(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160942
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】手術ロボットによって骨セメントを分注するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/46 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61F2/46
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061820
(22)【出願日】2024-04-07
(31)【優先権主張番号】23171441.1
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォーグト,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097CC05
4C097EE00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PMMA骨セメントの機械的適用のための分注デバイスを提供する。
【解決手段】機械によって骨セメントを分注するためのデバイス100であって、手術ロボットに接続するように構成された接続部101と、骨セメントを分注するように構成された押出し部102と、骨セメントを収容する容器を受け入れるように構成された受入れ部103と、事前画定された量の骨セメントを押出し部によって容器から分注するために制御部に接続するように構成されたインターフェース105とを備えるデバイスに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械によって骨セメントを分注するためのデバイス(100)であって、手術ロボットに接続するように構成された接続部(101)と、骨セメントを分注するように構成された押出し部(102)と、骨セメントを収容する容器(104)を受け入れるように構成された受入れ部(103)と、事前画定された量の骨セメントを前記押出し部(102)によって前記容器(104)から分注するために制御部に接続するように構成されたインターフェース(105)と、を備えるデバイス。
【請求項2】
前記インターフェース(105)が、前記押出し部(102)によって分注された前記骨セメントの量を伝達し、前記事前画定された量に到達すると前記骨セメントの更なる分注を停止するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記押出し部(102)によって分注された前記骨セメントの量を判定するために前記インターフェース(105)に作動的に接続されたセンサ(106)も備える、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記センサ(106)が、光学センサ、機械センサ、又は磁気センサである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサ(106)が、マーキング(107)の空間位置を検出し、それによって前記押出し部(102)によって分注された前記骨セメントの量を判定するように構成されており、前記マーキングが、好ましくは前記押出し部(102)の色付き構成要素であり、特に好ましくはプランジャの封止リングである、請求項3又は4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記センサ(106)及び/又は前記インターフェース(105)が、前記押出し部(102)及び/又は前記容器(104)の内部体積(108)を判定するように構成されている、請求項3~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記センサ(106)が、前記デバイスの外側に前記受入れ部(103)に沿って延びるセンサストリップ(109)に配置されている、請求項3~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記接続部(101)が、前記デバイスに電力を供給する及び/又は制御信号を受信するように構成された電気接続点を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記接続部(101)が、加圧媒体に連通するための連通点を備え、前記加圧媒体が、好ましくは圧縮空気、真空源、又は油圧媒体である、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記押出し部(102)が、前記押出し部によって骨セメントを分注するように構成された駆動装置(109)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記駆動装置(109)が、油圧式、空気圧式、又は電気式の駆動装置である