(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160943
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】プラズマ器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/06 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61B18/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024065213
(22)【出願日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】23171481
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツ・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】モーザー・サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ハイム
(72)【発明者】
【氏名】ボイトラー・ファビアン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体組織をプラズマ処置するための器具を提供する。
【解決手段】器具11は、長手方向に幅広くなるか、または先細りする開口部の形態のプラズマ出口窓を備える。そうすることで、結果として、個々の開口部間に存在し、かつ器具ヘッド16の近位セクションを遠位セクションに継ぎ目なく一体的に接続しているウェブの位置が傾斜している。ウェブの位置が傾斜しているため、遮蔽の影響が最小限に抑えられるか、またはなくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に作用を及ぼすための、特に人間または動物の患者を外科処置するためのプラズマ器具(11)であって、
遠位端部(13)および近位端部(14)と、長手方向(L)を規定する管腔(15)とを含むホースまたはチューブとして構成された長尺の本体(12)であって、前記管腔(15)は、前記近位端部(14)から前記遠位端部(13)まで延在し、かつガス源(G)に接続されているか、または接続可能である本体(12)と、
前記管腔(15)に接続された少なくとも2つの開口部(17、18)を有する、前記遠位端部(13)に接続されたヘッド(16)であって、前記開口部(17、18)は、前記長手方向(L)に対して斜め方向を向いたウェブ(23)によって互いに分離されているヘッド(16)とを備える
プラズマ器具。
【請求項2】
前記管腔(15)および/または前記ヘッド(16)内にプラズマ生成デバイス(30)が配置されている
請求項1に記載のプラズマ器具。
【請求項3】
電気ライン(32)を介して電源(33)に接続可能な少なくとも1つの電極(31、31a、31b)が前記プラズマ生成デバイス(30)の一部である
請求項2に記載のプラズマ器具。
【請求項4】
前記電極(31)は、前記電源(33)の一方の極に接続可能な金属製の非絶縁電極であり、前記電源(33)の他方の極は、前記患者に取り付けられる中性電極(N)に接続可能である
請求項2に記載のプラズマ器具。
【請求項5】
前記開口部(17、18)は、前記長手方向(L)に対して横断方向を向いている
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項6】
前記開口部(17、18)は、前記長手方向(L)に対して径方向を向いている
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項7】
前記ウェブ(23)は、前記ヘッド(16)の遠位側に先細りしているセクション内に配置されている
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項8】
前記ウェブ(23)は、前記ヘッド(16)の周方向(U)に傾斜している
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項9】
前記ウェブ(23)は、位置が周方向(U)に傾斜しているのに加え、前記ヘッド(16)内に長手方向(L)を中心として延在する長手方向中心軸(35)に向かって遠位側に傾斜している
請求項8に記載のプラズマ器具。
【請求項10】
前記ウェブ(23)は、長手方向(L)から見て前記開口部(17、18)が互いに隣接するか、オーバーラップするように前記長手方向(L)に対して斜め方向を向いている
