(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160878
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】グレーチングの固定保持具
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20241108BHJP
E03F 5/06 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
E03F5/04 F
E03F5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076370
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】522349177
【氏名又は名称】OGグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】岡島 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】堀籠 幸男
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大場 博幸
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CB02
2D063CB06
2D063CB12
2D063CB23
2D063CB26
2D063CB27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構成部品を減らしてコスト低減を図るグレーチングの固定保持具を提供する。
【解決手段】グレーチング1の隣り合う一対の主部材11に取付け固定されるベース部材2と、通孔を設けた第一板部41の先端側から正面視で内角が鈍角の角度で裏面側へ屈曲した第二板部42が延在する押圧部材4にして、前記第一板部に係る裏面に通孔の孔口と雌ネジ孔の孔口との中心を合わせたナット5が固着一体化したナット付き押圧部材と、前記平板部の上面側にボルト頭を配して、ボルト軸を前記透孔及び前記通孔に遊挿し前記ナットに螺合するボルト6とを具備し、グレーチングで蓋をした側溝に対し、前記透孔及び前記通孔に遊挿した該ボルトと前記ナットとの締付けにより、前記平板部の下面に前記第一板部の表面側基端が当たり、この当たり部分を支点に前記第二板部が上動し且つ側方へ張り出すように回動し、該側溝の側壁81を押圧する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板部に透孔を形成して、グレーチングの隣り合う一対の主部材に取付け固定されるベース部材と、
前記平板部の下面側に配される板状片であって、通孔を設けた第一板部の先端側から正面視で内角が鈍角の角度で裏面側へ屈曲した第二板部が延在する押圧部材にして、前記第一板部に係る裏面に前記通孔の孔口と雌ネジ孔の孔口との中心を合わせたナットが固着一体化したナット付き押圧部材と、
前記平板部の上面側にボルト頭を配して、ボルト軸を前記透孔及び前記通孔に遊挿し前記ナットに螺合するボルトと、を具備し、
グレーチングで蓋をした側溝に対し、前記透孔及び前記通孔に遊挿した該ボルトと前記ナットとの締付けにより、前記平板部の下面に前記第一板部の表面側基端が当たり、この当たり部分を支点に前記第二板部が上動し且つ側方へ張り出すように回動し、該側溝の側壁を押圧することを特徴とするグレーチングの固定保持具。
【請求項2】
前記ナット付き押圧部材には、前記第一板部とつながる前記第二板部の平板状主部分から正面視で下方へ屈曲して延在した先端部分が設けられた請求項1記載のグレーチングの固定保持具。
【請求項3】
帯幅方向を起立させた隣り合う一対の前記主部材が対向する帯幅面で、該帯幅面の下縁よりも上方位置に前記ベース部材に係る前記平板部の下面が水平配設されて、該ベース部材が溶接により該主部材に取付け固定され、且つ前記ナット付き押圧部材の第一板部が、前記グレーチングの下側から前記平板部の下面へ接近又は当接するようにして、一対の前記主部材間に入り込んで、前記主部材の帯幅面が前記ボルトの締付けによる該ナット付き押圧部材の共回りを阻止するようにした請求項2に記載のグレーチングの固定保持具。
