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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160862
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】茶葉火入れ装置
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/06 20060101AFI20241108BHJP
   F26B 17/04 20060101ALI20241108BHJP
   F26B 21/10 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A23F3/06 J
F26B17/04 A
F26B21/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076333
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】河村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 守伸
(72)【発明者】
【氏名】久米 明
【テーマコード(参考)】
3L113
4B027
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AC10
3L113AC36
3L113AC44
3L113AC69
3L113BA20
3L113CA04
3L113CB06
3L113CB22
3L113DA24
4B027FB01
4B027FC10
4B027FP59
4B027FR05
4B027FR10
4B027FR20
(57)【要約】
【課題】火入れの質の低下を抑制しつつ、省エネルギー性及び環境保護性が向上した茶葉火入れ装置を提供する。
【解決手段】茶葉火入れ装置1は、茶葉を搬送する第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90と、それらの上側に配置されている上側ヒーター機構32,52,72,92、及びそれらの下側に配置されている下側ヒーター機構34,54,74,94、並びにそれらにおける1以上の間に配置されている第1フィーダー12及び第2フィーダー16と、を備えている。上側ヒーター機構32・・における上側電気ヒーター40,60,80,100、及び下側ヒーター機構34・・における下側電気ヒーター42,62,82,102は、発熱部において赤外線を放射可能であり、搬送される茶葉を赤外線により加熱する。第1フィーダー12及び第2フィーダー16は、茶葉を一旦貯留する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンベヤと、
各前記コンベヤの上側に配置されている上側ヒーター機構と、
各前記コンベヤの下側に配置されている下側ヒーター機構と、
前記コンベヤにおける1以上の間に配置されている1以上のフィーダーと、
を備えており、
各前記コンベヤは、茶葉を搬送面において上流側から下流側へ搬送し、
各前記上側ヒーター機構は、1以上の上側電気ヒーターを有しており、
前記上側電気ヒーターは、発熱部において赤外線を放射可能であり、対応する前記コンベヤにより搬送される前記茶葉を赤外線により加熱し、
各前記下側ヒーター機構は、1以上の下側電気ヒーターを有しており、
前記下側電気ヒーターは、発熱部において赤外線を放射可能であり、対応する前記コンベヤにより搬送される前記茶葉を赤外線により加熱し、
前記フィーダーは、上流側で隣接する前記コンベヤから前記茶葉を受け取って貯留し、下流側で隣接する前記コンベヤへ前記茶葉を供給する
ことを特徴とする茶葉火入れ装置。
【請求項2】
各前記上側電気ヒーターの少なくとも何れかの発熱温度は、各前記下側電気ヒーターの少なくとも何れかの発熱温度より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の茶葉火入れ装置。
【請求項3】
各前記コンベヤの少なくとも何れかにおける前記搬送面の温度は、100℃以上140℃以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の茶葉火入れ装置。
【請求項4】
各前記上側電気ヒーター、及び各前記下側電気ヒーターの少なくとも何れかにおける、前記搬送面との間の距離を調節可能な上下動機構を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の茶葉火入れ装置。
【請求項5】
各前記コンベヤの少なくとも何れかは、前記搬送面に対し振動を付与する振動機構を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の茶葉火入れ装置。
【請求項6】
前記振動機構を備えた前記コンベヤにおける前記搬送面の少なくとも何れかは、上方へ突出する突起を有している
ことを特徴とする請求項5に記載の茶葉火入れ装置。
【請求項7】
前記コンベヤは、上流側から順に第1コンベヤ、第2コンベヤ、及び第3コンベヤを含んでおり、
前記フィーダーは、上流側から順に第1フィーダー及び第2フィーダーを含んでおり、
前記第1コンベヤと前記第2コンベヤとの間に前記第1フィーダーが配置されており、
前記第2コンベヤと前記第3コンベヤとの間に前記第2フィーダーが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の茶葉火入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉を火入れする装置である茶葉火入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製茶工場において製造された荒茶について、香味及び水色の少なくとも何れかを引き立たせるために加熱処理(火入れ工程)を行う火入れ装置として、特開2021-100385号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
この装置は、茶葉が移動するトラフ2~4と対向するように設けられたバーナ5と、バーナ5による加熱乾燥と併用してトラフ2~4の裏面側から茶葉を加熱するヒータ30と、を有する。
バーナ5は、ガスバーナ5aでセラミックプレート5bを熱することにより、セラミックプレート5bを介して遠赤外線を放射する。ヒータ30は、トラフ2~4の裏面の両端近傍においてバーナ5に沿って線状に設けられた電熱ヒータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-100385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の火入れ装置では、化石燃料であるガスを消費するガスバーナ5aを用いるため、省エネルギー性及び環境保護性に向上の余地がある。
本発明の主な目的の一つは、火入れの質の低下を抑制しつつ、省エネルギー性及び環境保護性が向上した茶葉火入れ装置を提供することである。
又、本発明の別の主な目的の一つは、ガスバーナに代えて電気ヒーターを用いることで、温度制御に対する正確性が向上した茶葉火入れ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、茶葉火入れ装置を開示する。この茶葉火入れ装置は、複数のコンベヤを備えている。茶葉火入れ装置は、各コンベヤの上側に配置されている上側ヒーター機構を備えていても良い。茶葉火入れ装置は、各コンベヤの下側に配置されている下側ヒーター機構を備えていても良い。茶葉火入れ装置は、コンベヤにおける1以上の間に配置されている1以上のフィーダーを備えていても良い。各コンベヤは、茶葉を搬送面において上流側から下流側へ搬送しても良い。各上側ヒーター機構は、1以上の上側電気ヒーターを有していても良い。上側電気ヒーターは、発熱部において赤外線を放射可能であっても良い。上側電気ヒーターは、対応するコンベヤにより搬送される茶葉を赤外線により加熱しても良い。各下側ヒーター機構は、1以上の下側電気ヒーターを有していても良い。下側電気ヒーターは、発熱部において赤外線を放射可能であっても良い。下側電気ヒーターは、対応するコンベヤにより搬送される茶葉を赤外線により加熱しても良い。フィーダーは、上流側で隣接するコンベヤから茶葉を受け取って貯留しても良い。フィーダーは、下流側で隣接するコンベヤへ茶葉を供給しても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明の主な効果の一つは、火入れの質の低下を抑制しつつ、省エネルギー性及び環境保護性が向上した茶葉火入れ装置が提供されることである。