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項11】
前記ヘッド(16)は、前記開口部(17~22)間に配置されている複数のウェブ(23~28)を含む
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項12】
隣接するウェブ(17~22)は、対になって互いに対して逆方向(+U、-U)に傾斜して配置されている
請求項11に記載のプラズマ器具。
【請求項13】
前記開口部(17~23)は、角(40、41、42)が丸みを帯びた三角形状に構成されている
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項14】
前記開口部(17~22)は、角が丸みを帯びた台形状に構成されている
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項15】
前記開口部(17~22)は、前記ヘッド(16)の全周にわたって延在する列をなしている
請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織に作用を及ぼすための、特に人間または動物の組織を外科処置するためのプラズマ器具に関する。このプラズマ器具は、特に、横方向または径方向に動作する器具として構成されている。
【背景技術】
【0002】
管腔(ルーメン)が近位端部から遠位端部まで貫通して延在するホース状またはチューブ状基体を有するプラズマプローブが、特許文献1から知られている。管腔は、ガス源に接続されている。その管腔を貫通して導電体が延在し、導電体は、近位側で電源に接続されている。導電体は、管腔から遠位側に突出している。電極として働く当該導体は、その遠位端部で例えばボール状または円盤状の絶縁体を支持し、絶縁体は、管腔の口のエッジと共に環状隙間を画定する。この環状隙間を通って、プラズマ流が、電源の対極に接続された最も近い生体組織の位置する方向に応じて任意の径方向に流出することができる。
【0003】
電極に支持された絶縁体に作用するいずれの力も、電極に支持されなければならず、ホースの遠位端部に伝達されなければならない。
【0004】
また、1以上の側面開口部を有するセラミックの端部ピースがホースの遠位端部に設けられ、かつそれらの側面開口部からそれぞれプラズマジェットが流出し得るプローブが知られている。しかしながら、これにより、最も近い導電性生体組織が位置する場所に応じてプラズマジェットが窓間を飛び跳ねる傾向のあることが示されている。
【0005】
生体組織に作用を及ぼすためのさらなるプラズマ器具が先行技術から知られている。例えば、特許文献2および特許文献3には、管腔が近位端部から遠位端部まで延在するホース状基体を有し、その遠位端部には1以上の側面窓を有するヘッドが配置されている器具についてそれぞれ開示されている。導電体が管腔を貫通して延在し、導電体は、その遠位端部で中心電極に接続されている。動作中、HF電圧源に接続された電極が流動ガスをイオン化し、その後、流動ガスは、プラズマ流として横方向に流出する。一実施形態では、異なる位置で軸方向に配置され、互いにわずかにオーバーラップしている2つのスリット状プラズマ出口窓が設けられている。
【0006】
特許文献4には、生体組織に作用を及ぼすためのプラズマ生成用の器具について開示されている。この場合も、器具はホース状本体を備え、そのホース状本体は、少なくとも一実施形態において、プラズマ流が貫通して流出し得る側面開口部を遠位端部に有するヘッドを支持している。
【0007】
特許文献5から知られている器具は、電極が突出している軸方向開口部を遠位端部に備える。電極は、その遠位端部で絶縁体を支持し、絶縁体は、器具の残りと共に径方向に開口する環状スリットを制限する。プラズマ流は、各周方向位置に360°の閉塞していない径方向出口を有するが、絶縁体は、電極に支持されなければならず、また、安定した方法で保持されなければならない。
【0008】
さらなる先行技術は、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10から得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1682023号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19820240号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1297082号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3831291号明細書
