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  • 特開-トナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160828
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20241108BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20241108BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/087 331
G03G9/09
G03G9/097 374
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076235
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓歩
(72)【発明者】
【氏名】桂 大侍
(72)【発明者】
【氏名】芝原 昇平
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA08
2H500AA09
2H500CA06
2H500CA29
2H500CA30
2H500CB06
2H500CB10
2H500EA41B
2H500EA42C
2H500EA43D
2H500EA46B
(57)【要約】
【課題】機内汚染の抑制と耐オフセット性とを両立しうるトナー。
【解決手段】結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、該トナーが、フマル酸を含有し、該ワックスが、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一のアルコールと、炭素数16~25の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一のカルボン酸と、のエステル化合物を含有し、該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該エステル化合物の含有量を含有量bとしたとき、該含有量bが、1~20質量%であり該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該フマル酸の含有量を含有量aとしたとき、該含有量aが、10~1200質量ppmである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該ワックスが、
ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一のアルコールと、
炭素数16~25の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一のカルボン酸と、のエステル化合物を含有し、
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該エステル化合物の含有量を含有量bとしたとき、該含有量bが、1~20質量%であり
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該フマル酸の含有量を含有量aとしたとき、該含有量aが、10~1200質量ppmである、
ことを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記エステル化合物が、炭素数18~22の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一と、ペンタエリスリトールと、のエステル化合物を含む、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記含有量aが、150~850質量ppmである、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記含有量a(質量ppm)及び前記含有量b(質量%)が、下記式(1)を満たす、請求項1又は2に記載のトナー。
2≦含有量a/含有量b≦120 ・・・(1)
【請求項5】
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含む、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項6】
前記トナー粒子が、下記式(2)で示されるマゼンタ顔料を含有する、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナーが、外添剤としてハイドロタルサイト粒子を含有する、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項8】
前記トナーのSTEM-EDSマッピング分析におけるライン分析において、
前記ハイドロタルサイト粒子の内部にフッ素及びアルミニウムが存在し、
前記トナーのSTEM-EDSマッピング分析による前記ハイドロタルサイト粒子の主成分マッピングから得られた、前記ハイドロタルサイト粒子における該フッ素の該アルミニウムに対する原子数濃度の比の値F/Alが、0.01~0.60である請求項7に記載のトナー。
【請求項9】
前記トナー粒子が、前記フマル酸を含有する、請求項1又は2に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法などの画像形成方法に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターの高速化が進んでおり、高速プリント時においても安定した画質を提供するトナーが求められている。
高速化する印刷においては溶融状態のトナーが定着ローラ表面に付着/転移することで、次の紙に印刷されてしまうオフセット現象が課題となる。この対策の一つとして、ペンタエリスリトール/ジペンタエリスリトールからなるワックスを用いてオフセットを改善させた方法が開示されている。
【0003】
特許文献1ではペンタエリスリトール脂肪酸エステルをオレフィン系ワックスと組み合わせることで結着樹脂との相性を上げつつオフセットの発生が抑制されることが開示されている。
特許文献2ではトナーの軟化温度T、流出開始温度Tfb、及びガラス転移温度Tをそれぞれ特定の範囲内とすることにより、低温定着性、耐オフセット性に優れるトナーが提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-191219号公報
【特許文献2】国際公開第2013/047296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら高速化する複写機やプリンターにおいてこのような方策を用いた場合でも、定着器周辺の機内汚染において未だ改善の余地が見られることがわかった。本開示は、機内汚染の抑制と耐オフセット性とを両立しうるトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該ワックスが、
ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一のアルコールと、
炭素数16~25の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一のカルボン酸と、のエステル化合物を含有し、
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該エステル化合物の含有量を含有量bとしたとき、該含有量bが、1~20質量%であり
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該フマル酸の含有量を含有量aとしたとき、該含有量aが、10~1200質量ppmである、トナーに関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、機内汚染の抑制と耐オフセット性とを両立しうるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】STEM-EDSマッピング分析におけるEDSライン分析の模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示についての実施の形態を挙げて、さらに詳しく説明するが、これらに限定されることはない。なお、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
本開示は、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該ワックスが、
ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一のアルコールと、
炭素数16~25の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一のカルボン酸と、のエステル化合物を含有し、
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該エステル化合物の含有量を含有量bとしたとき、該含有量bが、1~20質量%であり
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該フマル酸の含有量を含有量aとしたとき、該含有量aが、10~1200質量ppmである、トナーに関する。
【0011】
トナーがエステル化合物であるワックスとフマル酸を一定量含有することで、機内汚染を抑制し、さらに耐オフセット性に優れる。
機内汚染はワックスが定着工程で強い熱/圧力を受けた影響によって起こると考えられる。汚染の程度はワックスの分子量と関係があり、分子量の高いワックスほど汚染が生じにくい。そのため、機内汚染を防ぐためには、ワックスの分子量を増加させることが対策の手段となる。しかしながら、単にワックスの分子量を増加させると分子としての運動性が低下することから、定着時にワックスがトナー表面に染み出しにくくなり、定着分離性が低下してオフセットが発生するという課題が生じることを本発明者らは認識した。
【0012】
本発明者らは検討を行い、上記トナーによって機内汚染の抑制と耐オフセット性の両立が可能となることを見出した。このような効果が得られるメカニズムについて本発明者らは以下の様に考えている。
上記トナーにおいて、トナーに含まれるフマル酸がワックスとしてのエステル化合物と相互作用すると考えられる。具体的にはフマル酸に含まれる2つのカルボキシ基がエステル化合物中のカルボニル基や残存したヒドロキシ基と水素結合し、エステル化合物とフマル酸が多量体を形成することで見かけ上の分子量が上昇すると考えている。そのため、機内汚染の抑制に効果があると考えている。
【0013】
加えて、上記相互作用によってはエステル化合物の運動性の低下が引き起こされにくいため、定着分離性の低下を防ぎ耐オフセット性も良好になると考えられる。フマル酸は低分子量でありながら2つのカルボキシ基を持っており、なおかつトランス構造を持つので分子内で脱水縮合しないため、この効果の発現に適していると考えられる。
