(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160841
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20241108BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20241108BHJP
F28F 13/12 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F28F1/40 L
F28F1/40 B
F28F1/40 D
F28D1/047 B
F28F13/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076271
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】515303621
【氏名又は名称】山田 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰平
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA36
3L103DD04
3L103DD25
3L103DD36
(57)【要約】
【課題】流体の乱流化により熱交換効率を向上させた熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器であって、内部を流動する第1の流体と、外部の第2の流体との間で熱交換を行う配管と、配管内の2箇所以上に設けられ、第1の流体を配管の軸方向周りに旋回させる複数の羽根体とを備え、配管のうち、少なくとも2つの羽根体で配管の延伸方向に挟まれた部分の内周面には、配管の延伸方向に延びる複数のリブが設けられる、熱交換器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器であって、
内部を流動する第1の流体と、外部の第2の流体との間で熱交換を行う配管と、
前記配管内の2箇所以上に設けられ、前記第1の流体を前記配管の軸方向周りに旋回させる複数の羽根体とを備え、
前記配管のうち、少なくとも2つの前記羽根体で前記配管の延伸方向に挟まれた部分の内周面には、前記配管の延伸方向に延びる複数のリブが設けられる、熱交換器。
【請求項2】
前記リブの各々の延伸方向と直交する平面に沿った断面が略三角形である、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記リブの各々の稜線が、前記配管の延伸方向に延びる、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記リブの各々の稜線が、前記第1の流体の旋回方向と逆方向の螺旋に沿って延びる、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記リブの各々は、稜線よりも前記第1の流体の旋回方向における上流側に位置する第1の面と、稜線よりも前記第1の流体の旋回方向における下流側に位置する第2の面とを有し、前記第1の面及び前記第2の面の一方または両方が曲面である、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1の面の最小幅が前記第2の面の最小幅の1.5倍より大きい、請求項5に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、内管とその外側の外管とを有し、内管内を流れる流体と、内管と外管との間を流れる流体との間で熱交換を行う二重管式熱交換器が記載されている。特許文献1においては、内管を螺旋状に捻って形成すると共に、内管の外面に設けた板状部材の外周に旋回部を設けることによって、内管と外管の間を流れる流体の乱流化を促進し、熱交換性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、熱交換器の熱交換効率を向上させる手法として、配管内を流れる流体の乱流化を促進することが知られている。
【0005】
本発明は、流体の乱流化により熱交換効率を向上させた熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱交換器は、内部流動する第1の流体と、外部の第2の流体との間で熱交換を行う配管と、配管内の2箇所以上に設けられ、第1の流体を配管の軸方向周りに旋回させる複数の羽根体とを備え、配管のうち、少なくとも2つの羽根体で配管の延伸方向に挟まれた部分の内周面には、配管の延伸方向に延びる複数のリブが設けられるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流体の乱流化により熱交換効率を向上させた熱交換器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る熱交換器を模式的に示す一部破断図
【
図4】
図3に示したIV-IVラインから見た断面図
【
図5】
図1に示したV-Vラインから見た配管の端面図
【
