IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ SK8INSOLL株式会社の特許一覧

特開2024-160930インソール提示システムおよびインソール提示方法
<>
  • 特開-インソール提示システムおよびインソール提示方法 図1
  • 特開-インソール提示システムおよびインソール提示方法 図2
  • 特開-インソール提示システムおよびインソール提示方法 図3
  • 特開-インソール提示システムおよびインソール提示方法 図4
  • 特開-インソール提示システムおよびインソール提示方法 図5
  • 特開-インソール提示システムおよびインソール提示方法 図6
  • 特開-インソール提示システムおよびインソール提示方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160930
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】インソール提示システムおよびインソール提示方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20241108BHJP
   A43D 1/02 20060101ALI20241108BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20241108BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20241108BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A43D1/02
A61B5/107 130
G01B11/24 A
G01B11/24 K
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016037
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2023076380の分割
【原出願日】2023-05-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載日 令和4年8月1日 https://www.sk8insoll.tokyo/raiten https://tokyoinsoll.com/aimodel/
(71)【出願人】
【識別番号】518094555
【氏名又は名称】SK8INSOLL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】名取 良子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ビーコム ゲリー ブルース
【テーマコード(参考)】
2F065
4C038
4F050
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA53
2F065BB05
2F065CC16
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF11
2F065GG04
2F065JJ03
2F065JJ26
4C038VA02
4C038VA04
4C038VA12
4C038VB14
4C038VC01
4C038VC05
4C038VC20
4F050EA11
4F050NA86
(57)【要約】
【課題】簡便な計測で必要なデータを容易に取得することができ、測定に関する専門知識や装置操作の習熟が不要なインソール提示システムおよびインソール提示方法を提供する。
【解決手段】歩行時または走行時における着地時から次の着地時までの足の移動に関する足移動データを取得する足移動データ取得部と、足移動データに基づいて選択されたインソールを提示するインソール提示部と、インソールに関連付けられた推奨運動情報を提示する推奨運動提示部を備え、インソールは、足裏面全体をカバーするベースインソールと、ベースインソールの所定位置に配置される補強インソールの組み合わせであるインソール提示システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行時または走行時における着地時から次の着地時までの足の移動に関する足移動データを取得する足移動データ取得部と、
前記足移動データに基づいて選択されたインソールを提示するインソール提示部と、
前記インソールに関連付けられた推奨運動情報を提示する推奨運動提示部を備え、
前記インソールは、足裏面全体をカバーするベースインソールと、前記ベースインソールの所定位置に配置される補強インソールの組み合わせであることを特徴とするインソール提示システム。
【請求項2】
請求項1に記載のインソール提示システムであって、
前記推奨運動情報は、筋膜リリース方法、歩行改善方法、およびトレーニング方法の何れか一つを含むことを特徴とするインソール提示システム。
【請求項3】
請求項1に記載のインソール提示システムであって、
前記足移動データは、足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、および足関節の内転外転の度合い、歩幅、足の軌跡、足の持ち上げ高さ、足の振り速度、幅方向の両足間距離の何れか一つを含むことを特徴とするインソール提示システム。
【請求項4】
請求項1に記載のインソール提示システムであって、
前記インソールの利用者に関する属性情報を取得する属性情報取得部を備え、
前記インソール提示部は、前記属性情報に基づいた前記インソールを提示することを特徴とするインソール提示システム。
【請求項5】
請求項1に記載のインソール提示システムであって、
前記インソールに関連付けられた靴情報を提示する靴提示部を備えることを特徴とするインソール提示システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載のインソール提示システムであって、
前記インソールの利用者の足形データを取得する足形データ取得部を備え、
前記インソール提示部は、前記足形データに基づいた前記インソールを提示することを特徴とするインソール提示システム。
【請求項7】
歩行時または走行時における着地時から次の着地時までの足の移動に関する足移動データを取得する足移動データ取得工程と、
前記足移動データに基づいて選択されたインソールを提示するインソール提示工程と、