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記インターフェース(105)が、前記駆動装置(109)を制御するように構成されている、請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスがまた、前記容器(104)内で機械によって骨セメントを混合するように構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイスを制御するためのコンピュータプログラムであって、前記押出し部(102)及び/又は前記センサ(106)を動作させるように構成されたコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイスと、骨セメントを収容する容器(104)とを備えるキットであって、前記容器が、好ましくは骨セメントを混合するように構成された、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術の分野に関し、詳細には、手術ロボットによって骨セメントを分注するためのデバイスに関する。これらのデバイスは、関節スペーサなどの医療用インプラントの移植中に使用することができる。そのようなデバイスは、手術ロボットに接続することができ、又は手術ロボットの一部とすることができる。PMMA骨セメントを機械的に適用する方法も記載される。
【背景技術】
【0002】
PMMA骨セメントは、外科及び整形外科において、骨組織内に人工関節を固定するために使用される。PMMA骨セメントは通常、液体モノマー構成成分及び粉末構成成分から構成される。モノマー構成成分は通常、中に溶解したモノマーのメタクリル酸メチル及び活性剤(N,N-ジメチル-p-トルイジン)を含有する。骨セメント粉末とも呼ばれる粉末構成成分は通常、メタクリル酸メチル、及びスチレン、メチルアクリレート、又は同様のモノマーなどのコモノマーに基づいて重合、好ましくは懸濁重合によって生成された1つ以上のポリマー、放射線不透過剤、並びに開始剤過酸化ジベンゾイルを含有する。粉末構成成分がモノマー構成成分と混合されると、メタクリル酸メチル中の粉末構成成分のポリマーが膨張する結果、塑性変形可能な生地が作製され、これが実際の骨セメントになる。粉末構成成分がモノマー構成成分と混合されるとき、活性剤N,N-ジメチル-p-トルイジンが過酸化ジベンゾイルと反応してラジカルを形成する。形成されたラジカルは、メタクリル酸メチルのラジカル重合を開始する。メタクリル酸メチルの重合が進行するにつれて、セメント生地の粘度が増大し、やがてセメント生地は凝固する。上述した開始構成成分、そこから作製された骨セメント生地、及びこの骨セメント生地が硬化した結果として作製された骨セメントを、本明細書では個別にも全体としても、「骨セメント」と呼ぶ。
【0003】
ポリメチルメタクリレートの骨セメントは、好適な混合ビーカー内でスパチュラの助けを借りて、セメント粉末をモノマー液体と混合することによって混合することができる。骨セメント生地には気泡が混入することがあり、これは硬化させた骨セメントの機械特性に悪影響を及ぼす可能性がある。混合ビーカー内で混合された骨セメント生地は通常、スパチュラを使用して適用される。
【0004】
骨セメント生地内への空気の混入を回避するために、カートリッジ内で手動式のミキサを使用してセメント構成成分が混合される複数の真空セメント接合システムが記載されている。その例として、米国特許第6,033,105(A)号、米国特許第5,624,184(A)号、米国特許第4,671,263(A)号、米国特許第4,973,168(A)号、米国特許第5,100,241(A)号、国際公開第99/67015(A1)号、欧州特許第1020167(A2)号、米国特許第5,586,821(A)号、欧州特許第1016452(A2)号、独国特許第3640279(A1)号、国際公開第94/26403(A1)号、欧州特許第1005901(A2)号、米国特許第5,344,232(A)号の文献が引用される。
【0005】
セメント接合技術の更なる開発は、セメント粉末及びモノマー液体の両方がカートリッジシステムの別個のコンパートメント内にすでに包装されており、セメント適用の直前になって初めてカートリッジシステム内で互いに混合されるセメント接合システムである。そのような閉鎖された「完全事前パック式混合システム」は、欧州特許第0692229号、独国特許第102009031178号、米国特許第5997544号、米国特許第6709149号、独国特許第69812726号、及び米国特許第5588745号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
完全事前パック式混合システムは、独国特許第102016121606(B4)号及び独国特許第102016121607(B4)号の明細書に記載されている。この混合システムにおいて、カートリッジは垂直に保持され、カートリッジヘッドが上部で垂直になり、モノマー液体は押出しデバイスによって下から押されて圧縮セメント粉末に入り、セメント粉末はモノマー液体によって濡れ、セメント粉末粒子間に位置決めされた空気が、モノマー液体によって上へ押し出される。気泡を含まないセメント生地が、機械的混合デバイスの作用なしに作製される。以下でより詳細に提示するように、そのような完全事前パック式混合システムは、本明細書に記載するデバイスとともに使用することができることが特に有利である。
