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特開2024-160948製品の二次元のデジタル画像で異常を検出する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160948
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】製品の二次元のデジタル画像で異常を検出する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241108BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20241108BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20241108BHJP
【FI】
G06T7/00 610B
G01N23/18
G01N23/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024065986
(22)【出願日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】10 2023 111 681.9
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506186673
【氏名又は名称】ヴィポテック ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】ADAM-HOFFMANN STRASSE 26, 67657 KAISERSLAUTERN,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル バスタック
【テーマコード(参考)】
2G001
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001FA03
2G001HA07
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA05
2G001PA11
5L096BA03
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA59
5L096FA64
5L096FA65
5L096FA69
5L096GA10
5L096GA19
5L096GA30
5L096GA51
5L096KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製品のデジタル画像で異常を検出する方法、装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】X線検査装置による検査プロセスでは、それぞれ少なくとも1つの既知の異常を有する現実又は仮想の不合格製品の複数のデジタル不合格画像を生成し、各々の不合格画像を区域に分割し、各区域の該当する特性の最大の値を、最大値ランダムサンプルの最大ランダムサンプル値として及び/又は最小の値を、最小値ランダムサンプルの最小ランダムサンプル値として決定し、生成したランダムサンプルから、少なくとも1つの既知の異常についての検出率を決定する。デジタル画像が区域に分割され、1つの区域が最大異常として検出されるのは、少なくとも1つの特性の値が、設定された最大閾値よりも大きいときであり、1つの区域が最小異常として検出されるのは、少なくとも1つの特性の値が設定された最小閾値よりも小さいときである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品のデジタル画像で異常を検出する方法であって、各々のデジタル画像は画像データによって表現される多数のピクセルによって形成され、各々のピクセルは該当する画像の割り当てられた場所を表現し、該当する場所を特徴づける値を有し、
(a)検査されるべき各々の画像が1つの区域として把握され、または2つまたはそれ以上の区域に下位区分され、該区域はそれぞれ1つまたは複数の隣接するピクセルから構成され、
(b)各々の区域について少なくとも1つの特性についての値が、または区域の複数の特性について組み合わされた値が、決定され、
(c)1つの区域が最大異常として検出されるのは、当該区域の少なくとも1つの特性の値または複数の特性についての組み合わされた値が設定された最大閾値よりも大きいときであり、または1つの区域が最小異常として検出されるのは、当該区域の少なくとも1つの特性の値または複数の特性についての組み合わされた値が設定された最小閾値よりも小さいときである、
方法において、
(d)検査プロセスで次の各ステップが実行され、
(i)それぞれ少なくとも1つの既知の異常を有する、現実または仮想の不合格製品の複数のデジタル不合格画像が生成されること、
(ii)各々の不合格画像について、1つの区域または複数の区域が規定されること、および各々の区域の少なくとも1つの特性の値または複数の特性についての組み合わされた値が決定されること、およびこれらの値の最大の値が最大値ランダムサンプルの最大ランダムサンプル値として決定されること、またはこれらの値の最小の値が最小値ランダムサンプルの最小ランダムサンプル値として決定されること、
(iii)少なくとも1つの既知の異常について検出率が決定されること、それは
(1)最大値ランダムサンプルまたは最小値ランダムサンプルを記述するために設定される確率密度関数の設定されていないすべての未決のパラメータについて、最大ランダムサンプル値または最小ランダムサンプル値を利用したうえで、および統計的な見積方法を利用したうえで、見積値が決定されること(パラメータ化されること)によってであり、および、
(2)設定された最大閾値または最小閾値を積分限界として利用したうえで、パラメータ化された確率密度関数が積分されることによってであり、または、
(iv)設定された最大閾値よりも大きい、またはこれに等しい、または設定された最小閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最大値ランダムサンプルまたは最小値ランダムサンプルの値の数と、最大値ランダムサンプルまたは最小値ランダムサンプルの値の総数との比率として、少なくとも1つの既知の異常についての検出率が決定されること、および、
(v)少なくとも1つの既知の異常に検出率が割り当てられること、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
最大閾値および/または最小閾値は学習プロセスで決定され、そこでは次の各ステップが実行され、
(a)異常を含んでいない合格製品の、または大部分が異常を含んでいない合格プロセス製品の、複数のデジタル画像が生成または利用されること、画像の数は設定されており、または学習プロセスの過程で決定され、
(b)各々のデジタル画像について1つの区域または複数の区域が規定されること、各々の区域の少なくとも1つの特性の値または複数の特性についての組み合わされた値が決定されること、およびこれらの値の最大の値が最大値ランダムサンプルの最大ランダムサンプル値として決定されること、および/またはこれらの値の最小の値が最小値ランダムサンプルの最小ランダムサンプル値として決定されること、
(c)統計的な見積方法を利用したうえで、最大値ランダムサンプルを表現するために設定される確率密度関数の設定されていないすべての未決のパラメータについての見積値が最大ランダムサンプル値を利用したうえで決定されること、および/または最小値ランダムサンプルを表現するために設定される確率密度関数の設定されていないすべての未決のパラメータについての見積値が最小ランダムサンプル値を利用したうえで決定されること、
(d)検査されるべき画像で誤って最大異常が検出される第1の率が、または検査されるべき画像で正しく最大異常が認識されない第2の率が、設定されること、および/または検査されるべき画像で誤って最小異常が検出される第3の率が、または検査されるべき画像で正しく最小異常が認識されない第4の率が、設定されること、
(e)構成要件(c)に従ってパラメータ化された確率密度関数またはこれに対応する分布関数を利用したうえで最大閾値が決定されること、それにより、最大閾値よりも大きい、またはこれに等しい、最大の値の出現についての確率が設定された前記第1の率に相当するようにされ、または、最大閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最大の値の出現についての確率が設定された前記第2の率に相当するようにされ、および/または、
(f)構成要件(c)に従ってパラメータ化された確率密度関数またはこれに対応する分布関数を利用したうえで最小閾値が決定されること、それにより、最小閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最小の値の出現についての確率が設定された前記第3の率に相当するようにされ、または、最小閾値よりも大きい、またはこれに等しい、最小の値の出現についての確率が設定された前記第4の率に相当するようにされる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)1つまたは複数の区域の規定がベース閾値を利用したうえで行われ、各々の孤立したピクセルおよび隣接するピクセルの各々の群であってそのピクセル値がそれぞれベース閾値より大きいものが区域の第1の群の1つの区域にそれぞれ割り当てられ、および/または各々の孤立したピクセルおよび隣接するピクセルの各々の群であってそのピクセル値がそれぞれベース閾値より小さいか、またはこれに等しいものが区域の第2の群の1つの区域にそれぞれ割り当てられ、または、
(b)1つまたは複数の区域の規定が幾何学的なマスクを、特に固定的に設定されたマスクまたは画像処理によってそれぞれの画像から生成されるマスクを、利用したうえで行われる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
区域の特性として区域のピクセルの位置情報から判定される幾何学的な特性、特に面積、円周、または直径が利用され、または、区域の特性として区域のピクセルの値から判定されるピクセル値特性、特に区域のすべてのピクセルの最大値または最小値、平均値、分散、または標準偏差が利用されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
設定される確率分布は一般化された極値分布、特にその特殊ケース、ガンベル分布、ワイブル分布、またはフレシェ分布であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの設定された異常が不合格画像の設定された位置にあり、この情報を、および任意選択としてこの設定された異常を惹起する夾雑物のジオメトリーも、この設定された異常を表す最大ランダムサンプル値または最小ランダムサンプル値の決定のために利用されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(a)不合格画像を生成するために異常を含んでいない合格製品が利用され、合格製品の表面または内部に、少なくとも1つの設定された異常を不合格画像で生成する少なくとも1つの夾雑物が、または少なくとも1つの夾雑物が上に配置された支持体が、設けられ、または、