【0014】
ワックスは、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一のアルコールと、脂肪族モノカルボン酸と、のエステル化合物を含有する。ペンタエリスリトールを用いたエステル化合物は分子中にカルボニル基など水素結合しうる基を4つもち、ジペンタエリスリトールを用いたエステル化合物は分子中にカルボニル基など水素結合しうる基を6つもつ。そのため上記エステル化合物は水素結合できる部位を分子中に多く持ち、多量体を作りやすい。
【0015】
カルボニル基など水素結合しうる基が4つ以上であることで結着樹脂と相溶しにくくなり、ワックスとして定着分離性を保つことができる。また、カルボニル基など水素結合しうる基が6つ以下であることでワックスがかさ高くなりすぎず、水素結合しやすい状態を保てると考えている。ペンタエリスリトール由来のワックスとジペンタエリスリトール由来のワックスでは、ペンタエリスリトール由来のワックスの方が機内汚染抑制の効果が大きくなりやすい。これは分子量あたりの水素結合しうる基の数及び分子の大きさによるものと考えている。
【0016】
また、脂肪族モノカルボン酸は、炭素数は16~25の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一のカルボン酸である。炭素数が上記範囲であると、分子量が低くなりすぎておらず、またワックスがかさ高くなりすぎず水素結合しやすい状態を保てるため機内汚染を抑制しやすくなると考えられる。脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、18~22であることがより好ましい。脂肪族モノカルボン酸は単独でもよいし、炭素数の異なる複数種を組み合わせてもよい。
エステル化合物は、炭素数18~22の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一と、ペンタエリスリトールと、のエステル化合物を含むことがより好ましい。エステル化合物は、ベヘン酸及びステアリン酸からなる群から選択される少なくとも一と、ペンタエリスリトールと、のエステル化合物を含むことがさらに好ましい。
【0017】
また、トナーの全質量を基準とした、トナー中のエステル化合物の含有量を含有量bとする。含有量bは、1~20質量%である。含有量bが1質量%以上であることでワックスとしての定着分離性を保つことができる。また、含有量bが20質量%以下であることで過剰量のエステル化合物が機内汚染引き起こすことを防ぐことができる。含有量bは、5~20質量%であることが好ましく、8~20質量%であることがより好ましい。
【0018】
トナーは、フマル酸を含有する。トナーの全質量を基準とした、トナー中のフマル酸の含有量を含有量aとする。含有量aは、10~1200質量ppmである。含有量aが10質量ppm以上であることで、フマル酸とエステル化合物との水素結合が形成され機内汚染の抑制効果が発現する。また、含有量aが1200質量ppm以下であることによってフマル酸が混合された状態でもトナーとして定着分離性を保つことができる。トナー中のフマル酸の含有量aは、好ましくは150~850質量ppmであり、より好ましくは150~800質量ppmである。トナー中のフマル酸の質量基準の含有量aは、後述の方法により測定可能である。
【0019】
トナーにフマル酸を含有させる手段は特に制限されず、公知の手段を用いることができる。例えば、トナーに含まれるトナー粒子に、フマル酸を含有させることが挙げられる。すなわち、トナー粒子は、フマル酸を含有することが好ましい。
例えば、粉砕法によりトナー粒子を製造する場合には、原料の樹脂に予めフマル酸を含有させておく手段や、原料を溶融混練する際にフマル酸を添加してトナー粒子に含有させる手段を用いることができる。
懸濁重合法や乳化凝集法などの湿式製造法でトナー粒子を製造する場合には、原料にフマル酸を含有させる手段や、製造過程において水系媒体を介してフマル酸を添加する手段などを用いることができる。
【0020】
またフマル酸の含有量をa(質量ppm)とし、ワックスの含有量をb(個数%)としたとき、下記式(1)を満たすことがより好ましい。
2≦含有量a/含有量b≦120 ・・・(1)
含有量a/含有量b(以下、単にa/bともいう)が2以上であればフマル酸がワックスと相互作用しやすくなるため、機内汚染抑制の効果がより発現しやすい。また、a/b
が120以下であればフマル酸が定着の際の阻害となりにくく、ワックスにより定着分離性がより良好になる。a/bは、より好ましくは3~90であり、さらに好ましくは3~85である。
【0021】
<結着樹脂>
トナー粒子は、結着樹脂を有する。結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、及びその他の結着樹脂として、以下の樹脂又は重合体が例示できる。スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、これらの混合樹脂や複合化樹脂などが挙げられる。
安価かつ容易に入手可能で低温定着性に優れることから、結着樹脂はポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂又はこれらのハイブリッド樹脂を含むことが好ましく、ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。結着樹脂はポリエステル樹脂であることがさらに好ましい。
【0022】
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸などの中から好適なものを選択して組み合わせ、例えば、エステル交換法又は重縮合法など、従来公知の方法を用いて合成することで得られる。
【0023】
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であって、好ましく使用される。
【0024】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スペリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレン二酢酸、o-フェニレン二酢酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを挙げることができる。
【0025】
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-オクテニルコハク酸などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、好ましく使用される。
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオー
ル、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、ポリテトラメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
【0027】
これらのうち好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及び、これと炭素数2~12のアルキレングリコールとの併用である。
【0028】
より好ましくは、結着樹脂は炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数は好ましくは1~5mol)、並びにテレフタル酸を含むモノマー混合物の縮重合体である。結着樹脂は非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0029】
三価以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン、ソルビトール、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、上記三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂は末端などのカルボキシ基はキャップしないことが好ましい。
【0030】
スチレンアクリル樹脂としては、下記重合性単量体からなる単独重合体、これらを2種以上組み合わせて得られる共重合体、またはそれらの混合物が挙げられる。
スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン及びp-フェニルスチレンのようなスチレン系モノマー;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジエチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジブチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート及び2-ベンゾイルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸のような(メタ)アクリル系モノマー;
ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン系モノマー;
エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類。
【0031】
スチレンアクリル樹脂は、必要に応じて多官能性の重合性単量体を用いることができる。多官能性の重合性単量体としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス(4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン及びジビニルエーテルなどが挙げられる。
また、重合度を制御するため、公知の連鎖移動剤及び重合禁止剤をさらに添加することも可能である。
【0032】
スチレンアクリル樹脂を得るための重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤やアゾ系重合開始剤が挙げられる。
有機過酸化物系開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びtert-ブチル-パーオキシピバレートなどが挙げられる。
【0033】
アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスメチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(イソ酪酸メチル)などが挙げられる。
【0034】
また、重合開始剤として、酸化性物質と還元性物質とを組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。
酸化性物質としては、過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩)の無機過酸化物並びに4価のセリウム塩の酸化性金属塩が挙げられる。
