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  • 特開-糖成分を含む成形用組成物 図1
  • 特開-糖成分を含む成形用組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016091
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】糖成分を含む成形用組成物
(51)【国際特許分類】
   B28B 7/34 20060101AFI20240130BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B28B7/34 A
B29C33/44
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183813
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2021535544の分割
【原出願日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】18214602.7
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】516155528
【氏名又は名称】プロイオニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】カルブ,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】コンシク,ラジスラフ
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー,ミヒャエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】少なくとも1つの糖成分を含む成形用組成物、この成形用組成物で作製された成形方法のための型、および型を用いて加工物を成形するための方法を提供する。
【解決手段】成形用組成物の重量に対して少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも80%の重量割合の、少なくとも1つの糖成分、および少なくとも1つの骨材を含む、成形用組成物、ならびに成形用組成物で作製された緻密質の三次元構造である成形方法のための型、ならびに型を用いて加工物を成形するための方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・成形用組成物の重量に対して少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特
に好ましくは少なくとも80%の重量割合の、少なくとも1つの糖成分、および
・少なくとも1つの骨材
を含む、成形用組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの糖成分が、単糖、二糖、オリゴ糖、単糖、二糖またはオリゴ糖か
ら誘導される糖アルコール、それらの水和物およびそれらの混合物からなる群から選択さ
れる、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの糖成分が、一般式I
(n*a)(n*a*2)+2b-2c(n*a)-c (I)
(式中、
nは1~10、好ましくは1または2であり、
aは4、5または6であり、
bは0または1であり、および
cはn-1またはnである)
の化合物、一般式Iの化合物の水和物、または少なくとも2つの一般式Iの化合物および
/もしくはそれらの水和物の混合物である、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの糖成分が、スクロース、D-フルクトース、D-グルコース、D
-トレハロース、シクロデキストリン、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マ
ルチトール、マンニトール、キシリトールおよびそれらの混合物、特に好ましくはD-ト
レハロース、イソマルト、エリスリトール、ラクチトール、マンニトールおよびスクロー
スとD-グルコースの共融混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか
一項に記載の成形用組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの糖成分が、融点および分解温度範囲を有し、前記融点が前記分解
温度範囲未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の成形用組成物。
【請求項6】
水、好ましくは前記成形用組成物の重量に対して最大10%の重量割合の水をさらに含
む、請求項1から5のいずれか一項に記載の成形用組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの糖成分が、吸湿性でないかまたは相対湿度が80%を超えるとき
にのみ吸湿性である、請求項1から6のいずれか一項に記載の成形用組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの骨材が、前記成形用組成物の重量に対して最大20%、好ましく
は最大10%の重量割合で含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の成形用組成
物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの骨材が粉末状または繊維状である、請求項1から8のいずれか一
項に記載の成形用組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの骨材が、セルロース、炭、ガラス繊維、アラミド、酸化アルミニ
ウム、二酸化ケイ素およびポリエチレン、好ましくはセルロースおよび炭からなる群から
選択される請求項1から9のいずれか一項に記載の成形用組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の成形用組成物で作製された緻密質の三次元構
造である、成形方法のための型。
【請求項12】
前記構造が、前記成形用組成物の融解物または圧縮構造である、請求項11に記載の型
【請求項13】
不均一の構造であり、その中で前記骨材が前記糖成分中に分布している分散相として存
在する、請求項11または12に記載の型。
【請求項14】
加工物を成形するための方法であって、
・請求項11から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの型を準備するステップ、
・前記型を成形される材料と接触させるステップ、
・前記成形される材料を硬化して加工物を得るステップ、
・前記型を前記加工物から除去するステップ
を含む、方法。
【請求項15】
前記型の前記構造が、除去の間に破壊される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記型の前記構造の破壊が、
前記糖成分を加熱により融解し、前記成形用組成物を除去する、特に流し捨てるステッ
プ、
前記成形用組成物を親水性の溶媒、好ましくは水で溶解するステップ、
前記糖成分を加熱により分解し、任意選択で前記成形用組成物の残渣を除去するステッ
プ、
またはこれらの手段の組合せ
により行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
接触させるステップ中、前記少なくとも1つの型が前記成形される材料内に位置するこ
とになり、任意選択で、さらなる型が、前記成形される材料と外側から接触する、請求項
14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記加工物を成形するための方法が、
・インベストメント鋳造のためのセラミックモールドシェルの製造、
・ロスト中子射出成形方法、
・粉末射出成形方法、
・プレス方法、または
・積層を用いた繊維-プラスチック複合材料の製造
の過程において使用される、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
硬化して前記加工物を得るステップが、機械的に、好ましくは前記型および前記成形さ
れる材料の配列に対して圧力をかけることにより行われ、前記配列が前記型と前記材料と
を接触させることにより作製される、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの糖成分を含む成形用組成物、この成形用組成物で作製され
た成形方法のための型、および型を用いて加工物を成形するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
型、特にロスト型(lost mould)は、様々な成形方法、例えばプレス、圧送
成形、鋳造、射出成形、粉末射出成形方法による金属、セラミックまたはポリマー加工物
の製造における、または繊維複合加工物の場合は積層方法における、加工物の成形に使用
される。この点について、型は、典型的には加工物の三次元配置の少なくとも一部につい
てネガティブである。
【0003】
「型」という用語は、本明細書において使用される場合、原型、特にロスト型、ロスト
型中子または支持構造を指す。
【0004】
複雑な形状、例えばキャビティまたはいわゆるアンダーカットを有する、金属、セラミ
ックまたはポリマー加工物は、内部またはアンダーカットの成形部材を機械的な理由から
成形方法の終了時に除去することができないため、通常、脱型可能なまたは取り外し可能
な工具を用いるプレス方法または鋳造方法により実行することができない。そのような加
工物を製造することを可能とするために、いわゆるロスト型、またはロスト型中子が当該
技術分野において使用され、これは水もしくは他の液体に溶解することにより、融解排出
することにより、もしくは熱分解により、または形成された液体、気体もしくは注入可能
な粉末状の分解生成物とともに燃焼させることにより、除去することができる。他の場合
では、取り外し可能な工具が技術的に実現可能であるが、ロスト型と比較して非経済的で
ある。
【0005】
1.ロスト中子の射出成形
射出成形方法では、主にプラスチック材料(ポリマー)が加工され、大半の場合、熱可
塑性であるが熱硬化性またはエラストマーでもあるプラスチック粉末、顆粒またはペース
トが、ピストンまたは回転スクリュー(押出機)を備えた加熱シリンダー中でこれらが可
塑化するまで150~300℃に加熱され、圧縮され、次に、成形用の水冷された一般的
に鋼製の2部のキャビティ中に500~2000barの圧力で射出される。冷却および
硬化または加硫後、加工物はキャビティを開けることにより除去することができる。キャ
ビティまたはアンダーカットを有する加工物を製造することを可能とするために、ロスト
型または型中子も、この場合に使用される。一方で、これらの中子は低融点金属合金(低
融合金)、例えばウッドメタルまたはローズメタルから鋳造により作製され、これらは射
出成形で融解排出することにより除去され、またはこれらは、続いて射出成形により製造
される、例えば水溶性のポリアクリレートポリマーからなる。ロスト中子の射出成形は、
繊維強化プラスチック加工物の製造にも使用することができ、例えばEP 171133
4 A2を参照されたい。低融合金を融解排出するとき、金属型中子が選択された射出成
形温度で十分な時間安定かつ展性であるように、およびその後に必要な融解温度で合成加
工物が熱的影響を受けることのないように、留意しなければならない(Michaeli
, W.;Greif, H.;Kretzschmar, G.;Ehrig, F.