【0007】
好ましい実施形態
現在知られている真空混合システム及び事前パック式混合システムの場合、PMMAセメント生地は、PMMAセメント生地が充填されたカートリッジが手動で動作可能な押出しデバイスに接続され、次にセメント生地がこの押出しデバイスによってカートリッジから手動で押し出されるようにして適用されることが多い。これはたとえば、人工膝関節の移植のプロセスの範囲内で行うことができる。セメントが押し出されるにつれて、医療ユーザは、セメント接合されるべき人工膝関節の表面上で、必要であれば脛骨及び大腿骨の骨インプラント床の上で、分注管を動かすことができる。それによって、セメント生地を一様に分散させることができ、次に人工膝関節の脛骨及び大腿骨構成要素を、事前に準備された脛骨及び準備された大腿骨へ押し付けることができる。それによって、均一なセメント分散及び骨組織と関節構成成分との間の均質な接合を可能にすることができる。余分なセメント生地は、手動で取り除くことができる。人工股関節をセメント接合するとき、寛骨臼カップも同様にセメント接合することができる。人工股関節のシャフトをセメント接合する場合、逆に近位大腿骨内の事前に準備されたチャネルが、セメント生地で充填される。次いで、セメント生地が加圧器によって海綿骨内へ押し込まれる。次いで、人工股関節のシャフトが、骨セメント生地で充填された大腿骨のチャネル内へ挿入され、それによって余分な骨セメント生地を移動させる。
手術ロボットは、外科及び整形外科でますます使用されている。手術ロボットは、特にセメントを含まない人工膝関節の移植において役割を担う。たとえば、人工膝関節及び人工股関節などのセメント接合されたプロテーゼも、手術ロボットの助けを借りて移植することができれば望ましいはずである。
【0008】
本発明の一目的は、骨セメント、たとえばPMMA骨セメントの機械的適用のためのデバイスを提供することであり、このデバイスは、手術ロボットに接続可能であり、又は接続されている。デバイスは、事前画定された期間内のカートリッジからの骨セメント量の機械的適用を可能にすることができ、この骨セメント量は、外科医によって前もって画定される。セメント接合プロセス中、デバイスは、好ましくは、ロボットアームによって動かすことができる。デバイスは、好ましくは、押し出されるべきセメント量を精密に計測することが可能である。この計測プロセスは、好ましくは、時間的に制御可能とすることができ、したがって手術ロボットは、x軸、y軸、及びz軸の方向に動きを画定することによって、骨セメント生地をインプラント及び骨組織に厳密に位置決めすることができる。この目的で、デバイスは、事前に混合されたPMMAセメント生地をすでに収容するカートリッジに接続されるように設計することができる。これは、医療ユーザが、セメント構成成分をカートリッジ内で混合してPMMA骨セメント生地を形成し、次にカートリッジをデバイスに接続することを意味し、デバイスは、ロボットアームにすでに位置決めされており、又はロボットアームに接続することができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、混合されていないセメント構成成分、たとえばモノマー液体及びセメント粉末を収容するカートリッジに接続することができる。この場合、本明細書に記載するデバイスによって、独国特許第102016121606(B4)号及び独国特許第102016121607(B4)号の明細書によれば、カートリッジヘッドへの分注プランジャの動きによってセメント構成成分を混合することができ、骨セメント生地の形成後、次にこのセメント構成成分をカートリッジから押し出すことができる。一変形形態では、本明細書に記載するデバイスは、骨セメント生地を押し出すための電気モータ及び複雑な変速機の使用が不要になるように設計することができる。たとえばこの目的で、空気圧又は油圧式の駆動装置を提供することができる。空気圧又は油圧源は、好ましくは、本明細書に記載するデバイスの外側及び接続されたロボットの外側に配置することができる。それによって、ロボットアームの重量負荷を制限することができ、費用効果の高いデバイスの作製を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するデバイスは、電気モータ及び変速機を使用して骨セメントを押し出すプロセスを実施するように構成することができる。更に、いくつかの実施形態では、駆動目的で手術室においてすでに利用可能である十分に制御可能なエネルギー源を、本明細書に記載するデバイスを駆動するために使用することができる。
【0009】
本発明の一目的は、上述した問題及び従来技術の更なる問題のうちの1つ以上を解決することである。たとえば、本発明は、機械によって、特に手術ロボットによって、骨セメントを分注することを可能にする。
