(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160945
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】側面窓を備えたプラズマ器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/06 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61B18/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024065222
(22)【出願日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】23171492
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツ・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】モーザー・サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ハイム
(72)【発明者】
【氏名】ボイトラー・ファビアン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK70
4C160MM32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体組織をプラズマ処置するためのプラズマ器具を提供する。
【解決手段】生体組織をプラズマ処置するための器具11は、開口部の形態のプラズマ出口窓を備え、開口部は、ウェブのフランクによって形成できる、長手方向に対して斜め方向に延在するエッジを有する。ウェブは、径方向に先細りし、好ましくは長手方向に対して斜め方向に傾斜している。ウェブは、器具ヘッド16の近位セクションを支持し、その近位セクションをヘッドの近位部分に継ぎ目なく一体的に接続している。ウェブが外方に先細りしているため、ウェブによる遮蔽の影響が最小限に抑えられるか、またはなくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に作用を及ぼすための、特に人間または動物の患者を処置するためのプラズマ器具(11)であって、
遠位端部(13)および近位端部(14)と、前記近位端部(14)から前記遠位端部(13)まで長手方向(L)に沿って延在する管腔(15)とを含むホースまたはチューブとして構成された長尺の本体(12)であって、前記管腔(15)は、ガス源(G)に接続されているか、または接続可能である本体(12)と、
前記遠位端部(13)に接続された、2つの開口部(17、18)を有するヘッド(16)であって、前記2つの開口部(17、18)は、前記管腔(15)に接続されており、かつ、断面が径方向(R)外方に先細りしているウェブ(23)によって互いに分離されているヘッド(16)とを備える
プラズマ器具。
【請求項2】
前記本体(12)および/または前記ヘッド(16)内に電極(31)が配置され、前記電極(31)は、前記近位端部(14)に向かって延在する導電体(32)によって電気外科ジェネレータ(G)に接続可能である
請求項1に記載のプラズマ器具。
【請求項3】
前記電極(31)は直径(D)を有し、前記ウェブ(23)は、前記電極(31)に対向する側において幅(BS)を有し、前記幅(BS)は、前記電極(31)の直径(D)よりも小さい。
請求項2に記載のプラズマ器具。
【請求項4】
前記電極(31)は、円形断面を有する
請求項2に記載のプラズマ器具。
【請求項5】
前記ウェブ(23)は、前記電極(31)に対向する側(37)において平面形状、凸形状または凹形状を有する
請求項2に記載のプラズマ器具。
【請求項6】
前記ウェブ(23)の断面は、台形状または三角形である
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項7】
前記ウェブ(23)の断面は、丸みを帯びた角(40、41、42)を有する
請求項6に記載のプラズマ器具。
【請求項8】
前記長手方向(L)および前記径方向(R)に対して直交方向を向いている周方向(U)において、前記ウェブ(23)は幅(BS)、前記開口部(17)は幅(BE)を有し、前記幅(BE)は、前記ウェブ(23)の前記幅(BS)よりも大きい
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項9】