還元性物質としては還元性金属塩(2価の鉄塩、1価の銅塩及び3価のクロム塩)、アンモニア、低級アミン(メチルアミン及びエチルアミンのような炭素数1以上6以下程度のアミン)、ヒドロキシルアミンのようなアミノ化合物、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどの還元性硫黄化合物、低級アルコール(炭素数1以上6以下)、アスコルビン酸又はその塩並びに低級アルデヒド(炭素数1以上6以下)が挙げられる。
【0035】
重合開始剤は、10時間半減期温度を参考に選択され、単独又は混合して利用される。重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100.0質量部に対し0.5質量部以上20.0質量部以下が添加される。
【0036】
また、結着樹脂は、結晶性ポリエステルを含有してもよい。前記結晶性ポリエステルは、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との縮重合物が挙げられる。
炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールと炭素数2以上12以下の脂肪族ジカルボン酸との縮重合物であることが好ましい。炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールとしては、以下の化合物が挙げられる。1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-
ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオールなど。
【0037】
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。2-ブテン-1,4-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール及び4-オクテン-1,8-ジオール。
【0038】
炭素数2以上12以下の脂肪族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、これら脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステル及び酸無水物。
【0039】
これらのうち、セバシン酸、アジピン酸及び1,10-デカンジカルボン酸、並びにそれらの低級アルキルエステルや酸無水物が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0040】
また、芳香族ジカルボン酸を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸としては、以下の化合物を挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸。これらの中でも、テレフタル酸が入手の容易性や低融点のポリマーを形成しやすいという点で好ましい。
【0041】
また、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを抑制するために好適に用いることができる。
このようなジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸及び3-オクテンジオイック酸が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物も挙げられる。これらの中でも、フマル酸及びマレイン酸がより好ましい。
【0042】
結晶性ポリエステルの製造方法としては、特に制限はなく、ジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させる一般的なポリエステルの重合法によって製造することができる。例えば、直接重縮合法又はエステル交換法を用い、単量体の種類によって使い分けて製造することができる。
【0043】
結晶性ポリエステルの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上25.0質量部以下であることがより好ましい。
【0044】
結晶性ポリエステルの示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度は、50.0℃以上100.0℃以下であることが好ましく、低温定着性の観点から、60.0℃以上90.0℃以下であることがより好ましい。
【0045】
結着樹脂の分子量としては、ピーク分子量Mpが5000以上、100000以下であることが好ましく、より好ましくは10000以上、40000以下である。重量平均分子量Mwは、4000~20000であることが好ましく、5000~10000であることがより好ましい。
結着樹脂のガラス転移温度Tgは、40℃以上、70℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上、60℃以下である。また、結着樹脂の酸価は、1.0~30.0mgKOH/gであることが好ましく、5.0~20.0mgKOH/gであることがより好ましい。
【0046】
<架橋剤>
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。
例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタク
リレートに変えたもの。
架橋剤の添加量としては、重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部以上15.000質量部以下であることが好ましい。
【0047】
<離型剤>
トナーはワックスとして、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群より選択される少なくとも一のアルコール、と炭素数16~25の脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一のカルボン酸と、のエステル化合物を含む。トナーは、本開示の効果を損なわない程度に、その他の離型剤を含有してもよい。
【0048】
具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びそれらの誘導体が挙げられる。誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。
また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸又はその酸アミド、エステル、ケトン;硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独又は併用して用いることができる。
【0049】
トナー中の、ワックス及び離型剤の合計の含有量は、1.0~20.0質量%であってもよい。
離型剤の融点は、30℃以上120℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上100℃以下である。融点が30℃以上120℃以下である離型剤を用いることにより、離型効果が効率良く発現され、より広い定着領域が確保される。
【0050】
トナーのシャープメルト性を向上させるために結晶性の可塑剤を使用してもよい。本開示の効果を損なわない程度に、下記のようなトナーに用いられる公知のものを用いることができる。
【0051】
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルのような1価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;エチレングリコールジステアレート、セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートのような2価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、2価
のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;グリセリントリベヘネートのような3価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;4価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートのような多価アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスのような天然エステルワックス。これらは単独又は併用して用いることができる。
【0052】
<着色剤>
トナー粒子は着色剤を含有してもよい。着色剤として、公知の顔料、染料を用いることができる。耐候性に優れる点から、着色剤としては、顔料が好ましい。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物及び塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62及び66。
【0053】
トナー粒子は、下記式(2)で示されるマゼンタ顔料を含むことが好ましい。下記式(2)で示されるマゼンタ顔料は分子内に共役系が広がっており端部には塩素原子がついている。そのため分子中の電子密度が高い、平面的であるといった特徴を持つ。そのためフマル酸と相互作用し、電荷を供与することで水素結合の発生を助けるため、機内汚染をより抑制しやすくなると考えている。式(2)で示されるマゼンタ顔料は公知の方法で得ることができる。
【化1】
【0054】
その他のマゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物などが挙げられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221及び254、及びC.I.ピグメントバイオレット19。
【0055】
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物及びアリルアミド化合物などが挙げられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185、191及び194。
黒色着色剤としては、上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤及びシアン系着色剤を用いて黒色に調色されたもの並びにカーボンブラックが挙げられる。
これらの着色剤は、単独で、又は混合物で、さらにはこれらを固溶体の状態で用いることができる。
着色剤は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下用いることが好ましい。
【0056】
<荷電制御剤及び荷電制御樹脂>
トナー粒子は、荷電制御剤又は荷電制御樹脂を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を懸濁重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0057】
