(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160916
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】複合正極材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20241108BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241108BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023163963
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】112116679
(32)【優先日】2023-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】何定徳
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA09
5H050CB12
5H050EA11
5H050EA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造過程が簡単且つ迅速であり、正極材料の性能を効果的に向上させることができる複合正極材料の製造方法を提供する。
【解決手段】Ni
xMn
y(OH)
2またはNi
xMn
yO(x+y=1)であるニッケルマンガン化合物材料を提供するステップ(a)と、固体電解質材料を提供し、機械的混合方式によって、前記ニッケルマンガン化合物材料と前記固体電解質材料とを混合して複合材料を形成し、前記ニッケルマンガン化合物材料に対する前記固体電解質材料の重量パーセントが0.2wt.%~1.0wt.%である、ステップ(b)と、Li源を提供し、前記Li源と前記複合材料とを混合し、焼結して前記複合正極材料を形成し、前記複合正極材料は、コア層と被覆層とを備え、前記コア層は、LiNi
2xMn
2yO
4で構成され、前記被覆層は前記固体電解質材料で構成される、ステップ(c)とを含む、複合正極材料の製造方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合正極材料の製造方法であって、
ニッケルマンガン化合物材料を提供し、前記ニッケルマンガン化合物材料は、NixMny(OH)2またはNixMnyOであり、x+y=1である、ステップ(a)と、
固体電解質材料を提供し、機械的混合方式によって、前記ニッケルマンガン化合物材料と前記固体電解質材料とを混合して複合材料を形成し、前記ニッケルマンガン化合物材料に対する前記固体電解質材料の重量パーセントが0.2 wt.%~1.0 wt.%である、ステップ(b)と、
リチウム源を提供し、前記リチウム源と前記複合材料とを混合し、焼結して前記複合正極材料を形成し、前記複合正極材料は、コア層と被覆層とを備え、前記コア層は、LiNi2xMn2yO4で構成され、前記被覆層は前記コア層を覆い、前記被覆層は前記固体電解質材料で構成される、ステップ(c)とを含む、ことを特徴とする複合正極材料の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケルマンガン化合物材料は、Ni0.25Mn0.75(OH)2であり、前記ステップ(b)において、前記機械的方式によって混合した後に、第1熱処理過程を行い、前記第1熱処理過程の温度範囲は、300℃~850℃であり、前記第1熱処理過程の処理時間は、5時間~7時間であり、前記第1熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項3】
前記ニッケルマンガン化合物材料は、Ni0.25Mn0.75Oであり、前記ステップ(a)は、予備酸化過程を含み、前記予備酸化過程の温度範囲は、300℃~850℃であり、前記予備酸化過程の処理時間は、5時間~7時間であり、前記予備酸化過程の昇温速度は、2.5℃/分である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、前記機械的方式によって混合した後に、第1熱処理過程を行い、前記第1熱処理過程の温度範囲は、300℃~750℃であり、前記第1熱処理過程の処理時間は、5時間~7時間であり、前記第1熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である、ことを特徴とする請求項3に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)において、前記機械的方式によって前記ニッケルマンガン化合物材料と前記固体電解質とを混合する過程は、回転速度700 rpmで5分間混合し、回転速度1400 rpmで5分間混合し、回転速度2100 rpmで5分間混合し、回転速度2800 rpmで10分間混合し、回転速度3500rpmで10分間混合することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)において、前記機械的方式によって前記ニッケルマンガン化合物材料と前記固体電解質とを混合する動作温度は、25 ℃~45 ℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項7】
前記固体電解質の化学式は、Li1+zAlzTi2-z(PO4)3であり、zは、z≦2である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項8】
前記機械的方式は、機械融合法を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)において、機械的方式によって前記リチウム源と前記複合材料とを混合する過程は、回転速度700 rpmで5分間混合し、回転速度1400 rpmで30分間混合することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)は、第2熱処理過程を含み、前記第2熱処理過程の温度範囲は、300℃~710℃であり、前記第2熱処理過程の処理時間は、24時間~30時間であり、前記第2熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(c)において、前記複合材料中の前記ニッケルマンガン化合物材料と前記リチウム源とのモル比は1:1.02である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項12】