これらの目的は、本明細書に記載する方法及びデバイス、特に特許請求の範囲に記載する方法及びデバイスによって実現される。
本発明の好ましい実施形態を、以下に記載する。
【0010】
第1の実施形態は、機械によって骨セメントを分注するためのデバイスであって、手術ロボットに接続するように構成された接続部と、骨セメントを分注するように構成された押出し部と、骨セメントを収容する容器を受け入れるように構成された受入れ部と、事前画定された量の骨セメントを押出し部によって容器から分注するために制御部に接続するように構成されたインターフェースと、を備えるデバイスについて説明する。
【0011】
第2の実施形態は、インターフェースが、押出し部によって分注された骨セメントの量を伝達し、事前画定された量に到達すると骨セメントの更なる分注を停止するように構成されている、第1の実施形態に記載のデバイスについて説明する。
【0012】
第3の実施形態は、押出し部によって分注された骨セメントの量を判定するためにインターフェースに作動的に接続されたセンサも備える、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスについて説明する。
【0013】
第4の実施形態は、センサが、光学センサ、機械センサ、又は磁気センサである、第3の実施形態に記載のデバイスについて説明する。
【0014】
第5の実施形態は、センサが、マーキングの空間位置を検出し、それによって押出し部によって分注された骨セメントの量を判定するように構成されており、マーキングが、好ましくは押出し部の色付き構成要素であり、特に好ましくはプランジャの封止リングである、第3又は第4の実施形態に記載のデバイスについて説明する。
【0015】
第6の実施形態は、センサ及び/又はインターフェースが、押出し部及び/又は容器の内部体積を判定するように構成されている、第3~第5の実施形態のいずれか1つに記載のデバイスについて説明する。
【0016】
第7の実施形態は、センサが、デバイスの外側に受入れ部に沿って延びるセンサストリップに配置されている、第3~第6の実施形態のいずれか1つに記載のデバイスについて説明する。
【0017】
第8の実施形態は、接続部が、デバイスに電力を供給する及び/又は制御信号を受信するように構成された電気接続点を備える、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスについて説明する。
【0018】
第9の実施形態は、接続部が、加圧媒体に連通するための連通点を備え、加圧媒体が、好ましくは圧縮空気、真空源、又は油圧媒体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスについて説明する。
【0019】
第10の実施形態は、押出し部が、押出し部によって骨セメントを分注するように構成された駆動装置を備える、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスについて説明する。
【0020】
第11の実施形態は、駆動装置が、油圧式、空気圧式、又は電気式の駆動装置である、第10の実施形態に記載のデバイスについて説明する。
【0021】
第12の実施形態は、インターフェースが、駆動装置を制御するように構成されている、第10又は第11の実施形態に記載のデバイスについて説明する。
【0022】
第13の実施形態は、デバイスがまた、容器内で機械によって骨セメントを混合するように構成されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスについて説明する。
【0023】
更なる態様は、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスを制御するためのコンピュータプログラムであって、押出し部及び/又はセンサを動作させるように構成されたコンピュータプログラムに関する。
【0024】
更なる態様は、第1~第13の実施形態のいずれか1つに記載のデバイスと、骨セメントを収容する容器とを備えるキットであって、容器が、好ましくは骨セメントを混合するように構成された、キットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
その要素が原則的に特定の特徴(たとえば、材料)を「有する(have)」又は「備える(comprise)」本明細書に記載する実施形態に関しては、関連する要素がその特徴のみからなる、すなわちいかなる他の構成要素も備えない更なる実施形態が常に企図される。本明細書では、「備える(comprise)」又は「備える(comprising)」という単語は、「有する(have)」又は「有する(having)」という単語と同義で使用される。
一実施形態では、要素が単数形によって示される場合、2つ以上のそのような要素が存在する実施形態も企図される。原則的に、複数形の要素に対する用語の使用は、単一の対応する要素のみが含まれる実施形態も包含する。
