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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160909
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】リポソーム含有皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/14 20060101AFI20241108BHJP
   A61K 8/9767 20170101ALI20241108BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241108BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 36/15 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241108BHJP
   A61K 8/34 20060101ALN20241108BHJP
   A61K 129/00 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
A61K8/14
A61K8/9767
A61K8/55
A61K8/73
A61K8/81
A61Q19/00
A61P17/00
A61K36/15
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/10
A61K8/34
A61K129:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116995
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2023075936
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】木戸 浩基
(72)【発明者】
【氏名】中村 将行
(72)【発明者】
【氏名】森山 昌明
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE09G
4C076EE30
4C076EE30G
4C076EE47
4C076EE47G
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC642
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD252
4C083AD302
4C083AD332
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD412
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD38
4C083DD45
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C088AB03
4C088AC06
4C088BA09
4C088MA24
4C088MA63
4C088NA03
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】
水溶性有効成分として松樹皮抽出物を内包しつつも、安定性に優れたリポソームを含有する皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】
水溶性有効成分として松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤において、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質と増粘剤とを含み、粘度を4mPa・s以上ことで、松樹皮抽出物の安定性に優れたリポソーム含有皮膚外用剤を得ることができる。
【選択図】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)松樹皮抽出物と、(B)酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質と、(C)増粘剤を含有することを特徴とするリポソーム含有皮膚外用剤であって、粘度が4mPa・s以上であり、リポソーム内に松樹皮抽出物を内包することを特徴とするリポソーム含有皮膚外用剤。
【請求項2】
さらに、(D)1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、シクロヘキシルグリセリンおよびヘキシルグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のリポソーム含有皮膚外用剤。
【請求項3】
(C)増粘剤としてカルボキシビニルポリマー及び/又はキサンタンガムを含む請求項1に記載のリポソーム含有皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、松樹皮抽出物を内包したリポソームを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リン脂質等から構成された脂質膜構造体であるリポソームは、有効成分を内包できることから、化粧品用途や皮膚外用剤用途において有用である。従来から、皮膚バリア機能を改善する水溶性の有効成分などをリポソームに内包させて皮膚用化粧料に配合し、皮膚への経皮吸収性を高める試みがなされている(特許文献1~3)。
【0003】
一方で、リポソームに内包される有効成分は、貯蔵、保管中に、温度などの影響を受けて変性することがある。特に、リポソーム内の水相に保持される水溶性有効成分は、リポソームの脂質膜内に保持される油溶性有効成分と比較して、そのような傾向が見られやすい。リポソーム含有化粧料において、リポソームに内包された水溶性有効成分の変性を防ぐことは容易ではなく、そのための手法は実現化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-328026号公報
【特許文献2】特開2008-094809号公報
【特許文献3】特開2009-102257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、水溶性有効成分として松樹皮抽出物をリポソームに内包しつつも、水溶性有効成分の安定性に優れた皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、上記課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質と増粘剤を含み、水溶性有効成分として松樹皮抽出物を内包したリポソームを含む皮膚外用剤において、粘度を4mPa・s以上とすることで、水溶性有効成分の安定性に優れた皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明の概要は、以下の通りである。