前記ヘッド(16)は、耐熱材料から形成され、継ぎ目なく一体的に形成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項10】
前記ヘッド(16)に形成された前記開口部(17~22)は、前記ヘッド(16)全周にわたって延在する列をなしている
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項11】
前記ウェブ(23)は、前記長手方向(L)に対して斜め方向を向いている
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項12】
前記ウェブ(23~28)は、前記開口部(17~22)間に配置され、前記ウェブ(23~28)は、向き(+U、-U)を交互に変えながら周方向(U)に傾斜している
請求項10に記載のプラズマ器具。
【請求項13】
前記開口部(17~22)は、向き(+L、-L)を交互に変えながら長手方向(L)に先細りするように構成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項14】
前記開口部(17~22)は、互いに周方向(U)および長手方向(L)にオーバーラップするように構成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【請求項15】
前記開口部(17~22)は、角が丸みを帯びた台形状または三角形状である
請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織に作用を及ぼすための、特に人間または動物の組織を外科処置するためのプラズマ器具に関する。このプラズマ器具は、横方向または径方向に動作する器具として構成されている。
【背景技術】
【0002】
生体組織に作用を及ぼすためのプラズマ器具が先行技術から知られている。例えば、特許文献1および特許文献2には、管腔(ルーメン)が近位端部から遠位端部まで延在するホース状基体を有し、その遠位端部には1以上の側面窓を有するヘッドが配置されている器具についてそれぞれ開示されている。導電体が管腔を貫通して延在し、導電体は、その遠位端部で中心電極に接続されている。動作中、HF電圧源に接続された電極が流動ガスをイオン化し、その後、流動ガスは、プラズマ流として横方向に流出する。一実施形態では、異なる位置で軸方向に配置され、互いにわずかにオーバーラップしている2つのスリット状プラズマ出口窓が設けられている。
【0003】
特許文献3には、生体組織に作用を及ぼすためのプラズマ生成用の器具について開示されている。この場合も、器具はホース状本体を備え、そのホース状本体は、少なくとも一実施形態において、プラズマ流が貫通して流出し得る側面開口部を遠位端部に有するヘッドを支持している。
【0004】
径方向に作動するプラズマ流を生成するための器具は、特許文献4および特許文献5からも知られている。これらの器具は、電極が突出している軸方向開口部を遠位端部に備える。電極は、その遠位端部で絶縁体を支持し、絶縁体は、器具の残りと共に径方向に開口する環状スリットを制限する。プラズマ流は、各周方向位置に360°の閉塞していない径方向出口を有するが、絶縁体は、電極に支持されなければならず、また、安定した方法で保持されなければならない。
【0005】
さらなる先行技術は、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10から得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19820240号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1297082号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3831291号明細書
【特許文献4】欧州特許第1682023号明細書
【特許文献5】米国特許第9510889号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2021/259756号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第3422981号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第3372183号明細書
【特許文献9】特開2002-301088号公報
【特許文献10】英国特許出願公開第2573128号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、プラズマ流が横方向に流出するロバストなプラズマ器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載のプラズマ器具によって達成される。
