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特開2024-160955電気外科システムおよび電気外科システムを操作するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160955
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電気外科システムおよび電気外科システムを操作するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20241108BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024069111
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】23171927
(32)【優先日】2023-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ディーアル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ザウター
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フラシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ケグライス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK20
4C160KK36
4C160KK37
4C160KK63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気外科システムと、電気外科システムを操作するための方法を提供する。
【解決手段】電気外科システム(10)は、供給装置(11)と、少なくとも1つの器具電極(14)を有する電気外科器具(12)とを備える。供給装置は、電気外科器具および処置される組織(15)を含む動作回路の少なくとも1つの動作パラメータ(OP)を評価し、電気外科器具には、供給装置によって電力が供給される。処置される組織の組織タイプ(TT)は、少なくとも1つの動作パラメータの評価によって識別される。その結果、供給される電力の少なくとも1つの電気的パラメータは、電気外科器具に供給される電力が現在処置されている組織の組織タイプに対して常に最適化されるように適応させるか、または修正することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織(15)を処置するための少なくとも1つの器具電極(14)を有する電気外科器具(12)と、少なくとも前記電気外科器具(12)および処置される前記組織(15)を介して、閉じた動作回路(17)を形成できるように前記電気外科器具(12)が接続されている供給装置(11)とを備える電気外科システム(10)であって、
前記供給装置(11)は、設定可能な少なくとも1つのモード(MD)によって特徴付けられている動作電圧(UB)および/または動作電流(IB)を前記電気外科器具(12)に供給し、各モード(MD)は、複数のモードパラメータ(PA)からなる1つのモードパラメータセット(SP)によって規定されており、
前記供給装置(11)は、さらに、前記動作回路(17)の少なくとも1つの電気的動作パラメータ(OP)を検出し、
前記供給装置(11)は、さらに、前記少なくとも1つの電気的動作パラメータ(OP)に基づいて、前記電気外科器具(12)によって処置される組織タイプ(TT)が、設定された前記モード(MD)に割り当てられた一次組織タイプ(TT)から、前記一次組織タイプ(TT)とは異なる二次組織タイプ(TT)に変化するかどうかを確認し、変化が判定された場合、前記二次組織タイプ(TT)に適応させるために、設定された前記モード(MD)内で、前記モードパラメータセット(SP)のモードパラメータ(PA)のうちの少なくとも1つを変更する
電気外科システム。
【請求項2】
それぞれのモードパラメータセット(SP)の各モードパラメータ(PA)は、規定された値範囲を有し、前記規定された値範囲内で、前記モードパラメータ(PA)の値が適応される
請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電気的動作パラメータ(OP)に基づいて、前記組織タイプ(TT)が前記二次組織タイプ(TT)から前記一次組織タイプ(TT)に再度変化したと判定された場合、前記供給装置(11)は、前記モードパラメータ(PA)を、前記二次組織タイプ(TT)への自動的な前記適応の前に初期設定されていた値に再度変更する
請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項4】
前記供給装置(11)は、終了条件が満たされた場合、前記モードパラメータ(PA)を、前記二次組織タイプ(TT)への自動的な前記適応の前に初期設定されていた値に再度変更する
請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項5】
前記終了条件は、1以上の前記モードパラメータ(PA)がそれぞれの一次パラメータ値(V)からそれぞれの二次パラメータ値(Vs)に変更されてから、所定の最大持続時間が経過した場合に満たされる
請求項4に記載の電気外科システム。
【請求項6】
前記供給装置(11)は、一次組織タイプ(TT)としての結合組織(35)と、二次組織タイプ(TTs)としての血管(36)とを互いに区別する
請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項7】
前記供給装置(11)は、処置される前記組織タイプ(TT)の変化が判定された場合、-前記動作電圧(UB)の最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、
-前記動作電流(IB)の最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、
-前記動作電圧(UB)および/または前記動作電流(IB)のクレストファクタ、
-前記動作電流(IB)の有効電力、皮相電力および/または無効電力、
-力率、
-前記動作電圧(UB)の周波数および/または波形、
-前記動作電流(IB)の周波数および/または波形、ならびに
-前記動作電圧(UB)および/または前記動作電流(IB)の変調タイプ
のモードパラメータ(PA)のうちの1以上を変更する
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気外科システム。
【請求項8】
前記供給装置(11)は、前記電気外科器具(12)によって処置される前記組織タイプ(TT)が、一次組織タイプ(TT)としての結合組織(35)から二次組織タイプ(TTs)としての血管(36)に変化した場合、
