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特開2024-160827媒体搬送装置、判定方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160827
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、判定方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/12 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B65H7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076234
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】堺 雅晃
【テーマコード(参考)】
3F048
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AA02
3F048AA04
3F048AA05
3F048AA08
3F048AB00
3F048AB01
3F048AB02
3F048BA13
3F048BB02
3F048BB09
3F048CC01
3F048DA06
3F048DC00
3F048DC12
3F048DC18
3F048EA00
3F048EB22
3F048EB23
(57)【要約】
【課題】媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定することが可能な媒体搬送装置、判定方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】媒体搬送装置100は、媒体を搬送する搬送部112、113、116、117、120、121と、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出する検出部152と、媒体の重送が発生しているか否かを判定する判定部153と、を有し、判定部153は、シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出する検出部と、
媒体の重送が発生しているか否かを判定する判定部と、を有し、
前記判定部は、前記シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記シワ又は折り目の度合いが第1閾値より大きい場合は、前記シワ又は折り目の度合いが前記第1閾値以下である場合より、媒体の重送が発生したと判定しにくくなるように前記判定基準を変更する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記シワ又は折り目の度合いが前記第1閾値より大きい第2閾値より大きい場合、媒体の搬送を停止し、又は、異常の発生を通知する制御部をさらに有する、請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記判定部により媒体の重送が発生したと判定された場合、媒体の搬送を停止し、又は、異常の発生を通知する制御部をさらに有する、請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
受信した音に応じた音信号を出力する音受信器をさらに有し、
前記検出部は、前記音信号に基づいて、前記シワ又は折り目の度合いを検出する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
超音波を出力する超音波発信器と、
搬送路を挟んで前記超音波発信器と対向して配置され且つ受信した超音波に応じた超音波信号を出力する超音波受信器と、をさらに有し、
前記検出部は、前記超音波信号に基づいて、前記シワ又は折り目の度合いを検出し、
前記判定部は、前記超音波信号に基づいて、媒体の重送が発生しているか否かを判定する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
媒体の重なりを検出するためのセンサをさらに有し、
前記判定部は、前記センサからの出力信号に基づく算出値を閾値又は所定範囲と比較することにより、媒体の重送が発生しているか否かを判定し、
前記判定部は、前記閾値、前記所定範囲、前記算出値を前記閾値若しくは前記所定範囲と比較する頻度、又は、前記算出値の算出方法を変更することにより、前記判定基準を変更する、請求項1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
媒体の重なりを検出するためのセンサをさらに有し、
前記判定部は、前記センサからの出力信号に基づいて、媒体の重送が発生しているか否かを判定し、
前記判定部は、前記センサの制御方法を変更することにより、前記判定基準を変更する、請求項1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
搬送部により、媒体を搬送し、
搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出し、
媒体の重送が発生しているか否かを判定することを含み、
前記判定において、前記シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する、
ことを特徴とする判定方法。
【請求項10】
媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出し、
媒体の重送が発生しているか否かを判定することを前記媒体搬送装置に実行させ、
前記判定において、前記シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する、
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、判定方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、媒体を搬送しながら撮像するスキャナ等の媒体搬送装置は、複数の媒体が重なって搬送される重送が発生したか否かを判定し、重送が発生した際には媒体の搬送を停止し又は重送の発生を通知する機能を有している。
【0003】
ドキュメントを保持する入力トレイ内のドキュメントの画像を取得し、シワが検出されると、超音波パラメータを最適化するドキュメントスキャナが開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2012/0019841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体搬送装置では、媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定することが可能な媒体搬送装置、判定方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出する検出部と、媒体の重送が発生しているか否かを判定する判定部と、を有し、判定部は、シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する。
【0008】
また、本発明の一側面に係る判定方法は、搬送部により、媒体を搬送し、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出し、媒体の重送が発生しているか否かを判定することを含み、判定において、シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する。
【0009】
また、本発明の一側面に係る制御プログラムは、媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出し、媒体の重送が発生しているか否かを判定することを媒体搬送装置に実行させ、判定において、シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、媒体搬送装置、判定方法及び制御プログラムは、媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
図3】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
図4】記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
図5】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
図6】検出処理の動作の例を示すフローチャートである。
図7】(A)、(B)、(C)は、音信号の特性を示すグラフである。
図8】判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図9】(A)、(B)、(C)は、超音波信号の特性を示すグラフである。
図10】他の媒体搬送装置における処理回路250の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置、判定方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0013】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙又はカード等である。また、媒体は、ラベル(シール)又は小型紙片(写真、切り抜き、切手、印紙等)等の貼付物が貼付された媒体を含む。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0014】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0015】
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。
【0016】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
