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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160954
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】沈降シリカをベースとする艶消し剤
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/193 20060101AFI20241108BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241108BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241108BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20241108BHJP
【FI】
C01B33/193
C09D7/61
C09D201/00
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068903
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】23171810.7
(32)【優先日】2023-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クロツバッハ
(72)【発明者】
【氏名】サシャ ヘルウェルス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フェラー
(72)【発明者】
【氏名】シエグフリード ヘッグ
(72)【発明者】
【氏名】ウーウェ シュメイエル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヘンドリック ヘインジンガー
(72)【発明者】
【氏名】ドリス ミベリッヒ
【テーマコード(参考)】
4G072
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072DD04
4G072GG01
4G072GG02
4G072HH21
4G072JJ15
4G072JJ47
4G072KK01
4G072KK17
4G072LL06
4G072MM26
4G072MM28
4G072QQ09
4G072RR12
4G072SS01
4G072SS10
4G072TT01
4G072TT02
4G072TT06
4G072TT08
4G072TT09
4G072TT30
4G072UU07
4G072UU30
4J038EA011
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA01
4J039BA21
4J039BE01
4J039EA46
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透明度、分散性、および/または触覚特性に悪影響を与えることなく、光沢レベルを一定に保ちながら、その使用量を削減できる艶消し剤を提供する。
【解決手段】下記の物理化学的パラメータを特徴とする沈降シリカを艶消し剤のベースとする。ISO9277に従って測定されたBETが150m/g~400m/g、好ましくは200m/g~300m/gであり、ISO19246に従って測定されたDOAが220mL/100g~400mL/100g、好ましくは250mL/100g~350mL/100gであり、CoulterLSによるレーザー回折法でISO13320に従って測定されたd50が3.0μm~5.0μmであり、粒径比d:d50:d95が>0.3:1:<2であり、粒度分布:

が1.3~1.7である、沈降シリカ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO 9277に従って測定されたBETが150m/g~400m/g、好ましくは200m/g~300m/gであり、
ISO 19246に従って測定されたDOAが220mL/100g~400mL/100g、好ましくは250mL/100g~350mL/100 gであり、
Coulter LSによるレーザー回折法でISO 13320に従って測定されたd50が3.0μm~5.0μmであり、
粒径比d:d50:d95が>0.3:1:<2であり、
粒度分布:
【数1】
が1.3~1.7である、沈降シリカ。
【請求項2】
Autopore IV 9520を用いて、ISO 15901-1に従って、接触角140°かつ圧力範囲0.003~420MPaの機器設定で測定され、細孔径範囲3.5nm~500μmで計算された平均細孔径が7.0μm未満、好ましくは5.0μm未満、より好ましくは3.0μm未満である、請求項1記載の沈降シリカ。