トナーを負荷電性に制御するものとしては、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、オキシカルボン酸及びジカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン及び荷電制御樹脂などが挙げられる。
【0058】
荷電制御樹脂としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基若しくはスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体を挙げることができる。スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体としては、特にスルホン酸基含有アクリルアミド系モノマー又はスルホン酸基含有メタクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上含有する重合体が好ましく、より好ましくは5質量%以上含有する重合体である。
【0059】
荷電制御樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上90℃以下であり、ピーク分子量(Mp)が10000以上30000以下であり、重量平均分子量(Mw)が25000以上50000以下であることが好ましい。これを用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい摩擦帯電特性を付与することができる。さらに、荷電制御樹脂がスルホン酸基を含有していると、例えば重合性単量体組成物中における荷電制御樹脂自身の分散性や、着色剤などの分散性が向上し、着色力、透明性及び摩擦帯電特性をより向上させることができる。
これら荷電制御剤又は荷電制御樹脂は、単独であるいは2種類以上組み合わせて添加してもよい。
荷電制御剤又は荷電制御樹脂の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
【0060】
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子は、好ましくは、結着樹脂を含有するコア粒子及びコア粒子の表面のシェルを有する。トナー粒子の製造方法は、特に制限されず公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性、コアシェル構造のトナー粒子を得やすいといった観点から湿式製造法が好ましい。湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができ、トナー粒子の形状制御が容易になる点で乳化凝集法がより好ましい。すなわち、トナー粒子は乳化凝集トナー粒子であることが好ましい。
【0061】
乳化凝集法は、まず結着樹脂の微粒子や着色剤などの各材料の分散液を調製する。得られた各材料の分散液を、必要に応じて分散安定剤を添加して、分散混合させる。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナー粒子の粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する。
【0062】
トナーの製造方法は下記工程を有することが好ましい。
(1)結着樹脂及びフマル酸を含む結着樹脂微粒子分散液、並びにワックスを含むワックス分散液を調整し、混合して混合分散液を得る分散混合工程、
(2)得られた混合分散液に含まれる結着樹脂微粒子(必要に応じて着色剤微粒子など)を凝集して凝集体を形成する凝集工程、及び
(3)前記凝集体を加熱して融合させ、融合粒子を形成する融合工程、
を有することが好ましい。得られた融合粒子を冷却し、トナー粒子を得ることができる。
【0063】
前記(3)の工程の後に、下記(4)及び(5)の工程
(4)融合粒子を前記結着樹脂の結晶化温度以上又はガラス転移温度以上の温度に加熱保持するアニール工程
(5)前記融合粒子を、0.1℃/sec以上の冷却速度で冷却し、トナー粒子を得る冷却工程
をこの順に有することがより好ましい。
【0064】
ここで、結着樹脂の微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子に内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、内添剤微粒子を樹脂微粒子と凝集させる際に共に凝集させてもよい。また、凝集時に組成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることにより組成の異なる層構成のトナー粒子を作ることもできる。結着樹脂を含む樹脂微粒子を凝集させコア部を形成したのち、シェル用の樹脂を含む樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させることでシェル部を形成することができる。
【0065】
シェル用の樹脂は、結着樹脂と同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。例えばシェル用の樹脂にフマル酸を含有させることができる。シェル用の樹脂を含む樹脂微粒子がフマル酸を含んでもよい。シェル用の樹脂の添加量(シェルの含有量)は、コア粒子に含まれる結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0~10.0質量部であり、より好ましくは2.0~7.0質量部である。
【0066】
この場合、トナーの製造方法は下記工程を有することが好ましい。
(1)結着樹脂及びフマル酸を含む結着樹脂微粒子分散液、並びにワックスを含むワックス分散液を調整し、混合して混合分散液を得る分散混合工程、
(2)得られた混合分散液に含まれる結着樹脂微粒子(必要に応じて着色剤微粒子など)を凝集して凝集体を形成する凝集工程、
(3)凝集体を含む分散液にシェル用の樹脂を含む樹脂微粒子をさらに添加し凝集させてシェルを有する凝集体を形成するシェル形成工程、及び
(4)前記凝集体を加熱して融合させ、融合粒子を形成する融合工程
また、前記(4)の工程中または前記(1)~(4)の工程の後に、下記(5)の工程(5)前記凝集体を、さらに温度を上げて加熱する球形化工程
を有することが好ましい。
【0067】
そして、前記(5)の工程の後に、下記(6)及び(7)の工程
(6)融合粒子を前記結着樹脂の結晶化温度以上又はガラス転移温度以上の温度に加熱保持するアニール工程
(7)前記融合粒子を、0.1℃/sec以上の冷却速度で冷却し、トナー粒子を得る冷却工程
をこの順に有することがより好ましい。
【0068】
フマル酸の添加量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、0.006~0.500質量部であることが好ましく、0.006~0.400質量部であることがより好ましく、0.010~0.200質量部であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、トナー中のフマル酸の含有量を好適に調整しやすくなる。
【0069】
分散安定剤としては以下のものを使用することができる。
界面活性剤として、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を使用することができる。
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
【0070】
凝集剤としては、上述した分散安定剤に使用する界面活性剤と逆極性の界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の無機金属塩を好適に用いることができる。特に無機金属塩は、多価金属元素を水系媒体中でイオン化することで、凝集性制御およびトナー帯電性制御がしやすい為好ましい。
好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムの金属塩、及び、ポリ塩化鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウムの無機金属塩重合体である。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上であることが好ましく、また、同じ価数であっても無機金属塩重合体の方がより適している。
【0071】
画像の高精細、高解像の観点から、トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。また、現像性、転写性とクリーニング性とのバランスの観点から、トナー粒子の平均円形度は、0.95以上0.98以下であることが好ましい。
【0072】
トナーは、トナー粒子及び外添剤を含有することが好ましい。外添剤はハイドロタルサイト粒子を含有することが好ましい。すなわち、トナーは外添剤として、ハイドロタルサイト粒子を含有することが好ましい。
ハイドロタルサイト粒子は、下記構造式(3)で表されるものを用いることができる。M2+ 3+ (OH)n- (x/n)・mHO 式(3)
ここで、0<x≦0.5、y=1-x、m≧0である。
2+、及びM3+はそれぞれ2価及び3価の金属を表す。
2+はMg、Zn、Ca、Ba、Ni、Sr、Cu、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一の2価の金属イオンであることが好ましい。
3+はAl、B、Ga、Fe、Co、及びInからなる群より選ばれる少なくとも一の3価の金属イオンであることが好ましい。
n-はn価のアニオンで、CO 2-、OH、Cl、I、F、Br、SO 2-、HCO 、CHCOO、及びNO が挙げられ、単独又は複数種が存在しても構わない。
【0073】
ハイドロタルサイト粒子は、M3+として少なくともAlを含有し、また、M2+として少なくともMgを含有することが好ましい。また、An-として少なくともFを含有することが好ましい。すなわち、ハイドロタルサイト粒子はマグネシウム及びアルミニウムを含有することが好ましい。また、ハイドロタルサイト粒子は、フッ素、アルミニウム及びマグネシウムを含むことが好ましい。
【0074】
ハイドロタルサイトは弱い受酸剤としても機能するため、ハイドロタルサイトが外添されていることで定着時にフマル酸がトナー表面付近に誘起される。そのためワックスとの距離が小さくなるため水素結合が起こりやすくなり、耐汚染性の向上につながると考えている。
【0075】
ハイドロタルサイト粒子は、内部にフッ素を含有することがさらに好ましい。内部にフッ素を含有することで定着時にハイドロタルサイト粒子のフッ素イオンが露出し、機内汚染の抑制及び定着分離性の効果をより向上させることができる。
【0076】
ハイドロタルサイト粒子の一例として、具体的には、
Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO、や、Mg8.6Al(OH)25.2CO・mHO、Mg12Al(OH)32CO・mHOなどが挙げられる。
ハイドロタルサイト粒子は異なる元素を複数含有する固溶体であってもよい。また、1価の金属を微量含んでもよい。