【請求項4】
前記ベース部材が第一ベース部材と第二ベース部材に分割構成され、且つ第一ベース部材及び第二ベース部材の前記平板部に前記透孔が形成されて、隣り合う一対の前記主部材を上下から該第一ベース部材と該第二ベース部材とで挟み、前記ボルトの締付けにより、該ベース部材に係る該第一ベース部材と該第二ベース部材が該主部材に着脱自在に取付け固定される請求項2記載のグレーチングの固定保持具。
【請求項5】
前記側溝の溝幅よりも前記第二ベース部材の長手方向長さを小さくしてその長手方向の両端寄りに前記透孔を形成すると共に、前記第一ベース部材、前記ナット付き押圧部材、及び前記ボルトを一対備えて、
側溝の溝幅方向に配した該第二ベース部材の前記透孔が設けられた一端寄りと他端寄りの夫々の部位で、隣り合う一対の前記主部材を上側の前記第一ベース部材と下側の該第二ベース部材とで上下から挟み、前記ボルトの締付けにより、該第二ベース部材に係る前記平板部の下面に前記第一板部の表面側基端が当たり、この当たり部分を支点に前記第二板部のそれぞれが上動し且つ側方へ張り出すように回動し、該側溝の両側壁を押圧する請求項4記載のグレーチングの固定保持具。
【請求項6】
帯幅方向を起立させた隣り合う一対の前記主部材の両下側端面に前記平板部が水平に取付け固定され、該平板部の一側縁から下方へ突き出す突片部がさらに設けられ、該突片部が前記ボルトの締付けによる該ナット付き押圧部材の共回りを阻止するようにした請求項2又は5に記載のグレーチングの固定保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は側溝の溝口に蓋をするグレーチングの固定保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図13に示す路面等において敷設される側溝8の上方溝口80は、主部材d,クロスバーe,側当て材fからなるグレーチングm等で塞いで、その上を歩行や車両走行ができるようになっている。同図は側溝8の側壁段差面812に載置する落し込みタイプのグレーチングmであるが、単なる載置型のグレーチングmでは、車両走行時のガタツキ騒音、さらにグレーチングmそのものが跳ね上がる不具合が発生していた。グレーチングmを側溝8にボルト固定する対策があるが、グレーチングmと側溝8との双方に固定するための細工を要し、煩雑であった。また、
図2に示すU字側溝の場合は側溝8への細工自体が困難であった。
こうしたことから、いくつかのグレーチング固定具が提案されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-31629号公報
【特許文献2】実用新案登録第3028074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、その請求項2に記載のごとく「前記昇降部材は前記取付部材に一端側で回動可能に水平方向に軸支されており、…」とし、段落0030でも「昇降部材12は、…反対側の一端で軸受孔12bが開けられた幅広の軸受部12cを有している。軸受孔11c及び軸受孔12bにはボルト14aが挿通され、ナット14bによって固定されており、これにより昇降部材12は取付け部材11に回動可能に水平方向に軸支されている。」とあり、構造が複雑化する。
特許文献2も請求項1に「…該ボルトの締め付けで上昇した該開脚部材によって外側に押し開かれた該脚片…」の構成が、段落0009の「…そのH形鋼に軸穴をあけ、脚片6a、6bに軸7を通してH形鋼とつなぐ。」のように、特許文献1と同様であって、図面でも明らかなように構造が複雑化する。
