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特開2024-160843結線システム、結線装置及び結線方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160843
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】結線システム、結線装置及び結線方法
(51)【国際特許分類】
   F42D 1/08 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
F42D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076278
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
(72)【発明者】
【氏名】西浦 秀明
(72)【発明者】
【氏名】山本 信吾
(72)【発明者】
【氏名】谷口 信博
(72)【発明者】
【氏名】江沢 迪和
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】大西 公平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 佑貴
(57)【要約】
【課題】電気的な結線をより適切に行うことが可能な技術を実現する。
【解決手段】結線システム1において、フック機構208L,208Rは、移動機構25に移動されることで空間に存在する線状部材を捕捉する。上側把持部材210L,210Rは、捕捉された線状部材を把持する。剥離部材214L,214Rは、把持された線状部材の芯材を残して被覆部分を切断し、切断された被覆部分が被覆していた芯材を露出させる。下側把持部材218L,218Rは、線状部材において、芯材が露出された部分を挟んで、上側把持部材210L,210Rが把持する部分と反対側を把持する。捩じり回転ユニットTは、下側把持部材218L,218Rを一体として、上側把持部材210L,210Rに対して水平方向に回転することにより2本の線状部材を撚り合わせる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状部材を結線させる結線機構と、
前記結線機構を移動させる移動機構と、
を備え、
前記結線機構は、
前記移動機構に移動されることで空間に存在する線状部材を捕捉する捕捉部と、
前記捕捉部に捕捉された前記線状部材を把持する第1把持部と、
前記第1把持部に把持された前記線状部材の芯材を残して被覆部分を除去し、除去された被覆部分が被覆していた前記芯材を露出させる被覆除去部と、
前記線状部材において、前記被覆除去部によって前記芯材が露出された部分を挟んで、前記第1把持部が把持する部分と反対側を把持する第2把持部と、
を備える第1線状部材処理機構及び第2線状部材処理機構と、
前記第1線状部材処理機構に把持された前記線状部材と、前記第2線状部材処理機構に把持された前記線状部材とを電気的に接合させる接合機構と、
を備えることを特徴とする結線システム。
【請求項2】
前記接合機構は、前記第1線状部材処理機構の前記第2把持部及び前記第2線状部材処理機構の前記第2把持部を一体として、前記第1線状部材処理機構の前記第1把持部及び前記第2線状部材処理機構の前記第1把持部に対して水平方向に回転することにより、前記第1線状部材処理機構が把持する前記線状部材と、前記第2線状部材処理機構が把持する前記線状部材とを撚り合わせることを特徴とする請求項1に記載の結線システム。
【請求項3】
前記第1線状部材処理機構及び前記第2線状部材処理機構は、
前記第2把持部で把持された部分に対して、前記被覆除去部によって前記芯材が露出された部分とは反対側に延びる前記線状部材を切断する線状部材切断部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の結線システム。
【請求項4】
前記第1線状部材処理機構及び前記第2線状部材処理機構において、
前記捕捉部は、先端に鉤状部材を備え、前記移動機構によって前記結線装置が移動される動きにより、空中に存在する前記線状部材を前記鉤状部材に捕捉することを特徴とする請求項1または2に記載の結線システム。
【請求項5】
前記第1線状部材処理機構及び前記第2線状部材処理機構において、
前記第1把持部及び前記第2把持部は、前記捕捉部の前記鉤状部材によって捕捉された前記線状部材を当該鉤状部材の鉛直下方の位置で把持することを特徴とする請求項4に記載の結線システム。
【請求項6】
前記接合機構は、前記第1線状部材処理機構の前記第2把持部及び前記第2線状部材処理機構の前記第2把持部を一体として、前記捕捉部に捕捉された2つの前記線状部材の上面視における中間位置を中心に、前記第1線状部材処理機構の前記第1把持部及び前記第2線状部材処理機構の前記第1把持部に対して水平方向に回転することにより、前記第1線状部材処理機構が把持する前記線状部材と、前記第2線状部材処理機構が把持する前記線状部材とを撚り合わせることを特徴とする請求項5に記載の結線システム。
【請求項7】
前記第1線状部材処理機構及び前記第2線状部材処理機構において、
前記捕捉部は、一対の可動部材が開閉する開閉機構を備え、当該一対の可動部材が開閉する動作により、空中に存在する前記線状部材を前記一対の可動部材の間に捕捉することを特徴とする請求項1または2に記載の結線システム。
【請求項8】
前記第1把持部及び前記第2把持部は、前記線状部材を把持する場合、伸長して前記線状部材を把持し、前記線状部材を把持しない場合、短縮して収容された状態となることを特徴とする請求項1または2に記載の結線システム
【請求項9】
前記第1把持部、前記第2把持部及び前記被覆除去部の少なくともいずれかは、一端において回転可能に連結され、互いに閉じる方向に付勢された一対の可動部材と、前記一対の可動部材の前記一端から他端の方向に当該一対の可動部材を進退させるアクチュエータと、前記一対の可動部材の間に設置され、前記一対の可動部材の進退動作とは連動することなく固定して設置されたカム部材と、を備え、前記一対の可動部材の内側には、前記カム部材と嵌合する溝が形成されていると共に、前記溝における前記一端側及び前記他端側に前記カム部材を収容可能な収容部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の結線システム。
【請求項10】
空間に存在する線状部材を捕捉する捕捉部と、
前記捕捉部に捕捉された前記線状部材を把持する第1把持部と、
前記第1把持部に把持された前記線状部材の芯材を残して被覆部分を除去し、除去された被覆部分が被覆していた前記芯材を露出させる被覆除去部と、
前記線状部材において、前記被覆除去部によって前記芯材が露出された部分を挟んで、前記第1把持部が把持する部分と反対側を把持する第2把持部と、
を備える第1線状部材処理機構及び第2線状部材処理機構と、
前記第1線状部材処理機構に把持された前記線状部材と、前記第2線状部材処理機構に把持された前記線状部材とを電気的に接合させる接合機構と、
を備えることを特徴とする結線装置。
【請求項11】
複数の線状部材を結線させる結線機構と、
前記結線機構を移動させる移動機構と、
を備える結線システムが実行する結線方法であって、
前記結線機構の第1線状部材処理機構及び第2線状部材処理機構が、
空間に存在する線状部材を捕捉部で捕捉する捕捉ステップと、
前記捕捉部に捕捉された前記線状部材を第1把持部で把持する第1把持ステップと、
前記第1把持部に把持された前記線状部材の芯材を残して被覆部分を除去し、除去された被覆部分が被覆していた前記芯材を露出させる被覆除去部で前記芯材を露出させる被覆除去ステップと、
前記線状部材において、前記被覆除去部によって前記芯材が露出された部分を挟んで、前記第1把持部が把持する部分と反対側を把持する第2把持部で前記線状部材を把持する第2把持ステップと、
を含み、
前記第1線状部材処理機構に把持された前記線状部材と、前記第2線状部材処理機構に把持された前記線状部材とを接合機構で電気的に接合させて結線する接合ステップをさらに含むことを特徴とする結線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結線システム、結線装置及び結線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル等の掘削工事において、爆薬を用いた発破工法が広く利用されている。発破工法では、一般的に、含水爆薬(スラリー爆薬)や、硝安油剤爆薬(アンホ爆薬)等の爆薬と、装薬孔の孔口を塞ぐための込め物を、例えば、込め棒と呼ばれる工具を用いて人手によって装填をする。また、爆薬として、電気雷管付きの爆薬(親ダイ)と、必要に応じて、電気雷管なしの追加の爆薬(増しダイ)が用いられる。電気雷管付きの爆薬からは、点火用の導線(脚線)が引き出されており、複数の電気雷管の脚線が作業者によって直列に接続される。
なお、特許文献1には、発破工法における工程の一部に機械を導入し、より効率的に作業を行うための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-003145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、爆薬の装填作業に機械が用いられているものの、電気雷管の脚線を結線する作業に機械を用いることは具体的に記載されていない。
電気雷管の脚線を結線する際には、脚線の被覆を剥離させ、金属が露出した部分同士が確実に接触するよう捩じる等の作業が行われる。そのため、この作業が適切に行われない場合、発破の失敗に繋がることから、より高い精度で作業を行うことが求められる。
即ち、電気的な結線を行う作業は、作業者の経験や勘に頼る部分が大きく、機械によって適切に結線を行う技術は実現されていない。
このような課題は、発破における脚線の結線のみならず、電気的な結線が行われる種々の状況において共通するものである。
【0005】
本発明の課題は、電気的な結線をより適切に行うことが可能な技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る結線システムは、
複数の線状部材を結線させる結線機構と、
前記結線機構を移動させる移動機構と、
を備え、
前記結線機構は、
前記移動機構に移動されることで空間に存在する線状部材を捕捉する捕捉部と、
前記捕捉部に捕捉された前記線状部材を把持する第1把持部と、
前記第1把持部に把持された前記線状部材の芯材を残して被覆部分を除去し、除去された被覆部分が被覆していた前記芯材を露出させる被覆除去部と、
前記線状部材において、前記被覆除去部によって前記芯材が露出された部分を挟んで、前記第1把持部が把持する部分と反対側を把持する第2把持部と、
を備える第1線状部材処理機構及び第2線状部材処理機構と、
前記第1線状部材処理機構に把持された前記線状部材と、前記第2線状部材処理機構に把持された前記線状部材とを電気的に接合させる接合機構と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気的な結線をより適切に行うことが可能な技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る結線システム1の全体構成を示す模式図である。
図2】操作装置10と、結線装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】結線機構26の外観構成を示す模式図(斜視図)である。
図4】結線機構26の上面図を表す模式図である。
図5】第1実施形態において用いられる開閉機構の構成例を示す模式図である。
図6】移動機構25による結線機構26の移動制御を示す模式図である。
図7】制御装置30のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】制御装置30の機能的構成を示すブロック図である。
図9】動作制御部312の制御アルゴリズムを示すブロック図である。
図10】結線システム1が実行する動作制御処理の流れを説明するフローチャートである。
