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特開2024-160920未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法、データ処理装置、及び測位装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160920
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法、データ処理装置、及び測位装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20241108BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184711
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2023-0056839
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】518357128
【氏名又は名称】イファ ユニバーシティ-インダストリー コラボレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】EWHA UNIVERSITY - INDUSTRY COLLABORATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】52, Ewhayeodae-gil Seodaemun-gu Seoul 03760, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヒョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ジニ
(72)【発明者】
【氏名】ユ, イェウォン
(72)【発明者】
【氏名】カン, ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジウォン
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC18
(57)【要約】
【課題】未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法を提供する。
【解決手段】本発明の未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法は、データ処理装置がサービス領域に対する参照ポイントの位置及び多数のAP(access point)の位置の入力を受けるステップと、前記データ処理装置が前記APのそれぞれに対して参照ポイントの位置及びAPの位置を基準に特徴ベクトルを抽出するステップと、前記データ処理装置が前記APのそれぞれに対して事前に学習された生成モデルに、当該APに対して抽出した特徴ベクトルを条件として入力し、前記任意のノイズを入力して、前記APのそれぞれに対するフィンガープリントマップを生成するステップと、前記データ処理装置が前記APに対して生成したフィンガープリントマップを結合して前記サービス領域に対する最終のフィンガープリントマップを生成するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置がサービス領域に対する参照ポイントの位置及び複数のAP(access point)の位置の入力を受けるステップと、
前記データ処理装置が前記APのそれぞれに対して参照ポイントの位置及びAPの位置を基準に特徴ベクトルを抽出するステップと、
前記データ処理装置が前記APのそれぞれに対して事前に学習された生成モデルに、当該APに対して抽出した特徴ベクトルを条件として入力し、前記任意のノイズを入力して、前記APのそれぞれに対するフィンガープリントマップを生成するステップと、
前記データ処理装置が前記APに対して生成したフィンガープリントマップを結合して前記サービス領域に対する最終のフィンガープリントマップを生成するステップと、を含む、未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法。
【請求項2】
前記生成モデルは条件付きGAN(conditional Generative Adversarial Networks)又はAC-GAN(Auxiliary Classifier GAN)である、請求項1に記載の未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法。
【請求項3】
前記APのうちのいずれかのAPに対する前記特徴ベクトルは、前記参照ポイントのそれぞれで1つの参照ポイントと前記いずれかのAPとの距離、及び前記1つの参照ポイントと前記いずれかのAPとがなす角度を含む、請求項1に記載の未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法。
【請求項4】
データ処理装置がサービス領域に対する参照ポイントの位置及びAP(access point)の位置の入力を受けるステップと、