又、本発明の別の主な効果の一つは、ガスバーナに代えて電気ヒーターを用いることで、温度制御に対する正確性が向上した茶葉火入れ装置が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る茶葉火入れ装置の前面図である。
図2】本発明に係る茶葉火入れ装置の動作例ないし茶葉火入れ方法の例に係るフローチャートである。
図3】本発明の実施例2に係る茶葉火入れ装置の第1-2コンベヤ機構の搬送方向に沿って見た場合の模式図である。
図4】本発明の実施例3の変更例に係る茶葉火入れ装置の第2コンベヤ機構の搬送方向に沿って見た場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施の形態の例が、その変更例と共に、適宜図面に基づいて説明される。
尚、当該形態は、下記の例及び変更例に限定されない。
【0009】
図1は、本発明に係る茶葉火入れ装置1の模式的な前面図である。図1の紙面手前奥方向が茶葉火入れ装置1の前後方向とされ、図1の左右方向が茶葉火入れ装置1の左右方向とされ、図1の上下方向が茶葉火入れ装置1の上下方向とされる。尚、茶葉火入れ装置1における前後左右上下は、説明の便宜上定めたものである。
茶葉火入れ装置1は、機枠2と、ホッパー4と、最上流フィーダー6と、第1-1コンベヤ機構8と、第1-2コンベヤ機構10と、第1フィーダー12と、第2コンベヤ機構14と、第2フィーダー16と、第3コンベヤ機構18と、制御部19と、を有する。
【0010】
機枠2は、上枠20と、下枠22と、を有する。
上枠20は、下枠22と一体化されており、下枠22の上側に配置されている。
機枠2は、各種の部材を、直接的に又は間接的に支持する。
【0011】
ホッパー4は、上枠20の右端上部に保持される。
ホッパー4は、火入れの原料である荒茶等の茶葉を貯留すると共に、例えば単位時間当たりの供給量が一定となるパターンのような所定のパターンで、貯留した茶葉を最上流フィーダー6へ供給する。茶葉火入れ装置1の使用者は、茶葉をホッパー4に補充する。
【0012】
最上流フィーダー6は、上枠20の右端下部に保持される。
最上流フィーダー6は、ホッパー4の下方に配置されている。
最上流フィーダー6は、ホッパー4から茶葉を右部において受け取って、一旦貯留して撹拌した後、左方即ち下流側へ送り出す。ホッパー4からの茶葉は、最上流フィーダー6へ落下し、最上流フィーダー6による受け取り時の抗力の作用、及び撹拌の作用により、手揉み処理あるいは手返し処理の初期段階に類する茶葉の初期の撹拌が行われる。
最上流フィーダー6は、ホッパー4と共に、茶葉の搬送路における最上流に配置されている。
【0013】
第1-1コンベヤ機構8は、上枠20の左右方向における中央部に保持される。
第1-1コンベヤ機構8は、第1-1コンベヤ30と、上側ヒーター機構32と、下側ヒーター機構34と、を有する。
【0014】
第1-1コンベヤ30は、最上流フィーダー6と第1-2コンベヤ機構10との間に配置されている。
第1-1コンベヤ30は、搬送面に対し振動を付与する振動機構(図示略)を備えている。即ち、第1-1コンベヤ30は、振動コンベヤである。
第1-1コンベヤ30は、右端部において、最上流フィーダー6により投入される茶葉を受け取る。第1-1コンベヤ30の右端部における搬送面は、最上流フィーダー6の左端部における供給面より下方に配置されている。最上流フィーダー6からの茶葉は、第1-1コンベヤ30へ落下し、短時間の手揉み処理あるいは手返し処理に類する作用を受ける。
第1-1コンベヤ30は、受け取った茶葉を、左方へ即ち上流側から下流側へ搬送する。第1-1コンベヤ30の搬送面を含む部分は、振動機構により振動し、茶葉は、振動を受けることにより、第1-1コンベヤ30の搬送面上で徐々にほぐされ、又搬送面の幅方向(前後方向)の全体に行き渡る状態で搬送される。
第1-1コンベヤ30は、左端部において、第1-2コンベヤ機構10へ茶葉を供給する。
【0015】
上側ヒーター機構32は、第1-1コンベヤ30の上側に配置されている。
上側ヒーター機構32は、複数(2つ)の上側電気ヒーター40を備えている。各上側電気ヒーター40は、電力により発熱する面状の発熱部(図示略)を有している。各上側電気ヒーター40の発熱部は、面状(シート状)であり、より詳しくは、耐熱性のシート基材内に線状の電熱体が張り巡らされているものである。各上側電気ヒーター40の発熱部は、下部に配置されており、第1-1コンベヤ30の搬送面と向かい合っていて、主に下方に赤外線を放射する。赤外線は、好ましくは遠赤外線である。各上側電気ヒーター40の発熱部の温度は、全面にわたり均一であることが好ましい。各上側電気ヒーター40の発熱部が面状であり、又その温度が均一であれば、茶葉が発熱部直下の何れの位置で搬送されたとしても、均一に加熱される。尚、上側ヒーター機構32における上側電気ヒーター40の数は、1つでも良いし、3つ以上でも良い。又、少なくとも一方の上側電気ヒーター40は、線状の電熱体に代えて、あるいは線状の電熱体と共に、通電により発熱する発熱作用部を備えていても良い。少なくとも一方の上側電気ヒーター40は、面状のシーズヒータであっても良いし、線状の電熱体をゴムで面状に固めたシリコンゴムヒーターあるいはラバーゴムヒーター等の面状ゴムヒータであっても良い。少なくとも一方の上側電気ヒーター40は、電熱体と鉄板等の金属板とを結合した面状ヒーターであっても良く、この場合、金属板による熱の反射及び輻射加熱が行われて、より一層効率の良好な加熱が行われる。又、各上側電気ヒーター40の内の少なくとも何れかは、面状以外の発熱部を有していても良く、例えば線状の発熱部を有する棒状ヒーターであっても良い。
上側ヒーター機構32は、図示されない上下動機構により上下動可能であり、上側ヒーター機構32の第1-1コンベヤ30に対する距離は、調節可能である。上下動機構は、例えば各上側電気ヒーター40と上枠20との間に介装されるストッパ付きスライダである。上下動機構は、複数の上側電気ヒーター40を個別に上下動可能であっても良いし、一部の上側電気ヒーター40が属するグループ毎に上下動可能であっても良いし、全部の上側電気ヒーター40を総合して上下動可能であっても良い。
茶葉に対する十分に良好な火入れを得る観点、即ち火入れ後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、各上側電気ヒーター40の発熱部の発熱温度の範囲の下限は、130℃であることが好ましく、140℃であることがより好ましく、150℃であることが更に好ましい。他方、同様な観点から、各上側電気ヒーター40の発熱部の発熱温度の範囲の上限は、140℃であることが好ましく、180℃であることがより好ましく、170℃であることが更に好ましく、160℃であることがより一層好ましい。特に、後述の実施例によれば、各上側電気ヒーター40の発熱部の発熱温度は、150℃以上170℃以下であることが好ましい。
又、同様な観点から、各上側電気ヒーター40の発熱部と第1-1コンベヤ30の搬送面との距離の範囲の下限は、2mm(ミリメートル)であることが好ましく、3mmであることがより好ましく、4mmであることが更に好ましく、5mmであることがより一層好ましい。他方、同様な観点から、各上側電気ヒーター40の発熱部と第1-1コンベヤ30の搬送面との距離の範囲の上限は、15mmであることが好ましく、14mmであることがより好ましく、13mmであることが更に好ましく、12mmであることがより一層好ましい。特に、後述の実施例によれば、各上側電気ヒーター40の発熱部と第1-1コンベヤ30の搬送面との距離は、3mm以上13mm以下であることが好ましい。
更に、第1-1コンベヤ30が振動コンベヤであることから、振動が付与されない場合に比べて茶葉がより均一に加熱されるし、茶葉から蒸発した水分を取り除いた状態で茶葉が搬送される。
【0016】
下側ヒーター機構34は、第1-1コンベヤ30の下側に配置されている。