別途指示されない限り、又は文脈から明確に除外されない限り、本明細書に記載する他の実施形態において異なる実施形態の特徴も存在することが原則的に可能であり、本明細書で明確に企図される。同様に、原則的に、方法に関連して本明細書に記載するすべての特徴は、本明細書に記載する生成物及びデバイスにも適用可能であり、逆も同様であることが企図される。説明を簡潔に保つことだけを目的として、すべてのそのような考えられる組合せが、すべての事例で明示的に列挙されるわけではない。原則的に、本明細書に記載する特徴と同等であることが知られている技術的解決策は、本発明の範囲によっても包含されることが意図される。
【0026】
本発明の第1の態様は、第1の実施形態において、機械によって骨セメントを分注するためのデバイスであって、手術ロボットに接続するように構成された接続部と、骨セメントを分注するように構成された押出し部と、骨セメントを収容する容器を受け入れるように構成された受入れ部と、事前画定された量の骨セメントを押出し部によって容器から分注するために制御部に接続するように構成されたインターフェースと、を備えるデバイスに関する。
【0027】
本明細書に記載するデバイスは、機械によって骨セメントを分注するように提供される。それに応じて、これらのデバイスは、好ましくは、電子制御式の駆動装置によって骨セメントを分注するように構成される。これらのデバイスは、手術ロボットとともに使用することができることが有利である。手術ロボットの一例は、欧州特許第3743004(A1)号に記載されている。そのようなロボットは、好ましくは、ロボットの動作を可能にするための駆動部及び制御部を備える。本明細書に記載するデバイスは、ロボットのそのような制御部に接続されるように構成されたインターフェースを備える。それによって、本発明によるデバイスは、ロボットの制御部と作動的に相互作用することができる。たとえば、ロボットの制御部は、インターフェースによって本発明によるデバイスからの骨セメントの分注を制御することができる。この目的で、インターフェースは、デバイスの押出し部に作動的に接続することができる。いくつかの実施形態では、インターフェースは、ロボットの制御部からの制御信号を押出し部へ転送するように構成される。いくつかの実施形態では、インターフェースは、制御部からのそのような制御信号を処理し、処理された制御信号を押出し部へ送達するように構成することができる。
いくつかの実施形態では、デバイスは、手術ロボットのロボットアームに取り付けることができる。これにより、ロボットアームがデバイスと相互作用することによって、デバイスから分注される骨セメントの空間位置を制御することを可能にすることができる。それによって、好ましくは、骨セメントの3次元制御可能な分注を実施することができる。
【0028】
本明細書に記載する骨セメントの開始構成成分、たとえば粉末構成成分及び液体構成成分、そこから作製された骨セメント生地、並びにこの骨セメント生地が硬化した結果として作製された骨セメントを、本明細書では個別にも全体としても、「骨セメント」と呼ぶ。骨セメントの好ましい例は、PMMA骨セメントである。デバイスは、完全に混合された骨セメントを収容する容器を受け入れるように、又は骨セメントの複数の分離された構成成分を収容する容器を受け入れるように構成することができる。デバイスは、これらの構成成分を混合するように構成することができる。この混合プロセスは、好ましくは、手術ロボットによって制御可能とすることができる。
【0029】
本発明によるデバイスは、骨セメントを収容する容器を受け入れるように構成された受入れ部を備える。いくつかの実施形態では、受入れ部は、市販の分注デバイス又は骨セメントを混合するためのデバイスを受け入れるように構成される。いくつかの実施形態では、受入れ部は、別個のコンパートメント内に骨セメントを生成するための必要な構成成分を収容する容器を受け入れるように構成される。一実施形態では、受入れ部は、骨セメントを混合し、次に分注することができる容器を受け入れるように構成される。いくつかの実施形態では、デバイスは、受け入れられるべき容器内の骨セメントをロボットによって混合し、この骨セメントを押出し部によって分注するように構成される。本発明によるデバイスを使用することができる特に好ましい容器は、参照により本明細書に完全に組み込まれている、独国特許第102016121606(B4)号及び独国特許第102016121607(B4)号に記載されている。独国特許第102016121606(B4)号は、骨セメントを混合及び適用するための骨セメントアプリケータについて説明しており、閉鎖されたカートリッジ内で骨セメントの開始構成成分を混合して、骨セメント生地を形成することができ、カートリッジは、分注開口部を有する複数の部分からなる閉鎖システムを備え、閉鎖システムの少なくとも2つの部分は、混合された骨セメント生地の動きによって駆動されて互いに対して可動であり、こうして閉鎖システムの少なくとも2つの部分が互いに対して動く結果、分注開口部が開き、骨セメント生地にかかる圧力によって、混合された骨セメント生地の動きが駆動される。