【0009】
本発明に係るプラズマ器具は、少なくとも2つの開口部を有するヘッドが遠位端部に設けられたホース状またはチューブ状本体を備え、その少なくとも2つの開口部は、当該ホース状本体を貫通して延在する管腔に接続されている。開口部は、断面が径方向外方に先細りしているウェブによって分離されている。好ましくは開口部に近接したヘッド内に、ガス流のイオン化に適した電流を放出するように構成された電極が配置されている。そのため、電極の直径は、電極に対向する側において周方向に測定されるウェブの幅よりも大きいことが好ましい。この手段およびウェブの外方への先細りにより、プラズマ流を遮るか、または妨げるウェブの機能が最小限に抑えられる。これにより、プラズマ流は、ウェブに隣接する両方の開口部を通って流れることができ、妨げられない方法で一方の開口部から他方の開口部に切り替わることができ、両方の開口部を通って流れる場合はウェブの後方で合流する。これによって、生体組織の処置は簡略化される。外科医は、環状の途切れのない径方向プラズマ出口を有するプラズマ器具と同じくらい単純に、本発明に係るプラズマ器具と、当該プラズマ器具から流出するプラズマ流とを案内することができる。
【0010】
外方に先細りしているウェブは、断面が、まっすぐまたは丸みを帯びたエッジと、尖ったまたは丸みを帯びた角とを有する、三角形状、台形状に構成することができる。これにより、周方向に測定されるウェブの幅は、同様に周方向に測定される隣接する開口部の幅よりも大きいことが好ましい。さらに、ウェブ(複数のウェブ)は細く、すなわち、ウェブの近位端部から遠位端部まで測定される長さは、ウェブの半周よりも長いことが好ましい。しかしながら、外方に先細りしていない1以上のウェブをヘッドに設けることも可能である。これは、1つのウェブ、ウェブのうちの一部またはすべてに当てはめることができる。
【0011】
好ましい器具では、開口部は、ヘッド全周に延在する列をなし、開口部は、ウェブによって互いに分離されている。ウェブは、ヘッドの遠位端部を支持し、セラミックなどの耐熱材料から構成され、継ぎ目なく一体的に構成されることが好ましい。
【0012】
開口部を互いに分離しているウェブは、プラズマ器具の長手方向に対して斜め方向を向いている、すなわち、周方向に傾斜して配置されていることが好ましい。そうすることで、開口部は、例えば、まっすぐまたは丸みを帯びたエッジと、まっすぐまたは丸みを帯びた角とを有する、台形状またはさらにひし形状になる。開口部が三角形状窓の列をなし、それらの先端部または幅の狭い端部が交互に遠位方向(正の長手方向)または近位方向(負の長手方向)を向いているように、ウェブは、向きを交互に変えながら周方向に傾斜していることが好ましい。
【0013】
この手段により、開口部は、長手方向と同様に周方向にも互いにオーバーラップすることができる。これによって、また、ウェブの断面が径方向外方に先細りしていることから、プラズマ流が次の組織切片に流れる際に1つの開口部から隣接する開口部に移る場合、プラズマ流の連続性を得ることができる。
【0014】
さらなる有利な詳細は、図面、関連する明細書または特許請求の範囲の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、供給装置に接続された本発明に係るプラズマ器具の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1によるプラズマ器具の遠位端部の拡大側面図である(正確な縮尺で描かれていない)。
【
図3】
図3は、
図2の切断線III-IIIに沿って切断された
図1および
図3によるプラズマ器具の図である。
【
図4】
図4は、
図2の切断線III-IIIに沿って切断された
図2および
図3によるプラズマ器具における変更実施形態の非常に拡大した図である。
【
図5】
図5は、
図4のように切断された変更ウェブ形状を有する
図1および
図2によるプラズマ器具における別の変更実施形態の拡大図である。
【
図6】
図6は、幾何学的関係を説明するための
図2から明らかなヘッドの展開図である。
【
図7】
図7は、本発明に係るプラズマ器具の変更実施形態の部分切断斜視図である。
【
図8】
図8は、幾何学的関係を説明するための
図7によるヘッドの展開図である。
【
図9】
図9は、本発明に係るプローブのさらなる別の実施形態の展開図である。
【
図10】
図10は、本発明に係るプローブのさらなる別の実施形態の展開図である。
【
図11】