【0017】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0018】
図1において矢印A1は媒体搬送方向を示し、矢印A2は媒体搬送方向と直交する幅方向を示し、矢印A3は媒体搬送方向及び幅方向と直交する高さ方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A1の下流のことをいう。
【0019】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0020】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、給送ローラ112、分離ローラ113、マイクロフォン114、超音波センサ115、第1搬送ローラ116、第2搬送ローラ117、第2媒体センサ118、撮像装置119、第3搬送ローラ120、第4搬送ローラ121等を有している。各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。その場合、各ローラは、それぞれ幅方向A2に間隔を空けて並べて配置される。
【0021】
媒体搬送装置100は、いわゆるストレートパスを有する。下側筐体101の上面は、媒体の搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は、媒体の搬送路の上側ガイド107bを形成する。
【0022】
第1媒体センサ111は、給送ローラ112及び分離ローラ113より上流側に配置される。第1媒体センサ111は、接触検出センサを有し、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。第1媒体センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。なお、第1媒体センサ111は接触検出センサに限定されず、第1媒体センサ111として、光検知センサ等の、媒体の有無を検出可能な他の任意のセンサが使用されてもよい。
【0023】
給送ローラ112は、下側筐体101に設けられ、載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する。分離ローラ113は、いわゆるブレーキローラ又はリタードローラであり、上側筐体102に設けられ、給送ローラ112に対向して配置される。給送ローラ112及び分離ローラ113は、媒体を分離する分離部として機能する。
【0024】
マイクロフォン114は、音受信器の一例である。マイクロフォン114は、給送ローラ112及び分離ローラ113より下流側且つ第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117より上流側、特に超音波センサ115より上流側に配置される。マイクロフォン114は、媒体搬送路の近傍、特に分離部の近傍に設けられ、媒体が搬送中に発生する音(可聴音)を受信(集音)し、受信した音に応じたアナログの音信号を生成して出力する。なお、マイクロフォン114は、デジタルの音信号を生成して出力してもよい。マイクロフォン114は、給送ローラ112及び分離ローラ113の下流側に、上側筐体102内部のフレーム108に固定されて配置される。媒体が搬送中に発生する音をより的確にマイクロフォン114が集音できるように、上側ガイド107bのマイクロフォン114に対向する位置には穴109が設けられている。
【0025】
超音波センサ115は、媒体の重なりを検出するためのセンサの一例である。超音波センサ115は、給送ローラ112及び分離ローラ113より下流側且つ第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117より上流側に配置される。超音波センサ115は、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置された超音波発信器115a及び超音波受信器115bを含む。超音波発信器115aは、超音波を出力(発信)する。可聴音の周波数は、20Hz以上且つ20kHz以下であり、超音波の周波数は、20kHzより大きく且つ300MHz以下である。一方、超音波受信器115bは、超音波発信器115aから出力(発信)され、媒体を通過した超音波を受信し、受信した超音波に応じた超音波信号を生成して出力する。超音波信号は、出力信号の一例であり、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置においてその媒体を透過する超音波の透過情報を示す。
【0026】
透過情報は、超音波受信器115bが受信した超音波の大きさを示す。媒体が重なっている場合は、媒体が重なっていない場合より、媒体を通過する超音波の減衰量が大きくなるため、媒体搬送装置100は、超音波信号に基づいて、媒体の重なりを検出することができる。透過情報は、超音波発信器115aが発信した超音波の位相に対する、超音波受信器115bが受信した超音波の位相のずれの大きさを示してもよい。媒体が重なっている場合は、媒体が重なっていない場合より、媒体を通過する超音波の位相のずれが大きくなるため、媒体搬送装置100は、超音波信号に基づいて、媒体の重なりを検出することができる。超音波センサ115の数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数の超音波センサ115は、幅方向A2に間隔を空けて並べて配置される。
【0027】
第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117は、給送ローラ112及び分離ローラ113より下流側に、相互に対向して配置され、給送ローラ112及び分離ローラ113によって給送された媒体を撮像装置119に搬送する。
【0028】
第2媒体センサ118は、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117より下流側且つ撮像装置119より上流側に配置され、その位置に搬送された媒体を検出する。第2媒体センサ118は、媒体搬送路に対して一方の側(例えば下側筐体101)に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置(例えば上側筐体102)に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED(Light Emitting Diode)等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。第2媒体センサ118と対向する位置に媒体が存在するときは、発光器から照射された光は媒体により遮られるため、受光器は発光器から照射された光を検出しない。受光器は、受光する光の強度に基づいて、第2媒体センサ118の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第2媒体信号を生成して出力する。
【0029】
なお、導光管の代わりに、ミラー等の反射部材が使用されてもよい。また、発光器及び受光器は、媒体搬送路を挟んで対向して設けられてもよい。また、第2媒体センサ118は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサ等により、媒体の存在を検出してもよい。
【0030】
撮像装置119は、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117より下流側且つ第3搬送ローラ120及び第4搬送ローラ121より上流側に配置される。撮像装置119は、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを含む。第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。
【0031】
第1撮像装置119aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置119aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置119aは、搬送される媒体の表面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0032】
同様に、第2撮像装置119bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置119bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、A/D変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置119bは、搬送される媒体の裏面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0033】
媒体搬送装置100は、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0034】
第3搬送ローラ120及び第4搬送ローラ121は、撮像装置119より下流側に、相互に対向して配置され、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117によって搬送された媒体を排出台104上に排出する。
【0035】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ112が図2の矢印A4の方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を媒体搬送方向A1に向かって搬送される。分離ローラ113は、媒体搬送時、図2の矢印A5の方向に回転又は停止する。給送ローラ112及び分離ローラ113の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ112と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限される(重送の防止)。
