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特開2024-160902レンズプロテクタ及びそのワイパー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160902
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】レンズプロテクタ及びそのワイパー装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20210101AFI20241108BHJP
   H04N 23/45 20230101ALI20241108BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20241108BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
G03B11/00
H04N23/45
H04N23/52
G03B17/56 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023084960
(22)【出願日】2023-05-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】515333271
【氏名又は名称】株式会社三井光機製作所
(72)【発明者】
【氏名】河野 景三
(72)【発明者】
【氏名】三井 辰郎
【テーマコード(参考)】
2H083
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H083AA04
2H083AA26
2H083AA32
2H105DD06
2H105DD07
2H105EE02
2H105EE06
5C122DA11
5C122DA16
5C122EA02
5C122EA36
5C122EA67
5C122FA18
5C122GE09
(57)【要約】
【課題】 可視光カメラ及び赤外光カメラを有する複眼レンズカメラ装置に適したレンズプロテクタ及び屋外用複眼カメラに適した防塵、水滴除去ワイパー装置を提供する。
【解決手段】 本発明におけるレンズプロテクタは、可視光カメラ及び赤外光カメラが一体化された複眼レンズカメラ装置に用いられるレンズプロテクターであって、前記レンズプロテクターは、クラウン系又はフリント系素材の可視光用ガラス素材とカルコゲナイト系又はゲルマ系素材の赤外光用ガラス素材とが一体化されている。また、上記レンズプロテクタは、前記複眼レンズカメラ用レンズプロテクタが、前記レンズプロテクタ上に水滴除去用ブレードを備えたワイパー手段を設けるように構成することもできる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光カメラ及び赤外光カメラが一体化された複眼レンズカメラ装置に用いられるレンズプロテクターであって、
前記レンズプロテクターは、クラウン系又はフリント系素材の可視光用ガラス素材とカルコゲナイト系又はゲルマ系素材の赤外光用ガラス素材とが一体化されていることを特徴とするレンズプロテクター。
【請求項2】
前記赤外光カメラは、1.4~1000μmの波長帯域のいずれかの帯域を用いるサーモカメラ又は暗視カメラであることを特徴とする請求項1記載のレンズプロテクタ。
【請求項3】
前記可視光用ガラス素材と前記赤外光用ガラス素材との嵌合部分に水滴除去用溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載のレンズプロテクター。
【請求項4】
前記複眼レンズカメラ用レンズプロテクタは、前記レンズプロテクタ上に水滴除去用ブレードを備えたワイパー手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のレンズプロテクタ。
【請求項5】
前記レンズプロテクタを前記カメラ装置に取り付けた際、
前記可視光用ガラス素材は、前記可視光カメラに対応し、前記赤外光用ガラス素材は、前記赤外光カメラに対応するよう構成されていることを特徴とする請求項4記載のレンズプロテクタ。