前記データ処理装置が前記参照ポイントのそれぞれから前記APまでの距離、及び前記参照ポイントのそれぞれと前記APとがなす角度を抽出するステップと、
前記データ処理装置が事前に学習された生成モデルに任意のノイズを入力し、前記参照ポイントにおける前記距離及び前記角度を条件として入力して前記サービス領域に対するフィンガープリントマップを生成するステップと、を含み、
前記生成モデルは、特定領域のフィンガープリントマップ及び前記特定領域の参照ポイントにおけるAPを基準に抽出した特徴ベクトルを条件として入力され、前記特定領域に対するフィンガープリントマップを生成するように学習されたモデルである、未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法。
【請求項5】
サービス領域に対する参照ポイントの位置及びAP(access point)の位置の入力を受ける入力装置と、
特定領域のフィンガープリントマップ及び前記特定領域の参照ポイントにおけるAPを基準に抽出した特徴ベクトルを条件として入力され、前記特定領域に対するフィンガープリントマップを生成するように学習された生成モデルを記憶する記憶装置と、
前記サービス領域に対する前記参照ポイントのそれぞれから前記APまでの距離、及び 前記参照ポイントのそれぞれと前記APとがなす角度を抽出して前記生成モデルに対する条件として入力し、任意のノイズを前記生成モデルに入力して前記サービス領域に対するフィンガープリントマップを生成する演算装置と、を含む、未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成するデータ処理装置。
【請求項6】
前記特徴ベクトルは、前記特定領域の前記参照ポイントそれぞれに対する一つの参照ポイントと前記特定領域の前記APとの距離、及び前記一つの参照ポイントと前記特定領域の前記APとがなす角度を含む、請求項5に記載の未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成するデータ処理装置。
【請求項7】
前記生成モデルは条件付きGAN(conditional Generative Adversarial Networks)又はAC-GAN(Auxiliary Classifier GAN)である、請求項5に記載の未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成するデータ処理装置。
【請求項8】
現在位置でAP(access point)の無線信号を受信する通信装置と、
仮想のフィンガープリントマップを記憶する記憶装置と、
前記仮想のフィンガープリントマップを参照して前記APの無線信号の強さを基準に現在位置を推定する演算装置と、を含み、
前記仮想のフィンガープリントマップは、特定領域のフィンガープリントマップ及び前記特定領域の参照ポイントにおけるAPを基準に抽出した特徴ベクトルを条件として入力され、前記特定領域に対するフィンガープリントマップを生成するように学習された生成モデルが生成したものである、仮想のフィンガープリントマップを用いる測位装置。
【請求項9】
前記特徴ベクトルは、前記特定領域の前記参照ポイントそれぞれに対する一つの参照ポイントと前記特定領域の前記APとの距離、及び前記一つの参照ポイントと前記特定領域の前記APとがなす角度を含む、請求項8に記載の仮想のフィンガープリントマップを用いる測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明する技術は、自動的にフィンガープリントマップを生成する技法に関する。
【0002】
本出願は、2023年度の政府(科学技術情報通信部)の財源で、韓国研究財団(No. NRF-2021R1A2B5B01002906)と情報通信企画評価院(No. RS-2022-00155966、人工知能融合革新人財養成(梨花女子大学校)の支援を受けて行われた研究結果である。
【背景技術】
【0003】
屋内測位は、屋内のように衛星航法システムの信号を受信し難い領域での測位を意味する。屋内測位は、無線信号を用いる方式、例えばWi-FiやBluetooth(登録商標)などが代表的である。さらに、無線信号ベースの屋内測位は、フィンガープリント(fingerprint)技術が代表的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィンガープリントベースの屋内測位は、事前にサービス領域から無線信号を収集してフィンガープリントマップを構築しなければならない。フィンガープリントベースの屋内測位は、フィンガープリントマップの構築に多くの時間と費用がかかるという欠点がある。
【0005】