下側ヒーター機構34は、複数(2つ)の下側電気ヒーター42を備えている。各下側電気ヒーター42は、電力により発熱する面状の発熱部(図示略)を有している。各下側電気ヒーター42の発熱部は、シート状であり、より詳しくは、耐熱性のシート基材内に線状の電熱体が張り巡らされているものである。各下側電気ヒーター42の発熱部は、上部に配置されており、第1-1コンベヤ30の搬送面(の裏側)と向かい合っていて、主に上方に赤外線を放射する。赤外線は、好ましくは遠赤外線である。各下側電気ヒーター42の発熱部の温度は、全面にわたり均一であることが好ましい。各下側電気ヒーター42の発熱部が面状であり、又その温度が均一であれば、茶葉が発熱部直上の何れの位置で搬送されたとしても、均一に加熱される。尚、下側ヒーター機構34における下側電気ヒーター42の数は、1つでも良いし、3つ以上でも良いし、上側ヒーター機構32における上側電気ヒーター40の数と異なっていても良い。又、少なくとも一方の下側電気ヒーター42は、シート状でなくても良いし、線状の電熱体に代えて、あるいは線状の電熱体と共に、通電により発熱する発熱作用部が設けられても良い。又、各下側電気ヒーター42の内の少なくとも一方は、面状以外の発熱部を有していても良く、例えば線状の発熱部を有する棒状ヒーターであっても良い。
下側ヒーター機構34は、図示されない上下動機構により上下動可能であり、下側ヒーター機構34の第1-1コンベヤ30に対する距離は、調節可能である。上下動機構は、例えば各下側電気ヒーター42と上枠20との間に介装されるストッパ付きスライダである。上下動機構は、複数の下側電気ヒーター42を個別に上下動可能であっても良いし、一部の下側電気ヒーター42が属するグループ毎に上下動可能であっても良いし、全部の下側電気ヒーター42を総合して上下動可能であっても良い。下側ヒーター機構34の上下動機構は、上側ヒーター機構32の上下動機構と連動しても良い。
茶葉に対する十分に良好な火入れを得る観点、即ち火入れ後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、各下側電気ヒーター42の発熱部の発熱温度は、100℃以上140℃以下であることが好ましく、110℃以上130℃以下であることがより好ましく、115℃以上125℃以下であることが更に好ましく、120℃であることがより一層好ましい。
又、同様な観点から、各下側電気ヒーター42の発熱部と第1-1コンベヤ30の搬送面との距離は、10mm以上16mm以下であることが好ましく、11mm以上15mm以下であることがより好ましく、12mm以上14mm以下であることが更に好ましく、13mmであることがより一層好ましい。
加えて、同様な観点から、上側ヒーター機構32及び下側ヒーター機構34により、第1-1コンベヤ30の搬送面の温度は、100℃以上140℃以下とされることが好ましく、115℃以上135℃以下とされることがより好ましく、120℃以上130℃以下とされることが更に好ましい。
更に、第1-2コンベヤ50が振動コンベヤであることから、振動が付与されない場合に比べて茶葉がより均一に加熱されるし、茶葉から蒸発した水分を取り除いた状態で茶葉が搬送される。
【0017】
第1-2コンベヤ機構10は、上枠20の左部に保持される。
第1-2コンベヤ機構10は、第1-2コンベヤ50と、上側ヒーター機構52と、下側ヒーター機構54と、を有する。
【0018】
尚、第1-1コンベヤ機構8及び第1-2コンベヤ機構10は、第1-1コンベヤ30及び第1-2コンベヤ50(第1コンベヤ)が共通化されたり、上側ヒーター機構32,52が共通化されたり等することで、統合されても良い。
又、第1-2コンベヤ機構10は、第1-2コンベヤ50並びに上側ヒーター機構52及び下側ヒーター機構54の少なくとも何れかを分離することで、2以上の機構に分離されても良い。
そして、他の機構等は、同様に統合されあるいは分離されても良い。
【0019】
第1-2コンベヤ50は、第1-1コンベヤ機構8の左側に配置されている。
第1-2コンベヤ50は、振動を付与する振動機構(図示略)を備えている。即ち、第1-1コンベヤ30は、振動コンベヤである。
第1-2コンベヤ50は、右端部において、第1-1コンベヤ30から茶葉を受け取る。第1-2コンベヤ50の右端部における搬送面は、第1-1コンベヤ30の左端部における搬送面より下方に配置されている。第1-1コンベヤ30からの茶葉は、第1-2コンベヤ50へ落下し、短時間の手揉み処理あるいは手返し処理に類する作用を受ける。
第1-2コンベヤ50は、受け取った茶葉を、左方へ搬送する。第1-2コンベヤ50の搬送面を含む部分は、振動機構により振動し、茶葉は、振動を受けることにより、第1-2コンベヤ50の搬送面上で更にほぐされ、又搬送面の幅方向全体に行き渡る状態が保持される。
第1-2コンベヤ50は、左端部において、第1フィーダー12へ茶葉を供給する。
尚、第1-1コンベヤ30及び第1-2コンベヤ50の少なくとも一方は、振動機構を備えていなくても良い。
【0020】
上側ヒーター機構52は、第1-1コンベヤ機構8の上側ヒーター機構32と同様に成り、それぞれ上側電気ヒーター40と同様に成る複数(2つ)の上側電気ヒーター60を備えている。
各上側電気ヒーター60における発熱温度の好ましい条件、及び発熱部と搬送面との距離の好ましい条件は、各上側電気ヒーター40と同様である。
【0021】
下側ヒーター機構54は、第1-1コンベヤ機構8の下側ヒーター機構34と同様に成り、それぞれ下側電気ヒーター42と同様に成る複数(2つ)の下側電気ヒーター62を備えている。
各下側電気ヒーター62における発熱温度の好ましい条件、及び発熱部と搬送面との距離の好ましい条件は、各下側電気ヒーター42と同様である。
又、上側ヒーター機構52及び下側ヒーター機構54による搬送面の温度の好ましい条件は、上側ヒーター機構32及び下側ヒーター機構34によるものと同様である。
【0022】
処理後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、茶葉が加熱された状態で第1-1コンベヤ機構8及び第1-2コンベヤ機構10を通過する時間は、20秒間以上60秒間以下であることが好ましく、30秒間以上50秒間以下であることがより好ましく、35秒間以上45秒間以下であることが更に好ましく、40秒間であることがより一層好ましい。当該時間は、第1-1コンベヤ機構8及び第1-2コンベヤ機構10における茶葉の加熱時間(部分的火入れ時間)と捉えることができる。
尚、第1-1コンベヤ機構8及び第1-2コンベヤ機構10を通過する時間(搬送される時間)と、茶葉の加熱時間とは、互いに異なっていても良く、例えば茶葉の加熱時間は通過時間より短くても良い。
【0023】
第1フィーダー12は、上枠20の左端下部、及び下枠22の左端上部に保持される。
第1フィーダー12は、第1-2コンベヤ50の左端部の下側に配置されている。
第1フィーダー12は、第1-2コンベヤ50から幅方向に広げられ又ほぐされた茶葉を受け取って集積し、一旦貯留して撹拌したうえで、下方へ送り出す。第1フィーダー12からの茶葉は、第2コンベヤ機構14へ落下する。第1フィーダー12における集積、撹拌及び貯留と、第2コンベヤ機構14による受け取り時の抗力の作用とにより、初期火入れ後の手揉み処理あるいは手返し処理に類する茶葉の中間的な撹拌が行われる。又、第1フィーダー12は、貯留により、茶葉の温度を、貯留しない場合に比べて一層低下させる。
処理後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、茶葉が第1フィーダー12を通過する時間(第1の撹拌の時間)は、20秒間以上40秒間以下であることが好ましく、25秒間以上35秒間以下であることがより好ましく、30秒間であることが更に好ましい。
【0024】
第2コンベヤ機構14は、下枠22の左部に保持される。
第2コンベヤ機構14は、第2コンベヤ70と、上側ヒーター機構72と、下側ヒーター機構74と、を有する。
【0025】
第2コンベヤ70は、第1フィーダー12の下側に配置されている。
第2コンベヤ70は、ベルト76と、第1回転軸77と、第2回転軸78と、を備えている。
【0026】
ベルト76は、金属製であり、実施例においてはステンレス製である。即ち、第2コンベヤ70は、スチールベルトコンベヤである。ベルト76は、無端状であり、無限軌道状であり、環状である。ベルト76の外面は、凹凸がなく平坦である。ベルト76は、幅方向を前後方向として、左右方向に延びている。ベルト76の外面のうち上面となっている部分が、第2コンベヤ70の搬送面となる。尚、ベルト76は、ステンレスあるいは鉄以外であっても良いし、金属以外であっても良い。
第1回転軸77は、円柱状であり、前後方向に延びている。第1回転軸77は、自身の中心軸の周りにおいて回転可能である。第1回転軸77は、環状のベルト76の左端部内において、ベルト76に対して従動回転可能である状態で配置されている。