-前記動作電圧(UB)の許容最大絶対値が減少し、
-前記動作電流(IB)の許容最大絶対値が増加し、
-前記変調タイプが、前記動作電圧(UB)および前記動作電流(IB)の高周波交流信号形式から準連続波形に切り替わる
ように、前記モードパラメータ(PA)を変更する
請求項7に記載の電気外科システム。
【請求項9】
前記供給装置(11)は、前記動作電圧(UB)および前記動作電流(IB)を検出し、処置される前記組織タイプ(TT)の変化を識別するために、
-前記動作回路(17)のオーム抵抗および/またはインピーダンス、
-前記動作電流(IB)および/または前記動作電圧(UB)に対する、前記電気外科器具(12)の前記器具電極(14)と処置される前記組織(15)との間のスパークの影響を示すスパークパラメータ、
-前記動作電圧(UB)の最大値、平均値、二乗平均平方根値、および/またはクレストファクタ、
-前記動作電流(IB)の最大値、平均値、二乗平均平方根値、および/またはクレストファクタ、ならびに
-有効電力、無効電力、皮相電力、および/または力率、
の動作パラメータ(OP)のうちの1以上を評価する
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気外科システム。
【請求項10】
前記供給装置は、
(i)前記オーム抵抗(R)が減少し、
(ii)前記スパークパラメータ(FP)が所定の変化持続期間(d1)内に最小値について増加するか、または所定のスパークパラメータ閾値を上回り、かつ
(iii)前記力率(L)が所定の許容範囲内に留まっている
場合、前記結合組織(35)の前記一次組織タイプ(TT)から前記血管(36)の前記二次組織タイプ(TTs)への変化を検出する
請求項9に記載の電気外科システム。
【請求項11】
前記供給装置(11)は、
(i)前記オーム抵抗が増加し、
(ii)前記スパークパラメータ(FP)が、最小持続期間中に所定のスパークパラメータ閾値を下回り、かつ
(iii)前記力率(L)が所定の変化持続期間(d3)内に最小絶対値について変化する
場合、前記血管(36)の前記二次組織タイプ(TTs)から前記結合組織(35)の前記一次組織タイプ(TT)への変化を検出する
請求項9に記載の電気外科システム。
【請求項12】
1以上のモードパラメータ(PA)の前記変化を操作者に示す
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気外科システム。
【請求項13】
生体組織(15)を処置するための少なくとも1つの器具電極(14)を有する電気外科器具(12)と、少なくとも前記電気外科器具(12)および処置される前記組織(15)を介して、閉じた動作回路(17)を形成できるように前記電気外科器具(12)が接続されている供給装置(11)とを備える電気外科システム(10)を操作するための方法であって、
-複数のモードパラメータ(PA)からなるモードパラメータセット(SP)によって規定されるモード(MD)を設定するステップと、
-設定された前記モード(MD)に基づいて、前記供給装置(11)よって前記電気外科器具(12)に動作電圧(UB)および/または動作電流(IB)を供給するステップと、
-前記動作回路(17)の少なくとも1つの電気的動作パラメータ(OP)を検出するステップと、
-前記少なくとも1つの電気的動作パラメータ(OP)に基づいて、前記電気外科器具(12)によって処置される組織タイプ(TT)が、設定された前記モード(MD)に割り当てられた一次組織タイプ(TT)から、前記一次組織タイプ(TT)とは異なる二次組織タイプ(TT)に変化するかどうかを確認するステップと、
-一次パラメータ値(V)から、前記一次パラメータ値(V)とは異なる値への前記組織タイプ(TT)の変化が判定された場合、設定された前記モード(MD)内で、前記モードパラメータセット(SP)のモードパラメータ(PA)のうちの少なくとも1つを変更するステップとを含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気外科システムと、電気外科システムを操作するための方法とに関する。電気外科システムは、供給装置と、少なくとも1つの器具電極を有する電気外科器具とを備える。電気外科器具は、生体組織を処置する。処置中、電気外科器具は、電気外科システムの供給装置に接続されている。電気外科器具を使用する際、動作回路が閉じられるか、または形成され、この動作回路は、供給装置の電気接続部から、電気外科器具の器具電極、処置対象の組織、および別の電極(任意選択で、器具とは別個の、患者に取り付けられている中性電極)を経由して、供給装置の接続部に戻る。中性電極は、電気外科器具がモノポーラ器具である場合に存在する。複数の器具電極を有するバイポーラ器具の場合には、別個の中性電極は省略することができる。
【0002】
電気外科器具の供給装置は、電気外科器具に動作電圧および/または動作電流の形態で電力を供給する。任意選択で、さらなる作動媒体、例えば作動流体を供給することもできる。
【背景技術】
【0003】
このタイプの電気外科システム、および患者の生体組織の処置中における当該電気外科システムの操作は、先行技術から知られている。それぞれの組織タイプに適応した処置を提供するために、異なる組織タイプには異なる操作設定が必要である。したがって、操作者、特に外科医は、電気外科システムに対して(例えば供給装置に対して)、モードとしても示される所望の操作モードを選択または調整することができる。これには、最適モードを調整するか、または組織のそれぞれ意図された処置に利用可能なモードから最適モードを選択するために、操作者の専門知識が必要である。
【0004】
操作者にとって電気外科システムの使用が簡単になるように、処置される組織タイプの自動識別を行い、かつ、任意選択で自動的にあるモードから別のモードに切り替えることが先行技術から知られている。電気外科システムを操作するためのそのような方法は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、組織の電気的特性のみに基づく組織タイプ識別は、限られた方法でしか可能でないと考えられるため、組織タイプの判定には光学的組織タイプ識別を行うことが提案されている。
【0005】