前記重量パーセントは、0.2 wt.%~0.3 wt.%である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【請求項13】
前記ニッケルマンガン化合物材料の平均粒子径は、10 μm~20 μmであり、前記固体電解質材料の平均粒子径は、1 μm~5 μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の複合正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極材料に関し、具体的に、複合正極材料の製造方法、特に、乾式機械混合法を用いて前駆体と固体電解質とを処理し、正極材料を形成する同時に、固体電解質の表面被覆が完了する方法に関する。この方法は、製造過程が簡単且つ迅速であり、正極材料の性能を効果的に向上させることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動運送手段(例えば、電気自動車)およびそのエネルギー貯蔵機器に対する性能の要求はますます高まっており、それらに使用される二次電池にも高い性能が求められている。多くの電池種類の中でも、リチウムマンガンニッケル酸化物/スピネル(LiMn1.5Ni0.5O4,LMNO)は、高電圧(5V)で充電できる正極材料として知られている。高電位により、リチウムマンガンニッケル酸化物/スピネル材料は、コバルト酸化リチウムやリン酸鉄リチウムと比較してエネルギー密度が高くなり、高エネルギーおよび高レートの用途には、LMNOベースの電池が広く使用できる。
【0003】
しかしながら、LMNOの容量は、高電圧下での電解質の分解の影響を受け、電容量、レート性能、サイクル寿命の低下などの問題を容易に引き起こす可能性がある。そのため、LMNOの表面改質は、重要な課題となっている。また、LMNOを固体電解質と組み合わせて使用する従来の方法では、LMNO材料上に固体電解質を被覆してLMNO表面の微細構造を改善するのが一般的であり、これにより、LMNO表面にイオン伝導と導電性を付与できる骨格表面が形成でき、高電圧でのサイクル性能が良くない問題を効果的に緩和でき、LMNOの導電特性を改善することができた。しかし、従来の固体電解質へのLMNO被覆は、複雑な手順が必要であり、また、固体電解質の被覆に、LMNOの性能が損なわれるおそれもある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来技術が直面する問題を解決するために、複合正極材料の製造方法を提供する。具体的に、乾式機械混合法により前駆体と固体電解質とを処理し、正極材料を形成する同時に、固体電解質の表面被覆が完了する。これによって、製造過程が簡単且つ迅速であり、正極材料の性能を効果的に向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複合正極材料の製造方法を提供することである。具体的に、乾式機械融合法(Mechanofusion method)の混合方式により、前駆体と固体電解質とを処理し、正極材料を形成する同時に、固体電解質の表面被覆が完了する。これによって、製造過程が簡単且つ迅速であり、正極材料の性能を効果的に向上させることができる。ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOにリン酸リチウムアルミニウムチタン(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3,LATP)固体電解質を被覆することについて、本発明は、乾式機械混合方式を用いて、Ni0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oのニッケルマンガン化合物材料と固体電解質材料とを先に混合し、その後、リチウム源を添加して混合し、焼結処理を行い、コア層と被覆層とを備えた複合正極材料を形成する。内部のコア層はLiNi0.5Mn1.5O4で構成され、外部の被覆層は、固体電解質材料で構成されている。リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)固体電解質は本来の優れるイオン伝導特性を備えているため、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)がニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの表面を被覆して複合正極材料を形成すると、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのレート性能およびサイクル性能を向上させるのに役を立ち、また、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)被覆層は、電解液による材料表面への損傷の影響を遅らせる保護機能も提供することができる。さらに、最適な固体電解質被覆効果を得るために、Ni0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oなどのニッケルマンガン化合物材料に対する固体電解質材料の重量パーセントは、0.2 wt.%~1.0 wt.%に制御され、好ましくは、0.2 wt.%~0.3 wt.%に制御される。すなわち、本発明では、少量のリン酸リチウムアルミニウムチタンLATP固体電解質を添加するだけで、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのレート性能を向上させた被覆層を形成することができ、製造コストをさらに低減することができる。
【0006】
本発明のもう一つ目的は、複合正極材料の製造方法を提供することである。リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOに直接被覆するよりも、本発明は、例えば、機械融合法(Mechanofusion method)の機械的方式によって、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの前処理材料内に混合してニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを形成しているので、Mn3+の生成がさらに減少され、Mn3+が正極材料から溶出し、負極で還元および堆積してサイクル電気的劣化を引き起こすのを防ぐことができる。混合過程の動作温度は、例えば、25 ℃~45 ℃であり、回転速度700 rpm~3500 rpmで5分間~30分間段階的に行われる。リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)と前処理材料との混合方式、動作温度、回転速度および時間を制御することによって、高温または粒子間の過度の摩擦による固体電解質被覆層の構造欠陥を防止し、同時に、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOがLATP固体電解質の被覆層により低インピーダンスと良好な充放電性能を発揮することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、ニッケルマンガン化合物材料を提供し、前記ニッケルマンガン化合物材料は、NixMny(OH)2またはNixMnyOであり、x+y=1である、ステップ(a)と、固体電解質材料を提供し、機械的混合方式によって、前記ニッケルマンガン化合物材料と前記固体電解質材料とを混合して複合材料を形成し、前記ニッケルマンガン化合物材料に対する前記固体電解質材料の重量パーセントが0.2 wt.%~1.0 wt.%である、ステップ(b)と、リチウム源を提供し、前記リチウム源と前記複合材料とを混合し、焼結して前記複合正極材料を形成し、前記複合正極材料は、コア層と被覆層とを備え、前記コア層は、LiNi2xMn2yO4で構成され、前記被覆層は前記コア層を覆い、前記被覆層は前記固体電解質材料で構成される、ステップ(c)とを含む、複合正極材料の製造方法を提供する。
好ましくは、ニッケルマンガン化合物材料は、Ni0.25Mn0.75(OH)2であり、ステップ(b)において、機械的方式によって混合した後に、第1熱処理過程を行い、第1熱処理過程の温度範囲は、300℃~850℃であり、第1熱処理過程の処理時間は、5時間~7時間であり、第1熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である。
好ましくは、ニッケルマンガン化合物材料は、Ni0.25Mn0.75Oであり、ステップ(a)は、予備酸化過程を含み、予備酸化過程の温度範囲は、300℃~850℃であり、予備酸化過程の処理時間は、5時間~7時間であり、予備酸化過程の昇温速度は、2.5℃/分である。
好ましくは、ステップ(b)において、機械的方式によって混合した後に、第1熱処理過程を行い、第1熱処理過程の温度範囲は、300℃~750℃であり、第1熱処理過程の処理時間は、5時間~7時間であり、第1熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である。
好ましくは、ステップ(b)において、機械的方式によってニッケルマンガン化合物材料と固体電解質とを混合する過程は、回転速度700 rpmで5分間混合し、回転速度1400 rpmで5分間混合し、回転速度2100 rpmで5分間混合し、回転速度2800 rpmで10分間混合し、回転速度3500rpmで10分間混合することを含む。
好ましくは、ステップ(b)において、機械的方式によってニッケルマンガン化合物材料と固体電解質とを混合する動作温度は、25 ℃~45 ℃である。
好ましくは、固体電解質の化学式は、Li1+zAlzTi2-z(PO4)3であり、zは、z≦2である。
好ましくは、機械的方式は、機械融合法を含む。
好ましくは、ステップ(c)において、機械的方式によってリチウム源と複合材料とを混合する過程は、回転速度700 rpmで5分間混合し、回転速度1400 rpmで30分間混合することを含む。
好ましくは、ステップ(c)は、第2熱処理過程を含み、第2熱処理過程の温度範囲は、300℃~710℃であり、第2熱処理過程の処理時間は、24時間~30時間であり、第2熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である。
好ましくは、ステップ(c)において、複合材料中のニッケルマンガン化合物材料とリチウム源とのモル比は1:1.02である。
好ましくは、重量パーセントは、0.2 wt.%~0.3 wt.%である。
好ましくは、ニッケルマンガン化合物材料の平均粒子径は、10 μm~20 μmであり、固体電解質材料の平均粒子径は、1 μm~5 μmである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態における正極材料の構造概念図である。
【
図2A】本発明のNi
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料のSEM画像である。
【
図2B】本発明のNi
0.25Mn
0.75Oのニッケルマンガン化合物材料のSEM画像である。
【
図2C】本発明のリン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)のSEM画像である。
【
図3】本発明の第1実施形態の複合正極材料の製造方法のフローチャートである。
【
図4】
図4において、4A~4Dは、第1比較例の正極材料のSEM画像である。
【
図5】
図5において、5A~5Dは、本発明の第1実施例の正極材料のSEM画像である。
【
図6】
図6において、6A~6Dは、本発明の第2実施例の正極材料のSEM画像である。
【
図7】
図7において、7A~7Dは、本発明の第3実施例の正極材料のSEM画像である。
【
図8】第1比較例、本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施例の電位-電容量充放電曲線図である。
【
図9】第1比較例、本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施例の電容量維持率-サイクル数放電曲線図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の複合正極材料の製造方法のフローチャートである。
【
図11】
図11において、11A~11Dは、本発明の第4実施例の正極材料のSEM画像である。
【
図12】
図12において、12A~12Dは、本発明の第5実施例の正極材料のSEM画像である。
【
図13】
図13において、13A~13Dは、本発明の第6実施例の正極材料のSEM画像である。
【
図14】第1比較例、本発明の第4実施例、第5実施例、および第6実施例の電位-電容量充放電曲線図である。
【
図15】第1比較例、本発明の第4実施例、第5実施例、および第6実施例の電容量維持率-サイクル数放電曲線図である。
【
図16】第2比較例、第3比較例、本発明の第1実施例、および第4実施例の電位-電容量充放電曲線図である。
【