、Technologie des Spritzgiessens、第3版;Hans
er:Munich、2009年)。
【0006】
2.粉末射出成形
プラスチック材料のための上記の射出成形方法のさらなる発展は、いわゆる粉末射出成
形であり、これは易焼結性の粉末、例えば金属射出成形とも称される金属粉末(典型的に
焼結鉄および非焼結鉄、硬質金属、金属で作製された複合材料)、セラミック射出成形と
も称されるセラミック粉末(典型的にセラミック(サーメット)、酸化物セラミックス、
窒化物セラミックス、炭化物セラミックスおよび機能性セラミックス)、Grおよび特別
なポリマー粉末、例えばテフロンに使用される。これらの方法において、金属、セラミッ
クまたはポリマー粒子(またはそのような粒子の混合物)からなる射出成形材料、補助物
質、例えば滑沢剤および(有機)バインダーが使用される。射出成形後、いわゆるグリー
ン体は、バインダーを水中または好適な溶媒中に溶解することにより、または熱処理によ
り、概ね除去される。最終的に、そのように形成されたバインダーをほぼ有しないブラウ
ン体は、材料特異的な熱加工において焼結され、最終加工物を形成する。この方法の修正
では、加工物の特性を修正するために、特別なバインダーをグリーン体中に故意に残存さ
せることもできる。粉末射出成形を使用して、複合材料、例えば繊維複合材料を、同様に
製造することができる。上記のような基礎となる通常の射出成形に類似して、キャビティ
およびアンダーカットを有する加工物を製造することを可能とするために、ロスト型また
は型中子を粉末射出成形に使用することもできる(「Powder injection
moulding」;Volker Piotterら、Wiley Encyclo
pedia of Composites、第2版(2012年)、4巻、2354~2
367頁;「Recent Advances in CIM Technology」
;B.S. Zlatkovら、Science of Sintering、40巻、
2008年、185~195頁)。
【0007】
3.プレス
例えば2.粉末射出成形において説明されているような易焼結性の金属、セラミックま
たはポリマー粉末は、断続的なプレス方法によっても加工物へと加工することができ、こ
れにより、複合材料、例えば繊維複合材料を同様に製造することができる。この目的のた
めに、セラミック、金属またはポリマー粒子からなる成形化合物、補助材料、例えば滑沢
剤および(有機)バインダーが類似して製造され、耐摩耗性の鋼または硬質金属で作製さ
れたプレス型(プレス金型)中に導入される。成形化合物は、乾燥状態(乾式プレス)ま
たは湿潤状態(湿式プレス)、寒冷状態(冷間プレス)、温暖状態(加熱プレス)または
高温状態(圧縮焼結)中で加工することができる。振盪(振動圧縮(vibratory
compaction))により、成形化合物の、特に複雑な形状に重要である均一な
分布および最初の圧縮を達成することができる。プレスラム(一軸プレス)またはいくつ
かのプレスラム(同軸プレス(coaxial pressing))を用いて、グリー
ン体が、成形化合物から、僅か100bar~最大10,000barの圧力で、製造さ
れる。この場合、液体と対照的に、圧力は全ての方向に均等に広がらず、横方向への材料
の流量は低く、それにより、結果として生じるグリーン体の圧縮は、内部摩擦力およびプ
レス型との摩擦に起因して、プレスラムからの距離が増大するにつれて低減する。
【0008】
この不利益を回避するために、いわゆる静水圧プレスがさらにより多く適用される。こ
の方法では、大半の場合乾燥または粉末状であるプレスされる成形化合物は、開閉可能な
弾性の型(例えば、ポリウレタン、シリコーンまたはゴムで作製される)中に配置され、
通常振盪により予め圧縮される(振動圧縮)。型は、次に、液体(通常水、油または油-
水混合物、稀にガス)で充填されたいわゆるレシピエント(耐圧性の開閉可能な容器)に
導入され、閉じられる。油圧装置(ガスの場合は圧縮機)を用いてレシピエント中の圧力
を僅か100~僅か1,000barに上昇させることにより、型は次に、圧縮が軸方向
に行われず外側から内側に向かって行われるように、液体またはガス中の均一な圧力分布
に起因して、全ての側面から静水圧プレスされる。さらに、圧縮される粒子は、静水圧プ
レス中、同軸プレス方法よりもはるかに短い距離を対象とする。結果として、生じたグリ
ーン体は最も高度に圧縮され、よって、焼結後、最終の加工物においても必要とされるよ
うな表面の最も高い強度も有し、同軸プレス方法よりも低い勾配を有する密度分布および
結果として生じる強度分布を有する。静水圧プレスは、通常寒冷状態で行われるが(冷間
静水圧プレス)、ガス、例えばアルゴンが圧力媒体として使用される場合、および金属容
器で作製された弾性の型(いわゆるカプセル)が使用される場合には、高温状態(熱間静
水圧プレス)中でも実施することができ、これにより後者の場合、圧縮焼結も既に同様に
可能である。静水圧プレス処理後、圧力媒体の過剰の圧力は解除され、グリーン体は弾性
の型から除去される。焼結された最終生成物を形成するためのさらなる処理は、2.粉末
射出成形と類似して行われ、この場合においても、バインダーはその後の方法のステップ
により除去されるか、またはグリーン体中に故意に残存させることができる。
【0009】
上記の方法に類似して、水溶性、融解性または可燃性の物質で作製されたロスト型また
は型中子も、キャビティおよびアンダーカットを有する加工物を製造することを可能とす
るために、一軸、同軸または静水圧プレスに使用することができる。プレス方法の要件(
圧力、温度)、使用される焼結材料、加工物の形状等に応じて、例えば低融点の金属、塩
、ワックス、発泡もしくは圧縮プラスチック材料または他の崩壊可能な材料で作製された
型中子が、この場合にも使用される(「Einfuhrung in die Pulv
ermetallurgie;Verfahren und Produkte」;第6
版、2010年;European Powder Metallurgy Assoc
iation(EPMA)、SY2 6LG Shrewsbury、United K
ingdomのパンフレット;the Fachverband Pulvermeta
llurgie e.V.、58093 Hagen、Germany;www.pul
vermetallurgie.comで入手可能)。
【0010】
4.インベストメント鋳造
インベストメント鋳造方法では、加工物のロスト原型は、例えばアルミニウムまたは鋼
工具を用いる射出成形技術において、特別な融解性または水溶性のワックス(例えばポリ
エチレングリコールまたはポリアクリレートをベースとする)または可燃性の熱可塑性プ
ラスチック(例えば発泡ポリウレタンまたはポリスチレンで作製される)から製造される
。キャビティまたはアンダーカットを作製するために、そのような原型を、水溶性、融解
性または可燃性のロスト中子に加えて準備することができる。原型は、次に、耐火性の微
粉末および結合剤、例えばケイ酸エチルからなるモールドシェル(mould shel
l)の製造のためのセラミック塊である、いわゆるスリップに浸漬される。スリップに包
まれた原型は、次に砂を振りかけられ、乾燥される。浸漬および研磨は、耐火性のモール
ドシェルが必要とされる安定性を達成するまで繰り返される。水溶性の中子は、次に水浴
中で抽出され、融解性の中子は、例えば水蒸気を伴う熱処理により除去される。モールド
シェルは、次に、およそ750~1200℃で焼成され、可燃性の中子または中子残渣は
完全に除去される。この後に、セラミックのモールドシェル中への実際の金属鋳造(例え
ば鋼、および鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、チタン、銅、マグネシウムまたは
ジルコニウムをベースとした合金)、および冷却された加工物の後処理が続く。そのよう
に得られた鋳造物は、これらの詳細レベル、寸法精度および表面の品質により特性決定さ
れる。インベストメント鋳造は、主に高性能な区分におけるニッチ市場でより少量で行わ
れる(「Feinguss:Herstellung, Eigenschaften,
Anwendung」;the Federal Association of t
he German Foundry Industryのパンフレット、2015年、
www.kug.bdguss.de;Foundry-Lexicon.第19版、S
tephan Hasse、2007年;Verlag Schiele und Sc
hon、ISBN 978-3794907533)。
【0011】
5.繊維プラスチック複合材料の積層
現代の繊維プラスチック複合材料は、マトリックス(例えば熱硬化性プラスチック、例
えば合成樹脂、稀に熱可塑性プラスチックで作製される)および異なる主な繊維方向を有
する繊維織物、レイド繊維、編地、マット、フリース等のいくつかの重畳された層から構
成される。この点について、特に耐引裂性繊維、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミッ
ク繊維、ポリアラミド繊維、鋼繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊
維等が使用される。手動の積層技術では、繊維は成形体上に配置され、まだ硬化/凝固し
ていないマトリックスに浸漬される。ローラーでプレスすることにより、層は圧縮され、
脱気され、過剰のマトリックスは除去される。この方法は、所望の材料厚が達成されるま
で、層ごとに繰り返される。その上、加工物は正常圧または真空中で、マトリックス材料
が固まるまで熱硬化される。他の自動化可能な積層方法は、樹脂圧送成形(RTM)、高
圧樹脂圧送成形(HP-RTM)および構造反応射出成形(SRIM)である。
【0012】
この場合にも、ロスト型は、キャビティおよびアンダーカットを有する複雑な加工物の
幾可学的形状に使用される。この例は、炭素繊維強化マウンテンバイクハンドルバーであ
り、これはCAVUSプロジェクト(http://www.polyurethane
s.basf.de/pu/solutions/de/content/group/
innovation/concepts/Cavusおよびhttp://www.k
tm-technologies.com/projekte/cavusを参照された
い)の方法に従って製造される。この方法では、複雑な形状を有し内部が空洞の、極めて
軽量であるが高強度のマウンテンバイクハンドルバーを製造することを可能とするために
、砂とバインダーとの混合物で作製されたロスト型および型中子が使用される。そうする
ことで、ロスト型中子は炭素繊維編地チューブで覆われ、HP-RTM方法において20
0barで数分以内に加工され最終の加工物となる。ロスト中子は次に水浴中で除去され
、それにより水溶性バインダーが溶解される。
【0013】
方法(1.~5.)により、ロスト型は、先行技術に従って、低い融解温度を有する金
属もしくは合金から、熱可塑性材料から、またはワックスから、そのように形成される。
これらの材料は、それ自体、またはそれらが加工されるときに、多数の不利益を有する。
【0014】
低融点金属、例えばウッドメタル、ローズメタル等は限られた範囲で再利用可能である
が、それらが含有する重金属、例えば鉛およびカドミウムに起因して毒性である。密度が
比較的高いと、特に型中子の体積が大きい場合には、高重量であるために取り扱いが難し
くなる。重金属を有さず、例えばインジウム、ビスマスおよびスズをベースとする現代の
低融合金は非毒性であるが、これらの価格は桁違いに著しく高い。
【0015】
【表1】
【0016】
表1は、そのような低融合金およびこれらの合金成分のうちいくつかの機械的特性を示
す。純金属である鉛、スズおよびインジウムは、これらが軟性であり、純インジウムはあ
まりにも高価であるため、一般的に型中子材料として好適でない。純ビスマスは著しく硬
性であり、したがって型中子に好適であるが、既に述べたようにこれも非常に高価であり
、さらに比較的脆性であり、比較的容易に破損することがある。上記に列挙した低融合金
は、実際には比較的良好な硬度を示すが、毒性であるか(合金成分Pb、Cd)、または
非常に高価であるか(合金成分In)のいずれかである。ビスマス-スズ合金は、非常に
好適(硬度、引張強度、毒性)であると考えられるが、100~200ユーロ/lの価格
範囲でもある。その上、鉛およびカドミウム、インジウムおよびビスマスは、the I
nstitute for Occupational Safety and Hea
lth of the German Social Accident Insura
nceのGESTISデータベース(http://gestis.itrust.de
)により「the Waste Catalog Ordinance(AVV[Abf
allverzeichnis-Verordnung])による有害廃棄物」としても
分類され、よって、処分費が生じる。当業者に公知のように、上述の金属合金の融解物は
僅かmPa・sの最大粘度を示し、これはロスト型または型中子が融解排出する場合に、
高い密度と共に、狭い断面を有するキャビティからの排出も促進する。それにもかかわら
ず、金属の残渣は回避できないと予測され、これは、様々な形成方法(特に重金属を含有
する合金の場合)で必要とされる幾分高温で加工している間に問題となる金属および金属
酸化物蒸気をもたらすことがあり、最終生成物でも問題となることがある。
【0017】
上述の金属と比較して、例えば熱可塑性材料で作製されたロスト型および型中子は桁違
いに安価であるため、金属と対照的に、単回使用は経済的であろう。好適なプラスチック
材料の密度は、およそ0.9~1.2g/cmの範囲であり(表2を参照されたい)、
よって、金属合金の密度よりも著しく低く、それにより大きな型中子の取り扱いが容易と
なる。
【0018】
【表2】
【0019】
プラスチック材料の引張強度は、金属合金の引張強度よりも高い傾向があり、弾性率は
10の2乗低い値である著しく良好な弾性を示し、これは、上記の方法で成形部材を成形
する間に非等方圧力状態である場合、一方ではロスト型中子のより高い機械的安定性をも
たらすが(構造はせん断力によって容易には断ち切られない)、他方では、加工物の所望
の幾何学的形状からより大きな逸脱が生じることがある。金属のロスト型中子と対照的に
、およそ100~数千Pa・sであるプラスチック融解物(高分子量)の天然の高い粘度
は、前に記載した金属の粘度よりも10の5~6乗高いため(Kunststoff-T
aschenbuch;Oberbach, Saechtling、第28版、Han
ser Munchen 2001年、ISBN 978-3-446-21605-1
)、これらを加工物から除去するための単なる融解および排出は可能ではない。したがっ
て、プラスチックで作製された型中子を完全に除去することを可能とするために、これら
はa.)溶媒中に溶解可能でなければならないか、またはb.)高温で気体の成分へと完
全に分解されるか(例えば炭素含有セラミックもしくは炭化カルシウムを焼結するために
必要とされる保護ガスであるが、炭化が生じるため多くの場合は成功しない)、もしくは
燃焼(空気)されなければならないかのいずれかである。
【0020】
水溶性のプラスチック材料または他のプラスチック材料の有機溶媒中への溶解を経済的
にすることを可能とするために、これは十分速やかに行われなければならず、結果として
生じた溶液の処分費用または再処理費用は、許容可能な限度内に保たれなければならない
。プラスチックポリマーの溶液は粘度も高いため、溶解方法は、予測されるように、特に
機械的に作られた乱流または熱で作られた乱流対流によりもはや加速されない場合には、
比較的遅い。これは、材料がキャビティから溶解および抽出されるときに方向を数回変化
させる必要がある場合にも適用される。製造される工具のキャビティまたはアンダーカッ
ト構造が、例えば深部にある、すなわち表面から大きな距離があるか、または非常に小さ
な断面を有する場合、溶解方法はさらにより拡散律速となり、したがってさらにより遅く
なる。
【0021】
プラスチック型中子の熱分解または燃焼は、加工物がそのために必要とされる温度、持
続期間および雰囲気(酸化、不活性、還元)に耐えられる場合にのみ可能である。それ自
身の分解方法の間に大量の高温ガスが自然と生じ、高温ガスは、そうでなければ結果とし
て生じた圧力により加工物が損傷または破壊されることがあるため、加工物のキャビティ
またはアンダーカットから自由に逃れることが可能でなければならない。熱分解前に形成
されたポリマー融解物の高い粘度に起因して、製造される工具の狭いおよび/もしくは紆
曲した、または複雑なキャビティまたはアンダーカット構造に問題が生じ、ガスがまだ融
解している遮蔽領域からの逃避を妨害または防止される場合、互いに連通する。
【0022】
原則として、プラスチックロスト型中子の熱除去は、通常毒性成分(例えばポリウレタ
ン、多環芳香族、モノマー中のNOx等)を含有する生じた分解ガスの後処理の必要性を
伴う。
【0023】
水溶性ワックス(例えばポリエチレングリコールをベースとする)または非水溶性ワッ
クス(例えばパラフィン)で作製された型中子は、軟性であるため、非常に限定された範
囲で、例えばインベストメント鋳造において、低い圧力で使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、上記の不利益を克服し、様々な方法においてロスト型として使用すること
ができる、組成物を提供することが課題である。これは、型を、良好な機械的安定性、お
よび同時に可能な最良の除去性の両方を示す組成物から製造することができることを意味
する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本課題は、
・成形用組成物の重量に対して少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に