(b)不合格画像を生成するために合格製品のデジタル画像データが利用され、合格製品のデジタル画像データは、少なくとも1つの設定された夾雑物の既知の材料特性およびジオメトリー特性を利用したうえで、少なくとも1つの夾雑物の算入のためにデジタル式に変換されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの夾雑物のための前記支持体はプレート状またはカード状に構成され、前記支持体の内部または表面に、同一の材料特性を有し、特に単一の材料からなり、同種類のジオメトリーを有しているが、それぞれ異なるサイズを有する、複数の夾雑物が配置されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの夾雑物は事前決定された材料からなる球であることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
検出率は数値として、またはこれと関連する量または識別記号として、表示装置に出力されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
検出率は少なくとも1つの夾雑物のグラフィック表示に割り当てられて、および/または対応する不合格画像に割り当てられて、表示されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
最大閾値または最小閾値または第1、第2、第3、または第4の率はたとえばスライダや回転つまみなどの調整手段によって変更可能であり、最大閾値または最小閾値または第1、第2、第3、または第4の率についての最新の値ごとに、検出率についての最新の値が前記表示装置に表示されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
検出率が分類子によって、たとえば色コードによって、評価されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
製品のデジタル画像のデジタル画像データを取得して処理するために構成されたデータ処理デバイスを有する、製品のデジタル画像で異常を検出する装置、特にX線検査装置において、前記データ処理デバイスは先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法を実施するために構成されることを特徴とする、装置。
【請求項15】
データ処理デバイスによってコマンドが実行されたときに先行請求項のうちいずれか1項に記載の方法を実施するようこれに指図するコマンドを含んでいる、特にX線検査装置のための、製品のデジタル画像で異常を検出するためのコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルの構成要件を有する、製品の二次元のデジタル画像で異常を検出する方法に関する。さらに本発明は、この方法を実施する装置並びにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造にあたっては、その製品が特に欠損個所、異物などの異常を有していないかどうか、製造された製品を引き続いてチェックにかけるという要望ないし必要がある場合が多い。たとえば食品産業ではヨーグルトやチーズの製造にあたって、望ましくない異物やその他の望ましくない材料領域が製品内部にないかどうか、完成した製品を継続的に検査するという課題が課せられる場合がある。この問題を解決するために実作業では、製品を電磁放射によって、特にX線スペクトルの放射によって、透過照射する検査装置が利用される。このようにして、製品の外的な幾何学寸法ないし表面に関する情報だけでなく、製品の内部に関する情報も含んでいる製品のデジタル画像が生成される。このとき検出されるべき異常は、その減衰に依存して、透過照射されたときに、異常を有していない画像領域(以下「合格領域」と呼ぶ)と比べたとき、合格領域よりも高い、または低い、「グレー値」すなわちピクセル値を有する画像領域につながり得る。本件の記述において「グレー値」という概念は、基準となる露光時間中に検出される、個々のピクセルに当たった放射出力ないしこれに相当する放射エネルギーに依存して検出器が生成する情報について使用しており、該当するデジタル画像でピクセル値をどのような色や方式で表示可能であるかを問わない。
【0003】
このような種類の製品の検査のために、検査されるべき製品が完全に透過照射される(すなわち、放射源と検出器が製品の向かい合う側に位置する)のではなく、検査されるべき製品の十分に奥まで放射が浸透して製品内で「反射」される装置ないし方法も知られており、このような「反射」は、容積領域に浸透した放射の散乱によって、または容積領域での蛍光放射の生成によって、物理的に惹起される。このような種類の検査装置では、放射源と検出器が、検査されるべき製品の同一の側にあってもよい。
【0004】
このとき検査されるべき製品は、搬送装置により検査装置を通るように運ばれる、任意の形式の個別品の形態で、または、ばら荷として、存在することができる。
【0005】
放射に対する検出器として、検査されるべき製品が搬送経路に沿って動いていく製造ラインで、それぞれ事前決定された個数のピクセルを含む1つまたは複数の検出器ラインを有するライン検出器がしばしば利用される。このとき製品は、通常は一定の速度で、このような種類のスキャン装置を通るように動き、検出された多数のラインが組み合わされてデジタル画像が構成される。しかし当然ながら、ラインスキャナに代えてエリアスキャナを使用することも同じく可能である。この場合には検査されるべき製品のデジタル画像を、ただ1回の検出プロセス(すなわち、ただ1回の「露光プロセス」)によって検出することができる。
【0006】
こうして生成されたデジタル画像が引き続き、通常は自動式に、該当する製品の内部に異常がないかどうか検査される。その際には、実行されたスキャンプロセスによって生成された画像を、このような検査の前に直接的に加工ないし前処理することができる。そのために、当初の画像をたとえばデジタル式にフィルタリングすることができ、そのために使用されるフィルタがコントラスト改善を惹起することができる。
【0007】
画像を生成するときに、特に異常の検出の観点から、コントラストを改善するための方策を講じることも同じく可能である。たとえばデュアルエネルギー法を採用することができ、この場合、該当する部分画像を重ね合わせることでコントラスト改善がもたらされるように、両方のスペクトルが選択される。
【0008】
さらに、複数の画像を生成するスペクトル解像式の検出器を使用することが可能であり、この場合、検出された放射のそれぞれ特定のスペクトル部分の放射エネルギーにグレー値が相当しているピクセルから、各々の画像が構成される。そして異常の検出のために、そのようなスペクトル解像式の検出器の全部の部分画像または選択された部分画像から、たとえば該当するピクセル値の重みづけされた加算によって生成される画像を利用することができる。しかしながら異常があるか否かについて、各々の部分画像を別々に検査することもできる。
【0009】
製品のデジタル画像の自動式の検査のために閾値が規定される方法が知られており、少なくとも1つのピクセルのグレー値が閾値よりも大きい場合には、異常が存在している。そのために学習プロセスで、通常、同一の製品型式の事前設定された数の合格製品(すなわち異常を有していない製品)がスキャンされて、そのような合格製品で通常生じる最大のグレー値に関する情報を得る。そしてこれに依存して、誤廃棄率(たとえば百分率または千分率)の設定された値が遵守されるように閾値が規定される。ここでの誤廃棄率は、合格製品が「不合格製品」として認識される確率である。合格製品が不合格製品として識別される経験的な頻度を決定することによって、このような(理論上の)誤廃棄率をチェックすることができる。そのために、十分な数の合格製品のデジタル画像を生成し、規定された閾値を利用したうえでチェックすることができ、不合格製品として認識された合格製品を合格製品の総数で除した商として、経験的な誤廃棄率が決定される。
【0010】
すなわち、このような閾値の決定は、合格製品の比較的多数のデジタル画像が生成されなければならない、高いコストのかかる学習プロセスを必要とする。しかしこれは欠点である。最初に、該当する生産ラインによって、このような数の合格製品を製作しなければならず、すなわち、相応の生産時間が失われるからである。そのうえ、所望の誤廃棄率が遵守されるように高い信頼度で閾値を規定できるようにするのに、学習プロセスに必要な合格製品の数がどの程度多くなければならないかを予測することは、まず無理である。
【0011】
未公開の特許文献1には、少ない数のデジタル画像の使用のもとでも、閾値を規定するための自動化されたプロセスを実行することができる、デジタル画像で異常を検出する方法が記載されている。この方法では、製品デジタル画像で異常を検出するための閾値が、良好な信頼性をもって学習プロセスで決定される。このとき、検査されるべきデジタル画像の異常の認識のために利用される固有量の最大ないし最小の値(以下において極値と呼ぶ)の統計的な分布に関する想定が立てられる。このような極値の分布は、パラメータ化されるべき所定の確率密度関数によって十分に良好に記述される(「パラメータ化する」という概念は、この明細書においては、確率密度関数のすでに規定されているのでないパラメータの値を判定ないし規定することを意味する)。換言すると、それぞれ設定された確率密度関数のランダムサンプルの要素(すなわち、それぞれの最大値または最小値の集合)があれば十分であるという想定が立てられ、ないしは、その出現確率をこの確率密度関数によって良好に記述できるという想定が立てられる。ランダムサンプルの要素を利用したうえで、確率密度関数の決定されるべきすべてのパラメータ(すなわち、場合によりすでに設定されているのでないすべてのパラメータ)についての見積値が判定される。パラメータ化されるべき確率密度関数として、この方法では、固有量の最大値または最小値の分布を記述するために、特に一般化された極値分布、たとえばその所定の態様、すなわちワイブル分布、フレシェ分布、またはガンベル分布が利用される。
【0012】
この方法は、ピクセル値が、特にそれぞれの個々のピクセル値が、ピクセル値についての閾値との関連で、検査されるべきデジタル画像が異常を含んでいるか否かの決定のために援用される、冒頭で説明したケースだけに限定されるものではない。
【0013】
むしろこの発明は、そのような方式の根底にある原理を一般化する。検査されるべき画像が1つまたは複数の区域に分割され、各々の区域に、少なくとも1つの同一の特性または複数の同一の特性が割り当てられる。このとき各々の区域はちょうど1つまたは複数のピクセルを含んでおり、複数のピクセルが同一の区域に割り当てられるのは、これらが隣接している場合に限られる(すなわち、この区域の各々のピクセルは、直接的に隣接する、同一の区域の少なくとも1つのピクセルを有する)。このとき、着目されるピクセルに対して隣接するとみなすことができるのは、1つの辺をもって、着目されるピクセルの1つの辺に隣接する各々のピクセルであり(すなわち、着目されるピクセルの上、下、左、および右のピクセル)、または、1つの角をもって、着目されるピクセルの1つの角に隣接する各々のピクセルである(すなわち、着目されるピクセルの対角線の延長上にあるピクセル)。事前に規定された区域の各々の特性について、それぞれの特性を表現する値が判定される。各区域に複数の特性が割り当てられる場合、各々の特性について別個の値を規定することができ、または、たとえば数学演算(たとえば乗算または除算または重みづけされた加算)によって、2つまたはそれ以上の特性の値を組み合わせて1つの値にすることができる。