<1>(A)松樹皮抽出物と、(B)酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質と、(C)増粘剤を含有することを特徴とするリポソーム含有皮膚外用剤であって、粘度が4mPa・s以上であり、リポソーム内に松樹皮抽出物を内包することを特徴とするリポソーム含有皮膚外用剤。
<2>リポソーム膜が(B)酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質を含むものである、<1>に記載のリポソーム含有皮膚外用剤。
<3>さらに、(D)1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、シクロヘキシルグリセリンおよびヘキシルグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>に記載のリポソーム含有皮膚外用剤。
<4>(C)増粘剤としてカルボキシビニルポリマー及び/又はキサンタンガムを含む<1>に記載のリポソーム含有皮膚外用剤。<5>粘度が150mPa・s以上である<1>に記載のリポソーム含有皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
水溶性有効成分として松樹皮抽出物を内包したリポソームを含む皮膚外用剤に対して、粘度を4mPa・s以上とすることにより、松樹皮抽出物の析出や褐変が抑制され、安定性に優れたリポソーム含有皮膚外用剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のリポソーム含有皮膚外用剤について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0010】
<(A)松樹皮抽出物>
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤は、松樹皮抽出物を必須成分とするものである。本発明における松樹皮抽出物(以下、「成分A」ともいう)としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダ等のマツ目に属する植物の樹皮の抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましく、東洋新薬製の松樹皮抽出物(フラバンジェノール(登録商標))がさらに好ましい。
【0011】
松樹皮抽出物を得る際に使用する抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、含水有機溶媒(含水エタノールといった含水アルコール)が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及び1,1,2-トリクロロエテンが挙げられる。これらの水及び有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合せて用いてもよい。抽出溶媒としては、水を用いることが好ましい。なお、抽出する際の溶媒の温度は、用いる溶媒の沸点以下であれば限定されない。
【0012】
松樹皮抽出物を得る方法については、制限はないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法等が挙げられる。また、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0013】
超臨界流体抽出法とは、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)等が用いられるが、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0014】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体を分離する分離工程とを行う。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0015】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、抽出流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n-ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類を2~20W/V%程度添加し、この流体を用いて超臨界流体抽出を行うことによって、OPC(oligomeric proanthocyanidin:オリゴメリック・プロアントシアニジン)、カテキン類等の目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的な松樹皮抽出物を得る方法である。
【0016】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点、抽出流体が残留しないという利点、溶媒の循環利用が可能であるため、脱溶媒工程等が省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0017】
上記の抽出により得られた松樹皮抽出物を、カラム法又はバッチ法により精製することが安全性の面から好ましい。カラム法としては、例えば、ダイヤイオンHP-20、Sephadex-LH20、キチン等の吸着性担体を用いた精製方法が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、主な成分の一つとして、プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin;以下、OPCという)を含有する。OPCは、フラバン-3-オールおよび/又はフラバン-3,4-ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群である。
【0019】
本発明における樹皮抽出物の含有量は、特に限定されないが、優れた安定性を発揮することから、本発明のリポソーム含有皮膚外用剤において、0.0000001~3質量%であることが好ましく、0.000001~2質量%であることがより好ましく、0.00001~1質量%であることが特に好ましい。
【0020】
<(B)酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質>