【0036】
媒体は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ116と第2搬送ローラ117の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117がそれぞれ図2の矢印A6及びA7の方向に回転することによって、第1撮像装置119aと第2撮像装置119bの間に送り込まれる。撮像装置119により読み取られた媒体は、第3搬送ローラ120及び第4搬送ローラ121がそれぞれ図2の矢印A8及びA9の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0037】
図3は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0038】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、音信号生成部130、モータ134、インタフェース装置135、記憶装置140及び処理回路150等をさらに有する。
【0039】
音信号生成部130は、音受信器の一例であり、マイクロフォン114、フィルタ131、増幅器132及びA/D変換器133等を含んでいる。フィルタ131は、マイクロフォン114から出力されたアナログの音信号に対して、予め定められた周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを適用し、増幅器132に出力する。増幅器132は、フィルタ131から出力された信号を増幅させてA/D変換器133に出力する。A/D変換器133は、増幅器132から出力された信号を所定間隔ごとにサンプリングしてデジタル変換したデジタルの音信号を生成し、処理回路150に出力する。なお、フィルタ131、増幅器132及び/又はA/D変換器133はマイクロフォン114に含まれ、マイクロフォン114がデジタルの音信号を出力してもよい。また、フィルタ131、増幅器132及び/又はA/D変換器133は処理回路150に含まれてもよい。
【0040】
モータ134は、1つ又は複数のモータを含み、処理回路150からの制御信号によって、給送ローラ112、分離ローラ113、第1搬送ローラ116、第2搬送ローラ117、第3搬送ローラ120及び第4搬送ローラ121を回転させて媒体の搬送動作を行う。なお、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117のうちの一方のローラは他方のローラに従動回転する従動ローラでもよい。また、第3搬送ローラ120及び第4搬送ローラ121のうちの一方のローラは、他方のローラに従動回転する従動ローラでもよい。
【0041】
インタフェース装置135は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有する。インタフェース装置135は、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して読取画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置135の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0042】
記憶装置140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置140には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等である。また、コンピュータプログラムは、サーバ等から配信されて記憶装置140にインストールされてもよい。
【0043】
処理回路150は、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路150として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0044】
処理回路150は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、超音波センサ115、第2媒体センサ118、撮像装置119、音信号生成部130、モータ134、インタフェース装置135及び記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路150は、モータ134の駆動制御、撮像装置119の撮像制御等を行い、入力画像を取得する。また、処理回路150は、超音波センサ115から出力された超音波信号に基づいて、媒体の重送が発生している否かを判定する。また、処理回路150は、音信号生成部130から出力された音信号に基づいて、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出し、検出した度合いに基づいて、媒体の重送が発生している否かの判定基準を変更する。
【0045】
図4は、記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【0046】
図4に示すように、記憶装置140には、制御プログラム141、検出プログラム142及び判定プログラム143が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路150は、記憶装置140に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作することにより、制御部151、検出部152及び判定部153として機能する。
【0047】
図5は、媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0048】
以下、図5に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
【0049】
最初に、制御部151は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105又はインタフェース装置135から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0050】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から第1媒体信号を取得し、取得した第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部151は、処理をステップS101へ戻し、操作装置105又はインタフェース装置135から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0051】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部151は、モータ134を駆動し、給送ローラ112、分離ローラ113、第1搬送ローラ116、第2搬送ローラ117、第3搬送ローラ120及び/又は第4搬送ローラ121を回転させる。これにより、制御部151は、載置台103に載置された媒体を給送及び搬送させる(ステップS103)。
【0052】
次に、制御部151は、判定部153により媒体の重送が発生したと判定されたか否かを判定する(ステップS104)。判定部153は、後述する判定処理において、媒体の重送が発生しているか否かを判定する。
【0053】
判定部153により媒体の重送が発生したと判定された場合、制御部151は、第1異常処理を実行し(ステップS105)、一連のステップを終了する。
【0054】
制御部151は、第1異常処理として、媒体の搬送を停止させるように、モータ134を制御する。媒体搬送装置100は、媒体の重送が発生した場合に、媒体の搬送を停止させることにより、入力画像内で媒体の一部が欠けること、又は、媒体の面全体が撮像されないことの発生を抑制できる。
【0055】
制御部151は、第1異常処理として、媒体の重送が発生したことを示す情報を表示装置106に表示し又はインタフェース装置135を介して情報処理装置に送信することにより利用者に異常の発生を通知してもよい。媒体搬送装置100が媒体の重送が発生した旨を利用者に通知することにより、利用者は適切な処置を行うことができる。この場合、制御部151は、媒体の搬送を継続させてもよい。
【0056】
また、制御部151は、第1異常処理として、現在搬送中の媒体を排出してから媒体読取処理を停止させてもよい。また、制御部151は、第1異常処理として、モータ134を駆動し、媒体を逆送させて載置台103に一旦戻してから再給送するように搬送部を制御してもよい。これにより、利用者は、媒体を載置台103に再載置して再給送する必要がなくなり、制御部151は、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0057】
一方、ステップS104において、判定部153により媒体の重送が発生したと判定されていなかった場合、制御部151は、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを示す指標値が第2閾値より大きいか否かを判定する(ステップS106)。指標値は、後述する検出処理において検出部152により設定される。指標値は、媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いが大きいほど、大きい値に設定される。第2閾値は、第1閾値より大きい値に設定される。第1閾値は、例えば、様々な状態の媒体を搬送する事前の実験において、シワ又は折り目を有する媒体が搬送されたときに検出される指標値と、シワ及び折り目を有さない媒体が搬送されたときに検出される指標値との間の値に予め設定される。第2閾値は、例えば、様々な状態の媒体を搬送する事前の実験において、媒体のジャムが発生しなかったときに検出される指標値と、媒体のジャムが発生したときに検出される指標値との間の値に予め設定される。
【0058】
指標値が第2閾値より大きいと判定された場合、制御部151は、媒体のジャムが発生した、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在すると判定する(ステップS107)。
