(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160881
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】皮膚洗浄装置、および皮膚洗浄方法
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20241108BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20241108BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241108BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241108BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A47K7/00 Z
A61K8/19
A61K8/9789
A61Q19/10
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076373
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】517237492
【氏名又は名称】株式会社MEGMALE
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【弁理士】
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】岩井 善治
【テーマコード(参考)】
2D134
4C083
【Fターム(参考)】
2D134AC00
4C083AA111
4C083AB311
4C083BB49
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD23
4C083EE07
4C083EE13
4C083EE23
(57)【要約】
【課題】 皮膚に対する負担を上げることなく、皮膚を十分に洗浄する。
【解決手段】 継続的に炭酸ガスが供給される洗浄液を生成し、当該洗浄液を噴射し、かつ吸引をすることによって皮膚を洗浄する皮膚洗浄装置、及び当該装置を使用した皮膚洗浄方法を開発した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚表面に当接させる先端部の先端面に、洗浄液を噴射する噴射口、および前記皮膚表面に噴射された洗浄液が皮膚を洗浄して生じた汚水の吸引を行うための吸引口が形成され、前記先端面の外周縁に沿って先端方向に突出した周壁を有するハンドピースと、
底面に導出口を有する洗浄液が貯留された容体であり、前記容体の洗浄液面より上部が密閉された洗浄液容器と、
前記洗浄液容器の導出口と、前記噴射口とを連結する噴射チューブと、
前記吸引口に連結された吸引チューブと、
上面に前記吸引チューブに連結された導入口及びポンプ連結口を有する汚水容器と、
前記ポンプ連結口に連結された吸引ポンプと、を備え、
前記洗浄液容器中に貯留された前記洗浄液中に含まれる洗浄剤から継続的に供給されてなる炭酸ガスと、
を有することを特徴とする皮膚洗浄装置。
【請求項2】
前記先端面に、前記噴射口及び前記吸引口の周囲に配置されて前記先端面と皮膚表面との間で洗浄液を撹拌させる突起が形成されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の皮膚洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄剤が、(i)炭酸塩及び炭酸水素塩、および、(ii)ツボクサエキスを含有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の皮膚洗浄装置。
【請求項4】
(工程1)洗浄液容器に、洗浄剤と水を入れ、前記洗浄剤から継続的に炭酸ガスが供給される状態とし、
(工程2)前記洗浄液容器を密閉し、
(工程3)皮膚表面に当接させる先端部の先端面に、洗浄液を噴射する噴射口、および前記皮膚表面に噴射された洗浄液の吸引を行うための吸引口が形成され、前記先端面の外周縁に沿って先端方向に突出した周壁を有するハンドピースの周壁を洗浄したい皮膚表面に当接させ、
(工程4)前記ハンドピースの吸引口に連結された吸引チューブから吸引ポンプを用いて皮膚表面とハンドピースの先端面の間の空気を吸引し、