以下に説明する技術は、生成モデル(generative model)を用いてフィンガープリントマップを自動的に構築しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成する方法は、データ処理装置がサービス領域に対する参照ポイントの位置及び多数のAP(access point)の位置の入力を受けるステップと、前記データ処理装置が前記APのそれぞれに対して参照ポイントの位置及びAPの位置を基準に特徴ベクトルを抽出するステップと、前記データ処理装置が前記APのそれぞれに対して事前に学習された生成モデルに、当該APに対して抽出した特徴ベクトルを条件として入力し、前記任意のノイズを入力して、前記APのそれぞれに対するフィンガープリントマップを生成するステップと、前記データ処理装置が前記APに対して生成したフィンガープリントマップを結合して前記サービス領域に対する最終のフィンガープリントマップを生成するステップと、を含む。
【0007】
未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成するデータ処理装置は、サービス領域に対する参照ポイントの位置及びAPの位置の入力を受ける入力装置と、特定領域のフィンガープリントマップ及び前記特定領域の参照ポイントにおけるAPを基準に抽出した特徴ベクトルを条件として入力され、前記特定領域に対するフィンガープリントマップを生成するように学習された生成モデルを記憶する記憶装置と、前記サービス領域に対する前記参照ポイントのそれぞれから前記APまでの距離、及び前記参照ポイントのそれぞれと前記APとがなす角度を抽出して前記生成モデルに対する条件として入力し、任意のノイズを前記生成モデルに入力して前記サービス領域に対するフィンガープリントマップを生成する演算装置と、を含む。
【0008】
仮想のフィンガープリントマップを用いる測位装置は、現在位置でAPの無線信号を受信する通信装置と、仮想のフィンガープリントマップを記憶する記憶装置と、前記仮想のフィンガープリントマップを参照して前記APの無線信号の強さを基準に現在位置を推定する演算装置と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
以下に説明する技術は、無線信号収集過程なしに、サービス領域に配置されたAP(access point)位置のみを用いて自動的にフィンガープリントマップを構築することができる。したがって、以下に説明する技術は、フィンガープリントベースの測位技法に汎用性を付与して屋内測位サービスの普遍化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フィンガープリントベースの測位システムの例である。
図2】生成モデルを構築する概略的な過程の例である。
図3】生成モデルの具体的な学習過程の例である。
図4】データ処理装置が生成モデルを用いてフィンガープリントマップを生成する過程の例である。
図5】未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成するデータ処理装置の例である。
図6】仮想のフィンガープリントマップを用いる測位装置に対する例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する技術は、様々な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるので、特定の実施形態を図面に例示し、詳細に説明する。ところが、これは、以下に説明する技術を特定の実施形態に対して限定するものではなく、以下に説明する技術の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物又は代替物を含むものと理解されるべきである。
【0012】
「第1」、「第2」、「A」、「B」などの用語は、様々な構成要素の説明に使用できるが、当該構成要素は、これらの用語によって限定されず、只一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、以下に説明する技術の権利範囲から逸脱することなく、第1の構成要素は第2の構成要素と命名でき、同様に、第2の構成要素も第1の構成要素と命名できる。「及び/又は」という用語は、複数の関連する記載項目の組み合わせ、又は複数の関連する記載項目のいずれかを含む。
【0013】
本明細書で使用される用語における単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味で解釈されない限り、複数の表現を含むものと理解されるべきであり、「含む」などの用語は、説明された特徴、個数、ステップ、動作、構成要素、部分品又はこれらの組み合わせが存在することを意味するものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴又は個数、ステップ、動作、構成要素、部分品又はこれらの組み合わせの存在又は付加可能性を排除しないものと理解されるべきである。
【0014】
図面についての詳細な説明をする前に、本明細書における構成部に対する区分は、各構成部が担当する主機能別に区分したものに過ぎないことを明確にしようとする。すなわち、以下に説明する二つ以上の構成部が一つの構成部にまとめられるか、或いは一つの構成部がより細分化された機能別に二つ以上に分化されて備えられてもよい。そして、以下に説明する構成部のそれぞれは、自身が担当する主機能以外にも、他の構成部が担当する機能の一部又は全部を追加的に行ってもよく、構成部それぞれが担当する主機能の一部は、他の構成部によって専担されて行われてもよい。