【0059】
次に、制御部151は、第2異常処理を実行し(ステップS108)、一連のステップを終了する。
【0060】
制御部151は、第2異常処理として、媒体の搬送を停止させるように、モータ134を制御する。媒体のジャムが発生したときに、媒体の搬送を継続させると、媒体の損傷が発生する可能性がある。また、媒体のシワ又は折り目の度合いが極度に大きい場合、媒体の搬送を継続させると、媒体のジャムが発生し、媒体の損傷が発生する可能性がある。媒体搬送装置100は、媒体のジャムが発生したとき、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在するときに、媒体の搬送を停止する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体の損傷の発生を未然に防止することができる。
【0061】
制御部151は、第2異常処理として、媒体のジャムが発生したこと、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在することを示す情報を表示装置106に表示し又はインタフェース装置135を介して情報処理装置に送信することにより利用者に異常の発生を通知してもよい。媒体のジャムが発生した場合、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在する場合、媒体の損傷が発生する可能性がある。媒体搬送装置100が媒体のジャムが発生した旨、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在する旨を利用者に通知することにより、利用者は適切な処置を行うことができる。制御部151は、不図示のセンサにより上側筐体102の開閉が検出された場合、利用者が媒体搬送路から媒体を取り除いたと判定し、媒体の搬送を自動的に再開させてもよい。また、制御部151は、操作装置105又はインタフェース装置135から利用者による媒体搬送の再開指示を受信した場合、媒体の搬送を再開させてもよい。利用者は、媒体に大きいシワ又は折れ目が存在するが、媒体のジャムが発生していない場合、対象となる媒体の搬送を継続させることができる。
【0062】
一方、ステップS106において、指標値が第2閾値以下であった場合、制御部151は、媒体の先端が撮像開始位置に到達したか否かを判定する(ステップS109)。制御部151は、例えば、第2媒体センサ118から受信する第2媒体信号に基づいて媒体の先端が第2媒体センサ118の位置を通過したか否かを判定する。制御部151は、第2媒体センサ118から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から媒体が存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2媒体センサ118の位置を通過したと判定する。制御部151は、媒体の先端が第2媒体センサ118の位置を通過した時に、媒体の先端が撮像開始位置に到達したと判定する。制御部151は、媒体の先端が第2媒体センサ118の位置を通過してから所定時間が経過した時に、媒体の先端が撮像開始位置に到達したと判定してもよい。所定時間は、媒体の先端が第2媒体センサ118の位置から撮像位置まで移動するのに要する時間に設定される。なお、制御部151は、媒体の給送を開始してから予め定められた時間が経過した時に、媒体の先端が撮像開始位置に到達したと判定してもよい。媒体の先端が撮像開始位置に到達していない場合、制御部151は、ステップS111へ処理を移行させる。
【0063】
一方、媒体の先端が撮像開始位置に到達した場合、制御部151は、撮像装置119に撮像を開始させる(ステップS110)。
【0064】
次に、制御部151は、媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過したか否かを判定する(ステップS111)。制御部151は、例えば、第2媒体センサ118から受信する第2媒体信号に基づいて媒体の後端が第2媒体センサ118の位置を通過したか否かを判定する。制御部151は、第2媒体センサ118から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化したときに、媒体の後端が第2媒体センサ118の位置を通過したと判定する。制御部151は、媒体の後端が第2媒体センサ118の位置を通過してから所定時間が経過した時に媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過したと判定する。所定時間は、媒体が第2媒体センサ118の位置から撮像位置まで移動するのに要する時間に設定される。なお、制御部151は、媒体の給送を開始してから予め定められた時間が経過した時に、媒体の後端が撮像位置を通過したと判定してもよい。
【0065】
まだ媒体の後端が撮像位置を通過していない場合、制御部151は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S111の処理を繰り返す。
【0066】
一方、媒体の後端が撮像位置を通過した場合、制御部151は、撮像装置119に撮像を終了させる。制御部151は、撮像装置119から入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置135を介して情報処理装置に送信することにより出力する(ステップS112)。制御部151は、撮像装置119が一又は複数のライン画像を生成するたびに撮像装置119からライン画像を取得し、媒体の後端が撮像位置を通過した時に、ライン画像を合成して入力画像を生成してもよい。
【0067】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS113)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部151は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S113の処理を繰り返す。
【0068】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部151は、モータ134を停止し、給送ローラ112、分離ローラ113、第1搬送ローラ116、第2搬送ローラ117、第3搬送ローラ120及び第4搬送ローラ121を停止させる。これにより、制御部151は、媒体の搬送を停止させ(ステップS114)、一連のステップを終了する。
【0069】
なお、ステップS104~S105の処理、及び/又は、ステップS106~S108の処理は省略されてもよい。
【0070】
図6は、検出処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0071】
以下、図6に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の検出処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。検出処理は、媒体読取処理において各媒体が搬送されているときに定期的に実行される。
【0072】
最初に、検出部152は、音信号生成部130から音信号を取得し、音信号を取得した時刻と関連付けて記憶装置140に記憶する(ステップS201)。
【0073】
次に、検出部152は、音信号に基づいて、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出するための評価値を算出する(ステップS202)。評価値は、音信号の信号値が大きいほど、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさが大きいほど大きい値となる。または、評価値は、音信号の信号値の変化度合いが大きいほど、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさの変化度合いが大きいほど大きい値となる。
【0074】
例えば、検出部152は、音信号の信号値自体、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさを評価値として算出する。
【0075】
検出部152は、音信号の信号値の変化度合い、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさの変化度合いを評価値として算出してもよい。その場合、検出部152は、例えば直近の所定期間における音信号を周波数変換し、所定値以上の成分値を有する周波数のうちの最も高い周波数を変化度合いとして算出する。または、検出部152は、直近の所定期間における音信号の信号値の分散又は標準偏差を変化度合いとして算出してもよい。または、検出部152は、直近の所定期間における音信号の信号値の最大値と最小値の差を変化度合いとして算出してもよい。
【0076】
また、検出部152は、直近の所定期間における音信号の信号値又はその変化度合いの平均値、中央値、最大値又は最小値等の統計値を評価値として算出してもよい。
【0077】
図7(A)、図7(B)、図7(C)は、音信号の特性を示すグラフ700、710、720である。グラフ700、710、720の横軸は時間を示し、縦軸は音信号の信号値、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさを示す。
【0078】
グラフ700は、シワ及び折り目を有さない媒体が搬送された時の信号値を示す。グラフ700に示すように、シワ及び折り目を有さない媒体が搬送された場合、信号値は十分に小さく、且つ、信号値の変化(時間変化)はなだらかである。
【0079】