(工程6)ハンドピースの噴射口から洗浄液を皮膚に噴射させ、
(工程7)皮膚を洗浄して生じた汚水が吸引チューブを通って汚水容器に流れる
工程から構成される皮膚洗浄方法。
【請求項5】
前記先端面に、前記噴射口及び前記吸引口の周囲に配置されて前記先端面と皮膚表面との間で洗浄液を撹拌させる突起が形成されてなる
ことを特徴とする請求項4に記載の皮膚洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄剤が、(i)炭酸塩及び炭酸水素塩、および、(ii)ツボクサエキスを含有する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の皮膚洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚、例えば頭皮や顔面を洗浄する装置、当該装置を使用する洗浄方法及び当該装置で使用する洗浄液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の洗浄には、界面活性剤を含む洗浄剤が使用される。洗浄剤の洗浄力を上げる最も単純な方法は、洗浄力の高い界面活性剤を含有させるか、界面活性剤の濃度を上げることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、洗浄力の高い界面活性剤や濃度の高い界面活性剤を使用した洗浄剤は、皮膚に対する刺激が強く、結果として、肌トラブル、かゆみ、炎症の発症や悪化、頭皮の場合にはフケが出るといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、上記課題を解決する手段として本発明に係る皮膚洗浄装置は、皮膚表面に当接させる先端部の先端面に、洗浄液を噴射する噴射口、および、前記皮膚表面に噴射された洗浄液が皮膚を洗浄して生じた汚水の吸引を行うための吸引口が形成され、前記先端面の外周縁に沿って先端方向に突出した周壁を有するハンドピースと、底面に導出口を有する洗浄液が貯留された容体であり、前記容体の洗浄液面より上部が密閉された洗浄液容器と、前記洗浄液容器の導出口と、前記噴射口とを連結する噴射チューブと、前記吸引口に連結された吸引チューブと、上面に前記吸引チューブに連結された導入口及びポンプ連結口を有する汚水容器と、前記ポンプ連結口に連結された吸引ポンプと、を備え、前記洗浄液容器中に貯留された前記洗浄液中に含まれる洗浄剤から継続的に供給されてなる炭酸ガスと、を有することを特徴とする。
【0006】
また、前記先端面に、前記噴射口及び前記吸引口の周囲に配置されて前記先端面と皮膚表面との間で洗浄液を撹拌させる突起が形成されてなる皮膚洗浄装置であっても好ましい。
【0007】
また、前記皮膚洗浄装置を構成する洗浄剤は、i)炭酸塩及び炭酸水素塩、および、(ii)ツボクサエキスを含有するものであることが好ましい。
【0008】
また、前記突起は、噴射口及び吸引口の周囲にそれぞれ延弧状に形成されることが好ましい。延弧状の突起であることによって、噴射口から噴射された洗浄液を皮膚表面において渦巻状に撹拌することができ、皮膚汚れ(油分)の洗浄効果を高めることができる。さらに、前記延弧状の突起を噴射口の一方側面と吸引口の他方側面にそれぞれ配置することによって、円弧面に沿って洗浄液を噴射口から吸引口に向けて渦巻状に撹拌しながら効率的に流動させることができる。
【0009】
さらに、上記課題を解決する手段として本発明に係る皮膚洗浄方法は、
(工程1)洗浄液容器に、洗浄剤と水を入れ、前記洗浄剤から継続的に炭酸ガスが供給される状態とし、
(工程2)前記洗浄液容器を密閉し、
(工程3)皮膚表面に当接させる先端部の先端面に、洗浄液を噴射する噴射口、および、前記皮膚表面に噴射された洗浄液の吸引を行うための吸引口が形成され、前記先端面の外周縁に沿って先端方向に突出した周壁を有するハンドピースの周壁を洗浄したい皮膚表面に当接させ、
(工程4)前記ハンドピースの吸引口に連結された吸引チューブから吸引ポンプを用いて皮膚表面とハンドピースの先端面の間の空気を吸引し、
(工程5)ハンドピースの噴射口から洗浄液を皮膚に噴射させ、
(工程6)皮膚を洗浄して生じた汚水が吸引チューブを通って汚水容器に流れる
工程から構成される。
【0010】
また、前記先端面に、前記噴射口及び前記吸引口の周囲に配置されて前記先端面と皮膚表面との間で洗浄液を撹拌させる突起が形成されてなる皮膚洗浄方法であっても好ましい。
【0011】