【0015】
また、方法又は動作方法を行う際に、前記方法をなす各過程は、文脈上明らかに特定の順序を記載しない限り、明記された順序とは異なる順に行われてもよい。すなわち、各過程は、明記された順序と同一に行われてもよく、実質的に同時に行われてもよく、逆の順に行われてもよい。
【0016】
以下に説明する技術は、サービス領域で測位のためのフィンガープリントマップを生成する技法である。
【0017】
サービス領域は、衛星航法信号が受信され難い領域を意味する。よって、以下のサービス領域は、屋内領域を含む意味で使用する。
【0018】
以下に説明する技術は、生成モデルを用いてフィンガープリントマップを生成する。
【0019】
生成モデルは、様々な類型のモデルが研究されている。例えば、生成モデルは、オートエンコーダ、GAN(Generative Adversarial Networks)、拡散モデル(diffusion model)などがある。以下に説明するが、研究者は、GANベースのモデルを用いた。よって、以下の説明は、GANモデルを中心に説明する。ただし、フィンガープリントマップを生成するためのモデルは、様々な類型の生成モデルのいずれかが用いられることもある。
【0020】
以下、学習装置が学習データを用いて生成モデルを構築すると説明する。学習装置は、データ処理及びモデル学習が可能な装置である。学習装置は、学習データの構築も可能である。例えば、学習装置は、PC、ネットワーク上のサーバ、スマート機器、専用プログラムが組み込まれたチップセットなどで実現できる。
【0021】
以下、データ処理装置が生成モデルを用いてフィンガープリントマップを生成すると説明する。例えば、データ処理装置は、PC、ネットワーク上のサーバ、スマート機器、専用プログラムが組み込まれたチップセットなどで実現できる。
【0022】
以下の説明において、無線信号は、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)などの様々な類型の信号のいずれかであり得る。サービス領域で端末が無線信号を受信する。端末は、スマート機器、モバイル機器、ウェアラブル機器、ロボットなどの様々な類型の装置のいずれかであってもよい。
【0023】
以下、測位装置が生成されたフィンガープリントマップを用いてサービス領域で測位を行うと説明する。測位装置は、前記端末やサーバなどの装置であってもよい。
【0024】
図1は、フィンガープリントベースの測位システム100の例である。
【0025】
サービス領域Sは、実際3次元空間であるが、フィンガープリントマップは、一般に2次元平面における情報で構成される。サービス領域Sは、一定の座標系を基準に当該領域(参照ポイントの位置を含む)及びAP(access point)の位置が定義できる。APは、サービス領域でWi-Fiなどの無線信号を送信する装置である。
【0026】
図1の(A)は、データ処理装置50がフィンガープリントマップを生成する過程を示す。データ処理装置50は、AP位置情報から一定のベクトル情報を抽出する。データ処理装置50は、事前に構築された生成モデルに任意のノイズとベクトル情報を入力して、サービス領域Sに対するフィンガープリントマップMを生成する。フィンガープリントマップは、一般に、グリッドマップの形で方形の区間ごとに無線信号の強さ情報を保有する。生成モデル構築過程及び具体的なフィンガープリントマップ生成過程は、後述する。
【0027】
図1において、(B)及び(C)は、測位装置がフィンガープリントマップを用いてサービス領域で測位を行う過程を示す。
【0028】
スマート機器などの測位装置110は、フィンガープリントマップを参照してサービス領域Sの現在位置でAPから受信する無線信号の強さを基準に自分の現在位置を推定することができる。
【0029】
端末80は、サービス領域Sの現在位置でAPから受信する無線信号の強さを収集する。端末80は、無線信号の強さ情報を別途の測位装置120に伝達する。コンピュータ装置又はサーバなどの測位装置120は、フィンガープリントマップを参照して、サービス領域Sの現在位置でAPから受信する無線信号の強さを基準に端末80の現在位置を推定することができる。測位装置120は、測位結果を端末80に送信することができる。
【0030】
図2は、生成モデルを構築する概略的な過程200の例である。学習装置が生成モデルを構築すると説明する。学習装置は、フィンガープリントのデータ処理及び生成モデルの学習過程を制御するコンピュータ装置に該当する。
【0031】
学習装置は、事前に生成されたフィンガープリントマップを収集する(210)。モデル構築過程に用いるフィンガープリントマップを学習用フィンガープリントマップと命名する。学習用フィンガープリントマップは、従来の方式に従って手動にて特定領域で収集された無線信号の強さを基準に生成できる。学習用フィンガープリントマップは、公開データベース(DB)から抽出することもできる。
【0032】