グラフ710は、シワ及び折り目を有する媒体が搬送された時の信号値を示す。グラフ710に示す例では、期間T1に媒体のシワを有する部分がマイクロフォン114と対向する位置を通過し、期間T2に媒体の折り目を有する部分がマイクロフォン114と対向する位置を通過している。期間T1では、媒体のシワが分離部を通過することにより、マイクロフォン114が集音する音が増大し、期間T2では、媒体の折り目が分離部を通過することにより、マイクロフォン114が集音する音が著しく増大している。特に、媒体のシワ又は折り目の度合いが大きいほど、マイクロフォン114が集音する音は大きくなる。これにより、期間T1及び期間T2において、音信号の信号値が第1評価閾値U1を超えている。したがって、検出部152は、音信号の信号値、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさに基づいて、媒体のシワ又は折り目の度合いを高精度に検出し、搬送される媒体がシワ又は折り目を有するか否かを高精度に判定することができる。
【0080】
また、期間T1では、媒体のシワが分離部を通過することにより、マイクロフォン114が集音する音の時間変化(揺れ)が増大し、期間T2では、媒体の折り目が分離部を通過することにより、マイクロフォン114が集音する音の時間変化が著しく増大している。特に、媒体のシワ又は折り目の度合いが大きいほど、マイクロフォン114が集音する音の時間変化は大きくなる。したがって、検出部152は、音信号の信号値の変化度合い、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさの変化度合いに基づいて、媒体のシワ又は折り目の度合いを高精度に検出し、媒体がシワ又は折り目を有するか否かを高精度に判定することができる。
【0081】
グラフ720は、媒体のジャムが発生した時、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在する時の信号値を示す。グラフ720に示す例では、時刻T3に媒体のジャムが発生している、又は、媒体の搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が分離部を通過している。時刻T3において、媒体のジャムが発生することにより、又は、媒体の搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が分離部を通過することにより、マイクロフォン114が集音する音が激しく増大し、音信号の信号値は、第2評価閾値U2を超えている。したがって、検出部152は、音信号の信号値、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさに基づいて、媒体のジャムが発生しているか否か、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在するか否かを高精度に判定することができる。
【0082】
また、時刻T3では、媒体のジャムが発生することにより、又は、媒体の搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が分離部を通過することにより、マイクロフォン114が集音する音の時間変化が激しく増大している。したがって、検出部152は、音信号の信号値の変化度合い、即ち媒体が搬送中に発生する音の大きさの変化度合いに基づいて、媒体のジャムが発生しているか否か、又は、媒体に搬送を停止すべき大きいシワ若しくは折れ目が存在するか否かを高精度に判定することができる。
【0083】
次に、検出部152は、算出した評価値が第1評価閾値以下であるか否かを判定する(ステップS203)。第1評価閾値は、例えば、様々な状態の媒体を搬送する事前の実験において、シワ又は折り目を有する媒体が搬送されたときに算出される評価値と、シワ及び折り目を有さない媒体が搬送されたときに算出される評価値との間の値に予め設定される。評価値が第1評価閾値以下である場合、検出部152は、指標値を、第1閾値以下である第1値に設定し(ステップS204)、一連のステップを終了する。
【0084】
一方、評価値が第1評価閾値より大きい場合、検出部152は、評価値が第2評価閾値以下であるか否かを判定する(ステップS205)。第2評価閾値は、第1評価閾値より大きい値に設定される。第2評価閾値は、例えば、様々な状態の媒体を搬送する事前の実験において、媒体のジャムが発生しなかったときに算出される評価値と、媒体のジャムが発生したときに算出される評価値との間の値に予め設定される。評価値が第2評価閾値以下である場合、検出部152は、指標値を、第1閾値より大きく且つ第2閾値以下である第2値に設定し(ステップS206)、一連のステップを終了する。
【0085】
一方、評価値が第2評価閾値より大きい場合、検出部152は、指標値を、第2閾値より大きい第3値に設定し(ステップS207)、一連のステップを終了する。
【0086】
このように、検出部152は、音信号に基づいて、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出する。検出部152は、マイクロフォン114が集音する音を利用することにより、媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを高精度に検出することができる。なお、指標値は、媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いが大きいほど大きい値に設定されれば、どのように設定されてもよい。例えば、検出部152は、評価値自体、評価値に対して所定の係数を乗算もしくは除算した値、又は、評価値に対して所定のオフセット値を加算もしくは減算した値等を指標値として設定してもよい。
【0087】
媒体搬送装置100は、媒体に存在するシワ又は折り目の度合いを検出し、媒体に搬送を停止すべきシワ又は折り目が存在する場合に、搬送を停止し、媒体に搬送を停止すべきシワ又は折り目が存在しない場合に、搬送を停止しない。
【0088】
図8は、判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0089】
以下、図8に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の判定処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。判定処理は、媒体読取処理において各媒体が搬送されているときに定期的に実行される。
【0090】
最初に、判定部153は、検出処理において検出部152により設定された指標値が第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS301)。
【0091】
判定部153は、指標値が第1閾値以下である場合、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を第1基準に設定し(ステップS302)、指標値が第1閾値より大きい場合、判定基準を第2基準に設定する(ステップS303)。
【0092】
判定基準は、媒体の重送が発生しているか否かを判定するための判定パラメータ(判定感度)、又は、媒体の重送が発生しているか否かを判定するために超音波信号に基づいて算出される算出値の算出方法等を含む。判定パラメータは、媒体の重送が発生しているか否かを判定するために算出値と比較するための閾値、又は、算出値を閾値と比較する頻度等を含む。算出方法は、超音波信号の信号値から算出値を算出するための統計処理(平均値、中央値、最大値又は最小値の算出処理)における統計対象区間(統計対象の超音波信号の時間幅)を含む。また、算出方法は、超音波信号の信号値から算出値を算出する際に信号値を補正するために、信号値に対して乗算もしくは除算する係数又は信号値に対して加算もしくは減算するオフセット値を含む。
【0093】
第2基準は、第1基準より媒体の重送が発生したと判定しにくくなるように設定される。即ち、判定部153は、シワ又は折り目の度合いが第1閾値より大きい場合は、シワ又は折り目の度合いが第1閾値以下である場合より、媒体の重送が発生したと判定しにくくなるように判定基準を変更する。
【0094】
図9(A)、図9(B)、図9(C)は、超音波信号の特性を示すグラフ900、910、920である。グラフ900、910、920の横軸は時間を示し、縦軸は超音波信号の信号値、即ち媒体を透過した超音波の大きさを示す。
【0095】
グラフ900は、シワ及び折り目を有さない一枚のPPC(Plain Paper Copier)用紙が搬送された時の信号値を示し、グラフ910は、シワ及び折り目を有さない二枚のPPC用紙が搬送された時の信号値を示す。超音波センサ115の位置にPPC用紙が存在する場合、超音波発信器115aから出力された超音波は、そのPPC用紙により減衰する。そして、超音波センサ115の位置に二枚のPPC用紙が存在する場合、超音波発信器115aから出力された超音波は、二枚のPPC用紙の間の空気層によって、さらに減衰する。そのため、グラフ900、910に示すように、超音波センサ115の位置に二枚のPPC用紙が存在する場合、超音波センサ115の位置に一枚のPPC用紙が存在する場合より、超音波の減衰量が増大する。
【0096】
したがって、判定部153は、超音波信号の信号値を、一枚のPPC用紙が存在する場合の信号値と、二枚のPPC用紙が存在する場合の信号値との間の値に設定された閾値V1又はV2と比較することにより、媒体の重送が発生しているか否かを判定できる。但し、超音波センサ115の位置に二枚の薄紙が存在する場合、超音波センサ115の位置に二枚のPPC用紙が存在する場合ほど、超音波の減衰量は増大しない。したがって、二枚の薄紙が存在する場合にも媒体の重送が発生したと判定するために、閾値として、ある程度大きい閾値V2が用いられることが好ましい。
【0097】