図11は、少なくとも2つの電極を有するプラズマプローブのヘッドの部分切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本体12として可撓性のホースを有する可撓性のプローブとして構成されたプラズマ器具11を示す。本体12は、遠位端部13および近位端部14と、近位端部14から遠位端部13まで延在する管腔15とを含む。本体12は、
図2に示すように単一の管腔15、またはさらに複数の管腔を含むことができる。本体12は、例えばプローブとして内視鏡のワーキングチャネルを通って患者の手術部位まで動くように、曲げ可能なまたは可撓性を有する方法で構成されている。内視鏡が制御可能な端部を備える場合、器具の可撓性により、それぞれの曲げの動きを行うことが可能になる。
【0017】
器具11は、内視鏡に使用可能なプローブとしてだけでなく、別の形態、例えば、本体12が剛性のチューブである腹腔鏡器具としても提供することができる。また、器具11は、短い本体12と、近位端部に設けられたハンドピースとを有する開腹手術用に構成することもできる。
【0018】
本体12の遠位端部13にはヘッド16が配置され、ヘッド16は、少なくとも2つ、しかしながら好ましくは複数の開口部、例えば
図3から明らかなように6つの開口部17~22を含む。あるいは、3つ、4つ、5つ、7つ、8つ、またはそれ以上の開口部を設けることもできる。開口部17~22は、ウェブ22~28によって互いに分離されており、ウェブ22~28は、好ましくはヘッド16全体のような、耐熱材料、例えばセラミックからなる。ウェブ23~28は細く、すなわち、長手方向Lに測定されるそれらの長さは、周方向Uに測定されるそれらの幅よりも長く、好ましくは数倍長い。
【0019】
近位端部14では、管腔15が、器具11への供給の働きをする装置29に接続されている。例えば、装置29は、ガス源Gとして構成することができるか、またはそのようなガス源を備えることができる。この目的のために、装置29は、ガス貯蔵部、例えばガスボンベなどに接続することができ、また、管腔15に供給されるガス流を制御、特に放出および遮断、必要に応じて計量供給するための手段を備えることができる。ガス貯蔵部は、特にアルゴンまたはさらに別の不活性ガス、特にプラズマ生成に適した不活性ガスを含むことができる。必要に応じて、装置29も、活性ガス、すなわち反応性ガス、エアロゾル、蒸気などを供給するように構成することができる。
【0020】
管腔15は、管腔を通ってヘッド16に流れるガスがすべての開口部17~22から均等に流出することができるように開口部17~22に接続されている。このことは、複数の管腔が互いに平行に本体12内に設けられる場合にも当てはまる。
【0021】
器具11は、さらに、例えば電極31の形態の、少なくとも1つのプラズマ生成デバイス30を備え、プラズマ生成デバイス30の遠位端部は、開口部17~22の領域内に位置する。電極は、金属の略円筒体によって形成することができ、その略円筒体の遠位端部は、開口部17~22の領域、好ましくはその領域の略中心に配置されている。図示するように、電極31は、円形断面またはさらに多角形断面を有することができる。
【0022】
導電体32が電極31から器具11の近位端部14まで延在することができ、近位端部14で装置29に接続することができる。装置29は、例えば高電圧高周波発生器33の形態の電源を備えることができ、その高電圧高周波発生器33を介して電極31に電圧を供給することができる。高周波電圧は、プラズマを形成するために管腔15を介して供給されたガス流を電極31でイオン化するのに十分な大きさを有する。その電圧の大きさは、通常、100kHz、好ましくは数百kHzを超える、しかしながら、さらに好ましくは5MHz未満の周波数で数百ボルトである。
【0023】
本発明の特有の特徴は、遠位先端部34に向かって先細りしている断面を少なくとも有することが好ましいヘッド16の構成である。開口部17~22、ひいてはウェブ23~22も、ヘッド16の先細りセクション内に完全または部分的に配置することができ、それによって、先細りセクションは、
図2においてほぼ切断線III-IIIから始まる。先細りセクションにおいて、ヘッド16の直径は遠位先端部34まで連続的に減少し、遠位先端部34でヘッド16は湾曲して、好ましくは尖らずに終端している。
【0024】
個々の開口部17~22は、ウェブ23~28によって分離されることが好ましく、ウェブ23~28は、長手方向Lに対して傾斜して少なくとも周方向に配置されている。長手方向Lは、管腔15を貫通して長手方向に延在し、
図2において、ヘッド16の回転対称の対称軸をなす長手方向中心軸35で示す。回転対称性は、