学習装置は、学習用フィンガープリントマップから無線信号特徴ベクトルを抽出する(220)。無線信号特徴ベクトルは、生成モデルの学習過程で追加情報(条件、condition)として使用される。
【0033】
学習装置が無線信号特徴ベクトルを抽出する過程について説明する。学習装置は、学習用フィンガープリントマップからAPごとに無線信号特徴ベクトルを抽出する。
【0034】
学習用フィンガープリントマップは、サービス領域の参照ポイント(又はデータポイント)のそれぞれで受信される無線信号の強さを記憶する。学習用フィンガープリントマップは、一般的に、グリッドマップの形態で方形の区間ごとに無線信号の強さ情報を保有する。下記の数式1は、サービス領域のi番目の参照ポイント(reference point)におけるフィンガープリントX(i)を示す。
【0035】
【数1】
【0036】
X(i)はi番目の参照ポイントにおけるフィンガープリントである。sは、i番目の参照ポイントでj番目のAP(jはAPのインデックス)から受信される無線信号の強さである。Napは、サービス領域に位置するAPの個数である。Ndataは、サービス領域における参照ポイントの個数である。
【0037】
学習装置は、APごとに無線信号特徴ベクトルを抽出することができる。学習装置は、下記の数式2の如く、フィンガープリントマップにおけるAPそれぞれの特徴ベクトルを定義することができる。X(i)は、i番目の参照ポイントにおけるAPjから受信される無線信号の強さを意味する。
【0038】
【数2】
【0039】
研究者は、サービス領域で参照ポイントを基準に(i)APまでの距離及び(ii)APとの角度を特徴値として抽出した。すなわち、無線信号特徴ベクトルは、参照ポイントごとに(距離値、角度)として定義できる。学習装置は、特定座標系基準サービス領域で、事前に知られているAPの位置を基準に無線信号特徴ベクトルを抽出することができる。研究者は、参照ポイントとAPとの方位角(平面における角度)を前記特徴値として用いた。
【0040】
或いは、学習装置は、経路損失モデル(log-distance path loss model)のように広く知られている無線信号伝搬モデルを用いて、特定ポイントにおける無線信号の強さを基準に特定ポイントとAPとの距離を推定することができる。
【0041】
学習装置は、フィンガープリントマップから下記の数式3で表される無線信号特徴ベクトルを抽出することができる。言い換えれば、学習装置は、下記の数式3で表される新しいフィンガープリントマップ(特徴ベクトルマップ)を生成することができる。XはAPjに対する無線信号特徴ベクトルを表す。
【0042】
【数3】
【0043】
は、i番目の参照ポイントからAPjまでの距離であり、aは、i番目の参照ポイントとAPjとの角度である。
【0044】
学習装置は、学習用フィンガープリントマップと無線信号特徴ベクトルを用いて生成モデルを学習させる(230)。
【0045】
図3は、生成モデルの具体的な学習過程の例である。
【0046】
研究者は、条件付きGANモデル(cGAN)を用いた。cGAN300は、互いに敵対的生成子ネットワーク(generator network、G)310と判別子ネットワーク(discriminator network、D)320から構成される。
【0047】
生成子ネットワーク(G)310は、実際のフィンガープリントマップxrealの分布を学習して任意のノイズzから仮想(fake)のフィンガープリントマップxfake=G(z|c)を生成する。このとき、生成子ネットワーク(G)310は、上述した無線信号特徴ベクトルを条件として入力される。無線信号特徴ベクトルは、参照ポイントからAPまでの距離及び角度を含む。図3は、n個の参照ポイントに対する無線信号特徴ベクトルである条件cを示す。
【0048】
判別子ネットワーク(D)320は、生成子ネットワーク(G)310が生成したフィンガープリントマップG(z|c)と実際のフィンガープリントマップの入力を受け、G(z|c)が実際(real)であるか生成されたもの(fake)であるかを判別する。このとき、判別子ネットワーク(D)320は、無線信号特徴ベクトルである条件も入力される。
【0049】
生成されたフィンガープリントマップG(z|c)の分布が実際のフィンガープリントマップの分布と類似になるほど、判別子ネットワーク(D)320が出力する判別値D(G(z|c)は1に近くなる。cGAN300の目的関数は、下記の数式4のように定義できる。
【0050】
【数4】
【0051】
data(xreal)は、実際のフィンガープリントマップの分布であり、z~p(z)は、生成されたフィンガープリントマップの分布を意味する。
【0052】
研究者は、生成子ネットワーク(G)310のオーバーフィッティング(overfitted)を防ぐために、AC-GAN(Auxiliary Classifier GAN)を用いた。AC-GANは、生成したフィンガープリントマップG(z|c)が実際のデータであるか分類(サンプル損失、sample loss)する判別子の他に、条件(距離及び角度)を予測するクラス分類器(クラス損失、class loss)を含む。cGAN300は、判別子ネットワーク(D)320でサンプル損失及びクラス損失の両方を最小限に抑える方向に学習される。AC-GANの使用は、フィンガープリントマップを生成するための選択的構成であり得る。
