(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160963
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】コンプレッサーの回転シャフトを備えるワークピースの空気ないしガスベアリングのためのリブないし溝を加工して形成する方法、及びワークピースのコンポーネントを組み付ける方法
(51)【国際特許分類】
B23B 5/00 20060101AFI20241108BHJP
B23B 5/48 20060101ALI20241108BHJP
F04D 29/053 20060101ALI20241108BHJP
F04D 25/16 20060101ALI20241108BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20241108BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20241108BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B23B5/00 Z
B23B5/48
F04D29/053 Z
F04D25/16
F04D29/28 H
F16C17/02 A
F16C17/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024072654
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】23171496.5
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510010894
【氏名又は名称】ベレノス・クリーン・パワー・ホールディング・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】レジェップ・ガシ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ショボー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ペルラン
【テーマコード(参考)】
3C045
3H130
3J011
【Fターム(参考)】
3C045BA18
3C045CA08
3C045DA03
3C045DA06
3C045EA02
3C045EA04
3H130AA13
3H130AA14
3H130AB07
3H130AB12
3H130AB27
3H130AB42
3H130AB62
3H130AB65
3H130AC11
3H130AC13
3H130BA95D
3H130BA97D
3H130DA02X
3H130DA05X
3H130DB01X
3H130DB05X
3H130DB06X
3H130DB13X
3H130DD01Z
3H130EB01D
3H130EB04D
3H130EC06D
3H130ED01D
3J011BA02
3J011BA08
3J011CA02
3J011KA02
3J011KA03
3J011LA05
3J011MA02
3J011PA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】空気ないしガス半径方向ベアリング内のシャフト上に、かつ、空気ないしガス軸方向ベアリング上に、リブないし溝を加工して形成する方法に関する。
【解決手段】ワークピースは、遠心コンプレッサーの縦軸のまわりを回転する。本発明によると、回転可能に駆動されるワーク部分上におけるすべての前記リブないし溝(24a、32)は、加工工具によって、ワークピース又は工具ホルダーを縦方向の加工方向に動かすことによって、それぞれ1回で得られる。加工工具は、ワークピースと接触する加工位置と、ワークピースと接触しない位置になるように、ワーク部分の開始箇所から終了箇所まで、往復運動をする。加工工具の往復運動は、加工ユニットにおいて設定された正弦波プログラム、及びワーク部分に形成されるリブないし溝の所望のプログラムされた構成と同期する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心コンプレッサー(1)の縦軸(A-A)のまわりを回転するように意図されたワークピース上にリブないし溝を加工して形成する方法であって、
前記ワークピースには、シャフト(7)があり、
電気モーターの、少なくとも1つの永久磁石(16a)を備えるローター構造(16)が前記シャフト(7)のまわり又は前記シャフト(7)内に取り付けられ、かつ/又は空気ないしガス軸方向ベアリング(24)が前記シャフト(7)の一端に取り付けられ又は前記シャフト(7)の一部を形成して、前記シャフト(7)が回転駆動され、
前記遠心コンプレッサー(1)は、さらに、流体の入口(5)と圧縮流体の出口(6)があるケーシング(2)と、前記ケーシング(2)における前記シャフト(7)の2つの端に取り付けられた、前記ワークピースの第1のコンプレッサー車(8)及び前記ワークピースの第2のコンプレッサー車(10)と、前記シャフト(7)の第1の端に取り付けられた前側空気ないしガス半径方向ベアリング(18)と、前記シャフト(7)の第2の端に取り付けられた後ろ側空気ないしガス半径方向ベアリング(22)とを備え、
前記方法は、前記ワークピースを受けるように構成しており前記ワークピースの少なくとも1つの部分にリブないし溝を加工して形成するための工具がある工具ホルダー(110)を備える加工ユニット(100)において行われ、
回転可能に駆動される、前記シャフト(7)のワーク部分上におけるすべての前記リブないし溝(24a、32)は、前記加工工具によって、前記ワークピースの前記シャフト(7)又は前記工具ホルダー(110)を縦方向の加工方向に動かすことによって、それぞれ1回で得られ、
前記加工工具は、ワークピースと接触する加工位置と、ワークピースと接触しない位置になるように、前記ワーク部分の開始箇所から終了箇所まで、往復運動をし、
前記加工工具の前記往復運動は、前記加工ユニットにおいて設定された正弦波プログラム、及び前記ワーク部分に形成されるリブないし溝の所望のプログラムされた構成と同期され、
前記シャフト(7)の第1の端の第1のワーク部分上におけるすべてのリブないし溝(32)は、前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記加工工具の往復運動、及び前記回転シャフト(7)の縦方向の加工方向の変位によって、前記第1の部分の開始箇所から前記第1の部分の終了箇所まで、それぞれ1回で得られ、
前記シャフト(7)の前記第2の端の第2のワーク部分上におけるすべてのリブないし溝(32)は、前記加工工具の往復運動、及び前記回転シャフト(7)又は前記工具ホルダー(110)の縦方向の加工方向における変位によって、前記第2の部分の開始箇所から前記第2の部分の終了箇所まで、それぞれ1回で得られる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ワークピースは、炭化タングステン又はセラミックスによって作られたシャフト(7)であり、