【請求項3】
Hgポロシメータで測定された細孔容積が2.40mL/g(d=0.1μm~d=4.0μm)~3.10mL/g(d=0.1μm~d=4.0μm)より大きい、請求項1または請求項2記載の沈降シリカ。
【請求項4】
Hgポロシメータで測定された細孔容積が2.50mL/g(d=0.1μm~d=5.0μm)~3.30mL/g(d=0.1μm~d=5.0μm)より大きい、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の沈降シリカ。
【請求項5】
50が3.5~4.5μmである、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の沈降シリカ。
【請求項6】
分散液、ミルベース、塗料、コーティングもしくは印刷インク、インクジェットインク、グラインド樹脂、顔料濃縮物、着色剤、顔料調合剤、充填剤調合剤、またはコーティング組成物を製造するための艶消し剤としての、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の沈降シリカの使用。
【請求項7】
ISO 9277 に従って測定されたBETが150m/g~400m/g、好ましくは200m/g~300m/gであり、
ISO 19246に従って測定されたDOAが220mL/100g~400mL/100g、好ましくは250mL/100g~350mL/100 gであり、
レーザー回折法(Coulter LS)でISO 13320に従って測定されたd50が3.0μm~5.0μmであり、
粒径比d:d50:d95が>0.3:1:<2であり、
粒度分布:
【数2】
が1.3~1.7であり、
LECOでISO 3262-19に従って測定された炭素含有量が1.0~6.0重量%、好ましくは2.4~3.8重量%である、ワックスコーティングされた沈降シリカ。
【請求項8】
分散液、ミルベース、塗料、コーティングもしくは印刷インク、インクジェットインク、グラインド樹脂、顔料濃縮物、着色剤、顔料調合剤、充填剤調合剤、またはコーティング組成物を製造するための艶消し剤としての、請求項7記載の沈降シリカの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈降シリカをベースとする艶消し剤と、その製造方法と、塗料およびコーティングにおけるその使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングは、装飾目的、機能目的または保護目的で、表面または基材に適用される。それらは、木材、金属またはプラスチックなどの材料を装飾し、保護し、保存する。コーティングは、非常に光沢のある場合もあれば、無光沢の場合もある。
【0003】
かつて、塗料および印刷インクなどのコーティングは、その後、マイクロスケールの範囲で表面を制御的に粗くすることで、無光沢化されていたのは事実であった。その結果、粗面上に入射する光は、一方向に反射されず、拡散して散乱する。光が拡散して散乱するほど、人間の目には、表面がより無光沢に見える。
【0004】
今日では、艶消し剤が使用され、塗料系に組み込まれている。艶消し剤は、通常、沈降シリカもしくはヒュームドシリカ、シリカゲル、ポリメチル尿素、またはワックスから構成されている。艶消し剤には、多くの要求がある。したがって、艶消し剤には、良好な艶消し効果が求められる一方、塗料フィルム表面の触覚特性および/または透明度に悪影響を及ぼしてはならない。加えて、塗料製造における分散性が良好でなければならない。
【0005】
塗料フィルム表面に、ざらざらした感じを出さずに、さまざまなレベルの艶消し加工で、絹のような艶消しからくすんだ艶消しの外観を与えることができるはずである。したがって、艶消し加工面の粗さも、艶消し剤の粒径と形状によって決まる。粗い艶消し剤の場合、塗料フィルム表面は、無光沢だが粗く見える。
【0006】
艶消し剤は、乾燥すると微細構造を形成する、表面から突き出たシリカ粒子の効果に基づいている。光線は、結果として生じる山と谷で、あらゆる方向に散乱する。無光沢/光沢の度合いを定量化するために確立された方法は、60°の角度で反射光成分を測定する方法である。
【0007】
粗い粒子は基本的に、細かく分割された粒子よりも分散しやすい。細かい粒子の場合、はるかに大きな表面積を濡らす必要があるためである。さらに、微粒子は、表面エネルギーが高いため、再凝集する傾向が非常に強くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この傾向を回避または低減することは、塗料製造において特に重要であるため、透明度、分散性、および/または触覚特性に悪影響を与えることなく、光沢レベルを一定に保ちながら、その使用量を削減できる艶消し剤を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、下記の物理化学的パラメータを特徴とする沈降シリカを提供するものである。