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤は、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質を必須成分とするものである。本発明の皮膚外用剤において、松樹皮抽出物を内包するために形成されるリポソームは、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質を含むものである。本発明における酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質(以下、「成分B」ともいう)は、例えば、大豆由来のリン脂質に常法により水素添加したものを用いることができる。かかる酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質としては、各社より提供されている市販の製品を用いることができる。
【0021】
リポソームの調製には、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよく、1種以上の酸価5mgKOH/g未満の水素添加リン脂質および1種以上の酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質を組み合わせて酸価5mgKOH/g以上としたものであってもよい。水素添加大豆リン脂質の酸価は、「医薬部外品原料規格2021 一般試験法の部 28.酸価測定法」に準拠して測定される値を採用するものとする。
【0022】
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤に使用される酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質の含有量は、より安定したリポソームを得る観点から好ましくは0.00001~6質量%であり、より好ましくは0.0001~5質量%であり、特に好ましくは0.001~4質量%である。
【0023】
<(C)増粘剤>
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤は、増粘剤を必須成分とするものである。本発明における増粘剤(以下、「成分C」ともいう)は、特に限定はされないが、アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、ジェランガム、カラギーナン等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテート共重合物、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アルカノールアミン、アルキルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレート共重合物、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウム等のアクリル系高分子等が挙げられる。本発明のリポソーム含有皮膚外用剤に使用される増粘剤としては、より安定したリポソームを得る観点から、微生物系高分子又はビニル系高分子であることが好ましく、微生物系高分子ではキサンタンガムがより好ましく、ビニル系高分子ではカルボキシビニルポリマーがより好ましい。
【0024】
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤に使用される増粘剤の含有量は、より安定したリポソームを得る観点から好ましくは0.001~4質量%であり、より好ましくは0.01~2質量%であり、特に好ましくは0.1~1質量%である。但し、増粘剤を2種以上含有する場合は、その総量である。
【0025】
<(D)多価アルコール>
本発明は上記成分A~Cに加えて多価アルコールを含むことが好ましい。本発明における多価アルコール(以下、「成分D」ともいう)は、特に限定はされないが、例えば、1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、グリセリン、シクロヘキシルグリセリン、ヘキシルグリセリン、ポリグリセリン(例えば、ジグリセリン、テトラグリセリン)、キシリトール、マルチトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びトレハロースを挙げることができる。これらの中でも、2価又は3価のアルコールが好ましく、本発明のリポソーム含有皮膚外用剤の安定性を向上させる観点から、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、シクロヘキシルグリセリン及びヘキシルグリセリンがより好ましく、1,2-ペンタンジオールが最も好ましい。
【0026】
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤が多価アルコールを含有する場合、多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、0.1~50質量%であることが好ましく、0.4~30質量%であることがより好ましく、1~20質量%であることが特に好ましい。但し、多価アルコールを2種以上含有する場合は、その総量である。
【0027】
<その他の成分>
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤は、上記成分A~D以外に、その他の成分を含有しても良い。前記のその他の成分としては、例えば、塩基性化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基;アルギニン、リシン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トロメタミン)等のアミン化合物等)、酸性化合物(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の無機酸;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、グルコン酸、安息香酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、エチドロン酸、フィチン酸、酸性アミノ酸等の有機酸等)、脂溶性化合物(フィトステロール、コレステロール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、オレイン酸フィトステリル、フィトステリルグルコシド等のステロール類;γ-オリザノール、グリチルリチン酸、ウルソル酸等のトリテルペン類;レチノール、水添レチノール、コレカルシフェロール、トコフェロール、アスコルビン酸エステル等の脂溶性ビタミン類;アスタキサンチン、β-カロチン等のカロテノイド類;ユビキノン等の補酵素;リモネン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素類;セラミドEOS、セラミドNG(セラミド2)、セラミドNP(セラミド3)、セラミドAP(セラミド6II)、セラミドEOP(セラミド1)、ジヒドロキシリグノセロイルフィトスフィンゴシン、セレブロシド、スフィンゴ糖脂質、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド等のセラミド類;テトラヒドロジフェルロイルメタン、プテロスチルベン等の脂溶性ポリフェノール類等)、油剤、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質以外の界面活性剤、保湿剤、美白剤、色材、アルコール類、中性アミノ酸、糖、水溶性ビタミン、着色剤、粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、美容成分、電解質、繊維、松樹皮抽出物以外の植物抽出エキス、水等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤の形態は、特に限定されず、任意の形態とすることができる。具体的な形態としては、例えば、化粧水、美容液、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、ジェル、パック等の基礎化粧料;石鹸、ボディソープ、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングミルク、洗顔料等の皮膚洗浄料;シャンプー、リンス、トリートメント等の洗髪用化粧料;ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアトニック、ヘアジェル、ヘアローション、ヘアオイル、ヘアエッセンス、ヘアウォーター、ヘアワックス、ヘアフォーム等の整髪料、育毛・養毛料、1剤式染毛剤や2剤式染毛剤、ヘアカラー等の染毛料、パーマネントウェーブ剤や縮毛矯正剤等のパーマ剤やウエーブ保持剤等の頭髪化粧料;ファンデーション、白粉、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、眉墨、まつ毛等のメークアップ化粧料;美爪料等の仕上げ用化粧料;香水類、浴用剤、その他、抗炎症剤や腋臭防止剤、ふけ又はかゆみ予防用毛髪化粧料、脱毛抑制剤、除毛剤、髭剃り用剤、日焼け止め剤、にきび予防乃至改善剤、油性肌用化粧料、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等が挙げられる。これらの剤形の中でも、本発明の効果が特に良く発揮される観点から、化粧水、美容液、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、ジェル、パック等の基礎化粧料が好ましい。
【0029】
<粘度>
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤の粘度は、優れた安定性を発揮することから、好ましくは20℃における粘度が4mPa・s以上であり、より好ましくは150mPa・s以上であり、特に好ましくは300mPa・s以上である。また、使用感の観点から、20℃における粘度が60000mPa・s以下であり、より好ましくは50000mPa・s以下であり、特に好ましくは40000mPa・s以下である。その粘度は、B型粘度計により測定することができる。
【0030】
<pH>
本発明のリポソーム含有皮膚外用剤のpHは、優れた安定性を発揮することから、好ましくはpH3.0~8.0であり、より好ましくはpH3.5~7.0であり、特に好ましくはpH4.0~6.5である。
【0031】
本発明は、上記の成分A、成分B、ならびに成分Cを混合すること(混合工程)を有する、リポソーム含有皮膚外用剤の製造方法についても提供する。当該製法においては、上記成分A~C以外に、成分Dや上記の<その他の成分>の項に記載した成分をさらに混合してもよい。各成分の好ましい態様は、それぞれ上述したとおりである。
【0032】
当該製法において、混合温度は、特に制限されないが、好ましくは25~120℃であり、より好ましくは40~100℃であり、さらにより好ましくは60~90℃である。また、混合時間も、特に制限されないが、好ましくは10~60分である。混合方法は特に制限されないが、高度な機械的剪断力を必要としないことから、マグネチックスターラー(例えばホットスターラーなど)、パドルミキサー、プロペラミキサー、プラネタリーミキサーなどの公知の混合手段を用いて行うことができる。
【0033】
当該製法においては、上記混合工程に加えて、精製(例えば、濾過等)、冷却、加熱、保管等の他の工程を適宜行ってもよい。
【実施例0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
<リポソーム含有皮膚外用剤の調製>
以下の方法によりリポソーム含有皮膚外用剤を調製した。100mLビーカーに、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質、1,2-ペンタンジオール、フィトステロール及び精製水を含有するリポソーム形成用組成物を入れ、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した。次に、表1~3の配合量に従い、別の100mLビーカーに、精製水、松樹皮抽出物、事前に2%水溶液として調製した増粘剤(カルボキシビニルポリマー又はキサンタンガム)を入れて200rpmで撹拌し、水相を調製した。比較例1、2、7は、増粘剤を添加せずに水相を調製した。水相を80℃に加温し、100rpmで撹拌下、事前に80℃に加温したリポソーム形成用組成物を水相99mLに対して1mL添加して、松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤を得た。リポソーム形成用組成物を使用しない比較例5、6は、200mLビーカーに、精製水と松樹皮抽出物と事前に2%水溶液として調製した増粘剤(カルボキシビニルポリマー又はキサンタンガム)を添加して200rpmで撹拌して調製した。
松樹皮抽出物については、フランス海岸松の樹皮の熱水抽出物(乾燥粉末、「フラバンジェノール(登録商標)」株式会社東洋新薬製)を用いた。
表1に示す松樹皮抽出物と共に用いるリポソーム形成用組成物及び増粘剤は、市販品を用いた。
【0036】
2.評価
表1の各サンプルについて、下記項目を測定した。
<1>析出:得られたサンプルを5℃で7日間保管した。調製直後のサンプル(0日目)と、3日目又は7日目のサンプルを目視にて確認し、下記基準に従って点数をつけた。各測定日の点数から、0日目の点数を差し引き、その差を算出することで、析出抑制効果を評価した。数値が0に近いほど析出抑制効果が高いことを示す。
(基準)
3点: 析出が全く見られない
2点: 析出がサンプルの一部に見られる
1点: 析出がサンプルの全体に見られる