前記インソールに関連付けられた推奨運動情報を提示する推奨運動提示工程を備えることを特徴とするインソール提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インソール提示システムおよびインソール提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、靴を履いた状態での歩行や走行において、靴と足の密着性向上や衝撃吸収を目的として、靴底に中敷き(インソール)を挿入することが行われている。また、足の形状情報や歩行時の足の移動情報を取得し、各個人によって異なる足の形状や歩行動作に適したインソールを作成することも提案されている(例えば特許文献1-3を参照)。
【0003】
特許文献1-3に示された従来技術では、オーダーメイドまたはセミオーダーメイドで各個人に適したインソールの形状を作成することで、歩行時に足に加わる衝撃を軽減し、適切な歩行動作となるように姿勢を矯正することができる。これにより、歩行や走行による負荷によって関節や筋肉に生じる傷病を予防できると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-526028号公報
【特許文献2】特表2017-522917号公報
【特許文献3】特開2022-089563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2に示された技術では、足裏にかかる荷重の分布を取得するため、専用の圧力センサー装置を装着して計測を行っている。このような圧力センサー装置では、装着方法、計測方法、メンテナンス方法等の専門的な知識と操作の習熟が要求され、専門知識が乏しい利用者個人や販売員が適切にインソールを形成することが困難であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献3に示された技術では、様々な動作時のデータを包括動作データや5種辺法動作データとして取得し、COP(Center of Pressure)の移動軌跡を修正するように、インソールにおける拇趾付近の凸形状を決定している。しかし、必要とされるデータが膨大であり、複数の複雑な運動を行ってデータを取得する必要があり、簡便にインソールを形成することが困難であるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1-3では、インソール形状で足裏の荷重を分散することを目的としており、実際の歩行動作を改善することを目的としていない。また、足裏の荷重をインソール形状で分散したとしても、複雑な要素が絡み合って発生する歩行動作の改善や、身体に加わる負荷の軽減を十分に図ることが困難であった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、簡便な計測で必要なデータを容易に取得することができ、測定に関する専門知識や装置操作の習熟が不要なインソール提示システムおよびインソール提示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のインソール提示システムは、歩行時または走行時における着地時から次の着地時までの足の移動に関する足移動データを取得する足移動データ取得部と、前記足移動データに基づいて選択されたインソールを提示するインソール提示部と、前記インソールに関連付けられた推奨運動情報を提示する推奨運動提示部を備え、前記インソールは、足裏面全体をカバーするベースインソールと、前記ベースインソールの所定位置に配置される補強インソールの組み合わせであることを特徴とする。
【0010】
このような本発明のインソール提示システムでは、ベースインソールと補強インソールとの組み合わせであるインソールが、足移動データに基づいて選択されるため、簡便な計測で必要なデータを容易に取得することが可能となる。また、測定に関する専門知識や装置操作の習熟が不要となる。また、ベースインソールと補強インソールの組み合わせによる歩行や走行の補助だけではなく、転倒しにくい歩行姿勢や歩行方法、関節の負担を軽減できる歩行姿勢や歩行方法をインソール利用者に促し、傷病の予防に役立てることができる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記推奨運動情報は、筋膜リリース方法、歩行改善方法、およびトレーニング方法の何れか一つを含む。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記足移動データは、足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、および足関節の内転外転の度合い、歩幅、足の軌跡、足の持ち上げ高さ、足の振り速度、幅方向の両足間距離の何れか一つを含む。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記インソールの利用者に関する属性情報を取得する属性情報取得部を備え、
前記インソール提示部は、前記属性情報に基づいた前記インソールを提示する。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記インソールに関連付けられた靴情報を提示する靴提示部を備える。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記インソールの利用者の足形データを取得する足形データ取得部を備え、前記インソール提示部は、前記足形データに基づいた前記インソールを提示する。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のインソール提示方法は、歩行時または走行時における着地時から次の着地時までの足の移動に関する足移動データを取得する足移動データ取得工程と、前記足移動データに基づいて選択されたインソールを提示するインソール提示工程と、前記インソールに関連付けられた推奨運動情報を提示する推奨運動提示工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、簡便な計測で必要なデータを容易に取得することができ、測定に関する専門知識や装置操作の習熟が不要なインソール提示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るインソール提示システム1000の概要を示す模式図である。