図17】第3比較例、本発明の第1実施例、および第4実施例の電容量維持率-サイクル数放電曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特徴及び利点を具体化するいくつかの典型的な実施形態は、以下の内容において詳細に説明する。本発明は、範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、以下の説明及び図面は、本発明を説明するために使用されており、本発明を限定するためのものではない。また、本発明の詳細な説明において、第1特徴が第2特徴の上又は上方に配置されることとは、配置された前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されている実施形態と、前記第1特徴と前記第2特徴との間に他の構造を介し前記第1特徴と前記第2特徴が直接に接続されていない実施形態とを含む。また、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、特許請求の範囲に記載された異なる構成を説明するために使用されており、これらの構成は当該用語に限定されず、実施形態に関する内容では、該当構成は異なる符号で表示さているが、第1構成は第2構成と表示され、また、第2構成は第1構成と表示されることも可能であり、本発明の実施形態から逸脱しない。また、「及び/又は」という用語は、一つおよび複数の関連要素またはその全部の組合せを意味する。「およそ・約」という用語は、当業者によって一般に受け入れられる標準誤差範囲内の平均値を指す。操作/動作に関する実施形態において明確に定義しない限り、本明細書に記載されているすべての数値範囲、量、数値およびパーセントなど(例えば、角度、維持時間、温度、操作条件、割合及びそれに相当するパーセントなど)はいずれも、すべての実施形態において用語の「約」または「実質的に」に理解すべきである。また、内容に記載されない限り、本発明及び特許請求の範囲の数値はいずれも、必要に応じて変化しえる近似値に取ることができる。例えば、各パラメーターは、少なくとも記載されている有効桁数に照らして、通常の丸めの原則を適用して解釈しても良い。また、本明細書での数値範囲は、一方の端点から他方の端点まで、または2つの端点の間の範囲として表することができる。本明細書に記載されているすべての範囲は、特に定義されていない限り、端点を含むことを留意されたい。
【0010】
図1は、本発明の実施形態における複合正極材料の構造概念図である。本実施形態では、複合正極材料1は、コア層10と、コア層10を覆う被覆層20とを備える。コア層10は、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOで構成され、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの組成は、LiNi
0.5Mn
1.5O
4である。被覆層20は、リン酸リチウムアルミニウムチタン(Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3,LATP)で構成される。本実施形態では、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOは、コバルト元素を含まない高電圧正極材料であり、比較的に高い酸化還元電位およびエネルギー密度を有する。複合正極材料1は、液体電解質30中で使用することができ、Li
+イオン11は、固体電解質で形成された被覆層20を通過して、内部のコア層10のニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOにインターカレーションまたはデインターカレーション(intercalation/deintercalation)することができる。なお、本発明の複合正極材料1は、例えば機械融合法(Mechanofusion method)の機械的な方法により、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの前処理材料内に混合してニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを形成することで、複合正極材料1が形成されている。前処理材料は、例えば、Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2またはNi
0.25Mn
0.75Oのニッケルマンガン化合物材料であり、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOは、被覆過程に直接使用されない。
図2Aは、本発明のNi
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料のSEM画像である。
図2Bは、本発明のNi
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料のSEM画像である。
図2Cは、本発明のリン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)のSEM画像である。もちろん、本発明の複合正極材料1に使用されるコア層10とコア層10を覆う被覆層20の種類、組成比、材料特性は実際の用途の要件に応じて調整することができ、これらに限定されるものではない。以下、乾式機械融合法(Mechanofusion method)の混合方式で前駆体および固体電解質を処理する本発明の複合正極材料1の製造方法について説明する。
【0011】
図3は、本発明の第1実施形態における複合正極材料の製造方法のフローチャートである。本実施形態では、まず、ニッケルマンガン化合物材料を提供し、ここで、前記ニッケルマンガン化合物材料がNi
0.25Mn
0.75(OH)
2である(ステップS01)。Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料の平均粒子径は、10 μm~20 μmであり、例えば、12.90 μmであり、表面積0.6 m
2/gである。次に、リン酸リチウムアルミニウムチタンLATP固体電解質材料を提供し、固体電解質材料の平均粒子径は、1 μm~5 μmであり、例えば、1.79 μmである。Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料とLATP固体電解質材料とを機械的方式で混合し、複合材料を形成する(ステップS02)。Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントは、0.2 wt.%~1.0 wt.%である。本実施形態では、機械的方式とは、乾式機械融合法(Mechanofusion method)を指す。ステップS02では、機械的方式でニッケルマンガン化合物材料と固体電解質とを混合することは、回転速度700 rpmで5分間混合し、回転速度1400 rpmで5分間混合し、回転速度2100 rpmで5分間混合し、回転速度2800 rpmで10分間混合し、回転速度3500rpmで10分間混合することを含む。機械的方式によりニッケルマンガン化合物材料と固体電解質とを混合する動作温度は、25 ℃~45 ℃である。前記機械的方式による混合の後、第1熱処理過程を行う(ステップS03)。第1熱処理温度は、300℃~850℃であり、第1熱処理過程の処理時間は、5時間~7時間であり、第1熱処理過程の昇温速度は2.5℃/分である。