図2および
図3による実施形態において3回対称であり、すなわち、ヘッドが長手方向中心軸35を中心に約120°回転する場合、回転したヘッド16が回転していないヘッド16と一致する。
【0025】
ウェブ23~28間で制限された開口部17~22は、長手方向中心軸35に対して径方向を向いている。
図2において、開口部17の開口方向は、破線矢印36で印す。このように、開口部17~22は、長手方向中心軸35に対して横断方向に、ひいては長手方向Lに対しても横断方向に径方向Rに開口しているか、またはさらに、矢印36で示すように、径方向Rに対してわずかに傾斜して開口している。径方向Rは、長手方向Lに対して直交方向を向いている。開口方向を決定するために、ヘッド16をまずは窓なしで、遠位先端部34に向かって先細りしている回転体としてみなすことができる。
図2に示すように、ヘッド16を通る長手方向断面が放物形状または半楕円に近似するように、先細りが遠位先端部34に向かって増し得る。開口部のないそのような仮想ヘッド16上において、それぞれの開口部17~22のために設けられた位置に開口部が描かれ、その開口部の領域の中心に法線ベクトルが示される場合、その法線ベクトルは、矢印36の方向を特徴付ける。
【0026】
ウェブ23~28は、正の径方向+Rに(径方向外方に)先細りしている断面を有する。この断面は、
図2に細線と太線のクロスハッチングで示す。断面は、
図3から明らかなように、また
図4にウェブ28の例として示すように三角形であることが好ましい。ウェブ28は、
図2に示し、
図3に図解したのと同じ切断面III-IIIで切断されている。ウェブ23~28の厚みが径方向外方に減少しているため、開口部17~22の窓断面は径方向外方に増加している。
【0027】
すべてのウェブ23~28の代表として
図4に示すウェブ28の断面は、長手方向中心軸35に対向する側面37と、開口部22および17を横方向に制限する2つのさらなる側面38、39とを有する。ウェブ23~28の断面は、各ウェブ23~28に沿って略一定であることが好ましい。平面状に、またはさらに凸状に丸みを帯びるように構成されたウェブ23の側面38、39(
図3)は、長手方向中心軸に向かって開く鋭角を互いに制限している。これにより、ウェブ28は、その内側面37で電極31に対向している。好ましくは丸みを帯びた角40を用いる場合、ウェブ28は、長手方向中心軸35から見て径方向外方、すなわち長手方向中心軸35から離れる方を向いている。残りの角41、42も、同様に丸みを帯びていることが好ましい。側面38、39は、平面状にするか、または好ましくはわずかに凸状に丸くすることができる。側面37は、平面状にするか、または
図4に示すように凹状にすることができるが、必要に応じて凸状に丸くすることもできる。
【0028】
図5は、ウェブ断面が
図4とは異なり三角形ではなく、台形状に構成されている、本発明に係るプラズマプローブの変更実施形態を示す。ここでは、丸みを帯びた角40の代わりに、まっすぐまたは丸みを帯びたエッジ40’が設けられている。その他については、側面38、39および内面37に関する上記説明が適宜当てはまる。
【0029】
電極31の直径D(
図3参照)が、各ウェブ23~28の最も幅広い位置でそれぞれ周方向Uに測定されるウェブ幅BSよりも大きいことが好ましいことは、これまで提供したすべての実施形態に共通である。そうすることで、電極31が外部に対して遮蔽されることが最小限に抑えられる。
図3に示す直線G1、G2が、一方で電極31の両側で接し、他方でウェブ23の側面38、39に接するように描かれる場合、これらの直線G1、G2は、ヘッド16の外側の点P1で交差し、それぞれのウェブ23は、点P1と電極31との間に位置する。直線G3およびG4が窓17を制限するウェブ23、28の側面に接するように配置される場合、これらの直線G3、G4は、ヘッド16の内部、好ましくは電極31とウェブ23、28との隙間で交差する。電極31が円形断面の代わりに多角形断面を有する場合、直径Dは、多角形断面の対角線に置き換えられる。電極31は、円形または多角形の断面を有する個別電極として構成することができる。電極31はまた、互いに距離をとって、または互いに接触して配置されている個別導電体の束によって形成することもできる。その場合、直径Dは、導体の束の断面の外径を特徴付ける。
【0030】
ウェブ23の幅BSは、少なくとも1つの隣接する開口部、