図11】結線システム1が実行する結線処理の流れを説明するフローチャートである。
図12】結線機構26の動作を示す模式図である。
図13】結線機構26の動作を示す模式図である。
図14】結線機構26の動作を示す模式図である。
図15】結線機構26の動作を示す模式図である。
図16】結線機構26の動作を示す模式図である。
図17】変形例1における制御アルゴリズムの概念を示す模式図である。
図18】脚線Wを捕捉するための開閉機構を備えた結線機構26の構成例を示す模式図(上面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。
【0010】
[システム構成]
図1は、本実施形態に係る結線システム1の全体構成を示す模式図である。
図1に示すように、結線システム1は、操作装置10、結線装置20、及び制御装置30を含む。また、図1には、結線システム1を操作するユーザU、ユーザUの操作を補助するための画像を撮影するカメラC、結線装置20やカメラCを移動させる高所作業車A、切羽F、及び切羽Fに設けられた複数の装薬孔Hも図示する。装薬孔Hには、電気雷管を備える親ダイDが設置されており、親ダイDの電気雷管に接続された脚線W(芯材となる導線を絶縁物で被覆した電線)が装薬孔Hから露出(垂下)している。
これらのうち、操作装置10、及び制御装置30はユーザUの近傍に配置され、結線装置20、及びカメラCは、高所作業車Aにより装薬孔Hの近傍に配置される。なお、高所作業車Aに代えて、例えば、油圧ジャンボ(例えば、ドリルジャンボ)や移動式クレーン等の他の移動用機械を用いるようにしてもよい。
【0011】
なお、親ダイDは、含水爆薬と、この含水爆薬を爆発させるための一般的な電気雷管や、電子遅延式の電気雷管を含んだ薬包状爆薬である。図示は省略するが、親ダイDに加え、親ダイDの爆轟により爆発する増しダイ(電気雷管を含んでおらず、紙筒に封入された筒状、または粒状の含水爆薬や、粒状のアンホ爆薬や、あるいは、液状またはゲル状の爆薬(例えば、バルクエマルション爆薬)等、爆薬のみを含んだ薬包状爆薬)を適宜設置することができる。また、餡子と呼ばれる装薬孔Hの孔口を塞ぐために粘土等で形成された込め物を適宜設置することもできる。「親ダイ、増ダイ、餡子」等の用語は、当業者において慣用的に用いられているため、本明細書でもこれらの用語をそのまま用いることとする。
【0012】
また、制御装置30は、操作装置10、結線装置20、及びカメラCのそれぞれと通信可能に接続される。この通信は、有線あるいは無線のいずれであってもよいし、通信方式についても限定されない。また、この通信は、装置間で直接行われてもよいし、インターネット等のネットワークを介して行われてもよい。
【0013】
このような結線システム1において、操作装置10は、リーダ装置(マスタ装置等と称される場合もある)として動作することにより、ユーザUからの操作を受け付ける機構を駆動する。一方で、結線装置20は、フォロワー装置(スレーブ装置等と称される場合もある)として動作することにより、物体(ここでは、脚線Wや切羽F)への接触を伴う結線作業を実行する機構を駆動する。
この場合に、制御装置30は、操作装置10と結線装置20との間で、力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を行う。これにより、操作装置10に対するユーザの操作(位置と力の入力)が、結線装置20の動作として伝達されると共に、結線装置20に入力した外部からの力が、操作装置10が出力する反力(位置と力の応答)として伝達される。また、制御装置30は、操作装置10から結線装置20への指示信号を伝達し、結線装置20における結線のための動作(脚線Wの把持、被覆の除去(被覆の切断及び剥離等)及び2本の脚線Wの捩じり動作等)を実行させる。
【0014】
このように、本実施形態では、ユーザUによる遠隔操作によって、結線作業を実現する。そのため、本実施形態では、少なくとも結線作業の一部において、ユーザUが切羽Fに設けられた装薬孔Hに近接して作業を行う必要がなく、仮に肌落ち等が発生したとしても、ユーザUの安全を確保することができる。
また、本実施形態では、力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を行う。そのため、ユーザUは、結線装置20からの反力を感じながら、遠隔操作でありながら、あたかも切羽Fから垂下する脚線Wに近接して作業を行う場合と同様にして、より適切に結線作業を行うことができる。
また、本実施形態では、脚線Wを把持する工程から2本の脚線Wを撚り合せる工程までを作業者が脚線Wに直接接触することなく、結線装置20が自動的に行う。そのため、複数の電気雷管の脚線Wを直列に接続する作業をより確実に行うことができる。
したがって、本実施形態によれば、電気的な結線をより適切に行うことが可能な技術を実現することができる。
以上が、本実施形態の概略である。
【0015】
[装置構成]
次に、結線システム1に含まれる各装置の構成について説明する。
図2は、操作装置10と、結線装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2において符号で示すように、操作装置10は、力触覚を伝達する第1系統のドライバ、アクチュエータ、及び位置センサを備える。具体的には、操作装置10は、力触覚を伝達する第1系統として、移動機構25の操作手段となる第1操作機構15を駆動するためのアクチュエータ12aと、アクチュエータ12aを駆動するドライバ11aと、アクチュエータ12aによる駆動で移動される第1操作機構15の可動部の位置を検出する位置センサ13aと、を備えている。また、操作装置10は、力触覚の伝達を行うことなく、操作装置10から結線装置20に対する制御信号を伝達する第2系統を備え、第2系統においては、結線装置20の操作手段となる第2操作機構16の操作に応じて、主に結線装置20の動作を指示する信号が送受信されている。
また、操作装置10は、第1系統のドライバ11aや、位置センサ13a等が、制御装置30との間で通信を行うための通信部14と、第1操作機構15、及び第2操作機構16も備えている。
【0016】
一方で、結線装置20も同様に、力触覚を伝達する第1系統に対応するドライバ、アクチュエータ、及び位置センサを備える。具体的には、結線装置20は、第1系統として、移動機構25を駆動するためのアクチュエータ22aと、アクチュエータ22aを駆動するドライバ21aと、アクチュエータ22aによる駆動で移動される移動機構25の可動部の位置を検出する位置センサ23aと、を備えている。また、結線装置20は、力触覚の伝達を行うことなく、操作装置10からの結線装置20に対する制御信号を伝達する第2系統を備え、第2系統においては、後述する結線機構26に備えられる各アクチュエータが制御される。
また、結線装置20は、第1系統のドライバ21aや、位置センサ23aが、制御装置30との間で通信を行うための通信部24と、移動機構25、及び結線機構26も備えている。
【0017】
この場合に、位置センサ13aが検出する第1操作機構15の可動部の位置とは、例えば、第1操作機構15の可動部の所定の部位の位置である。ただし、第1操作機構15の可動部の位置に代えて、第1操作機構15を操作するユーザの所定の部位の位置を用いることとしてもよい。
また、位置センサ23aが検出する移動機構25の可動部の位置とは、例えば、移動機構25の可動部の所定の部位の位置である。ただし、移動機構25の可動部の位置に代えて、移動機構25が間接的に物体に接触する所定の部位の位置(例えば、後述するフック機構208L,208Rの鉤状部材K2の先端部の位置)を用いることとしてもよい。
【0018】
また、本実施形態では、第1操作機構15の可動部の位置や、移動機構25の可動部の位置に代えて、各アクチュエータの出力軸の回転角度を各アクチュエータに内蔵されたロータリーエンコーダによって検出することとしてもよい。即ち、本実施形態において、位置の概念には角度(例えば、アクチュエータの出力軸の回転角度等)が含まれるものとし、位置に関する情報には、位置、角度、速度、角速度、加速度及び角加速度が含まれるものとする。また、位置と速度(または加速度)あるいは角度と角速度(または角加速度)は、微積分演算により置換可能なパラメータであるため、位置あるいは角度に関する処理を行う場合、適宜、速度あるいは角速度等に置換してから処理を行うことが可能である。
【0019】
第1操作機構15や第2操作機構16は、ユーザの操作を受け付けるための機構であり、その形状や構造は特に限定されない。例えば、第1操作機構15や第2操作機構16は、ユーザの操作を受け付ける可動部を備えたコントローラや、ユーザが装着する手指等の形状のデバイスにより実現される。より具体的には、第1操作機構15や第2操作機構16は、例えば、棒状の操作具を傾けることで方向入力が行えるジョイスティック(操縦桿)のように、産業機械において広く用いられている操作機構で実現することができる。他にも、第2操作機構16は、例えば、予め設定された動作(把持、被覆の除去(被覆の切断及び剥離等)あるいは捩じり動作等)を結線機構26に実行させるためのボタン等で実現することができる。
【0020】
一方で、移動機構25は、結線機構26を移動させる機構であり、これについても、その形状や構造は特に限定されない。例えば、移動機構25は、結線機構26を装着して移動させるロボットマニュピレータやロボットアーム、あるいは、結線機構26を3次元的に移動させる搬送装置等により実現される。なお、結線機構26は、脚線Wをフック(捕捉)して保持する機能、被覆を剥ぐ(芯材を残して被覆のみを除去する)機能、余剰部分を切断する機能及び2本の脚線Wを捩じる機能等を備えるが、結線機構26の詳細な構造は後述する。
【0021】
このような構成において、制御装置30は、位置センサ13aや位置センサ23aが検出した位置に基づいて、ドライバ11aやドライバ21aに対して制御指令を出力することにより、リーダ装置である操作装置10と、フォロワー装置である結線装置20との間で力触覚を伝達するバイラテラル制御を実現する。より詳細には、制御装置30は、操作装置10の第1系統に対応する第1操作機構15と、結線装置20の第1系統に対応する移動機構25との間で力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を行う。また、制御装置30は、操作装置10の第2系統を構成するボタン等の操作に対応する制御信号を、結線装置20の第2系統に対応する結線機構26の各アクチュエータに伝達する制御を行う。
【0022】
本実施形態において、制御装置30の第1操作機構15と、結線装置20の移動機構25とは装置構成が異なるため、第1操作機構15に反力を付与できるアクチュエータの動作(例えば、縦方向、横方向及び上下方向)と、移動機構25に備えられた複数のアクチュエータ(例えば、多関節ロボットの各関節に備えられたアクチュエータ)との間で、動作方向の成分を整合させることとしてもよい。即ち、移動機構25における動作の成分を第1操作機構15における縦方向の動作、横方向の動作及び上下方向の動作の成分にそれぞれ割り当て、割り当てられた成分毎に、力触覚の伝達を制御することとしてもよい。なお、制御装置30の第1操作機構15及び結線装置20の移動機構25におけるアクチュエータの数を整合させて、対応するアクチュエータ毎に力触覚の伝達を制御することとしてもよい。
なお、力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を実現するための具体的なアルゴリズムについては、図9を参照して後述する。
【0023】
図3は、結線機構26の外観構成を示す模式図(斜視図)である。
なお、結線機構26において、把持対象の脚線Wに向けられる側を正面とし、その反対側を背面、正面から見て右側を右側面、正面から見て左側を左側面とする。結線機構26は、正面から見て略左右対称の構成を備えている。以下の説明において、部材を表す符号のLは正面から見て左側の部材、Rは正面から見て右側の部材を表すものとし、正面から見て右側の部材からなる機構を「第1処理機構」、正面から見て左側の部材からなる機構を「第2処理機構」と適宜呼称する。
【0024】