骨セメントを収容する容器を受け入れるために、押出し部は、たとえば容器にフォームフィット接続するように構成された好適な接続要素を有するように提供することができる。たとえば、そのような接続要素は、バヨネット閉鎖部又はスナップ閉鎖部とすることができる。接続要素は、容器へのフォームフィット接続を可能にするフック、タブ、又はねじ山を備えることができる。
【0030】
デバイスは、骨セメントを分注するように構成された押出し部を備える。押出し部は、たとえば、骨セメントを収容する受け入れられた容器に圧力をかけるように構成されたプランジャを備えることができる。押出し部は、骨セメントを収容する受け入れられた容器に圧力をかけるように構成された可動な板を備えることができる。プランジャ又は板は、骨セメントを収容する受け入れられた容器内へ軸方向に動くように配置することができる。
【0031】
デバイスは、ハウジングを備えることができ、ハウジングはたとえば、実質的に円筒形の基本形状を有することができる。押出し部は、このハウジング内に配置することができる。ハウジング上に、押出し部のための当接部を配置及び締結することができる。当接部は、たとえば、ねじ又はリベットによってハウジングに締結することができる。
【0032】
一実施形態では、デバイスは、押出し部によって分注された骨セメントの量を判定するように構成される。これは、たとえば、押出し部の要素の位置、たとえば容器から骨セメントを分注するために骨セメントを収容する容器に圧力をかけるプランジャ又は板の位置を判定することによって行うことができる。この目的で、押出し部の要素は、センサによって位置を判定することができるマーキングを備えることができる。
【0033】
一実施形態では、インターフェースは、押出し部によって分注された骨セメントの量をロボットに伝達し、事前画定された量に到達すると骨セメントの更なる分注を停止するように構成される。
【0034】
一実施形態では、デバイスはセンサを備える。センサは、好ましくは、押出し部によって分注された骨セメントの量を判定するために、及び/又はその量をロボットに伝達するために、インターフェースに作動的に接続される。
【0035】
センサは、光学センサ、機械センサ、又は磁気センサとすることができる。光学センサは、たとえば、カメラ又はフォトダイオードとすることができる。デバイスはまた、光源、たとえば発光ダイオード又はレーザーを備えることができる。センサは、たとえば、伝播時間測定を行うセンサ、位相変調を行うセンサ、三角測量センサ、又は干渉センサとすることができる。
磁気センサは、たとえば、磁気ひずみの機能原則に従って押出し部の可動部分の相対位置を判定するように構成することができる。そのようなセンサは、たとえば、デバイス内に不動に配置された測定ベースと、導波管と、可動磁石と、信号変換器とを収容することができる。磁力によって、導波管内に機械的振動を生成することができる。この振動の伝播時間を判定することによって、2つの画定された点同士の間の距離を測定することができる。信号変換器は、センサの機械的振動を測定信号に変換するように構成することができる。
【0036】
センサは、押出し部の要素の移動距離を検出するように構成することができる。たとえば、これは、センサが押出し部の駆動装置と作動的に相互作用することによって実現することができる。
【0037】
一実施形態では、センサは、マーキングの空間位置を検出し、それによって押出し部によって分注された骨セメントの量を判定するように構成される。マーキングは、好ましくは、押出し部の色付き構成要素、たとえばプランジャ又は板の封止リングとすることができる。マーキングは、デバイスのうちマーキングを取り囲む要素とは異なる色とすることができる。
【0038】
一実施形態では、センサは、押出し部の内部体積を判定するように構成される。一実施形態では、センサは、骨セメントを収容する容器の内部体積を判定するように構成される。一実施形態では、インターフェースは、押出し部の内部体積を判定するように構成される。一実施形態では、インターフェースは、骨セメントを収容する容器の内部体積を判定するように構成される。
このようにして、デバイスによって分注された骨セメントの量を判定することができる。
【0039】
センサは、センサストリップに配置することができる。センサストリップは、便宜上、押出し部によって分注された骨セメントの量を判定するために、デバイスに取り付けることができる。一実施形態では、センサストリップは、受入れ部に沿って、又は押出し部に沿って、デバイスの外側に延びる。センサストリップは、軸方向又は長手方向に、デバイスに沿って延びることができる。必要であれば、複数のセンサを提供することができる。これらのセンサは、たとえば、デバイスのハウジングの外側に沿って周囲に配置することができる。
【0040】