【0014】
異常の検出は、このような一般化のもとでは、各々の特性について、または複数の特性の各々の組み合わせについて、閾値が決定されることによって行われる。
【0015】
極端なケースでは、画像全体を1つの区域として把握ないし規定することができる。ただしその場合、異常を検出するための固有の量として、各々のピクセルのピクセル値が、当該値がピクセル値について設定された閾値を上回っているか下回っているかに関して検査されれば、このことは、ちょうど1つのピクセルを含む区域として各々のピクセルが把握ないし規定されたときと同一の結果につながる。このケースでは、事前定義された区域と、割り当てられた任意の特性とを利用したうえでの上で説明した一般化は、個々のピクセルがそのピクセル値に関して、これらがピクセル値についての閾値を上回っているか下回っているかを検査される、従来から普通である方式につながる。
【0016】
1つの特性についての閾値の決定は、ないし特性の組み合わせについての閾値の決定は、この発明によると学習プロセスで行われる。閾値の決定のために必要な画像は、すでに事前に十分な設定された数で生成しておくことができ、または必要に応じて作成され、すなわち十分な数に達するまで、1つまたは複数の新たなデジタル画像が連続して生成される。
【0017】
この公知の方法では、少なくとも1つの特性についての閾値を決定するための学習プロセスないし自動化されたプロセスは、異常を有していない合格製品のデジタル画像を利用したうえで実行される。すでに上で述べたとおり、スキャンプロセスの直接的な結果であってよい画像をまず加工することができ、ないしは検出方法のために前処理することができる。このとき、製品を全体として含む、または設定された部分領域を含む、判定された画像全体の適当な一部分を生成することもできる。こうして生成された一部分を、または検出されたデジタル画像全体を、たとえば異常をいっそう強く際立たせることを目的としてコントラスト改善を惹起するために、デジタルフィルタリングにかけることができる。エンドレス式に生産される製品またはばら荷製品が異常に関して検査されるべきである場合、このような製品の断片のデジタル画像を生成し、単独の製品(またはこのような種類の製品の一部分)の画像を用いて可能であるのと同様に、これを処理して検査することができる。
【0018】
ここで付言しておくと、自動化されたプロセスを合格製品だけを用いて実行することが、必ずしも必須なわけではない。むしろ自動化されたプロセスは、いずれの製品も不合格製品でないことが保証されることなく、生産ラインで作成された製品の画像を用いて実行することもできる。このように合格製品に代えて、「合格プロセス製品」と呼ぶ製品を利用することもでき、これらの複数の合格プロセス製品は大部分が合格製品からなり、小部分だけが不合格製品からなる。というのも実作業では、複数の合格プロセス製品における不合格製品の割合は低く、特に25%より低く、好ましくは10%より低く、きわめて好ましくは5%より低いと考えられるからである。
【0019】
自動化されたプロセスの枠内で、固定的に設定された数のデジタル画像、または自動化されたプロセスの過程で決定されるべき数の画像が、合格製品ないし合格プロセス製品について生成され、ないしは利用される。
【0020】
各々のデジタル画像について1つまたは複数の区域が規定され、各々の区域について、少なくとも1つの特性の値、または複数の特性についての組み合わされた値が決定される。これらの値のうち最大の値が、最大値ランダムサンプルの最大ランダムサンプル値として決定され、および/またはこれらの値のうち最小の値が、最小値ランダムサンプルの最小ランダムサンプル値として決定される。
【0021】
このとき、妥当性のない極値または一義的にエラーを示唆している極値は除外することができる。たとえば極値の判定にあたって、使用されるグレー値スケールの絶対的な最大値または絶対的な最小値を有しているピクセル値を除外することができる。相応の最小値は、たとえば値が0の最小値は、検出器の不具合があるピクセルを示唆する可能性があり、最大値は、検出器のオーバーシュートしたピクセルを示唆する可能性があるからである。
【0022】
こうして決定される極値が上で述べたランダムサンプルであり、たとえばリストとして保存しておくことができる(場合により最小値と最大値について別々に)。
【0023】
引き続いて、最大ランダムサンプル値を利用したうえで、最大値ランダムサンプルを表現するために設定された確率密度関数の、設定されていないすべての未決のパラメータについて、および/または最小ランダムサンプル値を利用したうえで、最小値ランダムサンプルを表現するために設定された確率密度関数の、設定されていないすべての未決のパラメータについて、見積値を決定することができる。そのために統計的な見積方法が適用される。
【0024】
特に、見積関数(統計的な推定量とも呼ぶ)を利用する統計的な見積方法の有意義な結果は、ランダムサンプルが最低数の値を含んでいる場合にのみ期待できるので、通常はそのような最低数が設定され、このことは、ひいては相応の最低数のデジタル画像をもたらす。
【0025】
この公知の方法の1つの要点は、検査されるべき画像で(閾値を利用する方法の実施時に)誤って最大異常が検出される率が検出される率が設定され、または、検査されるべき画像で(閾値を利用する方法の実施時に)正しく最大異常が検出されない率が設定され、および/または検査されるべき画像で(閾値を利用する方法の実施時に)誤って最小異常が検出される率が設定され、または、検査されるべき画像で(閾値を利用する方法の実施時に)正しく最小異常が検出されない率が設定されることにある。すなわち決定されるべき最大閾値または最小閾値は、設定された率が遵守されるように決定することができる。
【0026】
ここで率という概念は、テストの適用時に該当する率基準を満たす合格製品の数と、合格製品ないしプロセス製品の設定された総数との商であると理解される。それに伴い、検査されるべき画像で誤って最大異常または最小異常が検出される率は、実作業でしばしば使用される「誤廃棄率」という概念に相当する。検査されるべき画像で誤って最大異常ないし最小異常が検出される率と、検査されるべき画像で正しく最大異常ないし最小異常が認識されない率とは、合計でその都度、1になる。設備の稼働時にこれらの率を浮動値として、すなわち、たとえば直近にチェックされた個数Nの製品を通じて、判定することもできる。
【0027】
設定された確率密度関数が見積方法によってパラメータ化される場合、最大閾値は、以前にパラメータ化された確率密度関数またはこれに相当する分布関数を利用したうえで、最大閾値よりも大きい、またはこれに等しい、最大の値の出現についての確率が、検査されるべき画像で誤って最大異常が検出される、該当する設定された率に相当するように決定することができ、または、最大閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最大の値の出現についての確率が、検査されるべき画像で正しく最大異常が認識されない、設定された率に相当するように決定することができる。換言すると最大閾値は、最大閾値よりも上方の確率密度関数の下側の面積が、ないしは最大閾値よりも下方の確率密度関数の下側の面積が、該当する設定された率に相当するように決定することができる。
【0028】
これに準じて最小閾値は、以前にパラメータ化された確率密度関数またはこれに相当する分布関数を利用したうえで、最小閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最小の値の出現についての確率が、検査されるべき画像で誤って最小異常が検出される、該当する設定された率に相当するように決定することができ、または、最小閾値よりも大きい、またはこれに等しい、最小の値の出現についての確率が、合格製品で正しく最小異常が認識されない、設定された率に相当するように決定することができる。換言すると最小閾値は、最小閾値よりも下方の該当する確率密度関数の下側の面積が、ないしは最小閾値よりも下方の確率密度関数の下側の面積が、該当する設定された率に相当するように決定することができる。
【0029】
これらの面積を決定するために、当然ながら確率密度関数の積分を利用することもでき、この積分は、該当する閾値から、確率密度関数の定義区間の上側の限界(たとえば無限、または設定された上側の限界値であってこれよりも上方では積分の値すなわち面積が設定された誤差境界よりも少なくしか変化しなくなるもの)まで形成され、ないしは、定義区間の下限(たとえばマイナス無限、または設定された下側の限界値であってこれよりも下方では積分の値すなわち面積が設定された誤差境界よりも少なくしか変化しなくなるもの)から閾値まで形成される。
【0030】
当然ながら、上で説明したような積分の計算に代えて、該当する確率密度関数の分布関数を援用することもできる。分布関数は、マイナス無限から、ないしは確率密度関数の定義区間の下側の限界から、該当する閾値までの確率密度関数の積分の値を表すからである。このように確率密度関数の下側の主要な面積は、すなわち、積分の値ないし分布関数の値は、合格製品の画像の各区域の特性の最大ないし最小の値が該当する閾値よりも小さいか、またはこれに等しい(理論上の)確率に相当する。最大ないし最小の値が閾値よりも大きいか、またはこれに等しい確率を計算しようとするときには、そのために、このようにして計算された確率を1から減算するだけでよい。
【0031】
この計算のためには面積ないし積分ないし分布関数の値が設定されるので、相応の逆関数が利用されなければならない。このような計算は分析的に、または数値法によって、行うことができる。
【0032】
この公知の方法では、各区域をベース閾値によって規定することができ、ピクセル値がベース閾値よりも大きい(またはこれに等しい)隣接するピクセルが、第1の群の区域を形成し、ピクセル値がベース閾値よりも小さい隣接するピクセルが、第2の群の区域を形成する。第1および第2の群の区域を、ただ1つの群をなすようにまとめることもできる。各区域を規定するためのさらに別の手段は、事前定義された(幾何学的な)マスクの利用にある。たとえば、たとえば正方形の格子(すなわちチェス盤状の格子)をデジタル画像の上に載せるマトリクス状のマスクを利用することができ、すべてのピクセルが正方形の内部で1つの区域を形成する。当然ながらマスクはこれ以外の下位区分を惹起することもでき、画像全体が各区域に分割されなくてもよい。
【0033】
各区域に、1つの値をもって表すことができる1つの特性が割り当てられる。これは特に各区域の面積、円周、直径などの幾何学的な特性であってよく(各区域が少なくとも近似的に円形である場合)、または、該当する区域のピクセル値からもたらされる値によって表現されるピクセル値特性、たとえば1つの区域の最大または最小の値、平均値、もしくはピクセル値の分散であってよい。
【0034】