特許文献2には、外科手術を支援するための方法およびシステムについて開示されている。処置中、測定データが決定され、供給装置に一時的に記憶される。その後、一時的に記憶された測定データは、中央評価デバイスに送信される。中央評価デバイスでは、受信したデータが記憶および評価される。この評価に基づいて、供給装置の利用可能なモードを修正もしくは完全にキャンセルすることができるか、または、新しいモードを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102020105835号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3876238号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気外科システムの供給装置によって提供されるモードは、生体組織の様々な処置方法に役立ち、そのため、互いに著しく区別することができる。この理由により、例えば、組織タイプが処置中に一時的にのみ変化した場合、自動組織タイプ識別を十分な信頼性をもって非常に迅速に行わなければならない。例えば、これは、処置される組織タイプに、別の組織タイプの局所的に限定されたより小さい構造体が混ざっている場合に生じることがある。
【0008】
電気外科システムと、操作を異なる組織タイプに迅速かつ確実に適応させることができる、電気外科システムを操作するための方法とを提供することを、本発明の目的と考えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する電気外科システムと、請求項13の特徴を有する、電気外科システムを操作するための方法とによって達成される。
【0010】
本発明に係る電気外科システムは、供給装置と、供給装置に接続されたまたは接続可能な電気外科器具とを備える。電気外科器具は、患者の処置対象の生体組織に作用を及ぼすことができる少なくとも1つの器具電極を有する。これにより、少なくとも1つの器具電極を、組織と距離をとって配置することができるか、または組織と接触させることができる。使用中、器具電極と組織との間に電気スパークが生じ得る。
【0011】
電気外科器具は、特に、処置対象の組織を切開し、かつ/または凝固させる。その電気外科器具は、開腹手術または内視鏡に使用されるように提供および構成することができる。少なくとも1つの器具電極は、それぞれの処置に適した幾何学的形状および寸法を有することができ、それによって、例えば、針状器具電極またはへら状器具電極にすることができる。
【0012】
電気外科器具は、モノポーラ器具にすることができる。動作回路を閉じるために、この場合、中性電極として示すことができる別個の電極が患者に導電的に配置される。その後、動作電流が供給装置から、電気外科システムの少なくとも1つの器具電極、処置される組織および中性電極を経由して流れ、供給装置に戻ることができる。このようにして、閉じた動作回路が形成される。器具がバイポーラ器具である場合、動作電流は、電気外科器具上に存在する複数の器具電極によって閉じることができるため、別個の中性電極は省略することができる。
【0013】
供給装置は、動作回路または電気外科器具に動作電圧および/または動作電流を供給する。これにより、動作電圧または動作電流のどちらかを供給装置(例えば供給装置の制御可能なジェネレータ)によって事前設定または印加することができる。そのため、動作電圧および/または動作電流の設定は、供給装置の選択または設定モードに依存する。
【0014】
各モードは、複数のモードパラメータを有するモードパラメータセットによって特徴付けられている。モードパラメータセットを形成するためのモードパラメータとして、動作電圧の最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、動作電流の最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、動作電圧の変調タイプおよび/または動作電流の変調タイプ、動作電圧のクレストファクタおよび/もしくは動作電流のクレストファクタ、ならびに/または、動作電圧および動作電流と相関がある動作電力などのパラメータ、動作電圧の周波数および/または動作電流の周波数、動作電圧の波形および/または動作電流の波形、例えば、矩形波、正弦波、または、連続的であるように(「連続波」もしくは「cw」としても示す)、もしくは短いパルス持続時間および/もしくはパルス休止を有して準連続的であるように事前設定できる別の波形、ならびに、動作電圧の直流電圧値または動作電流の直流電流値であって、直流電圧または直流電流は連続的に加えることができるか、または事前設定された時間間隔によってオンとオフを切り替えることができる当該直流電圧値または直流電流値のパラメータのうちの1以上を用いることができる。
【0015】
準連続波形とは、特に、(いわばパルスまたはバーストの形態で)パルス持続時間中に繰り返し連続的に加えられる動作電圧および/または動作電流の交流信号、特に高周波交流信号を供給し、後続のパルス同士またはパルス持続時間同士の間にパルス休止が存在する波形を意味する。パルス休止中、動作電圧および/または動作電流は、0に等しいか、または少なくとも無視できるほど小さいため、組織は作用を受けない。パルス持続時間およびパルス休止は、等しい持続時間を有することが好ましいが、異なる持続時間を有することもできる。パルス持続時間および/または休止持続時間は、例えば、最大10msまたは最大5msという長さにすることができる。
【0016】
本発明によれば、供給装置は、電気外科システムの動作から得られる、動作回路の少なくとも1つの電気的動作パラメータを検出する。少なくとも1つの動作パラメータは、供給装置によって事前設定される動作パラメータ、および/または、処置される組織および任意選択で追加の外部条件に応じた使用から得られる動作パラメータにすることができる。特に、少なくとも動作電圧および/または動作電流が動作パラメータとして測定される。選択肢として、動作電圧および/または動作電流に応じて、さらに、少なくとも1つの追加の動作パラメータを算出、評価または別の方法で決定することができる。例えば、動作パラメータとして、動作回路のオーム抵抗および/またはインピーダンス、動作電流および/または動作電圧に対する、器具電極と処置される組織との間のスパークの影響を特徴付けるスパークパラメータ、有効電力、無効電力、皮相電力、力率、動作電圧の決定から得られる任意の電圧値、例えば、最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、ならびに、動作電流の測定から得られる任意の電流値、特に、動作電流の最大値、平均値および/または二乗平均平方根値のパラメータのうちの少なくとも1つを用いることができる。
【0017】
少なくとも1つの検出された動作パラメータに基づいて、電気外科システムによって処置される組織の組織タイプが、設定モードで処置される一次組織タイプから、一次組織タイプとは異なる二次組織タイプに変化するかどうかが確認される。例えば、組織タイプは、結合組織(一次組織タイプ)から血管の組織(二次組織タイプ)に変化し得る。そのような変化が判定された場合、供給装置は、一次組織タイプから二次組織タイプへの組織タイプの変化を考慮するために、モードパラメータセットのうちの少なくとも1つのモードパラメータを少なくとも一時的に適応させる。例えば、これにより、適応させるモードパラメータは、それぞれ割り当てられた一次パラメータ値または一次条件から、一次パラメータ値または一次条件とは異なる二次パラメータ値または二次条件に変更される。例えば、この目的のために、動作電圧の電圧値、動作電流の電流値、動作電圧の変調タイプ、動作電流の変調タイプ、動作電圧の波形、および/または、動作電流の波形を修正することができる。