【0077】
トナーのSTEM-EDSマッピング分析による、ハイドロタルサイト粒子の主成分マッピングから得られた、ハイドロタルサイト粒子におけるマグネシウムのアルミニウムに対する原子数濃度の比の値Mg/Al(元素比)は、1.5~4.0であることが好ましく、1.6~3.8であることがより好ましく、2.1~3.8であることがさらに好ましい。
【0078】
ハイドロタルサイト粒子におけるフッ素量は、ハイドロタルサイト製造時のフッ素の濃度を調整することで制御できる。例えば、フッ化ナトリウムの添加量を調整することで制御することが可能である。また、ハイドロタルサイト粒子におけるフッ素の原子数濃度は、トナーのSTEM-EDSマッピング分析によるハイドロタルサイト粒子の主成分マッピングから得ることができる。
【0079】
トナーのSTEM-EDSマッピング分析におけるライン分析において、ハイドロタルサイト粒子の内部にフッ素及びアルミニウムが存在することが好ましい。STEM-EDSにより、フッ素がハイドロタルサイト粒子の層状構造の層間にインターカレートされたことを確認しうる。
【0080】
そして、トナーのSTEM-EDSマッピング分析による、ハイドロタルサイト粒子の主成分マッピングから得られた、ハイドロタルサイト粒子におけるフッ素のアルミニウムに対する原子数濃度の比の値F/Al(元素比)は、0.01~0.60であることが好ましく、0.01~0.50であることがより好ましい。
【0081】
F/Alが、0.01~0.60であることにより、機内汚染をより抑制しやすくなる。
また、F/Alが、0.60以下であることにより、ハイドロタルサイト粒子の表面電荷が過度に中和されることを抑え帯電量を安定化させることができる。
【0082】
また、ハイドロタルサイト粒子は、帯電性の安定化の観点から、その分子内に水を有し
ていることが好ましく、式(3)において、0.1<m<0.6であることがより好ましい。
【0083】
ハイドロタルサイト粒子の一次粒子の個数平均粒径は、50~1200nmであることが好ましく、60~1000nmであることがより好ましく、100~800nmであることがさらに好ましい。
【0084】
前記ハイドロタルサイト粒子は、表面処理剤によって疎水化処理されていてもよい。表面処理剤としては、高級脂肪酸類、カップリング剤類、エステル類、シリコーンオイルのようなオイル類が使用可能である。中でも高級脂肪酸類が好ましく用いられ、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸が例示される。
【0085】
ハイドロタルサイト粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.05~3質量部であり、より好ましくは0.1~1質量部である。ハイドロタルサイト粒子の質量基準の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。上記含有量は、ハイドロタルサイト粒子のトナー粒子に対する添加量を変更することにより制御することができる。
【0086】
トナーには必要に応じて、その他の外添剤を添加してもよい。その他の外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、外添剤は、さらにシリカ粒子を含有する。
【0087】
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。外添剤のBET比表面積は、10m/g以上450m/g以下であることが好ましい。
【0088】
BET比表面積は、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、(株)島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m/g)を算出することができる。
【0089】
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0090】
トナー粒子に外添剤を外添する混合機としては、特に制限されず、乾式湿式問わず公知の混合機を用いることができる。例えば、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械社製)などが挙げられる。外添剤の被覆状態を制御するために、上記の外添装置の回転数、処理時間、ジャケットの水温・水量を調整してトナーを調製することができる。
【0091】
また、外添後に粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナ
ー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製)などが挙げられる。
【0092】
以下、トナー及び各材料の物性の測定方法を説明する。
<トナーからのエステル化合物の分離>
以下の手段でトナーからエステル化合物を分離して各物性の測定に用いることができる。なお、該当のエステル化合物を単独で入手可能な場合は入手したエステル化合物を用いてもよい。
トナーに対して貧溶媒であるエタノールにトナーを分散させ、エステル化合物の融点を超える温度まで昇温させる。この時必要に応じて加圧してもよい。この操作により融点を超えたエステル化合物はエタノールに中に溶融・抽出されている。加温、さらに加圧している場合は加圧したまま固液分離することにより、トナーからエステル化合物を分離できる。次いで、抽出液を乾燥・固化することによりエステル化合物を得る。
【0093】
<エステル化合物の含有量b、並びにエステル化合物や樹脂のガラス転移温度(Tg)及び融点の測定方法>
エステル化合物の含有量b、並びにエステル化合物や樹脂のガラス転移温度(Tg)及び融点は、示差走査熱量計「Q1000」(TA Instruments社製)を用いて、ASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料1mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。
【0094】
まず、試料としてトナーを用い、0℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、この時に観測されるエステル化合物由来の吸熱ピークの吸熱量をH1(J/g)とする。
150℃で15分間保持した後、150℃から0℃まで、降温速度10℃/分で冷却する。さらに、0℃で10分間保持した後、0℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で2回目の昇温し、この時に観測されるエステル化合物由来の吸熱ピークの吸熱量をH2(J/g)とする。
なお、吸熱量は、吸熱ピークが現れる温度領域において、昇温で得られた吸熱ピークを示す示差走査熱量曲線と示差走査熱量曲線のベースラインにより囲われた面積より算出する。
また、上記の測定をエステル化合物単独で同様にして行い、2回目の昇温過程における吸熱ピークのピーク温度をエステル化合物の融点(℃)とし、吸熱量をHw(J/g)とする。
ここで、エステル化合物の含有量b(質量%)は以下の計算式で求める。
含有量b(質量%)=100×H1/Hw
【0095】
樹脂などのガラス転移温度(Tg)は、上記測定装置を用い、試料1mgについて、測定範囲20℃から140℃の間で、昇温速度1℃/min、振幅温度幅±0.318℃/minの設定でモジュレーション測定を行う。この昇温過程で、温度20℃から140℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの昇温過程の比熱変化の曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、比熱変化の曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線が交わる点の温度を、ガラス転移温度とする。
【0096】
<熱分解GCMSによるエステル化合物の同定と分子量測定>
質量分析装置:ThermoFisherScinetific社 ISQ
GC装置:ThermoFisherScinetific社 FocusGC
イオン源温度:250℃
イオン化方法:EI
質量範囲: 50-1000 m/z
カラム:HP-5MS[30m]
熱分解装置:日本分析工業社 JPS-700
590℃のパイロホイルに抽出操作により分離したエステル化合物少量と水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)1μLを加える。サンプルに対し上記条件で熱分解GCMS測定を実施し、エステル化合物由来のアルコール成分、カルボン酸成分のそれぞれについてのピークを得る。メチル化剤であるTMAHの作用によりアルコール成分、カルボン酸成分はメチル化物として検出される。
得られたピークを解析し、エステル化合物の構造を同定することにより分子量を得ることができる。
【0097】
<トナー中のフマル酸の質量基準の含有量(含有量a)の測定方法>
クロロホルム1mlにトナー0.1gを溶解する。得られた試料溶液にメタノール20mlを滴下し、溶液中の樹脂分を沈殿させたのち、遠心分離(機種HITACHI himac CR22G、条件12000rpm、10分間)によって固体分を除去する。得られた溶液から、溶媒を減圧留去し、さらに60℃雰囲気中、減圧下で4時間乾燥する。得られたサンプルに、BSTFA(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド) 0.5mL及びアセトニトリル 0.5mLを添加し、80℃ 1h加熱することでシリル化処理を行う。得られたサンプルをGC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析)により分析する。
【0098】
測定条件は、具体的には下記の通りである。
GCMS装置: Trace1310(Thermo Fisher Scientific製)、ISQ(Thermo Fisher Scientific製)
カラム:HP-5ms 30m
注入口温度:250℃ 注入量:1μL
カラムオーブン温度:40℃→300℃ (15℃/min)
MS イオン化モード:EI
イオン源温度:250℃
マスレンジ:35-800 m/z
【0099】
分析によって得られたプロファイルを解析し、測定サンプルの各ピーク位置と、フマル酸標品から得られたプロファイルのピーク位置とを比較し、さらにマススペクトルの確認を行うことで、フマル酸含有の有無を特定する。
一方、フマル酸標品のみを精秤したものを数点(例えば100ng、200ng、300ng)準備し、トナーから得られたサンプルの測定を行う前に、上記分析条件にてそれぞれ測定を行った後、フマル酸の仕込み量とフマル酸ピーク面積値から検量線を作成する。
トナー中のフマル酸の含有量aは、この検量線をもとにトナーのフマル酸成分の面積値をフマル酸の質量に換算し、更にトナー質量を基準とした量に換算することによって得られる。
【0100】
<結着樹脂、着色剤の同定と定量>