グラフ920は、シワ及び折り目を有する一枚のPPC用紙が搬送された時の信号値を示す。グラフ920に示す例では、期間T1に媒体のシワを有する部分が超音波センサ115と対向する位置を通過し、期間T2に媒体の折り目を有する部分が超音波センサ115と対向する位置を通過している。期間T1では、媒体のシワが超音波センサ115の位置を通過することにより、媒体を通過する超音波が変動し、期間T2では、媒体の折り目が超音波センサ115の位置を通過することにより、媒体を通過する超音波が著しく変動している。これにより、期間T1及び期間T2では、超音波信号の信号値が閾値V2未満となることがある。判定部153は、媒体にシワ又は折り目が存在する場合に媒体の重送が発生したと判定しにくくすることにより、シワ又は折り目を有する一枚の媒体が搬送された時に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。
【0098】
判定部153は、算出値と比較するための閾値について、第2基準では第1基準より媒体の重送が発生したと判定しにくい値に設定する。例えば、算出値が超音波信号の信号値自体又は超音波信号の信号値の統計値である場合、判定部153は、算出値と比較するための閾値について第2基準では第1基準より小さい値に設定する。また、算出値が重なり領域の長さである場合、判定部153は、算出値と比較するための閾値について第2基準では第1基準より大きい値に設定する。また、判定部153は、算出値を閾値と比較する頻度について、第2基準では第1基準より低い値に設定する(比較処理の実行間隔を大きくする)。また、判定部153は、超音波信号の信号値から算出値を算出するための統計処理における統計対象区間について、第2基準では第1基準より大きい値に設定する(時間幅を大きくする)。また、判定部153は、超音波信号の信号値を補正するために信号値に対して乗算する係数又は信号値に対して加算するオフセット値について、第2基準では第1基準より大きい値に設定する。また、判定部153は、超音波信号の信号値を補正するために信号値に対して除算する係数又は信号値に対して減算するオフセット値について、第2基準では第1基準より小さい値に設定する。
【0099】
このように、判定部153は、シワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する。特に、判定部153は、シワ又は折り目の度合いが第1閾値より大きい場合は、シワ又は折り目の度合いが第1閾値以下である場合より、媒体の重送が発生したと判定しにくくなるように判定基準を変更する。これにより、判定部153は、シワ又は折り目を有する一枚の媒体が搬送された時に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。なお、判定部153は、判定基準を二段階で変更するのではなく、シワ又は折り目の度合いに応じて三段階以上に分かれるように変更してもよい。その場合、判定部153は、シワ又は折り目の度合いが大きいほど、媒体の重送が発生したと判定しにくくなるように判定基準を変更する。この場合も、判定部153は、シワ又は折り目を有する一枚の媒体が搬送された時に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。
【0100】
また、判定部153は、算出値と比較するための閾値、算出値を閾値と比較する頻度、又は、算出値の算出方法を変更することにより、判定基準を変更する。これらにより、判定部153は、シワ又は折り目を有する一枚の媒体が搬送された時に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。なお、判定部153は、上記した判定基準の全てを変更する(異ならせる)必要はなく、少なくとも一つの判定基準を変更すればよい(異ならせればよい)。その場合も、判定部153は、シワ又は折り目を有する一枚の媒体が搬送された時に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。
【0101】
次に、判定部153は、超音波発信器115aが超音波を出力するように超音波センサ115を制御する(ステップS304)。
【0102】
次に、判定部153は、超音波センサ115から、超音波発信器115aから出力され且つ媒体を通過した超音波に応じた超音波信号を取得し、超音波信号を取得した時刻と関連付けて記憶装置140に記憶する(ステップS305)。
【0103】
次に、判定部153は、超音波信号に基づいて、媒体の重送が発生しているか否かを判定するための算出値を算出する(ステップS306)。
【0104】
例えば、判定部153は、ステップS305で取得した超音波信号の信号値自体を算出値として算出する。
【0105】
または、判定部153は、ステップS302~S303で設定した直近の統計対象区間内の時刻と関連付けて記憶装置140に記憶された超音波信号を読み出す。判定部153は、読み出した超音波信号の信号値に対して統計処理を実行し、その統計対象区間における統計値(平均値、中央値、最大値又は最小値)を算出値として算出する。
【0106】
または、判定部153は、ステップS305で取得した超音波信号の信号値が重なり閾値以下であるか否かを判定する。重なり閾値は、上記した算出値と比較するための閾値とは異なる固定値である。重なり閾値は、例えば様々な状態の媒体を搬送する事前の実験において、媒体の重なりが発生していない時の超音波信号の信号値と、媒体の重なりが発生している時の超音波信号の信号値との間の値に予め設定される。重なり閾値は、算出値と比較するための閾値と同様に、シワ又は折り目の度合いに基づいて変更されてもよい。その場合、判定部153は、重なり閾値について、指標値が第1閾値より大きい場合は指標値が第1閾値以下である場合より小さい値に設定する。判定部153は、信号値が重なり閾値以下である場合、超音波センサ115の位置で媒体の重なりが発生していると判定し、信号値が重なり閾値より大きい場合、超音波センサ115の位置で媒体の重なりが発生していないと判定する。判定部153は、媒体内の各位置で媒体の重なりが発生しているか否かの判定結果を、対応する超音波信号及び超音波信号を取得した時刻と関連付けて記憶装置140に記憶する。判定部153は、記憶装置140を読み出し、媒体搬送方向A1又は幅方向A2において、媒体の重なりが発生していると判定された位置が連続する領域を重なり領域として特定する。判定部153は、特定した重なり領域の媒体搬送方向A1又は幅方向A2における長さを算出値として算出する。
【0107】
また、判定部153は、算出値を算出する際に、取得した超音波信号の信号値にステップS302~S303で設定した係数を乗算もしくは除算し又はステップS302~S303で設定したオフセット値を加算もしくは減算することにより信号値を補正する。
【0108】
次に、判定部153は、算出値が媒体の重送が発生していることを示すか否かを判定する(ステップS307)。判定部153は、算出値とステップS302~S303で設定された判定基準に基づき、重送が発生しているか否かを判定する。算出値が超音波信号の信号値自体又は統計値である場合、判定部153は、算出値が、ステップS302~S303で設定した閾値以下であるか否かにより、媒体の重送が発生していることを示すか否かを判定する。即ち、判定部153は、算出値が閾値以下である場合、算出値が媒体の重送が発生していることを示すと判定し、算出値が閾値より大きい場合、算出値が媒体の重送が発生していないことを示すと判定する。また、算出値が重なり領域の長さである場合、判定部153は、算出値が、ステップS302~S303で設定した閾値より大きいか否かにより、媒体の重送が発生していることを示すか否かを判定する。即ち、判定部153は、算出値が閾値より大きい場合、算出値が媒体の重送が発生していることを示すと判定し、算出値が閾値以下である場合、貼付物が貼付された媒体が搬送されており、算出値が媒体の重送が発生していないことを示すと判定する。
【0109】
判定部153は、算出値が媒体の重送が発生していることを示すと判定した場合、媒体の重送が発生したと判定し(ステップS308)、一連のステップを終了する。一方、判定部153は、算出値が媒体の重送が発生していないことを示すと判定した場合、まだ媒体の重送が発生していないと判定する(ステップS309)。このように、判定部153は、超音波信号に基づいて、媒体の重送が発生しているか否かを判定する。特に、判定部153は、超音波信号に基づく算出値を閾値と比較することにより、媒体の重送が発生しているか否かを判定する。
【0110】
次に、判定部153は、ステップS302~S303で設定した、算出値を閾値と比較する頻度に対応する判定間隔だけ待機し(ステップS310)、ステップS301へ処理を戻す。判定間隔は、例えば、頻度の逆数又は頻度の逆数に所定の係数を乗算した時間である。このように、判定部153は、ステップS302~S303で設定した頻度で、超音波信号に基づく算出値を閾値と比較することにより、媒体の重送が発生しているか否かを判定する。
【0111】
なお、ステップS304の処理は、定期的に実行されるのでなく、媒体の先端が分離部を通過後に一度だけ実行されてもよい。
【0112】
また、判定基準は、超音波センサ115の制御方法を含んでもよい。超音波センサ115の制御方法は、超音波センサ115が発信する超音波の発信パラメータを含む。超音波の発信パラメータは、超音波発信器115aが発信する超音波の発信強度及び/又は発信時間を含む。この場合、判定部153は、超音波センサ115の制御方法を変更することにより、判定基準を変更する。ステップS302~S303において、判定部153は、超音波発信器115aが発信する超音波の発信強度について、第2基準では第1基準より大きい値に設定する。また、判定部153は、超音波発信器115aが発信する超音波の発信時間について、第2基準では第1基準より大きい値に設定する。ステップS304において、判定部153は、ステップS302~S303で設定された発信パラメータ、即ち超音波発信器115aが発信する超音波の発信強度及び/又は発信時間を超音波センサ115に設定する。判定部153は、超音波発信器115aの発信素子の駆動エネルギー(印加電圧又は印加電流)を、ステップS302~S303で設定した発信強度に対応する値に設定する。また、判定部153は、超音波発信器115aの発信素子の駆動時間(駆動パルス数又は駆動パルス継続時間)を、ステップS302~S303で設定した発信時間に対応する値に設定する。