【0018】
供給装置による動作回路の少なくとも1つの動作パラメータの監視は、非常に単純な手段を用いて非常に迅速に、特にミリ秒範囲内、特に最大100msまたは最大50msの時間間隔で行うことができる。そうすることで、二次組織タイプの非常に小さい組織構造体に十分迅速に反応できるように、少なくとも1つのモードパラメータの適応を非常に迅速に行うことができる。例えば、結合組織を処置するための、特に切開するための設定モードが提供されているが、結合組織に、結合組織の一次組織タイプとは異なる組織タイプ(二次組織タイプ)の微小血管が局所的に混ざっている場合、本発明によって非常に迅速に適応を行うことができる。
【0019】
少なくとも1つのモードパラメータのこの適応は、特に、設定モードを離れることなく、かつ別の選択可能なモードに切り替えることなく行われる。
【0020】
それぞれ1つのモードパラメータセット内の各モードパラメータは、規定された値範囲を有することが好ましい。特に、モードパラメータは、この値範囲を離れないものとする。したがって、設定モード内で少なくとも1つのモードパラメータを適応している間、規定された値範囲を離れない。
【0021】
さらに、このことは、組織タイプが二次組織タイプから一次組織タイプに再度変化したと判定されたときに、供給装置が、適応されたモードパラメータをその初期設定に戻す場合に有利である。
【0022】
さらに、または代替として、終了条件を規定し、その終了条件が満たされた場合、供給装置は、少なくとも1つのモードパラメータをそれぞれのモードパラメータの初期設定に再度変更することができる。そのような終了条件は、例えば、1以上のモードパラメータが変更されてから、所定の最大持続時間が経過した場合に満たされ得る。最大持続時間は、例えば、5秒、2秒または1秒にすることができる。この任意選択の手段は、生体組織の処置中の安全性を高めることができる。そのため、操作者によって設定または選択されたモードは、二次組織タイプが識別された場合にのみ短期間修正される。少なくとも1つのモードパラメータのこの自動適応または自動修正は、設定モードパラメータの意思決定権を操作者に委ねるために一時的に制限することができる。終了条件が満たされたことは、操作者に示すことができる。一次組織タイプよりも長い期間にわたって別の組織タイプを処置する場合は、モード設定の修正が有利または必要になる可能性があり得る。
【0023】
既に説明したように、電気外科システムは、一実施形態において、結合組織を1つの組織タイプとして、また血管を別の組織タイプとして識別し、かつ/または、それらを互いに少なくとも区別する。結合組織は一次組織タイプであり、血管の組織は二次組織タイプであることが好ましい。
【0024】
組織タイプ、特に結合組織および/もしくは血管を識別するために、または、特に結合組織から血管への、もしくはその逆の血管から結合組織への組織タイプの変化を識別するために、複数の動作パラメータの組合せを考慮できることが好ましい。
-動作回路の抵抗またはインピーダンス
-上限閾値を上回るか、または下限閾値を下回る動作回路の抵抗またはインピーダンスの変化、
-スパークパラメータ
-所定の変化持続時間内における最小値についてのスパークパラメータの変化
-スパークパラメータが所定の閾値を上回るか、または下回る。
-動作回路の電力の力率が所定の変化持続時間内に最小絶対値について変化する。
【0025】
例えば、血管は、
(a)動作回路のオーム抵抗が500オームを下回り(著しく500オームよりも小さいことが好ましい)、
(b)スパークパラメータが、好ましくは最大5msの変化持続時間内において所定の閾値を上回り、かつ
(c)力率が絶対値20%付近の所定の許容範囲内、例えば15%~25%の許容範囲内にある
場合に識別することができる。
【0026】
結合組織は、
(a)動作回路の抵抗が1500オームの閾値を上回り、
(b)スパークパラメータが、最小持続時間、例えば10msの間、所定の閾値を下回り、かつ
(c)力率が、事前設定された変化持続期間、例えば50ms内に、特に1%~100%、例えば、少なくとも50%、60%または70%のパーセント値について増加または減少する
点から、識別できることが好ましい。
【0027】
モードパラメータとして、
-動作電圧の最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、
-動作電流の最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、
-動作回路に供給される有効電力、皮相電力および/または無効電力、
-皮相電力に対する有効電力の比率を特に示す力率、
-動作電圧の周波数形式および/または波形、
-動作電流の周波数形式および/または波形、ならびに
-動作電圧および/または動作電流の変調タイプ
のモードパラメータのうちの1以上のモードパラメータを用いることができる。
【0028】
本発明により、少なくとも1つの動作パラメータの評価によって、一次組織タイプとしての結合組織から二次組織タイプとしての血管への移行が判定された場合、
-動作電圧の許容最大絶対値が一次電圧値から二次電圧値に減少し、
-動作電流の許容最大絶対値が一次電流値から二次電流値に増加し、かつ/または
-動作電圧および/または動作電流の現在用いられている波形(特に高周波交流信号形式)である変調タイプが、動作電圧および/または動作電流の準連続波形に変化する
ように、モードパラメータセットを適応させることができる。
【0029】
高周波交流信号は、特に、動作電圧または動作電流の極性変化が生じるように事前設定される。動作電圧および/または動作電流は、正弦波状に推移し得る。
【0030】
一実施形態では、少なくとも1つのモードパラメータの適応が、例えば光学的、聴覚的かつ/または触覚的に示される。この目的のために、例えば、供給装置上の操作インタフェースを使用することができる。さらに、または代替として、例えば振動信号などの触覚信号によって、電気外科器具上に表示を行うこともできる。モードパラメータセットのうちの1以上のモードパラメータの各自動変更は、操作者に示すことができる。
【0031】
設定モードで一次組織タイプを処置している間、少なくとも1つまたは厳密に1つのモードパラメータを、処置される組織(一次組織タイプ)の組織インピーダンスに動的に適応させることができる。例えば、少なくとも1つの自動的に適応可能なモードパラメータは、
-動作電圧のクレストファクタ、
-動作電流のクレストファクタ、ならびに/または