複数の特性を組み合わせることもでき、そしてこれらの特性を、組み合わされた値によって表すことができる。たとえば平均値と標準偏差を加算することができ、この情報がピクセル値についての一種の信頼区間となる。最大値と最小値との差異を、その区域の明度差を表現する組み合わされた値として利用することもできる。この目安は外れ値に対して敏感であるため、これに代えて分位数、たとえば最大値と最小値の代替として10%および90%の分位数を利用することができる。さらに、区域がどれくらい良好に円形であるか、ないしは円形性からどれだけ大きく相違しているかを推定するために、円周と面積の商を利用することができる。或いは、幾何学的な特性とピクセル特性とを組み合わせることもできる。
【0035】
このように、この公知の方法は、率を、特に誤廃棄率(または該当する相補的な率、すなわち画像にエラーがないと正しく認識される率)を、設定し、これに依存して、最小異常または最大異常の認識のための閾値を決定するという可能性を提供する。
【0036】
しかし、しばしば実作業では、誤廃棄率に加えて実際の検出率を、または少なくともその予測値を、知ることが望ましく、または必要である。実際の誤廃棄率は実作業において、高いコストがかかるとしても、実際に廃棄される製品を人間が個別鑑定することによって比較的容易に判定できるのに対して、そのような個別鑑定は検出率についてはほぼ不可能である。そのために、たとえば実際の不合格製品の画像を、これに含まれる異常が既知の閾値によって十分な確実性ないし確率をもって、すなわち十分に高い検出率をもって、認識されているか否かに関して検査することが知られている。
【発明の概要】
【0037】
以上の先行技術を前提としたうえで、本発明の課題は、異常の認識の検出率についての少なくとも1つの閾値の決定を簡易な方式と少ないコストで可能にする、製品のデジタル画像で異常を検出する方法を提供することにある。さらに本発明の課題は、この方法を実施するための装置並びにコンピュータプログラム製品を提供することにある。
【0038】
本発明は、請求項1ないし14および15の構成要件によってこの課題を解決する。本発明のその他の好ましい実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0039】
本発明が前提とする知見は、既知の(物理的または仮想的な)夾雑物により生起される少なくとも1つの既知の異常が含まれている同種類の複数の製品(ないし、たとえばばら荷のように連続して生産される製品の場合には同種類の1つの製品)のデジタル画像を作成することで、検査装置のアクティブな稼働のもとで予想される検出率に関する情報を得ることができ、ないしはその見積値を判定できるということにある。
【0040】
ここで同種類の製品とは、たとえばシリーズ生産の枠内で製造される、たとえばカップに小分けされるヨーグルトや、袋または堅いカートンに包装されるチーズなどの製品であると理解される。このような種類の製品の検査では、たとえば汚れ、金属片、小石、骨片などの望ましくない夾雑物がそこに含まれているか否かが確認されなくてはならない。このとき検査装置は、通常、製品のデジタル画像を作成し、これが適当な自動式の評価によって、望ましくない夾雑物により引き起こされる異常の存在に関して調べられる。
【0041】
そのためにデジタル画像が単一の区域として把握され、または複数の区域に下位区分され、このとき各々の区域が1つまたは複数の隣接するピクセルからなる。このような各々の区域について、少なくとも1つの特性についての値が、または区域の複数の特性について組み合わされた値が、決定される。たとえば区域について平均の明度値(グレー値)を決定することができる。異常の存在が認識されるのは、該当する特性の値が設定された最大閾値よりも、または設定された最小閾値よりも、大きい場合である。
【0042】
すでに上で述べたとおり、最大閾値ないし最小閾値は直接的に設定されるか、または特許文献1に記載されている方法に基づき、誤廃棄率(ないしこれと相補的な率)についての設定値から決定することができる。
【0043】
本発明によると、検査プロセスで次の各ステップが実行される:
【0044】
■それぞれ少なくとも1つの既知の異常を有する、現実または仮想の不合格製品の複数のデジタル不合格画像が生成されること、
【0045】
■各々の不合格画像について、1つの区域または複数の区域が規定されること、および各々の区域の少なくとも1つの特性の値または複数の特性についての組み合わされた値が決定されること、およびこれらの値の最大の値が最大値ランダムサンプルの最大ランダムサンプル値として決定されること、またはこれらの値の最小の値が最小値ランダムサンプルの最小ランダムサンプル値として決定されること、
【0046】
■少なくとも1つの既知の異常について検出率が決定されること、それは、
【0047】
○最大値ランダムサンプルまたは最小値ランダムサンプルを記述するために設定される確率密度関数の設定されていないすべての未決のパラメータについて、最大ランダムサンプル値または最小ランダムサンプル値を利用したうえで、および統計的な見積方法を利用したうえで、見積値が決定されること(パラメータ化されること)によってであり、および、
【0048】
○設定された最大閾値または最小閾値を積分限界として利用したうえで、パラメータ化された確率密度関数が積分されることによってであり、または、
【0049】
■設定された最大閾値よりも大きい、またはこれに等しい、または設定された最小閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最大値ランダムサンプルまたは最小値ランダムサンプルの値の数と、最大値ランダムサンプルまたは最小値ランダムサンプルの値の総数との比率として検出率が決定されること、および、
【0050】
■少なくとも1つの既知の異常に検出率が割り当てられること。
【0051】
こうして判定された検出率が少なくとも1つの既知の異常に割り当てられることで、この方法がインプリメントされる、たとえばX線検査装置などの検査装置の操作者にとって、事前に作成された閾値が、ないし当該閾値の根拠となる(設定された量としての)誤廃棄率が、検出率に対して及ぼす影響がただちに認識可能になるという利点がもたらされる。
【0052】
このようにして、実作業の操業時に既知でない異常の存在に関して検査装置により実際に検査されるべきである合格製品の画像において、既知の異常の検出率が、経済的な要求と確実性に関わる要求とを可能な限り満たすように、閾値ないし誤廃棄率を選択することができる。というのも、これら両方のパラメータはしばしば相互的に斟酌されなければならないからである。当然ながら、0%の誤廃棄率と100%の検出率が望ましいが、このことは実作業ではほぼ実現可能ではなく、ないしは実現可能ではない。経済的な観点からは、可能な限り低い誤廃棄率が望ましい。このことは、最大異常の認識について可能な限り高い閾値によって実現されるが、このことは逆に検出率を、ないし最大異常の妥当な検出の確率を、低下させる。検出されるべき夾雑物が危険な物体である場合、たとえば食品中の金属片や骨片である場合、このような不純物のある食品の飲食時に怪我を負った末端消費者の賠償請求を可能な限り回避するために、検出率は相応に高くなければならず、たとえば99%またはそれ以上でなければならない。それに対して高すぎる誤廃棄率は、誤って廃棄された検査製品を人間が再点検するためのコストが高くなり、そのためにコスト集約的になると、製品の製造者にとって経済的にきわめて不利益となり得る。
【0053】
本発明により、一方における誤廃棄率および他方における検出率をただ1つのパラメータの設定によって、すなわち、それぞれの最大閾値または最小閾値または誤廃棄率(もしくはこれと相補的な率)によって直接的に、それが経済性および/または確実性に関わる要求を満たすように簡易かつ迅速に確認することが可能である。
【0054】
当然ながら実作業ではこの方法は、既知の異常が実際に出現する異常と良く一致しているほど、ないしは既知の(物理的な仮想的な)夾雑物が実際に出現する夾雑物と良く一致しているほど、いっそう妥当性の高い結果をもたらす。
【0055】
本発明の実施形態では、最大閾値ないし最小閾値が学習プロセスで決定され、次の各ステップが実行される:
【0056】
●異常を含んでいない合格製品の、または大部分が異常を含んでいない合格プロセス製品の、複数のデジタル画像が生成または利用されること、画像の数は設定されており、または学習プロセスの過程で決定され、
【0057】
●各々のデジタル画像について1つの区域または複数の区域が規定されること、各々の区域の少なくとも1つの特性の値または複数の特性についての組み合わされた値が決定されること、およびこれらの値の最大の値が最大値ランダムサンプルの最大ランダムサンプル値として決定されること、および/またはこれらの値の最小の値が最小値ランダムサンプルの最小ランダムサンプル値として決定されること、
【0058】
●統計的な見積方法を利用したうえで、最大値ランダムサンプルを表現するために設定される確率密度関数の設定されていないすべての未決のパラメータについての見積値が最大ランダムサンプル値を利用したうえで決定されること、および/または最小値ランダムサンプルを表現するために設定される確率密度関数の設定されていないすべての未決のパラメータについての見積値が最小ランダムサンプル値を利用したうえで決定されること、
【0059】
●検査されるべき画像で誤って最大異常が検出される第1の率が、または検査されるべき画像で正しく最大異常が認識されない第2の率が、設定されること、および/または検査されるべき画像で誤って最小異常が検出される第3の率が、または検査されるべき画像で正しく最小異常が認識されない第4の率が、設定されること、
【0060】
●パラメータ化された確率密度関数またはこれに対応する分布関数を利用したうえで最大閾値が決定されること、それにより、最大閾値よりも大きい、またはこれに等しい、最大の値の出現についての確率が設定された第1の率に相当するようにされ、または、最大閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最大の値の出現についての確率が設定された第2の率に相当するようにされ、および/または、
【0061】
●パラメータ化された確率密度関数またはこれに対応する分布関数を利用したうえで最小閾値が決定されること、それにより、最小閾値よりも小さい、またはこれに等しい、最小の値の出現についての確率が設定された第3の率に相当するようにされ、または、最小閾値よりも大きい、またはこれに等しい、最小の値の出現についての確率が設定された第4の率に相当するようにされる。
【0062】
これは基本的には特許文献1に記載されている方法であり、誤廃棄率ないしこれと相補的な率が設定される。閾値の直接的な設定と比べたときのこの方法の利点は、当然ながら、ここでは実作業で重要となる量のうちの1つが、すなわち誤廃棄率が、設定され、誤廃棄率と検出率の両方に対する影響を容易には予測できない任意の閾値がまず設定されるのではないという点に見出すことができる。
【0063】
本発明の実施形態では、区域の特性として、区域のピクセルの位置情報から判定される幾何学的な特性が、特に面積、円周、または直径が、利用される。さらに区域の特性として、区域のピクセルの値から判定されるピクセル値特性を、特に区域のすべてのピクセルの最大値または最小値、平均値、分散、または標準偏差を、利用することができる。
【0064】