図3では開口部18の同様に周方向Uに測定される幅BEよりも小さいことが好ましい。このことは、1つの軸方向位置において少なくとも当てはまり、幅BSおよび幅BEは、同じ軸方向位置で測定される。これは、プラズマ流の連続性も保証し、そのため、プラズマ流は、ウェブ23にも他のウェブ24~28にも遮断されない。幅BSおよびBEについての上述した条件(BE>BS)は、少なくとも、開口部が周方向Uに最大の広がりを有する箇所でそれぞれ当てはまる。
【0031】
図6は、ヘッド16の展開
図16’を示し、その両端部がオーバーラップする。例えば、6つの窓17~22は、三角形である。隣接するウェブ23~28は、それぞれ対になって逆向きに、正の周方向+Uおよび負の周方向-Uに傾斜している。これにより、個々のウェブ23~28が周方向Uに対して制限する傾斜角の絶対値は等しい。言い換えれば、各ウェブ23~28の傾斜角は、周方向に沿ってウェブごとに符号が変化する。そうすることで、開口部17~22は、多かれ少なかれ角が強く丸みを帯びた三角基本形状を得、開口部17~22で印された三角形の底辺は、直径が等しいか、またはわずかに異なる互いに平行な円K1、K2上に位置する。円K1およびK2の中心点は、長手方向中心軸35上に位置する。開口部17~22で印された三角形の先端部は、交互に遠位方向D(すなわち正の長手方向+L)または近位方向P(すなわち負の長手方向-L)を向いている。略三角形の開口部17~22は、
図5に示すようにジグザグ線Z上に位置し得る、領域の中心を有する。
【0032】
ウェブ23~28の傾斜または傾斜角は、開口部17~22が周方向Uにオーバーラップするように寸法付けられている。周方向は、展開図のためここでは直線として示す円K1、K2の進行によって特徴付けられる。
図5において、オーバーラップは、ウェブ27および開口部21、22の例で示す。開口部21における正の周方向+Uの前方に位置する角と、開口部22における正の周方向+Uの後方に位置する角とは、互いにオーバーラップ絶対値
オーバーラップしている。オーバーラップ絶対値は、少なくとも0であり、好ましくは0よりも大きい。言い換えれば、開口部21が仮想的に遠位方向Dに動き、かつ/または、開口部22が仮想的に近位方向Pに動く場合、開口部21、22は、互いに接触するか、またはオーバーラップする。
【0033】
図1~
図6による実施形態では、ウェブ23~28は、対になって周方向(すなわち、+Uおよび-U)に、および周方向に対して傾斜している。しかしながら、
図7および
図8による実施形態に基づいて示すように、ウェブ23’、24’を同じ向きに傾斜させることも可能である。上で説明した器具11は360°全方位有効な器具であるが、
図7による器具11’は限られた周領域のみの組織処置に提供される。ヘッド16aは、幅がより広いセクション25’を含み、そのセクション25’は、周方向に傾斜して、または傾斜せずに構成され、湾曲した壁としてみなすことができる。台形状またはひし形状に構成され得る3つの開口部17’、18’、19’が得られる。台形状の開口部17’とひし形状の開口部18’とは、この場合も周方向Uにオーバーラップしている。開口部18’および台形状の開口部19’にも同じことが当てはまる。その他については、既に導入した参照符号に基づいて上記の説明が当てはまる。
【0034】
さらなる変更形態も可能である。よって、
図9は、変更されたヘッド16の展開図を示し、その変更されたヘッド16については、下記に示す特有の特徴を除いて、
図1~
図6による実施形態の説明が完全に適宜当てはまる。
【0035】
開口部17~22のうちの少なくともいくつかまたはすべては、三角形状ではなく台形状に構成されている。この目的のために、各面17~22における遠位方向Dまたは近位方向Pを向くそれぞれの先端部の代わりに、強い丸みまたはさらに短いエッジが設けられ、それが2つの湾曲部によってそれぞれのウェブ23~28へ移行している。
【0036】
これまで説明した実施形態では、2つの仮想円K1、K2間に一列に配置された開口部17~22が使用されている。しかしながら、
図10に示すように、複数列での配置も可能である。丸みを帯びた三角形または四角形の開口部の計3列からなるこの配置における特有の特徴は、この場合も傾斜したウェブ23a、23b、24a、24b、25a、25bなどであり、それらのウェブは、周方向Uにまたは周方向Uに対して傾斜しているため、長手方向Lに非平行に配置されている。この場合も、個々の開口部は、互いに周方向にオーバーラップしている。
【0037】