【特許文献5】米国特許第9510889号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2021/259756号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第3422981号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第3372183号明細書
【特許文献9】特開2002-2301088号公開
【特許文献10】英国特許出願公開第2573128号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、径方向の効力が均一な、ロバストなプラズマプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載のプローブによって達成される。
【0012】
本発明に係るプラズマ器具は、特に、内視鏡用途のプローブとして構成されている。しかしながら、このプラズマ器具は、必要に応じて腹腔鏡器具、または開腹手術用器具として構成することもできる。
【0013】
器具は、少なくとも1つの管腔が貫通して長手方向に延在するホースまたはチューブとして構成された長尺の本体を備える。その本体は、1以上の管腔を含むことができ、すなわち、単一または複数の管腔ホースにすることができる。その本体は、また、単一または複数の管腔チューブとして構成することもできる。
【0014】
本体またはその管腔の近位端部は、ガス源、例えばそれぞれの装置に接続可能であり、その装置を介して、ガス、特にアルゴンなどの不活性ガスを器具に供給することができる。装置または他のガス源は、所要圧力で所要量のガスを器具に供給するように構成されている。
【0015】
本体の遠位端部にはヘッドが設けられており、ヘッドは、1以上の管腔に接続された少なくとも2つの開口部を有し、開口部は、ウェブによって互いに分離されている。ウェブは、器具の長手方向に対して斜め方向、すなわち平行でない方向を向いている。ウェブの位置が傾斜しているため、各開口部は、その遠位端部または近位端部で異なる長さのエッジを有することができる。各ウェブに対して、遠位端部は近位端部と比べて周方向にずれていることが当てはまる。そのため、周方向は、ヘッド(およびホース)の長手方向中心軸を中心とする円によって規定されている。
【0016】
開口部は、台形状または三角形状であることが好ましい。これにより、すべての窓の長いエッジの和は、長手方向を向いたウェブの場合よりも長いことがさらに好ましい。両方の開口部に共通の径方向が存在する。そうすることで、径方向に流出するプラズマジェットは、飛び跳ねが少なくなり、ひいては、よりスムーズな変化によってある窓から別の窓へ移行することができる。プラズマジェットの衝突点における作用に関する、本発明に係る器具の挙動は、ユーザにとって予測がより正確であり、制御がより簡単である。
【0017】
好ましい実施形態において、窓の長いエッジの和は、ヘッドの周囲よりも長い。好ましい実施形態において、このことは、ヘッドが遠位方向に先細りしている際に窓の遠位端部で周囲が測定される場合に当てはまる。これにより、開口部のオーバーラップが大きくなり、それによって、プラズマ移行が特にスムーズになる。
【0018】
本発明の概念によれば、ウェブは、周方向に傾斜している。これにより、複数のウェブをそれぞれ互いに逆向きに傾斜させることができ、その結果、交互に遠位方向に先細りし、遠位方向に幅広くなる、ヘッドの周囲に沿って直列に配置される開口部が形成される。それによって、すべての開口部が近位側にて均一な軸方向位置で終端することができる。また、すべての窓の遠位限界も、それぞれ同じ軸方向位置に位置し得る。そのとき、個々の開口部の領域の中心がジグザグ線上に位置し得る。
【0019】
ウェブの周方向に傾斜した位置は、開口部が互いに軸方向および周方向においてわずかにオーバーラップする程度であることが好ましい。その場合、ある開口部から別の開口部へのプラズマジェットまたはスパークの移行は、特に連続的である。
【0020】
開口部は、三角形状、角が丸みを帯びた三角形状、好ましくは角が丸みを帯びた台形状、さらにまたは、ひし形状に構成することができる。これらすべての場合において、ウェブによるプラズマジェットまたはスパークの遮断がほぼ最小限に抑えられる。
【0021】