図2】インソール提示システム1000におけるデータベース例を示す図であり、図2(a)はインソールデータベース340の一例を示し、図2(b)は推奨運動データベース350の一例を示している。
図3】インソール提示システム1000で提示されるインソールの一例について模式的に示す図であり、図3(a)はベースインソール10を示し、図3(b)は補強インソール11~17を示している。
図4】足移動データに含まれる足関節の底屈背屈の度合いについて模式的に示す図であり、図4(a)は着地時における角度を示し、図4(b)は蹴り出し時における角度を示している。
図5】足移動データに含まれる足の軌跡について模式的に示す図である。
図6】足移動データに含まれる足の向きについて模式的に示す図であり、図6(a)はプロネーションを示し、図6(b)はスピネーションを示し、図6(c)は外転を示し、図6(d)は内転を示している。
図7】インソール提示システム1000を用いたインソール提示方法の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本実施形態に係るインソール提示システム1000の概要を示す模式図である。図1に示したようにインソール提示システム1000は、情報取得装置100と、インソール提示装置200と、インソール選択装置300を有している。各装置は、記憶部、入力部、出力部、演算部、情報通信部等を備えたコンピュータ上で所定のプログラムを実行することで各種機能が実現され、相互に情報通信可能とされている。図1では各装置がそれぞれ別のハードウェアで構成され、電気情報通信回線を通じて相互に情報を通信する例を示しているが、同一のハードウェア構成において複数のプログラムが動作することで各装置として機能するとしてもよい。また、複数の機能が別構成のハードウェア上で実現されて、互いに協働して各装置として機能するとしてもよい。
【0020】
情報取得装置100は、インソールを選択するために必要な情報を取得し、インソール選択装置300に情報を送信するための装置である。図1に示した例では、情報取得装置100は、属性情報取得部110と、足形データ取得部120と、足移動データ取得部130とを備えている。情報取得装置100で取得された各種情報は、情報通信手段によって電気情報通信回線等を介してインソール選択装置300に送信される。情報取得装置100の具体的な構成は限定されず、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の情報処理装置であってもよく、複数の機器が相互に情報通信可能に接続された構成としてもよい。
【0021】
属性情報取得部110は、インソール利用者に関する属性情報を取得する部分である。属性情報取得部110の具体的な構成は限定されず、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の情報処理装置を用いて、画面上に表示された入力フォームに入力デバイスを用いて入力するとしてもよい。また、別途記録されている利用者に関する情報を情報通信手段によって取得するとしてもよい。ここで、利用者に関する属性情報としては、年齢、性別、身長、体重、病歴、運動歴、運動習慣、運動種目等が挙げられる。
【0022】
足形データ取得部120は、インソール利用者の足の形状に関する情報である足形データを取得する部分である。足形データ取得部120の具体的な構成は限定されず、石膏等で足形を採取することで足形データを採寸し、情報処理装置を用いて入力するとしてもよい。また、従来公知の足形データを測定するための専用装置を用いるとしてもよい。また、スマートフォンやタブレットに搭載された撮像装置やLiDAR装置(Light Detection And Ranging)等を用いて足の立体像を撮像して、画像認識技術や三次元測定技術を用いて足形データを取得するとしてもよい。ここで、足形データとしては、踵から爪先までの長さ、幅、甲の高さ、接地面形状等が挙げられる。また、足形データの取得は、足を接地させて荷重状態で取得するとしてもよく、足を地面から浮かせて非荷重状態で取得するとしてもよい。
【0023】
足移動データ取得部130は、インソール利用者の歩行時または走行時において、足を移動している期間(足移動期間)、足の移動に関する情報である足移動データを取得する部分である。足移動データ取得部130の具体的な構成は限定されず、テスト歩行時に用いる靴の中に加速度センサーおよびジャイロセンサーを入れて軌跡や傾きを検出する方法を用いることができる。一例としては、Sennotech社製Senno Gait(登録商標)を用いることができる。また、スマートフォンやタブレットに搭載された撮像装置やLiDAR装置等を用いて足の移動を動画撮影して、モーションキャプチャー技術や画像認識技術を用いて足移動データを取得するとしてもよい。
【0024】
ここで、足移動データとしては、足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し(プロネーション)外返し(スピネーション)の度合い、足関節の内転外転の度合い、歩幅、足の軌跡、足の持ち上げ高さ、足の振り速度、幅方向の両足間距離等が挙げられる。本実施形態では後述するように、足移動期間における足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、足関節の内転外転の度合いが、足移動データとして重要である。
【0025】
インソール提示装置200は、インソール選択装置300で選択された情報を受信して、利用者に提示する装置である。図1に示した例では、インソール提示装置200は、インソール提示部210と、推奨運動提示部220とを備えている。インソール提示装置200は、インソール選択装置300で選択されたインソールの情報と、推奨運動情報とを情報通信手段によって電気情報通信回線等を介してインソール選択装置300から受信し、利用者に情報を提示する。インソール提示装置200の具体的な構成は限定されず、コンピュータやスマートフォン等の各種情報処理装置を用いることができる。また、情報の提示方法としては、画像表示装置や音声案内装置、紙面への印刷装置など、公知の情報出力手段を用いることができる。
【0026】
インソール提示部210は、インソール選択装置300で選択されたインソール利用者に適したインソールの情報を受信し、インソール利用者に対して提示する装置である。また、インソール提示部210がオンライン注文手段等を備え、電気情報通信回線を介して接続されたネット販売店舗にアクセスして、提示されたインソールをオンライン上で発注する機能を設けるとしてもよい。インソール提示部210が提示するインソールの情報については詳細を後述する。