更なる実施形態では、接続部は、電気接続点を備える。電気接続点は、デバイスに電力を供給するように構成することができる。特に、電気接続点は、押出し部及び/又はセンサに電力を供給するように構成することができる。別法として、又は加えて、電気接続点は、制御信号を受信するように構成することができる。そのような制御信号は、たとえば、手術ロボット又は別の外部制御デバイスによるデバイスの異なる部分の外部からの制御のために使用することができる。たとえば、センサ及び/又は押出し部は、このようにして外部から制御及び/又は監視することができる。
【0041】
一実施形態では、接続部は、加圧媒体に連通するための連通点を有する。加圧媒体は、たとえば、圧縮空気、真空源、又は油圧媒体とすることができる。加圧媒体は、約1000hPaの通常の周囲圧力より著しく高い又は著しく低い圧力を有する。加圧媒体を使用して、押出し部を駆動することができる。それに応じて、一実施形態では、押出し部は、加圧媒体によって駆動されるように構成される。
【0042】
一実施形態では、押出し部は、押出し部によって骨セメントを分注するように構成された駆動装置を備える。この目的で、駆動装置は、押出し部に作動的に接続することができ、したがって押出し部は、骨セメントを収容する容器に作用することによって、骨セメントの分注を生じさせることができる。
【0043】
一実施形態では、駆動装置は、油圧式、空気圧式、又は電気式の駆動装置である。油圧又は空気圧式の駆動装置は、加圧媒体に連通するために、上述した連通点に流体連通することができる。デバイスは、それに応じて、加圧媒体のための入口及び出口を備えることができる。入口及び/又は出口は、機械又は電気コントローラを備えることができる。入口及び/又は出口は各々、弁を備えることができる。特に、デバイスが空気圧式の駆動装置を備える場合、出口はまた、放出された流体媒体、たとえば圧縮空気を清浄にするためのフィルタを備えることができる。細菌による周囲空気の汚染を防止することができるフィルタが特に有利である。そのようなフィルタは、本分野で滅菌フィルタとも呼ばれる。そのようなフィルタは、たとえば、50nm~500nmの孔径を有することができ、この孔径は、保持された粒子の名目上の(nominal)体積に関係する。
【0044】
一実施形態では、インターフェースは、駆動装置を制御するように構成される。たとえば、インターフェースは、外部制御信号をデバイスへ転送して、デバイスによって事前画定された量の骨セメントを分注するように、油圧式又は空気圧式の駆動装置の電気モータ又は制御弁を制御することができる。
【0045】
デバイスは、骨セメントを収容する容器を受け入れるように構成された受入れ部を備える。容器は、完全に混合された骨セメントを収容することができ、又は骨セメントの個々の構成成分を別個に収容することができる。一実施形態では、デバイスは、骨セメントを容器内で機械的に混合するように構成される。この場合、手術室スタッフが骨セメントを混合する必要はなく、デバイスは、場合によりそれに応じてデバイスを制御する手術ロボットの制御下で、混合プロセスを受ける。したがって、そのような実施形態によれば、デバイスの助けを借りて手術ロボットによって、骨セメントの混合及び分注の両方を行うことができる。一実施形態では、デバイスは、手術ロボットによって、1つ以上の事前画定された空間位置内で標的を定めて骨セメントを分注するように構成される。これにより、外科医が処置を実行するための骨セメント分注デバイスの手動の案内を不要にすることができる。なぜならこのタスクは、本明細書に記載するデバイスの助けを借りて、手術ロボットによって行われるからである。
【0046】
更なる態様は、本明細書に記載するデバイスを制御するためのコンピュータプログラムに関する。コンピュータプログラムは、押出し部を動作させるように特に構成することができる。別法として、又は加えて、コンピュータプログラムは、センサを動作させるように構成することができる。コンピュータプログラムは、データキャリアに記憶することができる。それに応じて、一実施形態はまた、そのようなコンピュータプログラムが記憶されたデータキャリアを備える。コンピュータプログラムは、たとえば、
1)押出し部を起動する工程であって、押出し部を起動した結果としてデバイスによる骨セメントの分注が行われる、起動する工程と、
2)好ましくはデバイスのセンサからの測定値に基づいて、デバイスによって分注された骨セメントの量を計算する工程と、
3)その量を事前画定された値と比較する工程と、
4)その量に到達した場合、又はその量が事前画定された値を超過した場合、押出し部を停止させる工程とのうちの1つ以上若しくはすべてを含むことができ、又はこれらの工程を実施するように構成することができる。
【0047】
更なる態様は、本明細書に記載するデバイスと、骨セメントを収容する容器とを備えたキットであって、容器が、好ましくは骨セメントを混合及び/又は分注するように構成された、キットに関する。
容器は、完全事前パック式混合システムとすることができる。完全事前パック式混合システムは、セメント粉末及びモノマー液体の両方がカートリッジシステムの別個のコンパートメント内に包装されており、セメント適用の直前になって初めてカートリッジシステム内で互いに混合されて骨セメントを形成するセメント接合システムである。