さらにまた、前記皮膚洗浄方法に用いられる洗浄剤は、(i)炭酸塩及び炭酸水素塩、および、(ii)ツボクサエキスを含有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚の汚れ、毛穴にたまった古い角質や余分な脂質を除去することができる。特に、皮膚表面に点在する毛穴の余分な脂質を洗浄液によって浮かせて、浮いた状態の脂質を含んだ汚水を同じ先端面に形成された吸引口から吸引することで、清浄な皮膚表面を維持しつつ洗浄行為を行うことができるという顕著な効果を発揮することができる。
【0013】
さらに、密閉された洗浄液容器中において洗浄液に対して炭酸ガス(以下、二酸化炭素という場合がある。)が継続的に供給されているため、本発明に係る皮膚洗浄方法を実施している間において、洗浄液中の二酸化炭素の濃度を一定濃度以上に維持した状態で皮膚の洗浄を行うことができる。このため、皮膚表面から余分な脂質を浮かせるという炭酸ガスが溶解した水溶液の効果特性を、施術の間において減退させることなく、本発明に係る洗浄方法を実施することができる。
また、本発明の洗浄液は、皮膚の血流を促進し、代謝を促進し、皮膚のターンオーバーのサイクルを正常化し、肌荒れや発疹(いわゆるニキビ)などを生じにくくさせると期待される。
【0014】
本発明の装置は、先端部の先端面に、洗浄液を噴射する噴射口と、吸引を行うための吸引口と、先端方向に突出した突起を有するハンドピースを有する。当該ハンドピースの噴射口で噴射された洗浄液は、ハンドピースの突起にぶつかり撹拌された水流となる。この渦巻き状の水流での皮膚洗浄により、皮膚の毛穴の汚れを十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の装置のハンドピース3の拡大図である。
【
図3】本発明の皮膚洗浄方法の工程1の模式図である。
【
図4】本発明の皮膚洗浄方法の工程1の模式図である。
【
図5】本発明の装置による本発明の皮膚洗浄方法の使用態様である。
【
図6】本発明の装置による本発明の皮膚洗浄方法の使用態様におけるハンドピース3の拡大図である。
【
図7】本発明の装置による本発明の皮膚洗浄方法を実施する前(a)及び実施した後(b)の被験者の頭部の状態を比較する写真である。
【
図8】本発明の装置による本発明の皮膚洗浄方法を実施する前(a)及び実施した後(b)の被験者の皮膚表面の状態を比較する拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
本発明に係る皮膚洗浄装置Aは、ハンドピース3、洗浄液容器1、噴射チューブ4、汚水容器6、吸引チューブ5、及び、吸引ポンプ7により構成される。皮膚洗浄装置Aの概要図を
図1に示す。
ハンドピース3は、
図2の先端部31の拡大図に示す通り、先端部31の先端面36に、洗浄液を噴射する噴射口32と、吸引を行うための吸引口33と、先端方向に突出した突起34と、先端面36の外周縁に沿って先端方向に突出した周壁35とを有する。洗浄したい部分にハンドピース先端部31をあてると、
図6に示す通り、周壁35と先端面36の間に空間Sができる。吸引ポンプ7を稼働させると、この空間Sの空気が吸引され、噴射口32から洗浄液2aが噴射される。噴射された洗浄液2aは、先端面36にある突起34とぶつかり、撹拌された水流を生じる。
ハンドピース3は、噴射チューブ4を介して洗浄液容器1と連結しており、また、吸引チューブ5を介して汚水容器6と連結している。ここで、
図5に示すように、洗浄液容器1と汚水容器6とを上下に連結して一体とするケース8を設け、ケース8内に噴射チューブ4及び吸引チューブ5を通して、ケース8の周壁からハンドピース3を延出させる構成としてもよい。
【0018】
洗浄液容器1は、
図1に示す通り、底面に導出口11とエア取込口12を有する。また、洗浄液容器1は、洗浄液容器1を密閉可能な蓋13を有する。洗浄液容器の蓋13を取り外すことで、洗浄液容器1に洗浄剤9と水10を入れることができる。次に、洗浄剤9と水10を混合して発生した炭酸ガスが漏れないよう、蓋13を閉めて洗浄液容器1を密閉する。
洗浄液容器1は、導出口11から延出する噴射チューブ4で、ハンドピースの噴射口32と連結している。
【0019】
汚水容器6は、
図1に示す通り、上面に導入口61とポンプ連結口62を有する。
また汚水容器6は、ハンドピースの吸引口33から導入口61に繋がる吸引チューブ5でハンドピース3と連結している。
吸引ポンプ7は、