【0027】
推奨運動提示部220は、インソール選択装置300で選択されたインソールに関連付けられた推奨運動情報を受信し、インソール利用者に対して提示する装置である。また、推奨運動提示部220は、推奨運動情報を運動補助器具等の他の機器に転送して、運動補助器具の動作の制御または調整に用いるとしてもよい。本実施形態では推奨運動提示部220をインソール提示装置200に備えた例を示しているが、推奨運動提示部220を省略するとしてもよい。推奨運動提示部220が提示する推奨運動情報については詳細を後述する。
【0028】
インソール選択装置300は、情報取得装置100から受信した情報に基づいて、インソール利用者に適したインソールを選択し、インソール提示装置200に送信する装置である。図1に示した例では、インソール選択装置300は、属性情報データベース310と、足形データベース320と、足移動データベース330と、インソールデータベース340と、推奨運動データベース350と、インソール選択部360と、推奨運動選択部370とを備えている。インソール選択装置300の具体的な構成は限定されず、記憶手段と情報処理手段、情報通信手段を備えたサーバ装置を用いることができる。図1では、インソール選択装置300を情報取得装置100およびインソール提示装置200とは別装置で構成した例を示したが、これらの装置と同一のハードウェアで構成するとしてもよい。
【0029】
属性情報データベース310は、属性情報取得部110で取得したインソール利用者の属性情報を記録する部分である。属性情報データベース310に記録される利用者に関する属性情報は、利用者ごとに割り振られた識別番号と関連して記録されている。また識別番号は、足形データベース320に記録された足形データ、および足移動データベース330に記録された足移動データに関連付けられている。
【0030】
足形データベース320は、属性情報取得部110で取得した足形データを記録する部分である。足形データベース320に記録される足形データは、属性情報データベース310で利用者ごとに割り振られた識別番号と関連して記録される。
【0031】
足移動データベース330は、属性情報取得部110で取得した足移動データを記録する部分である。足移動データベース330に記録される足移動データは、属性情報データベース310で利用者ごとに割り振られた識別番号と関連して記録される。
【0032】
インソールデータベース340は、インソール選択部360で選択されるインソールに関する情報が記録されている部分である。インソール選択部360に記録されるインソールに関する情報は、詳細を後述するようにベースインソール10と補強インソール11~17の形状、大きさ、厚み、位置、効果等の情報を含んでいる。
【0033】
推奨運動データベース350は、推奨運動選択部370で選択される推奨運動情報が記録されている部分である。推奨運動データベース350に記録される推奨運動情報は、詳細を後述するように筋膜リリース方法、歩行改善方法、トレーニング方法、マッサージ方法、リハビリテーション方法等の情報を含んでいる。
【0034】
インソール選択部360は、足移動データ取得部130で取得された足移動データに基づいて、インソールデータベース340から適切なインソールの情報を選択し、インソール提示装置200に送信する部分である。インソール選択部360によるインソールの選択には、同じ識別番号に関連付けられた属性情報や足形データを合わせて用いるとしてもよい。
【0035】
推奨運動選択部370は、インソール選択部360で選択されたインソールの情報に基づいて、推奨運動データベース350から適切な推奨運動情報を選択し、インソール提示装置200に送信する部分である。推奨運動選択部370による推奨運動の選択には、同じ識別番号に関連付けられた属性情報や足形データを合わせて用いるとしてもよい。
【0036】
図2は、インソール提示システム1000におけるデータベース例を示す図であり、図2(a)はインソールデータベース340の一例を示し、図2(b)は推奨運動データベース350の一例を示している。図2に示した例は、インソールデータベース340および推奨運動データベース350の一例であり、それぞれさらに多数の項目や細分化された情報を備えるとしてもよい。
【0037】
インソールデータベース340に記録されているインソールの情報は、足裏面全体をカバーするベースインソール10の情報と、ベースインソール10の所定位置に配置される補強インソール11~17の情報が含まれている。また、ベースインソール10の情報には、形状、材質、厚さ等の項目が含まれている。また、補強インソール11~17の情報には、複数のパーツ(例えばパーツA,B,C・・・・)と、それぞれのパーツ毎に形状、材質、厚さ等の項目が含まれている。ベースインソール10および補強インソール11~17の情報には、さらに大きさや特性、効果等の多数の項目や細分化された情報を備えるとしてもよい。
【0038】
推奨運動データベース350に記録されている推奨運動情報は、負担部位や運動特性の情報がそれぞれ複数含まれている。また、それぞれの負担部位の情報に対応して推奨される運動が関連付けられている。また、それぞれの運動特性の情報に対応して推奨される運動が関連付けられている。推奨される運動としては、筋膜リリース方法、歩行改善方法、トレーニング方法等が挙げられる。
【0039】
筋膜リリース方法としては、身体の特定位置における筋膜の伸長と可動範囲の改善を促すためのマッサージ方法やストレッチ方法等が挙げられる。また歩行改善方法としては、足指の使い方や、骨盤の移動方法、頭の位置、歩行姿勢、足裏での重心移動等が挙げられる。またトレーニング方法としては、身体の特定部位の筋力を鍛えるための運動、身体の特定部位の可動域を拡げるためのストレッチ方法、競技種目に応じて求められる動作練習等が挙げられる。
【0040】