基本的に、プラズマジェットは、様々な方法で生成することができる。例えば、電気ラインによって電源に接続されている電極を、開口部に近接して管腔内に配置することができる。電極は、ヘッドに同心円状に配置し、ひいてはその長手方向中心軸上に位置決めすることができる。電気ラインは、管腔を貫通して延在することができるか、または本体(ホース)の材料に挿入することができる。電気ラインは、電極に電流および電圧を供給するために、その近位端部で電気ジェネレータの一方の極に接続するように構成されている。ジェネレータは、高周波発生器であることが好ましい。電極が1つしか存在しない場合、器具は、電圧源の対向電極を患者に接続しなければならないモノポーラ器具である。そのとき、電流の流れは、電極から、開口部から流出するプラズマを通って組織に向かう。
【0022】
あるいは、プラズマは、別の方法でも生成することができる。例えば、この目的のために、例えばヘッド内に組み込むことができる、少なくとも1つの電気的に絶縁された電極を、非熱プラズマを生成するために設けることができる。また、別の電極もヘッド内に組み込むことができるか、または管腔内に配置することができる。そのような電極は、ヘッド内にいわゆるバリア放電を生成するために、ラインを介して電気高周波発生器の極に接続することができる。
【0023】
本発明における有利な実施形態のさらなる詳細は、従属請求項または明細書および図面の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、供給装置に接続された本発明に係るプラズマ器具の実施形態の斜視基本図である。
【
図2】
図2は、
図1によるプラズマ器具の遠位端部の拡大側面図である(そのため正確な縮尺ではない)。
【
図3】
図3は、
図2の切断線III-IIIに沿って切断された
図1および
図2によるプラズマ器具の図である。
【
図4】
図4は、切断線III-IIIに沿って切断された
図2および
図3によるプラズマ器具の非常に拡大した部分図である。
【
図5】
図5は、幾何学的関係を説明するための
図2から明らかなヘッドの展開図である。
【
図6】
図6は、本発明に係るプラズマ器具の変更実施形態の部分切断斜視図である。
【
図7】
図7は、幾何学的関係を説明するための
図6によるヘッドの展開図である。
【
図8】
図8は、本発明に係るプローブのさらなる別の実施形態の展開図である。
【
図9】
図9は、本発明に係るプローブのさらなる別の実施形態の展開図である。
【
図10】
図10は、少なくとも2つの電極を有するプラズマプローブのヘッドの部分切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本体12として可撓性のホースを有する可撓性のプローブとして構成されたプラズマ器具11を示す。本体12は、遠位端部13および近位端部14と、近位端部14から遠位端部13まで延在する管腔15とを含む。本体12は、
図2に示すように単一の管腔15、またはさらに複数の管腔を含むことができる。本体12は、例えばプローブとして内視鏡のワーキングチャネルを通って患者の手術部位まで動くように、曲げ可能なまたは可撓性を有する方法で構成されている。内視鏡が制御可能な端部を備える場合、器具の可撓性により、それぞれの曲げの動きを行うことが可能になる。
【0026】
器具11は、内視鏡に使用可能なプローブとしてだけでなく、別の形態、例えば、本体12が剛性のチューブである腹腔鏡器具としても提供することができる。また、器具11は、短い本体12と、近位端部に設けられたハンドピースとを有する開腹手術用に構成することもできる。
【0027】
本体12の遠位端部13にはヘッド16が配置され、ヘッド16は、少なくとも2つ、しかしながら好ましくは複数の開口部、例えば
図3から明らかなように6つの開口部17~22を含む。あるいは、3つ、4つ、5つ、7つ、また8つ以上の開口部を設けることもできる。開口部17~22は、ウェブ22~28によって互いに分離されており、ウェブ22~28は、好ましくはヘッド16全体のような、耐熱材料、例えばセラミックからなる。
【0028】
近位端部14では、管腔15が、器具11への供給の働きをする装置29に接続されている。例えば、装置29は、ガス源Gとして構成することができるか、またはそのようなガス源を備えることができる。この目的のために、装置29は、ガス貯蔵部、例えばガスボンベなどに接続することができ、また、管腔15に供給されるガス流を制御、特に放出および遮断、必要に応じて計量供給するための手段を備えることができる。ガス貯蔵部は、特にアルゴンまたはさらに別の不活性ガス、特にプラズマ生成に適した不活性ガスを含むことができる。必要に応じて、装置29も、活性ガス、すなわち反応性ガス、エアロゾル、蒸気などを供給するように構成することができる。