好ましくは少なくとも80%の重量割合の、少なくとも1つの糖成分、および
・少なくとも1つの骨材
を含む成形用組成物により解決される。
【0026】
本課題は、本発明による成形用組成物で作製された、緻密質の三次元構造(compa
ct three-dimensional structure)である成形方法用の
型によっても解決される。これは、本発明による成形用組成物を、型の製造のためにそれ
自体で(さらなる添加剤なしで)使用することができることを意味する。
【0027】
さらなる一態様では、本発明は、加工物を成形するための方法であって、
・少なくとも1つの型を準備するステップ、
・型を成形される材料と接触させるステップ、
・成形される材料を硬化して加工物を得るステップ、
・型を加工物から除去するステップ
を含み、
少なくとも1つの型が本発明による型であり、すなわち本発明による成形用組成物で作
製された緻密質の三次元構造であることを特徴とする、方法に関する。
【0028】
本発明による成形用組成物は、糖成分を、必須の成分として、好ましくは量に関して主
成分として含む。
【0029】
糖成分は、単糖、二糖またはオリゴ糖(糖/サッカライド)、またはそのようなサッカ
ライドから誘導される糖アルコール、糖もしくは糖アルコールの水和物、またはそれらの
混合物であると理解される。糖および糖アルコールは、食品製造分野において甘味料とし
て、または医薬品の製造において例えば圧縮可能なマトリックスまたは他の助剤として長
く公知であり広く使用されている、非常に安価で、非毒性であり、容易に入手可能な物質
である(「Pharmazeutische Hilfsstoffe」;Schmid
t, Lang、2013年、Govi-Verlag Pharmazeutisch
er Verlag GmbH、Eschborn、ISBN 978-3-7741-
1298-8)。
【0030】
糖成分を含む組成物は緻密質の三次元構造として提供することができ、それ自体が様々
な成形方法、例えば加工物を成形するための本発明による方法のための型として好適であ
ることが判明している。本発明による成形用組成物で作製された型は、これらのガラス様
表面、低い多孔性、高い強度、低い密度および良好な展性に起因して、例えばセラミック
加工物の製造において型が成形される材料と接触している場合、三次元の外形の転写に好
適であることが証明されている。型は、糖成分であるために容易に融解排出され、燃え尽
き、または親水性溶媒、例えば水を用いて溶解可能であるため、特に内部に位置する領域
、例えばアンダーカットおよびキャビティを再現するために使用することができる。型は
、よって、好ましくはロスト型として使用される。さらに、糖成分は非常に安価であり、
容易に入手可能であり、非毒性かつ容易に処分可能(商業廃棄物、下水処理場)である。
【0031】
型の構造は、成形用組成物が(冷却された)融解物または圧縮構造として準備される場
合に得られる。成形用組成物は、糖成分を融解し、それを骨材と混合し(またはその逆)
、例えば適切なシリコーン型中へと鋳造することにより成形用組成物を鋳造し、冷却後に
機械的に安定な型を得ることにより、形状化することができる。考えられる他の方法には
、射出成形、3D印刷またはさらには事前に融解しない直接のプレスが挙げられる。これ
らの方法は、食品製造分野(例えばハードキャラメル)または製薬業界で公知である。
【0032】
さらに、本発明による成形用組成物および本発明による型は、少なくとも1つの骨材を
含む。
【0033】
骨材は、成形用組成物で作製された型がさらにより高い機械的強度を有するという驚く
べき効果を有する。特に、糖成分で作製された構造における破損の形成および持続は、比
較的少量の骨材を、糖成分のみで作製された型と比較して展性および他の有利な特性を損
なうことなく添加することにより、減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
糖成分という用語は、本発明によると、単糖、二糖もしくはオリゴ糖(糖またはサッカ
ライドとも同義である)、そのようなサッカライドから誘導される糖アルコール、そのよ
うなサッカライドもしくは糖アルコールの水和物またはそれらの混合物を説明するものと
して理解される。これらの化合物は、炭水化物のサブグループとしてまとめることができ
、これらの一般名中、サッカライドおよびカルボニル基を還元することにより誘導される
糖アルコール(アルジトール)の両方を含む(IUPAC. Compendium o
f Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)、
A.D. McNaughtおよびA. Wilkinson編、Blackwell
Scientific Publications、Oxford(1997年)、XM
Lオンライン修正版:http://goldbook.iupac.org(2006
年~)、M. Nic, J. Jirat、B. Kosata作;改訂版A. Je
nkins編、ISBN 0-9678550-9-8.「carbohydrates
」;doi:10.1351/goldbook.C00820)。
【0035】
接頭辞のオリゴは、二量体と高ポリマーとの間の化合物を表す。典型的に,オリゴマー
構造は、3~10個の繰り返し単位を有し(IUPAC.Compendium of
Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)A.D
. McNaughtおよびA. Wilkinson編、Blackwell Sci
entific Publications、Oxford(1997年)、XMLオン
ライン修正版:http://goldbook.iupac.org(2006年~)
M. Nic、J. Jirat、B. Kosata作;改訂版A. Jenkins
編、ISBN 0-9678550-9-8.、「oligo」doi:10.1351
/goldbook.O04282)、本明細書においても、オリゴ糖という用語は、3
~10個のサッカライド単位で作製された炭水化物を含むことが意図される。糖成分は、
よって、1~10個のサッカライド単位を有する。
【0036】
糖または糖アルコールは、一般式I
(n*a)(n*a*2)+2b-2c(n*a)-c (I)
(式中、
nは1~10、好ましくは1または2であり、
aは4、5または6であり、
bは0または1であり、および
cはn-1またはnである)
の化合物として記載することができる。
【0037】
単糖または単糖から誘導される糖アルコールでは、nは1であり、一方で二糖または二
糖から誘導される糖アルコールでは、nは2である。オリゴ糖では、nは、繰り返し単位
の数に応じて3~10である。
【0038】
各繰り返し単位について、4個の炭素原子(テトロース)、5個の炭素原子(ペントー
ス)および6個の炭素原子(ヘキソース)は変形として含まれ、したがって、aは4、5
または6、好ましくは4または6、さらにより好ましくは6であることができる。糖成分
という用語は、個々の繰り返し単位の炭素原子数の観点から混合された二糖およびオリゴ
糖も含むが、式Iは、繰り返し単位が等しい数の炭素原子を有する糖成分にのみ適用可能
である。
【0039】
二糖およびオリゴ糖では、1つまたは数個の水分子は、縮合の結果として分離する。各
縮合について、分子式はHを2個少なく、Oを1個少なく有し、二糖およびオリゴ糖では
nは1よりも大きく、したがって1より大きいかまたは等しいcの値は、cがn-1に等
しいものとなるため、これは式Iにおいて反映される。この結果として、式Iにおいて、
縮合あたり1個のHO分子の形式的な減算が生じる。
【0040】
シクロデキストリンは、α-1,4-グリコシド結合して環を形成している、6~8個
のグルコース単位を有するオリゴ糖の基である。別の水分子が、環形成の結果として分離
する。環状オリゴ糖の場合では、cはしたがってnである。6個のグルコース単位を有す
るα-シクロデキストリンは分子式C366030を有し、これは環状オリゴ糖が式
Iに対応し、nが6であり、aが6であり、bが0であり、cがnであり6であることを
意味する。
【0041】
糖アルコールは、還元によりそれぞれの糖から誘導され、これは分子式中に水素原子を
2つ追加することにより形式的に表される。式I中、糖アルコールについては、bはした
がって1であり、一方で糖、すなわちケトースまたはアルドースについては、bは0であ
る。
【0042】
加えて、糖成分は、サッカライドまたは糖アルコールまたは一般式Iの化合物の水和物
であることができる。糖、例えばグルコースは、無水形態(無水物)または水和物として
生じる。この観点において、「水和物」という用語は、結晶水を含有する変形、および例
えばアルドースで起こり得るように水が付加反応により結合している有機水和物の両方を
表す。糖成分または式Iの化合物の無水形態が好ましい。
【0043】
少なくとも1つの糖成分は、少なくとも2つのサッカライドもしくは糖アルコール、ま
たは一般式Iの化合物またはこれらの水和物の混合物であることもできる。