図3は、インソール提示システム1000で提示されるインソールの一例について模式的に示す図であり、図3(a)はベースインソール10を示し、図3(b)は補強インソール11~17を示している。ベースインソール10は足裏面全体をカバーする外形を有しており、靴底に挿入されてインソール利用者の足裏に接触する部分である。補強インソール11~17は、ベースインソール10の所定位置において、裏面側(利用者の足裏と反対の接地面側)に貼り付けられる部分である。ベースインソール10と補強インソール11~17の貼り付け方法は限定されないが、ベースインソール10と補強インソール11~17を熱可塑性樹脂で構成して、加熱圧着する方法を用いることができる。また、ベースインソール10と補強インソール11~17の間に接着剤を塗布して接着する方法を用いるとしてもよい。ベースインソール10の裏面に、選択された補強インソール11~17が貼り合わされることで、インソール利用者に適したインソールを形成することができる。また、ここではベースインソール10の裏面に補強インソール11~17を貼り合わせる例を示したが、ベースインソール10の足裏面側に貼り合わせるとしてもよい。
【0041】
図3(a)に示したように、ベースインソール10は足裏全体をカバーする外形とされている。ここで、足裏全体とは実際にインソール利用者が靴内にインソールを挿入した状態で足裏が接触する領域だけではなく、足裏が接触しない足底弓蓋の領域を含んでいることが好ましい。足底弓蓋の領域等を含んでベースインソール10を設けることで、良好に補強インソール11~17を貼り合わせて保持することができる。また、ベースインソール10単体での強度や弾力性を確保することもできる。
【0042】
図3(b)に示したように、補強インソール11~17は、ベースインソール10の所定位置に貼り合わされる。図3(b)では補強インソール11~17を全て貼り合わせた状態を示しているが、実際のインソールでは補強インソール11~17からインソール選択部360で選択されたパーツが貼り合わされる。
【0043】
図3(b)に示した補強インソール11~17は一例であるが、以下に具体例を説明する。補強インソール11は、踵骨の内側と距骨をカバーする位置と形状である。補強インソール12は、踵骨の外側と立方骨の外側をカバーする位置と形状である。補強インソール13は、足底弓蓋の広い範囲をカバーする位置と形状である。補強インソール14は、足底弓蓋の狭い範囲をカバーする位置と形状である。補強インソール15は、親指から小指の中節骨に沿う位置と形状である。補強インソール16は、母指球をカバーする位置と形状である。補強インソール17は、親指の種子骨、基節骨、中節骨、末節骨をカバーする位置と形状である。図3(b)に示した補強インソール11~17の形状および位置は一例であり、さらに多数のパーツを備えるとしてもよく、複数のパーツを連結して一つにまとめてもよい。
【0044】
図3(b)に示したように、補強インソール11~17はベースインソール10の所定位置に貼り合わされるが、補強インソール13,14の組み合わせや、補強インソール15,16,17の組み合わせのように、互いに重なり合う位置に貼り合わせるとしてもよい。また、補強インソール11~17の各パーツを複数枚重ね合わせるとしてもよい。補強インソール11~17を重ねることで、所望の厚さや強度を簡便に実現することができる。
【0045】
図4は、足移動データに含まれる足関節の底屈背屈の度合いについて模式的に示す図であり、図4(a)は着地時における角度を示し、図4(b)は蹴り出し時における角度を示している。図中では接地面に平行な面を太い実線で示し、足首から先を模式的に示し、靴底に挿入されるインソールを白抜きの板状に示している。また、地面に垂直な方向と、インソールに垂直な方向をそれぞれ破線で示している。
【0046】
図4(a)に示したように、歩行時または走行時の着地では、前方に移動させた足の踵から着地をして爪先方向に順番に足裏が接地していく。この際に、体重が足裏に加わり、荷重中心が足裏の面内を前方に移動する。足の移動期間における足裏面(インソール)に垂直な方向と、接地面に垂直な方向がなす角度をθ1とする。また、足の移動期間における足裏面と接地面のなす角度をθ2とする。本実施形態では、足の移動期間における踵と接地面のなす角度θ1、θ2を足移動データに含めている。したがって、足移動データには、角度θ1、θ2によって算出可能な足関節の底屈背屈の度合いが含まれている。
【0047】
図4(b)に示したように、歩行時または走行時の蹴り出しでは、後方に残った足が踵から爪先方向に順番に接地面と離間していく。この際にも、体重が足裏に加わり、荷重中心が足裏の面内を前方に移動する。足の移動期間における足裏面に垂直な方向と、接地面に垂直な方向がなす角度をθ3とする。また、足の移動期間における足裏面と接地面のなす角度をθ4とする。本実施形態では、足の移動期間における爪先と接地面のなす角度θ3、θ4を足移動データに含めている。したがって、足移動データには、角度θ3、θ4によって算出可能な足関節の底屈背屈の度合いが含まれている。
【0048】
図5は、足移動データに含まれる足の軌跡について模式的に示す図である。図中に示した4つの足跡は、インソール利用者の歩行時または走行時における右足と左足の接地位置を示している。また、右足の空中での移動の軌跡を実線の曲線TRで示し、左足の空中での移動の軌跡を実線の曲線TLで示している。実際の足の軌跡である曲線TR,TLは、後方の接地面に残った足を上げて、前方に足を移動する過程で最高到達点に達し、前方に出した足が接地するため、三次元の軌跡を描いている。また、右足が前の状態での左右の足の接地間距離をDRとし、左足が前の状態での左右の足の接地間距離をDLとする。また、左右の足の幅方向での接地間距離をWとする。本実施形態では、歩行時または走行時の足の軌跡である曲線TR,TLと、左右の足の前後方向での接地距離DR,DLと、左右の足の幅方向での接地間距離Wを足移動データに含めている。
【0049】
図6は、足移動データに含まれる足の向きについて模式的に示す図であり、図6(a)はプロネーションを示し、図6(b)はスピネーションを示し、図6(c)は外転を示し、図6(d)は内転を示している。
【0050】
図6(a)(b)は左右の足の踵側から見た図であり、図中に示した太い実線は距腿関節と、脛骨の伸びる方向と、踵骨の伸びる方向と、踵の裏面を示している。図6(a)では、距腿関節から下方に伸びる踵骨が外側に向かって開いてプロネーション(回内)している様子を示している。図6(b)では距腿関節から下方に伸びる踵骨が内側に向かって閉じてスピネーション(回外)している様子を示している。
【0051】
図6(c)(d)は左右の足裏の向きを示し、図中に示した実線の直線は踵から爪先の中心を延長した方向を示している。図6(c)では踵から爪先までの方向が外側に開いて外転している様子を示している。図6(d)では踵から爪先までの方向が内側に閉じて内転している様子を示している。本実施形態では、足関節の内返し外返しの度合いと、足関節の内転外転の度合いを足移動データに含めている。