トナーに含有される樹脂や着色剤などの構成化合物の組成と比率の同定は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析計(以下、「熱分解GC/MS」とも称する)及びNMRを用いる。なお、トナーに含有される樹脂を単独で入手できる場合は単独で測定することもできる。
樹脂の構成化合物の種類の分析には熱分解GC/MSが用いられる。樹脂を550℃~
700℃で熱分解させた際に生じる、樹脂の分解物の成分のマススペクトルを分析する事で構成化合物の種類を同定する。具体的な測定条件は以下の通りである。
【0101】
[熱分解GC/MSの測定条件]
熱分解装置:JPS-700(日本分析工業)
分解温度:590℃
GC/MS装置:Focus GC/ISQ (Thermo Fisher)
カラム:HP-5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:200℃
フロー圧:100kPa
スプリット:50mL/min
MSイオン化:EI
イオン源温度:200℃ Mass Range 45-650
【0102】
続いて同定した樹脂の構成化合物の存在量比を、固体1H-NMRで測定・算出する。構造決定は、核磁気共鳴分光分析(1H-NMR)[400MHz、CDCl、室温(25℃)]を用いて行う。
測定装置:FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:1024回
得られたスペクトルの積分値から各モノマー成分のmol比を求め、これを基に組成比(質量%)を算出する。なお、トナーの50質量%以上を構成する樹脂を結着樹脂とする。
【0103】
<ハイドロタルサイト粒子の同定方法>
外添剤であるハイドロタルサイト粒子の同定は、走査型電子顕微鏡(SEM)による形状観察、及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせることで行うことができる。
走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)を用いて、最大5万倍に拡大した視野において、トナーを観察する。トナー粒子表面にピントを合わせて、判別対象の外添剤を観察する。判別対象の外添剤のEDS分析を行い、元素ピークの種類からハイドロタルサイト粒子の同定を行うことができる。
元素ピークとして、ハイドロタルサイト粒子を構成しうる金属であるMg、Zn、Ca、Ba、Ni、Sr、Cu、Feからなる群より選ばれる少なくとも一の金属の元素ピーク、及び、Al、B、Ga、Fe、Co、Inからなる群より選ばれる少なくとも一の金属の元素ピークが観察された場合に、前記2種の金属を含むハイドロタルサイト粒子の存在を類推することができる。
EDS分析により類推されたハイドロタルサイト粒子の標品を別途準備して、SEMによる形状観察およびEDS分析を行う。標品の分析結果が、判別対象の粒子の分析結果と一致するか否かを比較し、ハイドロタルサイト粒子であるか否かを判断する。
【0104】
<ハイドロタルサイト粒子の各元素比の測定方法>
ハイドロタルサイト粒子の各元素比の測定は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いた、トナーのEDSマッピング測定により行う。EDSマッピング測定では、分析エリアの各画素(ピクセル)ごとにスペクトルデータをもつ。大きな検出素子面積をもつシリコンドリフト検出器を使用することで、高感度にEDSマッピングを測定することができる。
EDSマッピング測定により得られた各画素のスペクトルデータについて統計解析を行うことにより、スペクトルの似通った画素を抽出した主成分マッピングを得ることができ
、成分を特定したマッピングが可能となる。
【0105】
観察用サンプルの作製は以下の手順で行う。
トナー0.5gを秤量し、直径8mmの円柱形の型により、ニュートンプレスを用いて荷重40kNで2分間静置し、直径8mm、厚さ約1mmの円柱形のトナーペレットを作製する。ウルトラミクロトーム(Leica社、FC7)によりトナーペレットから200nm厚の薄片を作製する。
【0106】
STEM-EDS分析は下記装置及び条件で行う。
走査透過型電子顕微鏡;日本電子社製 JEM-2800
EDS検出器;日本電子社 JED-2300T ドライSD100GV検出器(検出素子面積:100mm
EDSアナライザー;サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 NORAN System 7
【0107】
[STEM-EDSの条件]
・STEMの加速電圧:200kV
・倍率:20,000倍
・プローブサイズ 1nm
STEM画像サイズ;1024×1024pixel(同一位置のEDS元素マッピング像を取得する。)
EDSマッピングサイズ;256×256pixel、Dwell Time;30μs、積算回数;100フレーム
多変量解析に基づくハイドロタルサイト粒子中の各元素比率の算出は以下のようにして求める。
【0108】
上記STEM-EDS分析装置によって、EDSマッピングを得る。次いで、収集したスペクトルマッピングデータを、上述したNORAN System 7の測定コマンドにあるCOMPASS(PCA)モードを用いて多変量解析を行い、主成分マップイメージを抽出する。
その際に、設定値は以下のとおりとする。
・カーネルサイズ:3×3
・定量マップ設定:高(遅い)
・フィルターフィットタイプ:高精度(スロー)
同時に、この操作により、抽出される各主成分のEDS測定視野に占める面積比率が算出される。得られた各主成分マッピングがもつEDSスペクトルに対し、クリフ・ロリマー法により定量分析を実施する。
【0109】
トナー粒子部分とハイドロタルサイト粒子との区別は、得られたSTEM-EDS主成分マッピングの、上記定量分析結果をもとに行う。粒子サイズ、形状、アルミニウムやマグネシウムのような多価金属の含有量、及びその量比から該当粒子をハイドロタルサイト粒子と同定できる。
また、下記手段により、ハイドロタルサイト粒子の内部にフッ素及びアルミニウムが存在しているかどうかを判断しうる。
【0110】
<ハイドロタルサイト粒子のフッ素及びアルミニウムの分析方法>
上述の方法で得られたSTEM-EDSマッピング分析によるマッピングデータをもとに、ハイドロタルサイト粒子のフッ素及びアルミニウムの分析を行う。具体的には、ハイドロタルサイト粒子の外周に対して法線方向にEDSライン分析を行い、粒子内部に存在するフッ素及びアルミニウムの分析を行う。
ライン分析の模式図を図1(a)に示す。トナー粒子1、及びトナー粒子2に隣接しているハイドロタルサイト粒子3において、ハイドロタルサイト粒子3の外周に対して法線方向、すなわち、5の方向にライン分析を行う。なお、4はトナー粒子の境界を示す。
取得したSTEM像中のハイドロタルサイト粒子が存在する範囲を矩形選択ツールで選択し、以下の条件でライン分析を行う。
ライン分析条件
STEM倍率;800,000倍
ライン長さ;200nm
ライン幅;30nm
ライン分割数;100点(2nmごとに強度測定)
【0111】
ハイドロタルサイト粒子のEDSスペクトルにおいてフッ素又はアルミニウムの元素ピーク強度がバックグラウンド強度の1.5倍以上存在する場合、かつ、ライン分析におけるハイドロタルサイト粒子の両端部(図1(a)の点a、点b)におけるフッ素又はアルミニウムの元素ピーク強度が、それぞれ点cにおけるピーク強度の3.0倍を超えない場合に、その元素がハイドロタルサイト粒子の内部に含有されていると判断する。なお点cは、線分abの中点(すなわち、上記両端部の中点)とする。
ライン分析で得られたフッ素及びアルミニウムのX線強度の例を、図1(b)及び図1(c)に示す。ハイドロタルサイト粒子が内部にフッ素及びアルミニウムを含む場合、ピーク強度で規格化したX線強度のグラフは図1(b)のような形状を示す。ハイドロタルサイト粒子が表面処理剤由来のフッ素を含む場合、ピーク強度で規格化したX線強度のグラフは図1(c)のように、フッ素のグラフにおいて両端部の点、a、b付近にピークを有する。ライン分析における、フッ素及びアルミニウム由来のX線強度を確認することで、ハイドロタルサイト粒子が内部にフッ素及びアルミニウムを含有していることを確認できる。
【0112】
(ハイドロタルサイト粒子におけるフッ素のアルミニウムに対する原子数濃度の比の値(元素比)F/Alの算出方法)
上述のSTEM-EDSマッピング分析によるハイドロタルサイト粒子由来の主成分マッピングから得られた、ハイドロタルサイト粒子におけるフッ素とアルミニウムの原子数濃度の比(元素比)F/Alを複数の視野で取得し、該当粒子100個以上についての相加平均をとることで、ハイドロタルサイト粒子におけるフッ素のアルミニウムに対する原子数濃度の比(元素比)F/Alとする。
【0113】
<ハイドロタルサイト粒子の一次粒子の個数平均粒径の測定方法>
ハイドロタルサイト粒子の個数平均粒径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(商品名;日立製作所製)及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を組み合わせて行う。外添剤が外添されたトナーを観察して、最大20万倍に拡大した視野において、ハイドロタルサイト粒子を撮影する。撮影された画像から、ハイドロタルサイト粒子を選び出し、ランダムに100個のハイドロタルサイト粒子の一次粒子の長径を測定して個数平均粒径を求める。観察倍率は、外添剤の大きさによって適宜調整する。ここで、観察上、一粒と見える粒子は一次粒子として判断する。
【0114】
<ピーク分子量(Mp)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂及びトナーなどのピーク分子量(Mp)や重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。まず、室温で、測定したいサンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。溶解しにくいようであれば35℃以下の範囲で加熱する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%とな
るように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF-604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6mL/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成された分子量校正曲線を使用する。
【0115】
<結着樹脂などの酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムの量(mg)である。酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
【0116】
(2)操作
(A)本試験
粉砕した結着樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0117】