【0044】
イソマルトは水素化されたイソマルツロース(Palatinose(登録商標))で
あり、ほぼ等量の6-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトール(GPS、イソ
マルチトール)および1-O-α-d-グルコピラノシル-D-マンニトール(GPM)
からなる。そのため、これは、各々が二糖から誘導される2個の糖アルコールの好ましい
混合物である。
【0045】
混合物は、特に個々の糖成分と比較して低い融点を有する場合、すなわちいわゆる共融
混合物である場合に好ましい。
【0046】
単糖、二糖、オリゴ糖(サッカライド)またはそのようなサッカライドから誘導される
糖アルコール、または一般式Iの化合物は、典型的に、非対称的に置換された炭素原子に
起因して、異なる立体異性体(エナンチオマー)で存在することができる。考えられる全
てのエナンチオマーは、一般名または式により包含されるが、各場合においては天然に生
じるエナンチオマーが好ましい。
【0047】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの糖成分は、スクロース、D-フルクトース
、D-グルコース、D-トレハロース、シクロデキストリン、エリスリトール、イソマル
ト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、キシリトールおよびそれらの混合物か
らなる群から選択される。
【0048】
少なくとも1つの糖成分は、典型的に分解温度範囲および/または融点を有する。分解
温度範囲という用語は、糖成分が化学分解、例えば(強力な)カラメル化を起こして軟化
する温度範囲を説明する。カラメル化中、糖成分の個々の分子の間でも、縮合および重合
および小分子の切断のような異なる反応が起こり、そのため元来の糖成分は崩壊する。糖
成分の熱分解の最終生成物は、酸化条件下ではCOおよび水であり、還元条件下では炭
素である。実際には、分解温度範囲と融点とは区別されないことが多く、文献では、両方
の値は多くの場合、融点としてのmpとして表される。本明細書において、融点は、糖成
分が分解されることなく固体状態から液体またはゲル様状態へと変化する温度範囲として
定義される。本明細書において使用される場合、融点は、結晶性固体状態から液体への転
移、およびガラス状固体状態から液体への転移(ガラス転移温度としても周知)の両方を
含む。よって、糖成分の粘度の変化は、融点で起こる。典型的に、粘度は、糖成分が融点
未満の温度から融点を超える温度に加熱される場合、少なくとも10の1乗低下する。
【0049】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの糖成分は、融点および分解温度範囲を有し
、融点は分解温度範囲未満である。
【0050】
無水形態の多数の糖は、これらの融点未満で既に強力に分解されており、加工中にカラ
メル化する。スクロースは、185~186℃の真の融点を有し、分解は160℃前後で
開始する。D-フルクトース(mp106℃)またはD-グルコース(mp146℃)は
、いずれも融解により加工することができず、したがって糖成分として好ましくない。相
互の共融混合物により、融点を、この問題を解決することができる範囲、例えばスクロー
ス(30wt%)-グルコース(mp137℃)、スクロース(30wt%)-フルクト
ース(mp97℃)、グルコース(27wt%)-フルクトース(mp93.2℃)まで
低下させることができる(J. Appl. Chem.、1967年、17巻、125
頁を参照されたい)。
【0051】
例えばD-トレハロース(mp214~216℃)は、カラメル化することなく融解す
ることができ、284℃でのみ分解し、大半の無水糖アルコール、例えばエリスリトール
(mp122℃)、イソマルト(mp145~150℃)、ラクチトール(mp144~
146℃)、マルチトール(mp148~151℃)、マンニトール(mp165~16
8℃、Td300℃)またはキシリトール(mp93~94.5℃)も、これらの融点を
はるかに超えても熱分解を示さず、よって、本発明による方法により加工することができ
る(「Pharmazeutische Hilfsstoffe」;Schmidt,
Lang、2013年、Govi-Verlag Pharmazeutischer
Verlag GmbH、Eschborn、ISBN 978-3-7741-12
98-8)。
【0052】
特に好ましい糖成分には、したがって、D-トレハロース、イソマルト、エリスリトー
ル、ラクチトール、マンニトールおよびスクロースとD-グルコースとの共融混合物が挙
げられる。
【0053】
好ましい一実施形態では、成形用組成物は吸湿性でないか、または周囲空気の相対湿度
が80%を超えるときにのみ吸湿性である。
【0054】
成形用組成物の吸湿特性、すなわち周囲から水を吸収する特性は、主に糖成分により決
定されるが、適切な場合、骨材により影響を受けることがある。一部の糖または糖アルコ
ールは非常に吸湿性であり、すなわち、これらは周囲空気(RH)の低い相対湿度で既に
吸収する。この特徴は一般的に文献中に説明されているか、または当業者は一般的な方法
によりこれを決定することができる。
【0055】
本発明による用途については、吸湿性の糖成分は、水の吸収を制御できずガラス転移温
度が低下し(https://de.wikipedia.org/wiki/Gord
on-Taylor-Gleichung;「Critical water acti
vity of disaccharide/maltodextrin blends
」;Sillick、Gregson、Carbohydrate Polymers
79巻(2010年)1028~1033頁を参照されたい)、ガラス転移温度が室温未
満に低下する場合、糖または糖アルコールがガラスから塑性変形可能かつゴム状の状態へ
と変化するため、多くの場合あまり好適ではない。結果として、そのような糖成分を含有
する成形用組成物で作製された緻密質の三次元構造の特性は、一部の用途にはあまり好適
でない。型が比較的大きい表面積を有する場合、比較的短時間湿潤空気に曝露されるかも
しくは全く曝露されない場合、および/または適切な場合には用途が耐性を考慮に入れて
いる場合、吸湿特性を有する成形用組成物も好適であり得る。
【0056】
非常に吸湿性の糖または糖アルコールの例として、D-フルクトース、D-ソルビトー
ルおよびD-ラクトース、ならびにそれほどではないにせよ、D-グルコースも言及され
得る。例えば、既に言及した、糖および糖アルコールのスクロース(85%RHから)、
D-トレハロース(92%RHから)、マルチトール(80%RHから)およびキシリト
ール(80%RHから)は、僅かに吸湿性であり、よって好ましい。糖アルコールのエリ
スリトール、ラクチトールおよびマンニトールは、吸湿性でない。吸湿性の糖および/ま
たは糖アルコールと非吸湿性の糖および/または糖アルコールとの混合物(例えば共融混
合物)は、それ自体は吸湿性でなく、したがって好ましいであろう。
【0057】
【表3】
【0058】
さらなる一実施形態では、本発明による成形用組成物は、水、好ましくは成形用組成物
の重量に対して最大10%の重量割合の水をさらに含むことが好ましい。
【0059】
特に型が冷却された融解物から製造される場合、少量の水の成形用組成物への添加は、
弾性特性の有意な改善を既に示し、すなわち、水を有しない対応する成形用組成物で作製
された型と比較して、水を含有する成形用組成物で作製された型は、引掻きの際の衝撃ま
たは破損に対してより良好な耐性を示した(実施例2を参照されたい)。
【0060】
本発明による成形用組成物のさらなる成分は、骨材である。骨材は、好ましくは、成形
用組成物の重量に対して最大20%、好ましくは最大10%の重量割合で含まれる。
【0061】
本発明による成形用組成物について、以下の組成物は、とりわけ、3つの上記の成分の
重量割合について以下のようになる:
糖成分:およそ70%~およそ99%、好ましくはおよそ85%~およそ99%
骨材:およそ1%~およそ20%、好ましくはおよそ1%~およそ10%
水:0%~およそ10%、好ましくはおよそ0%~およそ5%
【0062】
0%の値から開始する重量割合は、この成分が組成物中に含まれない(0%)か、また
はその中に含まれる(>0%)ことを暗示する。%単位の重量割合は、各場合において、
成形用組成物の総質量の重量割合(m/m)として表される。
【0063】
骨材は、粉末もしくは繊維形態、または好ましくは室温で固体として提供される別の形
態、および粒子であることができ、これは例えば、骨材を繊維または粉末として提供する
ことができることを意味する。骨材は、好ましくは<5mmの繊維長または粒径で、例え
ば0.2mm~3mmの長さを有する繊維として、使用される。そのようなサイズでは、
骨材は、成形用組成物中に適切に、すなわち均等に分布することができる。好ましい一実
施形態では、少なくとも1つの骨材は粉末状または繊維状である。