‐ISO 9277に従って測定されたBETが150m/g~400m/g、好ましくは200m/g~300m/gである。
‐ISO 19246に従って測定されたDOAが220mL/100g~400mL/100g、好ましくは250mL/100g~350mL/100 gである。
‐Coulter LSによるレーザー回折法でISO 13320に従って測定されたd50が3.0μm~5.0μmである。
‐粒径比d:d50:d95が>0.3:1:<2である。
‐粒度分布:
【0010】
【数1】
【0011】
が1.3~1.7である。
【0012】
本発明による沈降シリカの平均粒径は、レーザー回折粒径分析によってISO 13320:2009に従って測定できる。測定された粒度分布は、平均粒径として、全粒子の50%が超えていない粒径を示す中央値d50を定義するために使用される。
【0013】
比表面積(単にBET表面積とも呼ばれる)は、ブルナウアー・エメット・テラー法による窒素吸着により、DIN 9277:2014に従って測定される。
【0014】
DOA吸収値は、トルク測定および処理系を備えたアブソープトメーターによって測定される。これは、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、およびアルミノケイ酸ナトリウムの吸液能力を評価するために使用され得る。1日の吸収値は、充填剤のキャリア容量の指標となる。
【0015】
経験から、同じ光沢レベルを達成するには、粒径がより大きな沈降シリカの場合よりも、粒径がより小さな沈降シリカの方が大量に必要となることが分かっている。
【0016】
予想外にも、市販の微細艶消し剤と比較して、本発明による沈降シリカの使用量を削減できることがわかった。例えば、60°の角度で測定した場合、広範囲の光沢レベルにわたって、種々の塗料系における使用量を減らすことができた。実施例を参照してほしい。
【0017】
本発明による沈降シリカの使用量削減は、効率(経済的実行可能性)に関する重要な製品特性も形成する。シリカの効率が高いほど、規定の光沢レベルを達成するために対応する塗料系において使用する量が少なくて済む。
【0018】
さらに、クリアコートの透明度を高められることがわかった。無光沢クリアコートの濃度Dy(透明度)を、DIN 55988に従って、X-Rite社製のeXact濃度計で測定した。さまざまな塗料系の無光沢クリアコートを、黒のPMMAシートに適用し、60°で測定される特定の場合に考慮される光沢レベルと同じ光沢レベルに調整して、さまざまな艶消し剤を比較した。次いで、数計算により、45°の角度での拡散反射によって透明度を確認した。測定用パラメータを以下のように設定した。
【0019】
【表1】
【0020】
無光沢クリアコート系の透明度は、光沢レベルが同じ場合にのみ、互いに比較できる点に注意すべきである。シリカの投与量が等しい場合の比較は、認められていない。測定した透明度値Dyは、対数値である。したがって、Dy値が高いほど、無光沢クリアコートの透明度が高くなる。
【0021】
本発明による沈降シリカの平均細孔径は、好ましくは7.0μm未満、好ましくは5.0μm未満、さらに好ましくは3.0μm未満である。これは、ISO 15901-1に従ってAutopore IV 9520で測定され、接触角140°、圧力範囲0.003~420MPaの機器設定が使用され、シリカの粉砕後に3.5nm~500μmの細孔径範囲で測定された。
【0022】
本発明によるシリカは、独特の形態を有することが好ましい。特に、水銀ポロシメータにより測定される、その多孔性である。
【0023】
本発明による沈降シリカは、好ましくは、Hgポロシメータによって測定される細孔容積が2.40mL/g Hg(d=0.1μm~d=3.0μm)~2.90mL/g Hg(d=0.1μm~d=3.0μm)である。
【0024】
本発明による沈降シリカは、好ましくは、Hgポロシメータによって測定される細孔容積が2.40mL/g Hg(d=0.1μm~d=4.0μm)~3.10mL/g Hg(d=0.1μm~d=4.0μm)である。
【0025】
本発明による沈降シリカは、好ましくは、Hgポロシメータによって測定される細孔容積が2.50mL/g Hg(d=0.1μm~d=5.0μm)~3.30mL/g Hg(d=0.1μm~d=5.0μm)である。
【0026】
Hg細孔径(d<4μmまたはd<5μm)の測定は、DIN 66133に従った水銀圧入に基づいており、Micromeritics社製のAutoPore V 9600機器を使用する。方法原理は、適用した圧力の関数として、多孔質固体に注入した水銀の体積を測定することに基づいている。