【0052】
図7は、インソール提示システム1000を用いたインソール提示方法の動作例を示すフローチャートである。本実施形態のインソール提示方法は、図7に示すように、属性情報取得工程と、足形データ取得工程と、足移動データ取得工程と、インソール選択工程と、インソール提示工程と、推奨運動選択工程と、推奨運動提示工程を備えている。本実施形態では、予めインソールデータベース340にはインソール情報が記録されており、推奨運動データベース350には推奨運動情報が記録されているとする。
【0053】
始めにステップS1の属性情報取得工程では、属性情報取得部110を用いてインソール利用者の属性情報を取得する。一例としては、インソール利用者が携帯情報端末等の入力手段を用いて属性情報を入力する。属性情報取得部110は、電気情報通信回線等を介してインソール選択装置300にアクセスし、取得した属性情報を識別番号と関連付けて属性情報データベース310に記録する。また、インソール利用者によるインソール提示システム1000の利用が二回目以降である場合には、属性情報取得部110は電気情報通信回線等を介してインソール選択装置300にアクセスし、属性情報データベース310から属性情報を読み込むとしてもよい。ここでは、インソール利用者が自ら属性情報取得部110を操作する例を示したが、インソール販売店の店員や相談員が情報取得装置100を操作するとしてもよい。
【0054】
次にステップS2の足形データ取得工程では、足形データ取得部120を用いてインソール利用者の足形データを取得する。一例としては、携帯情報端末等の入力手段を用いてインソール利用者が巻き尺等を用いて計測した足形データを入力する。足形データ取得部120は電気情報通信回線等を介してインソール選択装置300にアクセスし、取得した属性情報を識別番号と関連付けて足形データベース320に記録する。また、インソール利用者によるインソール提示システム1000の利用が二回目以降である場合には、足形データ取得部120は電気情報通信回線等を介してインソール選択装置300にアクセスし、足形データベース320から足形データを読み込むとしてもよい。ここでは、インソール利用者が自ら足形データを入力する例を示したが、インソール販売店の店員や相談員が足形データ取得部120を操作するとしてもよい。
【0055】
次にステップS3の足移動データ取得工程では、足移動データ取得部130を用いてインソール利用者の足移動データを取得する。一例としては、加速度センサーとジャイロセンサーと近距離無線通信等を内蔵した計測装置を用い、靴底内に計測装置を挿入した状態でインソール利用者が靴を装着して歩行動作または走行動作を行う。計測装置は経時的に靴底の向き、移動距離、角度等の情報を取得して近距離無線通信等で情報取得装置100に送信する。足移動データ取得部130は、電気情報通信回線等を介してインソール選択装置300にアクセスし、取得した足移動データを識別番号と関連付けて足移動データベース330に記録する。足移動データ取得部130による測定は、インソール利用者が自ら行うとしてもよく、インソール販売店の店員や相談員が測定するとしてもよい。
【0056】
次にステップS4のインソール選択工程では、インソール選択部360が識別番号に関連付けられた属性情報、足形データおよび足移動データに基づいて、インソールデータベース340から適切なベースインソール10を選択し、補強インソール11~17から適切な組み合わせを選択する。一例としては、インソール選択部360にはベースインソール10と補強インソール11~17について、属性情報、足形データおよび足移動データとの関連度合いがマトリクスに記録されている。インソール選択部360は、属性情報、足形データおよび足移動データから、前述したマトリクスから関連度の最も高いベースインソール10と補強インソール11~17を選択する。インソール選択部360は、選択されたベースインソール10と補強インソール11~17に関する情報をインソール情報として、電気情報通信回線を介してインソール提示部210に送信する。また、インソール選択部360は、インソール情報と識別番号を関連付けて、属性情報データベース310に記録するとしてもよい。
【0057】
次にステップS5のインソール提示工程では、インソール提示部210がインソール選択部360からインソール情報を受信し、インソール提示装置200の操作者に対して選択されたインソールの情報を提示する。インソール提示装置200の操作者は、インソール利用者本人であってもよく、インソール販売店の店員や相談員であってもよい。一例としては、選択されたベースインソール10と、選択された補強インソール11~17の組み合わせについて、形状、材質、厚さを画像表示装置上に表示する。画像表示装置上に、選択されたベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせを3次元モデルとして表示するとしてもよい。また、形状、材質、厚さの表示に代えて、選択されたベースインソール10と補強インソール11~17の型番を表示するとしてもよい。
【0058】
次にステップS6の推奨運動選択工程では、インソール選択部360によって選択されたインソール情報に基づいて、推奨運動選択部370が推奨運動データベース350から適切な推奨運動情報を選択する。ここで、推奨運動選択部370は、推奨運動情報を選択する際に、識別番号に関連付けられた属性情報、足形データおよび足移動データも参照するとしてもよい。一例としては、推奨運動選択部370にはベースインソール10と補強インソール11~17について、推奨運動情報との関連度合いがマトリクスで記録されている。推奨運動選択部370は、選択されたインソール情報から、前述したマトリクスから関連度の最も高い推奨運動情報を選択する。推奨運動選択部370は、電気情報通信回線を介して選択された推奨運動情報を推奨運動提示部220に送信する。また、推奨運動選択部370は、推奨運動情報と識別番号を関連付けて、属性情報データベース310に記録するとしてもよい。
【0059】