【0012】
次に、ステップS04に示すように、例えば、水酸化リチウムなどのリチウム源を提供(用意)し、リチウム源と前記複合材料を混合し、焼結して複合正極材料を形成する。前記複合材料中のNi
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料は、リチウム源に対して、モル比が1:1.02である。ステップS04の焼結は、第2熱処理過程であり、第2熱処理過程の温度範囲が300℃~710℃であり、第2熱処理過程の処理時間が24時間~30時間であり、第2熱処理過程の昇温速度2.5℃/分である。複合正極材料1は、
図1に示すように、コア層10と被覆層20とを備え、前記コア層10は、LiNi
0.5Mn
1.5O
4で構成され、被覆層20がコア層10覆い、被覆層20は、LATP固体電解質材料で構成される。
【0013】
なお、本実施形態では、最適な固体電解質被覆効果を得るために、Ni0.25Mn0.75(OH)2ニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントの範囲は、0.2 wt.%~1.0 wt.%に制御されている。
【0014】
図4A~
図4Dは、第1比較例のSEM画像である。第1比較例では、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNO(LiNi
0.5Mn
1.5O
4)は、LATP固体電解質で被覆されない。
【0015】
図5A~
図5Dは、本発明の第1実施例の複合正極材料のSEM画像である。第1実施例では、Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントが0.2 wt.%であり、且つ前記ステップS01~S04によって複合正極材料が製造された。
【0016】
図6A~
図6Dは、本発明の第2実施例の複合正極材料のSEM画像である。第2実施例では、Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントが0.5 wt.%であり、且つ前記ステップS01~S04によって複合正極材料が製造された。
【0017】
図7A~
図7Dは、本発明の第3実施例の複合正極材料のSEM画像である。第3実施例では、Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントが1.0 wt.%であり、且つ前記ステップS01~S04によって複合正極材料が製造された。
【0018】
図8は、第1比較例、本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施例の電位-電容量充放電曲線図である。これは、第1比較例、本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施例のそれぞれで製造されたボタン電池を0.1C充放電レート(C-rate)で測定したものである。ボタン電池の正極電極シートは、正極材料、導電剤およびバインダーは94:4:2の比率で構成され、負極電極シートがリチウム金属である。ボタン電池の電解液には、1.15 Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、エチレンカーボネート(Ethylene carbonate, EC)、ジエチルカーボネート(Diethyl carbonate, DEC)、エチルメチルカーボネート(Ethyl Methyl Carbonate, EMC)および5 wt%のフルオロエチレンカーボネート(Fluoroethylene carbonate, FEC)が含まれる。0.1C第1サイクルおよび第2サイクル充放電容量の結果は、表1に示されている。また、表1では、第1比較例、本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施例のサンプルが0.2で充電し、1C/2C/3C/5Cで放電した後の性能結果も示されている。
図8および表1に示すように、本発明の第1実施例、第2実施例、第3実施例は、いずれも、電容量性能およびレート性能が第1比較例の電容量性能およびレート性能よりも優れる。これによって、本発明は、乾式機械混合方式によって、Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2ニッケルマンガン化合物材料とLATP固体電解質材料とを混合した後、リチウム源を添加し、さらに、混合および焼結処理を行い、コア層と被覆層とを備える複合正極材料を得ることができ、これは、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの電容量性能およびレート性能を向上させるのに役立つことが分かる。
【表1】
【0019】
図9は、第1比較例、本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施例の電容量維持率-サイクル数放電曲線図である。これは、第1比較例、本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施で製造されたボタン電池を1C充放電レート(C-rate)で測定したものである。
図9に示すように、本発明の第1実施例~第3実施例の電容量維持率は、いずれも第1比較例の電容量維持率よりも優れている。これによって、本発明の製造方法で形成された複合正極材料を使用すると、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのサイクル性能が改善でき、サイクル寿命を延ばすことができる。
【0020】
図10は、本発明の第2実施形態における複合正極材料の製造方法のフローチャートである。本実施形態では、まず、ニッケルマンガン化合物材料を提供し、前記ニッケルマンガン化合物材料は、Ni
0.25Mn
0.75Oである(ステップS01')。本実施形態では、Ni
0.25Mn