図3に示すように、結線機構26は、垂直支持板201と、第1水平支持部材202と、垂直軸203L,203Rと、垂直軸歯車204L,204Rと、剥離用アクチュエータ205L,205Rと、剥離用歯車206L,206Rと、第1ブラケット207L,207Rと、フック機構208L,208Rと、フック機構用アクチュエータ209L,209Rと、上側把持部材210L,210Rと、上側把持部材210L,210Rの進退用アクチュエータ211L,211Rと、上側把持部材210L,210Rの開閉用カムフォロア212L,212Rと、第2ブラケット213L,213Rと、剥離部材214L,214Rと、剥離部材214L,214Rの進退用アクチュエータ215L,215Rと、剥離部材214L,214Rの開閉用カムフォロア216L,216Rと、第3ブラケット217L,217Rと、下側把持部材218L,218Rと、下側把持部材218L,218Rの進退用アクチュエータ219L,219Rと、下側把持部材218L,218Rの開閉用カムフォロア220L,220Rと、第2水平支持部材221と、捩じり動作軸222と、捩じり用アクチュエータ223と、昇降用アクチュエータ224と、第3水平支持部材225と、第4ブラケット226L,226Rと、余長切断部材227L,227Rと、余長切断部材227L,227Rの進退用アクチュエータ228L,228Rと、余長切断部材227L,227Rの開閉用カムフォロア229L,229Rと、を備えている。
【0025】
垂直支持板201は、結線機構26全体を支持する板状部材であり、結線機構26が使用される際には、垂直支持板201が水平面に対して略垂直となる姿勢に維持される。
第1水平支持部材202は、垂直支持板201に固定された板状部材であり、垂直支持板201に対して板面が垂直(即ち、使用時に略水平)となるよう設置されている。
垂直軸203L,203Rは、垂直支持板201に固定され、垂直支持板201に沿う方向に延びる昇降軸である。本実施形態において、垂直軸203L,203Rの表面には、ねじ溝が形成されており、後述する剥離用アクチュエータ205L,205Rの回転に連動して回転可能に構成されている。
【0026】
垂直軸歯車204L,204Rは、垂直軸203L,203Rの上端に垂直軸203L,203Rと同軸に固定された円盤状または円柱状の歯車であり、その外周面には、剥離用アクチュエータ205L,205Rの剥離用歯車206L,206Rと噛み合う歯が形成されている。
剥離用アクチュエータ205L,205Rは、剥離部材214L,214Rを昇降させるための駆動力を出力する。
剥離用歯車206L,206Rは、剥離用アクチュエータ205L,205Rの出力軸と同軸に固定された円盤状または円柱状の歯車であり、その外周面には、垂直軸歯車204L,204Rと噛み合う歯が形成されている。
【0027】
第1ブラケット207L,207Rは、底板部と、底板部から背面側において垂直に起立する起立部と、支持部の上端から底板部と平行に延びる天板部とを備える支持部材である。第1ブラケット207L,207Rの底板部は、第1水平支持部材202の上面に固定されている。
フック機構208L,208Rは、第1ブラケット207L,207Rの上面に設置され、空中に垂下する脚線Wを捕捉する鉤状の構成を備えている。
【0028】
図4は、結線機構26の上面図を表す模式図である。
図4に示すように、フック機構208L,208Rは、結線機構26の前方(正面側に突出する方向)に延在するアーム部K1と、アーム部K1の先端に設置された鉤状部材K2と、を備えている。また、フック機構208L,208Rの鉤状部材K2は、鉤状部材K2を開いた状態と閉じた状態とに切り替える可動片K3を備えている。本実施形態において、可動片K3は、円環の一部からなる構成を有し、可動片K3の一端は、アーム部K1の先端に水平方向に回転可能に連結されている。鉤状部材K2が閉じた状態の場合、可動片K3が一端において回転し、他端がアーム部K1近傍に位置した状態で保持される。ただし、アーム部K1と鉤状部材K2の他端との間には空隙が形成され、脚線Wが通過できる状態となっている。そのため、フック機構208L,208Rの鉤状部材K2が閉じた状態の場合、結線機構26を移動させて、アーム部K1と鉤状部材K2との空隙から脚線Wを鉤状部材K2内部に導入することができると共に、鉤状部材K2から脚線Wが容易に離脱しない状態とすることができる。即ち、フック機構208L,208Rの鉤状部材K2が閉じた状態の場合、鉤状部材K2内部に脚線Wを捕捉することができる。一方、鉤状部材K2が開いた状態の場合、可動片K3が一端において回転し、他端がフック機構208L,208Rの略最前端に位置した状態で保持される。そのため、鉤状部材K2内部から脚線Wが容易に離脱する状態となり、脚線Wがリリースされることとなる。
このような構成により、フック機構208L,208Rは大きく開閉する動作を伴うことなく、脚線Wを捕捉することができる。
そのため、より小さいスペースで脚線Wをより確実に捕捉する構成を実現することができる。
【0029】
図3に戻り、フック機構用アクチュエータ209L,209Rは、フック機構208L,208Rの可動片K3を開閉させるための駆動力を出力する。本実施形態において、フック機構用アクチュエータ209L,209Rは、フック機構208L,208Rにおける可動片K3が設置される先端とは反対側の端部(フック機構208L,208Rが第1ブラケット207L,207Rに固定される部分)に設置される。そのため、フック機構用アクチュエータ209L,209Rは、離間した位置にある可動片K3をワイヤあるいはベルト等の部材を介して回転させ、鉤状部材K2を閉じた状態または開いた状態に変化させる。
上側把持部材210L,210Rは、第1ブラケット207L,207Rの内部に設置され、脚線Wを把持する開閉機構を備えている。
【0030】
図5は、本実施形態において用いられる開閉機構の構成例を示す模式図である。
図5に示す開閉機構は、上側把持部材210L,210R、剥離部材214L,214R、下側把持部材218L,218R及び余長切断部材227L,227Rに共通して用いられる。以下、上側把持部材210Lに開閉機構が設置されている場合を例に挙げて構成を説明する。
図5において、(a)は2つの可動部材G1が開いた状態の上面図、(b)は第1ブラケット207Lに上側把持部材210Lが収容された状態の斜視図、(c)は上側把持部材210Lが第1ブラケット207Lから正面側に突出した状態の斜視図、(d)は上側把持部材210Lが第1ブラケット207Lから正面側に最も突出した状態の斜視図を表している。
【0031】
図5に示すように、脚線Wを把持するための2つの可動部材G1が一端において回転可能に連結されていると共に、他端(先端)に脚線Wを挟持するための挟持部G2を備えている。また、上側把持部材210Lの2つの可動部材G1が回転可能に連結されている回転軸は、ラックギアG3に固定されており、ラックギアG3は、上側把持部材210Lの進退用アクチュエータ211Lによって、第1ブラケット207Lから結線機構26の正面側に突出する方向に進退する。さらに、可動部材G1の間には、第1ブラケット207Lに固定された開閉用カムフォロア212Lが設置されている。可動部材G1の内側には、開閉用カムフォロア212Lが嵌合する溝が形成されていると共に、可動部材G1の先端側及び回転軸側の溝の部分は開閉用カムフォロア212Lの大きさに合わせて溝が拡大されている。
【0032】
なお、2つの可動部材G1を連結する回転軸には、2つの可動部材G1を閉じる方向に弾性力が与えられている。そのため、上側把持部材210Lが第1ブラケット207Lに引き込まれ、収容された状態の場合、開閉用カムフォロア212Lは可動部材G1の先端側の拡大された溝に収容され、2つの可動部材G1は閉じた状態となる。一方、進退用アクチュエータ211LがラックギアG3を移動させ、可動部材G1が結線装置20の正面側に突出する方向に移動すると、開閉用カムフォロア212Lが2つの可動部材G1を押し開き、2つの可動部材G1が開いた状態となる。そして、2つの可動部材G1が最も突出した位置までラックギアG3が移動されると、開閉用カムフォロア212L,212Rは可動部材G1の回転軸側の拡大された溝に収容され、2つの可動部材G1は閉じた状態となる。即ち、上側把持部材210Lは、第1ブラケット207Lに収容された状態の場合、閉じた状態となり、第1ブラケット207Lから突出する方向に移動されると開いた状態となり、最も突出した位置に移動された場合、再び閉じた状態となる。なお、上側把持部材210Lが第1ブラケット207Lから最も突出した状態の場合、挟持部G2は、フック機構208Lの鉤状部材K2の直下(鉛直下方)に位置する。したがって、上側把持部材210Lが第1ブラケット207Lから突出する方向に移動されると開いた状態となって、脚線Wを挟持部G2の間に受け入れ可能となり、最も突出した位置に移動されると、挟持部G2が閉じて脚線Wを把持する状態となる。
【0033】
図3に戻り、上側把持部材210L,210Rの進退用アクチュエータ211L,211Rは、ラックギアG3を第1ブラケット207L,207Rから結線機構26の正面側に突出する方向に進退させるための駆動力を出力する。本実施形態において、進退用アクチュエータ211L,211Rの出力軸には同軸に円盤状または円柱状の歯車が固定されており、この歯車が中間歯車を介してラックギアG3と噛み合っている。したがって、上側把持部材210L,210Rの進退用アクチュエータ211L,211Rは、上側把持部材210L,210Rの可動部材G1から一定の距離を離間させて配置することができる。
【0034】
上側把持部材210L,210Rの開閉用カムフォロア212L,212Rは、上側把持部材210L,210Rにおける2つの可動部材G1の間に設置され、第1ブラケット207L,207Rに固定されている。開閉用カムフォロア212L,212Rは、可動部材G1の内側に形成された溝に嵌合しており、上述したように、2つの可動部材G1が移動する際に、嵌合する溝の位置に応じて、2つの可動部材G1が開いた状態及び閉じた状態を変化させる。
【0035】
第2ブラケット213L,213Rは、底板部と、底板部から背面側において垂直に起立する起立部と、支持部の上端から底板部と平行に延びる天板部とを備える支持部材である。第2ブラケット213L,213Rは、背面側の端部にねじ溝が形成された貫通穴を備えており、この貫通穴に、垂直軸203L,203Rが挿通されている。垂直軸203L,203Rの表面には、ねじ溝が形成されているため、第2ブラケット213L,213Rの貫通穴に形成されたねじ溝と噛み合い、垂直軸203L,203Rの回転運動が第2ブラケット213L,213Rの昇降動作に変換される。なお、第2ブラケット213L,213Rは、独立した部材として構成されるため、剥離用アクチュエータ205L,205Rそれぞれの回転(即ち、垂直軸203L,203Rそれぞれの回転)に応じて、独立して昇降することが可能である。
【0036】
剥離部材214L,214Rは、第2ブラケット213L,213Rの内部に設置され、脚線Wを把持するための2つの可動部材G1が一端において回転可能に連結されていると共に、他端(先端)に脚線Wの被覆を除去(ここでは切断)するための挟持部G2を備えている。即ち、剥離部材214L,214Rに備えられる挟持部G2は、脚線Wの被覆を切断するための切断刃を備えている。また、剥離部材214L,214Rは、上側把持部材210L,210Rと同様の開閉機構を備えている。即ち、剥離部材214L,214Rが回転可能に連結されている回転軸は、ラックギアG3に固定されており、ラックギアG3は、剥離部材214L,214Rの進退用アクチュエータ215L,215Rによって、第2ブラケット213L,213Rから結線機構26の正面側に突出する方向に進退する。さらに、可動部材G1の間には、第2ブラケット213L,213Rに固定された開閉用カムフォロア216L,216Rが設置されている。可動部材G1の内側には、開閉用カムフォロア216L,216Rが嵌合する溝が形成されていると共に、可動部材G1の先端側及び回転軸側の溝の部分は開閉用カムフォロア216L,216Rの大きさに合わせて溝が拡大されている。
【0037】