次に、ステップS7の推奨運動提示工程では、推奨運動提示部220が推奨運動選択部370から推奨運動情報を受信し、インソール提示装置200の操作者に対して選択された推奨運動情報を提示する。インソール提示装置200の操作者は、インソール利用者本人であってもよく、インソール販売店の店員や相談員であってもよい。一例としては、推奨される運動の方法、利用する器具、筋膜リリースの方法等を画像表示装置上に表示する。また、推奨される運動について、実際の動作を動画で表示するとしてもよい。推奨運動提示工程の終了後に本実施形態のインソール提示方法は終了する。
【0060】
上述したインソール提示方法の一例として、足形データで右足だけ外反母趾であり、足移動データにおいて足関節の底屈背屈の度合いが小さく、足関節の内返しが生じている場合を説明する。インソール選択工程では、足関節の底屈背屈を促進して内返しを防止するように、ベースインソール 10のヒールカップの形を踵の形状に合わせて決定する。また、外反母趾である右足に体重が加わるので、左足の踵に補強インソール11,12を追加する。また、第一中足骨頭への荷重を免荷するために、内側アーチを盛り上げるための補強インソール13,14を追加する。母趾球をしっかり押して、地面を蹴り出せるようにメカノレセプターを活性化させるための補強インソール16を追加する。
【0061】
また推奨運動提示工程では、後脛骨筋の機能が低下しているため、筋膜リリース専用オイルと専用のツールを使った後脛骨筋の筋膜リリースを提案する。また、足裏全体の筋膜が硬直しているため、専用の道具を使った足裏の筋膜リリースを提案する。また、インソールを効果的に使うための基礎的な足首・股関節の使い方や、歩行の仕方を提示し指導する。これらの推奨運動を実施することで、足関節の底屈背屈がしやすくなり、また体重を足裏全体にかけやすくなる。
【0062】
上述したように、ベースインソール10と補強インソール11~17との組み合わせであるインソール情報が、足移動データに基づいて選択されるため、簡便な計測で必要なデータを容易に取得することが可能となる。また、測定に関する専門知識や装置操作の習熟が不要となる。
【0063】
また、上述した足移動データには、足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、および、足関節の内転外転の度合い、の何れか一つを含むことが好ましい。より好ましくは、足移動データに足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、または足関節の内転外転の度合いのうち二つを組み合わせることが好ましく、さらに好ましくは全てを組み合わせることが好ましい。
【0064】
本願の発明者は、歩行時や走行時に身体に加わる負担を軽減する観点や、歩行時や走行時の転倒を防止する観点、歩行困難な状態から自力歩行するまでの回復補助の観点等から、足移動データに基づいたベースインソール10および補強インソール11~17の選択が重要であることを見出した。特に、インソールの選択に必要な情報を簡便かつ迅速に取得するためには、足移動データの中でも足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、足関節の内転外転の度合いが重要であることを見出した。また、足移動データを測定する足移動期間の中でも、特に着地時が非常に重要であることを見出した。
【0065】
歩行時や走行時は、図5に示したような足の移動と荷重移動が繰り返されるが、足に加わる荷重は着地時の踵から爪先方向に移動する。また、歩行時や走行時に足に加わる衝撃は、踵に最初に加わり、かつ最大になる。また、歩行時や走行時の足の軌跡における最終点が着地時であり、足の移動の仕方によって着地時の踵の角度が異なっている。したがって、身体に加わる負担を軽減し適切な足移動を促すために最適なインソールを選択するためには、足移動データの中でも足関節の底屈背屈の度合いが重要である。
【0066】
また、荷重が踵から爪先に移動する際の経路は、着地時の足関節の内返し外返しの度合いによって異なる。また、着地後に荷重が移動する際には、腓骨や脛骨から距腿関節、踵骨へと体重が加わっているため、足関節の内返し外返しの度合いは、距腿関節や膝関節、股関節等に加わる負担に影響がある。したがって、身体に加わる負担を軽減し適切な足移動を促すために最適なインソールを選択するためには、足関節の内返し外返しの度合いも非常に重要である。
【0067】
また、荷重が踵から爪先に移動する際の経路は、着地時の足関節の内転外転の度合いによって異なる。また、着地後に荷重が移動する際には、後ろ側の足で地面を蹴った際の力が足裏から腓骨、脛骨、距腿関節、踵骨へと伝達されるため、足関節の内転外転の度合いは、距腿関節や膝関節、股関節等に加わる負担に影響がある。したがって、身体に加わる負担を軽減し適切な足移動を促すために最適なインソールを選択するためには、足関節の内転外転の度合いも非常に重要である。
【0068】
また、足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、足関節の内転外転の度合いは、それぞれ足裏の角度を測定するだけで取得できるため、計測を簡便かつ迅速に行うことができる。さらに、足裏における荷重移動を直接測定しなくとも、足関節の底屈背屈の度合い、足関節の内返し外返しの度合い、足関節の内転外転の度合いを組み合わせることで、荷重移動の推定または荷重移動データの代用をすることができる。これにより、適切なベースインソール10と適切な補強インソール11~17の組み合わせを簡便かつ迅速に選択することが可能となる。
【0069】
また、足移動データに歩幅、足の軌跡、足の持ち上げ高さ、足の振り速度、幅方向の両足間距離等を含め、これらのデータをさらに参照することで、さらに細かなインソールの選択を行うことができる。
【0070】
また、推奨運動提示部220でインソールに関連付けられた推奨運動情報を提示することで、適切な歩行や走行を実現するためにインソール利用者に適した運動を助言することができる。これにより、ベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせによる歩行や走行の補助だけではなく、転倒しにくい歩行姿勢や歩行方法、関節の負担を軽減できる歩行姿勢や歩行方法をインソール利用者に促し、傷病の予防に役立てることができる。
【0071】
また、推奨運動情報に筋膜リリース方法、歩行改善方法、トレーニング方法が含まれることで、高齢者や歩行困難者等に対しては適切なリハビリテーションの情報を提供することができる、また、特定の競技種目を行う競技者に対しては、傷病の予防や競技パフォーマンスの向上に役立つ情報を提供することができる。
【0072】