【0029】
管腔15は、管腔を通ってヘッド16に流れるガスがすべての開口部17~22から等しく流出することができるように開口部17~22に接続されている。
【0030】
器具11は、さらに、例えば電極31の形態の、少なくとも1つのプラズマ生成デバイス30を備え、プラズマ生成デバイス30の遠位端部は、開口部17~22の領域内に位置する。電極は、金属の略円筒体によって形成することができ、その略円筒体の遠位端部は、開口部17~22の領域、好ましくはその領域の略中心に配置されている。図示するように、電極31は、円形断面またはさらに多角形断面を有することができる。単一の電極の代わりに、互いに接触するか、または互いに横方向距離をとって配置される導電体の束を設けることもできる。電極31の直径は、
図3および
図4による断面において測定されたウェブの周方向Uの幅と少なくとも同じであることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。電極束の場合、直径Dは、束の断面の外径である。
【0031】
導電体32が電極31から器具11の近位端部14まで延在することができ、近位端部14で装置29に接続することができる。装置29は、例えば高電圧高周波発生器33の形態の電源を備えることができ、その高電圧高周波発生器33を介して電極31に電圧を供給することができる。高周波電圧は、プラズマを形成するために管腔15を介して供給されたガス流をイオン化するのに十分な大きさを有する。その電圧の大きさは、通常、100kHz、好ましくは数百kHzを超える、しかしながら、さらに好ましくは5MHz未満の周波数で数百ボルトである。
【0032】
本発明の特有の特徴は、遠位先端部34に向かって先細りしている断面を少なくとも有することが好ましいヘッド16の構成である。開口部17~22、ひいてはウェブ23~22も、
図2においてほぼ切断線III-IIIから始まるヘッド16の先細りセクション内に完全または部分的に配置することができる。先細りセクションにおいて、ヘッド16の直径は遠位先端部34まで連続的に減少し、遠位先端部34でヘッド16は湾曲して、好ましくは尖らずに終端している。
【0033】
個々の開口部17~22は、ウェブ23~28によって分離されることが好ましく、ウェブ23~28は、長手方向Lに対して傾斜して少なくとも周方向に配置されている。長手方向Lは、
図2において、ヘッド16の回転対称の対称軸をなす長手方向中心軸35で示す。回転対称性は、
図2および
図3による実施形態において3回対称であり、すなわち、ヘッドが長手方向中心軸35を中心に約120°回転する場合、回転したヘッド16が回転していないヘッド16と一致する。
【0034】
ウェブ23~28間で制限された開口部17~22は、長手方向中心軸35に対して径方向を向いている。
図2において、開口部17の開口方向は、破線矢印36で印す。このように、開口部17~22は、長手方向中心軸35に対して横断方向に、ひいては長手方向Lに対しても横断方向に径方向に開口しているか、またはさらに、矢印36で示すように、径方向に対してわずかに傾斜して開口している。開口方向を決定するために、ヘッド16をまずは窓なしで、遠位先端部34に向かって先細りしている回転体としてみなすことができる。
図2に示すように、ヘッド16を通る長手方向断面が放物形状または半楕円に近似するように、先細りが遠位先端部34に向かって増し得る。開口部のないそのような仮想ヘッド16上において、それぞれの開口部17~22のために設けられた位置に開口部が描かれ、その開口部の領域の中心に法線ベクトルが示される場合、その法線ベクトルは、矢印36の方向を特徴付ける。
【0035】
ウェブ23~28は、正の径方向+Rに(径方向外方に)先細りしている断面、例えば、ウェブ28の例として
図4に示す三角形断面を有することが好ましい。ウェブ28は、
図2に示し、
図3に図解したのと同じ切断面III-IIIで切断されている。
【0036】
図4に示すウェブ28の断面は、長手方向中心軸35に対向する側面37と、窓22および17を横方向に制限する2つのさらなる側面38、39とを有する。ウェブ23~28の断面は、各ウェブに沿って略一定であることが好ましい。平面状に、またはさらに凸状に丸みを帯びるように構成された側面38、39は、長手方向中心軸に向かって開く鋭角を互いに制限している。これにより、ウェブ28は、その内側面37で電極31に対向している。好ましくは丸みを帯びた角40を用いる場合、ウェブ28は、長手方向中心軸35から見ると径方向外方、すなわち長手方向中心軸35から離れる方を向いている。残りの角41、42も、同様に丸みを帯びていることが好ましい。側面38、39は、平面状にするか、または好ましくはわずかに凸状に丸くすることができる。側面37は、平面状にするか、または