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0118】
<トナー又はトナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー又はトナー粒子の重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.5
1」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なう。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
【0119】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0120】
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散
器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0121】
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0122】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scien
tific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0123】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【実施例0124】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。実施例中で使用する「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0125】
以下、トナーの製造例について説明する。
<ポリエステル樹脂1の製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、テレフタル酸1.0mol部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物0.65mol部、エチレングリコール0.35mol部を添加して、撹拌しながら温度130℃まで加熱した。その後、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫を、上記単量体の総量100.0部に対して0.52部加えた後、温度を200℃に昇温し、所望の分子量になるまで縮重合した。さらに、無水トリメリット酸を0.03mol部加え、1時間反応を継続し、非晶性のポリエステル樹脂1を得た。得られたポリエステル樹脂1の重量平均分子量(Mw)は6000、ガラス転移温度(Tg)は49℃、酸価は11.2mgKOH/gであった。
【0126】
<ポリエステル樹脂2の製造例>
・フマル酸:24.61部(50.0モル%)
・ビスフェノールA-プロピレンオキサイド2.2モル付加物:75.39部(50.0モル%)
・酸化ジブチル錫:0.5部
・ハイドロキノン:0.05部
上記材料を減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中に仕込み、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、さ
らに60~70mmHgの減圧下で1時間反応させ、非晶性のポリエステル樹脂2を得た。なお本明細書において、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
得られたポリエステル樹脂2の物性は酸価=20.3mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=14000、ガラス転移温度=59.6℃であった。
【0127】
<ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製>
・ポリエステル樹脂1: 200部
・イオン交換水: 500部
・フマル酸: 0.170部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部とイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液1を得た。
このポリエステル樹脂粒子分散液1の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ポリエステル樹脂粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0128】
<ポリエステル樹脂粒子分散液2~8の調製>
ポリエステル樹脂粒子分散液1の製造例において、フマル酸の添加量を表1の量に変更した以外は同様にしてポリエステル樹脂粒子分散液2~8を得た。
【0129】
【表1】
【0130】
<ポリエステル樹脂粒子分散液9の調製>
・ポリエステル樹脂1: 200部
・イオン交換水: 500部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部とイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液9を得た。
このポリエステル樹脂粒子分散液9の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ポリエステル樹脂粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0131】
<ポリエステル樹脂粒子分散液10の調製>
・ポリエステル樹脂2: 200部
・イオン交換水: 500部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部とイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液10を得た。
このポリエステル樹脂粒子分散液10の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ポリエステル樹脂粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0132】
<ポリエステル樹脂粒子分散液11の調製>
・ポリエステル樹脂1: 200部
・イオン交換水: 500部
・フタル酸: 0.170部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部とイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液11を得た。
このポリエステル樹脂粒子分散液11の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ポリエステル樹脂粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0133】
<ポリエステル樹脂粒子分散液12の調製>
・ポリエステル樹脂1: 200部
・イオン交換水: 500部
・マレイン酸: 0.170部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部とイオン交換水297部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散することでポリエステル樹脂粒子分散液12を得た。
このポリエステル樹脂粒子分散液12の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、ポリエステル樹脂粒子の個数平均粒径は、0.25μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0134】
<ワックス分散液1の調製>
・イオン交換水 500部
・ワックス(ペンタエリスリトールテトラべへネート(ペンタエリスリトールとベヘン酸のエステル)) 250部
上記材料をステンレス製の容器に入れ、温浴下95℃まで加熱溶融し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて7800rpmで十分撹拌しながら、0.1mol/L炭酸水素ナトリウムを加えpHを7.0よりも大きくした。
その後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部とイオン交換水245部の混合溶液を徐々に滴下し乳化分散を行った。このワックス粒子分散液に含まれるワックス粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、含まれるワックス粒子の個数平均粒径は、0.35μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0135】
<ワックス分散液2~8の調製>
ワックス分散液1の製造例において、ワックスの種類を表2の量に変更した以外は同様
にしてワックス分散液2~8を得た。
【0136】
【表2】
【0137】
<式(2)で示されるマゼンタ顔料の製造例>
無水エタノール70mlに4-(1-アミノ-2-メトキシフェニル)―フェニルアニリドの塩酸塩0.1mol部を溶解させた溶液に、塩化水素を飽和させたエタノール1.9mlを加えた。この混合溶液を氷浴中でかき混ぜながら、亜硝酸ペンチル16gをゆっくりと滴下した。滴下後氷浴から取り出し室温に戻して10分間放置した。この混合溶液に無水ジメチルエーテルを滴下し析出してくる塩を取り出し、ジメチルエーテルとエタノールの混合溶液で洗うことでジアゾニウム塩1を得た。
ジアゾニウム塩1とピリジン80mlとを氷浴中で混合しながら1-塩化アニリド-2-ナフトール(紀和化学工業株式会社製、Grounder E)を0.025molピリジン80mlに溶解させた溶液を加え、さらに1時間氷浴で冷やしながら撹拌を続けた。次に、反応混合物を室温に戻し、1時間さらにかき混ぜて深い赤色の液体を得た。ドラフト内で反応混合物をかき混ぜながら、塩酸150mlと氷1000gの混合物に少しずつ反応混合物を加えた。氷が解けたら2000mlの水を加え、生成物をろ過して取り出し乾燥させた。エタノールで再結晶を行い、式(2)で示されるマゼンタ顔料を得た。
【0138】
<着色剤粒子分散液1の調製>
・式(2)で示されるマゼンタ顔料: 100部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム: 5部
・イオン交換水: 400部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液1に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0139】
<着色剤粒子分散液2の調製>
・C.I.PigmentRed122: 100部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム: 5部