【0027】
図4は、Hgポロシメータによる細孔容積の測定のグラフを示す。これは、例えば、本発明のシリカK2の独特な形態を示している。d=0.1μmおよびd=4.0μmの垂直線は、本発明に指定された領域を表している。累積細孔容積(mL/g)の差は、この領域の細孔容積を表している(表Cを参照)。計算のために、各垂直線とグラフの交点を読み取り、計算する。
【0028】
さらに、グラフから、細孔径d<1μmまでの領域では、累積細孔容積は4.9mL/gであることが推測できる。この目的のために、d=1μmに垂直の点線をセットする。グラフとの交点の値を読み取ることができる。細孔容積が 4.9mL/g未満の場合、グラフはより平坦な推移を示し、その結果、シリカ粒子の細孔容積は小さくなる。
【0029】
本発明によるシリカは、艶消し剤として使用される同等の市販のシリカよりも、平均細孔径が非常に小さくなっている。それらは、細孔径が非常に小さいにもかかわらず、より多くの水銀を吸収できることがわかっている。平均してより小さな細孔の数が多いと、透明度の点で重要な利点があり、特に水性塗料系の場合に重要である。
【0030】
図1は、シリカ粒子を配合したクリアコートコーティングの断面のSEM画像を示す。シリカの形態または多孔性により、シリカは、スポンジのように機能し、透明な結合剤が全体に充填されている。結合剤とシリカの屈折率は類似しているため、無光沢クリアコートは、乾燥後もほぼ透明のままである。
【0031】
水性結合剤は、水相中のポリマー粒子の分散液である。球状ポリマー粒子の直径は、数十ナノメートルから数マイクロメートルの範囲である。塗料フィルムが乾燥すると、水とすべての共溶媒が蒸発して体積が減少し、分散液が凝固し始める。分散液粒子は、互いにますます接近し、最終的には融合し始める。これを合体と呼ぶ。合体の最後には、結合剤の粒子境界が消失した均質な結合剤フィルムが形成される。結合剤粒子は、多数の細孔に効率的に浸透し、細孔内にフィルムを形成できる。細孔の数が多いほど、シリカと結合剤との間の屈折率の差がぼやけ、透明度が向上する。これは、対応する結合剤系における本発明によるシリカの場合に確認されている。
【0032】
本発明による沈降シリカの、さまざまな塗料系における分散性も驚くほど改善されている。グラインドメーターを使用して、分散性を間接的に測定することができる。グラインドメーターによる測定は、DIN EN ISO 1524に従って行われる。グラインドメーターを使用して、望ましくない斑点や大きすぎる斑点を認識することができるように、これは、乾燥塗料フィルムにおける斑点形成と相関関係がある。さらに、この方法により、沈降シリカの再凝集傾向を認識することも可能であり、この傾向は、粒度分布が減少するにつれて増加することが多い。図2および3を参照。
【0033】
d50値が5μm未満の多くの沈降シリカの場合、シリカ粒子は、保管中に再凝集する傾向があり、グラインドメーター画像の斑点の数が時間の経過とともに増加することで認識できる。通常、未処理シリカの再凝集傾向は、表面が有機物で覆われている場合よりも高い。再凝集傾向の高いシリカの場合、数日後にはすでにそうなっている場合があるが、安定性が高い場合は、数週間または数ヶ月後でないとそうならない場合がある。対照的に、本発明によるシリカの場合、これは観察されず、したがって斑点形成傾向が非常に低いことが確認される。いかなる理論にも縛られることなく、本発明によるシリカの特定の形態および細孔分布は、分散性に有利な効果をもたらすだけでなく、再凝集に対する高い安定性ももたらすと推測される。
【0034】
さまざまな粉末状または粗粒の粒状材料のタップ密度は、DIN ISO 787-11:1995「顔料および増量剤の一般的試験方法-第11部:タンピング後のタップ体積および見かけ密度の測定」に従って測定することができる。これには、撹拌およびタンピング後のバルク材料のかさ密度の測定が含まれる。
【0035】
均一な艶消し作用のために、目標は、非常に狭い粒度分布である。粒度分布は、例えば、d5、d50およびd95の値を測定することにより、簡単な方法で測定できる。したがって、本発明による未処理のまたはワックスコーティングされた沈降シリカは、商(d95-d5):d50によって定義される粒度分布(スパン)が1.3~1.7である。
【0036】
さらなる特性はまた、粒径比d:d50:d95である。
【0037】
本発明による沈降シリカは、d50が3.5~4.5μmであることが好ましい。
【0038】
未処理の親水性シリカだけでなく、ワックスコーティングされたシリカを艶消し剤として使用することも知られている。このようなワックス処理は、沈降シリカの沈降特性を明らかに改善する。
【0039】