-動作電圧および/もしくは動作電流に依存する動作電力などの別の電気的パラメータのクレストファクタ
を含むことができる。
【0032】
それぞれのモードパラメータを自動的に適応させることができる適応範囲は、任意選択で、上限値および/または下限値によって制限することができる。さらに、または代替として、少なくとも1つのモードパラメータの自動適応の結果として変化し得る少なくとも1つの追加の電気的パラメータも、割り当てられた上限値および/または下限値によって制限することができる。
【0033】
本明細書で説明する電気外科システムのいずれの実施形態も、本発明によって以下のように操作される。
【0034】
まず、複数のモードパラメータからなるモードパラメータセットによって規定されるモードが設定される。このモードに基づいて、動作回路には、供給装置によって動作電圧および/または動作電流が供給される。操作中、特に生体組織の処置中、動作回路の少なくとも1つの電気的動作パラメータが検出され、特に、動作電圧および動作電流が連続的に測定されるか、または別の方法で決定される。動作電圧および/または動作電流に基づいて、1以上の追加の動作パラメータを決定することができる。
【0035】
少なくとも1つの動作パラメータに基づいて、処置される組織タイプが、設定モードに割り当てられた一次組織タイプから、一次組織タイプとは異なる二次組織タイプに変化するかどうかが評価される。この場合、設定モードのモードパラメータセットのうちの少なくとも1つのモードパラメータが、少なくとも一時的に二次組織タイプに適応される。
【0036】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項、明細書および図面から導かれる。以下、本発明の好ましい実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、電気外科システムの実施形態におけるブロック図のような概略図である。
図2図2は、図1の電気外科システムを操作するための利用可能なモードの概略図であり、各モードは、複数のモードパラメータを有するモードパラメータセットを含む。
図3図3は、生体組織の処置中に図1の電気外科システムの電気外科器具を使用する原理図である。
図4図4は、図1の電気外科システムにおける動作パラメータの例示的な一時的変化の非常に概略的かつ定性的な図である。
図5図5は、図1の電気外科システムにおける動作パラメータの例示的な一時的変化の非常に概略的かつ定性的な図である。
図6図6は、電気外科器具によって処置される組織タイプの判定された変化中における、複数のモードパラメータの非常に概略的かつ例示的な時間的推移の図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1には、電気外科システム10の実施形態を、ブロック図のタイプで概略的に示す。電気外科システム10は、供給装置11と、供給装置11に接続されたまたは接続可能な電気外科器具12とを備える。少なくとも1つの導電体を有するラインまたはケーブル13が、電気外科器具12を供給装置11に電気的に接続する働きをする。電気外科器具12は処置対象の患者の生体組織に作用を及ぼすことができる少なくとも1つの器具電極14を有する。
【0039】
ケーブル13を介した電気的接続に加えて、光学的接続および/または流体的接続も、供給装置11と電気外科器具12との間に確立することができ、この場合、ケーブル13は、それぞれの光学ラインおよび/または流体ラインを含む。例えば、図1および図3に概略的に示すように器具電極14と組織15との間にスパークFを生成する場合、組織15への作用中に器具電極14と組織15との間に生じ得る光を検出するために、例えば電気外科器具12上に光検出デバイス16を設けることができる。光検出デバイス16は、受けた光を供給装置11に供給するために、ケーブル13の光導体によって供給装置11に接続することができる。
【0040】
図1に示した実施形態では、電気外科器具12は、モノポーラ器具として構成されている。したがって、器具電極14は単一で十分である。閉じた動作回路17をモノポーラ器具と形成するために、器具電極14に加えて、患者に導電的に取り付けられているまたは取り付け可能な別個の電極が存在する。この別個の電極は、中性電極18として示すことができる。中性電極18は、電気ライン19によって供給装置11に導電的に接続されている。
【0041】
図示した実施形態の修正において、電気外科器具12を、電位が異なり得る少なくとも2つの器具電極14を有するバイポーラ器具にすることもできる。そのとき、動作回路17は、器具電極14、組織15、およびバイポーラ器具12の別の器具電極のうちの1つを介して閉じることができる。この場合、別個の中性電極18は、省略することができる。
【0042】
電気外科器具12は、開腹手術用の外科器具として図面に示す。これに代えて、電気外科器具12は、内視鏡用に構成することもでき、この場合、電気外科器具12を内視鏡の内視鏡チャネルを通して患者に挿入することができるような構成を有することができる。
【0043】
用途に応じて、少なくとも1つの器具電極14は、異なる構成を有することができる。例えば、器具電極14は、針状またはへら状にすることができる。少なくとも1つの器具電極14は、動かないように電気外科器具12のハンドルに固定することができるか、あるいは、特に複数の器具電極14を有するバイポーラ器具の場合には、鉗子またははさみのような方法で支持することができる。
【0044】
供給装置11は、電気外科器具12に電気エネルギーまたは電力を供給し、電気外科器具12によって、少なくとも1つの器具電極14は、生体組織15を処置することができる。電気外科器具12は、例えば、組織15を切開し、かつ/または凝固させることができる。この目的のために、供給装置11は、実施形態において、電圧源24および/または電流源25を有し得るジェネレータ23を含む。ジェネレータ23によって、動作電圧UBおよび/または動作電流IBを供給装置11の出力部26に供給することができる。ジェネレータ23の構成に応じて、動作電圧UBまたは動作電流IBのどちらかを事前設定または印加することができる。そのとき、事前設定も印加もされていないそれぞれの他方のパラメータ(動作電流IBまたは動作電圧UB)は、出力部26に接続された動作回路17の電気的特性、特にその電気抵抗Rまたはインピーダンスに依存して生じる。
【0045】
電気外科システム10の使用中、動作回路17は、動作電流IBが流れ得るように閉じている。モノポーラ器具の場合、動作回路17は、供給装置11(またはジェネレータ23)の接続部から導電体を経由して、モノポーラ器具ケーブル13の場合には、器具電極14、処置される組織15、中性電極18および電気ライン19を経由して、供給装置11(またはジェネレータ23)の別の接続部に戻る。バイポーラ器具の場合、動作回路17は、中性電極18の代わりに、別の器具電極14とケーブル13の別の導電体とによって閉じられる。