【0053】
図4は、データ処理装置が生成モデルを用いてフィンガープリントマップを生成する過程400の例である。図4は、無線信号情報が探索されていない未知のサービス領域に対するフィンガープリントマップ生成の例である。
【0054】
データ処理装置は、フィンガープリントマップを生成しようとするサービス領域に対する情報の入力を受ける(410)。データ処理装置は、サービス領域に対する位置情報(サービス領域における参照領域の位置)、及びサービス領域に配置された複数のAPの位置の入力を受けることができる。サービス領域に配置されたAPがn個であると仮定する。
【0055】
まず、AP1に対するフィンガープリントマップ構築の生成を中心に説明する。データ処理装置は、サービス領域の参照ポイントの位置とAP1の位置を基準に、前述した無線信号特徴ベクトルを生成することができる(420)。無線信号特徴ベクトルは、参照ポイントのそれぞれからAP1までの距離及び角度で構成される。無線信号特徴ベクトルは、cGANで条件として使用される情報である。
【0056】
データ処理装置は、任意のノイズzを生成子ネットワークGに入力する(430)。生成子ネットワークGは、図3の過程で学習が完了したネットワークである。生成子ネットワークGは、AP1に対するフィンガープリントマップを生成する(440)。図4の左側は、1つのAPに対するフィンガープリントマップの生成例を示す。
【0057】
データ処理装置は、サービス領域にあるAP全体に対してそれぞれ同じ過程を繰り返し行ってn個のフィンガープリントマップを生成する(450)。
【0058】
データ処理装置は、n個のフィンガープリントマップを結合(merge)して多数の無線信号の強さベクトルを含む単一のフィンガープリントマップを生成する(460)。
【0059】
その後、測位装置は、サービス領域に対して生成された単一のフィンガープリントマップを用いて端末の位置を測位することができる。
【0060】
研究者は、フィンガープリントマップを算出する生成モデルの性能を検証した。
【0061】
研究者が構築したモデル、及びフィンガープリントマップ生成過程を簡略に説明する。
【0062】
研究者は、TensorFlow 1.15.0を使用した。研究者によって構築された生成子ネットワークG及び判別子ネットワークDはいずれも、ReLu活性関数を有する1つの隠れ層を含む。このとき、判別子ネットワークDは、出力層でシグモイド活性関数を有する。
【0063】
研究者は、U[-1,1]で均一に分布した変数を100個サンプリングして入力ノイズとして用いた。研究者は、4つの実際領域データセットを用いて生成モデルを構築した。4つの実際領域は、下記表1のとおりである。
【0064】
【表1】
【0065】
研究者は、(a)生成したフィンガープリントマップを用いて推定した位置と実際の位置との距離(m)の偏差、及び(b)生成したフィンガープリントマップを用いて推定した位置の精度(precision)を評価した。精度は、正解と1.5m範囲の許容誤差を持って判断した。
【0066】
研究者は、探索されていないポイントのフィンガープリントを推定する生成モデルの性能を評価した。研究者は、4つの領域(環境)でそれぞれ生成モデルを構築し、生成モデルを用いて当該領域で未探索ポイントのフィンガープリントを推定した。研究者は、4つの環境のそれぞれで実際のフィンガープリントマップから任意のポイントの値を削除し、生成モデルを用いて削除されたポイントのフィンガープリントを推定した。下記の表2は、未探索ポイントのフィンガープリントを推定した結果である。表2は、推定結果の平均値を示す。未探索ポイントのフィンガープリント推定は、フィンガープリントマップ増強(qugmentation)といえる。
【0067】
【表2】
【0068】
表2におけるUnaug.は、未探索ポイントのフィンガープリントが増強されていないフィンガープリントマップを用いて測位した結果である。前述したように、研究者は、2つの生成モデルを構築した。表2において、cGANは、一般的な条件付きGANであり、AC-GANは、クラス損失が追加されたGANである。フィンガープリントマップを増強して測位した場合、性能(距離偏差)は最大0.77mまで向上した。表2を参照すると、サービス領域が複雑で障害物が多い場合、生成モデルはより高い性能を示した。
【0069】
研究者は、APの配置が変更された領域に対するフィンガープリントマップを推定する生成モデルの性能を評価した。研究者は、4つの領域(環境)でそれぞれ生成モデルを構築し、当該領域でAPの配置を変更した後、生成モデルを用いてフィンガープリントマップを生成した。下記の表3は、AP配置が変更された領域でフィンガープリントマップの性能を評価した結果である。
【0070】
【表3】
【0071】
表3において、Upperは実際のフィンガープリントマップを使用した場合の性能である。障害物が多くて複雑な環境(Ofc-HighObs)でも、生成モデルは測位サービスにおいて有意な性能を示した。
【0072】