【0064】
骨材は、少量でさえも、本発明による成形用組成物で作製された型の機械的特性に対す
る相当な効果を有する(実施例1Cおよび1Dを参照されたい)。骨材は、とりわけ、ガ
ラス様ボディに典型的な、突然の負荷下での破損または粉砕への感受性を防止する。この
効果が達成される詳細な機序は依然として不明である。糖成分に起因して結晶およびアモ
ルファス領域の両方が構造内に予測されるため、機械的特性は、これらの領域の分布また
は限界に対する影響が原因で、単独で変動することがある。
【0065】
骨材についての様々な材料および型が調査され、広範な材料および型について利益が明
らかとなった(実施例1C~D)。
【0066】
一般的に、特にそのような材料が骨材に十分に好適であり、ここで材料は固体として準
備され、良好な機械的特性(高い圧縮および/または引張強度)を有し、糖成分と相互作
用を行う、例えば静電的相互作用(例えばイオン-双極子相互作用)および/または水素
結合だけでなく、弱い相互作用、例えばファンデルワールス相互作用および疎水性相互作
用も行うことが予測される。
【0067】
骨材が糖成分に不溶であるか、型の製造中に溶解しないことが好ましい。よって、成形
用組成物は好ましくは不均一混合物であり、骨材は、糖成分または糖成分の融解物中に均
等に分布することができるように選択される。
【0068】
この点について、親油性の材料、例えば炭またはポリエチレン、および親水性の材料、
例えばセルロースは、骨材として好適である。対照的に、疎水性および疎油性の両方であ
る材料、例えば全フッ素置換されたポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレンおよび
フッ化ポリビニリデン)は、あまり好適でないことが示されている。そのような材料につ
いては、糖成分との相互作用がないか、または極めて少ないことが予測される。例えば、
好ましくは160°より小さく、より好ましくは120°より小さい、骨材の材料と液化
した糖成分との間の濡れ接触角(wetting angle of contact)
は、妥当な基準として考えることができる。
【0069】
骨材が良好な熱安定性を示すことも好ましい。一実施形態では、骨材は、糖成分よりも
高い融点または熱分解点を有し、これは骨材が融解による型の製造中も固体であり、熱分
解しないことを意味する。
【0070】
骨材として好適な材料は、例えばプラスチック材料に関しては充填剤および/もしくは
補強材料として(例えばDIN EN ISO 1043-2:2012-03 Kun
ststoffe Teil 2:Fullstoffe und Verstarku
ngsstoffeに記載されている)、または繊維複合体(例えばhttps://d
e.wikipedia.org/wiki/Faserverbundwerksto
ffに記載されている)では繊維材料、例えば繊維-プラスチック複合体(例えばhtt
ps://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunstst
off-Verbundに記載されている)として、当業者に公知のものであり得る。
【0071】
公知の充填剤および補強材料は、例えば、アラミド、ホウ素、炭素(結晶、半結晶また
はアモルファス、例えば炭素繊維、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、グラフェ
ン)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、粘土、ガラス、炭酸カルシウム、セルロ
ース、金属、鉱物、有機天然物質、例えば綿、サイザルアサ、アサ、アマ等、雲母、ケイ
酸塩、合成有機物質(例えばポリエチレン、ポリイミド)、熱硬化性材料、滑石、木、白
亜、砂、珪藻土、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、石英、デンプンからな
る群から選択される。
【0072】
公知の線維性骨材は、例えば無機補強繊維(例えば、バサルト繊維、ホウ素繊維、ガラ
ス繊維、セラミック繊維、石英繊維、シリカ繊維)、金属補強繊維(例えば鋼繊維)、有
機補強繊維(例えばアラミド繊維、炭素繊維、PBO繊維、ポリエステル繊維、ナイロン
繊維、ポリエチレン繊維、ポリメチルメタクリレート繊維)、および天然繊維(例えばア
マ繊維、アサ繊維、木繊維、サイザルアサ繊維、綿繊維、ならびにそれらの繊維で作製さ
れ、化学的および/または物理的処理により修正された製品)からなる群から選択される
【0073】
好ましくは、1つのみの骨材、すなわち1つの形態(例えば粉末または繊維)である1
つの材料が、本発明による成形用組成物に使用される。しかし、いくつかの骨材、すなわ
ち、例えば異なる材料および/または異なる形態で作製された骨材を含む成形用組成物も
除外されない。
【0074】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの骨材は、セルロース、炭(炭素)、ガラス
、アラミド、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素およびポリエチレン、好ましくはセルロー
スおよび炭、より好ましくはガラス、セルロースおよび炭素繊維からなる群から選択され
る。
【0075】
本発明による型は、成形方法における使用に好適であり、本発明による成形用組成物で
作製された緻密質の三次元構造である。緻密質の三次元構造という用語は、型が特定の形
状/幾何学的形状の寸法的に安定なボディを形成することを表すことを意図する。このボ
ディは、好ましくは均一に、一貫して成形用組成物から形成される。
【0076】
本発明による型では、成形用組成物の不均一な特徴は、巨視的に、または光学顕微鏡下
でも見ることができる。一実施形態では、これは不均一(2相)構造であり、その中で骨
材が糖成分中に(連続相またはマトリックスとして)分布している分散相として存在する
【0077】
本発明による成形用組成物で作製された構造である本発明による型については、重量割
合は、成形用組成物のものと対応すると予測される。しかし、組成物と型との間の変動も
、自然に生じることがある。例えば、水の割合は、成形用組成物と比較して、型の製造中
に水の蒸発に起因して低減することがあり、よって、型ではより低いことがある。
【0078】
構造を得るために、成形用組成物の成分は準備され、混合され、三次元体へと形成され
る。型を製造するこの方法の最終ステップは、少なくとも2つの異なる方法により達成す
ることができる。
【0079】
成形用組成物は、好ましくは、本発明による型が呈すると想定される三次元体のネガテ
ィブを構成するさらなる三次元鋳造型へと融解物として導入され、冷却される。融解物は
、成形用組成物を、糖成分の融点の範囲の温度に、好ましくは融点を超えて加熱すること
により得られる。液化した成形用組成物は、次に鋳造により成形される。融解物の成形に
ついて、例えばシリコーン型は鋳造型として好適であり、これらの弾性に起因して、後者
が冷却され、よって固体になった直後に、複雑な三次元構造からでさえも除去することが
できる。この場合、構造は冷却された融解物である。糖成分の冷却された融解物は、糖ガ
ラスとも称される。冷却された融解物からの三次元構造を製造するためのそのような方法
は、例えば食品製造分野(例えばハードキャラメルまたはシュガーデコレーションについ
て)で公知であり、本明細書において示されるように、糖成分についてだけでなく、さら
に骨材を含有する成形用組成物についても使用することができる。
【0080】
融解物からなる構造が射出成形または3D印刷を用いて成形用組成物から製造されるさ
らなる修正は、当業者により想到される。
【0081】
代わりに、成形用組成物は、プレスを用いても三次元構造へと成形することができる。
製薬業界では、例えば、圧力を用いて糖成分を緻密質の三次元構造へと形成することがで
きることが公知である。この場合、構造は圧縮構造である。凝集力、粘着力、固体橋(s
olid bridges)または取付結合(form-fitting bond)は
、それぞれ、圧縮構造またはプレスされた材料における凝集と考えられる(Bauer
K.H.、Fromming K.-H.、Fuhrer C. Pharmazeut
ische Technologie、第5版、1997年、Gustav Fisch
er Verlag、332頁「Bindung in Tabletten」)。プレ
スを用いた型の製造は、特に比較的単純な三次元配置を有する型に好ましいであろう。
【0082】
好ましい一実施形態では、本発明による型について、および加工物を成形するための方
法においても、構造は、成形用組成物の融解物または圧縮構造である。
【0083】
加工物を成形するための本発明による方法であって、
・少なくとも1つの本発明による型を準備するステップ、
・型を成形される材料と接触させるステップ、
・成形される材料を硬化して加工物を得るステップ、
・型を加工物から除去するステップ