プラズマ生成デバイス30の構成に関しては、別の変更形態が可能である。これまで説明した実施形態では、主に熱プラズマを生成するために、プラズマ生成デバイス30として1つのブランク電極31しか設けられていない。これらは、電流が電極31からプラズマを通って組織まで流れ、組織から中性電極Nを介してジェネレータ33まで戻るモノポーラ器具である。上記の実施形態のすべてにおいて、代替方法として、バリア放電を形成するために、電気的に絶縁され方法で配置された1以上の電極31a、31bを設けることもできる。例えば、電極31aおよび/または31bは、椀状または環状の電極としてヘッド16の材料内に埋め込むことができるか、または別の絶縁された方法でヘッド16の材料内に配置することができる。ジェネレータの2つの極は、バリア放電を生成するために、絶縁された電極31a、31bに接続することができる。この場合、電極31は省略することができる。あるいは、バリア放電を生成するために、電極31a、31bの一方または両方をジェネレータの一方の極に接続することができ、被覆されていないか、または絶縁層が設けられた電極31をジェネレータの他方の極に接続することができる。そのような配置は、特に、非熱ウォームまたはコールドプラズマの生成に役立つ。
【0038】
本明細書で簡潔に説明した様々なプラズマ生成デバイス30は、
図1~
図9による上記ヘッドのうちのいずれとも組み合わせることができる。
【0039】
電極31の直径Dがウェブ23(およびさらに追加のウェブ)の幅BSと少なくとも同じ大きさ、好ましくはその幅BSよりも大きい
図3に関して説明した寸法関係は、ウェブ23(およびさらに追加のウェブ)が外方に先細りしていない先述および後述の説明による側面窓を備えたプローブにも有利である。例えば、そのようなウェブは、まっすぐまたは丸みを帯びたエッジと、尖ったまたは丸みを帯びた角とを有する正方形または矩形の断面を有することができる。また、ウェブは、円形断面を有することもできる。
【0040】
これまで説明した器具11は、以下のように動作する。
【0041】
動作中、装置29からガス、例えばアルゴンが器具11に供給され、そのガスが管腔15を通って、開口部17~22から流れ出る。さらに、電源33が作動し、その結果、ガス流のイオン化およびプラズマの生成のためにプラズマ生成デバイス30で放電が生じる。特に、電源33の一方の極が好ましくは被覆されていない電極31に接続され、電源33の他方の極が患者に接続されているモノポーラ変形形態では、電極31と、ヘッド16に最も近い生体組織との間に放電が生じ、その結果、それらの間に位置する開口部、例えば開口部19を通るプラズマ流PSが確立される。この状態を
図1に示す。
【0042】
ここで器具11を動かす場合、放電、すなわちプラズマ流はむしろ、隣接する窓18または20を通る進路を見出すことがあり得る。それについて、
図5の例から明らかなように、特に長手方向Lの方向から見て窓は互いに周方向にオーバーラップしているため、プラズマ流の窓19から窓18または20への移行は連続的かつスムーズである。したがって、斜め方向を向き、径方向外方に先細りしているウェブ23~28は、放電を遮断せず、これにより、ウェブが長手方向を向いた器具と比べて、処置者がスパークと認識するプラズマジェットの揮発性が著しく低下する。
【0043】
バリア放電を伴うデバイスが、
図10により示すようなプラズマ生成デバイス30として使用される場合、開口部17~22のすべてを隙間なく覆う環状領域内でプラズマが生成され、それによって、この場合もウェブ23~28による遮蔽を最小限に抑えることができる。
【0044】
生体組織をプラズマ処置するための本発明に係る器具11は、開口部17~22の形態のプラズマ出口窓を備え、開口部17~22は、ウェブのフランク38、39によって形成できる、長手方向Lに対して斜め方向に延在するエッジを有する。ウェブ23~28は、径方向+Rに先細りし、好ましくは長手方向Lに対して斜め方向に傾斜している。ウェブ23~28は、器具ヘッド16の近位セクションを支持し、その近位セクションをヘッド16の近位部分に継ぎ目なく一体的に接続している。ウェブが外方に先細りしているため、ウェブによる遮蔽の影響が最小限に抑えられるか、またはなくなる。
【符号の説明】
【0045】
11 器具
12 本体
13 本体の遠位端部
14 本体の近位端部
15 管腔
16 ヘッド
16’ ヘッド16の展開図
17~22 開口部
23~28 ウェブ
29 装置
30 プラズマ生成デバイス
31 電極
32 導体
G ガス源
33 電源
34 ヘッド16の遠位先端部
L 長手方向、+L、-L
R 径方向、+R、-R
35 長手方向中心軸
36 開口方向の矢印
37 ウェブ28の内側面
38、39 窓フランクの側面
40~42 ウェブ断面の角
40’ ウェブ断面の外限界
K1、K2 円
U 周方向、+U、-U
D 遠位方向
P 近位方向
Z ジグザグ線
PS プラズマ流
N 中性電極
【外国語明細書】