面写真である。
【0043】
(実施例2)
ひだの長さPB1、PB2及びPB3がそれぞれ4mm、6mm及び4mmの連続したひだを3つ形成しつつ、凸部の間隔PAが20mmとなるようにメッシュ状地組織への糸の編みつけと糸の送り出しを繰り返した以外は、実施例1と同様にしてひだを有する経編のメッシュ生地(目付250g/m2)を作製した。
【0044】
(実施例3)
ひだの長さPB1、PB2及びPB3がそれぞれ6mm、5mm及び6mmの連続したひだを3つ形成しつつ、凸部の間隔PAが24mmとなるようにメッシュ状地組織への糸の編みつけと糸の送り出しを繰り返した以外は、実施例1と同様にしてひだを有する経編のメッシュ生地(目付260g/m2)を作製した。
【0045】
(実施例4)
ひだの長さPB1、PB2及びPB3がそれぞれ10mm、5mm及び10mmの連続したひだを3つ形成しつつ、凸部の間隔PAが20mmとなるようにメッシュ状地組織への糸の編みつけと糸の送り出しを繰り返した以外は、実施例1と同様にしてひだを有する経編のメッシュ生地(目付340g/m2)を作製した。
【0046】
(比較例1)
ひだの長さPB1、PB2及びPB3がいずれも1mmの連続したひだを3つ形成しつつ、凸部間の間隔が25mmとなるようにメッシュ状地組織への糸の編みつけと糸の送り出しを繰り返した以外は、実施例1と同様にしてひだを有する経編のメッシュ生地(目付200g/m2)を作製した。
【0047】
(比較例2)
長さが1mmのひだを1つ形成しつつ、ひだ間の間隔が25mmとなるようにメッシュ状地組織への糸の編みつけと糸の送り出しを繰り返した以外は、実施例1と同様にしてひだを有する経編のメッシュ生地(目付190g/m2)を作製した。
【0048】
(比較例3)
市販の綿100質量%の二重織シーツを用いた。
【0049】
(比較例9)
市販の接触冷感シーツ(冷感性を高めるナイロン糸を用いた接触冷感シーツ)、中綿入り、表生地:ナイロン100質量%、目付100g/m2;充填物:上層はポリエステル100質量%、下層はポリエステル75質量%及びアクリレート25質量%からなる;裏生地:ポリエステル100質量%、目付110g/m2)を用いた。
【0050】
実施例及び比較例の生地(シーツ)の隙間面積、垂直方向の通気度、水平方向の通気性、及び吸水性を上述したとおりに測定評価し、その結果を下記表1に示した。下記表1には、繊維組成も併せて示した。
【0051】
【0052】
図12~
図17は、いずれも、生地の断面をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、型番「VHX-S770」)観察した断面写真である。
図12に、実施例1の寝具用敷シーツの凸部を構成する複数のひだを立ち上げたときの断面写真を示し、
図13に、同寝具用敷シーツに上から荷重を掛けた際の凸部を構成する複数のひだの断面写真を示した。
図14に、実施例2の寝具用敷シーツの凸部を構成する複数のひだを立ち上げたときの断面写真を示し、
図15に、同寝具用敷シーツに上から荷重を掛けた際の凸部を構成する複数のひだの断面写真を示した。
図16に、実施例3の寝具用敷シーツの凸部を構成する複数のひだを立ち上げたときの断面写真を示し、
図17に、同寝具用敷シーツに上から荷重を掛けた際の凸部を構成する複数のひだの断面写真を示した。
図13、15及び17に示されているように、実施例1~3において、上から荷重が掛かった際、凸部を形成する複数の連続するひだは一方向に倒れ、上のひだの袋部が下のひだの袋部と重なっている。
【0053】