なお、2つの可動部材G1を連結する回転軸には、2つの可動部材G1を閉じる方向に弾性力が与えられている。そのため、剥離部材214L,214Rが第2ブラケット213L,213Rに引き込まれ、収容された状態の場合、開閉用カムフォロア216L,216Rは可動部材G1の先端側の拡大された溝に収容され、2つの可動部材G1は閉じた状態となる。一方、進退用アクチュエータ215L,215RがラックギアG3を移動させ、可動部材G1が結線装置20の正面側に突出する方向に移動すると、開閉用カムフォロア216L,216Rが2つの可動部材G1を押し開き、2つの可動部材G1が開いた状態となる。そして、2つの可動部材G1が最も突出した位置までラックギアG3が移動されると、開閉用カムフォロア216L,216Rは可動部材G1の回転軸側の拡大された溝に収容され、2つの可動部材G1は閉じた状態となる。即ち、剥離部材214L,214Rは、第2ブラケット213L,213Rに収容された状態の場合、閉じた状態となり、第2ブラケット213L,213Rから突出する方向に移動されると開いた状態となり、最も突出した位置に移動された場合、再び閉じた状態となる。なお、剥離部材214L,214Rが第2ブラケット213L,213Rから最も突出した状態の場合、挟持部G2は、フック機構208L,208Rの鉤状部材K2の直下(鉛直下方)に位置する。したがって、剥離部材214L,214Rが第2ブラケット213L,213Rから突出する方向に移動されると開いた状態となって、脚線Wを挟持部G2の間に受け入れ可能となり、最も突出した位置に移動されると、挟持部G2が閉じて脚線Wの被覆を切断する状態となる。
【0038】
剥離部材214L,214Rの進退用アクチュエータ215L,215Rは、ラックギアG3を第2ブラケット213L,213Rから結線機構26の正面側に突出する方向に進退させるための駆動力を出力する。なお、剥離部材214L,214Rの進退用アクチュエータ215L,215Rは、上側把持部材210L,210Rの進退用アクチュエータ211L,211Rと同様の構成を備えている。
剥離部材214L,214Rの開閉用カムフォロア216L,216Rは、剥離部材214L,214Rにおける2つの可動部材G1の間に設置され、第2ブラケット213L,213Rに固定されている。なお、剥離部材214L,214Rの開閉用カムフォロア216L,216Rは、上側把持部材210L,210Rの開閉用カムフォロア212L,212Rと同様の構成を有している。
【0039】
第3ブラケット217L,217Rは、底板部と、底板部から背面側において垂直に起立する起立部と、支持部の上端から底板部と平行に延びる天板部とを備える支持部材である。第3ブラケット217L,217Rの底板部は、第2水平支持部材221の上面に固定されている。
下側把持部材218L,218Rは、第3ブラケット217L,217Rの内部に設置され、脚線Wを把持する開閉機構を備えている。なお、下側把持部材218L,218Rは、上側把持部材210L,210Rと同様の構成を有している。
【0040】
下側把持部材218L,218Rの進退用アクチュエータ219L,219Rは、ラックギアG3を第3ブラケット217L,217Rから結線機構26の正面側に突出する方向に進退させるための駆動力を出力する。なお、下側把持部材218L,218Rの進退用アクチュエータ219L,219Rは、上側把持部材210L,210Rの進退用アクチュエータ211L,211Rと同様の構成を有している。
下側把持部材218L,218Rの開閉用カムフォロア220L,220Rは、下側把持部材218L,218Rにおける2つの可動部材G1の間に設置され、第3ブラケット217L,217Rに固定されている。なお、下側把持部材218L,218Rの開閉用カムフォロア220L,220Rは、上側把持部材210L,210Rの開閉用カムフォロア212L,212Rと同様の構成を有している。
【0041】
第2水平支持部材221は、捩じり動作軸222に回転可能に支持され、第3ブラケット217L,217Rを支持するための略水平に延びるアームを備えている。本実施形態において、第2水平支持部材221は、捩じり動作軸222から離間する方向(図3においては結線機構26の背面側に向かう方向)に延びる回転支持アームと、回転支持アームの先端から左右に延びるブラケット支持アームとを備えている。
捩じり動作軸222は、上面視において、フック機構208L,208Rの鉤状部材K2の中間に位置し、第2水平支持部材221を回転可能に支持する垂直な回転軸である。捩じり動作軸222がフック機構208L,208Rの鉤状部材K2の中間(即ち、捕捉された2本の脚線Wの中間)に位置していることから、捩じり動作が行われる場合、2本の脚線Wが無用な回転移動を行うことなく、捩じり動作軸222の位置を中心に、単純かつ効率的な撚り合わせ動作を行うことができる。
【0042】
捩じり用アクチュエータ223は、第2水平支持部材221を捩じり動作軸222の周りに回転させる駆動力を出力する。本実施形態において、捩じり用アクチュエータ223の回転軸は、捩じり動作軸222とベルトを介して連結されており、捩じり動作軸222から離間した位置(本実施形態においては、第4ブラケット226L,226Rの間の空間における正面側の位置)に設置されている。
【0043】
昇降用アクチュエータ224は、第3水平支持部材225に設置され、第3ブラケット217L,217Rと、下側把持部材218L,218Rと、下側把持部材218L,218Rの開閉用カムフォロア220L,220Rと、第2水平支持部材221と、捩じり動作軸222と、捩じり用アクチュエータ223と、から構成される部分(以下、「捩じり回転ユニットT」と称する。)を第3水平支持部材225に対して昇降させる駆動力を出力する。なお、下側把持部材218L,218Rの進退用アクチュエータ219L,219Rは、第3水平支持部材225側に設置されており、捩じり回転ユニットTが昇降用アクチュエータ224によって持ち上げられると、進退用アクチュエータ219L,219Rの出力軸から歯車が離脱して、捩じり回転ユニットTが回転可能な状態となる。捩じり回転ユニットTに進退用アクチュエータ219L,219R本体が設置されていないことから、より小さい回転トルクで捩じり回転ユニットTを回転させることができる。
【0044】
第3水平支持部材225は、垂直支持板201に固定された板状部材であり、垂直支持板201に対して板面が垂直(即ち、使用時に略水平)となるよう設置されている。また、第3水平支持部材225には、昇降用アクチュエータ224が設置されていると共に、捩じり回転ユニットTが昇降可能に支持されている。
第4ブラケット226L,226Rは、底板部と、底板部から背面側において垂直に起立する起立部と、支持部の上端から底板部と平行に延びる天板部とを備える支持部材である。第4ブラケット226L,226Rの天板部は、第3水平支持部材225の下面に固定されている。
【0045】
余長切断部材227L,227Rは、第4ブラケット226L,226Rの内部に設置され、脚線Wを把持するための2つの可動部材G1が一端において回転可能に連結されていると共に、他端(先端)に脚線Wを切断するための挟持部G2を備えている。なお、余長切断部材227L,227Rは、剥離部材214L,214Rと同様の構成を有している。ただし、余長切断部材227L,227Rの挟持部G2は、芯材を含めて脚線Wを完全に切断する構成となっている。
【0046】
余長切断部材227L,227Rの進退用アクチュエータ228L,228Rは、ラックギアG3を第4ブラケット226L,226Rから結線機構26の正面側に突出する方向に進退させるための駆動力を出力する。なお、余長切断部材227L,227Rの進退用アクチュエータ228L,228Rは、上側把持部材210L,210Rの進退用アクチュエータ211L,211Rと同様の構成を備えている。
余長切断部材227L,227Rの開閉用カムフォロア229L,229Rは、余長切断部材227L,227Rにおける2つの可動部材G1の間に設置され、第4ブラケット226L,226Rに固定されている。なお、余長切断部材227L,227Rの開閉用カムフォロア229L,229Rは、上側把持部材210L,210Rの開閉用カムフォロア212L,212Rと同様の構成を有している。
【0047】
なお、上述した結線機構26の具体的な形状はあくまで例示であり、上述した結線機構26の機能を実現できる形状であれば、異なる形状としてもよい。なお、親ダイDを爆発させるために電気雷管を用いるため、静電気により電気雷管が暴発しないように、結線機構26の材料を静電気が発生し難い木材やFRP(Fiber Reinforced Plastics)等とすることが望ましい。
【0048】
図6は、移動機構25による結線機構26の移動制御を示す模式図である。
図6に示すように、移動機構25は、結線機構26の背面側の所定箇所(例えば、垂直支持板201)を把持し、進退方向及び左右方向を含む水平方向及び水平面に垂直な鉛直方向(即ち、3次元的な方向)に平行移動させたり、軸周りに回転させたりすることが可能である。移動機構25として、例えば、垂直多関節ロボットを用いることが可能である。なお、移動機構25の動作の自由度は、例えば、6自由度とすることが可能であるが、脚線Wを捕捉することが可能な範囲で適宜選択することができる。
また、結線機構26が結線対象となる2本の脚線Wを把持する場合、左右いずれの機構(第1処理機構または第2処理機構)から脚線Wを把持させることとしてもよい。
以下の説明においては、結線機構26における第2処理機構が脚線Wを把持するものとする。
【0049】
移動機構25が結線機構26を移動させる場合、切羽Fに結線機構26を略正対させた姿勢とし、まず、結線対象の1本の脚線Wをフック機構208Lの鉤状部材K2に捕捉させるための操作を行う。このとき、作業者であるユーザUは、カメラCによって撮影された画像または結線機構26を直接目視することによって、捕捉目標となる脚線W及び結線機構26の位置を把握する。
脚線Wをフック機構208Lの鉤状部材K2に捕捉させるために、作業者であるユーザUが操作装置10の第1操作機構15を操作し、移動機構25の位置を移動させて、結線機構26を脚線Wの近傍に位置させる。また、脚線Wが結線機構26におけるフック機構208Lの鉤状部材K2付近に位置した状態となると、作業者であるユーザUは、脚線Wを鉤状部材K2の空隙から鉤状部材K2内部に導入されるよう結線機構26の位置を操作する。
【0050】
このとき、制御装置30が操作装置10(第1操作機構15)と結線装置20(移動機構25)との間で力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を実行する。
そのため、脚線Wをフック機構208Lの鉤状部材K2に捕捉させる過程で、例えば、フック機構208Lが切羽Fの壁面に当接する等、外部からの力が作用した場合、その感触が第1操作機構15を介して作業者であるユーザUに伝達される。
したがって、作業者が遠隔的に結線装置20を移動させる場合であっても、物体に接触した感触を活用して位置を操作することができるため、結線装置20を過度に強い力で切羽F等に接触させる事態を抑制することができる。
【0051】
また、フック機構208Lの鉤状部材K2に脚線Wが捕捉されると、作業者であるユーザUは、操作装置10の第2系統を操作し、結線機構26に対して脚線Wを結線するための処理を指示する。この指示を受けて、結線機構26は、捕捉した脚線Wにおける上方の所定箇所を把持し、被覆を切断して下方にずらすと共に、芯材が露出した脚線Wの下方の所定箇所を把持し、余剰部分を切断する。なお、結線機構26の詳細な動作については、後述する。
【0052】
次に、脚線Wをフック機構208Rの鉤状部材K2に捕捉させるために、作業者であるユーザUは同様の操作を行い、2本目の脚線Wをフック機構208Rの鉤状部材K2に捕捉させる。
このとき、制御装置30が操作装置10(第1操作機構15)と結線装置20(移動機構25)との間で力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を実行する。