図1に示す通り、汚水容器連結口71から連結管73を介して、汚水容器6のポンプ連結口62に繋がっている。本発明の装置で使用される吸引ポンプ7は、例えばダイヤフラム式ポンプであるが、これに限定されない。なお、吸引ポンプ7からの排気は排気管74から排気される。
【0020】
本発明に係る皮膚洗浄装置Aは、上述の通り、ハンドピース3の先端部で洗浄液が周壁35と先端面36との間の空間Sで撹拌された水流を発生させることができる。この撹拌された水流により、毛穴にたまった古い角質や余分な脂質などの落ちにくい皮膚の汚れまで除去できる。また、吸引によって汚れを浮かすため、低温~常温(例えば3~20℃)の水では洗い落ちにくい油分などの汚れも十分に洗い流すことができる。従って、本発明に係る皮膚洗浄方法は、例えば夏の暑い時期などの熱いお湯での洗浄が望まれない状況でも、冷水や常温の水で十分に洗浄できる。
【0021】
また、皮膚洗浄装置Aは、上述の通り、ハンドピース3の先端部で洗浄液が周壁35と先端面36との間の空間Sの使用により、渦巻き状の水流によって皮膚の汚れを落とすことができるため、皮膚の洗浄時に強い薬剤を使用する必要がなく、肌トラブルリスクが低い。皮膚の痛み、赤み、腫れ、炎症などが生じにくく、皮膚の負担回復期(ダウンタイム)もない。これは、皮膚洗浄装置Aの使用における利点の1つである。
また、皮膚洗浄装置Aの使用により、頭部の汗臭の原因になるとされる頭皮の古い角質が除去されて、頭部の汗臭を軽減・予防する効果があると期待される。
【0022】
本発明の皮膚洗浄方法は、
(工程1)洗浄液容器1に、洗浄剤9と水10を入れて、前記洗浄剤9から継続的に炭酸ガスが供給される状態とし、
(工程2)前記洗浄液容器1を密閉し、
(工程3)皮膚表面に当接させる先端部31の先端面36に、洗浄液2aを噴射する噴射口32、前記皮膚表面に噴射された洗浄液2aの吸引を行うための吸引口33、並びに、前記噴射口32及び前記吸引口33の周囲に配置されて前記先端面36と皮膚表面との間の空間Sで洗浄液2aを撹拌させる突起34が形成され、前記先端面36の外周縁に沿って先端方向に突出した周壁35を有するハンドピース3の周壁35を洗浄したい皮膚表面に当接させ、
(工程4)前記ハンドピース3の吸引口33に連結された吸引チューブ5から吸引ポンプ7を用いて皮膚表面とハンドピース3の先端面36の間の空気を吸引し、
(工程5)ハンドピース3の噴射口32から洗浄液2aを皮膚に噴射させ、
(工程6)皮膚を洗浄して生じた汚水2bが吸引チューブ5を通って汚水容器6に流れる
工程から構成される。
【0023】
本発明の一つの態様において、本発明の皮膚洗浄方法は、皮膚洗浄装置Aを使用して行う。本発明の更なる態様において、本発明の皮膚洗浄方法は、洗浄剤9と本発明の装置を使用して行う。具体的には、
(工程1-1)
図3に示す通り、皮膚洗浄装置Aの洗浄液容器1の蓋13を外し、洗浄剤9を入れ、
(工程1-2)
図4に示す通り、洗浄液容器1中で洗浄剤9に水10を加え、
図5に示すように、継続的に炭酸ガスが供給される洗浄液2aを生成し、
(工程2-1)蓋13で洗浄液容器1を洗浄液2aの液面Fより上部において密閉し、
(工程3-1)
図6に示した通り、洗浄したい部分(
図6では顔面)の皮膚に装置のハンドピース先端部31をあてて、
(工程4-1)吸引ポンプ7によって汚水容器中6の空気を吸引して、汚水容器6の内部、および、汚水容器6と連結したチューブ73の内部を減圧することで、
(工程4-2)ハンドピースの吸引口33から、皮膚とハンドピース先端部31の間の空間S内の空気を吸引して、皮膚とハンドピース先端部31の間の空間Sを減圧し、次いで
(工程5-1)噴射チューブ4内も減圧となり、洗浄液容器1から洗浄液2aが吸い出され、
図6に示す通りハンドピースの噴射口32から洗浄液2aが皮膚に噴射され、
(工程6-1)
図6に示す通り、皮膚を洗浄して生じた汚水2bは、吸引口33から吸引チューブ5を通って汚水容器6の上部に設けられた導入口61から汚水容器6に放出されるように流れる工程により構成される。汚水容器6に放出された汚水2bは、
図1に示すように汚水容器6の底部に貯留される。
【0024】
なお、ポンプ連結口62は汚水容器6の上部に設けられて汚水容器6内の空気層と接するように開口してなるので、ポンプ7によって減圧のために排気された空気に汚水2bが混ざって排出されることはない。
【0025】