したがって、本発明はさらに、
ISO 9277 に従って測定されたBETが150m/g~400m/g、好ましくは200m/g~300m/gであり、
ISO 19246に従って測定されたDOAが220mL/100g~400mL/100g、好ましくは250mL/100g~350mL/100 gであり、
レーザー回折法(Coulter LS)でISO 13320に従って測定されたd50が3.0μm~5.0μmであり、
粒径比d:d50:d95が>0.3:1:<2であり、
粒度分布:
【0040】
【数2】
【0041】
が1.3~1.7であり、
LECOでISO 3262-19に従って測定された炭素含有量が1.0~6.0重量%、好ましくは2.4~3.8重量%である、
ワックスコーティングされた沈降シリカを提供する。
【0042】
本発明による沈降シリカの製造手順は、例えば、以下の通りである。
【0043】
沈殿漕に、最初に、50℃の温度で13.5mの水を連続的に撹拌しながら投入し、これに、市販の水ガラスを14.85m/時間の速度で加え、10~15分後に添加を終了した。その後、その混合物を、70℃の温度まで加熱する。次に、96%の硫酸を、0.27m/時間で25~35分以内に添加し、閉ループ制御によって温度を85℃に維持しながら、連続的にせん断および撹拌する。1.5時間~3.5時間後、その懸濁液を、50~80分以内に、pHが3.5~3.9の範囲になるまで硫酸で酸性化する。
【0044】
固体は、既知の濾過操作、例えばフィルタープレス(膜フィルタープレス)によって懸濁液から分離することができる。脱塩水で洗浄されたフィルターケーキは、その後乾燥される。この目的のために、当業者には多くの種類の乾燥方法が知られている(ウルマン工業化学百科事典、1992年、第5版、第B1巻、第7~25頁)。有利な乾燥操作は、フロードライヤー、スプレードライヤー、段階式ドライヤー、ベルトドライヤー、回転チューブドライヤー、スピンフラッシュドライヤー、またはノズルタワーによる乾燥操作であることがわかっている。乾燥は、スプレードライヤーまたは段階式ドライヤーによって行われることがより好ましい。
【0045】
スプレードライヤーによる乾燥では、フィルターケーキは、せん断力の作用下で水で液化され、固形分含有量が15%未満、好ましくは7.0~14.0%、より好ましくは9~12%に調整される。
【0046】
乾燥後に得られる沈降シリカは、直接分級粉砕にかけられるか、または分級粉砕中に同時に本発明のシリカをワックスでコーティングすることも可能であり、その場合、2~15重量%、好ましくは5~10重量%、より好ましくは3~6重量%のコーティングが有用であることがわかっている。
【0047】
前述のシリカのワックス含浸に加えて、この目的のための他の方法も知られており、例えばDE1006100、DE1592865、またはEP0922691で読む取ることができる。ワックス懸濁液は、必要に応じて分散機を介して、シリカ懸濁液と反応する。
【0048】
沈降シリカの所望の狭い粒子分布と、3.0~5.0μmの所望のd50とを得るために、従来のエアジェットミル、例えばNetzsch CGS 50を用いて分級粉砕操作を行った。 。
【0049】
本発明による未処理のまたはワックスコーティングされた沈降シリカは、塗料またはコーティングの艶消し剤として使用され得る。特に、分散液、ミルベース、塗料、コーティングもしくは印刷インク、インクジェットインク、グラインド樹脂、顔料濃縮物、着色剤、顔料調合剤、充填剤調合剤、またはコーティング組成物の製造に使用できる。
【0050】
以下の例は、本発明をさらに明瞭にすることを意図しており、特許請求の範囲に記載されている保護の範囲を制限するものではない。
【0051】
方法
タップ密度[g/L]を、DIN ISO 787-11:1995に従って測定した。
BET比表面積[m/g]を、ブルナウアー・エメット・テラー法による窒素吸着によって、DIN 9277:2014に従って測定した。
DOA吸収値を、トルク測定および処理系を備えた、Brabender社製のアブソープトメーターを使用して、ISO 19246に従って測定した。これは、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、およびアルミノケイ酸ナトリウムの液体吸収能力を評価するために使用できる。1日の吸収値は、充填剤のキャリア容量の指標となる。
無光沢クリアコートの濃度Dy(透明度)を、DIN 55988に従って、X-Rite社製のeXact濃度計で測定した。さまざまな塗料系の無光沢クリアコートを、黒のPMMAシートに適用し、60°で測定される特定の場合に考慮される光沢レベルと同じ光沢レベルに常に調整して、さまざまな艶消し剤を比較した。次に、対数計算により、45°の角度での拡散反射によって透明度を確認した。測定のパラメータを以下のように設定した。