0.75Oは、Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2を予備酸化処理することで形成している。ステップS00'に示すように、Ni
0.25Mn
0.75(OH)
2を取得し、予備酸化過程を行い、Ni
0.25Mn
0.75O。Ni
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料を得ることができ、そのNi
0.25Mn
0.75O。Ni
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料の平均粒子径は、10 μm~20 μmであり、例えば、13.96 μmであり、表面積が20.49 m
2/gである。予備酸化過程の温度範囲は、300℃~850℃であり、予備酸化過程の処理時間は、5時間~7時間であり、予備酸化過程の昇温速度が2.5℃/分である。なお、別の実施形態では、Ni
0.25Mn
0.75Oは、他の処理過程によって得られてもよく、本発明はこれに限定されない。次に、ステップS02'に示すように、リン酸リチウムアルミニウムチタンLATP固体電解質材料を提供し、Ni
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料およびLATP固体電解質材料を、乾式機械融合法(Mechanofusion method)により混合して、複合材料を形成する。Ni
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントは、0.2 wt.%~1.0 wt.%である。ステップS02'において、機械的方式によってニッケルマンガン化合物材料と固体電解質とを混合するのは、回転速度700 rpmで5分間混合し、回転速度1400 rpmで5分間混合し、回転速度2100 rpmで5分間混合し、回転速度2800 rpmで10分間混合し、回転速度3500rpmで10分間混合することを含む。機械的方式によってニッケルマンガン化合物材料と固体電解質とを混合する動作温度は、25 ℃~45 ℃である。前記機械的方式による混合後、第1熱処理過程を行う(ステップS03')。第1熱処理過程の温度範囲は、300℃~750℃であり、第1熱処理過程の処理時間は、5時間~7時間であり、第1熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である。
【0021】
次に、ステップS04'に示すように、例えば、水酸化リチウムなどのリチウム源を提供し、リチウム源と前記複合材料とを混合し、焼結して複合正極材料を形成する。前記複合材料中のNi
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料は、リチウム源に対し、モル比が1:1.02である。ステップS04'での焼結は、第2熱処理過程であり、第2熱処理過程の温度範囲は、300℃~710℃であり、第2熱処理過程の処理時間は、24時間~30時間であり、第2熱処理過程の昇温速度は、2.5℃/分である。複合正極材料1は、
図1に示すように、コア層10と、被覆層20とを備え、前記コア層10は、LiNi
0.5Mn
1.5O
4で構成され、被覆層20は、コア層10を覆い、被覆層20は、LATP固体電解質材料で構成される。
【0022】
なお、本実施形態では、最適な固体電解質被覆効果を得るために、Ni0.25Mn0.75Oニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントの範囲は、0.2 wt.%~1.0 wt.%に制御されている。
【0023】
図11A~
図11Dは、本発明の第4実施例の複合正極材料のSEM画像である。第4実施例では、Ni
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材の重量パーセントは0.2 wt.%であり、且つ前記ステップS01'~S04'によって複合正極材料が製造された。
【0024】
図12A~
図12Dは、本発明の第5実施例の複合正極材料のSEM画像である。第5実施例では、Ni
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントは0.3 wt.%であり、且つ前記ステップS01'~S04'によって複合正極材料が製造された。
【0025】
図13A~
図13Dは、本発明の第6実施例の複合正極材料のSEM画像である。第6実施例では、Ni
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントは0.5 wt.%であり、且つ前記ステップS01'~S04'によって複合正極材料が製造された。
【0026】
図14は、第1比較例、本発明の第4実施例、第5実施例、および第6実施例の電位-電容量充放電曲線図である。これは、第1比較例、本発明の第4実施例、第5実施例、および第6実施例で製造されたボタン電池を、0.1C充放電レート(C-rate)で測定したものである。ボタン電池の正極電極シートは、正極材料、導電剤、およびバインダーが94:4:2の比で構成され、負極電極シートは、リチウム金属である。ボタン電池の電解液は、1.15 Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、エチレンカーボネート(Ethylene carbonate, EC)、ジエチルカーボネート(Diethyl carbonate, DEC)、エチルメチルカーボネート(Ethyl Methyl Carbonate, EMC)、および5 wt%のフルオロエチレンカーボネート(Fluoroethylene carbonate, FEC)を含む。0.1C第1サイクルおよび第2サイクル充放電容量の結果は、表2に示されている。また、表2では、第1比較例、本発明の第4実施例、第5実施例、第6実施例のサンプルが0.2充電し、1C/2C/3C/5C放電した後のレート性能結果も示されている。
図14および表2に示すように、本発明の第4実施例、第5実施例、第6実施例の電容量性能およびレート性能はいずれも第1比較例の電容量性能およびレート性能よりも優れる。これによって、本発明のように、乾式機械混合方式を利用してNi
0.25Mn
0.75Oニッケルマンガン化合物材料とLATP固体電解質材料とを混合した後、リチウム源を添加して混合し、さらに、焼結を行うことで、コア層と被覆層とを備える複合正極材料を形成することができ、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの電容量性能およびレート性能を向上させることができる。