図4に示すように凹状にすることができるが、必要に応じて凸状に丸くすることもできる。
【0037】
図5は、ヘッド16の展開
図16’を示し、その両端部がオーバーラップする。明らかなように、6つの窓17~22は、三角形である。隣接するウェブ23~28は、それぞれ対になって周方向Uに逆向きに傾斜している。これにより、個々のウェブ23~28が周方向Uに対して制限する傾斜角の絶対値は等しい。言い換えれば、各ウェブ23~28の傾斜角は、周方向に沿ってウェブごとに符号が変化する。そうすることで、開口部17~22は、多かれ少なかれ角が強く丸みを帯びた三角基本形状を得、開口部17~22で印された三角形の底辺は、直径が等しいか、またはわずかに異なる互いに平行な円K1、K2上に位置する。円K1およびK2の中心点は、長手方向中心軸35上に位置する。開口部17~22で印された三角形の先端部は、交互に遠位方向Dまたは近位方向Pを向いている。略三角形の開口部17~22は、
図5に示すようにジグザグ線Z上に位置し得る、領域の中心を有する。
【0038】
ウェブ23~28の傾斜または傾斜角は、開口部17~22が周方向Uにオーバーラップするように寸法付けられている。周方向は、展開図のためここでは直線として示す円K1、K2の進行によって特徴付けられる。
図5において、オーバーラップは、ウェブ27および開口部21、22の例で示す。開口部21における正の周方向+Uの前方に位置する角と、開口部22における正の周方向+Uの後方に位置する角とは、互いにオーバーラップ絶対値
オーバーラップしている。オーバーラップ絶対値は、少なくとも0であり、好ましくは0よりも大きい。言い換えれば、開口部21が仮想的に遠位方向Dに動き、かつ/または、開口部22が仮想的に近位方向Pに動く場合、開口部21、22は、互いに接触するか、またはオーバーラップする。
【0039】
各ウェブは、周方向Uに測定される幅BSを有し、各開口部は、周方向に測定される幅BEを有する。
図5は、これを、開口部20の広い方の端部ひいては円K1に隣接して位置するウェブ25および開口部20によって示す。開口部19については、このことが円K2を用いて適宜当てはまる。これは、ウェブ23の幅BSは、少なくとも1つの隣接する開口部の幅BEよりも小さいことが好ましいことを意味する。このことは、1つの軸方向位置において少なくとも当てはまり、幅BSおよび幅BEは、同じ軸方向位置Aで測定される。幅BSおよびBEについての上述した条件(BE>BS)は、少なくとも、開口部が周方向Uに最大の広がりを有する箇所でそれぞれ当てはまる。
【0040】
図1~
図5による実施形態では、ウェブ23~28は、対になって周方向(すなわち、+Uおよび-U)に、および周方向に対して傾斜している。しかしながら、
図6および
図7による実施形態に基づいて示すように、ウェブ23’、24’を同じ向きに傾斜させることも可能である。上で説明した器具11は360°全方位有効な器具であるが、
図6による器具11’は限られた周領域のみの組織処置に提供される。ヘッド16aは、幅がより広いセクション25’を含み、そのセクション25’は、周方向に傾斜して、または傾斜せずに構成され、湾曲した壁としてみなすことができるが、ウェブとしてはみなすことはできない。台形状またはひし形状に構成され得る3つの開口部17’、18’、19’が得られる。明らかなように、台形状の開口部17’とひし形状の開口部18’とは、この場合も周方向Uにオーバーラップしている。開口部18’および台形状の開口部19’にも同じことが当てはまる。その他については、既に導入した参照符号に基づいて上記の説明が当てはまる。
【0041】
さらなる変更形態も可能である。よって、
図8は、変更されたヘッド16の展開図を示し、その変更されたヘッド16については、下記に示す特有の特徴を除いて、
図1~
図5による実施形態の説明が完全に適宜当てはまる。
【0042】
開口部17~22は、三角形状ではなく台形状に構成されている。この目的のために、各面17~22における遠位方向Dまたは近位方向Pを向くそれぞれの先端部の代わりに、強い丸みまたはさらに短いエッジが設けられ、それが2つの湾曲部によってそれぞれのウェブ23~28へ移行している。
【0043】