【請求項6】
前記レンズプロテクタ及び前記カメラ装置とはそれぞれに取り付けるための嵌合部を備えており、
前記嵌合部は、ワンタッチ操作により嵌合可能であり、着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項5記載のレンズプロテクタ。
【請求項7】
前記レンズプロテクタ上には、水滴除去用溝が形成され、該溝は、前記ワイパーの水滴除去用ブレード及び前記カメラ装置のレンズ位置と重ならないような曲線又は直線で構成されることを特徴とする請求項5記載のレンズプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複眼カメラ用レンズプロテクタ及びそのワイパー装置に関するものである。特に、サーモカメラと可視光カメラとの複眼カメラに適したレンズプロテクタ及びワイパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの監視用カメラでは、可視光カメラと赤外光カメラとの組合せにより、可視光画像だけでなく赤外光画像を取得し、昼間のカラー画像と夜間の暗視画像とを取得できるように構成している。また、車載用カメラなどでも昼夜兼行で稼働させる必要性から可視光カメラと赤外光カメラを搭載している。特に、遠赤外光カメラによる赤外光画像は、物体からの放射熱エネルギーを視覚化できるため、体温検知・計測、異物検知、建物監視、高温・光熱画像取得、配管水漏れ、空気漏れなど多種の検査、検知にも用いられている。
【0003】
このように、遠赤外光カメラは、暗視カメラ(又はナイトビジョンカメラ)及びサーモカメラ(又はサーマルカメラ)と称されて監視用、検査・検知用、産業用、軍需用など多岐に亘って利用されている。特に、可視光カメラに遠赤外光カメラを兼ね備える複眼カメラは、監視カメラ、建物・施設などの欠陥検知などに屋外で使用されることが多く、風雨にさらされても適切な画像を取得できる必要がある。
【0004】
屋外用カメラに用いる水滴除去や防塵用防護手段としては、防護ケースに格納する方法やレンズ表面に防水、防油、防塵剤をコーティングする方法などが工夫されているが、常時屋外使用が求められる監視カメラ等では、レンズフィルターやレンズプロテクターと称される透明ガラスなどの水滴除去用及び防塵用防護装置が必要となっている。以下、本願においてこのようなカメラ装置に取り付ける風雨、チリ、ゴミ、油などから防護するレンズ保護装置をレンズプロテクターと称する。
【0005】
屋外での撮影において風雨、防塵用としてカメラ装置にレンズプロテクターやワイパーを用いる技術は種々開示されている(特許文献1:特開2014-145877号公報、キャノンなど)。従来、カメラのレンズプロテクターには、透過効率の良い平板ポロシリケート・クラウンガラスに代表されるクラウン系ガラスやフリント系ガラスが用いられているが、赤外光カメラを含むカメラの場合、これらのガラスでは、赤外光波長帯域における透過特性が低下する欠点がある。
【0006】
本発明の出願人は、先に複眼カメラに可視光カメラと赤外カメラとを組み込んでパン、チルト雲台で操作する複眼カメラを提案(特許文献2:特開2023-26270号公報、三井光機)したが、このような可視光及び赤外カメラを一体化した複眼カメラ用にレンズプロテクターを組み込もうとすると、赤外光像の透過効率を犠牲にて、クラウン系ガラスをレンズプロテクターとして構成するか、可視光用レンズプロテクターと赤外光用レンズプロテクターとを別々に取り付け、それぞれにワイパー手段を取り付けるなどの煩雑な構成が必要であった。そのため、可視光カメラと赤外光カメラとを一体化した複眼カメラにおいても、屋外仕様に適した風雨、防塵、水滴除去を行うレンズプロテクター装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-145877号公報
【特許文献2】特開2023-26270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の状況に鑑みて提供されるものであって、主として以下のようなレンズプロテクター及びワイパー装置の提供を目的とする。