【0052】
【表2】
【0053】
グラインドメーターによる測定は、DIN EN ISO 1524に従う。
【0054】
黒色メラミン焼付ラッカーと、分散の細かさを測定するための自動グラインドメータードローダウン用TIDAS機器(Labman社製)とを使用して、さまざまな艶消し剤の分散特性を評価した。
【0055】
図2および図3に示すグラインドメーター画像を作成するために、AXALTA Coating Systems Austria GmbH社製の黒色中固形焼付ラッカー(DUPLEX D 1326、製剤番号:B11830875)を、適切なV0003シンナー(Axalta社製)とともに使用した。乾燥塗料層の光沢レベルを60°の角度で測定して20GUに調整するために必要とされる適切な量の沈降シリカを、パドルスターラーを使用して、2000rpmで10分間、100gの塗料に撹拌した。次に、その塗料を、最大溝深さ70μmのグラインドメーターブロックに、液体の形で適用し、ナイフコーティングによって自動的に適用し、TIDAS機器で評価した。
【0056】
炭素含有量[重量%]を、C632炭素測定システム(製造元:LECO社)による元素分析によって、EN ISO3262-20:2000(第8章)に従って測定した。分析した試料を、セラミックるつぼに量り入れ、燃焼添加剤と混合し、誘導炉で酸素流下で加熱した。存在する炭素を、COに酸化させた。COガスの量を赤外線検出器(IR)によって定量化した。SiCが存在する場合、それは燃焼しないので、炭素含有量の値には影響しない。
【0057】
Hg細孔容積(d<4μm、d<5μm)の測定を、Micromeritics社製のAutoPore V 9520機器を使用して、DIN 15901-1に従って水銀圧入法に基づいて行った。装置設定は、接触角140°、圧力範囲0.003~420MPaであり、シリカの粉砕後、細孔径範囲3.5nm~500μmで測定した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、シリカ粒子を配合したクリアコートコーティングの断面のSEM画像を示す。
図2図2は、K1およびK2のグラインドメーター画像を示す。
図3図3は、VG1およびVG2のグラインドメーター画像を示す。
図4】Hgポロシメータによる細孔容積の測定のグラフを示す。
【実施例0059】
1.本発明の沈降シリカK1およびK2の製造
20mの沈殿槽に、最初に、50℃の温度で、13.5mの水を連続的に撹拌しながら入れ、これに市販の水ガラス(SiO:27.1%、NaO:8.07%、濃度:1.335)を14.85m/時間の速度で添加し、13 分後に添加を終了した。その後、その混合物を、70℃の温度まで加熱した。次に、96%の硫酸を、0.27m/時間で30分以内に添加し、閉ループ制御によって温度を85℃に維持しながら、絶えずせん断および撹拌した。120分後、pHが3.5~3.9の範囲の値に達するまで、その懸濁液を60分以内に硫酸で再び酸性化した。膜フィルタープレスを使用して、その懸濁液から固形物を分離し、フィルターケーキを脱塩水で洗浄し、その後、スプレードライヤーで乾燥させた。スプレードライヤーによる乾燥では、フィルターケーキをせん断力の作用下で水で液化し、固形分含有量を10%に調整した。
【0060】
本発明による乾燥沈降シリカを、Netzsch CGS 50エアジェットミルを使用して、所望の粒度分布に従って分級粉砕した。
【0061】
K1は、表A~表Cの物理化学的特性を有する本発明による未処理シリカである。
【0062】
K2を同様に製造し、ミルでの分級粉砕中に、K2の表面を市販のPEワックスで被覆し、ワックス量を、LECO元素分析装置で測定した炭素含有量が 3.4%になるように調整した。K2の物理化学指標も同様に表A~表Cから明らかである。
【0063】
引用した比較例は、Tosho社製の市販の沈降シリカである。
【0064】
【表A】
【0065】
【表B】
【0066】
【表C】
【0067】
表A~表Cは、本発明による沈降シリカと、比較シリカVG1およびVG2 との物理化学指標を示している。K1は、本発明による未処理沈降シリカである。K2は、本発明によるワックス処理済み沈降シリカである。比較例VG1およびVG2は、商品名Nipsil E-1011(データシートによれば、有機後処理済み)(VG2)およびNipsil E-220A(VG1)のTosoh社製の沈降シリカである。これらの市販の沈降シリカの平均粒径は、K1およびK2と同様のd50を有している。VG1およびVG2は、艶消し添加剤として使用されていることが知られている。
【0068】
本発明の沈降シリカK1およびK2は、同等の粒度分布を有するTosoh社のVG1およびVG2と比較して、はるかに高いDOA値を示した(表Aを参照)。