また、属性情報取得部110でインソール利用者に関する属性情報を取得し、インソール選択部360によるベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせの選択時に、属性情報を合わせて用いることで、インソール利用者の属性を加味してより適切なインソールの選択と提示を行うことができる。
【0073】
また、足形データ取得部120で足形データを取得し、インソール選択部360によるベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせの選択時に、足形データを合わせて用いることで、インソール利用者の足形を加味してより適切なインソールの選択と提示を行うことができる。
【0074】
上述したように、本実施形態のインソール提示システム1000およびインソール提示方法では、ベースインソール10と補強インソール11~17との組み合わせであるインソール情報が、足移動データに基づいて選択されるため、簡便な計測で必要なデータを容易に取得することが可能となる。また、測定に関する専門知識や装置操作の習熟が不要となる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、マトリクスに記録された属性情報、足形データおよび足移動データとの関連度合いに基づいて、インソール選択部360がベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせを選択する例を示したが、本実施形態では、予め定められた関係に基づいて選択する。
【0076】
一例としては、目標値となる足移動データが目標データとして予めインソール選択部360に記録されており、インソール利用者の足移動データと目標データの差分を算出して、差分に基づいてベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせを選択する。より具体的な例としては、足関節の底屈背屈の度合いの目標データがX度であり、足移動データ取得部130で取得した足関節の底屈背屈の度合いがY度である場合に、その差分である(X-Y)度に基づいてベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせを選択する。同様に、足関節の内返し外返しの度合い、足関節の内転外転の度合いに関しても、目標データと測定値の差分を算出してインソール選択に用いる。また、目標データを予め記録しておく代わりに、複数のインソール利用者による足移動データの測定結果の平均値を目標データとして用いるとしてもよい。
【0077】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、属性情報取得部110で現在の健康状態である健康状態履歴情報を取得し、識別番号と健康状態履歴情報とを関連付けて属性情報データベース310に記録する。
【0078】
属性情報データベース310には、識別番号と関連付けられて属性情報、足形データ、足移動データ、提示されたインソールの情報、提示された推奨運動の情報が記録されている。したがって、健康状態履歴情報を属性情報データベース310に記録することで、インソールと推奨運動の利用と健康状態の履歴を分析することが可能となる。
【0079】
インソール選択部360および推奨運動選択部370は、属性情報データベース310に記録された属性情報、足形データ、足移動データ、提示されたインソールの情報、提示された推奨運動の情報、および健康状態履歴情報について、機械学習により関係を分析し、次回以降にベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせを選択する際に、当該機械学習によって得られた分析結果も参照することができる。これにより、インソールと推奨運動の利用による傷病の防止や運動能力低下防止等の効果をさらに高めることが可能となる。
【0080】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態から第3実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、情報取得装置100に姿勢データ取得部を備え、インソール利用者の立位または歩行動作時の姿勢のデータを姿勢データとして姿勢データ取得部が取得する。インソール選択装置300には姿勢データベースを備え、姿勢データベースには姿勢データ取得部が取得した姿勢データが、識別番号に関連付けられて記録される。また、インソール選択部360は、ベースインソール10と補強インソール11~17の組み合わせの選択時に、姿勢データベースに記録された姿勢データを合わせて用いることで、インソール利用者の姿勢を加味してより適切なインソールの選択と提示を行うことができる。
【0081】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態から第4実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、インソール選択装置300に靴データベースと靴選択部を備え、インソール提示装置200に靴提示部を備える。また、靴データベースには、インソールと関連付けられた靴の情報が記録されている。靴選択部は、インソール選択部360によって選択されたインソール情報に基づいて、靴データベースから適切な靴情報を選択し、靴提示部はインソール提示装置200の操作者に対して選択された靴情報を提示する。また、インソール選択部360は、靴選択部で選択された靴の情報(一例としては靴のアウトソールやアッパーの構造、素材等)に基づいて、インソールの形状や素材を再選択するとしてもよい
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1000…インソール提示システム
100…情報取得装置
200…インソール提示装置
300…インソール選択装置
10…ベースインソール
11~17…補強インソール
110…属性情報取得部
120…足形データ取得部
130…足移動データ取得部
210…インソール提示部
220…推奨運動提示部
310…属性情報データベース
320…足形データベース
330…足移動データベース
340…インソールデータベース
350…推奨運動データベース
360…インソール選択部
370…推奨運動選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7