第2回転軸78は、円柱状であり、前後方向に延びている。第2回転軸78は、自身の中心軸の周りにおいて回転可能である。第2回転軸78は、環状のベルト76の右端部内において、ベルト76に対して回転駆動可能である状態で配置されている。第2回転軸78は、ベルト76を駆動し、搬送面を右方へ送る。第2回転軸78は、図示されない駆動機構により駆動される。駆動機構は、例えば電気モータである。
尚、第1回転軸77が駆動軸とされると共に第2回転軸78が従動軸とされても良いし、第1回転軸77及び第2回転軸78が駆動軸とされても良い。
【0027】
第2コンベヤ70は、左端部において、第1フィーダー12から茶葉を受け取る。第2コンベヤ70の左端部における搬送面は、第1フィーダー12より下方に配置されている。第1フィーダー12からの茶葉は、第2コンベヤ70の搬送面上に落下する。
第2コンベヤ70は、受け取った茶葉を、右方へ即ち上流側から下流側へ搬送する。下流の方向は、第1フィーダー12を境目として、左方から右方へ変化する。
第2コンベヤ70は、右端部において、第2フィーダー16へ茶葉を供給する。
【0028】
上側ヒーター機構72は、第1-1コンベヤ機構8の上側ヒーター機構32と同様に成り、それぞれ上側電気ヒーター40と同様に成る複数(3つ)の上側電気ヒーター80を備えている。
各上側電気ヒーター80における発熱温度の好ましい条件、及び発熱部と搬送面との距離の好ましい条件は、各上側電気ヒーター40と同様である。
【0029】
下側ヒーター機構74は、第1-1コンベヤ機構8の下側ヒーター機構34と同様に成り、それぞれ下側電気ヒーター42と同様に成る複数(3つ)の下側電気ヒーター82を備えている。
各下側電気ヒーター82における発熱温度の好ましい条件、及び発熱部と搬送面との距離の好ましい条件は、各下側電気ヒーター42と同様である。
又、上側ヒーター機構72及び下側ヒーター機構74による搬送面の温度の好ましい条件は、上側ヒーター機構32及び下側ヒーター機構34によるものと同様である。
【0030】
処理後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、茶葉が第2コンベヤ機構14を通過する際に加熱される時間は、20秒間以上60秒間以下であることが好ましく、30秒間以上50秒間以下であることがより好ましく、35秒間以上45秒間以下であることが更に好ましく、40秒間であることがより一層好ましい。
又、第2コンベヤ30が搬送面の平坦なスチールベルトコンベヤであることから、上側電気ヒーター80及び下側電気ヒーター82のそれぞれの面状の発熱部に対して茶葉が等間隔を保つこととなり、より良好な火入れが得られる。
【0031】
第2フィーダー16は、下枠22の左右方向における中央部に保持される。
第2フィーダー16は、第2コンベヤ70の右端部の下側に配置されている。
第2フィーダー16は、第2コンベヤ70から茶葉を受け取り、一旦貯留して撹拌したうえで、右方へ送り出す。第2フィーダー16からの茶葉は、第3コンベヤ機構18へ送出される。第2フィーダー16における茶葉の送出部は、第3コンベヤ機構18の搬送面より上方に配置されており、第2フィーダー16からの茶葉は、第3コンベヤ機構18の搬送面に落下する。第2フィーダー16における集積、撹拌及び貯留と、第3コンベヤ機構18による受け取り時の抗力の作用とにより、複数回の火入れ後の手揉み処理あるいは手返し処理に類する茶葉の撹拌が行われる。第2フィーダー16は、かような手揉み機能あるいは手返し機能により、茶葉の上面部、中間部、コンベヤ接触面における温度ムラを抑制する。尚、最上流フィーダー6、第1フィーダー12及び第2フィーダー16の少なくともいずれかは、撹拌機能を有さなくても良い。
処理後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、茶葉が第1フィーダー12を通過する時間(第2の撹拌の時間)は、20秒間以上40秒間以下であることが好ましく、25秒間以上35秒間以下であることがより好ましく、30秒間であることが更に好ましい。
【0032】
第3コンベヤ機構18は、下枠22の右部に保持される。
第3コンベヤ機構18は、第3コンベヤ90と、上側ヒーター機構92と、下側ヒーター機構94と、を有する。
【0033】
第3コンベヤ90は、第2フィーダー16の右側に配置されている。
第3コンベヤ90は、第2コンベヤ70と変更例も含め同様に成り、ベルト96と、第1回転軸97と、第2回転軸98と、を備えている。
ベルト96は、第2コンベヤ70のベルト76と同様に成る。第2コンベヤ70は、平坦な搬送面を有するスチールベルトコンベヤである。
第1回転軸97は、第2コンベヤ70の第1回転軸77と同様に成る。
第2回転軸98は、第2コンベヤ70の第2回転軸78と同様に成る。
【0034】
第3コンベヤ90は、左端部において、第2フィーダー16から茶葉を受け取る。第3コンベヤ90の左端部における搬送面は、第2フィーダー16の茶葉送出部より下方に配置されている。第2フィーダー16からの茶葉は、第3コンベヤ90の搬送面上に落下する。
第3コンベヤ90は、受け取った茶葉を、右方へ搬送する。
第3コンベヤ90は、右端部において、図示されない火入れ済み茶葉貯留部へ茶葉を供給する。
尚、第2コンベヤ70及び第3コンベヤ90の少なくとも一方は、振動機構を備えていても良い。
【0035】
上側ヒーター機構92は、第1-1コンベヤ機構8の上側ヒーター機構32と同様に成り、それぞれ上側電気ヒーター40と同様に成る複数(3つ)の上側電気ヒーター100を備えている。
各上側電気ヒーター100における発熱温度の好ましい条件、及び発熱部と搬送面との距離の好ましい条件は、各上側電気ヒーター40と同様である。
尚、各上側電気ヒーター40,60,80,100の少なくとも何れかの種類あるいは形式は、他と異なっていても良い。全ての各上側電気ヒーター40,60,80,100の種類あるいは形式が、互いに異なっていても良い。
【0036】
下側ヒーター機構94は、第1-1コンベヤ機構8の下側ヒーター機構34と同様に成り、それぞれ下側電気ヒーター42と同様に成る複数(3つ)の下側電気ヒーター102を備えている。
各下側電気ヒーター102における発熱温度の好ましい条件、及び発熱部と搬送面との距離の好ましい条件は、各下側電気ヒーター42と同様である。
又、上側ヒーター機構92及び下側ヒーター機構94による搬送面の温度の好ましい条件は、上側ヒーター機構32及び下側ヒーター機構34によるものと同様である。
尚、各下側電気ヒーター42,62,82,102の少なくとも何れかの種類あるいは形式は、他と異なっていても良い。全ての各下側電気ヒーター42,62,82,102の種類あるいは形式が、互いに異なっていても良い。各上側電気ヒーター40,60,80,100、並びに各下側電気ヒーター42,62,82,102における種類あるいは形式は、同様に一部又は全部において異なっていても良い。
【0037】
処理後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、茶葉が第3コンベヤ機構18を通過する際に加熱される時間は、20秒間以上60秒間以下であることが好ましく、30秒間以上50秒間以下であることがより好ましく、35秒間以上45秒間以下であることが更に好ましく、40秒間であることがより一層好ましい。
又、第3コンベヤ90が搬送面の平坦なスチールベルトコンベヤであることから、上側電気ヒーター100及び下側電気ヒーター102のそれぞれの面状の発熱部に対して茶葉が等間隔を保つこととなり、より良好な火入れが得られる。
【0038】
制御部19は、茶葉火入れ装置1における各種の部材及び部分を制御するものであり、例えばCPUと記憶手段(メモリ)と入力手段と出力手段と通信手段とを備えたコンピューターである。制御部19は、CPU及びCPUに接続された記憶手段等により制御を行う。記憶手段は、非一時的なコンピューター可読の記憶媒体を含み、その記憶媒体に、制御プログラムが記憶されている。CPUは、制御プログラムを逐次実行して、茶葉火入れ装置1の制御を行う。CPUは、記憶手段、入力手段、出力手段及び通信手段と接続されている。尚、入力手段及び出力手段は例えばタッチパネルのように一体化されても良い。又、入力手段、出力手段、及び通信手段の少なくとも何れかは、省略されても良い。
制御部19は、ホッパー4、最上流フィーダー6、第1-1コンベヤ機構8、第1-2コンベヤ機構10、第1フィーダー12、第2コンベヤ機構14、第2フィーダー16、及び第3コンベヤ機構18と電気的に接続されている。