このように、特許文献2の脚片6a、6bや特許文献1の昇降部材12(本発明の押圧部材に相当)は、一端側で回動自在に軸支させる構成であり、その構成部品が複雑化し高コストになっていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、構成部品を減らしてコスト低減を図るグレーチングの固定保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の第一態様は、平板部に透孔を形成して、グレーチングの隣り合う一対の主部材に取付け固定されるベース部材と、前記平板部の下面側に配される板状片であって、通孔を設けた第一板部の先端側から正面視で内角が鈍角の角度で裏面側へ屈曲した第二板部が延在する押圧部材にして、前記第一板部に係る裏面に前記通孔の孔口と雌ネジ孔の孔口との中心を合わせたナットが固着一体化したナット付き押圧部材と、前記平板部の上面側にボルト頭を配して、ボルト軸を前記透孔及び前記通孔に遊挿し前記ナットに螺合するボルトと、を具備し、グレーチングで蓋をした側溝に対し、前記透孔及び前記通孔に遊挿した該ボルトと前記ナットとの締付けにより、前記平板部の下面に前記第一板部の表面側基端が当たり、この当たり部分を支点に前記第二板部が上動し且つ側方へ張り出すように回動し、該側溝の側壁を押圧することを特徴とするグレーチングの固定保持具にある。
本発明の第二態様は、第一態様で、ナット付き押圧部材には、前記第一板部とつながる前記第二板部の平板状主部分から正面視で下方へ屈曲して延在した先端部分が設けられたことを特徴とする。本発明の第三態様は、第二態様で、帯幅方向を起立させた隣り合う一対の前記主部材が対向する帯幅面で、該帯幅面の下縁よりも上方位置に前記ベース部材に係る前記平板部の下面が水平配設されて、該ベース部材が溶接により該主部材に取付け固定され、且つ前記ナット付き押圧部材の第一板部が、前記グレーチングの下側から前記平板部の下面へ接近又は当接するようにして、一対の前記主部材間に入り込んで、前記主部材の帯幅面が前記ボルトの締付けによる該ナット付き押圧部材の共回りを阻止するようにしたことを特徴とする。本発明の第四態様は、第二態様で、ベース部材が第一ベース部材と第二ベース部材に分割構成され、且つ第一ベース部材及び第二ベース部材の前記平板部に前記透孔が形成されて、隣り合う一対の前記主部材を上下から該第一ベース部材と該第二ベース部材とで挟み、前記ボルトの締付けにより、該ベース部材に係る該第一ベース部材と該第二ベース部材が該主部材に着脱自在に取付け固定されることを特徴とする。本発明の第五態様は、第四態様で、前記側溝の溝幅よりも前記第二ベース部材の長手方向長さを小さくしてその長手方向の両端寄りに前記透孔を形成すると共に、前記第一ベース部材、前記ナット付き押圧部材、及び前記ボルトを一対備えて、側溝の溝幅方向に配した該第二ベース部材の前記透孔が設けられた一端寄りと他端寄りの夫々の部位で、隣り合う一対の前記主部材を上側の前記第一ベース部材と下側の該第二ベース部材とで上下から挟み、前記ボルトの締付けにより、該第二ベース部材に係る前記平板部の下面に前記第一板部の表面側基端が当たり、この当たり部分を支点に前記第二板部のそれぞれが上動し且つ側方へ張り出すように回動し、該側溝の両側壁を押圧することを特徴とする。本発明の第六態様は、第二態様又は第五態様で、帯幅方向を起立させた隣り合う一対の前記主部材の両下側端面に前記平板部が水平に取付け固定され、該平板部の一側縁から下方へ突き出す突片部がさらに設けられ、該突片部が前記ボルトの締付けによる該ナット付き押圧部材の共回りを阻止するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグレーチングの固定保持具は、U字側溝への載置型グレーチングにも適用できるだけでなく、構成部品の部品点数が少なく、且つ各部品の構造も単純化でき、低コスト化が図れるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1で、グレーチングにベース部材を取付け固定した平面図である。
【
図2】側溝上に
図1のベース部材付きグレーチングを載置しようとする側面図である。
【
図3】
図1のベース部材の透孔及び押圧部材の通孔に遊挿したボルトがナットに螺合し始めた横断面図である。
【
図4】
図3の状態からボルトとナットとの締付けにより第二板部が側溝の側壁を押圧する横断面図である。
【
図9】実施形態2に係る固定保持具の分解斜視図である。
【
図10】実施形態1の
図4に相当する横断面図である。
【
図12】グレーチングの全体平面図を加えた