実作業では、区域の特性として利用される量は、これを利用したうえで検査装置の実作業の稼働時に、ないし本発明による方法の実作業での適用時に、検知されるべき(既知でない)夾雑物が、ないしそれによって引き起こされる(既知でない)異常が、もっとも高い信頼度で検出される量である。
【0065】
最大閾値ないし最小閾値が直接的に設定されるのではなく、設定された誤廃棄率から判定される場合、そのために設定される必要な確率分布として、一般化された極値分布を、特にその特殊ケース、ガンベル分布、ワイブル分布、またはフレシェ分布を、選択ないし利用することができる。というのも一般化された極値分布は、実際に出現する極値の確率分布を表現するのに格別に適しているからである。
【0066】
本発明の実施形態では、検査プロセスのために必要なデジタル不合格画像は、不合格画像の内部の設定された位置に少なくとも1つの設定された異常が存在するように生成される。それに伴ってこの情報を、および任意選択として少なくとも1つの設定された異常を惹起する夾雑物のジオメトリーも、この設定された異常を表す最大ランダムサンプル値または最小ランダムサンプル値の決定のために利用することができる。
【0067】
たとえば少なくとも1つの設定された異常を生成する夾雑物は、-透過照射方向に対して垂直の画像平面で-該当するデジタル画像の右上の4分の1に位置するように、検査されるべき合格製品の表面または内部で位置決めすることができる(この合格製品は、夾雑物の表面ないし内部への付与後に不合格製品となる)。そうすれば、それぞれの最大ランダムサンプル値ないし最小ランダムサンプル値の検出を、たとえばこの右上の4分の1だけに限定することができる。それにより、デジタル画像に設定された異常の外部の区域で、異常ないし該当する夾雑物によって実際に引き起こされる最大ランダムサンプル値ないし最小ランダムサンプル値よりも大きい、ないしは小さい、ランダムサンプル値が判定される確率が低くなる。
【0068】
画像評価のために実際に利用される区域は、ないし実際に利用される画像部分は、ベース閾値を利用したうえで決定することもできる。それにより、たとえば設定されたベース閾値よりもピクセル値が大きい、またはこれに等しい、画像のすべての区域を決定することができる。その場合、こうして決定された区域と、該当する夾雑物(ないし画像平面への投影におけるその幾何学的な外側寸法)の既知の幾何学的な外側寸法との間に、十分に大きいオーバーラップがあるか否かを検査することができる。たとえば夾雑物が、その投影面全体をもって、こうして決定された区域の内部に位置するか否かを、または、事前決定されたオーバーラップ閾値を超える割合をもって位置しているか否かを、検査することができる。
【0069】
すでに上で述べたとおり、本発明の実施形態では、不合格画像を生成するために異常を含んでいない合格製品を利用することができ、合格製品の表面または内部に少なくとも1つの夾雑物が設けられ、それにより合格製品から、少なくとも1つの既知の夾雑物を有する不合格製品が生じる。さらに、少なくとも1つの夾雑物は、製品に取り付けられる、またはその中に配置される、支持体の表面または内部に設けられていてもよい。
【0070】
本発明の別の実施形態では、不合格画像を生成するために合格製品のデジタル画像データを利用することができ、合格製品のデジタル画像データが、少なくとも1つの設定された夾雑物の既知の材料特性およびジオメトリー特性を利用したうえで、少なくとも1つの夾雑物の算入のためにデジタル式に変換される。換言すると、合格製品のデジタル画像に既知の異常が「算入」ないし「フェードイン」される。この態様が特に適しているのは、夾雑物が単一の材料からなっており、たとえば球、直方体、立方体などの簡素な幾何学構造を有している場合である。「算入」は、検査されるべき製品を透過照射する検査装置においては、検査に利用される放射について既知の材料依存的な固有の減衰を利用したうえで追加減衰が決定されて、合格画像の画像データによって表現される減衰に追加してこれが考慮されるように行うことができる。このことは、減衰についての対数目盛が利用されると、簡易な加算によって行うことができる。
【0071】
少なくとも1つの夾雑物のための支持体は、プレート状またはカード状に構成されていてよい。支持体の内部または表面に、同一の材料特性を有し、特に単一の材料からなり、同種類のジオメトリーを有しているが、それぞれ異なるサイズを有する、複数の夾雑物が配置されていてもよい。このようにして、複数の既知の異常を有する不合格画像を生成することができる。このとき評価は、それぞれ1つの(上で説明した方式で)決定された区域だけが、ないしは不合格画像の特定の一部分だけが、相応の最大閾値ないし最小閾値の決定のために利用されるように行うことができる。
【0072】
本発明の実施形態では、検出率は数値として、またはこれと関連する量または識別記号として、表示装置に出力することができる。
【0073】
このとき検出率は、少なくとも1つの夾雑物のグラフィック表示に割り当てて、および/または対応する不合格画像に割り当てて、表示することもできる。たとえば同一の材料からなる、異なる大きさの球によって引き起こされる既知の異常が利用される場合(これらの異常が物理的な夾雑物により生成されるか、「算入」によって生成されるかを問わない)、相応の材料名称が付された球の表示ごとに、検出率の該当する値を表示することができる。夾雑物の表示の代替または追加として、合格画像を、または異常を含んでいる画像部分を、表示することもできる。
【0074】
本発明の別の実施形態では、最大異常ないし最小異常の認識のための最大閾値ないし最小閾値または誤廃棄率(ないしこれと相補的な率)は、たとえばキーボードなどの入力手段によって、またはたとえば(物理的もしくはデジタル式に具体化される)スライダや回転つまみなどの調整手段によって、変更可能であってよい。さらに、最大閾値または最小閾値についての、または該当する率についての、最新の値ごとに、検出率についての最新の値を表示装置で表示することができる。
【0075】
このような方策によって操作者は、既知の夾雑物ないし既知の異常の認識が、どのようにして、どれだけの確実性で行われるかの感覚を養うことができる。
【0076】
数値としての検出率の表示に代えて、たとえば色コードを利用したうえで、これを分類子によって評価することもできる。たとえば低すぎる検出率について赤色を選択することができ(それぞれの状況に依存してたとえば50%未満)、まだ容認できる検出率について黄色を選択することができ(たとえば50%以上90%以下)、十分に信頼できる異常の検出を保証する高い検出率について緑色を選択することができる(たとえば>90%)。
【0077】
本発明による装置に適したデータ処理デバイスは、通常の方式で、適当な出入力インターフェースを備えたプロセッサを有することができる。プロセッサは、たとえば産業用の画像処理のための専用のプロセッサとして構成されていてよい。当然ながらプロセッサは、通常のプロセッサと専用の画像処理プロセッサとの組み合わせによって具体化されていてもよい。データ処理デバイス全体は、相応のインターフェースを備えた独立したCPUユニットとして、或いはスロットCPUとして、具体化されていてよい。
【0078】
ここで指摘しておくと、上記で説明した特許文献1に基づく方法ないし装置の一切の構成要件を、本発明との関連で適用することもできる。
【0079】
次に、図面に示されている実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。図面には次のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明に基づく方法を実施する装置を有するX線検査装置を示す模式図である。
図2】合格製品のデジタル画像で事前に決定された区域の特性の最大の値のランダムサンプルの経験的な頻度分布を示すグラフであり、並びに、これに合わせてフィッティングされた確率密度関数である。
図3】合格製品(または合格プロセス製品)のデジタル画像を利用したうえで決定された、特性の最小および最大の値についての確率密度関数をそれぞれ示すグラフである。
図4】合格製品(または合格プロセス製品)のデジタル画像を利用したうえで決定された、特性の最大の値についての確率密度関数(曲線(a))と、それぞれ既知の異常を有する不合格製品のデジタル画像を利用したうえで決定された、特性の最大の値についての第2の確率密度関数(曲線(b))とを示すグラフである。
図5図4に類似するグラフであるが、曲線(a)および(b)は横軸にさらに大きい間隔を有しており、それによりいっそう高い検出率が、同時にいっそう低い誤廃棄率のもとで可能である。
図6】表示装置の表示を示す図であり、3つの異なる材料について、サイズの異なるそれぞれ6つの同種類の夾雑物が表示され、各々の夾雑物に検出率の数値が割り当てられている。
図7図6に類似する表示装置の表示を示す図であり、各々の夾雑物に検出率のスマイリー記号が割り当てられている。
図8図6に類似する表示装置の表示を示す図であり、3つの異なる材料について、95%よりも高い検出率で検出可能である夾雑物サイズだけがそれぞれ表示されている。
図9図6に類似する表示装置の表示を示す図であり、誤廃棄率についての調整手段がデジタル式のスライダの形態で追加的に設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1には、以下に説明する方法を実施するために構成された、デジタル画像で異常を検出する装置102を有するX線検査装置100が模式的に示されている。X線検査装置100は、異常を含み得るデジタル画像をどのようにして生起することができるかの、考えられる1つの例であるにすぎない。異常の存在に関して検査されるべき任意のデジタル画像に、本発明による方法を適用することが可能である。
【0082】
すでに上で説明したとおり、デジタル画像は通常、検出されるべき異常を有する製品を表す。図1に示すX線検査装置の事例では、例示として個別品の形態の製品104が検査される。しかしながら、たとえばばら荷製品など、その他の任意の製品のデジタル画像を生成することも同様に可能である。そのようなケースでは、ばら荷製品の一区域をそれぞれ表すデジタル画像が生成されるのが好適である。
【0083】
図1に示すX線検査装置100では、検査されるべき製品104が搬送デバイス106により、設定された搬送経路(矢印Fによって示唆)に沿って運ばれていく。ここでは搬送デバイス106は、複数のコンベヤベルト108、110、112、114を有している。コンベヤベルト108は製品104を搬入するための役目を果たし、コンベヤベルト114は製品を搬出するための役目を果たす。検査装置100は、コンベヤベルト110および112が中に配置された遮蔽ハウジング116を有しており、並びに、X線放射源118およびX線放射検出器120を有している。X線放射源118は、紙面に対して垂直に扇形の形状を有するとともに搬送方向で僅少な幅を有するX線ビーム121を生成する。X線ビーム121は、コンベヤベルト110および112の互いに向かい合う端面の間の間隙ないし自由空間を通過してから、図1に示すX線検査装置100の実施形態ではコンベヤベルト110、112の下方に配置されたX線放射検出器120に当たる。X線放射検出器120は、紙面に対して垂直の方向で、検査されるべき製品の最大の幅に相当する幅を有している。通常、X線放射検出器の幅は、コンベヤベルト110、112の幅とほぼ同じ大きさに選択される。X線放射検出器120は、紙面に対して垂直の方向に1つまたは複数の検出器ラインを有するライン検出器として構成されていてよく、各々の検出器ラインが設定された数のピクセルを有する。