これまで説明した実施形態では、2つの仮想円K1、K2間に一列に配置された開口部17~22が使用されている。しかしながら、
図9に示すように、複数列での配置も可能である。丸みを帯びた三角形または四角形の開口部の計3列からなるこの配置における特有の特徴は、この場合も傾斜したウェブ23a、23b、24a、24b、25a、25bなどであり、それらのウェブは、周方向Uにまたは周方向Uに対して傾斜しているため、長手方向Lに非平行に配置されている。この場合も、個々の開口部は、互いに周方向にオーバーラップしている。
【0044】
プラズマ生成デバイス30の構成に関しては、別の変更形態が可能である。これまで説明した実施形態では、主に熱プラズマを生成するためにプラズマ生成デバイス30として1つのブランク電極31しか設けられていないが、代替方法として、バリア放電を生成するために、電気的に絶縁された方法で配置された1以上の電極31a、31bを設けることもできる。例えば、電極31aおよび/または31bは、椀状または環状の電極としてヘッド16の材料内に埋め込むことができるか、または別の絶縁された方法でヘッド16の材料内に配置することができる。ジェネレータの2つの極は、バリア放電を生成するために、絶縁された電極31a、31bに接続することができる。この場合、電極31は省略することができる。あるいは、バリア放電を生成するために、電極31a、31bの一方または両方をジェネレータの一方の極に接続することができ、被覆されていないか、または絶縁層が設けられた電極31をジェネレータの他方の極に接続することができる。そのような配置は、特に、非熱ウォームまたはコールドプラズマの生成に役立つ。本明細書で簡潔に説明した様々なプラズマ生成デバイス30は、
図1~
図9による上記ヘッドのうちのいずれとも組み合わせることができる。
【0045】
これまで説明した器具11は、以下のように動作する。
【0046】
動作中、装置29からガス、例えばアルゴンが器具11に供給され、そのガスが管腔15を通って、開口部17~22から流れ出る。さらに、電源33が作動し、その結果、ガス流のイオン化およびプラズマの生成のためにプラズマ生成デバイス30で放電が生じる。特に、電源33の一方の極が好ましくは被覆されていない電極31に接続され、電源33の他方の極が患者に接続されているモノポーラ変形形態では、電極31と、ヘッド16に最も近い生体組織との間に放電が生じ、その結果、それらの間に位置する開口部、例えば開口部19を通るプラズマ流PSが確立される。この状態を
図1に示す。
【0047】
ここで器具11を動かす場合、放電、すなわちプラズマ流はむしろ、隣接する窓18または20を通る進路を見出すことがあり得る。それについて、
図5の例から明らかなように、特に長手方向Lの方向から見て窓は互いに周方向にオーバーラップしているため、プラズマ流の窓19から窓18または20への移行は連続的かつスムーズである。したがって、斜め方向を向いたウェブ23~28は、放電を遮断せず、これにより、ウェブが長手方向を向いた器具と比べて、処置者がスパークと認識するプラズマジェットの揮発性が著しく低下する。
【0048】
バリア放電を伴うデバイスが、
図10により示すようなプラズマ生成デバイス30として使用される場合、開口部17~22のすべてを隙間なく覆う環状領域内でプラズマが生成され、それによって、この場合もウェブ23~28による遮蔽を最小限に抑えることができる。
【0049】
生体組織をプラズマ処置するための本発明に係る器具11は、長手方向に幅広くなるか、または先細りする開口部17~22の形態のプラズマ出口窓を備える。各開口部17~22は、ウェブのフランク38、39によって形成できる、長手方向Lに対して斜め方向に延在する少なくとも1つのエッジを有する。結果として、個々の開口部間に存在し、かつ器具ヘッド16の近位セクションを遠位セクションに継ぎ目なく一体的に接続しているウェブ23~28の位置が傾斜している。ウェブの位置が傾斜しているため、遮蔽の影響が最小限に抑えられるか、またはなくなる。
【符号の説明】
【0050】
11 器具
12 本体
13 本体の遠位端部
14 本体の近位端部
15 管腔
16 ヘッド
16’ ヘッド16の展開図
17~22 開口部
23~28 ウェブ
29 装置
30 プラズマ生成デバイス
31 電極
32 導体
G ガス源
33 電源
34 ヘッド16の遠位先端部
L 長手方向
35 長手方向中心軸
36 開口方向の矢印
37 ウェブ28の内側面
38、39 窓フランクの側面
40~42 ウェブ断面の角
K1、K2 円
U 周方向
D 遠位方向
P 近位方向
Z ジグザグ線
PS プラズマ流
【外国語明細書】