そのため、脚線Wをフック機構208Rの鉤状部材K2に捕捉させる過程で、例えば、フック機構208Rが切羽Fの壁面に当接する等、外部からの力が作用した場合、その感触が第1操作機構15を介して作業者であるユーザUに伝達される。また、2本目の脚線Wを捕捉する場合、1本目の脚線Wを結線機構26が把持している状態で、結線機構26が移動される。そのため、結線機構26を移動させる過程で、把持している脚線Wに張力が生じた場合、その感触が第1操作機構15を介して作業者であるユーザUに伝達される。
したがって、作業者が遠隔的に結線装置20を移動させる場合であっても、物体に接触した感触や把持している物体に生じる張力の感触を活用して位置を操作することができるため、結線装置20を過度に強い力で切羽F等に接触させたり、脚線Wに過度の張力を生じさせて脚線Wを切断したりする事態を抑制することができる。
【0053】
なお、フック機構208Rの鉤状部材K2に脚線Wが捕捉されると、1本目の脚線Wの場合と同様に、作業者であるユーザUは、操作装置10の第2系統を操作し、結線機構26に対して脚線Wを結線するための処理を指示する。この指示を受けて、結線機構26は、捕捉した脚線Wにおける上方の所定箇所を把持し、被覆を切断して下方にずらすと共に、芯材が露出した脚線Wの下方の所定箇所を把持し、余剰部分を切断する。
これにより、結線対象となる2本の脚線Wを撚り合わせる準備が完了する。
そして、作業者であるユーザUが操作装置10の第2系統を操作し、結線機構26に対して、2本の脚線Wを撚り合せるための処理を指示する。この指示を受けて、結線機構26は、2本の脚線Wにおける芯材が露出した箇所を捩じり合わせる動作を実行する。
【0054】
図7は、制御装置30のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7に示すように、制御装置30は、プロセッサ31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、バス34と、入力部35と、出力部36と、記憶部37と、通信部38と、ドライブ39と、を備えている。
【0055】
プロセッサ31は、ROM32に記録されているプログラム、または、記憶部37からRAM33にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM33には、プロセッサ31が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0056】
プロセッサ31、ROM32及びRAM33は、バス34を介して相互に接続されている。バス34には、入力部35、出力部36、記憶部37、通信部38及びドライブ39が接続されている。
【0057】
入力部35は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置30に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部35としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部36は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部37は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部38は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0058】
ドライブ39には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア40が適宜装着される。ドライブ39によってリムーバブルメディア40から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部37にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置30の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0059】
このようなハードウェア構成を有する制御装置30は、「動作制御処理」や、「結線処理」を行う。
ここで、動作制御処理は、操作装置10が駆動する各機構と、結線装置20が駆動する各機構との間で、力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を行うことで、各機構の動作を制御する一連の処理である。
また、結線処理は、動作制御処理を利用して、ユーザUの結線作業における遠隔操作を支援する一連の処理である。なお、動作制御処理は、結線処理のサブルーチンとして実現される。
【0060】
図8は、制御装置30の機能的構成を示すブロック図である。
上記の動作制御処理や結線処理が行われる場合、図8に示すように、プロセッサ31において、物理量データ取得部311と、動作制御部312と、結線指示部313と、画像データ取得部314と、画像提示部315と、が機能する。また、記憶部37には、物理量データ記憶部371と、画像データ記憶部372と、が形成される。
以下で特に言及しない場合も含め、これら機能ブロック間では、処理を実現するために必要なデータを、適切なタイミングで適宜送受信する。
【0061】
物理量データ取得部311は、動作制御処理を実現するための物理量データを取得する。例えば、物理量データ取得部311は、位置センサ13a,23aからアクチュエータ12a,22aによる駆動で移動される各機構の可動部の位置(具体的には、位置または角度)を取得する。物理量データ取得部311によって取得された位置等の物理量データは、後述する力触覚伝達のアルゴリズムにおいて、操作装置10や結線装置20が駆動する各機構の動作の基準値として用いられる。
【0062】
動作制御部312は、操作装置10が駆動する各機構と、結線装置20が駆動する各機構との間で力触覚を伝達する制御を行うことで、各機構の動作を制御する。
図9は、動作制御部312の制御アルゴリズムを示すブロック図である。
図9に示すように、動作制御部312に実装されるアルゴリズムは、機能別力・速度割当変換ブロックFTと、理想力源ブロックFCと、理想速度(位置)源ブロックPCと、逆変換ブロックIFTとを含む制御則として表される。図9に示す制御アルゴリズムは、本願の出願人を構成する慶應義塾が保有する特許権の特許公報(特許第6382203号公報)に記載されているものであり、当該特許公報に記載された各種制御アルゴリズムは、本実施形態においても適宜利用することができる。なお、本実施形態において、制御対象システムCSにおける、リーダ装置は操作装置10によって構成され、フォロワー装置は結線装置20によって構成される。
【0063】
機能別力・速度割当変換ブロックFTは、制御対象システムCSの機能に応じて設定される速度(位置)及び力の領域への制御エネルギーの変換を定義するブロックである。具体的には、機能別力・速度割当変換ブロックFTでは、制御対象システムCSの機能の基準となる値(基準値)と、アクチュエータ12a,22aによる駆動で移動される各機構の可動部の現在位置(または現在角度)とを入力とする座標変換が定義されている。この座標変換は、一般に、基準値及び現在位置(現在角度)を要素とする入力ベクトルを位置(角度)の制御目標値を算出するための位置(角度)からなる出力ベクトルに変換すると共に、基準値及び現在の力を要素とする入力ベクトルを力の制御目標値を算出するための力からなる出力ベクトルに変換するものである。
【0064】
機能別力・速度割当変換ブロックFTにおける座標変換を、力触覚の伝達機能を表す内容に設定することにより、操作装置10と結線装置20との間における力触覚の伝達機能を実現したり、力触覚を伝達する動作を、操作装置10を用いることなく結線装置20で再現したりすることができる。また、機能別力・速度割当変換ブロックFTにおける座標変換において、変換行列の要素に係数を設定することにより、位置(角度)あるいは力のスケーリングを行ったりすることができる。
【0065】
即ち、本実施形態においては、機能別力・速度割当変換ブロックFTにおいて、アクチュエータ12a,22aによる駆動で移動される各機構の可動部の単体の変数(実空間上の変数)を、力触覚伝達機能を表現するシステム全体の変数群(座標変換後の空間上の変数)に“変換”し、位置(角度)の制御エネルギーと力の制御エネルギーとに制御エネルギーを割り当てる。即ち、機能別力・速度割当変換ブロックFTに設定される座標変換は、位置(角度)と力とが互いに関連する実空間の座標(斜交座標)を位置(角度)と力とが互いに独立した仮想空間の座標(直交座標)に変換するものである。そのため、アクチュエータ12a,22aによる駆動で移動される各機構の可動部の単体の変数(実空間上の変数)のまま制御を行う場合と比較して、位置(角度)の制御エネルギーと力の制御エネルギーとを独立に与えること、即ち、位置(角度)と力とを独立に制御することが可能となっている。
【0066】
本実施形態においては、例えば、操作装置10が出力する位置(角度)及び力を制御する場合、アクチュエータ12aによる駆動で移動される各機構の可動部の位置(角度)及びこれらの位置(角度)から算出される力の入力と、位置(角度)及び力の制御の基準となる基準値とにおいて、位置(角度)の差がゼロ、力の和がゼロ(逆向きに等しい力が出力される)となることを条件として、座標変換後の空間における状態値の演算を行うことができる。ただし、位置(角度)及び力の制御の基準となる基準値は、結線装置20におけるアクチュエータ22aによる駆動で移動される各機構の可動部の位置(角度)及びこれらの位置(角度)から算出される力である。
【0067】
同様に、本実施形態において、例えば、結線装置20が出力する位置(角度)及び力を制御する場合、アクチュエータ22aによる駆動で移動される各機構の可動部の位置(角度)及びこれらの位置(角度)から算出される力の入力と、位置(角度)及び力の制御の基準となる基準値とにおいて、位置(角度)の差がゼロ、力の和がゼロ(逆向きに等しい力が出力される)となることを条件として、座標変換後の空間における状態値の演算を行うことができる。ただし、位置(角度)及び力の制御の基準となる基準値は、操作装置10におけるアクチュエータ12aによる駆動で移動される各機構の可動部の位置(角度)及びこれらの位置(角度)から算出される力である。
【0068】
理想力源ブロックFCは、機能別力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に従って、力の領域における演算を行うブロックである。理想力源ブロックFCにおいては、機能別力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に基づく演算を行う際の力に関する目標値が設定されている。この目標値は、実現される機能に応じて固定値または可変値として設定される。例えば、基準値が示す機能と同様の機能を実現する場合には、目標値としてゼロを設定したり、スケーリングを行う場合には、基準値が示す機能を表す情報を拡大・縮小した値を設定したりできる。また、理想力源ブロックFCは、力の領域における演算によって決定される力のエネルギーに対し、上限値を設定することができる。力のエネルギーの上限値を設定することで、例えば、結線機構26が切羽Fの壁面等に対して接触する際の接触力の制限を与えることとなり、結線機構26が物体に過度に強く接触することを抑制できる。
【0069】
理想速度(位置)源ブロックPCは、機能別力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に従って、位置(角度)の領域における演算を行うブロックである。理想速度(位置)源ブロックPCにおいては、機能別力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に基づく演算を行う際の位置(角度)に関する目標値が設定されている。この目標値は、実現される機能に応じて固定値または可変値として設定される。例えば、基準値が示す機能と同様の機能を実現する場合には、目標値としてゼロを設定したり、スケーリングを行う場合には、再現する機能を示す情報を拡大・縮小した値を設定したりできる。また、理想速度(位置)源ブロックPCは、位置(角度)の領域における演算によって決定される位置のエネルギーに対し、上限値を設定することができる。位置(角度)のエネルギーの上限値を設定することは、結線機構26が移動する空間に制限を与えることとなり、例えば、接触を避けるべき物体(例えば、親ダイD等)の位置に結線機構26が進入することを抑制できる。