図6】配管に設けられるリブの断面形状を説明するための図
【
図7】変形例1に係る熱交換器におけるリブの形状を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る熱交換器を模式的に示す一部破断図である。
【0010】
熱交換器100は、配管1と、配管1内に設けられる複数の羽根体2とを備える。本実施形態に係る熱交換器100は、シェルの内部に配管1が収容された構造のシェルアンドチューブ式熱交換器、配管1の外面にフィンが取り付けられたフィンチューブ式熱交換器、配管1が外管に収容された構造の二重管式熱交換器、フィンチューブ式熱交換器にファンが設けられた空冷式熱交換器、配管1がコイル状に巻回されたコイル式熱交換器等、種々の構造の熱交換器に適用可能である。
図1で記載を省略しているが、適用する熱交換器の構造に応じて、シェル、外管、フィン等の構造物が適宜設けられる。
【0011】
配管1は、内部を第1の流体が流動し、配管1の外部の第2の流体との間で熱交換を行う部材であり、ストレート部と屈曲部とを有する。第1の流体及び第2の流体は、気体及び液体のいずれであっても良い。つまり、第1の流体及び第1の流体の組み合わせとしては、液体と液体の組み合わせ、気体と気体の組み合わせ、液体と気体の組み合わせ、気体と液体の組み合わせがあり得る。
【0012】
図2は、
図1に示した羽根体の斜視図であり、
図3は、
図1に示した羽根体の平面図であり、
図4は、
図3に示したIV-IVラインから見た断面図である。
【0013】
羽根体2は、配管1内の2箇所以上に間隔を空けて設けられ、配管1内を流れる第1の流体を配管1の軸方向周りに旋回させ、第1の流体の旋回流を発生させる部材である。隣接する羽根体2は、配管1の延伸方向に所定間隔を空けて配置されている。複数の羽根体2が間隔を空けず所定の回転角度ずつ回転位置をずらして連続して配置されていても良いが、隣接する羽根体2の間に間隔を設けることによって、圧力損失を低減することができる。羽根体2は、円形のコア5と、コア5の外周面との間に所定の間隔を空けてコア5を取り囲む円筒形の周壁6と、コア5の外周面と周壁6の内周面を架け渡すように設けられた複数のブレード7とを有する。
図2及び
図3に示すように、ブレード7の各々は、コア5の中心軸AXに対して所定の角度で傾斜して配置されており、コア5の外周面と周壁6の内周面との間の空間を流れる流体をコア5の中心軸AX周りに旋回させる。具体的には、
図4に示すように、ブレード7の各々は、第1の流体の旋回方向(本実施形態では、上流側から見たときに、コア5の中心軸AXを中心とする反時計回り方向)に向かうにつれて、コア5の上流側の面を含む平面Pからブレード7の表面(上流側の面)までの垂直距離が増加するように傾斜している(
図6)。ブレード7の各々の傾斜角度は一定である。複数の羽根体2は、第1の流体を同じ方向に旋回させるように構成されている。
【0014】
本実施形態において、ブレード7は、
図4に示すように、平板状の主面部13と、主面部13の下流側の端縁に沿って設けられた屈曲部14とを有する。主面部13の上流側の端縁は、流体抵抗を低減するため薄刃状に形成されていることが好ましい。屈曲部14は、ブレード7の下流側の面に沿って流れる流体に乱流(渦)を発生させる。屈曲部14によって乱流が生じることにより熱伝達効率を向上させることができる。ブレード7の屈曲部14を省略し、ブレード7に第1の流体を旋回させる機能のみ付与した構成としても良い。ブレード7の数や傾斜角度は、特に限定されず、熱交換器100に供給する流体の粘度や流速、流体に加えられる圧力、許容される圧力損失等に基づいて設定することができる。
【0015】
本実施形態では、
図1に示すように、配管1の直線部のそれぞれに3つずつ羽根体2が設けられているが、羽根体2の数は2以上であれば良い。羽根体2を配管1の屈曲部にも設けても良いが、本実施形態のように、配管1の屈曲部に羽根体2を設けず、屈曲部の前後部分にそれぞれ羽根体2を設けても良い。
【0016】
図5は、
図1に示したV-Vラインから見た配管の端面図である。
【0017】
本実施形態に係る熱交換器100の配管1の内周面には、配管1の延伸方向に延びる複数のリブ3が配管1の周方向の全周に渡って設けられている。リブ3は、2つの羽根体2で配管1の延伸方向に挟まれた部分に少なくとも設けられていれば良く、例えば、配管1の屈曲部のリブを省略しても良いが、本実施形態のように、配管1の全体にリブ3を設けても良い。尚、リブ3を有する配管1は、例えば、金属材料の押出成形により一体的に形成することができる。
【0018】
図6は、配管に設けられるリブの断面形状を説明するための図であり、リブの延伸方向と直交する平面に沿った断面を示す。
【0019】
リブ3の各々は、その延伸方向と直交する平面に沿った断面(横断面)が略三角形であることが好ましい。リブ3の各々は、上面に2つの面を有する。ここで、リブ3の稜線8よりも第1の流体の旋回方向における上流側に位置する面を第1の面9とし、稜線8よりも第1の流体の旋回方向における下流側に位置する面を第2の面10とする。第1の面9及び第2の面10はいずれも平面であっても良いし、曲面であっても良い。