【0113】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、搬送される媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かの判定基準を変更する。媒体搬送装置100は、媒体に存在するシワ又は折り目が存在するか否かを検出し、媒体にシワ又は折り目が存在する場合に、判定基準を変更する。媒体搬送装置100は、媒体にシワ又は折り目が存在する場合に、重送が発生したと判定されにくくなるように判定基準を変更する。媒体搬送装置100は、媒体にシワ又は折り目が存在する場合に、超音波信号の信号値と比較するための閾値を小さくする。媒体搬送装置100は、媒体にシワ又は折り目が存在する場合に、重なり領域の長さと比較するための閾値を小さくする。媒体搬送装置100は、媒体にシワ又は折り目が存在する場合に、超音波センサ115の発信強度を上げる。媒体搬送装置100は、媒体にシワ又は折り目が存在する場合に、超音波センサ115の発信時間を長くする。これにより、媒体搬送装置100は、シワ又は折り目を有する一枚の媒体が搬送された時に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。したがって、媒体搬送装置100は、シワ又は折り目を有する媒体が搬送された場合であっても、媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定することが可能となった。
【0114】
媒体にシワ又は折り目が存在する場合であっても、シワ又は折り目の度合いが小さい場合は、媒体の搬送及び読取に影響がないため、媒体の搬送及び読取を停止させる必要がない。媒体搬送装置100は、シワ又は折り目を有する媒体が搬送された場合であっても、シワ又は折り目の度合いが小さい場合は媒体の搬送及び読取を継続させることにより、利用者の作業効率を向上させることができる。一方、媒体にシワ又は折り目が存在する場合、シワ又は折り目の度合いが小さい場合であっても、媒体の重送が発生したと誤って判定されやすくなる。
【0115】
図10は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の処理回路250の概略構成を示す図である。
【0116】
処理回路250は、処理回路150の代わりに使用され、処理回路150の代わりに、媒体読取処理、検出処理、判定処理等を実行する。処理回路250は、制御回路251、検出回路252及び判定回路253等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0117】
制御回路251は、制御部の一例であり、制御部151と同様の機能を有する。制御回路251は、操作装置105又はインタフェース装置135から操作信号を、第1媒体センサ111から第1媒体信号を、第2媒体センサ118から第2媒体信号を受信する。また、制御回路251は、検出回路252から媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いの検出結果を、判定回路253から媒体の重送が発生しているか否かの判定結果を受信する。制御回路251は、受信した各情報に基づいて、モータ134を制御するとともに、利用者への警告を表示装置106又はインタフェース装置135に出力する。また、制御回路251は、撮像装置119から入力画像を取得し、インタフェース装置135に出力する。
【0118】
検出回路252は、検出部の一例であり、検出部152と同様の機能を有する。検出回路252は、音信号生成部130から音信号を受信する。検出回路252は、受信した音信号に基づいて、媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いを検出し、検出結果を制御回路251及び判定回路253に出力する。
【0119】
判定回路253は、判定部の一例であり、判定部153と同様の機能を有する。判定回路253は、超音波センサ115から超音波信号を、検出回路252から媒体に含まれるシワ又は折り目の度合いの検出結果を受信する。判定回路253は、受信した各情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定し、判定結果を制御回路251に出力する。
【0120】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路250を用いる場合も、媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定することが可能となった。
【0121】
以上、好適な実施形態について説明してきたが、実施形態はこれらに限定されない。例えば、判定部153は、超音波発信器115aが発信した超音波の位相に対する、超音波受信器115bが受信した超音波の位相のずれの大きさに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かを判定してもよい。判定部153は、超音波発信器115aを駆動する駆動信号の位相に対する、超音波受信器115bが出力する出力信号(またはそれを増幅した後の信号)の位相のずれの大きさに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かを判定してもよい。超音波センサ115の位置に用紙が存在する場合、超音波発信器115aから出力された超音波の位相は、その用紙によりずれる。そのため、超音波センサ115の位置に用紙が存在する場合は、超音波センサ115の位置に媒体が存在しない場合より、超音波の位相ずれが増大する。また、超音波センサ115の位置に二枚以上の用紙が存在する場合、超音波発信器115aから出力された超音波の位相は、用紙の間の空気層によりさらに大きくずれる、又は、用紙の搬送により搬送量や時間に対してさらに大きく変動する。そのため、超音波センサ115の位置に二枚以上の用紙が存在する場合は、超音波センサ115の位置に一枚の用紙が存在する場合より、超音波の位相ずれの大きさや変動が増大する。
【0122】
この場合、判定基準に含まれる判定パラメータは、媒体の重送が発生しているか否かを判定するために算出値と比較するための所定範囲、又は、算出値を所定範囲と比較する頻度を含む。算出値が超音波信号に示される位相ずれの大きさ又は位相ずれの大きさの統計値(最大値、最小値、平均値、中央値、分散値等)である場合、判定部153は、算出値と比較するための所定範囲について第2基準では第1基準より狭い範囲に設定する。また、判定部153は、算出値を所定範囲と比較する頻度について、第2基準では第1基準より低い値に設定する(比較処理の実行間隔を大きくする)。
【0123】
図8のステップS306において、判定部153は、超音波信号に示される位相ずれの大きさ、又は、位相ずれの大きさの統計値を算出値として算出する。または、判定部153は、位相ずれの大きさ又は位相ずれの大きさの統計値が重なり範囲内である場合、超音波センサ115の位置で媒体の重なりが発生していると判定し、位相ずれの大きさ又は位相ずれの大きさの統計値が重なり範囲外である場合、超音波センサ115の位置で媒体の重なりが発生していないと判定する。重なり範囲は、例えば様々な状態の媒体を搬送する事前の実験において、媒体の重なりが発生している時の超音波信号の信号値が含まれる範囲に予め設定される。重なり範囲は、算出値と比較するための所定範囲と同様に、シワ又は折り目の度合いに基づいて変更されてもよい。その場合、判定部153は、重なり範囲について、指標値が第1閾値より大きい場合は指標値が第1閾値以下である場合より狭い範囲に設定する。そして、判定部153は、重なり領域の媒体搬送方向A1又は幅方向A2における長さを算出値として算出する。判定部153は、算出値を算出する際に、位相ずれの大きさにステップS302~S303で設定した係数を乗算もしくは除算し又はステップS302~S303で設定したオフセット値を加算もしくは減算することにより、位相ずれの大きさ又は位相ずれの大きさの統計値を補正してもよい。
【0124】
また、図8のステップS307において、判定部153は、算出値が超音波信号に示される位相ずれの大きさ又は位相ずれの大きさの統計値である場合、算出値が、ステップS302~S303で設定した所定範囲内であるか否かにより、媒体の重送が発生していることを示すか否かを判定する。即ち、判定部153は、算出値が所定範囲内である場合、算出値が媒体の重送が発生していることを示すと判定し、算出値が所定範囲外である場合、算出値が媒体の重送が発生していないことを示すと判定する。このように、判定部153は、超音波信号に基づく算出値を所定範囲と比較することにより、媒体の重送が発生しているか否かを判定する。また、算出値が重なり領域の長さである場合、判定部153は、算出値が、ステップS302~S303で設定した閾値より大きいか否かにより、媒体の重送が発生していることを示すか否かを判定する。即ち、判定部153は、算出値が閾値より大きい場合、算出値が媒体の重送が発生していることを示すと判定し、算出値が閾値以下である場合、貼付物が貼付された媒体が搬送されており、算出値が媒体の重送が発生していないことを示すと判定する。
【0125】
また、判定部153は、搬送される媒体の厚さに基づいて、媒体の重送が発生しているか否かを判定してもよい。その場合、媒体搬送装置は、超音波センサ115の代わりに、厚さセンサを有する。
【0126】
厚さセンサは、超音波センサ115が配置される位置に配置される。厚さセンサは、発光器及び受光器を含む。発光器及び受光器は、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。発光器は、受光器に向けて光(赤外光又は可視光)を照射する。一方、受光器は、発光器により照射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である厚さ信号を生成して出力する。厚さセンサの位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により減衰し、媒体の厚さが大きい程、その減衰量は大きくなる。例えば、厚さセンサは、媒体の厚さが大きい程、信号値が大きくなるように厚さ信号を生成する。厚さ信号は、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置におけるその媒体の厚さ情報を示す。なお、厚さセンサの数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数の厚さセンサは、幅方向A2に間隔を空けて並べて配置される。