図11の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るグレーチングの固定保持具について詳述する。
図1~
図12はグレーチングの固定保持具(以下、単に「固定保持具」ともいう。)の一形態で、
図1は実施形態1で、グレーチングにベース部材を取付け固定した平面図、
図2は側溝に
図1のベース部材付きグレーチングを載置する側面図、
図3は
図1の透孔及び通孔に遊挿したボルトがナットに螺合し始めた断面図、
図4は第二板部が側溝側壁を押圧する断面図、
図5は
図4に代わる他態様の断面図、
図6はナット付き押圧部材の斜視図、
図7は
図4のVII-VII線矢視図、
図8は
図7に代わる他態様図、
図9は実施形態2に係る固定保持具の分解斜視図、
図10は実施形態1の
図4に相当する横断面図、
図11は
図10のXI-XI線矢視図、
図12は
図11の平面図を示す。尚、各図は判り易くするため、簡略化し且つ発明要部を強調図示する。本発明と直接関係しない部分を省略する。
【0010】
(1)実施形態1
グレーチングの固定保持具Gは、ベース部材2とナット付き押圧部材3とボルト6とを具備する(
図1~
図8)。
ベース部材2は、平板部21に透孔20を形成して、グレーチング1の隣り合う一対の主部材11に取付け固定される金属製板状体である(
図1,
図7)。鋼板等から矩形板片に切断した平板部21の略中央にボルト6の軸径よりもやや大きめの透孔20を穿設したベース部材2とする。帯幅方向を起立させた隣り合う一対の主部材11が対向する帯幅面111で、主部材下縁11bよりも上方位置にベース部材2に係る平板部21の下面21bが水平配設されて、ベース部材2が溶接により主部材11に取付け固定される。符号wdは溶接部分を示す。グレーチング1の主部材下縁11bよりも上方位置にベース部材2の平板部21を水平配設して、ナット付き押圧部材3の押圧部材4に係る第一板部41が一対の前記主部材11間へ下から入り込むことによって(
図7)、ボルト6の締付け時に第一板部41が主部材11の側面たる帯幅面111に当たって共回り阻止ができるようにしている。
ここで、本発明でいう「上方位置」の上方、「ベース部材2に係る平板部21の下面21b」の下面は、ベース部材2が主部材11に取付け固定された
図4でいえば、文字通り紙面の上方、紙面に在る平板部21の下面側の面を指す。
【0011】
本実施形態のグレーチング1は、互いに平行配設した複数の主部材11の両側に、側当て材12に係る側面視逆L字形部材12aの垂直部121を固着して、逆L字形部材12aの水平部122が外方へ張り出す金属製グレーチング1とする(
図1,
図2)。帯幅方向を起立させた帯板状主部材11を所定ピッチで複数配した蓋主部の両側に垂直部121を固着して、水平部122が外鍔状に張り出す鍔付きグレーチング1である。グレーチング11は矩形盤状をなし、主部材11と端板13とクロスバー14と側当て材12とを備える。多数の帯板又はIバーからなる主部材11とこれに直交するクロスバー14とで路面上の雨水を流下させるスリットSが備わる格子状に形成し、その両側をL字形部材12aの側当て材12で塞ぐ。端板13が並設された主部材11の両端側に配される。ここでは、主部材11に穿設したオーバル孔110に細長帯板のクロスバー14を横に倒して通した後、該クロスバー14を起立させ、クロスバー14の上縁に設けた凹形切欠を主部材11に嵌めて格子状にする。
【0012】
ナット付き押圧部材3は、押圧部材4とナット5が固着一体化した金属製部材である(
図3,
図6)。
押圧部材4は、前記平板部21の下面21b側に配される横長矩形状の板状片であって、通孔410を設けた第一板部41の先端側から
図3の正面視で内角θ(
図6)が鈍角の角度で裏面41b側へ屈曲した第二板部42が延在する細長矩形の帯状部材である。尚、本発明でいう押圧部材4の正面視形状は
図6の紙面左斜め下から押圧部材を見る形状で、
図3の押圧部材の外形と同じになる。角度θは105°~165°の範囲が好ましく、より好ましくは角度θ120°~150°の範囲となる。押圧部材4が、側溝側壁81に押圧する押圧力を存分に発揮して単純構造且つコンパクト化できるからである。平坦な第一板部41の長手方向のほぼ中央にボルト6の軸径よりも大きめの通孔410を設けている。押圧部材4には、第一板部41とつながる第二板部42の平板状主部分421から