・イオン交換水: 400部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液2に含まれる着色剤粒子の粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-960V2)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の個数平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0140】
<トナー粒子1の製造例>
・ポリエステル樹脂粒子分散液1: 500部
・ワックス粒子分散液1: 73部
・着色剤粒子分散液1: 50部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム: 5部
反応器(容積1リットルフラスコ、バッフル付きアンカー翼)にポリエステル樹脂粒子分散液1、ワックス粒子分散液1及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを仕込み、均一に混合した。一方、500mLビーカーに着色剤粒子分散液1を均一に混合しておき、これを撹拌しながら反応器に徐々に添加し混合分散液を得た。得られた混合分散液を撹拌しながら硫酸アルミニウム水溶液を固形分として0.5部、滴下し凝集粒子を形成させた。
滴下終了後、窒素を用いて系内を置換し、50℃にて1時間、さらに55℃にて1時間保持した。その後昇温して90℃にて30分保持した。その後、63℃まで降温したのち3時間保持させ、融合粒子を形成させた。このときの反応は窒素雰囲気下で行った。所定時間終了後、毎分0.5℃の降温速度にて室温になるまで冷却を行った。
冷却後、反応生成物を10L容量の加圧濾過器にて、0.4MPaの圧力下で固液分離を行い、トナーケーキを得た。その後、イオン交換水を加圧濾過器に満水になるまで加え、0.4MPaの圧力で洗浄した。さらに同様に洗浄して、計3回洗浄した。その後0.4MPaの圧力下で固液分離をしたのち、45℃で流動層乾燥を行い、重量平均粒径(D4)が6.8μm、平均円形度が0.97のトナー粒子1を得た。
【0141】
<トナー粒子2~26の製造例>
トナー粒子1の製造例において、ポリエステル樹脂粒子分散液の種類、ワックス粒子分散液の種類及び添加量、並びに着色剤粒子分散液の種類を変更した以外は同様にしてトナー粒子2~26を得た。得られたトナー粒子2~26の物性を表3に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
<ハイドロタルサイト粒子1の製造例>
ハイドロタルサイト粒子1は以下のように製造した。
1.03mol/Lの塩化マグネシウムと0.239mol/Lの硫酸アルミニウムとの混合水溶液(A液)と、0.753mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液(B液)及び3.39mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(C液)を調製した。
次に、A液、B液、およびC液を、定量ポンプを用いて、A液:B液を4.5:1の容量比となる流量で反応槽に注加し、C液で反応液のpH値を9.3~9.6の範囲に保持し、反応温度は40℃で行い沈殿物を生成させた。濾過、洗浄後、イオン交換水に再乳化させて、原料のハイドロタルサイトスラリーを得た。得られたハイドロタルサイトスラリー中のハイドロタルサイトは、5.6質量%濃度であった。
得られたハイドロタルサイトスラリーを40℃で一晩真空乾燥した。NaFを濃度が100mg/Lとなるようにイオン交換水に溶解させ、1mol/L HCI又は1mol/L NaOHを用いてpH7.0に調整した溶液を作製し、そこに乾燥したハイドロタルサイトを0.1%(w/v%)となるように添加した。マグネティックスターラーを用いて沈降しない程度に48時間定速撹拌を行った。その後、孔径0.5μmのメンブレンフィルターで濾過し、イオン交換水で洗浄した。得られたハイドロタルサイトを40℃で一晩真空乾燥し、その後解砕処理を行った。得られたハイドロタルサイト粒子1の組成及び物性を表4に示す。
【0144】
<ハイドロタルサイト粒子2~6の製造例>
NaF水溶液の濃度を適宜調整する以外は、ハイドロタルサイト粒子1の製造例と同様にして、ハイドロタルサイト粒子2~6を得た。得られたハイドロタルサイト粒子2~6の組成及び物性を表4に示す。ハイドロタルサイト粒子1~4,6では、ハイドロタルサイト粒子の内部にフッ素及びアルミニウムが存在していた。
【0145】
【表4】
【0146】
<トナー1の製造例>
上記で得られたトナー粒子1(100.0部)に対して、ハイドロタルサイト粒子1(0.3部)及びシリカ粒子1(RX200:一次平均粒子径12nm、HMDS処理、日本アエロジル社製)(1.5部)を、FM10C(日本コークス工業株式会社製)によって外添混合した。外添条件は、下羽根をA0羽根とし、デフレクターの壁との間隔を20mmにセットさせ、トナー粒子の仕込み量:2.0kg、回転数:66.6s-1、外添時間:10分、冷却水を温度20℃・流量10L/minで行った。
その後、目開き200μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表5に示す。
【0147】
<トナー2~21、比較トナー1~11の製造例>
トナー1の製造例において、トナー粒子の種類、ハイドロタルサイト粒子の種類を表5のように変更した以外は同様にしてトナー2~21、比較トナー1~11を得た。得られたトナー2~21、比較トナー1~11の物性を表5に示す。
なお、ハイドロタルサイト粒子1~4,6を用いた各トナーではハイドロタルサイト粒子の内部にフッ素及びアルミニウムが存在し、表4と同じF/Al比が確認できた。
【0148】
【表5】
【0149】
得られた各トナーを用いて、以下の評価を行った。
<機内汚染の評価>
画像形成装置として、レーザープリンター(商品名:LBP-9650Ci、キヤノン社製)の改造機、及びプロセスカートリッジ(商品名:トナーカートリッジ323、キヤノン社製)を用いた。画像形成装置の改造点としては、評価機本体のギア及びソフトウェアを変更することにより、プロセススピードを350mm/secに変更した。またその他の改造点として、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するようにした。定着器周りの汚染状態を目視により評価した。評価紙としては、キヤノンマーケティングジャパンが販売するCS-680を用いた。
【0150】
耐久評価チャートは各色印字率が5%(フルカラー印字率20%)のオリジナルチャートを用い、マゼンタステーションに、評価対象のトナーを詰め替えたカートリッジを装着し、トナーが無くなる毎にカートリッジ交換を行い、プリントを続けた。常温常湿環境下(23℃,50%RH)にて、普通紙モードで計200,000枚のプリント試験を行った。耐久後の定着器および定着器と加圧部材とのニップへ紙を案内するための定着ガイド部の汚染状態と最後に出力された画像への影響を目視で観察して、以下の基準で評価した。
A:定着器周辺に目立った汚染は見られない。
B:定着ガイド部に汚染がわずかに観察される。
C:定着器周辺及び定着ガイド部に汚染がわずかに観察される。
D:定着ガイド部に汚染の広がりが観察され定着器周辺に汚染がわずかに観察される。
E:定着器周辺及び定着ガイド部にかなりの量の汚染が目立ち、出力画像に汚れが発生する。
【0151】
<定着分離性評価>
上記マシンにて常温常湿度環境(25.0℃/50%RH)でトナー載り量0.90mg/cmとなるように縦5.0cm、横20.0cmのベタ画像を、上記評価紙上に形成した。この際、通紙方向における上端部の余白部分の範囲を変更しつつ、画像形成を行った。
設定温度を200℃として上記未定着画像の定着を行った。紙が定着ローラに巻きつかない最小の余白を以下の基準に沿って評価した。
[評価基準]
A:巻きつきなし又は上端部からの余白が1.0mm未満
B:上端部からの余白が、1.0mm以上4.0mm未満
C:上端部からの余白が、4.0mm以上7.0mm未満
D:上端部からの余白が、7.0mm以上
上記の評価結果を表6に示す。
【0152】
【表6】
【0153】
実施例1~21では、いずれの評価項目においても良好な結果が得られた。一方、比較例1~11においては機内汚染又は分離性について実施例に劣る結果となった。
以上の結果より本開示によれば、耐オフセット性に優れ、かつ、定着器周辺の機内汚染を抑制できるトナーを提供することができる。
【0154】
本開示は以下の構成に関する。
(構成1)
結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該トナーが、フマル酸を含有し、
該ワックスが、
ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一のアルコールと、
炭素数16~25の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一のカルボン酸と、のエステル化合物を含有し、
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該エステル化合物の含有量を含有量bとしたとき、該含有量bが、1~20質量%であり
該トナーの全質量を基準とした、該トナー中の該フマル酸の含有量を含有量aとしたとき、該含有量aが、10~1200質量ppmである、
ことを特徴とするトナー。
(構成2)
前記エステル化合物が、炭素数18~22の脂肪族モノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一と、ペンタエリスリトールと、のエステル化合物を含む、構成1に記載のトナー。
(構成3)
前記含有量aが、150~850質量ppmである、構成1又は2に記載のトナー。
(構成4)
前記含有量a(質量ppm)及び前記含有量b(質量%)が、下記式(1)を満たす、構成1~3のいずれかに記載のトナー。
2≦含有量a/含有量b≦120 ・・・(1)
(構成5)
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含む、構成1~4のいずれかに記載のトナー。
(構成6)
前記トナー粒子が、下記式(2)で示されるマゼンタ顔料を含有する、構成1~5のいずれかに記載のトナー。
(構成7)
前記トナーが、外添剤としてハイドロタルサイト粒子を含有する、構成1~6のいずれかに記載のトナー。
(構成8)
前記トナーのSTEM-EDSマッピング分析におけるライン分析において、
前記ハイドロタルサイト粒子の内部にフッ素及びアルミニウムが存在し、
前記トナーのSTEM-EDSマッピング分析による前記ハイドロタルサイト粒子の主成分マッピングから得られた、前記ハイドロタルサイト粒子における該フッ素の該アルミニウムに対する原子数濃度の比の値F/Alが、0.01~0.60である構成7に記載のトナー。
(構成9)
前記トナー粒子が、前記フマル酸を含有する、構成1~8のいずれかに記載のトナー。
【符号の説明】
【0155】
1:トナー粒子1、2:トナー粒子2、3:ハイドロタルサイト粒子、4:トナー粒子の境界、5:ライン分析の分析方向
図1