【0084】
異常を検出する装置102は、X線放射検出器120の信号が供給される画像処理ユニット122を有している。画像処理ユニット122は、1つまたは複数のプロセッサと、ワーキングメモリと、場合によりハードディスクメモリまたはSSDメモリと、X線放射検出器120の信号の供給のための、およびその他のデータの供給ないし受信と送出ないし送信のための適当なインターフェースとを有する、通常のコンピュータユニットとして構成されていてよい。さらに装置102は、画像処理ユニット122によって生起された、またはこれに供給された、情報を表示することができる表示ユニット124を有している。
【0085】
図1に模式的に示すように、検査されるべき製品104は扇形のX線ビーム121を通って動き、それにより、ライン検出器として構成されているX線放射検出器120によって相応のデジタル画像信号が生成されて、これが画像処理ユニット122に供給される。画像処理ユニット122は、個別品のケースでは製品104の全体を含む、または少なくとも1つの設定された一部分を含む、デジタル画像がまず画像信号から生成されるように構成されていてよい。この一部分は、画像処理ないしパターン認識の通常の手法によって選択することができる。画像処理ユニット122は、こうして生成されたデジタル画像から、以下に説明する方法によって異常の存在に関して検査されるべき最終的なデジタル画像を、たとえばデジタル式のフィルタリングなどの別の画像処理にかけることもでき、この画像処理は、検出されるべき異常がより良く認識可能となるように、特に残りの画像に対してより良く際立つように、選択される。このような種類の画像前処理は、たとえばノイズ抑圧など、その他の任意の画像処理ステップも含むことができる。このような種類の(必ず必要というわけではない)画像前処理の最後に、異常の存在に関して次に検査されるべきデジタル画像が生じる。
【0086】
冒頭で説明したとおり、異常の検出のためにピクセル値についての閾値を利用することが知られている。このケースでは異常の存在が検出されるのは、1つのピクセル値が、または設定された最低数のピクセルを含む隣接するピクセルの群が、閾値を上回っている場合である。1つまたは複数の異常がデジタル画像で検出されると、その情報を利用して、対応する製品に関するアクションを起こすことができ、たとえばその製品を製品流から導出することができる。その代替または追加として、該当する製品を物理的または仮想的に、すなわち相応のデータを割り当てることによって、マーキングすることができる。
【0087】
表示ユニット124は、たとえば検査されるべきデジタル画像および場合によりその中で検出された異常、その都度、適用される閾値、選択された確率密度関数の種類、対応するパラメータ、ランダムサンプルに合わせた確率密度関数のフィッティングの品質、閾値についての信頼区間、パラメータまたは率(特に誤廃棄率)など、所望の情報を表示するために利用することができる。出力は、当然ながらデータ(数値)および/またはグラフィックの形態で行うことができる。装置の通常の作業モードで検出が実行される場合、装置102の(通常の)作業動作中における(或いは学習プロセス中における)最新の廃棄率の推移を時間にわたって表すグラフを表示することもでき、設定されている率(たとえば誤廃棄率)や、設定された率についての信頼区間を表示することもできる。さらに、ランダムサンプル値を含むリストおよび/または図2に類するグラフィックを表示することもできる。さらに、図6から9に示すような表示を、すなわち物理的または仮想的な夾雑物によって生成される、設定された異常の検出率に関する情報を、表示することもできる。該当するデータを当然ながら上位のユニットに出力し、および/または保存することもできる。
【0088】
画像処理ユニット122には、以下に説明する方法によってその後に検査されるべき製品型式についてすでに判定されている1つまたは複数のスタート閾値を供給することもでき、または、以下に説明する方法の実施のために必要であるその他の情報を供給することもでき、それは、たとえば設定された確率密度関数の利用されるタイプに関わる情報や、検査されるべきデジタル画像で各区域がどのような方式で定義されるかに関わる情報である(下記参照)。
【0089】
上で説明したとおり、デジタル画像で異常を検出するための以下に説明する方法は、1つまたは複数のピクセル値が設定された最大閾値を上回っているか否か、または設定された最小閾値を下回っているか否かのチェックだけに限定されるものではない。むしろ以下に説明する方法は、最大閾値または最小閾値を規定ないし決定するために、検査されるべきデジタル画像で事前に規定される各区域の任意の特性について最大閾値および/または最小閾値が決定されるように、一般化することができる。
【0090】
そのためには検査されるべきデジタル画像で、まず、設定された特性の値をそれぞれ割り当てることができる区域が定義されなければならない。区域の定義は、たとえばベース閾値が利用されるように行うことができ、この場合、閾値に等しい、またはこれを上回る、すべてのピクセル値が第1の群の区域を形成し、残りのピクセル値が第2の群の区域を形成する。検査されるべき特性に依存して、第1または第2の群だけが、その都度さらに処理されれば十分であり得る。このことが該当するのは、たとえば区域の特性として、区域の最大または最小のピクセル値もしくは平均のピクセル値だけが異常の認識のために評価される場合である。
【0091】
しかしながら、個々のピクセル値によってのみ表現されるのではない1つまたは複数の特性を各区域に割り当てることも可能である。たとえば、たとえば面積、円周、直径(少なくとも近似的に円形の区域のケース)、または円形からの誤差など、幾何学的な特性を1つの区域に割り当てることができる。そのようなケースで異常が認識されるのは、該当する特性の値が、それについて設定された最大閾値を上回っている場合、ないし設定された最小閾値を下回っている場合である。このような一般的なケースでも、そのために必要な最大閾値ないし最小閾値を以下に説明する方法によって決定することができる。
【0092】
検査されるべきデジタル画像における区域の決定のための別の選択肢は、画像の上に載せられる、設定された幾何学的なマスクを利用することにある。これはたとえば設定された大きさの、同じ大きさの隣接する正方形から構成されるマスクであってよい。
【0093】
この場合にも、こうして定義される各々の区域に、1つまたは複数の特性を割り当てることができ、たとえば区域に含まれるピクセル値の分散や標準偏差、該当する平均値、またはそこに含まれる最大値や最小値などを割り当てることができる。
【0094】
それぞれ異なる特性についての2つまたはそれ以上の値から判定される、各々の区域について組み合わされた値を決定することもできる。たとえば特に算術演算によって、たとえば(重みづけされた)加算によって、ピクセル値の分散や標準偏差についての値と、平均値とを組み合わされた値をなすようにまとめることができ、このことは、当該区域のピクセル値がある程度まで正規に分布している場合には、この特別なケースにおいて一種の信頼区間を表す。組み合わされた値ないし各区域の特性の組み合わせについての別の例は、それぞれの中に含まれる最大のピクセル値と最小のピクセル値との間の差異である。外れ値に対していっそう安定的であるために、最大値と最小値の代替として分位数、たとえば10%および90%の分位数を利用することもできる。
【0095】
以下において、相応の最大閾値ないし最小閾値を、どのようにしていっそう少ない数のデジタル画像で決定できるかを説明する。上で述べたとおり、このような学習プロセスは合格製品ないし合格プロセス製品を用いて行うことができる。学習プロセスは、たとえばこのような種類の検査装置を含む、製品を製造または加工するための設備の使用開始時に実行することができる。その際には一般に、各々の製品型式についての閾値を決定することが必要となる。
【0096】
当然ながら特定の製品型式についての閾値を保存しておくことができ、それにより、検査されるべき製品の型式の変更が行われていなければ、学習プロセスを毎回新たに実行する必要がなくなる。
【0097】
さらに、進行している設備の稼働中に学習プロセスを実行することが可能であり、それは少なくとも、この設備が合格プロセス製品を製作すること、すなわち大部分が(異常を含まない)合格製品である製品を製作することを前提にできる場合である。というのもこのようなケースでは、上で説明したとおり、合格プロセス製品に含まれる不合格製品は、必要なランダムサンプルの作成時に外れ値として除外されるからである。
【0098】
閾値を決定するための以下に説明する方法の主要な構成要件は、(既知でない異常情報を含む)合格製品が利用されるケースにおいて、検査されるべき画像で過って最大異常が検出される率(以下において偽陽性率または誤廃棄率とも呼ぶ)が、または、検査されるべき画像で正しく最大異常が認識されない率(以下において真陰性率とも呼ぶ)が、設定されるという点にある。すなわち、第1のステップで閾値が決定されて、第2のステップで、該当する閾値が利用されたときに相応の是認できる率がもたらされるか否かがチェックされる必要がなくなる。しかしながら、既知の異常について以下に説明する検出率の決定のために、原則として、誤廃棄率(偽陽性率)またはこれと相補的な真陰性率を直接的に指定することも可能である。ただしこのケースでは、所望の誤廃棄率が実現されるように閾値を選択するために、大幅に多い数の合格製品のデジタル画像が必要となる。
【0099】
デジタル画像の必要数は、すなわち合格製品または合格プロセス製品の数は、あらかじめ規定しておくことができるが、その場合にはこのような数は、閾値が所望の信頼度で決定されるように多く選択されなければならない。しかしながら、デジタル画像の必要数を学習プロセスの過程で決定することも可能である(画像が学習プロセス中に生成されるか、それとも、学習プロセスのスタート前からすでに利用できるかを問わない)。その際には、まず最低数のデジタル画像をもってスタートし、その都度、決定される閾値が十分に信頼できるようになるまで、すなわち設定された率が十分に確実に遵守されるようになるまで、この最低数を1つまたは複数のデジタル画像だけ段階的に増やしていくのが好適である。このことは、信頼区間を決定することでチェックすることができる。
【0100】
その次のステップで、通常の動作モードでの(すなわち学習プロセス以外での)異常の検出のときと同じく、各々のデジタル画像について区域が規定され、各々の区域について、その区域にそれぞれ割り当てられる少なくとも1つの特性の値が決定される。そして各々のデジタル画像について、それぞれ1つの特性または該当する複数の特性の最大の値および/または最小の値が判定され、ないしは複数の特性について組み合わされた値が判定され、相応のランダムサンプルに割り当てられる。このことはたとえば、すべての最小の値が最小値リストに保存され、すべての最大の値が最大値リストに保存されることによって行うことができる。ここで付言しておくと、当然ながら本方法の両方の選択肢が同時に適用されていなくてもよい。通常の作業運転で最大異常が検出されたときには、すなわち最大閾値が超過されたときに異常として認識される異常が検出されたときには、当然ながら、最大閾値だけが決定されればよい。同様のことは、最小異常だけが検出されるべきケースについても当てはまる。
