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特開2024-160903カートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置
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  • 特開-カートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置 図1
  • 特開-カートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置 図2
  • 特開-カートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160903
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】カートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 3/31 20060101AFI20241108BHJP
   G11B 33/08 20060101ALI20241108BHJP
   G11B 3/50 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G11B3/31
G11B33/08
G11B3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023084963
(22)【出願日】2023-05-04
(71)【出願人】
【識別番号】592169460
【氏名又は名称】有限会社フィデリックス
(72)【発明者】
【氏名】中川 伸
(57)【要約】
【課題】アナログレコード再生のためのカートリッジ及びトーンアームは、バネ性と質量を持つことから、共振点(共振周波数)がある。共振点は、レコード再生の低域限界の20Hz以下から数Hz程度の範囲に設定するのが良いとされている。しかし、この共振点を測定するのは容易でなかった。
【解決手段】レコード盤を再生する場合のカートリッジとこれを支持するトーンアームにおけるカートリッジとトーンアームの低域共振点の検出を所定範囲の周波数で振動する振動体と、一方端を弾性固定された板状部材と、この板状部材の中間に振動体が発する振動を伝達する接続部と、板状部材の他方端の端部にカートリッジを載置する部位を備えると共に、周波数を変更できる制御装置であり、容易に共振点の測定や、所望の共振点が得られるように、カートリッジ及びトーンアームの調整ができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レコード盤を再生する場合のカートリッジとこれを支持するトーンアームにおけるカートリッジとトーンアームの低域共振点の検出をカートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置と、一方端を弾性固定された板状部材と、この板状部材の中間に振動体が発する振動を伝達する接続部と、板状部材の他方端の端部にカートリッジを載置する部位を備えると共に、周波数を変更できる制御装置を具備したことを特徴とするカートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置。
【請求項2】
振動体がスピーカーであるところの請求項1記載のートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログレコード(以下、単にレコードという)の再生で用いるカートリッジとトーンアームの低域共振点を検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レコードの再生は、レコードプレーヤーのターンテーブルにレコード盤を載置し、先端の針部がレコード表面の信号溝をトレースするカートリッジが、溝部の変動を電気信号に変換し、この電気信号を増幅してスピーカーで再生する仕組みとなっている。
【0003】
カートリッジはトーンアームに取り付けられ、トーンアームは、レコード盤表面の溝を追従して可動できるようになっている。また、カートリッジとトーンアームとの取付けには、ヘッドシェルというカートリッジ保持部材を介してトーンアームに取り付けられる場合もある。
【0004】
カートリッジのレコード溝との接触部は、先端にレコード針が取り付けられた筒状のカンチレバーがゴム製のダンパーで可動可能なように保持されている。カンチレバーのレコード針と反対側には、極小の磁石あるいはコイルが取り付けられており、ここで溝の変位を電磁的に変換して電気出力を得られるようになっている。
【0005】
カートリッジは、前述のようにゴム製ダンパーによって可動可能に保持されているので、レコード面に対しバネ性(コンプライアンス)を持っている。一方、カートリッジ本体、ヘッドシェル及びトーンアームは、一定の質量を持っている。このため、バネ性と質量で共振点(共振周波数)が存在する。
【0006】
一般にレコードによる音楽等の再生周波数は、約20Hz以上なので、この帯域でカートリッジ自体が揺れないのが好ましい。このためカートリッジの質量は大きい方が良いことになるが、カートリッジの質量が大きいと、レコード盤の反りや偏心に起因する数Hz程度の変動への追随性が悪くなる。このため、カートリッジの質量を小さくすれば、反りや偏心への追従性は向上するが、先に述べたようにカートリッジの防振能力は低下する。
【0007】
このようなことから、カートリッジの共振周波数は、7~10Hz程度、追従性を重視した場合、10~15Hz程度とするのが良いと言われてきた。
【0008】
共振周波数の確認手段として、以前は一定の波形等を記録したテストレコードを用いて共振周波数を確認する手段があったが、最近はこのようなテストレコードも殆ど出回っておらず、共振周波数の確認は、極めて困難な状況である。
【0009】
また、別の課題として、カートリッジのカンチレバーを支えるゴムのダンパーがあるが、このダンパーは微小部材のため、どうしても硬度にばらつきが出る。このため、新しいカートリッジであっても、ダンパーの硬度差で再生音質にばらつきが出る。また、長年保管したカートリッジでは、ダンパーのゴムが経年硬化して円滑性がなくなり、再生音質劣化につながる。
【0010】
この対策としては、いわゆるエージングという操作が有効である。新品あるいは長期保存でダンパーのゴムが硬化したものは、一定時間レコード再生すると、ゴムが軟化し、本来期待できる音質に近づく。エージング時間は、状態により異なるが、一般に数十時間程度である。エージングのためのピンクノイズを記録したエンドレス再生可能なレコード盤もあるが、テストレコードと同様入手が困難となっていることや、エージング時間分、針先が摩耗するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、レコード再生におけるカートリッジとトーンアームの共振周波数を測定すること、及び所定の共振周波数にカートリッジとトーンアームの質量調整を容易にすることを目的としたものである。