【0070】
逆変換ブロックIFTは、位置(角度)及び力の領域の値を制御対象システムCSへの入力の領域の値(例えば、電圧値または電流値等)に逆変換する(即ち、実空間の指令値を決定する)ブロックである。
このような制御アルゴリズムの下、制御装置30には、位置センサ13a,23aによって検出された時系列の位置(角度)の検出値が入力される。この時系列の位置(角度)の検出値は、アクチュエータ12a,22aの動作を表すものであり、制御装置30は、入力された位置(角度)及びこれらの位置(角度)から導出された力に対して、力触覚を伝達する座標変換を適用する。
【0071】
図8に戻り、結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に脚線Wを処理するための指示を送信することにより、結線対象の脚線Wを把持させたり、被覆を剥離(ここでは、被覆のみを切断して下方にずらす動作とする)させたり、脚線Wの余剰な部分を切断させたり、2本の脚線を捩じり合わせる動作を行わせたりする。
【0072】
画像データ取得部314は、カメラCが撮影した画像を、通信によりリアルタイムで取得する。カメラCは、例えば、移動機構25による結線機構26の移動時に、結線機構26の鉤状部材K2近傍を撮影する。ユーザUの遠隔操作をより適切に支援するために、カメラCが撮影する画像は、静止画ではなく動画であることが望ましい。また、ユーザUによる、制御装置30等を用いた遠隔操作により、カメラCの画角等を変更できるようにすると、より望ましい。
【0073】
画像提示部315は、画像データ取得部314が取得したカメラCの撮影した画像を、ユーザUに対してリアルタイムに提示する。提示は、例えば、出力部36に含まれるディスプレイへの表示により実現することができる。この場合、このディスプレイを、ユーザUが各操作機構を操作中に参照できる位置に配置することが望ましい。
【0074】
物理量データ記憶部371は、物理量データ取得部311が取得した物理量データや、これに基づいて動作制御部312が算出した各種パラメータ等を記憶する。画像データ記憶部372は、画像データ取得部314が取得した、カメラCの撮影した画像のデータを記憶する。これら記憶部の記憶した各種データは、結線作業に伴うログとして活用することができる。例えば、結線作業の成否や結線作業に要した時間を解析するために活用することができる。あるいは、遠隔操作による結線作業の経験が少ないユーザUに、遠隔操作の手順を教えるための教材等として活用することができる。
次に、結線システム1により行われる各処理の処理内容の詳細について説明をする。
【0075】
[動作制御処理]
図10は、結線システム1が実行する動作制御処理の流れを説明するフローチャートである。動作制御処理は、結線処理におけるサブルーチンとして実行される。
【0076】
ステップS1において、物理量データ取得部311は、アクチュエータによる駆動で移動される対象となる機構の可動部の位置(角度)を取得する。例えば、移動機構25による結線機構26の移動時に、物理量データ取得部311は、第1操作機構15及び移動機構25の可動部の位置(角度)を取得する。この場合、動作制御部312は、これらの機構に対応する位置を、位置センサ13aと、位置センサ23aから取得する。
【0077】
ステップS2において、動作制御部312は、実空間の入力ベクトルを仮想空間のベクトルに変換する。
ステップS3において、動作制御部312は、速度(位置)の領域における演算及び力の領域における演算を実行する。
【0078】
ステップS4において、動作制御部312は、速度(位置)及び力の領域の値を制御対象システムCSへの入力の領域の値(実空間のベクトル)に逆変換する。
ステップS5において、動作制御部312は、アクチュエータ12a及びアクチュエータ22aの指令値を出力する。
【0079】
ステップS6において、動作制御部312は、移動機構25による結線機構26の移動といった所定の行為の実行が終了したか否かを判定する。判定は、物理量データ取得部311が取得した物理量データを解析することや、ユーザUからの所定の行為の終了操作があったか否かに基づいて行うことができる。所定の行為の実行が終了した場合は、ステップS6においてYesと判定され、サブルーチンとしての本処理は終了し、結線処理に戻る。一方で、所定の行為の実行が終了していない場合は、ステップS6においてNoと判定され、処理はステップS1に戻り繰り返される。
【0080】
以上説明した動作制御処理によれば、操作装置10が駆動する各機構と、結線装置20が駆動する各機構との間で、力触覚を伝達する制御(バイラテラル制御)を行うことで、各機構の動作を制御することができる。
【0081】
[結線処理]
図11は、結線システム1が実行する結線処理の流れを説明するフローチャートである。結線処理は、操作装置10や制御装置30が、ユーザによる結線処理の開始指示操作を受け付けたことに伴い実行される。
また、図12図16は、結線機構26の動作を示す模式図である。以下、図12図16を適宜参照しながら、結線処理の流れを説明する。
なお、結線処理が実行されている間、画像データ取得部314がカメラCの撮影した画像を取得すると共に、画像提示部315がカメラCの撮影した画像をユーザUに対して提示する処理が継続して行われる。
【0082】
ステップS11において、制御装置30の動作制御部312は、操作装置10の第1操作機構15に対する作業者(ユーザU)の操作に応じて、動作制御処理を実行し、結線装置20を移動させる(図12(1)参照)。ステップS11の処理によって、結線対象の2本の脚線のうち、一方がフック機構208L,208Rの鉤状部材K2の一方に捕捉される。ここでは、フック機構208Rの鉤状部材K2に脚線Wが捕捉されたものとする(図12(2)参照)。
【0083】
ステップS12において、制御装置30の結線指示部313は、作業者(ユーザU)の操作に応じて、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、上側把持部材210Rによって脚線Wにおける上方の所定箇所を把持させる(図12(3)、(4)参照)。
ステップS13において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、剥離部材214Rによって脚線Wの被覆を切断させる(図12(5)、(6)参照)。
ステップS14において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、剥離用アクチュエータ205Rによって剥離部材214Rを下降させる。これにより、脚線Wの被覆が下方にずれ、芯材が露出する(図13(7)参照)。
【0084】
ステップS15において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、下側把持部材218Rによって脚線Wにおける下方の所定箇所を把持させる(図13(8)、(9)参照)。
ステップS16において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、余長切断部材227Rによって脚線Wの余長(余剰な末端部分)を切断する。なお、脚線Wの余長を切断した後、余長切断部材227Rは脚線Wの把持を解除する(図13(10)~(12)参照)。ステップS16が終了することにより、第1処理機構による脚線Wの準備工程が終了する。
【0085】
ステップS17において、制御装置30の動作制御部312は、操作装置10の第1操作機構15に対する作業者(ユーザU)の操作に応じて、動作制御処理を実行し、結線装置20を移動させる(図14(13)参照)。ステップS17の処理によって、結線対象の2本の脚線のうち、他方がフック機構208L,208Rの鉤状部材K2の一方に捕捉される。ここでは、フック機構208Lの鉤状部材K2に脚線Wが捕捉されたものとする(図14(14)参照)。なお、ここでは、複数の親ダイDを直列に結線するため、1本目の脚線Wとしてプラスの脚線Wが捕捉されている場合、2本目の脚線として他の親ダイDのマイナスの脚線Wが捕捉される。
【0086】
ステップS18において、制御装置30の結線指示部313は、作業者(ユーザU)の操作に応じて、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、上側把持部材210Lによって脚線Wにおける上方の所定箇所を把持させる(図14(15)、(16)参照)。
ステップS19において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、剥離部材214Lによって脚線Wの被覆を切断させる(図14(17)、(18)参照)。
ステップS20において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、剥離用アクチュエータ205Lによって剥離部材214Lを下降させる。これにより、脚線Wの被覆が下方にずれ、芯材が露出する(図15(19)参照)。
【0087】
ステップS21において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、下側把持部材218Lによって脚線Wにおける下方の所定箇所を把持させる(図15(20)、(21)参照)。
ステップS22において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、余長切断部材227Lによって脚線Wの余長(余剰な末端部分)を切断する(図15(22)、(23)参照)。なお、脚線Wの余長を切断した後、余長切断部材227Lは脚線Wの把持を解除する(図13(10)~(12)参照)。ステップS22が終了することにより、第2処理機構による脚線Wの準備工程が終了する。これにより、2本の脚線Wの芯材が露出された状態で把持され、撚り合わせの準備が完了する(図15(24)参照)。
【0088】
ステップS23において、制御装置30の結線指示部313は、作業者(ユーザU)の操作に応じて、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、昇降用アクチュエータ224によって捩じり回転ユニットTを持ち上げる(図16(25)参照)。
ステップS24において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、捩じり用アクチュエータ223によって捩じり回転ユニットTを捩じり動作軸222の周りに1回転させる(図16(26)~(28)参照)。これにより、2本の脚線Wが撚り合され、結線された状態となる。なお、ここでは捩じり回転ユニットTの回転数を1回転とするが、必要に応じて、2回転以上させることとしてもよい。
【0089】
ステップS25において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、昇降用アクチュエータ224によって捩じり回転ユニットTを下降させる(図16(29)参照)。
ステップS26において、制御装置30の結線指示部313は、結線装置20の結線機構26に指示信号を送信し、上側把持部材210L,210R及び下側把持部材218L,218Rの把持を解除させると共に、フック機構208L,208Rの鉤状部材Kを開き、2本の脚線Wをリリースする(図16(30)参照)。
【0090】
なお、図12図16においては、フック機構208L,208Rの一方で脚線Wを捕捉した後、捕捉した脚線Wの被覆除去及び余長の切断を行ってから、フック機構208L,208Rの他方で脚線Wを捕捉し、同様に、捕捉した脚線Wの被覆除去及び余長の切断を行うものとしたが、これらの処理工程の順番は、これに限られない。即ち、フック機構208L,208Rの一方で脚線Wを捕捉した後、フック機構208L,208Rの他方で脚線Wを捕捉し、捕捉した2本の脚線Wの被覆除去及び余長の切断を並行して、または、順番に行うこととしてもよい。