図6(a)は、第1の面9及び第2の面10の両方が平面であるリブ3の例を示す。
図6(b)は、第1の面9及び第2の面10の両方が平面であるリブ3の例を示す。
図6(c)は、第1の面9が曲面で、第2の面10が平面である例を示す。第1の面9を曲面にすると、圧力損失を低減することができるため好ましい。第1の面9及び第2の面10が曲面である場合、凹面が好ましい。また、リブ3の稜線8近傍の横断面形状は、角張っていることが好ましい。
【0020】
配管1の供給された第1の流体は、羽根体2のコア5と周壁6との間に設けられたブレード7の間を通過して下流に流れる。このとき、ブレード7が傾斜していることにより、第1の流体に旋回流が発生する。旋回流が発生すると第1の流体に遠心力が働く。第1の流体は、周壁6のリブ3の第1の面9に沿って流れた後、稜線8部分を超えると、第2の面10により形成される段差により乱流(渦)が発生する。旋回により生じた遠心力により、リブ3の近傍を流れる第1の流体には強い力が働くため、リブ3の稜線8を超えた部分に生じる乱流も強くなる。したがって、配管1の内周面に設けた複数のリブ3により乱流の発生を促進し、熱伝達効率を向上させることができる。
【0021】
ここで、リブ3の第1の面9の最小幅をW1、第2の面の最小幅をW2とすると、W1>W2の関係を満たすことが好ましく、W1>1.5W2の関係を満たすことがより好ましい。W1がW2より大きい場合、第1の流体が第1の面9に沿って十分に加速できるため、稜線8部分を超えた際に効果的に乱流を発生させることができる。尚、第1の面9及び第2の面10の最小幅とは、リブ3の延伸方向と直交する平面(後述する変形例1のように、リブ3が螺旋状に形成されている場合は、リブ3の稜線上の任意の点における接線と直交する平面)に沿ったリブ3の断面上において、第1の面9及び第2の面10の外郭線の両端間の距離をいう。
【0022】
以上説明したように、本実施形態に係る熱交換器100は、配管1内を流動する第1の流体を旋回させる2以上の羽根体2を備える。羽根体2により第1の流体を旋回させることにより、第1の流体の通過長さを長くすることができるため、流量あたりの第1の流体と配管1の外周壁との接触時間が長くなる。これにより、第1の流体から配管1との間の熱伝達量を増加させ、第1の流体と第2の流体との熱交換効率を向上させることができる。
【0023】
また、配管1の内周面には、配管1の延伸方向に延びる複数のリブ3が設けられている。第1の流体の旋回流がリブ3に衝突すると乱流が発生するため、この乱流によっても熱伝達量を増加させ、熱交換効率を向上させることができる。特に、本実施形態のように、リブ3の横断面を略三角形とした場合、圧力損失を低減しつつ、リブ3の稜線を越えた部分で乱流が発生しやすいため、更に熱交換効率の向上を図ることができる。
【0024】
(変形例1)
上記の実施形態では、配管1の延伸方向に沿って延びるように複数のリブ3を設けた例を説明したが、以下の変形例1のようにリブ3を形成しても良い。
【0025】
図7は、変形例1に係る熱交換器におけるリブの形状を説明するための模式図である。
図7は、配管1内において第1の流体の流れる方向と、複数のリブの稜線の位置との関係を模式的に示したものである。
図7において、太い曲線が第1の流体の流れる方向を表し、細い曲線が複数のリブの稜線の位置を示す。
図7は、配管1を側方外側から透過的に見た図に相当し、曲線の実線部分が配管1の手前側部分に相当し、曲線の破線部分が配管の裏側(視認している側と反対側)の部分に相当する。
【0026】
変形例1において、複数のリブ3は、各々の稜線が第1の流体の旋回方向と逆方向の螺旋に沿って延びるように形成されている。リブ3の螺旋周期は、リブ3の稜線と第1の流体の旋回方向とが略直交するように設定することが好ましい。このようにリブ3を第1の流体の旋回方向と逆の螺旋状に延びる構成することにより、第1の流体の旋回流を一定の角度(例えば、略90度)でリブ3に衝突させることができるため、配管1の全域において乱流を安定して発生させることができ、年交換効率の更なる向上を図ることができる。
【0027】
(変形例2)
図8は、変形例2に係る熱交換器を模式的に示す図である。
【0028】
変形例2に係る熱交換器は、上記の実施形態に係る熱交換器100の配管1の外面に複数のフィン16を設けたものである。フィン16を設けたことにより、第1の流体と第2の流体との熱交換効率を向上させることができる。変形例2に係る熱交換器においては、熱交換効率を向上させるために、フィン16が設けられている部分にリブ3を設けることが好ましい。
【0029】
(その他の変形例等)
尚、上記の実施形態においては、本発明を熱交換器に適用した例を説明したが、上述したリブを有する配管と羽根体とを備えた配管部品を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、熱交換器に利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 配管
2 羽根体
3 リブ
8 稜線
9 第1の面
10 第2の面
100 熱交換器