なお、吸引ポンプ7の作用によって洗浄液2aが洗浄液容器1から吸い出されると、エア取込口12から外部エアが取り込まれるので、洗浄液2aを一定流量で洗浄液容器1から吸い出すことが可能である。また、洗浄剤9に水10を投入して洗浄液2aを生成すると、炭酸ガスの発生により洗浄液容器1内の圧力が上昇するが、洗浄液2aの生成から数分程度の時間であればエア取込口12及びハンドピース3の噴射口32を洗浄液面Fよりも上方に位置させておくことで、洗浄液2aが漏出する前に本発明に係る洗浄方法の実施を開始することができる。
【0026】
ここで、前記汚水2bは洗浄液2aが皮膚とハンドピース先端部31の間の空間S内において、皮膚表面で撹拌状態でありながら吸引チューブ5を通って汚水容器6に流れる工程であることが好ましい。
(1)これにより、連続的に洗浄液2aを皮膚表面に噴射させて皮膚表面への汚水2bの滞留を防止できるため、炭酸ガスが溶け込んだ状態の新しい洗浄液2aの効果を持続的に皮膚に対して与えることができる。
(2)さらに、密閉された洗浄液容器1中において洗浄液2aに対して炭酸ガスが継続的に供給されているため、本発明に係る皮膚洗浄方法を実施している間において、洗浄液中の二酸化炭素の濃度を一定濃度以上に維持した状態で皮膚の洗浄を行うことができる。
上記(1)及び(2)の効果を併せ持つことによって、従来技術では付与することができなかった洗浄時における皮膚表面の環境を実現することができる。
なお、
図6では顔面を例として図示しているが、洗浄部分は、顔面に限定されず、例えば頭皮であってもその他の部分であってもよい。
【0027】
洗浄剤9は、固体の形態であることが好ましく、使用前に水10等の媒体と混合して洗浄液2aとするものである。洗浄剤9は、例えば粉末、顆粒、錠剤(タブレット)、またはペーストの状態であってよい。また、洗浄剤9は、水等の媒体に対して溶解または懸濁可能であり、好ましくは溶解可能であり、さらに好ましくは、洗浄剤9は水に対して易溶性である。
【0028】
洗浄剤9は、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含む。炭酸塩及び/又は炭酸水素の塩は、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩であり、好ましくはナトリウム塩またはカリウム塩であり、より好ましくは炭酸水素ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムである。炭酸水素塩及び炭酸塩は、水と混合することによって、炭酸ガスを発生させ、炭酸ガスが水に溶解した炭酸水を生成する。洗浄液2aは、皮膚の血流を促進し、その結果、皮膚の状態の改善、代謝の促進、皮膚のターンオーバーのサイクルの正常化、肌荒れや発疹などの予防に効果があると期待される。
【0029】
また、洗浄剤9は、水、例えば200mlの水と混合した場合に、例えば1000ppm以上、好ましくは1000ppm以上~2500ppm以下の炭酸ガスが溶解した洗浄液を形成可能な十分な量の炭酸水素塩及び炭酸塩を含有する。
【0030】
本発明の洗浄剤9は、皮膚に対する刺激が低い界面活性剤、例えばアミノ酸系アニオン界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、またはその両方を含むことが好ましい。
アミノ酸系アニオン界面活性剤は、例えばグルタミン酸系、アラニン系、アスパラギン酸系、グリシン系またはサルコシン系の界面活性剤であり、好ましくはグルタミン酸系、アラニン系、アスパラギン酸系であり、より好ましくはグルタミン酸系またはアラニン系である。
【0031】
グルタミン酸系界面活性剤は、例えばココイルグルタミン酸塩(例えばココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミンまたはココイルグルタミン酸カリウム)、ラウロイルグルタミン酸塩(例えばラウロイルグルタミン酸ナトリウムまたはラウロイルグルタミン酸カリウム)、ミリストイルグルタミン酸塩(例えばミリストイルグルタミン酸ナトリウム)、ラウロイルグルタミン酸塩(例えばラウロイルグルタミン酸ナトリウムまたはラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン)、あるいは、ステアロイルグルタミン酸塩(例えばステアロイルグルタミン酸ナトリウム)であり、好ましくはラウロイルグルタミン酸塩であり、より好ましくはラウロイルグルタミン酸ナトリウムである。
【0032】