【0046】
いずれの場合も、処置される組織15は、動作回路17の一部であり、組織15の特性は、動作回路17の電気的特性、例えば動作回路17のオーム抵抗Rまたはインピーダンスに影響を及ぼす。
【0047】
この例によれば、供給装置11は、評価部30を含む。評価部30は、動作回路17の少なくとも1つの動作パラメータOPを測定、算出および/もしくは評価するか、または、それを別の適切な方法で決定する。その実施形態では、評価部30によって、動作電圧UBおよび/または動作電流IBが動作パラメータOPとして連続的にまたは一定の時間間隔で測定される。これによって、動作電圧UBおよび動作電流IBを測定することができる。あるいは、ジェネレータ23によって印加されるパラメータは、供給装置11内のジェネレータ23により設定されるため分かっており、事前設定され、印加される所望値は、実際値として用いられるため、当該パラメータを測定しないことも可能である。
【0048】
さらに、または代替として、評価部30は、測定された動作パラメータOPのうちの1以上から少なくとも1つの動作パラメータOPを決定することができる。動作パラメータOPとして、
-動作回路17のオーム抵抗R、インピーダンス、および/またはインピーダンスの絶対値、
-動作電圧UBおよび/または動作電流IBの最大値、平均値、二乗平均平方根値および/またはクレストファクタ、
-動作回路17に供給される有効電力、無効電力および/または皮相電力、
-例えば皮相電力に対する有効電力の比率を示す力率、ならびに
-動作電流IBおよび/または動作電圧UBに対する、電気外科器具12の器具電極14と処置される組織15との間のスパークFの影響を表すスパークパラメータFP
のパラメータのうちの1以上を用いることができる。
【0049】
スパークパラメータFPは、測定された動作電流IBおよび/または測定された動作電圧UBのひずみから導くことができる。例えば、スパークパラメータFPは、ジェネレータ23によってそれぞれ事前設定も印加もされていない電気的パラメータ(動作電流IBまたは動作電圧UB)の非線形成分に基づいて表すことができるか、または決定することができる。この非線形成分は、主に、スパークFによって生じた非線形抵抗から得られる。この目的のために、評価部30は、線形等価回路図に基づいて動作電流IBと動作電圧UBとの相関性を決定し、その相関性を、測定された動作電流IBおよび/または測定された動作電圧UBと比較することができる。これによって生じる差は、動作回路17におけるスパークFの非線形性を特徴付け、スパークパラメータの決定の基礎となり得る。
【0050】
例えば、決定された差は、それぞれ割り当てられた測定されたパラメータに関連付けることができ、それによって、スパークパラメータFPを決定することができる。例えば、動作電圧UBを印加する場合には、動作電流IBを測定することができ、また、動作電流IBの算出値と動作電流IBの測定値との差を算出することができる。この差の二乗平均平方根値と、測定された動作電流の二乗平均平方根値とは、互いに関連付けて、スパークパラメータFPとして用いることができる。あるいは、動作電流IBを印加する場合には、動作電圧UBを一方では算出することができ、他方では測定することができ、上記手順と同様にスパークパラメータFPを決定することができる。
【0051】
二乗平均平方根値に対するピーク値の比率は、動作電圧UBまたは動作電流IBのクレストファクタとして用いることができる。動作電圧UBまたは動作電流IBの交流パラメータが正弦波である場合、ピーク値は、交流パラメータの振幅に相当する。
【0052】
ジェネレータ23は、制御または調整することができる。評価部30は、測定および/または決定された動作パラメータOPを評価する。評価結果に応じて、評価部30は、制御信号CSを生成することができ、その制御信号CSによって、ジェネレータ23の動作を修正するか、または適応させることができ、特に、より詳細に以下に説明するように動作電圧UBまたは動作電流IBの特徴を調整または修正することができる。
【0053】
供給装置11は、異なる用途、特に組織15の異なる処置に対して、異なる操作タイプで使用される。これらの操作タイプは、モードMDとして示す。操作者、例えば外科医は、電気外科システム10の計画された使用に適切なモードMDを選択または調整することができる。その実施形態では、供給装置11は、例えば供給装置11の操作インタフェース31によって選択することができる、複数の選択可能なモードMDを提供する。
【0054】
それぞれ調整または選択されたモードMDは、割り当てられたモードパラメータセットSPによって特徴付けられている。その実施形態において、各モードパラメータセットSPは、複数のモードパラメータPAからなり、それらのモードパラメータPAは、ジェネレータ23の動作を規定し、それによって特に、動作回路17に供給され印加される動作電圧UBまたは印加される動作電流IBの大きさおよび/または時間的推移の特性を事前設定する。モードパラメータセットSPは、
-動作電圧UBおよび/または動作電流IBの最大値、平均値および/または二乗平均平方根値、
-動作回路17に供給される有効電力、皮相電力および/または無効電力、
-動作電圧UBおよび/または動作電流IBのクレストファクタ、
-力率(例えば皮相電力に対する有効電力)、
-動作電圧UBおよび/または動作電流IBの周波数、
-動作電圧UBおよび/または動作電流IBの波形、ならびに
-動作電圧UBおよび/または動作電流IBの変調タイプ
のモードパラメータPAのうちの1以上を含むことができる。
【0055】
例えば、動作電圧UBまたは動作電流IBの高周波交流信号は、変調タイプとして選択することができ、その変調タイプは、連続的であるように(cw)、準連続的であるように、または中断を有するように(後続のオン期間同士の間のオフ期間が、準連続波形の場合よりも長い)事前設定することができる。
【0056】
高周波交流信号形式は、実施形態において極性変化を有し、好ましくは直流成分を含まない。例えば、高周波交流信号形式は、正弦波状に推移し得る。
【0057】
高周波交流信号の周波数は、設定モードによって変更することができ、100kHz~4MHzの範囲にすることができるため、好ましくは最小300kHzにすることができる。
【0058】
直流信号形式は、例によれば、0よりも大きい絶対値の直流成分を有し、特に、信号の極性変化を含まない構成とすることができる。直流信号形式は、特にクロック制御され、2つ、特に厳密に2つの値、特にゼロに等しくない直流信号値と、ゼロに等しい直流信号値を切り替えることができる。
【0059】