【0039】
尚、ホッパー4、最上流フィーダー6、第1-1コンベヤ機構8、第1-2コンベヤ機構10、第1フィーダー12、第2コンベヤ機構14、第2フィーダー16、及び第3コンベヤ機構18の少なくとも何れかは、ファンを備えていても良い。
特に、第1-1コンベヤ機構8、第1-2コンベヤ機構10、第2コンベヤ機構14、及び第3コンベヤ機構18の少なくとも何れかにおいて、搬送面に向けて送風するファンが設けられると、対応する各上側電気ヒーター40,60,80,100、あるいはこれらと各下側電気ヒーター42,62,82,102とによる加熱のムラを抑制することができ、より一層質の良い火入れが実現される。
又、第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90の各搬送面の少なくとも何れかは、突起110を備えていても良い。突起110は、後記実施例3において詳述される。
更に、第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90の少なくとも何れかにおける搬送面の移動速度は、より良好な火入れを施すことで処理後の茶葉における香味等をより良好なものとする観点から、好ましくは40Hz(ヘルツ)以上である。搬送面の好ましい移動速度は、後記実施例3~4において詳述される。
【0040】
このような茶葉火入れ装置1の動作例、及び茶葉火入れ方法の例が、主に図2を用いて説明される。尚、処理のステップは適宜Sと省略される。又、各種のステップの順序は、適宜入れ替えられても良く、各種のステップは、論理的に同様な他の1以上のステップに変えられても良く、複数の各種のステップが、論理的に同様な他の1以上のステップに変えられても良い。
【0041】
まず、茶葉火入れ装置1の使用者により、ホッパー4内に茶葉が投入される(S1)。又、使用者により、茶葉火入れ装置1の電源が投入される。
茶葉火入れ装置1は、制御部19により制御される。
次に、ホッパー4が、貯留した茶葉を、最上流フィーダー6へ、落下時に短時間の撹拌が行われる状態で供給する(S2)。
続いて、最上流フィーダー6が、受け取った茶葉を、第1-1コンベヤ機構8へ、搬送面への落下時に短時間の撹拌が行われる状態で供給する(S3)。
【0042】
次いで、茶葉が、第1-1コンベヤ機構8の第1-1コンベヤ30により搬送面上で搬送されると共に、上側ヒーター機構32及び下側ヒーター機構34により第1段階の前半部の加熱を施され、即ち第1-1の部分的火入れを施される(S4)。
第1-1の部分的火入れにおける上側ヒーター機構32の各上側電気ヒーター40の発熱温度は、好ましくは、上述の通り150℃前後である。第1-1の部分的火入れにおける上側ヒーター機構32の各上側電気ヒーター40と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。
第1-1の部分的火入れにおける下側ヒーター機構34の各下側電気ヒーター42の発熱温度は、好ましくは、上述の通り120℃前後である。第1-1の部分的火入れにおける下側ヒーター機構34の各下側電気ヒーター42と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。
【0043】
続いて、第1-1コンベヤ機構8が第1-2コンベヤ機構10へ茶葉を供給する(S5)。この際、茶葉が第1-1コンベヤ30の搬送面から第1-2コンベヤ50の搬送面へ落下し、短時間の撹拌が行われる。
又、茶葉が、第1-2コンベヤ機構10の第1-2コンベヤ50により搬送面上で搬送されると共に、上側ヒーター機構52及び下側ヒーター機構54により第1段階の後半部の加熱を施され、即ち第1-2の部分的火入れを施される(S6)。
第1-1の部分的火入れ及び第1-2の部分的火入れを合わせて成る第1の部分的火入れに係る時間は、好ましくは、上述の通り40秒間前後である。
第1-2の部分的火入れにおける上側ヒーター機構52の各上側電気ヒーター60の発熱温度は、好ましくは、上述の通り150℃前後である。第1-2の部分的火入れにおける上側ヒーター機構52の各上側電気ヒーター60と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。
第1-2の部分的火入れにおける下側ヒーター機構34の各下側電気ヒーター62の発熱温度は、好ましくは、上述の通り120℃前後である。第1-2の部分的火入れにおける下側ヒーター機構54の各下側電気ヒーター62と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。
【0044】
更に、第1-2コンベヤ機構10が、第1フィーダー12へ、茶葉を供給する(S7)。
又、第1フィーダー12が、受け取った茶葉を、貯留、及び第2コンベヤ機構14の搬送面への送出により、第1段階の比較的長時間の撹拌即ち第1の撹拌が行われる状態で、第2コンベヤ機構14へ供給する(S8)。
第1の撹拌の時間は、好ましくは、上述の通り30秒間前後である。
【0045】
続いて、茶葉が、第2コンベヤ機構14の第2コンベヤ70により搬送面上で搬送されると共に、上側ヒーター機構72及び下側ヒーター機構74により第2段階の加熱を施され、即ち第2の部分的火入れを施される(S9)。
第2の部分的火入れに係る時間は、好ましくは、上述の通り40秒間前後である。
第2の部分的火入れにおける上側ヒーター機構72の各上側電気ヒーター80の発熱温度は、好ましくは、上述の通り150℃前後である。第2の部分的火入れにおける上側ヒーター機構72の各上側電気ヒーター80と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。
第2の部分的火入れにおける下側ヒーター機構74の各下側電気ヒーター82の発熱温度は、好ましくは、上述の通り120℃前後である。第2の部分的火入れにおける下側ヒーター機構74の各下側電気ヒーター82と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。
【0046】
更に、第2コンベヤ機構14が、第2フィーダー16へ、茶葉を供給する(S10)。
又、第2フィーダー16が、受け取った茶葉を、貯留、及び第3コンベヤ機構18の搬送面への送出により、第2段階の比較的長時間の撹拌即ち第2の撹拌が行われる状態で、第3コンベヤ機構18へ供給する(S11)。
第2の撹拌の時間は、好ましくは、上述の通り30秒間前後である。尚、第2の撹拌の時間は、第1の撹拌の時間と異なっていても良い。
【0047】
続いて、茶葉が、第3コンベヤ機構18の第3コンベヤ90により搬送面上で搬送されると共に、上側ヒーター機構92及び下側ヒーター機構94により第3段階の加熱を施され、即ち第3の部分的火入れを施される(S12)。
第3の部分的火入れに係る時間は、好ましくは、上述の通り40秒間前後である。尚、第1の部分的火入れの時間、第2の部分的火入れの時間、及び第3の部分的火入れの時間の少なくとも何れかは、他と異なっていても良い。第1の部分的火入れの時間、第2の部分的火入れの時間、及び第3の部分的火入れの時間のそれぞれが互いに異なる時間であっても良い。
第3の部分的火入れにおける上側ヒーター機構92の各上側電気ヒーター80の発熱温度は、好ましくは、上述の通り150℃前後である。第3の部分的火入れにおける上側ヒーター機構92の各上側電気ヒーター80と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。尚、第1の部分的火入れの当該発熱温度、第2の部分的火入れの当該発熱温度、及び第3の部分的火入れの当該発熱温度の少なくとも何れかは、他と異なっていても良い。第1の部分的火入れの当該発熱温度、第2の部分的火入れの当該発熱温度、及び第3の部分的火入れの当該発熱温度のそれぞれが互いに異なる温度であっても良い。第1の部分的火入れの当該距離、第2の部分的火入れの当該距離、及び第3の部分的火入れの当該距離の少なくとも何れかは、他と異なっていても良い。第1の部分的火入れの当該距離、第2の部分的火入れの当該距離、及び第3の部分的火入れの当該距離のそれぞれが互いに異なる距離であっても良い。