(1)可視光カメラ及び赤外光カメラを有する複眼レンズカメラ装置に適したレンズプロテクタ
(2)屋外用複眼カメラに適した防塵、水滴除去ワイパー装置
(3)利便性の高い複眼カメラに適したワイパー装置
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決し上記目的を達成するために、本発明におけるレンズプロテクタは、可視光カメラ及び赤外光カメラが一体化された複眼レンズカメラ装置に用いられるレンズプロテクターであって、前記レンズプロテクターは、クラウン系又はフリント系素材の可視光用ガラス素材とカルコゲナイト系又はゲルマ系素材の赤外光用ガラス素材とが一体化されていることを特徴とする。
【0010】
また、上記レンズプロテクタは、前記赤外光カメラが、1.4~1000μmの波長帯域のいずれかの帯域を用いるサーモカメラ又は暗視カメラ用として構成することが可能である。
【0011】
また、上記レンズプロテクタは、前記可視光用ガラス素材と前記赤外光用ガラス素材との嵌合部分に水滴除去用溝が設けられているように構成することもできる。
【0012】
また、上記レンズプロテクタは、前記複眼レンズカメラ用レンズプロテクタが、前記レンズプロテクタ上に水滴除去用ブレードを備えたワイパー手段を設けるように構成することもできる。
【0013】
また、上記レンズプロテクタは、前記レンズプロテクタを前記カメラ装置に取り付けた際、前記可視光用ガラス素材が、前記可視光カメラに対応し、前記赤外光用ガラス素材が、前記赤外光カメラに対応するよう構成することもできる。
【0014】
また、上記レンズプロテクタは、前記カメラ装置に取り付けるための嵌合部を備えており、前記嵌合部は、ワンタッチ操作により嵌合可能であり、着脱自在に構成することもできる。
【0015】
また、上記レンズプロテクタは、前記レンズプロテクタ上に水滴除去用溝が形成され、該溝が、前記ワイパーの水滴除去用ブレード及び前記カメラ装置のレンズ位置と重ならないような曲線又は直線で構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レンズプロテクタが可視光波長帯域において高透過率を有する可視光用ガラス素材と赤外光波長帯域において高透過率を有する赤外光用ガラス素材とを一体化した構成であるため可視光および赤外光の複眼カメラに適した光束透過率を低下させないレンズプロテクタを提供する。また、このようなレンズプロテクターに回転ワイパーを備えることで防塵、風雨耐性に優れたレンズプロテクターを構成することができ、屋外撮影などで良質の画像を取得することができる。更に、回転ワイパー又はレンズプロテクタを複眼レンズカメラ装置に対し着脱自在にすることで、利便性の高い複眼レンズカメラ装置用レンズプロテクタ及びワイパー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるレンズプロテクタ及びワイパーの実施例の全体を示す説明図である。
図2】本発明による複眼レンズ用レンズプロテクタの実施例を示す説明図である。
図3】本発明による複眼レンズ用ワイパー付レンズプロテクタの実施例を示す説明図である。
図4】本発明による複眼レンズ用ワイパー付レンズプロテクタの他の実施例を示す説明図である。
図5図3におけるワイパー付レンズプロテクタの断面図を示す説明図である。
図6】本発明によるレンズプロテクタの別の実施例を示す説明図である。
図7】本発明による2眼式及び4眼式カメラ用レンズプロテクタの実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に関連するレンズプロテクタ及びワイパー装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されているいずれの説明図や図面も本発明の説明用に概略的または模式図として描かれており、実際の寸法や形状は特に限定するものではない。また、実施例で用いているシステム構成、ブロック図、寸法、材質、形状、その相対配置および使用例は特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