図4の正面視のように裏面41b側へ屈曲して延在した平板状先端部分422が設けられる。ここで、「第一板部41の先端側から正面視で内角θが鈍角の角度で裏面41b側へ屈曲」の裏面41b側とは、ナット付き押圧部材3がボルト6でベース部材2に取付けられた
図4,
図5でいえば、同図における第一板部41の下面側を指し、第一板部41の表面41a側は第一板部41の上面側を指す。
【0013】
本実施形態は、
図3のごとく第一板部41の先端側から第二板部42へと屈曲する内角θの角度とほぼ同じ内角の角度(ここでは約140°)で、第二板部42の平板状主部分421から先端部分422が裏面41b側へ屈曲する。通孔410を除外すれば、長めの平板状主部分421に対し、その両端から第一板部41と先端部分422の板部が
図3のごとくほぼ左右線対称に延在した押圧部材4になっている(
図6)。
ナット5はボルト6に螺合する汎用機械部品である。このナット5が第一板部41に係る裏面41bに通孔410の孔口と雌ネジ孔の孔口との中心を合わせて、溶接によって押圧部材4の第一板部41に固着一体化している。
【0014】
ボルト6はナット5と螺合する雄螺子がボルト軸62に形成されている汎用機械部品である。ボルト6が平板部21の上面21a側にボルト頭61を配して、ボルト軸62を透孔20及び通孔410に遊挿してナット5に螺合する(
図3)。該ボルト6の締付けによって、グレーチング1が蓋をした側溝8に対し、押圧部材4が側溝側壁81を押圧してグレーチング1を側溝8に固定保持する(
図4)。ボルト6とナット5の締付けによって、押圧部材4が
図4のように時計回りに回動するが、側壁81があるために回動が制止され、結果として、該押圧部材4が側壁81を突っ張る形で押圧する。
【0015】
詳しくは、前記ベース部材2,ナット付き押圧部材3,ボルト6を備えて、グレーチング1で蓋をした側溝8に対し、該グレーチング1に平板部21が取付け固定されたその上方から、ボルト6を透孔20、さらに該平板部21の下面21b側に配した第一板部41の通孔410に遊挿し、その先の下方側に配されるナット5に螺合する。ボルト6とナット5との締付け過程で、ナット付き押圧部材3の第一板部41がグレーチング1の下側から平板部21の下面21bへ接近又は当接するようにして、一対の主部材11間に該第一板部41が入り込む(
図3)。ボルト締付け時に、第一板部41が主部材11の帯幅面111に規制されてナット付き押圧部材3が共回りしないようにしている(
図4)。そうして、ボルト6とナット5との締付けにより、平板部21の下面21bに第一板部41の表面側基端41a1が当たり、この当たり部分Fを支点に第二板部42が上動し且つ側方へ張り出すように
図4の黒矢印のごとく回動し、側溝8の側壁81を押圧するようにしたグレーチングの固定保持具Gになる。
尚、この第二板部42が側壁81を押圧する
図4において、側当て材12に押圧部材4が接触しないよう平板状主部分421の長さや前記角度θ等が決定される。ボルト6とナット5とのさらなる締付け強化(詳細後述)に対応できるよう、平板部21の下面と第一板部41の表面側先端との間に依然として間隙εを有するのが好ましい。図中、符号αはボルト6の傾きを示し、ボルト6が少しでも傾いている限り、間隙εを有することになる。よって、該間隙εが隠れて見えなくても、ボルト6を締め付ける作業者は間隙εの存在を容易に確認できる。
【0016】
ボルト6がナット5と螺合して押圧部材4の先端部分422が垂れ下がった
図3の状態から、ボルト6とナット5との締付けにより、該先端部分422が起き上がって
図4のごとく側溝側壁81を押圧する。該押圧の反力で
図3のグレーチング1と側壁81にあった隙間δをなくすようグレーチング1を動かし、
図4の動いた後のグレーチング1を固定保持する。
側溝側壁81に当たる押圧部材4(先端部分422)の突端での押圧力Pは、
図4の黒矢印のごとく当たり部分Fを支点に同図左斜め上方向に回動する。押圧部材4の先端部分422が押圧力Pの水平方向分力で一方の側壁81aを押圧すると共に、この反力が他方の側壁81bを押圧して、グレーチング1を固定保持する。さらに、固定保持具Gが水平方向に突っ張ってグレーチング1を固定保持するだけでなく、