第3の部分的火入れにおける下側ヒーター機構94の各下側電気ヒーター82の発熱温度は、好ましくは、上述の通り120℃前後である。第3の部分的火入れにおける下側ヒーター機構94の各下側電気ヒーター82と搬送面との間の距離は、好ましくは、上述の通り13mm前後である。尚、第1の部分的火入れの当該発熱温度、第2の部分的火入れの当該発熱温度、及び第3の部分的火入れの当該発熱温度の少なくとも何れかは、他と異なっていても良い。第1の部分的火入れの当該発熱温度、第2の部分的火入れの当該発熱温度、及び第3の部分的火入れの当該発熱温度のそれぞれが互いに異なる温度であっても良い。第1の部分的火入れの当該距離、第2の部分的火入れの当該距離、及び第3の部分的火入れの当該距離の少なくとも何れかは、他と異なっていても良い。第1の部分的火入れの当該距離、第2の部分的火入れの当該距離、及び第3の部分的火入れの当該距離のそれぞれが互いに異なる距離であっても良い。
【0048】
そして、茶葉は、火入れの施されたものとして、火入れ済み茶葉貯留部に至る。
かように、茶葉火入れ装置1による茶葉の火入れは、主に、第1の部分的火入れ、第1の撹拌、第2の部分的火入れ、第2の撹拌、及び第3の部分的火入れにより行われる。又、茶葉の火入れは、茶葉を搬送し及び一時的に貯留しながら、自動で連続的に行われる。茶葉は、ホッパー4を出発点(最上流点)として、上流側から、最上流フィーダー6、第1-1コンベヤ機構8、第1-2コンベヤ機構10、第1フィーダー12、第2コンベヤ機構14、第2フィーダー16、第3コンベヤ機構18の順で下流側に搬送され、到達点(最下流点)としての火入れ済み茶葉貯留部に至る。
【0049】
上述の通り、好ましくは、第1の部分的火入れにつき時間は40秒前後で温度は上部150℃前後で下部120℃前後であり、第1の撹拌につき時間は30秒前後であり、第2の部分的火入れにつき時間は40秒前後で温度は上部150℃前後で下部120℃前後であり、第2の撹拌につき時間は30秒前後であり、第3の部分的火入れにつき時間は40秒前後で温度は上部150℃前後で下部120℃前後である。よって、茶葉の火入れの全体的な所要時間は、好ましくは、40+30+40+30+40=180秒間(3分間)の前後である。
部分的火入れあるいは火入れの時間が短すぎると、茶葉の強い青臭さが抜けきらない等、火入れ後の茶葉の風味に向上の余地がある。他方、部分的火入れあるいは火入れの時間が長すぎると、茶葉に焦げが生じる等、火入れ後の茶葉の風味に向上の余地がある。
又、部分的火入れの間の撹拌の時間が短すぎると、火入れ後の茶葉においてムレが生じ、風味への悪影響の抑制が十分でなくなる。他方、撹拌の時間が長すぎると、火入れ後の茶葉で淹れた茶飲料の水色が濁ったり、処理時間が長期化して効率に影響が出たりする。
更に、搬送面上部の各上側電気ヒーター40,60,80,100の少なくとも何れかの発熱温度と、向かい合う搬送面下部の各下側電気ヒーター42,62,82,102の少なくとも何れかの発熱温度とに差が存在し、特に搬送面上部のものの発熱温度より搬送面下部のものの発熱温度が低い方が、火入れ後の茶葉における品質により優れる。
【0050】
使用者は、火入れ後の茶葉について所望する量が得られるまで、茶葉火入れ装置1の運転を続けることができる。使用者は、適宜ホッパー4へ茶葉を補充する。
使用者は、火入れ後の茶葉について所望する量が得られた場合等において、茶葉火入れ装置1の運転を停止する。
茶葉(荒茶)の火入れにより、茶の風味等が向上し、茶の商品価値が増大する。
茶葉火入れ装置1は、例えば製茶工場から荒茶を仕入れて火入れし、消費者等に火入れ後の茶を譲渡する茶商の工場に設置される。
【0051】
以上の茶葉火入れ装置1は、次のような作用効果を奏する。
即ち、本発明の茶葉火入れ装置1は、第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90と、それらの上側に配置されている上側ヒーター機構32,52,72,92、及びそれらの下側に配置されている下側ヒーター機構34,54,74,94、並びにそれらにおける1以上の間に配置されている第1フィーダー12及び第2フィーダー16と、を備えている。第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90は、茶葉を搬送面において上流側から下流側へ搬送する。上側ヒーター機構32,52,72,92は、それぞれ1以上の上側電気ヒーター40,60,80,100を有している。各上側電気ヒーター40,60,80,100は、発熱部において赤外線を放射可能であり、対応する第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90により搬送される茶葉を赤外線により加熱する。下側ヒーター機構34,54,74,94は、それぞれ1以上の下側電気ヒーター42,62,82,102を有している。各下側電気ヒーター42,62,82,102は、発熱部において赤外線を放射可能であり、対応する第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90により搬送される茶葉を赤外線により加熱する。第1フィーダー12及び第2フィーダー16は、上流側で隣接する第1-2コンベヤ50又は第2コンベヤ70から茶葉を受け取って貯留し、下流側で隣接する第2コンベヤ70又は第3コンベヤ90へ茶葉を供給する。
従って、各上側電気ヒーター40,60,80,100及び各下側電気ヒーター42,62,82,102に基づく電気をエネルギー源とした両側からの加熱等により、火入れの質の低下を抑制しつつ、省エネルギー性及び環境保護性が向上した茶葉火入れ装置1が提供される。
【0052】
又、各上側電気ヒーター40,60,80,100の発熱温度は、好ましくは150℃前後であり、各下側電気ヒーター42,62,82,102の好ましい発熱温度である120℃前後より大きい。よって、火入れの質がより一層良好となる。
更に、各上側電気ヒーター40,60,80,100の発熱温度は、好ましくは150℃以上170℃以下である。よって、火入れの質がより一層良好となる。
又更に、第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90の少なくとも何れかの搬送面の温度は、好ましくは100℃以上140℃以下である。よって、火入れの質がより一層良好となる。
又、茶葉火入れ装置1は、各上側電気ヒーター40,60,80,100及び下側電気ヒーター42,62,82,102における、搬送面との間の距離を調節可能な上下動機構を備えている。よって、茶葉火入れ装置1の周囲の気温及び湿度の少なくとも何れかといった周囲の状況等に応じて、茶葉の加熱を微調整することができる。
又更に、第1-1コンベヤ30、及び第1-2コンベヤ50は、搬送面に対し振動を付与する振動機構を備えている。よって、茶葉に手返しあるいは手揉みに類する作用が振動により付与され、又茶葉が搬送面において広げられる。
又、第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90の各搬送面の少なくとも何れかは、突起110を備えている場合、熱ひずみが抑制され、又茶葉の幅方向の移動が抑制される。
更に、第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90の各搬送面の少なくとも何れかに与える振動の振動数は、好ましくは60Hz以上である。この場合、手返し手揉み類似作用あるいは茶葉拡散作用がより良好に茶葉に及ぼされる。
【0053】
加えて、茶葉火入れ装置1は、コンベヤとして上流側から順に第1コンベヤ(第1-1コンベヤ30及び第1-2コンベヤ50)、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90を含んでおり、又フィーダーとして上流側から順に第1フィーダー12及び第2フィーダー16を含んでいる。第1フィーダー12は、第1コンベヤと第2コンベヤ70との間に配置されている。第2フィーダー16は、第2コンベヤ70と第3コンベヤ90との間に配置されている。
又、好ましくは、第1コンベヤの搬送時における茶葉の加熱時間は、40秒であり、第1フィーダー12における茶葉の貯留時間は、30秒であり、第2コンベヤ70の搬送時における茶葉の加熱時間は、40秒であり、第2フィーダー16における茶葉の貯留時間は、30秒であり、第3コンベヤ90の搬送時における茶葉の加熱時間は、40秒である。
更に、第1-1コンベヤ30、第1-2コンベヤ50、第2コンベヤ70、及び第3コンベヤ90の搬送面の移動速度は、好ましくは40Hz以上である。
従って、火入れの質がより一層良好となる。
【実施例0054】
次いで、上述の茶葉火入れ装置1に係る4つの実施例、即ち実施例1~4が説明される。
尚、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0055】