アラニン系界面活性剤は、例えばココイルメチルアラニン塩(例えばココイルメチルアラニンナトリウム)、ラウロイルメチルアラニン塩(例えばラウロイルメチルアラニンナトリウムまたはラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン)、ミリストイルメチルアラニン塩(例えばミリストイルメチルアラニンナトリウム)、あるいは、ココイルアラニン塩(例えばココイルアラニントリエタノールアミン)であり、好ましくはラウロイルメチルアラニン塩であり、より好ましくはラウロイルメチルアラニンナトリウムである。
【0033】
アスパラギン酸系界面活性剤は、例えばラウロイルアスパラギン酸塩(ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム)である。
グリシン系界面活性剤は、例えばココイルグリシン塩(例えばココイルグリシンカリウム)である。
サルコシン系界面活性剤は、例えばラウロイルサルコシン塩(例えばラウロイルサルコシンナトリウムまたはラウロイルサルコシントリエタノールアミン)である。
【0034】
ベタイン系界面活性剤は、例えばラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウリルベタインまたはパーム核脂肪酸アミドプロピルベタインである。
【0035】
洗浄剤9はまた、ツボクサエキスを含む。ツボクサエキスは、ツボクサの葉のエキスであっても茎のエキスであっても葉と茎の両方のエキスであってもよい。ツボクサエキスはまた、CICAまたはシカの名前で販売されているものであってもよい。
ツボクサエキスは、酸化防止効果、皮膚保護効果、皮膚コンディショニング効果、コラーゲン生成促進効果および抗炎症効果を有するとされている次の化学式(1)で示されるマデカッソシドを含有することから、ツボクサエキスを含有する本発明の洗浄剤をもちいることで、炭酸ガスを含む洗浄液の効果に加えて、荒れた皮膚の修復と回復効果、皮膚保護作用、皮膚の弾力保持作用が実現できる。
【0036】
【0037】
洗浄剤9はまた、例えば保湿剤(例えばポリエチレングリコール類(PEG)(例えばPEG-150)またはブチレングリコール(BG))、安定剤(例えばシリカ)、増量剤(例えばタルク)、髪質改善剤(例えばコハク酸)を含んでよく、これらの中の1つまたは複数または全てを含んでよい。
【0038】
洗浄液2aは、使用直前に洗浄剤9に水10を加えて生成される。洗浄剤9に含まれる炭酸水素塩/炭酸塩は水と反応して炭酸ガスが生じる。従って、洗浄液2aは、密閉された洗浄液容器1中で、約10~20分間の洗浄方法の施術時間中、継続的に必要量の炭酸ガスを供給することができる。
【0039】
継続的に炭酸ガスが供給されることにより、必要量の炭酸ガス量が維持されるため、本発明の洗浄液は、約10~20分間の洗浄時間中、炭酸ガスの効果が落ちることなく洗浄を終えることができる。これは、洗浄液2aを使用した本発明の皮膚洗浄方法の利点の1つである。
【0040】
また、洗浄液2aを使用した本発明の洗浄方法では、強い薬剤を使用しておらず、薬剤の浸透等のための待ち時間がないため、時間効率がよく、短時間で洗浄が完了する。従って、洗浄に係る時間的負担が少ない。
また、皮膚洗浄装置Aを用いた本発明の皮膚洗浄方法では、毛穴にたまった古い角質や余分な脂質などが除去されて、抗炎症作用のあるツボクサエキスや保湿剤などの有効成分が皮膚に浸透しやすくなると期待される。
【0041】
以下、本開示に係る実施例を説明するが、本開示の技術的範囲はこの説明に限定されるものではない。
【実施例0042】
洗浄剤の構成例
本実施例に用いる洗浄剤9は、固形状タブレットの形態に成形されたものを用いた。洗浄剤9には、二酸化炭素発生源としての炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び、皮膚洗浄効果に寄与しない賦形剤が組成成分として含まれる。
【0043】
炭酸ガス発生試験
上記洗浄剤からなるタブレット1個を、下記に示した温度の200mlの水と混合して2分間炭酸ガスを発生させて洗浄液2aを生成した。各水温条件下における洗浄液2aの炭酸ガスの圧力(PSI)、発生量(v/v)、洗浄液中の二酸化炭素濃度(ppm)として以下のようなものを生成することができた。
【0044】
【0045】
なお、本実施例に用いた洗浄剤9は、本発明に係る洗浄方法を10分間施術する時間を確保するのに十分な、20分間において継続的に炭酸ガスを供給することができるものであった。なお、炭酸ガスの発生量は、冷水(水温3.9℃)の方が常温の水(水温17.8℃)よりも多かったことから、炭酸ガスの発生量は温度に依存して変化することが分かった。なお、水温が最も高い常温の水においても、炭酸ガスの血行促進作用を示すのに望ましいとされる1000ppmを超える洗浄液を生成することができた。