【0101】
十分な数のランダムサンプル要素(少なくとも1つの特性ないし組み合わされた特性についての最大ないし最小の値)が決定されていれば、その次のステップで、統計的な見積方法を利用したうえで、最大値リストないし最小値リストについてそれぞれ設定される確率密度関数をパラメータ化することができる。このことは、該当するランダムサンプルの経験的な頻度分布に合わせた確率密度関数のフィッティングに相当する。
【0102】
そのためにランダムサンプルをビン分割することができ、すなわち、ランダムサンプル要素が、対応する値範囲のそれぞれ等しい幅の隣接する区間に割り当てられる。そしてこの経験的な(相対的な)頻度分布に合わせて、たとえば最小二乗法を利用することで、該当する設定された確率密度関数をフィッティングすることができる。しかしながら通常は、そのためにいっそう好ましい統計的な見積関数、たとえば最尤法やモーメント法を利用することができる。
【0103】
本方法の実施のために設定されなければならない確率密度関数として、実行されるパラメータ化の際にランダムサンプルを良好に表現することができると想定されるタイプが選択されるとよい。本例のケースでは、該当する特性についての極値が選択されてそれぞれのランダムサンプルを形成するので、ガンベル分布、ワイブル分布、およびフレシェ分布をまとめた、一般化された極値分布のタイプまたは一般化された極値分布(その3つのパラメータを含む)がしばしば選択される。しばしば利用されるガンベル分布は次の形を有する。
【数1】
【0104】
ここでfは、ランダム量xの関数としての確率密度の値を表す。それぞれのランダム量の値xは、本例のケースでは、該当する特性の値または組み合わされた値を表す。パラメータμおよびβは、選択された統計的方法によって決定される。
【0105】
図2は、最大のピクセル値の相対的な経験的な頻度分布に合わせた確率密度関数f(x)のフィッティングを模式的に表すグラフを示しており、xによってピクセル値が表されている。横軸にピクセル値、縦軸に確率密度の値ないし相対的な頻度がプロットされている。
【0106】
こうしてパラメータ化された確率密度関数により、(検査されるべき画像で誤って最大異常が検出される率についての、ないしは検査されるべき画像で正しく最大異常が認識されない率についての)所望の閾値を別のステップで決定することができる。そのために閾値は、閾値の上方でのパラメータ化された確率密度関数の下側の面積が、検査されるべき画像で誤って最大異常が検出される設定された率に等しくなるように規定され、ないしは、閾値の下方でのパラメータ化された確率密度関数の面積が、検査されるべき画像で正しく最大異常が認識されない設定された率に等しくなるように規定される。というのもこの面積は、閾値よりも大きい、またはこれに等しい、該当する特性の最大値がデジタル画像で発生する確率に相当するからである。閾値は、逆関数について閉じた解が存在するケースでは、パラメータ化されるべき確率密度関数に属する分布関数の逆関数から式を変換することで行うことができる。それ以外の場合、閾値の計算は周知の適当な数値法によって行うことができる。
【0107】
図2には、1.0%、0.6%、および0.1%の誤廃棄率(偽陽性率)に相当するXso,1,Xso,2およびXso,3が図示されており、すなわち、これらの閾値の右側での確率密度関数の下側の面積は0.01、0.006、および0.001の閾値をもたらす。
【0108】
所望の偽陽性率に代えて真陰性率が設定されるときは、上側の閾値Xsoの下方での確率密度関数の下側の面積が、同様の方式で最大閾値の計算のために利用されなければならない。
【0109】
図3には、図2に類似するグラフが示されているが、すでにフィッティングされた確率密度関数の推移だけが示されている。この例では、最大閾値Xsoと最小閾値Xsuがいずれもパラメータ化された確率密度関数を参照して決定される。このとき両方のケースで、すなわち最大閾値の決定についても最小閾値の決定についても、同一の偽陽性率Rfpが設定され、最小閾値Xsuの決定については偽陽性率Rfpは、最小閾値Xsuより下方での確率密度関数の下側の面積に等しい。それに応じて真陰性率Rrnは、最小閾値Xsuより上方での確率密度関数の下側の面積に等しい。というのも最小異常が検出されるのは、該当する特性の値ないし複数の特性について組み合わされた値が、基準となる最小閾値Xsuよりも小さい場合だからである。
【0110】
図3に示すパラメータ化された確率密度関数のケースでは、デジタル画像が異常を含んでいるとして検出されるのは、少なくとも1つの区域について、最小閾値と最大閾値の間の合格領域の範囲外にある、着目される特性の値が、または該当する特性についての組み合わされた値が、生じた場合ということになる(または換言すると、該当する値が最小閾値Xsuよりも小さいか、もしくはこれに等しい場合、または最大閾値Xsoよりも大きいか、もしくはこれに等しい場合)。
【0111】
さらに図3には、最大閾値Xsoについての信頼区間が図示されており、ここでは簡略化のために、限界Xso-ΔXsoおよびXso+ΔXsoを有する対称の信頼区間が想定されている。誤廃棄率をいっそう高い確実性をもって所望の設定された値まで低減するために、異常が検出されたとき、判定された閾値XsoよりΔXsoの分だけ大きい二次的な最大閾値を利用することができる。同様の方式で、判定された閾値Xsuより、下側の閾値Xsuについての信頼区間の幅ΔXsuの分だけ小さい二次的な最小閾値を利用することができる。換言すると、二次的な最大閾値は最大閾値についての信頼区間の上側の限界に相当し、二次的な最小閾値は最小閾値についての信頼区間の下側の限界に相当する。
【0112】
上で説明したとおり、1つまたは閾値(最大閾値または最小閾値)の決定のためのデジタル画像の数は、固定的に設定されていてよい。ただしこの数は、十分に信頼できる閾値が判定される多さに選択されなければならないことになる。
【0113】
本方法は、任意の方式で生成することができる、製品の任意の特性を表す製品の画像で、異常を検出するために適している。特に本方法は、X線放射またはテラヘルツ放射を用いて作成され、そのようにして製品内部に関する情報を生成することができる、検査装置によって得られた画像を分析するために適している。本方法は、特にソフトウェアを通じて検査装置にインプリメントすることができる。検出方法の結果は、たとえば仕分け装置などの他の装置を制御するために利用することができる。
【0114】
所望の最大閾値または最小閾値が上述した方式で決定されてから、別個の検査プロセスで実行される、以下に説明する別の方法が後続して行われる。この検査プロセスは、特に、X線検査装置100(ないし任意に構成される検査装置)を有する設備の製造運転の開始前に実行することができる。
【0115】
再度明文をもって指摘しておくと、上で説明した方式による1つまたは複数の所望の閾値の決定は、以下に説明する検査プロセスの実施のために必須の前提条件なわけではない。むしろ、たとえば操作者によって、または製品型式に割り当てられた所望の最大閾値および/または最小閾値が保存された記憶装置から閾値が取り出されることによって、所望の閾値を直接的に設定することもできる。
【0116】
この検査プロセスは次の各ステップを含む。
【0117】
まず、それぞれ少なくとも1つの既知の異常を有する複数のデジタル不合格画像が生成される。このときデジタル不合格画像の生成は、それぞれ1つまたは複数の既知の夾雑物を含む1つまたは複数の物理的な不合格製品を利用したうえで行うことができ、このような不合格製品は、該当する不合格製品のデジタル画像(不合格画像)で相応の既知の異常を生成する、1つまたは複数の既知の夾雑物をそれぞれ含む。このような種類の不合格製品は合格製品から作成され、その中にそれぞれ1つまたは複数の既知の夾雑物が、好ましくは合格製品の特定の位置で、挿入される。それにより、こうして作成された不合格製品により生成される不合格画像で、該当する既知の異常によって生起される、以下に説明する方法を利用したうえで検出率を決定するための最大ランダムサンプル値ないし最小ランダムサンプル値として利用される最大極値ないし最小極値を、既知の異常を含んでいる、ないしは該当する夾雑物が位置している、適当な方式で規定されるデジタル画像の領域でのみ探すことが可能である(夾雑物がデジタル不合格画像で検出可能な異常を生成しているか否かを問わない)。
【0118】
デジタル画像の考慮されるべき領域の規定は、多様な方式で行うことができる。たとえば、領域の幾何学形状(正方形、円形など)を規定し、次いで、夾雑物ないしこれにより引き起こされる異常が完全に領域の内部にくるように、広さを選択することができる。
【0119】
別の態様ではベース閾値を利用することができ、(すでに上で説明した方式で)、最大異常を決定するためのピクセル値が該当するベース閾値よりも大きい(または大きいか等しい)、ないしは、最小異常を決定するためのピクセル値がこれよりも小さい(またはこれより小さいか等しい)、不合格画像のすべての区域が判定される。そしてこれらの区域のうち、夾雑物ないしこれにより引き起こされる異常を含んでいる区域を利用することができる。このとき不合格製品の内部での、ないしは該当する不合格画像の内部での、位置に関する情報を利用したうえで、および、該当する夾雑物のジオメトリーに関する情報を利用したうえで、夾雑物ないし既知の異常が十分な部分をもって、こうして決定された区域により包含されるか否かを追加的に検査することができる。この要件の順守を肯定することができるのは、不合格画像の夾雑物の幾何学的な面積が、ないしはそれにより引き起こされる既知の異常の各面が、たとえば50%を超える、または80%を超える、オーバーラップ度をもって十分にオーバーラップしている場合であるここでオーバーラップ度として、デジタル不合格画像において夾雑物またはこれにより引き起こされる既知の異常の面積と、事前に決定された該当する区域の面積との比率を利用することができる。
【0120】
しかしながら不合格画像の生成は、事前に生成される少なくとも1つの合格画像を利用したうえで行うこともでき、すなわち、好ましくはそれぞれの検査装置100の生産領域で検査されるべき製品と同一の型式である合格製品の少なくとも1つのデジタル画像を利用したうえで行うこともできる。実作業では、合格画像の特性の統計的な分布に関する情報を考慮するために、単一の合格画像に代えて複数の合格画像が利用されるのが好ましい。このような合格画像は、上で説明した(誤廃棄率の設定のもとで閾値が決定される)学習プロセス中にすでに生成しておき、「人工的な」不合格画像の作成のために利用することができる。そのために、当然ながら1つまたは複数の合格画像を記憶装置に保存しておくことができる。
【0121】
このような「人工的な」不合格画像を生成するために、まず、仮想的な夾雑物を定義することができ、仮想的な夾雑物の事前決定された材料とジオメトリーが規定される。ジオメトリーとして、特に、たとえば球、立方体、直方体の形状など、単純な形状を利用することができる。夾雑物の材料は、特に該当する製品の透過照射が行われる検査方法の場合、材料の固有減衰が考慮されることによって、考慮に入れることができる。X線検査については、多数の材料の固有減衰が含まれているデータバンクないし表をそのために利用することができる。ここで固有減衰とは、該当する放射が材料に透過照射されたときに、長さ単位(透過照射方向で見て)あたりで受ける減衰であると理解される。このようにして、「人工的な」不合格画像の作成に利用される合格画像の既存の画像データへ、このような追加減衰を該当する位置で簡易な方式により算入することができる。合格画像の画像データが対数目盛に存在していると、同じく対数目盛に存在する追加減衰の算入を加算によって行うことができる。