【表2】
【0027】
図15は、第1比較例、本発明の第4実施例、第5実施例、および第6実施例の室温1Cサイクル寿命曲線図である。これは、第1比較例、本発明の第4実施例、第5実施例、および第6実施例で製造されたボタン電池を、1C充放電レート(C-rate)で測定したものである。
図15に示すように、本発明の第4実施例~第6実施例の電容量維持率はいずれも第1比較例の電容量維持率よりも優れる。これによって、本発明の製造方法によって形成された複合正極材料を使用すると、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのサイクル性能を向上でき、サイクル寿命を延ばすことができる。
【0028】
以上のように、本発明は、LATP固体電解質材料がNi0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oなどのニッケルマンガン化合物材料に対する重量パーセントの範囲を0.2 wt.%~1.0 wt.%に制御することによって、優れる被覆効果を有する複合正極材料を得ることができる。そのうち、Ni0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oなどのニッケルマンガン化合物材料に対するLATP固体電解質材料の重量パーセントを0.2 wt.%~0.3 wt.%にするのがより好ましい。換言すれば、本発明は、少量のリン酸リチウムアルミニウムチタンLATP固体電解質を添加することだけで、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのレート性能を向上させた被覆層を形成することができ、製造コストをさらに削減し、最適な固体電解質被覆効果を得ることができる。一方で、本発明の複合正極材料は、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの前処理材料内に混合してニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを形成している。前処理材料は、例えば、Ni0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oのニッケルマンガン化合物材料であり、被覆過程では、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを直接使用していない。
【0029】
第2比較例では、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを取得し、0.2 wt.% LATP固体電解質材料を添加し、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの平均粒子径は約15.13μmであり、表面積が0.31 m2/gである。第2比較例は、同様の混合方法を用いて、LATP固体電解質材料をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの表面に被覆することによって得ることができる。
【0030】
第3比較例では、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを取得し、0.2 wt.% LATP固体電解質材料を添加し、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの平均粒子径は約15.13μmであり、表面積が0.31 m2/gである。第3比較例は、同様の混合方法を用いて、LATP固体電解質材料をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの表面に被覆し、さらに焼結処理を行うことで得ることができる。
【0031】
図16は、第2比較例、第3比較例、本発明の第1実施例、および第4実施例の電位-電容量充放電曲線図である。これは、第2比較例、第3比較例、本発明の第1実施例、および第4実施例で製造されたボタン電池を0.1C充放電レート(C-rate)で測定したものである。0.1C第1サイクルおよび第2サイクル充放電容量の結果は、表3に示されている。また、表3では、第2比較例、第3比較例、本発明の第1実施例、および第4実施例のサンプルが0.2充電し、1C/2C/3C/5C放電した後のレート性能結果も示されている。
図16および表3に示すように、本発明の第1実施例、第4実施例の電容量性能およびレート性能はいずれも第2比較例および第3比較例の電容量性能およびレート性能よりも優れる。これによって、本発明のように、乾式機械混合方式を利用してニッケルマンガン化合物材料とLATP固体電解質材料とを混合した後、リチウム源を添加して混合し、焼結処理を行って製造された複合正極材料を使用すると、LATP固体電解質材料をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOに直接被覆して得られた電容量性能およびレート性能より優れる。
【表3】
【0032】
図17は、第3比較例、本発明の第1実施例、および第4実施例の室温1Cサイクル寿命曲線図である。これは、第3比較例、本発明の第1実施例、および第4実施例で製造されたボタン電池を1C充放電レート(C-rate)で測定したものである。
図17に示すように、本発明の第1実施例および第4実施例の電容量維持率は、いずれも第3比較例の電容量維持率より優れる。また、200サイクル後のサイクル寿命については、本発明の第1実施例および第4実施例は、第3比較例に対して10%増加した。これによって、本発明のように、例えば、機械融合法(Mechanofusion method)の機械的方式によってリン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの前処理材料内に混合して、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを形成する方法では、Mn
3+の生成を減少させ、Mn
3+が正極材料から溶出し、負極で還元および堆積してサイクル電気的劣化を引き起こすのを防ぐことができる。
【0033】