研究者は、全く新しい領域でフィンガープリントマップを推定する生成モデルの性能を評価した。研究者は、4つの領域(環境)でそれぞれ生成モデルを構築し、当該生成モデルを用いて他の領域に対するフィンガープリントマップを生成した。下記の表4は、新しい環境で生成したフィンガープリントマップの性能を評価した結果である。
【0073】
【表4】
【0074】
表4において、Upperは、実際のフィンガープリントマップを使用した場合の性能である。表3及び表4を参照すると、同じ環境(構造、障害物か否か)で構築した生成モデルを用いて新しいフィンガープリントマップを生成することがやや高い性能を示した。ところが、生成モデルを用いて全く新しい環境に対するフィンガープリントマップを生成する場合(表4)も、測位サービスの面で有意な結果を示した。
【0075】
図5は、未探索領域に対するフィンガープリントマップを生成するデータ処理装置500の例である。データ処理装置500は、前述した生成モデルを用いて新しいサービス領域に対するフィンガープリントマップを生成する装置である。データ処理装置500は、物理的に様々な形態で実現できる。例えば、データ処理装置500は、PCなどのコンピュータ装置、スマート機器、ネットワークのサーバ、データ処理専用チップセットなどの形態を有してもよい。
【0076】
データ処理装置500は、記憶装置510、メモリ520、演算装置530、インターフェース装置540、通信装置550、及び出力装置560を含むことができる。
【0077】
記憶装置510は、前述した生成モデルを記憶する。生成モデルは、前述した過程によって学習データで学習が完了したモデルである。
【0078】
記憶装置510は、新しいサービス領域に対する情報を記憶することができる。サービス領域の情報は、当該領域の位置、参照ポイントの位置、APそれぞれの位置などを含むことができる。
【0079】
記憶装置510は、生成モデルを用いてフィンガープリントマップを生成する過程を制御するプログラムを記憶することができる。
【0080】
記憶装置510は、生成したフィンガープリントマップを記憶することができる。
【0081】
メモリ520は、データ処理装置500がフィンガープリントマップを生成する過程で生成されるデータ及び情報などを記憶することができる。
【0082】
インターフェース装置540は、外部から一定のコマンド及びデータの入力を受ける装置である。
【0083】
インターフェース装置540は、物理的に接続された入力装置又は外部記憶装置から生成モデルの入力を受けることができる。インターフェース装置540は、物理的に接続された入力装置又は外部記憶装置からサービス領域の情報の入力を受けることができる。
【0084】
インターフェース装置540は、生成したフィンガープリントマップを外部オブジェクトに伝達することもできる。
【0085】
インターフェース装置540は、通信装置550が受信するデータ又は情報をデータ処理装置500の内部へ伝達する構成を含む意味である。
【0086】
通信装置550は、有線又は無線ネットワークを介して一定の情報を受信し伝送する構成を意味する。
【0087】
通信装置550は、外部オブジェクトから生成モデルを受信することができる。
【0088】
通信装置550は、外部オブジェクトからサービス領域の情報を受信することができる。
【0089】
通信装置550は、生成したフィンガープリントマップを測位装置などの外部オブジェクトに送信することもできる。
【0090】
出力装置560は、一定の情報を出力する装置である。出力装置560は、データ処理過程に必要なインターフェースやフィンガープリントマップなどを出力することができる。
【0091】
演算装置530は、サービス領域の情報を用いて、サービス領域の各参照ポイントとAPとの距離及び角度を演算する。演算装置530は、前述した特徴ベクトルを生成する。演算装置530は、参照ポイントiに対して特徴ベクトルd、aを生成する。演算装置530は、サービス領域全体に位置したn個の参照ポイントに対して特徴ベクトルセットを生成する。演算装置530は、APごとに特徴ベクトルセットを演算する。
【0092】
演算装置530は、サービス領域に配置された1つのAPごとにフィンガープリントマップを生成する。演算装置530は、生成モデルに任意のノイズと条件で抽出した特徴ベクトルを入力してフィンガープリントマップを生成する。演算装置530は、APごとにフィンガープリントマップを生成する。演算装置530は、AP全体のフィンガープリントマップを結合して多数の無線信号に対する強さ情報を有する最終のフィンガープリントマップを生成する。この過程は、図4で説明した通りである。
【0093】
演算装置530は、データを処理し、一定の演算を処理するプロセッサ、AP、プログラムが組み込まれたチップなどの装置であり得る。
【0094】
場合によっては、データ処理装置500が測位装置であってもよい。この場合、データ処理装置500は、生成したフィンガープリントマップを用いて、サービス領域から受信される無線信号情報を基準に測位を行うことができる。
【0095】
図6は、仮想のフィンガープリントマップを用いる測位装置600に対する例である。
【0096】