【0122】
物理的または仮想的ないずれの夾雑物がデジタル不合格画像の生成のために利用されるかに関わりなく、球形のケースを例外として、検査されるべき製品の透過照射の方向に対して相対的に(または一般には製品の観察方向に対して相対的に)夾雑物がどの位置にあるかも規定されなければならない。それぞれの夾雑物により生成される追加減衰の算入のために、夾雑物(厳密には透過照射方向に対して垂直の平面におけるその投影)が、ピクセルに分割される(このときピクセル分割は、合格画像の既存のピクセル分割に相当するのが好ましい)。このようにして、それぞれ個々のピクセルについて(すなわちピクセルごとに)、追加減衰の算入を行うことができる。そして、こうして生成された「人工的な」不合格画像を、物理的な夾雑物によって生成された不合格画像と同様の方式で処理することができる。
【0123】
すでに上で示唆したとおり、こうして生成される十分な数の不合格画像について、不合格画像に含まれる各々の設定された異常について相応の最大ランダムサンプル値ないし最小ランダムサンプル値が、(それが最大異常であるか最小異常であるかに依存して)決定される。このことは、最大閾値ないし最小閾値の決定にあたって上で説明したのと同様の方式で行うことができる。
【0124】
そして、こうして生成された最大値ランダムサンプルないし最小値ランダムサンプルから、検出率を決定することができる。そのために第1の態様では、設定されていない少なくとも1つの未決のパラメータを有する確率密度関数を設定することができる。そしてこのパラメータを適当な方式で、特に統計的な見積方法を利用したうえで、パラメータ化された確率密度関数がそれぞれのランダムサンプルを最善に記述するように決定することができる。このパラメータ化は、最大閾値ないし最小閾値の決定との関連で上に説明したのと同様の方式で行うことができる。
【0125】
図4は、一般化された極値関数を利用したうえで上に説明したようにパラメータ化された確率密度関数を表す、2つの曲線を含むグラフを示している。曲線(a)は、上に説明した方式で合格製品(ないし合格プロセス製品)を利用したうえで最大閾値を決定するために選択されてパラメータ化された確率密度関数を示している。この曲線から、誤廃棄率ないし偽陽性率Rfpの値の設定のもとで、相応の閾値Xsoが決定される。
【0126】
そして、こうして決定された閾値Xsoを利用して、検査装置100が生産時に稼働したとき同種類の製品の検査のもとで生じることになる検出率の見積値を、第2の曲線(b)から判定することができる。すでに上で述べたとおりこの見積値は、実作業で出現する夾雑物が、該当する最大値ランダムサンプルないし最小値ランダムサンプルの決定のために利用された既知の夾雑物と良く一致しているほど、いっそう妥当性が高くなる。
【0127】
図4の曲線(b)は、既知の異常についての最大値ランダムサンプルについて上で説明した方式で選択されてパラメータ化された確率密度関数を示している。それに応じてこの確率密度関数から、同一の型式の製品の検査時に出現することになる、該当する既知の異常についての検出率を判定することができる。そのためには確率密度関数を、事前に決定された最大閾値Xsoから無限まで(または非常に大きい値まで、たとえば放射検出器から供給される最大限可能なピクセル値まで)積分するだけでよい。この積分値は、該当する既知の異常の検出についての真陽性率すなわち検出率に相当する。
【0128】
こうして既知となった検出率を、特に夾雑物が非検出となった場合に生じる帰結を考慮したうえで、該当する値が実作業で容認できるか否かに関して操作者により、または自動式に、評価することができる。たとえばヨーグルト、チーズ、チョコレート、クッキーなどの食料品が検査され、検出されない金属片や骨片がその中にあった場合、このことは、そのような不純物のある食品を消費した末端消費者に、生命の危険のある怪我が生じる可能性がある。そのようなケースでは、検出率は相応に厳しい設定を満たさなくてはならず、たとえば99%よりも高くなくてはならない。非検出がそれほど重大な帰結につながらない別のケースでは、検出率を明らかに低い80%または90%の値に合わせて調整することができる。
【0129】
検出率と、誤廃棄率ないし設定された最大閾値ないし最小閾値とは互いに依存し合うので、多くのケースでは、所望の低い誤廃棄率と、同じく所望の高い検出率とを同時に実現することは可能ではない。そのようなケースが図4に示されている。このグラフから明らかになるとおり、高い最大閾値Xsoないし低い誤廃棄率Rfpは必然的に、劇的に低下した検出率Rrpにつながる。
【0130】
それに対して図5は、既知の最大異常が不合格画像で明らかに良好に顕在化する別のケースを示している。ここでは曲線(b)は図4の曲線(b)と比べて明らかに右方へ、すなわちピクセル値が大きくなる方向へ、変位している。それに応じて、図4と同一の最大閾値Xsoないし同一の誤廃棄率Rfpは、図5に示すケースではきわめて高い検出率Rrpにつながる。
【0131】
図4および5に示す両方のケースは、たとえば同一のサイズではあるが異なる材料からなる夾雑物によって引き起こされる、既知の異常について生じることがあり得る。それと同様にこれらのケースは、夾雑物が同一の材料からなるが、図4のケースの夾雑物が図5のケースの夾雑物よりも明らかに小さい場合に生じることがあり得る。
【0132】
検出率を決定するための最大値ランダムサンプルないし最小値ランダムサンプルを記述するための確率密度関数の利用に代えて、それぞれのランダムサンプル値そのものを利用することもできる。このケースでは検出率は、事前に決定された閾値よりも大きい、またはこれに等しい、ランダムサンプル値の数が決定されることによって、決定することができる。そして検出率は、こうして決定されたランダムサンプル値の数を、ランダムサンプル値の総数で除算することによって得られる。
【0133】
このようなケースでも、事前に設定された誤廃棄率から該当する閾値を決定する必要はない。むしろ、閾値を直接的に設定することが同じく可能である。
【0134】
図6には、上で説明したように実行された検査プロセスの結果を示す、X線検査装置100の表示ユニット124の表示が示されている。
【0135】
この図面から明らかなように、それぞれ異なる3つの材料について、すなわちアルミニウム、セラミック、およびガラスについて、それぞれ異なる直径を有する、すなわち0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、および3.0mmを有する、球形の夾雑物についての検出率が決定されている。検出率の数値が、それぞれの夾雑物の対応する模式的な表示に割り当てられて表示されている。このような表示が、夾雑物のさまざまな材料とサイズについての検出率に関する推定を操作者に直接的に与える。図6から明らかなように、たとえば0.5mmの直径を有するアルミニウムからなる球形の夾雑物は、まだ13%の検出率で認識されるのに対して、セラミックやガラスからなる相応のサイズの夾雑物はもはや認識されない。2.5ないし3.0mmの直径を有するアルミニウムまたはセラミックからなる夾雑物はまだ100%で認識されるのに対して、ガラスからなる相応の夾雑物は76%ないし93%の検出率でしか検出できない。
【0136】
図7は、図6の図面とほぼ一致する表示の別の態様を示している。ただし、ここでは検出率の数値に代えて分類子が利用され、80%よりも低い検出率は不十分、80%から90%の間の検出率(境界値を含む)はまだ容認可能、>90%の検出率は良好として分類される。3つの異なる分類子の値がスマイリーによって表される。同様にして、たとえば「良好」について緑色、「容認可能」について黄色、「不十分」について赤色の色コードを利用することもできる。このような分類子は、検査プロセスの表示ないし結果のいっそう迅速な解釈を操作者に可能にする。
【0137】
図8は、表示ユニット124のさらに別の態様を示しており、ここでは異なる材料からなる球形の夾雑物のサイズが表示され、これらについて、良好に分類された検出率がさらに明らかとなる。図示したケースでは、アルミニウムからなる球形の夾雑物についてまだ良好な検出可能性がもたらされるのは球直径が2.5mmよりも大きい、またはこれに等しいときであり、セラミックについては2.0mmよりも大きい、またはこれに等しいときであり、ガラスについては3.0mmよりも大きい、またはこれに等しいときであり、ここでも同じく検査プロセスの実行時に同一の材料からなる夾雑物のサイズについて、0.5mmのステップでの段階づけが想定されている。
【0138】
図9は、図6に示す表示にほぼ相当する、表示ユニット124の表示のさらに別の態様を示している。ここでは追加的に、閾値Xsoについての調整手段が意図される。この調整手段は、図示した実施例ではスライダ124aとして構成されており、これは表示ユニット124のためのタッチディスプレイを利用したうえで、簡易な方式で具体化することができる。
【0139】
初期状態では、スライダ124aのスライド部材124bは初期位置にあり、そこでは初期閾値Xso,0がプリセットされている。この初期状態で、夾雑物の各々のサイズと各々の材料について検出率を判定し、表示することができる。特定のサイズおよび/または特定の材料について検出率が低すぎると操作者が判断したとき、操作者は、閾値の大きい値の方向へスライダをスライドさせることができる。このときスライド部材124bの位置の変更直後に、新たな検出率を計算して表示することができる。このようにして操作者は、検出率がその都度のケースについて最適となるように、閾値を簡易かつ迅速に変更することができる。
【0140】
当然ながら、閾値に代えて誤廃棄率を調整手段によって調整ないし変更することもできる。このケースでは操作者は、誤廃棄率と検出率の間で場合により存在する強い依存性に関する情報を直接的に得て、たとえば(まだ)満足のいく検出率が生じるように、誤廃棄率を調整することができる。
【符号の説明】
【0141】
100 X線検査装置
102 異常を検出する装置
104 製品
106 搬送デバイス
108 コンベヤベルト
110 コンベヤベルト
112 コンベヤベルト
114 コンベヤベルト
116 遮蔽ハウジング
118 X線放射源
120 X線放射検出器
121 X線ビーム
122 画像処理ユニット
124 表示ユニット
124a スライダ
124b スライド部材
F 搬送方向
su 下側の閾値(合格製品ないし合格プロセス製品を用いての閾値の決定)
su 下側の閾値(不合格製品ないし不合格プロセス製品を用いての閾値の決定)
so 上側の閾値(合格製品ないし合格プロセス製品を用いての閾値の決定)
so 上側の閾値(不合格製品ないし不合格プロセス製品を用いての閾値の決定)
ΔXso 最大閾値についての信頼区間の幅
ΔXsu 最小閾値についての信頼区間の幅
fp 偽陽性率
rn 真陰性率
rp 真陽性率
fn 偽陰性率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】