図4で、該押圧力Pの黒矢印に係る上方向分力でグレーチング1を下方向に引き寄せる反力が働くので、グレーチング1の跳ね上がり防止に役立つ所望の固定保持具Gになっている。
さらにいえば、ボルト6とナット5との締付けを強力にすると、平板部21と第二板部42側の第一板部41との間隙εが狭まり、押圧部材4の弾性変形を強めることができる。この弾性変形に伴う弾性復元力によって、側溝8に蓋をしたグレーチング1がより強固に側溝8に固定維持される固定保持具Gになる。
【0017】
図5は、押圧部材4の形状を本実施形態の
図4のものに代えて、ボルト6とナット5との締付けにより先端部分422の表面42a側のほぼ全面で側溝側壁81を押圧するようにした他態様の固定保持具Gを示す。
また、
図8は、本実施形態が主部材下縁11bよりも上方位置に平板部下面21bが配設される
図7に代わって、隣り合う一対の主部材11に係る両下側端面112に平板部21が溶接により取付け固定される他態様の固定保持具Gを示す。主部材11の帯幅方向高さが17mmよりも小さくなると、ボルト頭61がグレーチング1の上面から突き出す虞があるが、主部材11の下側端面112に平板部21を取り付けることによってボルト6の頭出しを防ぐことができる。
図8中、符号24は水平配設された平板部21から屈曲して下方へ突き出す突片部で、ボルト6の締付けでナット付き押圧部材3の共回りを防止する。
尚、本実施形態はU字側溝への載置タイプのグレーチング1に適用したが、例えば本固定保持具Gを二セット用意し、
図13の落し込みタイプ等のグレーチング1にも勿論適用できる。図中、符号7はワッシャ、符号kは屈曲ライン、符号Rは側溝流路を示す。
【0018】
(2)実施形態2
本実施形態は既存のグレーチング1に後付けで取付け可能な金属製固定保持具Gである。固定保持具Gは、実施形態1と同様、ベース部材2とナット付き押圧部材3とボルト6とを具備する(
図9~
図12)。グレーチング1にはクロスバー14としてツイストバーを用いている。平行配設された主部材11上にツイストバーを電気圧接して格子状に形成する。
ベース部材2が第一ベース部材2Aと第二ベース部材2Bに分割構成され、且つ第一ベース部材2A及び第二ベース部材2Bの平板部21に透孔20が形成される。隣り合う一対の主部材11を上下から上側の第一ベース部材2Aと下側の第二ベース部材2Bとで挟み、ボルト6の締付けにより、第一ベース部材2Aと第二ベース部材2Bが主部材11に着脱自在に取付け固定されるベース部材2になる。側溝8の溝幅よりも第二ベース部材2Bの長手方向長さを
図10のように少し短くして、その長手方向の両端寄りに透孔20を形成する。第一ベース部材2A、ナット付き押圧部材3、及びボルト6が一対備わる固定保持具Gになっている(
図9)。尚、
図9が固定保持具Gの分解斜視図で、第一ベース部材2Aは判り易く描いたものであって、使用時には向きを変え、
図11のごとくフック27が第二ベース部材2Bの立上部28に対向するようにして、主部材11に掛止する形で使用される。
【0019】
ここでの第一ベース部材2Aは、その平板部21の両側から上方へコ字状に延びる立板部26の上端部分に設けたフック27を主部材11に吊設掛止させ、該平板部21を
図10の主部材下端11bよりも少し上方で水平配設されるようにした掛止部材である。平板部21のほぼ中央透孔20が形成される。
また、第二ベース部材2Bは、
図11のごとく二種類の板片に係る平板部板面を一体的に重ね合わせた板片加工部材である。二つの板片が重ね合わさった重合体の平板部21の両側から上方へ屈曲し延在させた立上部28で一対の主部材11を挟むようにする。さらに、平板部21の両側から下方へ屈曲し延在させた突片部24で、ボルト6とナット5の締付け時のナット付き押圧部材3の共回りを防ぐようにしている。
第二ベース部材2Bは図示のごとく側溝8の溝幅より若干短い横長部材となり、第一ベース部材2Aは第二ベース部材2Bの横長に比べると約1/4以下の長さの小部品になる(
図9~
図12)。第二ベース部材2Bはその透孔20を第一ベース部材2Aの側溝両端寄りに配される透孔20に合わせて、第一ベース部材2Aとで主部材11を挟着保持できれば足りるからである。