測位装置600は、自分が位置するサービス領域に対する情報を収集することができる。測位装置600は、サービス領域情報をデータ処理装置に伝達することができる。測位装置600は、データ処理装置が生成モデルを用いて生成したサービス領域に対するフィンガープリントマップを受信することができる。データ処理装置が生成したフィンガープリントマップは、実際の無線信号の強さを収集して生成したマップではないため、仮想のフィンガープリントマップといえる。以下の説明で、測位装置600は、現在位置したサービス領域に対する仮想のフィンガープリントマップを保有した状態であると前提する。
【0097】
測位装置600は、様々な類型の装置のいずれかであり得る。例えば、測位装置600は、スマート機器、ウェアラブル機器、ロボット、掃除機など、様々な類型の装置のいずれかであってもよい。
【0098】
測位装置600は、記憶装置610、メモリ620、演算装置630、インターフェース装置640及び通信装置650を含むことができる。
【0099】
記憶装置610は、前述した仮想のフィンガープリントマップを記憶する。
【0100】
記憶装置610は、フィンガープリントマップを用いて現在位置を推定するプログラムを記憶することができる。例えば、当該プログラムは、NN(Nearest Neighbor)アルゴリズムに基づいて位置を推定するプログラムであり得る。
【0101】
メモリ620は、測位装置600がフィンガープリントマップを用いて測位する過程で生成されるデータ及び情報などを記憶することができる。
【0102】
インターフェース装置640は、外部から一定のコマンド及びデータの入力を受ける装置である。
【0103】
インターフェース装置640は、物理的に接続された入力装置又は外部記憶装置から仮想のフィンガープリントマップの入力を受けることができる。
【0104】
インターフェース装置640は、通信装置650が受信するデータ又は情報を測位装置600の内部に伝達する構成を含む意味である。
【0105】
通信装置650は、有線又は無線ネットワークを介して一定の情報を受信し伝送する構成を意味する。
【0106】
通信装置650は、外部オブジェクトからフィンガープリントマップを受信することができる。
【0107】
通信装置650は、サービス領域でAPが送信する無線信号を受信することができる。
【0108】
演算装置630は、現在位置でAPが送信する無線信号の強さを決定することができる。
【0109】
演算装置630は、仮想のフィンガープリントマップと現在位置の無線信号の強さとを比較して現在位置を推定することができる。無線信号の強さは、多数の無線信号それぞれの強さ情報を含むことができる。
【0110】
演算装置630は、データを処理し、一定の演算を処理するプロセッサ、AP、プログラムが組み込まれたチップなどの装置であり得る。
【0111】
また、上述したような生成モデル構築方法、生成モデルベースのフィンガープリントマップ生成方法又は測位方法は、コンピュータで実行できる実行可能なアルゴリズムを含むプログラム(又はアプリケーション)で実現できる。 前記プログラムは、一時的又は非一時的可読媒体(non-transitory computer readable medium)に保存されて提供できる。
【0112】
非一時的可読媒体とは、レジスタ、キャッシュ、メモリなどのように短い瞬間にデータを保存する媒体ではなく、半永久的にデータを保存し、機器によって読み取り(reading)が可能な媒体を意味する。具体的には、上述した様々なアプリケーション又はプログラムは、CD、DVD、ハードディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク、USB、メモリカード、ROM(read-only memory)、PROM(programmable read only memory)、EPROM(Erasable PROM、EPROM)、EEPROM(Electrically EPROM)又はフラッシュメモリなどの非一時的可読媒体に保存されて提供できる。
【0113】
一時的可読媒体は、スタティックRAM(Static RAM、SRAM)、ダイナミックRAM(Dynamic RAM、DRAM)、シンクロナスDRAM(Synchronous DRAM、SDRAM)、2倍速SDRAM(Double Data Rate SDRAM、DDR SDRAM)、拡張型SDRAM(Enhanced SDRAM、ESDRAM)、同期化DRAM(Synclink DRAM、SLDRAM)及びダイレクトラムバスRAM(Direct Rambus RAM、DRRAM)などのさまざまなRAMを意味する。
【0114】
本実施形態及び本明細書に添付された図面は、前述した技術に含まれる技術的思想の一部を明確に示しているものに過ぎず、前述した技術の明細書及び図面に含まれた技術的思想の範囲内で当業者が容易に類推することが可能な変形例及び具体的な実施形態はいずれも、前述した技術の権利範囲に含まれることが自明であるというべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6