を含む、方法。
【0084】
一実施形態では、加工物を成形するための方法は、
1.ロスト中子射出成形方法、
2.粉末射出成形方法、
3.プレス方法、
4.積層を用いた繊維-プラスチック複合材料の製造、または
5.インベストメント鋳造のためのセラミックモールドシェルの製造
の過程において使用することができる。
【0085】
既に上記で説明された成形方法の種類(1.~5.)は、基本的に公知である。これら
の方法では、本発明による型は、本発明による成形用組成物で作製された緻密質の三次元
構造であり、公知の型、特に公知のロスト型と置き替えることができる。加工物に関する
実施形態、成形される材料、硬化ステップおよび行われ得る後処理は、それぞれ、先行技
術からある程度明らかとなる。
【0086】
型が接触したときに材料と型との間に緊密な密着を達成し、材料が硬化したときに型の
三次元配置が転写されるように、成形される材料は、型または適切な場合には複数の型と
接触させるために、好ましくは流動性、自由流動性(free-flowing)または
少なくとも塑性変形可能な状態で準備される。
【0087】
本発明による方法では、硬化ステップは、本発明による型が、成形される材料にその外
形を持続的に転写するステップとして考えられる。好ましい実施形態、例えばプレス中お
よび粉末射出成形中では、最初に得た加工物(グリーン体)のさらなる加工のためのさら
なるステップも準備されることがあり、これは硬化ステップとも称される(称することも
できる)が、本発明による硬化ステップと区別される。
【0088】
材料の硬化は、成形方法の種類に応じて、異なる方法で行うことができる。硬化は、好
ましくは機械的または機械的-熱的な様式で生じる。
【0089】
この実施形態では、硬化は、好ましくは型および成形される材料の配列に対して圧力を
かけることにより行われ、これは、例えばプレス方法、特に静水圧プレス方法の過程にお
いて生じるような、型が材料と接触するときに作製される。硬化が圧力により行われる場
合、成形用組成物の有利な機械的特性は、特に重要な役割を果たす。
【0090】
成形方法、例えばロスト中子射出成形方法、粉末射出成形方法または積層を用いた繊維
-プラスチック複合材料の製造のための方法では、成形される材料(ポリマー塊、供給原
料または層に塗布されるマトリックス材料)は、多くの場合、塑性状態で型と接触するよ
うに、昇温で準備される。硬化は、次に冷却によっても(すなわち機械的-熱的様式で)
行われる。熱硬化の場合では、当業者は、好ましくは、糖成分が材料との接触の確立中に
使用される温度よりも有意には低くない分解温度範囲および/または融点を有する、本発
明による型が使用されることに留意するであろう。
【0091】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、型の構造は、型が除去される場合に破壊
される。
【0092】
この実施形態では、少なくとも1つの本発明による型は、本発明による成形用組成物で
作製された緻密質の三次元構造であり、よって、いわゆるロスト型である。材料への転写
が行われた後、これは少なくともその三次元配置、形状または幾何学的形状、すなわち構
造を失う。任意選択で、成形用組成物の成分も、破壊中に分解される。方法の少なくとも
1つの型は、成形用組成物の必須のまたは主な成分である糖成分に起因して、様々な加工
ステップにより除去することができる。
【0093】
型は、好ましくは
成形用組成物を親水性の溶媒、好ましくは水で溶解するステップ、
糖成分を加熱により融解し、適切な場合には成形用組成物を流し捨てるステップ、
糖成分を、加熱により、および適切な場合には成形用組成物の型ばらし(shakin
g out)により、分解(気化)するステップ、
またはこれらの手段の組合せ
により除去される。
【0094】
全ての場合で、型の構造は破壊され、成形用組成物は骨材とともに除去することができ
る。溶解および融解が好ましく、これにより型は液体状態で除去される。感熱性である加
工物では、この場合には昇温を適用する必要がないため、溶解が好ましい。他方では、融
解による型の除去は、さらなる加工物の加工がどのような方法であれ熱処理を伴う場合、
有利であり得る。セラミックおよび金属の加工物について、さらなる熱硬化ステップ(焼
結)が、最初の硬化、すなわちグリーン体の製造後に多くの場合提供され、硬化ステップ
は、本発明による方法において加工物からの型の除去を伴うことがある。糖成分の分解は
、通常、融解と比較してより高い温度を必要とし、したがってあまり好ましくないが、融
解により完全に除去されなかった可能性のある残渣の除去に適切に適用することができる
。分解中、成形用組成物は少なくとも部分的に気体状態で除去され、すなわち、この方法
では、特にアクセスが困難であるキャビティからの除去も同様に可能である。
【0095】
本発明による方法では、少なくとも1つの本発明による型は、好ましくは内部に位置す
る型として使用される。内部に位置する型は、型中子または支持構造とも称され、成形さ
れる加工物の内部の生成物の幾何学的形状を形成する。
【0096】
この実施形態では、外部の型を加えて使用することができ、これは好ましくは本発明に
よる型とは異なる材料からなる。外部の型は、複数部の設計、例えば分割された永久鋳型
も有することができる。さらなる型が使用される方法の実施において、型が材料と接触す
るときに配列が形成され、ここで好ましくは型の外表面全体の80%を超える主要な部分
が成形される材料と接触する。したがって、本発明による型は、材料と接触させるステッ
プ中に少なくとも部分的に材料により封入される。これは、成形される加工物中のキャビ
ティの原型を形成し、一方で追加の外部の型は、成形される加工物のネガティブな外部の
原型を構成する。
【0097】
実験を以下に示し、これは本発明による組成物を例示し、および/または本発明を理解
するために有益である。実施形態は例示的なものであることが理解される。
【0098】
図面は、加工物を成形するための方法の段階を詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】側面視で、2つの型、すなわち内部に位置する型および外部の型を示す図である。
図2】断面において、硬化前に成形される材料と接触している型(A)、硬化後(B)および外部の型を除去し後硬化(post-hardening)した後(C)、ならびに加工物からの型の完全な除去(D)を示す図である。
図3】側面視で、成形された加工物を示す図である。
【実施例0100】
型の製造および特性決定
A.型(試験棒)の製造
2つの異なる種類の糖を、試験測定に使用した。一方では市販のイソマルト(「Iso
malt ST-M」Beneo GmbH)、他方ではスクロース(「Wiener
Feinkristallzucker」、Agrana Zucker GmbH)と
グルコース(「Dextropur」、Dextro Energy GmbH & C
o. KG)の混合物を使用した。
【0101】
Isomalt ST-Mにおよそ2.5wt%の水を含有させ、融解方法中に含水量
が一定に保たれるように、閉じられたアルミニウム容器中、終夜155℃で溶解した。ス
クロース/グルコース混合物を、62wt%のスクロース、14wt%のグルコースおよ
び24wt%の水の比で、水と混合した(「煎糖」として公知である)。糖混合物を、加
熱可能な実験用マグネティックスターラー上のビーカー(1000ml、ローフォーム)
中、激しい撹拌下で(相当な量の水を蒸発させて)最大150℃の温度に加熱し、次に結
果として生じた融解物を直後にさらに加工した。そのように得られた融解物は、典型的に
2~3wt%の水を含有する。
【0102】
これらの2つの糖融解物(「Isomalt ST-M」およびスクロース/グルコー
ス)をベースとして、4.7cm×2.5cm×1.0cm(触覚試験(haptic
test))および7.0cm×3.8cm×3.5cm(強度および変形の係数(mo
dulus of deformability)の測定)の寸法を有する試験棒を、市
販のシリコーン型をネガティブ型として使用して、次に順次製造した。
【0103】
B.骨材を有しない型の特性決定
特にIsomalt ST-Mは鋳造および冷却後に非常に脆性であり、そのため試験
体は明らかに非常に高い強度を有した(手による破壊は不可能である)が、鋭利な物体を
用いた表面の引掻きまたは一点に集中した損傷後、試験体は非常に容易に壊れることがあ
り、さらに、硬質な物体(例えばスクリュードライバー)を用いた短時間かつ急速な打撃
後、試験体はガラスのように無数の破片へと粉砕されることが判明した。この点について
、Isomalt ST-Mで作製された試験体は、説明されたようなこれらの特性に関
して非常に強力な変動を示すことが観察され、これは熱負荷を示す可能性がある。
【0104】
したがって、これらの負荷を焼戻しにより除去することを次に試みた。この目的のため
に、差異を強調するために、製造された試験体を1つは周囲条件下(室温)で冷却し、1