図1は、本発明による複眼レンズカメラ装置用レンズプロテクタ及びワイパーの実施例の全体を示す説明図である。図1において、複眼レンズカメラ装置(又はカメラ装置)1は、可視光画像を取得するワイドレンズ2、望遠(テレ)レンズ3を備えた可視光カメラ及び赤外光画像を取得する赤外光レンズ4を備えている。この実施例では、可視光カメラとしてワイドレンズと望遠レンズを備え、赤外光カメラとして赤外光レンズを備えた通称3眼式カメラ装置を示しているが、2眼式又はそれ以上の複眼式マルチレンズ構成でも構わない。本発明において複眼レンズカメラは、可視光カメラと赤外光カメラを備えた2眼以上のレンズを含むカメラを想定している。
【0020】
このカメラ装置1には、レンズプロテクタ10が着脱自在に取り付けられる構成となっている。また、このカメラ装置1は、パン・チルト操作を可能とする雲台5に取り付けられている。ここで雲台5におけるパン操作は、固定された土台6上のパン回転台7が土台6に対し左右回転操作を行う。また、チルト操作は、パン回転台7上の支柱8に取り付けられたチルト回転軸9を中心として上下回動操作を行うように構成されている。このようなパン操作及びチルト操作によりカメラ装置1は、上下、左右いずれの方向にも回転操作を行うことが可能となり、撮影対象画像を捉えるように構成されている。このパン・チルト操作は、有線又は無線により離れた場所から遠隔操作を行うように構成することもできる。
【0021】
前述の通り、可視光カメラに赤外光カメラを兼ね備えたカメラ装置1は、主に監視カメラとして種々の観察、監視や建物・施設などの欠陥検知などに使用されることが多い。また、赤外光カメラの特性を活用した車、飛行機、船舶、列車などの移動体用カメラとして監視・観察用だけでなく、人体の温度検知・測定、自動操縦、異物検知、動態把握などにも流用されてきている。このようなカメラ装置1には、風雨にさらされても適切な画像を取得できるように防塵、水滴除去用にレンズプロテクタ10が必要となる。
【0022】
図2は、本発明によるレンズプロテクタ10の構成例を示す説明図である。レンズプロテクタ10の外枠11内には可視光用ガラス12及び赤外光用ガラス13から成るガラスプロテクタが形成されている。可視光用ガラス12としては、可視光波長における透過率が高いクラウン系の低分散ガラスが多用されているが、近年フリント系ガラスのような高分散ガラスであっても可視光波長で透過率の高いものが開発されており、クラウン系及びフリント系いずれのガラスであっても光学ガラスであれば構わない。
【0023】
ここで、クラウン系ガラスとは、一酸化鉛(PbO)を含まない組成のガラスであり、一酸化鉛を含むものをフリント系ガラスと称している。クラウン系ガラスの方がフリント系ガラスに比べ可視光領域における透過率が高いと言われているが、いずれのガラスであってもフレネル反射による透過率損失を減らすために反射防止膜(AR膜)を施して使用している。可視光帯域におけるレンズプロテクタとしてはボロシリケート・クラウンガラス(通称BKガラス)が多用されているが、多くのBKガラスでは1000nm以上の赤外光波長帯域では、透過率が低下する傾向にある。特に、反射防止膜を施した場合、長波長帯域となるほど透過率が低下する。
【0024】
赤外光カメラは、その利用目的により取得する赤外光波長帯域が異なっている。近赤外光(波長帯域0.780~2.5μm)では、静脈認証、生体酸素量測定、果実糖度測定用カメラなどに使用されている。また、中赤外光(波長帯2.5~4μm)では、化学物質の同定用カメラなど、遠赤外光(波長帯4~1000μm)では、サーモカメラ、ナイトビジョンカメラなどへ応用されている。そのため、レンズプロテクタもこれらの赤外光帯域波長を透過させる必要がある。特に、遠赤外光を利用したサーモカメラなどでは、「大気の窓」を考慮した3~5μm及び8~14μmの帯域が主に利用されている。本発明においては、中赤外光、遠赤外光を利用したサーモカメラや暗視カメラにおいて効果的であるが、それらの波長帯域に限定されるものでなく、可視光用ガラスの透過率が低下する1.4μm以上の近赤外光カメラ用レンズプロテクタにも適用することができる。つまり、前記赤外光カメラが、1.4~1000μmの波長帯域のいずれかの帯域を用いるサーモカメラ又は暗視カメラなどに効果的に適用することが可能である。