完全事前パック式混合システムの例は、独国特許第102016121606(B4)号及び独国特許第102016121607(B4)号に記載されている。そのような混合システムでは、カートリッジを垂直に保持することができ、カートリッジヘッドが上部で垂直になり、押出しデバイスによってモノマー液体を下から押して圧縮セメント粉末に入れることができ、セメント粉末をモノマー液体によって濡らすことができ、セメント粉末粒子間に位置決めされた空気をモノマー液体によって上へ押し出すことができる。
容器は、好ましくは、本明細書に記載するデバイスに接続するように構成された接続要素、たとえばフォームフィット接続要素を収容する。容器はまた、混合ロッドを備えることができる。キットはまた、骨セメントを容器から放出するためのノズルを備えることができる。骨セメントは、抗生物質を含有することができる。
【0048】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載するデバイス、本明細書に記載するコンピュータプログラム、及び/又は本明細書に記載するキットによって骨セメントを分注するように構成された手術ロボットである。手術ロボットは、本明細書に記載するデバイスを一体部分として収容することができ、又は単にそのようなデバイスに接続するように構成することができる。たとえば、手術ロボットは、デバイスの接続要素のための接続点を備えることができる。ロボットは、デバイスのセンサを監視するように、及び/又はデバイスの押出しデバイスを制御するように構成することができる。ロボットは、本明細書に記載するデバイスの電気接続点に作動的に接続するように構成することができる。ロボットはまた、押出しデバイスを駆動するために使用することができる加圧媒体をデバイスに供給するための連通点を備えることができる。手術ロボットは、本明細書に記載するデバイスによって、骨セメントを混合するように、及び/又は骨セメントを分注するように設計及び構成することができる。
【0049】
手術ロボットはまた、本明細書に記載するデバイスを制御するためのコンピュータプログラムを収容することができる。これに関して、本明細書では前述の記載を参照する。
【0050】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載するデバイス、本明細書に記載するコンピュータプログラム、本明細書に記載する手術ロボット、及び/又は本明細書に記載するキットによって骨セメントを分注することを含む治療処置方法である。
【実施例0051】
本発明について実施例を使用して以下で更に説明するが、これらの実施例は限定的なものとして理解されるべきではない。本明細書に記載する特徴の代わりに、他の同等の手段も同様に使用することができることが、当業者には明らかである。
機械によって骨セメントを分注するためのデバイス(100)であって、手術ロボットに接続するように構成された接続部(101)と、骨セメントを分注するように構成された押出し部(102)と、骨セメントを収容する容器(104)を受け入れるように構成された受入れ部(103)と、事前画定された量の骨セメントを前記押出し部(102)によって前記容器(104)から分注するために制御部に接続するように構成されたインターフェース(105)と、を備えるデバイス。
前記インターフェース(105)が、前記押出し部(102)によって分注された前記骨セメントの量を伝達し、前記事前画定された量に到達すると前記骨セメントの更なる分注を停止するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
前記押出し部(102)によって分注された前記骨セメントの量を判定するために前記インターフェース(105)に作動的に接続されたセンサ(106)も備える、請求項1に記載のデバイス。
前記センサ(106)が、マーキング(107)の空間位置を検出し、それによって前記押出し部(102)によって分注された前記骨セメントの量を判定するように構成されており、前記マーキングが、好ましくは前記押出し部(102)の色付き構成要素であり、特に好ましくはプランジャの封止リングである、請求項3又は4に記載のデバイス。
前記センサ(106)及び/又は前記インターフェース(105)が、前記押出し部(102)及び/又は前記容器(104)の内部体積(108)を判定するように構成されている、請求項3に記載のデバイス。
前記センサ(106)が、前記デバイスの外側に前記受入れ部(103)に沿って延びるセンサストリップ(109)に配置されている、請求項3に記載のデバイス。
前記接続部(101)が、加圧媒体に連通するための連通点を備え、前記加圧媒体が、好ましくは圧縮空気、真空源、又は油圧媒体である、請求項1に記載のデバイス。
請求項3に記載のデバイスを制御するためのコンピュータプログラムであって、前記押出し部(102)及び/又は前記センサ(106)を動作させるように構成されたコンピュータプログラム。
請求項1又は3に記載のデバイスと、骨セメントを収容する容器(104)とを備えるキットであって、前記容器が、好ましくは骨セメントを混合するように構成された、キット。