【0091】
以上説明した、結線処理によれば、結線機構26によって結線作業の主要な工程を自動的に実行することができる。
また、動作制御処理を利用して、ユーザUの結線作業における遠隔操作を支援することができる。
【0092】
このように、結線システム1では、結線作業の主要な工程を自動的に実行することができるため、作業者の経験や勘に依存することなく、より確実に電気的な結線を行うことができる。
また、少なくとも結線作業の一部において、作業者であるユーザUが肌落ち等の危険性がある切羽Fに近接して作業を行う必要がない。また、ユーザUは、第1操作機構15を介して、結線機構26に加わる力を伝達される。そのため、作業者が遠隔的に結線装置20を移動させる場合であっても、物体に接触した感触や把持している物体に生じる張力の感触を活用して位置を操作することができ、結線装置20を過度に強い力で切羽F等に接触させたり、脚線Wに過度の張力を生じさせて脚線Wを切断したりする事態を抑制することができる。
したがって、結線システム1によれば、電気的な結線をより適切に行うことが可能な技術を実現することができる。
【0093】
なお、一般的に、結線作業では、肌落ち等の崩落災害を意識して、作業時の監視や、切羽にコンクリート等を吹き付ける鏡面補強のような対策が必要である。しかしながら、本実施形態によれば、上記のようにユーザUの安全を確保できているので、このような対策を必要以上に行わなくてよいという効果も奏する。
また、本発明は、発破における脚線の結線のみならず、種々の対象における電気的な結線に適用することができる。例えば、高所や放射能のレベルが高い環境等、人間が作業を行うことに適していない対象の他、同様の作業を多数行う必要があり、作業者に蓄積される疲労が問題となる対象等に適用することができる。
【0094】
また、上述の実施形態において、脚線Wの結線を行う場合を例に挙げて説明したが、本発明の適用対象はこれに限られない。即ち、本発明は、導線となる芯材と芯材を覆う被覆とからなる線状部材に広く適用することができ、例えば、ケーブル、電線、ワイヤあるいはコード等と称される部材を対象として、本発明を適用することができる。
【0095】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他の様々な実施形態を取ることが可能である共に、省略及び置換等種々の変形を行うことができる。
【0096】
[変形例1]
上述した実施形態において、動作制御部312は、図9を参照して説明した制御アルゴリズムに基づいて、操作装置10が駆動する各機構と、結線装置20が駆動する各機構との間で力触覚を伝達する制御を行うことで、各機構の動作を制御するものとした。これに限らず、動作制御部312は、他の制御アルゴリズムを用いて、各機構の動作を制御するようにしてもよい。例えば、動作制御部312は、本変形例として以下で説明する制御アルゴリズムを用いて、各機構の動作を制御するようにしてもよい。この場合、動作制御部312は、動作制御処理において、図10に図示したステップS2~4の処理に代えて、以下に説明する本変形例の制御アルゴリズムに基づいて、操作装置10及び結線装置20に対する指令値を算出する。
【0097】
[基本的原理]
図17は、本変形例の制御アルゴリズムの概念を示す模式図である。
図17に示すように、本変形例の制御アルゴリズムにおいては、リーダ・フォロワーシステムを応用したロボットにおいてリーダ装置及びフォロワー装置を含む仮想物体を想定し、リーダ装置及びフォロワー装置への入力が仮想物体への入力であるとした場合の仮想物体の挙動にリーダ装置及びフォロワー装置の動作を追従させる制御を行う。このとき、リーダ装置及びフォロワー装置から入力される力応答にアドミタンスを乗じて速度を表すパラメータを算出し、現在の速度と共に、速度指令値としてリーダ装置及びフォロワー装置の位置制御系に与える。
これにより、リーダ装置及びフォロワー装置における動作の再現性及び操作性として、従来と同等以上の性能を得ることができる。
したがって、より適切なロボットの物理的インタラクションを実現することが可能となる。
また、本変形例の制御アルゴリズムにおいては、速度指令値に基づく制御を行うことができるため、既存の位置(または速度)制御系のシステム(加速度制御を想定していないシステム)との親和性が高いものとなる。ただし、本変形例の制御アルゴリズムにおいて、加速度指令値に基づく制御を行うことも可能である。
なお、位置と速度(または加速度)あるいは角度と角速度(または角加速度)は、微積分演算により置換可能なパラメータであるため、位置あるいは角度に関する処理を行う場合、適宜、速度あるいは角速度等に置換することが可能である。
【0098】
[具体的制御]
物理量データ取得部311は、操作装置10及び結線装置20において取得された物理量(ここでは、操作装置10及び結線装置20における各機構の可動部の位置)を取得する。
動作制御部312は、物理量データ取得部311によって取得された操作装置10及び結線装置20の物理量に基づいて、操作装置10及び結線装置20を含むと仮想した仮想物体(質量mを有する仮想物体)の挙動に操作装置10及び結線装置20を追従させる速度指令値(または位置指令値)を算出する。具体的には、動作制御部312は、例えば、以下の式(1)及び(2)に従って、操作装置10に対する速度指令値及び結線装置20に対する速度指令値を算出する。
【0099】
【数1】
ただし、式(1)及び(2)において、V refは操作装置10への速度指令値、V refは結線装置20への速度指令値、Cは速度制御器、Yはアドミタンス、Fは操作装置10の力応答値、Fは結線装置20の力応答値、Vは操作装置10の各機構の可動部の速度、Vは結線装置20の各機構の可動部の速度である。
【0100】
なお、F及びFは、操作装置10及び結線装置20から取得された物理量(ここでは位置)から、各種力推定手法(加速度に変換して質量との乗算値として推定するあるいはオブザーバにより推定する等)を用いて取得することができる。また、V及びVは、操作装置10及び結線装置20から取得された物理量(ここでは位置)の微分により取得することができる。ただし、制御装置30が操作装置10及び結線装置20から物理量として力を取得し、式(1)及び(2)の演算に用いることとしてもよい。
【0101】
また、式(1)及び(2)においては、速度指令値を算出する場合の式を示したが、位置指令値を算出し、位置指令値によって操作装置10及び結線装置20を制御することも可能である。
また、動作制御部312は、例えば、以下の式(3)及び(4)に従って、操作装置10に対する速度指令値及び結線装置20に対する加速度指令値を算出し、加速度指令値によって操作装置10及び結線装置20を制御することも可能である。さらに、動作制御部312は、アクチュエータの電流指令値あるいは電圧指令値を算出し、アクチュエータの電流指令値あるいは電圧指令値によって操作装置10及び結線装置20を制御することも可能である。
【0102】
【数2】
ただし、式(3)及び(4)において、sはラプラス演算子、X refは操作装置10への位置指令値(即ち、s refは操作装置10への加速度の指令値)、X refは結線装置20への速度指令値(即ち、s refは結線装置20への加速度の指令値)、Cは位置制御器、Yはアドミタンス、Fは操作装置10の力応答値、Fは結線装置20の力応答値、Xは操作装置10の各機構の可動部の位置、Xは結線装置20の各機構の可動部の位置である。
【0103】
動作制御部312は、このようにして算出した操作装置10の指令値(ここでは速度指令値)及び結線装置20の指令値(ここでは速度指令値)を操作装置10及び結線装置20に送信する。なお、このとき、位置指令値を算出し、位置指令値によって操作装置10及び結線装置20を制御することも可能である。また、このとき、加速度指令値を算出し、加速度指令値によって操作装置10及び結線装置20を制御することも可能である。
【0104】
なお、本変形例の制御アルゴリズムでは、操作装置10及び結線装置20が、位置センサ13a,23aに加えて、操作装置10及び結線装置20の各機構の可動部が受ける力を検出する力センサを備え、力センサによって検出された各機構の可動部が受ける力を制御装置30に送信することとしてもよい。また、操作装置10及び結線装置20が、位置センサ13a,23aに代えて、操作装置10及び結線装置20の各機構の可動部(例えば、アクチュエータ12a,22aの出力軸)の速度(または加速度)を検出する速度センサ(または加速度センサ)を備え、速度センサ(または加速度センサ)によって検出された各機構の可動部の速度(または加速度)を制御装置30に送信することとしてもよい。
【0105】
本変形例の制御アルゴリズムによれば、仮想物体に追従させる制御手法としたことで、操作装置10及び結線装置20における動作の再現性及び操作性として、従来と同等以上の性能を得ることができる。
したがって、より適切なロボットの物理的インタラクションを実現することが可能となる。
また、図9を参照して説明した制御アルゴリズムとも共通するが、上述の制御アルゴリズムによって操作装置10及び結線装置20を制御する場合、制御のために必要なパラメータが低減されることから、装置間で送受信されるデータ量を減少させることができる。
【0106】
[変形例2]
上述した実施形態では、操作装置10と、制御装置30とを異なる装置として実現していた。これに限らず、例えば、操作装置10と、制御装置30とを一体の装置として実現してもよい。即ち、ユーザUの結線を受け付けると共に、操作装置10と結線装置20との間で力触覚を伝達する制御を行うことができる一体の装置として実現してもよい。この場合、図2のブロック図における、通信部14とドライバ11aの間に制御装置30と同等の機能を実現する動作制御用の機能ブロックが挿入される。また、位置センサ13aの検出値は、通信部14ではなく、この動作制御用の機能ブロックに入力される。そして、この動作制御用の機能ブロックは、上述した制御装置30と同様の制御アルゴリズムに基づいて、結線装置20との間での力触覚の伝達を実現する。
あるいは、結線装置20と、制御装置30とを一体の装置として実現してもよい。即ち、操作装置10を介してユーザUの結線を受け付けると共に、操作装置10と結線装置20との間で力触覚を伝達する制御を行う装置としてもよい。この場合、図2のブロック図における、通信部24とドライバ21aの間に制御装置30と同等の機能を実現する動作制御用の機能ブロックが挿入される。また、位置センサ23aの検出値は、通信部24ではなく、この動作制御用の機能ブロックに入力される。そして、この動作制御用の機能ブロックは、上述した制御装置30と同様の制御アルゴリズムに基づいて、操作装置10との間での力触覚の伝達を実現する。
あるいは、このような力触覚の伝達の制御を、操作装置10と、結線装置20とで、それぞれ分散して行うようにしてもよい。この場合、各装置に動作制御用の機能ブロックを追加する。そして、各装置の動作制御用の機能ブロックは、自装置のセンサでの検出値と他装置のセンサでの検出値とを取得した上で、上述した制御装置30と同様の制御アルゴリズムに基づいて、自装置のドライバに対して指令値を出力する。このようにして、他装置との間での力触覚の伝達を実現するようにしてもよい。
【0107】
[変形例3]
上述した実施形態では、図3に示したような結線機構26に対し、作業者であるユーザUが、フック機構208L,208Rに脚線Wを捕捉させた後、操作装置10を操作して結線機構26に把持動作等を実行させる等、結線作業の一部の工程をユーザUが指示して進行するものとしたが、これに限られない。
例えば、フック機構208L,208Rに脚線Wが捕捉されたことを検出するセンサを備え、このセンサによってフック機構208L,208Rに脚線Wが捕捉されたことを検出した場合に、上側把持部材210L,210Rが自動的に把持動作を実行することとしてもよい。同様に、捩じり回転ユニットTによって2本の脚線Wを撚り合わせる動作についても、2本の脚線Wの被覆を剥離して把持した状態となったことをセンサで検出することにより、撚り合わせる動作を自動的に実行することが可能である。
これにより、脚線Wの結線作業をより高度に自動化することが可能となる。