<2>褐変:得られたサンプルを40℃で7日間保管した。調製直後のサンプル(0日目)と、7日目のサンプルから、それぞれ約2.5mLをピペットで静かに抜き取り、波長500nmにおける吸光度を紫外可視分光光度計(UV1800、島津製作所)で測定した。7日目の吸光度から、0日目の吸光度を差し引き、その差(変化値)を算出することで、褐変抑制効果を評価した。差が小さいほど褐変抑制効果が高いことを示す。
<3>粘度:デジタルB型粘度計(DV1M)により、2番のスピンドルを用いて、20℃下で回転数5rpmにて測定した。
【0037】
【表1】

【0038】
松樹皮抽出物の配合量を0.001%とする場合に得られた評価結果を表1に示す。
表1に示す結果から明らかな通り、松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤が増粘剤としてカルボキシビニルポリマーやキサンタンガムを含み、粘度が8mPa・s以上である実施例1又は2は、増粘剤を含まず、粘度が0mPa・sである比較例1と比較して優れた析出抑制効果および褐変抑制効果を示すことがわかる。さらに、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを含む実施例1と比較して、増粘剤としてキサンタンガムを含む実施例2は7日目にも優れた析出抑制効果を示し、また、優れた褐変抑制効果も示すことから、増粘剤としてキサンタンガムを含み、粘度が440mPa・s以上である場合、特に安定性に優れた皮膚外用剤を得られることがわかる。
【0039】
【表2】
【0040】
松樹皮抽出物の配合量を0.01%とする場合に得られた評価結果を表2に示す。
表2に示す結果から明らかな通り、松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤が増粘剤としてカルボキシビニルポリマーやキサンタンガムを含み、粘度が5mPa・s以上である実施例3又は4は、増粘剤を含まず、粘度が0mPa・sである比較例2と比較して優れた析出抑制効果および褐変抑制効果を示すことがわかる。
また、松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤が、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーやキサンタンガムを含みつつも、粘度が0mPa・sである比較例3および比較例4と比較して、実施例3および実施例4は、それぞれ優れた析出抑制効果および褐変抑制効果を示すことから、松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤が、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーやキサンタンガムを含み、かつ、粘度が5mPa・s以上である場合、安定性に優れた皮膚外用剤が得られることがわかる。
さらに、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを含む実施例3と比較して、増粘剤としてキサンタンガムを含む実施例4は7日目にも優れた析出抑制効果を示し、この結果から増粘剤としてキサンタンガムを含み、粘度が440mPa・s以上である場合、特に安定性に優れた皮膚外用剤が得られることがわかる。
一方、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質を含んでいないためリポソームを形成せず、松樹皮抽出物と増粘剤としてカルボキシビニルポリマーのみを含む比較例5は、析出抑制効果および褐変抑制効果がいずれも低く、同様に、松樹皮抽出物と増粘剤としてキサンタンガムのみを含む比較例6は、褐変抑制効果が低いため、本願発明はリポソームに内包された松樹皮抽出物に対して効果を奏することがわかる。
【0041】
【表3】
【0042】
松樹皮抽出物の配合量を0.1%とする場合に得られた評価結果を表3に示す。
表3に示す結果から明らかな通り、松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤が増粘剤としてカルボキシビニルポリマーやキサンタンガムを含み、粘度が6mPa・s以上である実施例5又は6は、増粘剤を含まず、粘度が0mPa・sである比較例7と比較して優れた析出抑制効果および褐変抑制効果を示すことがわかる。
さらに、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを含む実施例5と比較して、増粘剤としてキサンタンガムを含む実施例6は7日目にも優れた析出抑制効果を示すことから、増粘剤としてキサンタンガムを含み、粘度が498mPa・s以上である場合、特に安定性に優れた皮膚外用剤が得られることがわかる。
【0043】
以上のことから、松樹皮抽出物を内包するリポソームを含む皮膚外用剤は、酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質と、増粘剤としてカルボキシビニルポリマー又はキサンタンガムを含み、粘度は5mPa・s以上である場合、リポソームに内包される松樹皮抽出物の析出および褐変が抑制され、松樹皮抽出物の優れた安定性を得られる。
【0044】
以下に本発明の種々の態様の例を挙げるが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
【0045】
<処方例1~4>
下記表4の配合にて、美容液を製造した。得られたリポソーム含有美容液は、粘度は15000~35000mPa・sであり、松樹皮抽出物の安定性に優れ、使用感のよいものであった。
【0046】
【表4】
【0047】
<処方例5、6>
下記表5の配合にて、乳液を製造した。得られたリポソーム含有乳液は、粘度は100~50000mPa・sであり、松樹皮抽出物の安定性に優れ、使用感のよいものであった。
【0048】
【表5】
【0049】
<処方例7,8>
下記表6の配合にて、ローションを製造した。得られたリポソーム含有ローションは、粘度は500~1000mPa・sであり、松樹皮抽出物の安定性に優れ、使用感のよいものであった。
【0050】
【表6】
【0051】
<処方例9,10>
下記表5の配合にて、オールインワンジェルを製造した。得られたリポソーム含有オールインワンジェルは、粘度は15000~25000mPa・sであり、松樹皮抽出物の安定性に優れ、使用感のよいものであった。
【0052】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、水溶性有効成分として松樹皮抽出物を内包するリポソームを含むリポソーム含有皮膚外用剤において、リン脂質として酸価5mgKOH/g以上の水素添加大豆リン脂質を含み、粘度を4mPa・s以上とすることで、安定性に優れたリポソーム含有皮膚外用剤を得ることができる。