【0025】
図2のレンズプロテクタ10では、可視光カメラのワイドレンズ2及び望遠レンズ3をカバーする位置に可視光用ガラス12が設けられ、その一部に赤外光レンズ4に対応する位置に赤外光用ガラス13が一体化して設けられている。この可視光用ガラス12は、クラウン系ガラス又はフリント系ガラスであるが、赤外光用ガラス13は、上述したようなカメラの利用目的に従って必要な赤外光透過特性を有するガラスを選定する。例えば、人体感知等の場合は、人体放射熱に対応する波長(体温36℃で9.4μm近傍にピーク)をカバーする透過特性を有する赤外光用ガラスが望ましい。このような赤外光用ガラスとしては、カルコゲナイト系又はゲルマ系素材を用いることができる。
【0026】
この赤外光用ガラス13は、円形形状で、可視光用ガラス12内の円形枠に埋め込める形で嵌合されている。一体化された可視光用ガラス12と赤外光用ガラス13とはできるだけ同一平面であることが望ましい。また、可視光用ガラス12と赤外光用ガラス13との接合部分(嵌合部分)は、V字又はU字形状の溝を形成し、後述するワイパー手段を設けた際の排水溝として利用することもできる。
【0027】
レンズプロテクタ10の可視光用ガラス12の外周には、カメラ装置1に取り付けるための嵌合手段16を外枠11の3箇所に備えている。カメラ装置1側には、レンズプロテクタ10の嵌合手段16に対応したカメラ側の嵌合手段(図示せず)が備えられている。この嵌合手段16は、カメラ側の嵌合手段と協働してワンタッチでの着脱可能な構成となっている。レンズプロテクタ10を本体側嵌合手段に挿入して嵌合させる嵌め込み方式、挿入して若干回転させて嵌合させる引っ掛け方式、マグネットやマジックテープなどで密着させる方式など種々考えられるが、可視光レンズと可視光用ガラス、赤外光レンズと赤外光用ガラスとがそれぞれに対応した位置に嵌合できればいずれの着脱方式であってもかまわない。
【0028】
図3及び図4は、図2のレンズプロテクタ10にワイパー手段を取り付けた複眼レンズカメラ用ワイパーの実施例を示している。また、図5は、レンズプロテクタ10とカメラ装置1との係合及び相互の位置関係を説明する断面図である。それぞれ、図2と同じ部材には同じ番号が付されている。レンズプロテクタ10の中心軸部21には、回転ブレード(回転ワイパー)23が取り付けられており、中心軸部21とカメラ装置1とが嵌合手段16により嵌合されると、カメラ装置側の中心軸受部22とが嵌合される。カメラ装置側の中心軸受部22は、カメラ装置内の駆動モータ24により回転し、嵌合した回転ブレード23を回転させ、水滴除去及び防塵用ワイパー手段として機能する。
【0029】
このワイパー手段である駆動モータ24は、間欠的、連続的、単発的などの方式により稼働制御される。このワイパー回転により水滴や塵・ゴミなどは、除去されるが、高速回転により水滴を遠心力により弾き飛ばすような旋回式である必要はなく、比較的緩やかな回転速度で構わない。
【0030】
また、レンズプロテクタ10のガラス表面にいくつかの排水溝を設けることで効果的に水滴などを排水することができる。前述した通り、可視光用ガラス12と赤外光用ガラス13との接合部分にV字又はU字状の溝17を設けて下部排水部20から外部へ排水する。また、レンズプロテクタ10の外周に設けた溝19、及び図3に示すレンズプロテクタ10の中心部から放射状に伸びた溝18などでより効果的な排水が可能となる。この排水溝は、図4に示すように直線状に数本の溝18を設けることも可能である。これらの溝はレンズプロテクタ10の下部にある排水部20に結合され、外部へ排出される。当然ながらこのような溝は、対応する可視光レンズ2、3及び赤外光レンズ4に重ならない位置に形成され、かつ回転ブレード23の回転によりブレードが溝に重なって入り込まないような位置に形成される。更に、回転ブレード23の停止位置も可視光レンズ2,3及び赤外光レンズ4に重ならない位置に設定される。
【0031】