【0046】
洗浄試験1
皮膚洗浄装置Aのうち洗浄液を200mlの水(意図的な二酸化炭素の混合作業を行なっていない水)に置き換えて洗浄した場合(比較例1)、皮膚洗浄装置Aのうち洗浄液を200mlの炭酸ガスを含む水(商品名:ウィルキンソン(登録商標) 二酸化炭素濃度約3000ppm)に置き換えて洗浄した場合(比較例2)、本発明の洗浄液(タブレット1個を200mlの水と混合したもの)で顔面の皮膚を洗浄した場合(実施例1)の肌の水分量、油分量、肌弾力の変化を表2に示す。ここで、実施例1は、上記工程1-1~6-1に従って本発明に係る洗浄方法を実施した。一方、比較例1及び2においては、上記工程1-1に相当する工程は省略され、工程1-2においては洗浄液容器1中にそれぞれの比較例に対応する水若しくは炭酸ガスを含む水を200ml投入するのみとし、工程2-1~6-1に従って洗浄方法をおこなった。なお、比較例2では、炭酸ガスを含む水を洗浄液容器1中に投入(上記工程1-2に相当)した後は、継続的な炭酸ガスの供給はされなかった。
なお、洗浄方法の実施は、気温18℃の環境において、対象とする皮膚部分一箇所につき30秒の洗浄液等の噴射をおこない、実施例1、比較例1,2において同一時間ずつ施術を行った。
【0047】
【0048】
洗浄前と比較して、本発明の洗浄液で本発明の装置を使用して洗浄した場合、水分量と肌弾力に大幅な増加が見られた。特に、水分量については、洗浄前と比較して2倍を超える水分量への増加効果が発揮された。言い換えれば、皮膚洗浄装置Aを用いる洗浄方法を実施すれば、洗浄前との比較において2倍の保湿効果を実現できたといえる。特に、比較例2においては炭酸ガス濃度が高かったにもかかわらず、洗浄方法の実施中において炭酸ガスの供給がなければ、本発明ほどの水分量の増加を実現することができないことが分かった。また、洗浄前と、比較例1/比較例2/実施例1の油分量の結果を比較すると、本発明の装置を使用して皮膚を洗浄することによって、皮膚の余分な油分が除去されることが分かった。
【0049】
また、肌弾力についても、比較例1及び比較例2では肌弾力の増加は見られるものの、いずれも50%台にとどまったが、実施例1によれば肌弾力が70%を超える値まで増加した。これにより、単に炭酸ガスを含む水を用いて洗浄を行う場合(比較例2)よりも、継続的に炭酸ガスを供給し続けながら洗浄方法を実施すると肌弾力の増加効果を大きく向上させることが分かった。
【0050】
さらにいえば、比較例2と実施例1の水分量と肌弾力の結果を比較して、炭酸ガスのみを含む水で洗浄するより、継続的に炭酸ガスを供給される本発明の洗浄液で洗浄する方が、水分量と肌弾力が著しく増加することが分かった。
【0051】
洗浄試験2
本発明の洗浄液(洗浄液:水200mlにタブレット1個を洗浄剤として混合)で本発明の装置を使用して、ヒトの頭皮の洗浄試験を行った。
【0052】
被験者の頭部の洗浄前の状態を示す写真を
図7(a)に、洗浄後の状態を示す写真を
図7(b)に示す。
図7によれば、1回洗浄しただけで、(i)赤く炎症を起こしていた部分の赤みが減退し、(ii)フケが少なくなり、(iii)痒みの症状も消失するという、頭皮の状態の顕著な改善が見られた。
また、1回のみの洗浄で、本発明の洗浄方法を使用した者に実感できる形で、皮膚の状態の顕著な改善が見える結果となった。
【0053】
被験者の洗浄を行った皮膚表面の洗浄前の状態を示す拡大写真を
図8(a)に、洗浄後の状態を示す写真を
図8(b)に示す。
図8によれば、
図8(a)に示すように、洗浄前では皮膚表面に多数の線状の皺が見られることにより、皮溝と皮丘が乾燥して割れそうな状態であった。
一方、
図8(b)に示すように、洗浄後では毛根で囲まれる領域(皮丘)に張りが生じ、皺が見られない状態に改善した。これにより、皮溝と皮丘に潤いが感じられ、みずみずしい肌の確認が出来た。これは、表2における肌弾力の増加効果を外観観察の結果実証できた結果といえる。
【0054】
洗浄試験1および洗浄試験2の結果から、本発明の洗浄液と本発明の装置を使用する皮膚洗浄方法により、顕著に皮膚の状態が改善することが確認された。
また、使用回数を重ねなくとも本発明の方法を使用した者に皮膚の状態の改善が実感できる形で見られることは、本発明の顕著な効果であると考えられる。