つは40℃(24時間)に保ち、1つは冷蔵庫(4℃、24時間)中で硬化した。別々に
製造された試験体の硬度を、触覚(手による破壊、表面の引掻きおよび手による破壊、急
速な打撃)により評価した。しかし、試験体の焼戻しは、明らかに、調査された試験体の
硬度および脆性、ならびにこれらの特性の変動に対する良い影響を有しなかった。
【0105】
さらなる試験シリーズでは、Isomalt ST-Mを閉じた容器中で融解し、それ
ぞれ5wt%または10wt%の含水量を得るために水と混合した。さらに、0wt%の
含水量を得るために、Isomalt ST-Mを開いた容器中で融解した。異なる種類
のIsomalt ST-M(0、2.5、5、10wt%の水)とともに試験体を製造
し、今度は、続いてこれらの硬度について触覚により評価した。より高い含水量(それぞ
れ5wt%または10wt%)を有する試験体は、標準のIsomalt ST-Mより
も有意に軟性であり、明らかにもはや脆性ではなかったが、残念なことに、手により比較
的容易に変形または破壊されることがあるため、いずれももはや十分に強固ではなかった
。水を有しない試験体は、衝撃または機械的負荷に非常に感受性であり、これは脆性の増
大を示唆する。
【0106】
スクロース/グルコース混合物を用いたさらなる類似の試験シリーズでは、Isoma
lt ST-Mと同じ効果または傾向が観察された。
【0107】
さらに、Isomalt ST-Mで作製された試験体を扱い保存する場合、スクロー
ス/グルコース混合物と比較して、吸湿性に関して有意な差異を決定することができた。
実際には、前者は無視できるほどの吸水傾向を示した一方、スクロース/グルコース試験
体では大気開放中での接触直後に短時間のうちに粘性結持力が観察され、粘性結持力が数
時間以内に試験体の表面に進行性の可塑化をもたらすため、これらは使用不可能となった
。実際には、スクロース/グルコースで作製された型は、したがって、特に気湿が増大し
た場合には、すぐに加工されるか、または保存のために気密の方法で包装されなければな
らないであろう。
【0108】
C.骨材とともに成形用組成物で作製された型の触覚的な規格
試験シリーズでは、様々な骨材(表4)を、(上記のような)Isomalt ST-
Mおよびスクロース-グルコースをマトリックス(糖成分)として用いて調査した。
【0109】
【表4】
【0110】
成形用組成物の製造のために、適切な量のIsomalt ST-Mを上記のように融
解し、適切な量の骨材を準備し、ガラス棒を用いてビーカー中に慎重に均等に分布させた
。骨材の量は最大10wt%に制限されたが、いくつかの骨材のみが、より少ない量で糖
マトリックス中に均等に分布することができた。
【0111】
材料の早期の硬化を防止するために、製造された混合物を速やかに適切なシリコーン型
へと注ぎ、小さな試験棒(4.7cm×2.5cm×1cm)を製造した。試験棒の機械
的特性を、上記の方法と類似して触覚(手による破壊、表面の引掻きおよび手による破壊
、急速な打撃)により評価し、糖成分単独で作製された対応する型の特性と比較した(表
5)。
【0112】
【表5】
【0113】
D.骨材とともに成形用組成物で作製された型の機械的な規格
より大きな試験棒(7.0cm×3.8cm×3.5cm)を、触覚試験において添加
剤を有しない糖マトリックスと比較してより良好に機能したいくつかの候補から製造した
。圧縮強度、曲げ強度および変形の係数を、記載した通りにこれらの各々について測定し
た。Form & Test Prufsystemeからの試験システムを、圧縮強度
の決定のために使用した(www.formtest.de)。原型:DigiMaxx
C-20、DIN EN 993-5(1998年)により、最大ピストンストローク
15mm、最大力 600kN、および供給圧力1MPa/s。測定のために、以下の寸
法:7cm×3.8cm×3.5cmを有する試験棒を鋳造した。
【0114】
曲げ強度または変形の係数の決定のために、最大500kNの測定用セルを有するMe
ssphysik(www.messphysik.com、Model Midi 5
)からの曲げ強度機器を使用した。この場合、操作は0.15MPa/sの供給圧力(D
IN EN 993-6、1995年による)を用いて実施された。変形係数(def-
modulus)(変形の係数とも)は、弾性率に関連し、弾性率のように、膨張または
変形に関する負荷の一次導関数である。この点について、変形の係数はεBr/2での曲
線の領域における回帰直線を確立することにより決定され、εBrは破壊時に生じる変形
である。
【0115】
対応する測定の結果を、下記の表6に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
純粋な糖成分だけでなく糖成分および水で作製された成形用組成物とも比較して、圧縮
強度は、全ての調査された骨材および糖成分で増大することが観察された。本発明による
成形用組成物は、したがって、高い圧縮強度が必要とされる方法により好適である。
【0118】
曲げ強度は、イソマルトで作製された型について非常に高いばらつきを示し、これは型
内での機械的負荷を示す。骨材を用いると、曲げ強度に対する定量的効果が全ての材料に
ついて達成されずとも、異なる測定間で変動が減少することが判明した。曲げ強度のより
良好な再現性により、結果として、型の機械的特性が骨材を有しないものと比較して最適
化される。いくつかの成形用組成物(セルロースおよび粉末状の炭素繊維を有する)で曲
げ強度が達成され、これは金属低融合金の引張強度の大きさに相当する(表1と比較され
たい)。
【0119】
骨材の添加は、糖成分に応じて、変形の係数に対する異なる効果を示す。イソマルトに
ついては、変形の係数は低減する傾向があり、すなわち弾性が増大するが、この場合にも
特に変動の減少が達成される。スクロース/グルコースについては、骨材(10wt%の
セルロース)は反対の効果を有する。しかし両方の場合では、骨材を用いて達成された変
形の係数は、ロスト型として使用されるプラスチック材料について特定された弾性率と同
じ桁の規模である(表2と比較されたい)。
【実施例0120】
セラミック加工物を成形するための方法
工業用セラミックスは、多くの場合静水圧プレスを使用して製造される(上記の項目3
も参照されたい)。本発明による型は、そのような方法において、セラミックプレス部分
中の内部に位置する型として使用され、これは図面を参照して本明細書においてさらに詳
細に説明される。
【0121】
第1に(図1)、本発明による型1を、糖成分としてのイソマルトSTMおよび骨材と
しての炭素繊維(研磨された炭素繊維)を伴う融解およびシリコーン型への鋳造により、
実施例1に記載されているように成形用組成物から製造した。成形用組成物を160℃に
制御し(5時間)、簡便な実験用ミキサーで撹拌し、新しいシリコーン型(20×15×
120mm)へと注ぎ出した。融解物の冷却の際、高強度かつ堅固な鋳造物、すなわち棒
状の型1が生じた。加えて、外部のゴム型2を準備し、この中に本発明による型を中心に
配置した。
【0122】
第2のステップ(図2A)では、セラミック顆粒材料3を成形される材料として外部の
型に注ぎ入れ、それにより図2Bによる配列を作製した。外部の型を、端まで充填した。
セラミック顆粒材料は、樹脂バインダーを有するアルミナグラファイトをベースとした。
【0123】
ゴム型を相補形のゴム型で閉じ、耐水性のシートで包んだ。配列を、360barの水
圧を用いてプレスした。
【0124】
ゴム型2は、その柔軟性に起因して容易に除去することができた。プレス方法の後、セ
ラミック塊3は、型のいかなる可視的な変形もなく、型1を封入する(図2B)。
【0125】
型2を除去するために、配列を硬化オーブン中で240℃に加熱し、そうすることで成
形用組成物4が、成形が不完全である加工物3から流出し、型2が失われる。残渣は水に
溶解することができるか、またはそれに続く焼成後にのみ溶解することができる。
【0126】
焼成では、生成物は還元条件下で1000℃に加熱され、これに続いて硬化が起こる。
そうすることで、全ての残渣が大部分蒸発し、少量の灰のみが生成物5中に残存する(図
2D)。これらは、ウォータージェットを用いて容易に除去することができる。
【0127】
最終生成物5(図3も参照されたい)は、この技術を用いて、内部が様々な複雑性を有
する幾何学的形状となると推測することができる。結果として生じたキャビティの僅かな
収縮は、融解性工具の変形よりもむしろ、使用されたセラミック材料の収縮に起因する。
したがって、収縮は、正確な幾何学的形状を達成するために、最終の幾何学的形状を計画
するときに考慮されることがある。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・成形用組成物の重量に対して少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも80%の重量割合の、少なくとも1つの糖成分、および
・少なくとも1つの骨材
を含む、成形用組成物。