図2では、レンズプロテクタ10は円形状であり、円形の可視光用ガラス12中に円形の赤外光用ガラス13が嵌合されて配置されているが、これらの形状は、対応する赤外光レンズ4をカバーしていれば、三角、四角などいずれの形状でもかまわない。図6(A)は、半円形状の赤外光用ガラス13と可視光用ガラス12とを設けた実施例である。図6(B)は、扇型の赤外光用ガラス13と可視光用ガラス12との組合せである。このような赤外光用ガラス13の形状のレンズプロテクタ10に対し回転ワイパーを取り付ける場合の排水溝の構成は、対応する可視光レンズ及び赤外光レンズに重ならない位置に形成され、ワイパーの回転ブレードが赤外光用ガラスの周囲に形成された排水溝と重ならないように構成する。
【0032】
また、図6(C)は、レンズプロテクタの外枠11の形状が四角形状であり、可視光用ガラス12及び赤外光用ガラス13も四角形状に構成して一体化された例を示している。当然ながら、レンズプロテクタが四角形状の場合、ワイパー手段は、回転式ワイパーでなく、水平往復式又は扇形式ワイパーや2連の扇形式ワイパーなどで構成する必要がある。
【0033】
以上、可視光カメラと赤外光カメラとを一体化した3眼式カメラ装置に取り付けるレンズプロテクタ及びそのワイパーを例示的に説明したが、本発明は、その他の複眼レンズカメラ装置にも適用することが可能である。図7(A)は、可視光レンズとサーモカメラとの2眼式カメラ用レンズプロテクタ70の構成例を示している。可視光カメラ(C)レンズ71に対応する部分には、可視光用ガラス12が備えられ、サーモカメラレンズに対応する部分には、赤外光用ガラス13が備えられている。可視光用ガラス12に赤外光用ガラス13が嵌合されて一体化されている。一体化されたレンズプロテクタ70の外周には、水滴除去用溝19が施され、赤外光用ガラス13の外周にも水滴除去用溝17が施されている。更に、水滴除去用溝72が追加的に設けられている。
【0034】
図7(B)は、可視光カメラとしてワイド(広角)レンズ72、中間レンズ73、望遠レンズ74を備え、赤外光カメラとして赤外光レンズを備えた4眼式カメラ用レンズプロテクタ80の構成例を示している。可視光用レンズ72、73,74に対応する部分には可視光用ガラス12が備えられ、赤外光レンズに対応する部分には赤外光用ガラス13が備えられている。図7(A)と同様に、レンズプロテクタ80の外周には、水滴除去用溝19が施され、赤外光用ガラス13の外周にも溝17が施されている。更に、水滴除去用溝76が追加的に設けられている。
【0035】
図7(A)及び(B)で示すいずれのレンズプロテクタにおいても図3又は図4と同様な回転式ワイパーを設けることができる。この場合、水滴除去用溝は、回転ワイパーが回転した際にワイパーブレードと重なって入り込まないような位置で、かつそれぞれのレンズと重ならない位置曲線又は直線により構成される。これらの溝は排水部20へ集められ外部へ排水される。
【0036】
本発明によるレンズプロテクタは、カメラ装置と着脱自在に構成することで必要に応じて取り付け、取り外せるなどの利便性が向上すると共に、可視光カメラと赤外光カメラとを有する複眼カメラなどに適用することで、可視光帯域と赤外光帯域とに最適な透過率を確保できる防塵、防水用レンズプロテクタを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によるレンズプロテクタ及びワイパー装置は、可視光カメラ及び赤外光カメラを備えた複眼カメラに適用することで、適切な可視光画像及び赤外光画像を取得できるため、監視カメラ、車載カメラ、気象カメラ、航空機カメラ、内視鏡カメラなど利用範囲が種々にわたって可能となり、業務用、民生用、工業用、軍事用など多岐にわたる産業上の利用可能性が広がる。
【符号の説明】
【0038】
1 カメラ装置
2 可視光ワイドレンズ
3 可視光望遠レンズ
4 赤外光レンズ
5 雲台
6 土台
7 パン回転台
8 支柱
9 チルト回転軸
10 レンズプロテクタ
11 外枠
12 可視光用ガラス
13 赤外光用ガラス
16 嵌合手段
17~19 水滴除去用溝
20 排水部
21 中心軸部
22 中心軸受部
23 回転ブレード又は回転ワイパー
24 駆動モータ
70 2眼カメラ用レンズプロテクタ
80 4眼カメラ用レンズプロテクタ
72、76 水滴除去用溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7