上記表1から分かるように、実施例1~4の生地(シーツ)は、垂直方向の荷重が掛かった際、荷重面と生地の表面の間に水平方向の隙間があり、水平方向の通気性が良好であった。また、実施例1~4の生地(シーツ)は、経編のメッシュ生地で構成されており、垂直方向の通気性も良好であった。なお、上から荷重が掛かった際、複数のひだが一方向に倒れた際、一番上に位置するひだの袋部が真ん中のひだの袋部を完全に覆っている実施例4に比べて、複数のひだが一方向に倒れた際、一番上に位置するひだの袋部が真ん中のひだの袋部と部分的に重なり、かつ真ん中のひだの袋部が一番下のひだの袋部と部分的に重なっている実施例1~3の方が、隙間面積が大きく、垂直方向の通気性により優れていた。
【0054】
一方、幅方向に配列された複数列の凸部を有し、凸部が3つのひだが形成されているが、複数のひだが一方向に倒れた際、上に位置するひだの袋部が下に位置するひだの袋部と重なっていない比較例1の生地は、垂直方向の荷重が掛かった場合、荷重面と生地の表面の間に水平方向の隙間がほとんどなく、水平方向の通気性をほとんど有しなかった。また、ひだを有するが、複数のひだからなる凸を有しない比較例2の生地は、垂直方向の荷重が掛かった際、荷重面と生地の表面の間に水平方向の隙間がなく、水平方向の通気性を有しなかった。凸部を有しない比較例3及び4の生地は、垂直方向の荷重が掛かった際、荷重面と生地の表面の間に水平方向の隙間がなく、水平方向の通気性を有しなかった。また、比較例3及び4の生地は、メッシュ生地ではなく、垂直方向の通気性が劣っていた。
【0055】
寝汗を模擬した十分に湿潤したろ紙を用いた水分量変化確認試験において、実施例の生地(シーツ)は、比較例の生地(シーツ)に比べてろ紙の水分量変化が大きかった。これは、生地自体が吸水性に優れることと、比較例の生地に比べ、実施例の生地の方が通気性が高く、水分が早く気化されたことによる効果である。このことから、実施例の生地は汗を素早く吸収し、気化させることができるため、該生地をシーツとして用いた場合、夏場でも快適に寝ることができることが確認された。
【0056】
(官能評価)
2022年8月から9月の期間中にモニターによる実用評価を行った。具体的には、健康な被検者7名で(男性4名、女性3名)、2022年の8月~2022年9月の内、1週間ずつ試料を変えてモニターによる実用テストを行い、下記項目(1)~(3)について評価を行った。被検者は綿100%の半袖、半パンツを着用して就寝した。就寝環境は、室温28℃、相対湿度50%になるように空調を設定した。扇風機などにより風が直接身体にあたるのは禁止とした。結果を下記表2~4に示した。
【0057】
(項目1:夏場に快適に寝ることができたか)
3:かなり当てはまる
2:当てはまる
1:やや当てはまる
0:当てはまらない
【0058】
【0059】
(項目2:寝ころんだ時の通気を感じたか)
3:かなり感じる
2:感じる
1:やや感じる
0:感じない
【0060】
【0061】
(項目3:朝起きた時に、汗による着衣の濡れがあったか)
3:かなり濡れていた
2:濡れていた
1:湿っている程度
0:濡れていなかった
【0062】
【0063】
上記表2~4のデータから分かるように、比較例の生地をシーツとして用いた場合に比べて、実施例の生地をシーツとして用いた場合の方が、汗を素早く吸収し、気化させることができ、夏場でも快適に寝ることができる。
前記寝具用敷シーツは、セルロース繊維及びポリエステル繊維を含み、寝具用敷シーツを100質量%とした場合、前記セルロース繊維の含有量は50~80質量%である請求項1又は2に記載の寝具用敷シーツ。
前記寝具用敷シーツは、5mmHgの垂直方向の荷重を掛けた際、荷重面と前記寝具用敷シーツの表面の間に水平方向の隙間があり、水平方向の基準長さ10cmかつ垂直方向の基準長さ2cmの単位面積200cm2あたりの隙間面積が10~500mm2である請求項1又は2に記載の敷用シーツ。