ナット付き押圧部材3とボルト6は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0020】
既存グレーチング1への本固定保持具Gの取付けは、まず、側溝8の溝幅方向に第二ベース部材2Bを配し、透孔20が設けられた一端寄りと他端寄りの夫々の部位で、それぞれ隣り合う一対の主部材11を第一ベース部材2Aとで上下から挟む(
図11)。このとき第一ベース部材2Aの透孔20と第二ベース部材2Bの透孔20の位置を合わせる。そして、ボルト6を第一ベース部材2Aの上方からその透孔20、第二ベース部材2Bの透孔20、さらに通孔410に遊挿し、ボルト軸62をナット付き押圧部材3のナット5に螺合させる。
【0021】
次に、一対のナット付き押圧部材3の先端部分422を両側溝側壁81のそれぞれに近い配置にセットしてから、ナット5に螺合したボルト6を締め付けていく。
その後のボルト6の締付けにより、第二ベース部材2Bに係る平板部21の下面21bに第一板部41の表面側基端41a1が当たる。さらに締付けていくと、この表面側基端41a1と平板部21との当たり部分Fを支点に第二板部42のそれぞれが上動し且つ側方へ張り出すように回動し、
図10のごとく側溝8の両側壁81を押圧する。
【0022】
図10で詳述すると、左方の押圧部材4の先端部分422で一方の側壁81aを押圧する反力が、その左側に在るボルト6から透孔20周りの第二ベース部材2Bとのぶつかり部分Eへ伝わり、該第二ベース部材2Bを右方へ押す。また、右方の押圧部材4の先端部分422で他方の側壁81bを押圧する反力が、右側に在るボルト6から透孔20周りの第二ベース部材2Bとのぶつかり部分Eへ伝わり、該第二ベース部材2Bを左方へ押す。よって、ベース部材2と一対のナット付き押圧部材3が一体化状態になって、左方の押圧部材4の先端部分422及び右方の押圧部材4の先端部分422での押圧がグレーチング1を側溝8に固定保持する。左方の押圧部材4に係る先端部分422の押圧は、実施形態1おける
図4の黒矢印についての説明と同様であり、押圧力Pの水平方向分力が側溝8にグレーチング1を固定保持し、さらに押圧力Pの上方向分力がグレーチング1の跳ね上がり防止に役立つ。右方の押圧部材4の先端部分422の押圧も、他方の側壁81bに対し、左方の押圧部材4と向きが反対に変わるだけで、グレーチング1を側溝8に固定保持に貢献する。
加えて、ボルト6の締付けが、第一ベース部材2Aと第二ベース部材2Bとで一対の主部材11に上下から挟んで取付け固定する役目も兼ねる。実施形態1と同様、ベース部材2とナット付き押圧部材3とボルト6のみで、既存のグレーチング1へ後付け固定することのできる所望のグレーチングの固定保持具Gになっている。
【0023】
(3)効果
このように構成したグレーチングの固定保持具Gは、部品点数が少ないので、低コスト化が図れる。
特許文献2の脚片6a、6bや特許文献1の昇降部材12(本発明の押圧部材4に相当)は、脚片6a、6bや昇降部材12を昇降させるのにボルト,ナットを要するだけでなく、これとは別に、一端側で回動自在に軸支させる軸部材が必要になっている。特許文献1でいえば、軸受孔11c及び軸受孔12bに挿通するボルト14aが締付ボルト13aに加えて必須であり、部品点数が多くなるにとどまらず、その加工も複雑化している。
【0024】
一方、本発明の固定保持具Gは、ボルト6とナット5との締付けにより、平板部21の下面21bに第一板部41の表面側基端41a1が当たり、この当たり部分Fを支点に第二板部42が上動し且つ側方へ張り出すように回動し、側溝側壁81を押圧する構成であり、特許文献2の脚片6a、6bや特許文献1の昇降部材12の一端側で回動自在に軸支させる軸部材を省略できる。
本固定保持具Gは、部品点数がベース部材2とナット付き押圧部材3とボルト6だけの三点と少なく、しかも構造が特許文献1,2のものに比べてシンプルであり、低コスト化できる。各構成部品は小型化できるので、持ち運びにも嵩張らない。在庫管理も容易である。勿論、側溝8への細工も不要である。従来にない画期的な発明になっている。
【0025】