【0069】
本発明のシリカK1およびK2の特定の多孔性は、水銀ポロシメトリにより示すことができた。対応する値を表Cに示す。
【0070】
本発明のシリカK1およびK2の平均細孔径は約2.8μmであり、沈降Nipsil E 1011(VG2)の8.9μmおよびNipsil E-220A(VG1)の8.0μmよりもずっと小さい値を示した。それにもかかわらず、K1およびK2は、0.1~3.0μm、0.1~4.0μm、および0.1~5.0μmの細孔範囲内でより多くの水銀を吸収することができた。平均してより小さな細孔の数が多いことは、特に水性塗料系の場合に、透明度の点で決定的な利点をもたらす。
【0071】
2.塗料系の製造
塗料試験用にさまざまな塗料系を製造した。
【0072】
2.1 塗料系1:2K PUR塗料(DD塗料)
溶媒ベースの2K PUR塗料を、表1の詳細に従って製造した。
表1:塗料系1
【0073】
【表1】
【0074】
個々の塗料原料を、上記の順序で段階的に計量し、実験室用溶解装置で均質化した。各項目4、5、6、7の後に均質化が必要であった。項目8の後に塗料の最終的な均質化を行った。
【0075】
2.2 塗料系2:1K PUアクリレート、wb(クリアコート)
水ベース1K PUアクリレート塗料を、表2の詳細に従って製造した。
表2:塗料系2
【0076】
【表2】
【0077】
AMP95を添加してpHを8.5~9.0に調整し、項目および項目3から予備混合物1を製造した。予備混合物2も同様に、項目6および項目7から製造した。次に、項目1を最初に充填し、撹拌しながら予備混合物1を添加した。項目4および項目5を連続して添加した後、予備混合物2を添加した。最後に、クリアコートを1500rpmで10分間均質化し、密閉容器に入れた。
【0078】
2.3 塗料系3:1Kアクリレート、wb(クリアコート)
水ベース1Kアクリレート塗料を、表3の詳細に従って製造した。
表3:塗料系3
【0079】
【表3】
【0080】
AMP95を添加してpHを8.5~9.0に調整し、項目4および項目5から予備混合物を製造した。項目1を最初に充填し、撹拌しながら予備混合物を添加した。項目2および項目3を連続して添加した後、クリアコートを1500rpmで10分間均質化し、密閉容器に入れた。
【0081】
3 塗料系の適用と表面特性の評価
3.1 塗料系へのシリカの組み込み
塗料系1:
表3.1の重量に従って、350mL容量のPEカップ内の塗料系1(100重量部)にシリカを導入した。シリカが適切に導入され、カップの縁に付着していないことを確認した。その後無光沢塗料系1を、4.2cmのパドルスターラーを用いて2000rpmで10分間分散させた。
【0082】
塗料系2:
95重量部の塗料系2と、5重量部のDowanol DPM(ジプロピレングリコールメチルエーテル、Dow Chemical社製)とを撹拌しながら混合し、パドルスターラーを用いて1000rpmで5分間撹拌した。
表3.2に従って、適切な重量のシリカをこの混合物に導入した。ただし、シリカを添加する際は、パドルスターラーでこの混合物を連続的に撹拌していた。
【0083】
塗料系3:
シリカを、塗料系2と同様に、表3.3の重量に従って導入した。
【0084】
VG1およびVG2を、表3.1~表3.3の各塗料系および重量と同様に、導入した。
【0085】
3.2 無光沢塗料系の適用と表面特性の評価
30分間の脱気段階の後、各無光沢塗料系を、Coatmaster 509 MCフィルムアプリケーターを用いて、黒のPMMAシート上に適用した。この目的のために、ギャップ高さ200μmのボックス型コーティングバーを使用した。適用速度を25mm/秒に設定した。コーティング済みPMMAシーを、21~25℃、相対湿度40~60%に気候制御された条件下で、一晩乾燥させた。適用して1日後、60°での光沢レベルと乾燥無光沢表面の透明度とを測定した。
【0086】
【表3.1】
【0087】
【表3.2】
【0088】
【表3.3】
【0089】
示されている3つの塗料系は、高品質の無光沢表面が求められる多数の標準結合剤系の代表例である。特に、無光沢コーティングでは、透明度および触感などの側面が重要な役割を果たす。
【0090】
従来の沈降シリカと比較すると、本発明のシリカK1およびK2は、60°角度で測定された20の光沢ポイントの光沢範囲全体にわたり、60°の角度での2つの光沢値の深い無光沢に至るまで、3つの塗料系すべてでより高い効率(経済的実現可能性)を示した。これは、表3.1~表3.3に示されている光沢レベルを達成するには、従来の比較シリカVG1およびVG2の場合よりも、少ないシリカの使用で済むことを意味する。効率の比較は、相互に比較されるシリカが同様の粒度分布を有する場合にのみ意味がある[表A(d5、d50、およびd95)を参照]。
【0091】