【0108】
[変形例4]
上述した実施形態では、脚線Wを捕捉するために、フック機構208L,208Rを備える構成例について説明したが、これに限られない。
例えば、フック機構208L,208Rのように、アーム部K1及び鉤状部材K2によって脚線Wを捕捉する構成に代えて、一対の可動部材が開閉する開閉機構(例えば、鋏、ピンセットあるいは鉗子型の機構)と、一対の可動部材を開閉させるアクチュエータとを備える構成とすることも可能である。
図18は、脚線Wを捕捉するための開閉機構を備えた結線機構26の構成例を示す模式図(上面図)である。
図18に示すように、アーム部K1及び鉤状部材K2を備えるフック機構208L,208Rの構成に代えて、一対の可動部材をヒンジを介して回転可能に設置し、アクチュエータによって可動部材を回転させる構成の開閉機構を備えることができる。
このような構成とした場合、脚線Wを捕捉するための開口幅を大きくすることができるため、風等の影響により脚線Wが大きく移動する状況においても、脚線Wをより容易に捕捉することが可能となる。
【0109】
[変形例5]
上述した実施形態では、剥離部材214L,214Rが挟持部G2によって被覆を切断することにより、脚線Wの芯材から被覆を剥離する構成例について説明したが、脚線Wの被覆を除去(剥離等)する方法は、これに限られない。
例えば、被覆を熱あるいは薬品によって溶解することで芯材から除去し、脚線Wの芯材を露出させる構成とすることが可能である。
この場合、挟持部G2が切断刃を備える構成に代えて、挟持部G2が電熱線あるいは薬品塗布部材等を備える構成とすることで、被覆の除去機能を実現することができる。
【0110】
[構成例]
以上のように、本実施形態に係る結線システム1は、複数の線状部材(例えば、脚線W)を結線させる結線機構26と、結線機構26を移動させる移動機構25と、を備える。結線機構26は、第1処理機構及び第2処理機構と、捩じり回転ユニットTと、を備える。第1処理機構及び第2処理機構は、フック機構208L,208Rと、上側把持部材210L,210Rと、剥離部材214L,214Rと、下側把持部材218L,218Rと、を備える。
フック機構208L,208Rは、移動機構25に移動されることで空間に存在する線状部材(脚線W)を捕捉する。
上側把持部材210L,210Rは、フック機構208L,208Rに捕捉された線状部材を把持する。
剥離部材214L,214Rは、上側把持部材210L,210Rに把持された線状部材の芯材を残して被覆部分を除去し、除去された被覆部分が被覆していた芯材を露出させる。
下側把持部材218L,218Rは、線状部材において、剥離部材214L,214Rによって芯材が露出された部分を挟んで、上側把持部材210L,210Rが把持する部分と反対側を把持する。
捩じり回転ユニットTは、第1処理機構に把持された線状部材と、第2処理機構に把持された線状部材とを電気的に接合させる。
これにより、結線作業の主要な工程を自動的に実行することができるため、作業者の経験や勘に依存することなく、より確実に電気的な結線を行うことができる。
したがって、電気的な結線をより適切に行うことが可能な技術を実現することができる。
【0111】
捩じり回転ユニットTは、第1処理機構の下側把持部材218R及び第2処理機構の下側把持部材218Lを一体として、第1処理機構の上側把持部材210R及び第2処理機構の上側把持部材210Lに対して水平方向に回転することにより、第1処理機構が把持する線状部材と、第2処理機構が把持する線状部材とを撚り合わせる。
これにより、脚線W同士を撚り合せる動作を自動的に行うことができ、脚線Wをより確実に電気的に接合することができる。
【0112】
第1処理機構及び第2処理機構は、余長切断部材227L,227Rを備える。
余長切断部材227L,227Rは、下側把持部材218L,218Rで把持された部分に対して、剥離部材214L,214Rによって芯材が露出された部分とは反対側に延びる線状部材を切断する。
これにより、結線に不要な余長部分を切断し、結線作業をより適切に行うことができる。
【0113】
第1処理機構及び第2処理機構において、
フック機構208L,208Rは、先端に鉤状部材K2を備え、移動機構25によって結線機構26が移動される動きにより、空中に存在する線状部材を鉤状部材K2に捕捉する。
これにより、左右に大きく広がって線状部材を挟み込んで捕捉するような機構に比べ、線状部材の捕捉に要する空間をより小さくすることができる。
【0114】
第1処理機構及び第2処理機構において、
フック機構208L,208R及び下側把持部材218L,218Rは、フック機構208L,208Rの鉤状部材K2によって捕捉された線状部材を当該鉤状部材K2の鉛直下方の位置で把持する。
これにより、より確実かつ簡単な動作で線状部材を把持することができる。
【0115】
捩じり回転ユニットTは、第1処理機構の下側把持部材218R及び第2処理機構の下側把持部材218Lを一体として、フック機構208L,208Rに捕捉された線状部材の中間位置を中心に、第1処理機構の上側把持部材210R及び第2処理機構の上側把持部材210Lに対して水平方向に回転することにより、第1処理機構が把持する線状部材と、第2処理機構が把持する線状部材とを撚り合わせる。
これにより、捩じり動作が行われる場合、2本の線状部材が無用な回転移動を行うことなく、2本の線状部材の中間の位置を中心に、単純かつ効率的な撚り合わせ動作を行うことができる。
【0116】
第1処理機構及び第2処理機構において、
フック機構208L,208Rは、一対の可動部材が開閉する開閉機構を備え、当該一対の可動部材が開閉する動作により、空中に存在する前記線状部材を前記一対の可動部材の間に捕捉する。
これにより、脚線Wを捕捉するための開口幅を大きくすることができるため、風等の影響により脚線Wが大きく移動する状況においても、脚線Wをより容易に捕捉することが可能となる。
【0117】
上側把持部材210L,210R及び下側把持部材218L,218Rは、線状部材を把持する場合、伸長して線状部材を把持し、線状部材を把持しない場合、短縮して収容された状態となる。
これにより、部材を伸縮させることで線状部材を把持することができると共に、線状部材を把持しない場合に、よりコンパクトな装置構成とすることができる。
【0118】
上側把持部材210L,210R、下側把持部材218L,218R及び剥離部材214L,214Rの少なくともいずれかは、一端において回転可能に連結され、互いに閉じる方向に付勢された一対の可動部材G1と、一対の可動部材G1の一端から他端の方向に当該一対の可動部材G1を進退させるアクチュエータと、一対の可動部材G1の間に設置され、一対の可動部材G1の進退動作とは連動することなく固定して設置された開閉用カムフォロアと、を備え、一対の可動部材G1の内側には、開閉用カムフォロアと嵌合する溝が形成されていると共に、溝における一端側及び他端側に開閉用カムフォロアを収容可能な収容部を有する。
これにより、可動部材G1を結線装置20から突出する方向に移動させると開いた状態となって、線状部材を可動部材G1の間に受け入れ可能となり、最も突出した位置に移動させると、可動部材G1が閉じて線状部材の被覆を切断する状態となる。
そのため、可動部材G1に一方向の動きを与えるだけで、一方向への移動及び開閉動作を行わせることができる。
【0119】
[ハードウェアやソフトウェアによる機能の実現]
上述した実施形態による一連の処理を実行させる機能は、ハードウェアにより実現することもできるし、ソフトウェアにより実現することもできるし、これらの組み合わせにより実現することもできる。換言すると、上述した一連の処理を実行する機能が、結線システム1のいずれかにおいて実現されていれば足り、この機能をどのような態様で実現するのかについては、特に限定されない。
【0120】
例えば、上述した一連の処理を実行する機能を、演算処理を実行するプロセッサによって実現する場合、この演算処理を実行するプロセッサは、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0121】
また、例えば、上述した一連の処理を実行する機能を、ソフトウェアにより実現する場合、そのソフトウェアを構成するプログラムは、ネットワークまたは記録媒体を介してコンピュータにインストールされる。この場合、コンピュータは、専用のハードウェアが組み込まれているコンピュータであってもよいし、プログラムをインストールすることで所定の機能を実行することが可能な汎用のコンピュータ(例えば、汎用のパーソナルコンピュータ等の電子機器一般)であってもよい。また、プログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理のみを含んでいてもよいが、並列的あるいは個別に実行される処理を含んでいてもよい。また、プログラムを記述するステップは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、任意の順番に実行されてよい。
【0122】
このようなプログラムを記録した記録媒体は、コンピュータ本体とは別に配布されることによりユーザに提供されてもよく、コンピュータ本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供されてもよい。この場合、コンピュータ本体とは別に配布される記憶媒体は、例えば、リムーバブルメディア40であって、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、あるいはBlu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、例えば、MD(Mini Disc)等により構成される。また、コンピュータ本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている記憶部37であって、HDD(hard disk drive)やSSD(Solid State Drive)により構成される。
【符号の説明】
【0123】
1 結線システム、10 操作装置、11a,21a ドライバ、12a,22a アクチュエータ、13a,23a 位置センサ、14,24,38 通信部、15 第1操作機構、16 第2操作機構、20 結線装置、25 移動機構、26 結線機構、30 制御装置、31 プロセッサ、32 ROM、33 RAM、34 バス、35 入力部、36 出力部、37 記憶部、39 ドライブ、40 リムーバブルメディア、201 垂直支持板、202 第1水平支持部材、203L,203R 垂直軸、204L,204R 垂直軸歯車、205L,205R 剥離用アクチュエータ、206L,206R 剥離用歯車、207L,207R 第1ブラケット、208L,208R フック機構、209L,209R フック機構用アクチュエータ、210L,210R 上側把持部材、211L,211R,215L,215R,219L,219R,228L,228R 進退用アクチュエータ、212L,212R,216L,216R,220L,220R,229L,229R 開閉用カムフォロア、213L,213R 第2ブラケット、214L,214R 剥離部材、311 物理量データ取得部、312 動作制御部、313 結線指示部、217L,217R 第3ブラケット、218L,218R 下側把持部材、221 第2水平支持部材、222 捩じり動作軸、223 捩じり用アクチュエータ、224 昇降用アクチュエータ、225 第3水平支持部材、226L,226R 第4ブラケット、227L,227R 余長切断部材、314 画像データ取得部、315 画像提示部、371 物理量データ記憶部、372 画像データ記憶部、A 高所作業車、C カメラ、D 親ダイ、F 切羽、H 装薬孔、W 脚線、T 捩じり回転ユニット、CS 制御対象システム、FT 力・速度割当変換ブロック、FC 理想力源ブロック、PC 理想速度(位置)源ブロック、IFT 逆変換ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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