図2には、それぞれ関連付けられたモードパラメータセットSP1~SPnを有する複数の利用可能なモードMD1~MDnを概略的に示す。モードパラメータPAごとに、許容値範囲を規定することができる。図2を参照して、それぞれ最小値および最大値によって値範囲を示す。例えば、第1モードパラメータセットSP1の第1モードパラメータPA11は、PA11min~PA11maxの値範囲を有する。各モードパラメータPAは、それぞれのモードMDを離れることなく、割り当てられた値範囲内で調整または修正することができる。
【0060】
処置される生体組織15は、その処置される組織タイプTTに関して、用途または処置の種類に応じて変わり得る。組織タイプTTは、例えば、結合組織35、血管36の組織、筋組織、神経組織、または上皮組織になり得る。例として、結合組織35および血管36を図3に非常に概略的に示す。処置される生体組織15の組織タイプTTについての図示した適用例では、結合組織35は一次組織タイプTTを示し、血管36は二次組織タイプTTを示す。
【0061】
処置される組織タイプTT(ここでは一次組織TT)に応じて、電気外科システム10の操作者または外科医は、適切なモードMDを選択または調整することができる。しかしながら、処置される組織15が一次組織タイプTTだけに対応するのではなく、一次組織タイプTTから外れている組織構造体が少なくとも局所的に混ざっている用途がある。したがって、現在用いられているモードMDは、この外れている組織タイプ(ここでは二次組織タイプTT)には最適ではない可能性がある。単なる例として、図3には、結合組織35の切開中における適用を示し、結合組織35には、非常に小さい断面の微小血管36が混ざっている。電気外科器具12によって結合組織35が処置される、例えば切開される場合、それによって、1以上の微小血管36も分離される。しかしながら、結合組織35を切開するために選択されたモードMDは、血管36の分離には最適ではない。したがって、一次組織タイプTT(例えば結合組織35)から外れている二次組織タイプTT(例えば血管36)の処置が判定された場合、選択されたモードMDのモードパラメータPAのうちの1以上を少なくとも一時的に適応させるものとする。この適応は、手動でモードを離れたり、または適応させたりすることを要せず、自動的に行われる。
【0062】
少なくとも1つのモードパラメータPAの適応は、例えば、組織タイプTTが一次組織タイプTTから二次組織タイプTTに、またはその逆に変化した場合に、それぞれのモードパラメータを一次パラメータ値(または一次条件)と二次パラメータ値(または二次条件)を切り替えることができるようにするためのものである。電気外科器具12によって処置されるのが一次組織タイプTTであるのか、または二次組織タイプTTであるのかによって、それぞれの関係のあるモードパラメータPAは、一次組織タイプTTの処置向けの一次パラメータ値(または一次条件)または二次組織タイプTTの処置向けの二次パラメータ値(または二次条件)のどちらかに設定される。
【0063】
ここで示した実施形態の選択肢として、2を超える異なる組織タイプを区別し、設定モードMD内で3以上の組織タイプ間の切り替えを行い、また、それに応じて、モードパラメータセットSPの構成をモードパラメータPAの3以上の組合せ間で切り替えることも可能である。これにより、各組織タイプTTに、モードパラメータ値の1つの組合せが割り当てられる。異なる組織タイプTTの処置のためにどのモードパラメータが修正され、または切り替えられるか、また、修正されるモードパラメータの数は、それぞれ処置される組織タイプTT、すなわち、この実施形態においては一次組織タイプTTおよび二次組織タイプTTに依存する。したがって、それぞれのモードパラメータセットSPのモードパラメータPAを1つだけ修正すれば十分である場合もあるが、モードパラメータPAのうちの複数またはすべてを修正し、それらを互いに適応させることが必要な場合もある。
【0064】
適応のために、異なる組織タイプTTを互いに区別する必要がある。この理由により、評価部30は、1つの動作パラメータOPまたは複数の動作パラメータOPの組合せに基づいて、電気外科器具12によって現在処置されている組織タイプTTを識別する。
【0065】
図4図6に基づき、一次組織タイプTTが結合組織35であり、二次組織タイプTTが血管36である図3に示した適用についての組織タイプ識別を例示的に説明する。
【0066】
図4および図5に示すように、組織タイプTTの識別のために、複数の動作パラメータOPの組合せ、すなわち、動作回路17のオーム抵抗R(図4aおよび図5a)、スパークパラメータFP(図4bおよび図5b)、および力率L(図4cおよび図5c)が用いられている。
【0067】
実施形態において、次の状況が発生した場合、血管36の処置が判定される。
(a)オーム抵抗Rが第1抵抗閾値R1を下回る。第1抵抗閾値R1は、例えば500オームにすることができる。
(b)スパークパラメータFPが所定の第1スパークパラメータ閾値FP1よりも大きい。選択肢として、さらに、または代替として、スパークパラメータFPの変化の勾配、例えば平均勾配を考慮することができ、その勾配は、例えば最小絶対値を有するに違いない。例えば、この目的のために、スパークパラメータFPが最小値について初期値から増加しなければならず、かつ/または事前設定された第1スパークパラメータ閾値FP1を上回らなければならない変化持続時間d1を規定することができる。
(c)少なくとも第1スパークパラメータ閾値FP1を上回った後で、かつ第1抵抗閾値R1を下回った後、力率Lは、ほぼ一定であり、所定の許容範囲内に留まる。これにより、力率Lは、例えばおよそ0.2(または20%)の第1力率値L1を有し得、第1力率値L1から、規定された許容範囲内でのみ変動し得る。
【0068】
図4a~図4cには、例として血管36の判定の状況を非常に概略的に示す。第1時点t1でオーム抵抗Rが減少し始め、第2時点t2で第1抵抗閾値R1を下回る。第1時点t1以降、スパークパラメータFPは増加し始め、第3時点t3で第1スパークパラメータ閾値FP1を上回る。実施形態において、力率Lは、図4cに破線で示した許容範囲内に留まっており、第1力率値L1を有する定数として簡略化して示されている。この例では、第3時点t3または少なくとも第3時点t3後、評価部30は、組織タイプTTが変化し、電気外科器具12によって血管36が処置されている、この例によれば切開されていることを判定することができる。
【0069】
次の状況が発生した場合、血管36の処置、例えば切開が判定される。
(a)オーム抵抗Rが第2抵抗閾値R2、例えば1500オームを上回る。
(b)少なくとも第1最小持続時間d2、例えば50msの間、スパークパラメータFPが、第1スパークパラメータ閾値FP1よりも小さくなり得る第2スパークパラメータ閾値FP2を下回ったままである。
(c)力率Lが所定の変化持続時間d3内に過度に変化し、ひいては最小絶対値を上回る絶対値変化を有する。力率Lは、結合組織の処置中、値範囲全体にわたって100%まで変化し得、それによって大きいステップを含み得る。