なお、本発明は、乾式機械融合法(Mechanofusion method)の混合方式を利用し、ニッケルマンガン化合物材料と固体電解質とを混合し、リチウムマンガン酸化物正極材料LMNOの熱処理と同時に固体電解質の表面被覆を完了する。これによって、製造過程が簡単で且つ迅速であり、得られた複合正極材料は正極材料の性能を確実に向上させることができ、且つリチウムマンガン酸化物正極材料LMNOに固体電解質を直接被覆することよりも優れている。また、最適な固体電解質被覆効果を得るために、本発明は、少量のリン酸リチウムアルミニウムチタンLATP固体電解質を添加するだけで、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのレート性能を向上させた被覆層を形成することができ、製造コストをさらに削減することができる。リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)と前処理材料との混合方式、動作温度、回転速度および時間を制御することによって、高温または粒子間の過度の摩擦による固体電解質被覆層の構造欠陥を防止し、同時に、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOがLATP固体電解質の被覆層により低インピーダンスと良好な充放電性能を発揮することができる。もちろん、Ni0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oのニッケルマンガン化合物材料、リン酸リチウムアルミニウムチタン(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、LATP)固体電解質、およびニッケルマンガン酸リチウム正極材料(LiNi0.5Mn1.5O4,LMNO)の組成は、実際の需要に応じて調整することができる。例えば、NixMny(OH)2またはNixMnyOニッケルマンガン化合物材料をLi1+zAlzTi2-z(PO4)3固体電解質に混合し(ここで、x+y=1、z≦2である)、その後、リチウム源を添加して混合し、焼結処理を行うことでも、リン酸リチウムアルミニウムチタン(Li1+zAlzTi2-z(PO4)3)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LiNi2xMn2yO4表面に被覆した複合正極材料を得ることができる。その詳細をここで省略する。
【0034】
以上のように、本発明は、複合正極材料の製造方法を提供しており、乾式機械融合法(Mechanofusion method)の混合方式を利用して、前駆体と固体電解質とを処理し、正極材料を形成する同時に、固体電解質の表面被覆が完了することができる。これによって、製造過程が簡単且つ迅速であり、正極材料の性能を効果的に向上させることができる。ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOにリン酸リチウムアルミニウムチタン(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3,LATP)固体電解質を被覆することについて、本発明は、乾式機械混合方式を使用しており、Ni0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oのニッケルマンガン化合物材料と固体電解質材料とを先に混合し、その後、リチウム源を添加して混合し、焼結処理を行うことで、コア層と被覆層とを備えた複合正極材料を形成することができる。内部のコア層は、LiNi0.5Mn1.5O4で構成され、外部の被覆層は、固体電解質材料で構成される。リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)固体電解質が本来の優れるイオン伝導特性を備えているため、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)がニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの表面を被覆して複合正極材料を形成すると、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのレート性能およびサイクル性能を向上させるのに役を立ち、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)被覆層は、電解液による材料表面への損傷の影響を遅らせる保護機能も提供することができる。また、最適な固体電解質被覆効果を得るために、固体電解質材料は、Ni0.25Mn0.75(OH)2またはNi0.25Mn0.75Oなどのニッケルマンガン化合物材料に対する重量パーセントの範囲を0.2 wt.%~1.0 wt.%に制御し、さらに、0.2 wt.%~0.3 wt.%に制御するのがより好ましい。すなわち、本発明では、少量のリン酸リチウムアルミニウムチタンLATP固体電解質を添加するだけで、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOのレート性能を向上させた被覆層を形成することができ、製造コストをさらに低減することができる。リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOに直接被覆するよりも、本発明は、例えば、機械融合法(Mechanofusion method)の機械的方式によって、リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)をニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOの前処理材料内に混合してニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOを形成しているので、Mn3+の生成がさらに減少し、Mn3+が正極材料から溶出し、負極で還元および堆積してサイクル電気的劣化を引き起こすのを防ぐことができる。混合過程の動作温度は、例えば、25 ℃~45 ℃であり、回転速度700 rpm~3500 rpmで5分間~30分間段階的に行われる。リン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)と前処理材料との混合方式、動作温度、回転速度および時間を制御することによって、高温または粒子間の過度の摩擦による固体電解質被覆層の構造欠陥を防止し、同時に、ニッケルマンガン酸リチウム正極材料LMNOがLATP固体電解質の被覆層により低インピーダンスと良好な充放電性能を発揮することができる。
【0035】
本発明は、当該技術分野における技術者によって様々な方法で修正または変更することができるが、その修正および変更はいずれも本発明の技術的思想から逸脱しなく本発明の特許請求の範囲に含まれている。
【符号の説明】
【0036】
1:複合正極材料
10:コア層
11:Li+イオン
20:被覆層
30:電解質
S01~S04、S00'~S04':ステップ
【外国語明細書】