上述の茶葉火入れ装置1における上側電気ヒーター40,60,80,100及び下側電気ヒーター42,62,82,102のそれぞれの発熱部と茶葉の搬送面との距離、並びに当該発熱部の発熱温度の好ましい諸元等を把握するため、実施例1として、上側電気ヒーター40,60,80,100及び下側電気ヒーター42,62,82,102をそれぞれ模した、発熱可能な上部焼成板及び発熱可能な下部焼成板を有するIH(Induction Heating)式の焼成器を用いた茶葉火入れ試験が、様々な試験条件のもとで行われた。
焼成器の上部焼成板の下面の発熱温度は調整可能であり、下部焼成板の上面の発熱温度は、上部焼成板の発熱温度とは独立して調整可能である。上部焼成板の下面は、下部焼成板の上面に対して上方から接近可能であり又接触可能であり、様々な高さを有するスペーサを挟み、そのスペーサより内側に茶葉を配置することで、下部焼成板の上面に対する距離即ち焼成板間隔を調整可能である。上部焼成板は、焼成板間隔を維持した状態で、下部焼成板の上側に保持される。焼成板間隔は、茶葉火入れ装置1における発熱部と搬送面との距離に相当する。上部焼成板の下面は正方形状であり、その1辺の大きさは320mmである。下部焼成板の上面は、上部焼成板の下面と同じ形状である。加熱試験される茶葉は、一番茶であり、下部焼成板の上面におけるおよそ300mm四方の仮想的な正方形内に、均一に載せられる。試験条件毎の茶葉の質量は、100g(グラム)である。
又、焼成器における各焼成板の間あるいは上部焼成板を開放した状態での下部焼成板上の茶葉に対して送風するファンが設けられ、試験条件に応じてファンの作動が切り替えられた。更に、試験条件によって、複数回の加熱の間に、茶葉に対する撹拌又は送風が行われた。
【0056】
そして、試験条件毎に、加熱後の茶葉を湯と共に急須に入れることで茶が淹れられて、それら茶毎の香味、水色等に関する官能評価が行われた。
次の表1に、実施例1の各試験条件及び官能評価の結果が示される。
【0057】
【表1】
【0058】
具体的な試験条件について、試験No.1では、焼成板間隔が13mmであり、上部焼成板の下面の発熱温度(上部焼成板温度)が150℃であり、下部焼成板の上面の発熱温度(下部焼成板温度)が120℃であった。又、撹拌送風回数が2回であり、且つ火入れ時間が180秒間であるため、加熱は3回にわたり、60秒間の1回目の加熱の後で、上部焼成板を開放して茶葉に対し送風し撹拌する工程が行われ、次いで60秒間の2回目の加熱が行われ、更に2回目の送風撹拌工程が行われ、続いて60秒間の3回目の加熱が行われた。送風撹拌工程は、何れも60秒間行われた。
試験No.2では、焼成板間隔が3mmであり、上部焼成板温度が150℃であり、下部焼成板温度が120℃であった。又、加熱は2回にわたり、30秒間の1回目の加熱の後で、上部焼成板を開放して茶葉に対し送風し撹拌する工程が30秒間行われ、次いで30秒間の2回目の加熱が行われた。
他の試験No.の試験条件も、上述と同様に表1に示される通りであった。試験No.8では、焼成板間隔が13mmであり、上部焼成板温度が185℃であり、下部焼成板温度が145℃であった。又、加熱は180秒間継続され、その加熱中に、焼成板間に対して送風が行われた。試験No.8では、撹拌送風工程は行われなかった。
【0059】
又、官能評価は、次のように行われた。即ち、茶の香気又は水色が特等であれば「◎」、上等であれば「〇」、上等と中等の間であれば「△」、中等であれば「▲」と評価した。又、特に香気について、「蒸れ」は一部の香気成分が散逸しているとの評価を示し、「強火香」は、焙じ茶に類する焦げの手前の香りがするとの評価を示す。
【0060】
試験No.7~9の官能評価に対して試験No.1~6の香気官能評価がより良好である観点から、上部焼成板温度は150℃以上170℃以下が好ましいと言え、下部焼成板温度は120℃以上140℃以下が好ましいと言える。下部焼成板温度は上部焼成板温度より20℃から30℃低いことが好ましく、かような温度差は、茶葉火入れ装置1では下部焼成板の上方に茶葉を搬送するベルト等が配置されて茶葉がベルト等を介して間接的に加熱されることに対応している。
上部焼成板は、上側電気ヒーター40,60,80,100に対応するから、これらの発熱部の発熱温度は、150℃以上170℃以下が好ましいと言える。
他方、下部焼成板は、下側電気ヒーター42,62,82,102に対応するから、これらの発熱部の発熱温度は、120℃以上140℃以下が好ましいと言える。
かような温度範囲の設定がなされた各上側電気ヒーター40,60,80,100及び各下側電気ヒーター42,62,82,102により、上下両側からの効率性、均一性及び良質性に優れた茶葉の加熱が得られる。
【0061】
更に、焼成板間隔に関し、官能試験の結果に優れる試験No.1では焼成板間隔は13mmである。これに対し、次いで官能試験の結果に優れる試験No.2~4では焼成板間隔は3mm又は6mmである。これらの試験No.1~4に鑑みれば、焼成板間隔が小さいほど茶葉への加熱作用が強くなるところ、その強さは、撹拌送風工程の実施、及び火入れ時間の短縮化の少なくとも何れか等により、質のより良好な状態に緩和可能である。
よって、焼成板間隔は、好ましくは3mm以上13mm以下である。焼成板間隔は、各上側電気ヒーター40,60,80,100及び各下側電気ヒーター42,62,82,102における発熱部と、前記搬送面との間の距離に対応するから、当該距離は、好ましくは3mm以上13mm以下である。
そして、当該距離は、次の理由から、調節可能であることが好ましい。即ち、茶葉火入れ装置1の周囲の気温及び湿度の少なくとも何れか等の周囲の状況、並びに搬送面を形成する部材の材質及び状態の少なくとも何れか等に応じて、茶葉の加熱が微調整されることが好ましい。かような加熱の微調整は、発熱部の温度調整、及び発熱部の搬送面に対する距離の調節の少なくとも一方によって行えるところ、発熱部の温度調整に比べ、当該距離の調節の方が、一定程度以上の質を得た状態でより簡単に行える。
当該距離を調節する機構の形式等は、発熱部と搬送面との間の距離が変更可能であればどのようなものであっても良い。
【0062】
以上の通り、かような実施例1によれば、各上側電気ヒーター40,60,80,100の発熱部の発熱温度は、好ましくは150℃以上170℃以下である。
他方、各下側電気ヒーター42,62,82,102の発熱温度は、好ましくは120℃以上140℃以下である。
又、各上側電気ヒーター40,60,80,100、及び各下側電気ヒーター42,62,82,102における発熱部と、搬送面との間の距離は、好ましくは何れも3mm以上13mm以下であり、又調節可能とされている。
【0063】
又、実施例1の結果に基づき、更に茶葉火入れ装置1の好ましい諸元等を把握するため、以下で説明される実施例2が形成された。
即ち、実施例2として、茶葉火入れ装置1における茶葉の搬送路の一部、即ち第2コンベヤ機構14が、実際に形成された。
【0064】
実施例2では、図3に示されるように、実施例1の焼成板間隔に相当する、上側電気ヒーター80の下面部における面状の発熱部から下側電気ヒーター82の下面部における面状の発熱部までの間隔は、40mmとされた。又、上側電気ヒーター80の下面発熱部から茶葉の搬送面までの間隔である上側間隔L1が、35mmとされた。更に、下側電気ヒーター82の上面発熱部から茶葉の搬送面までの間隔である下側間隔L2が、5mmとされた。尚、実施例2では、上側電気ヒーター80及び下側電気ヒーター82の、それぞれの茶葉の搬送面に対する距離が調節可能とされ、上側間隔L1及び下側間隔L2がそれぞれ調節可能とされた。
実施例2では、実施例1において最も官能評価が高かった試験No.1の条件に基づいて、上部焼成板温度に相当する上側電気ヒーター80の下面発熱部の温度が220℃に設定された。つまり、実施例1の試験No.1に係る13mmの焼成板間隔に対して、実施例2の上側間隔L1が35mmと大きくなっており、その分、実施例2の上側電気ヒーター80の下面発熱部の温度が、実施例1の試験No.1に係る150℃の上部焼成板温度から増加され、220℃に設定された。
又、同様に、実施例2では、実施例1の試験No.1の条件に基づいて、下側電気ヒーター82の上面発熱部の温度が240℃に設定された。実施例1の下部焼成板温度は、実施例2では茶葉の搬送面の温度に相当する。下側電気ヒーター82と茶葉の搬送面の間には第2コンベヤ70の下部が配置されて、下側電気ヒーター82から茶葉の搬送面への伝熱が空気中の場合に比べて抑制されるため、実施例1の試験No.1の下部焼成板温度から実施例2の下側電気ヒーター82の上面発熱部の設定温度への増分は、実施例1の試験No.1の上部焼成板温度から実施例2の上側電気ヒーター80の下面発熱部の設定温度への増分より大きくなっている。