押圧部材4に相当する特許文献1の昇降部材はボルト14aが挿通する軸受孔12bを設けねばならず形状が複雑化するが、この昇降部材に該当する本発明の押圧部材4は平板等の板状片を曲げ加工して通孔410を設けるだけで済む。
また、
図7のごとく、主部材下縁11bよりも上方位置にベース部材2に係る平板部下面21bを水平配設すると、ボルト6の締付け時にグレーチング1の下側から平板部21の下面21bへ接近又は当接するようにして、第一板部41が一対の主部材11間に入り込めるので、ナット付き押圧部材3の共回りを阻止できる。特許文献1に示す共回り阻止用の回転止15a,15bも不要になる。
【0026】
加えて、側溝8に蓋をしたグレーチング1への本固定保持具Gの取付け作業も簡単になる。グレーチング1に溶接によって予め取付け固定したベース部材2の透孔20へ下側からナット付き押圧部材3の通孔410を合わせて、ベース部材2の上側からボルト6を透孔20,通孔410に挿通してナット5に螺着し、後は締め付けていくだけで済む。側溝8にグレーチング1を楽に固定保持できる。
ボルト6とナット5との締付けにより、当たり部分Fを支点に第二板部42が上動し且つ側方へ張り出すように回動し、側溝側壁81を押圧して、側溝8にグレーチング1を楽に固定保持できるが、これにとどまらない。ボルト6をきつく締付けると、平板部21と第二板部42側の第一板部41との間隙εが狭まり、押圧部材4の弾性変形を強めることになり、この弾性変形に伴う弾性復元力によって、側溝8に蓋をしたグレーチング1がより強固に側溝8に固定維持される優れものの発明になっている。
【0027】
また、第一板部41とつながる第二板部42の平板状主部分421から正面視で下方へ屈曲して延在した先端部分422が設けられると、
図5のように先端部分422の表面42a側の全面で押圧できるので、側溝側壁81との接触面積が増し、グレーチング1をより一層強固に側溝8に固定維持できる。
【0028】
さらに、ベース部材2が第一ベース部材2Aと第二ベース部材2Bに分割構成され、且つ第一ベース部材2A及び第二ベース部材2Bの平板部21に透孔20が形成されて、隣り合う一対の主部材11を上下から第一ベース部材2Aと第二ベース部材2Bとで挟み、ボルト6の締付けにより、第一ベース部材2Aと第二ベース部材2Bが主部材11に着脱自在に取付け固定されると、既存のグレーチング1に後付けできる。しかも、主部材11への第一ベース部材2Aと第二ベース部材2Bの取付け固定は、側溝8にグレーチング1を固定維持するために用いたボルト6が担うので、主部材11へのベース部材2の取付け固定部材はいらない。
ベース部材2をグレーチング1に溶接によって予め取付け固定するケースに限らず、既存のグレーチング1に本固定保持具Gを取付けて、側溝8に蓋をしたグレーチング1の固定維持を図ることができ、適用範囲を広げることができる。
【0029】
さらにいえば、
図10のように側溝8の溝幅方向に配した第二ベース部材2Bの透孔20が設けられた一端寄りと他端寄りの夫々の部位で、主部材11を第一ベース部材2Aとで上下から挟み、ボルト6の締付けにより当たり部分Fを支点に両第二板部42のそれぞれが回動し側溝8の両側壁81を押圧することができるので、同図に示したU字側溝8への載置タイプのグレーチング1に限らず、落し込みタイプグレーチング等に対しても適用できる。
このように本発明の固定保持具Gは、上述した数々の優れた効果を発揮し、極めて有益である。
【0030】
尚、本発明は前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。グレーチング1,ベース部材2,ナット付き押圧部材3,ボルト6等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0031】
1 グレーチング
11 主部材
111 帯幅面(側面)
112 下側端面
2 ベース部材
2A 第一ベース部材
2B 第二ベース部材
20 透孔
21 平板部
3 ナット付き押圧部材3
4 押圧部材
41 第一板部
41a 表面側基端
410 通孔
42 第二板部
5 ナット
6 ボルト
G グレーチングの固定保持具
F 当たり部分(表面側基端と平板部下面との当たり部分)