本発明のシリカK1およびK2は、溶媒ベース塗料系1において、60°の角度での20~2の光沢ポイントの光沢範囲にわたって、従来のシリカと比較して高い透明度Dy値を示した(表3.1)。2つの水ベース塗料系2および3(表3.2および表3.3)でも、20~5の光沢単位(角度60°) の光沢範囲において、透明度値が全体的に高くなっている。注目すべきは、無光沢クリアコート系1、2および3の透明度は、光沢レベルが同じ場合にのみ比較できる点である。艶消し剤の投入量が等しい場合の比較は、容認されない。測定された透明度Dy値は、対数値である。したがって、Dy値が高いほど、無光沢クリアコートの透明度が高くなる。
【0092】
例えば、1Kアクリレート塗料系(塗料系3)中の未処理沈降シリカK1は、20光沢単位(角度60°)でのDy値が2.19であるのに対し、競合の未処理沈降シリカNipsil E-220A(VG1)の透明度値は、たった2.10である。したがって、K1の透明度は、約23%高い。くろうと目では、測定によって確認された0.03の値の違いさえも視覚的に認識できる。
【0093】
したがって、本発明のシリカK1およびK2のこの特定の多孔性は、さまざまなコーティング系において効率と透明度にプラスの効果をもたらす。
【0094】
4.グラインドメーター測定による分散特性
350mL容量ポリエチレンカップに、100gのDUPLEX D 1326塗料を量り入れ、20gのV0003シンナーを量り入れた。次に、表4に規定された量のシリカを量り入れ、薄めた試験塗料にスパチュラで慎重に混ぜ込んだ。その後、蒸発による損失を避けるためにPEカップを覆いながら、その混合物を2000rpmで10分間、O43mmのパドルスターラーで分散させた。シリカを混ぜ込んだ後、無光沢塗料を密閉ビーカーに静置して30分間脱気した。
【0095】
さまざまなシリカの比較可能性を確保するために、Duplex D 1326ブラック塗料を、表4に記載されている艶消し剤を使用して、60°の角度で測定した20光沢単位(±0.1)の光沢レベルにそれぞれ調整した。
光沢レベルの調整は、次のようにして調べた:
【0096】
脱気が完了したら、モーター付き適用装置(Erichsen Coatmaster 509 MC)で、ギャップ高さ120μmの四角いコーティングバーを使用して、25mm/秒の速度で、洗浄済みのガラス板(130×90×3mm)に塗料を適用した。四角いコーティングバーを、VA鋼のブロック(寸法:71×30×24mm、重量:約420g)で押さえて、適用される荷重を増やした。各分散試料で、2枚のガラス板をコーティングした。適用した塗料を、固定のフラッシュオフ条件を使用して、フラッシュオフした:
温度:20℃~25℃
相対湿度:40%~60%
フラッシュオフ時間:10分~20分
【0097】
その後、循環式塗料乾燥キャビネットで、塗料を150℃で20分間焼き付けた。反射計の値を、ガラス板を冷却した後(少なくとも30分後)、BYKヘイズグロスで測定した。反射計の値は、2回の測定の平均から得た。
【0098】
図2は、K1およびK2のグラインドメーター画像を示す。
図3は、VG1およびVG2のグラインドメーター画像を示す。
表4:グラインドメーター画像の評価
【0099】
【表4】
【0100】
図2および図3に示す本発明のシリカK1およびK2のグラインドメーター画像は、比較シリカVG1およびVG2の場合よりも、3μm低い値を示している。グラインドメーター値は、粒子集合体の粗い成分によって決定的に決まるため、これは、表Aのd95%値が低いことにも関連している。上記のクリアコート系1、2および3の場合と同様に、本発明のシリカは、黒色顔料のDuplex D 1326試験塗料でも高い効率を示した。これは、60°の角度で測定される光沢レベル20を得るために、より少ない艶消し剤の添加で済んだためである。図2のK1およびK2は、遷移範囲がはるかに狭く、斑点が全くない点も注目に値する。d50値が5μm未満である多くの沈降シリカの場合、シリカ粒子は、保管中に再凝集する傾向があり、これはグラインドメーター画像で時間の経過とともに斑点の数が増えることで確認できる。通常、未処理シリカは、表面が有機物で被覆されたシリカの場合よりも、凝集する傾向が高い。これは、再凝集傾向が高いシリカの場合は、数日後にすでに当てはまる場合があり、安定性が高い場合は、数週間後または数ヶ月後でないと当てはまらない場合がある。対照的に、本発明のシリカK1およびK2の場合、これは観察されず、したがって、斑点形成の傾向が非常に低いことが確認される。シリカK1およびK2の特定の形態および細孔分布は、分散性に有利な効果をもたらすだけでなく、再凝集に対する高い安定性ももたらすと推測される。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】