【0065】
かような設定で動作させた実施例2における上側電気ヒーター80の下面発熱部の温度の実測値は、128℃となった。又、茶葉の搬送面の温度の実測値は、103℃となった。
実施例2における上側電気ヒーター80の下面発熱部の実測温度は実施例1の上部焼成板温度に相当するから、試験No.1の上部焼成板温度である150℃に可及的に近いことが好ましいところ、128℃は150℃に十分近いと言える。又、実施例2において、上側間隔L1が35mmから小さくなるように調整されれば、上側電気ヒーター80の下面発熱部の実測温度を150℃に近づけること、あるいは150℃とすることが可能である。
同様に、実施例2における茶葉の搬送面の実測温度は実施例1の下部焼成板温度に相当するから、試験No.1の下部焼成板温度である120℃に可及的に近いことが好ましいところ、103℃は120℃に十分近いと言える。又、下側間隔L2が5mmから小さくなるように調整されれば、実施例2における茶葉の搬送面の実測温度を120℃に近づけること、あるいは120℃とすることが可能である。
即ち、実施例2における上側間隔L1及び下側間隔L2の少なくとも一方の調整により、搬送面上の茶葉に対する熱量が調節される。
尚、実施例2におけるこれらの調整は、あくまで茶葉の良好な火入れを得るために行われるべきものであり、実施例1の試験No.1の条件に近づけること自体のみを目的として行われる必要はない。
【0066】
又、実施例1における撹拌の結果に基づき、更に茶葉火入れ装置1の好ましい諸元等を把握するため、以下で説明される実施例3が形成された。
即ち、実施例3として、茶葉火入れ装置1における茶葉の搬送路の一部、即ち第1-2コンベヤ機構10が、実際に形成された。
実施例3においても、実施例2における上側間隔L1及び下側間隔L2が、同様に把握される。即ち、実施例3では、上側電気ヒーター60の下面発熱部から茶葉の搬送面までの間隔が、上側間隔L1とされる。又、実施例3では、下側電気ヒーター62の上面発熱部から茶葉の搬送面までの間隔が、下側間隔L2とされる。
尚、図4に示されるように、実施例3において、第1-2コンベヤ50の搬送面に、隣接する部分に対して上方に突出する1以上(図4では3つ)の突起110が設けられても良い。複数の突起110は、図4の通り、搬送面の幅方向に並んでいても良いし、図4とは異なり、搬送方向に並んでいても良い。一部又は全部の突起110は、搬送方向に延びていても良い。突起110は、振動しないコンベアを含む他のコンベヤに設けられても良い。かような突起110が設けられることで、第1-2コンベヤ50が補強されてその熱ひずみが抑制される。又、特に振動コンベヤの場合、搬送面上の茶葉が搬送方向にガイドされ、搬送面の幅方向への茶葉の大幅な移動が抑制される。
【0067】
実施例3において、茶葉火入れ試験が、様々な試験条件のもとで行われた。
当該試験において、実施例1の撹拌に相当する第1-2コンベヤ50の振動に係る振動数は、45Hz及び65Hzの2種類とされた。
又、第1-2コンベヤ50の振動の態様は、断続する態様と連続する態様の2種類とされた。断続する態様は、10秒間の振動後、2秒間の振動停止がなされ、これらを繰り返すものとされた。
尚、実施例3における上側間隔L1は46mmとされ、上側電気ヒーター60の設定温度は、実施例1の試験No.1を実施例3に適合させて、300℃とされた。又、実施例3における下側間隔L2は4mmとされ、下側電気ヒーター62の設定温度は、実施例1の試験No.1を実施例3に適合させて、340℃とされた。搬送面の実測温度は、実施例2と同様に、上側電気ヒーター60及び下側電気ヒーター62の各設定温度から下降している。更に、実施例3における第1-2コンベヤ50の搬送面の移動速度、即ち茶葉の移送速度は、10mm/秒程度とされた。加えて、実施例3における第1-2コンベヤ50の搬送面の搬送方向の長さは、1.7メートルとされた。
【0068】
そして、実施例3の試験条件毎に、実施例1と同様の官能評価が行われた。
次の表2に、実施例3の各試験条件及び官能評価の結果が示される。
【0069】
【表2】
【0070】
具体的な試験条件について、試験No.10では、搬送面の振動数が60Hzであり、振動態様は断続であった。
試験No.11では、搬送面の振動数が60Hzであり、振動態様は連続であった。
試験No.12では、搬送面の振動数が45Hzであり、振動態様は断続であった。
試験No.13では、搬送面の振動数が45Hzであり、振動態様は連続であった。
【0071】
試験No.10~13の中で試験No.11の官能評価が最も良好であることから、第1-2コンベヤ50の振動につき、搬送面の振動数は60Hzが好ましく、振動態様は連続が好ましい。
【0072】
そして、実施例1~3の結果に基づき、更に茶葉火入れ装置1の好ましい諸元等を把握するため、以下で説明される実施例4が形成された。
即ち、実施例4として、実施例3に係る第1-2コンベヤ機構10の下流側に、実施例2に係る第2コンベヤ機構14が配置されて成る茶葉火入れ装置1の要部が、実際に形成された。
【0073】
実施例4において、茶葉火入れ試験が、様々な試験条件のもとで行われた。
当該試験において、第1-2コンベヤ機構10につき、良好な官能評価を得た実施例3の試験No.11の条件が踏襲された。又、実施例4では、実施例2に鑑み、上側電気ヒーター80に係る上側間隔L1が35mmとされ、下側電気ヒーター82に係る下側間隔L2が、5mmとされた。更に、実施例4では、実施例2に鑑み、上側電気ヒーター80の設定温度が220℃とされ、下側電気ヒーター82の設定温度が240℃とされた。加えて、実施例4における第1-2コンベヤ50の搬送面の搬送方向の長さは、1.7メートルとされた。
更に、実施例1の火入れ時間に相当する第2コンベヤ70の搬送面の移動速度、即ち茶葉の移送速度は、20Hz、40Hz又は60Hzの3種類とされた。尚、40Hzの搬送面移動速度は、17mm/秒に相当する。
【0074】
そして、実施例4の試験条件毎に、実施例1と同様の官能評価が行われた。
次の表3に、実施例4の各試験条件及び官能評価の結果が示される。
【0075】
【表3】
【0076】
具体的な試験条件について、試験No.14では、第2コンベヤ70の搬送面の移動速度は、20Hzであった。
試験No.15では、第2コンベヤ70の搬送面の移動速度は、40Hzであった。
試験No.16では、第2コンベヤ70の搬送面の移動速度は、60Hzであった。尚、試験No.16では、上側電気ヒーター60の下面発熱部の温度、及び搬送面の温度が実測され、実施例2での説明の通り、順に128℃、103℃となった。
【0077】
試験No.14~16の中で試験No.15の官能評価が最も良好であることから、実施例4の茶葉火入れ装置1では、第2コンベヤ70の搬送面の移動速度は40Hzが好ましい。
第2コンベヤ70の搬送面の移動速度が遅すぎると、第1-2コンベヤ50側から移送される茶葉の厚み(茶層)が厚くなり易く、加熱処理の均一性が抑制される。他方、第2コンベヤ70の搬送面の移動速度が速すぎると、必要な火入れ時間が得られないことになるところ、その分第2コンベヤ機構14を長くすれば対処可能である。
加熱の均一性の観点から、第2コンベヤ70の搬送面の移動速度は、40Hz以上であることが好ましい。
【0078】
実施例2~4によれば、実施例1の撹拌に相当する搬送面の振動は、45Hz以上60Hzの振動数で連続して付与することが好ましく、60Hzの振動数で連続して付与することがより好ましい。かような振動により、移送中の茶葉における搬送面との接触が断続的となり、より均一な火入れに寄与する。
又、実施例1の火入れ時間に相当する茶葉の搬送速度は、所定の下限以上であることが好ましく、その下限は、実施例4の構成において40Hzであることが好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1・・茶葉火入れ装置、12・・第1フィーダー、16・・第2フィーダー、30・・第1-1コンベヤ(第1コンベヤ)、32,52,72,92・・上側ヒーター機構、34,54,74,94・・下側ヒーター機構、40,60,80,100・・上側電気ヒーター、42,62,82,102・・下側電気ヒーター、50・・第1-2コンベヤ(第1コンベヤ)、70・・第2コンベヤ、90・・第3コンベヤ。
図1
図2
図3
図4