【0012】
更にこの発明は、硬化したカートリッジのダンパーのゴムをエージング処理により、適度の弾性を回復させるための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の発明は、レコード盤を再生する場合のカートリッジとこれを支持するトーンアームにおけるカートリッジとトーンアームの低域共振点の検出を所定範囲の周波数で振動する振動体と、一方端を弾性固定された板状部材と、この板状部材の中間に振動体が発する振動を伝達する接続部と、板状部材の他方端の端部にカートリッジを載置する部位を備えると共に、周波数を変更できる制御装置を具備した装置である。
【0014】
次に、第二の発明は、第一の発明における振動体に小型のスピーカーを用い、スピーカーの振動を板状部材に伝達した装置である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、レコード盤面でのカートリッジの共振点を測定するために、共振周波数帯の振動が発生する振動体とこれに連結された板状部材の端部に、トーンアームに取り付けられたカートリッジ先端のレコード針部分を載置することで、針部分にレコード盤の溝をトレースするときに発生する振動と同等のものがカートリッジに伝わる。
そして、周波数を変更させることにより、周波数が共振点に近づくと振幅が大きくなる。測定者は、この変化を観察して振幅の最大点を探し、ここを共振周波数と判断できる。
厳密には、速度最大の共振点に対し、振幅の最大値はわずかに低くなるが、これは無視できるレベルである。また、振幅は、レコード溝の基準が0.1mmなので、最大でも0.3mm程度である。もし、目視での判断が困難な場合は、ルーペ等の拡大鏡を測定部に設置してもよい。
【0016】
なお、オイルを注入したオイルダンプのトーンアームの場合、ダンプ効果により共振点が分かりにくい場合があるが、この場合は、あらかじめオイルを抜いて測定すれば、共振点がわかり易くなる。
【0017】
上記の効果は、共振点を測定する場合であるが、逆に自分の好みの共振周波数に合わせたい場合は、装置のコントローラーで好みの共振周波数を設定しておき、カートリッジやトーンアームの針圧やアームバランスを調整して最大振幅になるようにすればよい。
【0018】
また、もう一つの課題であるダンパーゴムのエージングについては、本発明の装置を稼働させ、カートリッジの針を検出部に載置して一定時間稼働させればエージングを行うことができ、ピンクノイズレコードでのエージングのように、レコード針を摩耗させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明のカートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置の構造を示す分解斜視図である。
図2】この発明のカートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置の検出部の外観を示す斜視図である。
図3】この発明のカートリッジとトーンアームの低域共振点検出装置のコントロール部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図3に基づいて説明する。
【0021】
図1において、振動体は、測定したい共振周波数帯の振動を発生するものであれば何でもよいが、ここでは入手容易な小型のスピーカー1を用いている。板状部材2は、一方端の支点部分3から振動を伝達する伝達点4までは、U字あるいはV字状に加工された金属あるいはプラスチック材からなる。支点部分3には、針金状の金属棒5が先端に取り付けられており、L字型の金具6に溶接、はんだ付け等で装置本体に固定される。この例では、スピーカー1の取付穴7にネジ止め固定している。カラー8は、取付位置間隔を調整するスペーサーである。
【0022】
そして、スピーカー1のセンタードーム部9と、板状部材2の伝達点4は、間隔調整用のカラー8を介して取り付けられている。センタードーム9側は接着剤により、伝達点4側はネジ止めされている。そして、板状部材2の支点と反対側には、平面上に伸びた駆動部10が形成され、端部にレコード針載置用の穴11が穿たれている。
【0023】
このように構成したので、板状部材2は、支点部分3を支点として、スピーカー1の振動によって板状部材2が水平方向に微小に振動する。このため、駆部部10の穴11にカートリッジの針部を載置すれば、駆部部10は、あたかもレコード盤面にカートリッジが接したのと同様になる。
【0024】
図2は、図1で説明した低域共振点検出装置を収納した外観図で、外装ケース12の内部に図1の装置が収納されており、外装ケース12の端面の開口部13から板状部材2の駆動部10が出ている。また背面部からは、コントロール装置16と接続するケーブル14が引き出され、先端にコネクター15が取り付けられている。
【0025】
図3は、この低域共振点検出装置を操作するためのコントロール装置16の操作面を示したものである。コントロール装置16は、図2に示した検出装置から引き出されたコネクター15で接続される。なお、図示はしていないが、電源は、電池あるいはACアダプターから供給される。電源の取付場所は、特に限定はないが、電池であればコントロール装置16内または検出装置内に設置すれば良く、ACアダプターであれば、外部から供給すれば良い。
【0026】
コントロール装置16には、電源スイッチ17と、周波数調節ダイアル18が設けられている。この例では、周波数範囲が5Hz~20Hzの範囲で調整できるようになっており、内部には、発振器とスピーカー1を駆動するための低周波増幅回路が組み込まれている。この周波数範囲は、スピーカー1の共振点以下なので、スピーカー1は一定振幅となる。また、駆動の出力は、レコードの基準である0.1mmを超えない振幅幅になるように出力を調整している。
【0027】
以上説明したように、この発明は、レコード再生において、カートリッジの共振周波を簡単に測定、確認することができる。また、所定の共振周波数でレコード再生を行えるように、カートリッジとトーンアームの針圧やバランスの調整に用いることができる。
【0028】
また、カートリッジをエージングしたい場合にも、カートリッジの針の摩耗を気にすることなくエージングを行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 スピーカー
2 板状部材
3 支点部分
4 伝達点
5 金属棒
6 金具
7 取付穴
8 カラー
9 センタードーム部
10 検出部
11 穴
12 外装ケース
13 開口部
14 ケーブル
15 コネクター
16 コントロール装置
17 電源スイッチ
18 周波数調整ダイアル
図1
図2
図3