【0127】
なお、厚さセンサとして、反射光センサ、圧力センサ又は機械式センサが用いられてもよい。反射光センサは、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器のペアと、他方の側に設けられた発光器及び受光器のペアとを含む。反射光センサは、一方のペアが媒体の一方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間と、他方のペアが媒体の他方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間とから、各ペアと媒体の各面までの距離を検出する。反射光センサは、二つのペアの間の距離から、検出した各距離を減算した減算値を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。反射光センサは、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器のペアのみを含み、発光器及び受光器と搬送路との間の距離から、検出した距離を減算した減算値を厚さ情報として示す厚さ信号を生成してもよい。圧力センサは、媒体の厚さに応じて変化する圧力を検出し、検出した圧力を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。機械式センサは、媒体に接するローラの移動量を検出し、検出した移動量を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。
【0128】
この場合、図8のステップS304~S305の処理は省略される。ステップS305において、判定部153は、厚さセンサから厚さ信号を取得する。ステップS306において、判定部153は、厚さ信号の信号値自体、又は、信号値の統計値を算出値として算出する。または、判定部153は、信号値が重なり閾値より大きい場合、超音波センサ115の位置で媒体の重なりが発生していると判定し、信号値が重なり閾値以下である場合、超音波センサ115の位置で媒体の重なりが発生していないと判定する。重なり閾値は、例えば様々な状態の媒体を搬送する事前の実験において、媒体の重なりが発生していない時の厚さ信号の信号値と、媒体の重なりが発生している時の厚さ信号の信号値との間の値に予め設定される。そして、判定部153は、重なり領域の媒体搬送方向A1又は幅方向A2における長さを算出値として算出する。判定部153は、算出値を算出する際に、厚さ信号の信号値にステップS302~S303で設定した係数を乗算もしくは除算し又はステップS302~S303で設定したオフセット値を加算もしくは減算することにより信号値を補正してもよい。
【0129】
これらの場合も、判定部153は、媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定できる。
【0130】
また、検出部152は、音信号以外の情報に基づいて、シワ又は折り目の度合いを検出してもよい。例えば、検出部152は、超音波受信器115bから出力された超音波信号に基づいて、シワ又は折り目の度合いを検出してもよい。その場合、図6のステップS201において、検出部152は、超音波受信器115bから超音波信号を取得する。ステップS202において、検出部152は、超音波信号の信号値の変化度合い、即ち媒体を通過した超音波の大きさの変化度合いを評価値として算出する。例えば、検出部152は、直近の所定期間における超音波信号を周波数変換し、所定閾値以上の成分値を有する周波数のうちの最も高い周波数を変化度合いとして算出する。または、検出部152は、直近の所定期間における超音波信号の信号値の分散又は標準偏差を変化度合いとして算出してもよい。または、検出部152は、直近の所定期間における超音波信号の信号値の最大値と最小値の差を変化度合いとして算出してもよい。
【0131】
同様に、検出部152は、厚さセンサから出力された厚さ信号に基づいて、シワ又は折り目の度合いを検出してもよい。その場合、図6のステップS201において、検出部152は、厚さセンサから厚さ信号を取得する。ステップS202において、検出部152は、厚さ信号の信号値の変化度合い、即ち媒体の厚さの変化度合いを評価値として算出する。例えば、検出部152は、直近の所定期間における厚さ信号を周波数変換し、所定閾値以上の成分値を有する周波数のうちの最も高い周波数を変化度合いとして算出する。または、検出部152は、直近の所定期間における厚さ信号の信号値の分散又は標準偏差を変化度合いとして算出してもよい。または、検出部152は、直近の所定期間における厚さ信号の信号値の最大値と最小値の差を変化度合いとして算出してもよい。
【0132】
これらの場合、媒体搬送装置は、媒体の重送が発生しているか否かを判定するためのセンサを用いて、シワ又は折り目の度合いを検出することができるため、部品数を削減できる。したがって、媒体搬送装置は、装置重量及び/又は装置コストを低減させることができる。
【0133】
また、検出部152は、光学センサを利用して、シワ又は折り目の度合いを検出してもよい。光学センサは、載置台103と対向する位置に又は媒体の搬送路に配置される。光学センサは、載置台103の上方に又は媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器を含む。発光器は、LED等であり、載置台103に載置された媒体又は搬送路を搬送する媒体に向けて光を照射する。一方、受光器は、一次元又は二次元に配置された複数のフォトダイオードを含み、受光した光の強度に応じた光強度画像を生成し、出力する。発光器は省略され、光学センサは自然光を利用して光を検出してもよい。
【0134】
この場合、図6のステップS201において、検出部152は、光学センサから光強度画像を取得する。ステップS202において、検出部152は、光強度画像内の各画素の階調値のばらつきを評価値として算出する。例えば、検出部152は、光強度画像を周波数変換し、所定閾値以上の成分値を有する周波数のうちの最も高い周波数をばらつきとして算出する。または、検出部152は、光強度画像内の各画素の階調値の分散又は標準偏差をばらつきとして算出してもよい。または、検出部152は、光強度画像内の各画素の階調値の最大値と最小値の差をばらつきとして算出してもよい。
【0135】
また、光学センサの受光器は、一つのフォトダイオードのみを含み、受光した光の強度を示す光強度情報を生成し、出力してもよい。この場合、複数の光学センサが、幅方向A2に間隔を空けて並べて配置されてもよい。この場合、図6のステップS201において、検出部152は、光学センサから光強度情報を取得する。ステップS202において、検出部152は、光強度情報の変化度合い、即ち媒体により反射された光の強度の変化度合いを評価値として算出する。例えば、検出部152は、直近の所定期間における光強度情報を周波数変換し、所定閾値以上の成分値を有する周波数のうちの最も高い周波数を変化度合いとして算出する。または、検出部152は、直近の所定期間における光強度情報に示される光の強度の分散又は標準偏差を変化度合いとして算出してもよい。または、検出部152は、直近の所定期間における光強度情報に示される光の強度の最大値と最小値の差を変化度合いとして算出してもよい。
【0136】
また、検出部152は、静電容量式近接センサを利用して、シワ又は折り目の度合いを検出してもよい。静電容量式近接センサは、載置台103と対向する位置に又は媒体の搬送路に配置される。静電容量式近接センサは、載置台103の上方に又は媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発振回路及び検出回路を含む。発振回路は、電界を発生させる検出用電極を含む。一方、検出回路は、発振回路の発振周波数を検出するセンサを含み、発振回路の発振周波数を示す発振周波数情報を生成し、出力する。静電容量式近接センサの数は一つに限定されず、複数でもよい。この場合、複数の静電容量式近接センサは、幅方向A2に間隔を空けて並べて配置される。
【0137】
この場合、図6のステップS201において、検出部152は、静電容量式近接センサから発振周波数情報を取得する。ステップS202において、検出部152は、発振周波数情報の変化度合い、即ち発振回路の発振周波数の変化度合いを評価値として算出する。例えば、検出部152は、直近の所定期間における発振周波数情報を周波数変換し、所定閾値以上の成分値を有する周波数のうちの最も高い周波数を変化度合いとして算出する。または、検出部152は、直近の所定期間における発振周波数情報に示される発振周波数の分散又は標準偏差を変化度合いとして算出してもよい。または、検出部152は、直近の所定期間における発振周波数情報に示される発振周波数の最大値と最小値の差を変化度合いとして算出してもよい。
【0138】
これらの場合も、検出部152は、シワ又は折り目の度合いを高精度に検出できる。
【0139】
また、媒体搬送装置は、いわゆるUターンパスを有し、載置台に載置された媒体を上側から順に給送及び搬送し、排出台に排出してもよい。この場合も、媒体搬送装置は、媒体の重送が発生しているか否かを高精度に判定することができる。
【符号の説明】
【0140】
100 媒体搬送装置、112 給送ローラ、113 分離ローラ、114 マイクロフォン、115 超音波センサ、115a 超音波発信器、115b 超音波受信器、116 第1搬送ローラ、117 第2搬送ローラ、120 第3搬送ローラ、121 第4搬送ローラ、130 音信号生成部、151 制御部、152 検出部、153 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10