【0070】
結合組織35の判定を、例として図5に示す。第4時点t4において、オーム抵抗Rは増加し、第5時点t5で第2抵抗閾値R2を上回る。スパークパラメータFPは、第4時点t4と第6時点t6との間の最小持続時間d2中、既知の抵抗変化以降、第2スパークパラメータ閾値FP2を連続的に下回る。第4時点t4後、力率Lは、大きい変動およびステップを有し、例として、変化持続時間d3内の第4時点t4と第7時点t7との間で著しく変化する(過度の増加)。したがって、第7時点t7以降に電気外科器具12によって結合組織35が処置されていると判定することができる。
【0071】
上で説明した、電気外科器具12によって処置される組織タイプTTの識別に基づいて、結合組織35と血管36との間の移行を適宜判定することができる。例として、結合組織35は、設定モードMDで処置されるものとする。さらに、移行時点txで結合組織35(一次組織タイプTT)から血管36の組織(二次組織タイプTT)への移行が判定され、その結果、評価部30によって、例示的な複数のモードパラメータPAに応じたワンエンドからの修正が自動的に開始されるものとする。適応は、制御信号CSを用いてジェネレータ23の制御によって行われる。
【0072】
少なくとも1つのモードパラメータPAの自動適応を、例として図6に概略的に示す。この実施形態において、移行時点txより前では結合組織35が処置されている。移行時点txで、血管36への移行が判定される。
【0073】
動作電圧UBがジェネレータ23によって事前設定されるものとする。結合組織35の処置のために、動作電圧UBは、振幅U1を有する高周波交流信号として事前設定される。動作電圧UBは正弦波であり、例によれば、直流成分を含まない。動作電圧UBは、少なくとも100kHzまたは少なくとも300kHzから、4MHzまでの範囲の周波数を有する(図6a)。
【0074】
結合組織(一次組織タイプTT)の処置中の正弦波動作電圧UBに応じて、振幅I1を有する正弦波動作電流IBが生じ、その動作電流IBは、動作電圧UBに対して位相シフトを有することは、図6bから明らかである。位相シフトは、結合組織35の処置中に過度に変わり得るが、単純にするためだけに図6では一定に示す。
【0075】
移行時点txで結合組織35(一次組織タイプTT)から血管36(二次組織タイプTT)への移行が判定された場合、モードパラメータセットSPのモードパラメータPAである、事前設定された動作電圧UBの変調タイプまたは波形、動作電圧UBの許容最大値、動作電圧UBの周波数または周期、および、動作電流IBの最大値がこの実施形態において変更される。
【0076】
移行時点txで、変調タイプが高周波交流信号形式から準連続波形に変更される。この実施形態では準連続波形中、高周波動作電圧UBは、パルス持続時間ton中はオンに、休止持続時間toff中はオフに切り替えられている。HF交流電圧の振幅UQは、移行時点tx前のHF交流電圧の振幅U1よりも小さくなるように事前設定されている。パルス持続時間tonまたはオン持続時間と、休止持続時間toffまたはオフ持続時間は、この実施形態において長さが等しく、特に1桁ミリ秒範囲内、例えば5ms以内である。したがって、準連続波形中に高周波交流信号がオンとオフに切り替えられる周波数は、例によれば100Hzであり、特定の実施形態に依存せず、好ましくは50Hz以上である。
【0077】
動作電流IBは、クロック制御された動作電圧UBに適応させてクロック制御され、動作電圧UBに対して一定の位相シフトを有し得る。
【0078】
図4図6の図示は、非常に概略的であり、定性的かつ例示的にのみ理解されなければならない。信号の時間的推移は、用途に応じて異なり得る。
【0079】
動作回路17の電気的動作パラメータOPのうちの1以上の絶対値および/または時間的変化の評価による、動作パラメータOPに基づく評価部30での組織タイプTTの識別は、非常に迅速に、いわばリアルタイムに行うことができる。したがって、設定モードMDのモードパラメータセットSPの少なくとも1つのモードパラメータPAを適応させるために、組織タイプTTの変化を非常に簡単かつ十分迅速に判定することができる。例えば、異なる組織タイプTTを区別するために、最大3つの動作パラメータOP、特に、動作回路17のオーム抵抗R、スパークFのスパークパラメータFP、動作回路17の力率Lを決定および評価するだけでよい。追加のまたは他の動作パラメータOPを考慮することは可能であるが、必要ない。
【0080】
本発明は、電気外科システム10と、電気外科システム10を操作するための方法とに関する。電気外科システム10は、供給装置11と、供給装置11に接続された、少なくとも1つの器具電極14を有する電気外科器具12とを備える。器具電極14を用いて、例えば器具電極14と患者の生体組織15との間にスパークFを生成することにより、組織15を処置することができる。供給装置11は、電気外科器具12および処置される組織15を含む動作回路17の少なくとも1つの動作パラメータOPを評価し、電気外科器具12には、供給装置11によって電力が供給される。処置される組織15の組織タイプTTは、少なくとも1つの動作パラメータOPの評価によって識別される。その結果、供給される電力の少なくとも1つの電気的パラメータは、電気外科器具12に供給される電力が現在処置されている組織15の組織タイプTTに対して常に最適化されるように適応させるか、または修正することができる。
【符号の説明】
【0081】
10 電気外科システム
11 供給装置
12 電気外科器具
13 ケーブル
14 器具電極
15 生体組織
16 光検出デバイス
17 動作回路
18 中性電極
19 電気ライン
23 ジェネレータ
24 電圧源
25 電流源
26 供給装置の出力部
30 評価部
31 動作インタフェース
35 結合組織
36 血管
CS 制御信号
d1 変化持続時間
d2 最小持続時間
d3 変化持続時間
F スパーク
FP スパークパラメータ
FP1 第1スパークパラメータ閾値
FP2 第2スパークパラメータ閾値
I1 動作電流の振幅
IB 動作電流
max 動作電流の最大値
L 力率
L1 第1力率値
L2 第2力率値
MD モード
OP 動作パラメータ
PA モードパラメータ
R 動作回路のオーム抵抗
R1 第1抵抗閾値
R2 第2抵抗閾値
SP モードパラメータセット
t 時間
t1 第1時点
t2 第2時点
t3 第3時点
t4 第4時点
t5 第5時点
t6 第6時点
t7 第7時点
off 休止持続時間
on パルス持続時間
tx 移行時点
TT 組織タイプ
TT 一次組織タイプ
TT 二次組織タイプ
U1 動作電圧の振幅
UB 動作電圧
UQ 準定常波形中の動作電圧の振幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】
図1
図2
図3
図4
図5
図6