前記加工工具(120)のヘッドは、前記回転シャフト(7)の第1の加工部分及び第2の加工部分上にてリブないし溝を加工して形成するために、ダイヤモンドによって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リブないし溝(32)の加工中に、前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記シャフト(7)の第1の端の第1のワーク部分に沿った中間点にて、前記リブないし溝(32)の向きが変わって、第1の加工部分の長さにわたってV字形の溝を得て、
前記コンプレッサーの動作中に前記シャフト(7)が限界速度を超えて回転していると、前記第1の部分に配置された前記前側半径方向ベアリング(18)に空気ないしガスの圧力を発生させて、前記シャフト(7)が前記前側半径方向ベアリング(18)と機械的に接触しないようにする
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リブないし溝(32)の加工中に、前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記シャフト(7)の第2の端の第2のワーク部分に沿った中間点にて、前記リブないし溝(32)の向きが変わって、第2の加工部分の長さにわたってV字形の溝を得て、
前記コンプレッサーの動作中に前記シャフト(7)が限界速度を超えて回転していると、前記第2の部分に配置された前記後ろ側半径方向ベアリング(22)に空気ないしガスの圧力を発生させて、前記シャフト(7)が前記後ろ側半径方向ベアリング(22)と機械的に接触しないようにする
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ワークピースは、ディスクの形態である空気ないしガス軸方向ベアリング(24)であり、
前記ディスクの第1の面上におけるすべてのリブないし溝をそれぞれ1回で形成するように前記加工工具(120)を作動させるように、前記リブないし溝(24a)及びその構成が前記加工ユニット(100)においてプログラムされ、この形成は、前記加工工具又は前記回転ディスクを前記ディスクの周部から前記リブないし溝の環状領域の底部まで又は逆に、単一の加工方向に動かすことによって、かつ、前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記加工工具(120)の往復運動によって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記加工工具又は前記回転ディスクを、前記ディスクの周部から環状領域の底部まで又は逆に、単一の加工方向に動かすことによって、かつ、前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記加工工具(120)の往復運動によって、前記ディスクの第2の面におけるすべてのリブないし溝(24a)をそれぞれ1回で形成する
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
すべての前記リブないし溝(24a)は、2つの面において同じ向きを有し又は2つの異なる向きを有するらせんの形態であるように形成されて、
前記シャフトを回転させるときに溝を介して空気の薄い層を発生させて、前記遠心コンプレッサー(1)の動作中に縦方向にて十分に良好にセンタリングされた位置に前記シャフトを保持する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シャフト(7)の前記第1の部分及び/又は前記第2の部分上にあるリブないし溝を形成する前又は後に、前記ディスクの1つの面又は2つの面上にあるすべてのリブないし溝(24a)が加工されて形成される
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によってワークピース(7、24)上にてリブないし溝を加工して形成し、前記ワークピースのコンポーネントを組み付ける方法であって、
前記コンポーネントは、前記シャフト(7)の一端に取り付けられたディスクの形態である前記空気ないしガス軸方向ベアリング(24)が取り付けられたシャフト(7)であり、
前記シャフト(7)上に又はシャフト(7)内にて、電気モーターの少なくとも1つの永久磁石(16a)を備えるローター構造(16)が、前記シャフト(7)の前記第1の部分と前記第2の部分の間に配置され又は取り付けられ、
前記ディスクの1つの面又は2つの面上におけるすべてのリブないし溝(24a)は、前記シャフト(7)の前記第1の部分及び/又は前記第2の部分上におけるリブないし溝の形成の後であって、前記シャフト(7)から形成された前記第1の部分と前記第2の部分の間における前記シャフトのまわり又は前記シャフト内に少なくとも1つの永久磁石(16a)を備える前記ローター構造(16)の配置又は取り付けの前に、形成される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によってワークピース(7、24)上にてリブないし溝を加工して形成し、前記ワークピースのコンポーネントを組み付ける方法であって、
前記コンポーネントは、前記シャフト(7)の一端に取り付けられたディスクの形態である前記空気ないしガス軸方向ベアリング(24)が取り付けられたシャフト(7)であり、
前記シャフト(7)上に又はシャフト(7)内にて、電気モーターの少なくとも1つの永久磁石(16a)を備えるローター構造(16)が、前記シャフト(7)の前記第1の部分と前記第2の部分の間に配置され又は取り付けられ、
前記電気モーターの、少なくとも1つの永久磁石(16a)を備える前記ローター構造(16)は、前記リブないし溝が前記シャフト(7)の前記第1の部分と前記第2の部分上にて形成される前に、前記シャフト(7)の前記第1の部分と前記第2の部分の間にて配置され又は取り付けられ、
前記シャフト(7)の前記第1の部分及び/又は前記第2の部分上にあるリブないし溝を形成した後に、前記ディスクの1つの面又は2つの面上にあるすべてのリブないし溝(24a)が加工されて形成される
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
遠心コンプレッサー(1)の縦軸(A-A)のまわりを回転するように意図されており請求項1に記載の方法によって形成されたリブないし溝があるように意図されているワークピースであって、
前記ワークピースには、少なくとも1つのシャフト(7)があり、
電気モーターの、少なくとも1つの永久磁石(16a)を備えるローター構造(16)が前記シャフト(7)のまわり又は前記シャフト(7)内に取り付けられ、かつ/又は空気ないしガス軸方向ベアリング(24)が前記シャフト(7)の一端に取り付けられ又は前記シャフト(7)の一部を形成して、前記シャフト(7)が回転駆動される
ことを特徴とするワークピース。
【請求項12】
前記ローター構造(16)は、前記シャフト(7)の、リブないし溝が形成された前記第1の部分と前記第2の部分の間の、前記シャフトの外面に配置される
ことを特徴とする請求項11に記載のワークピース。
【請求項13】
前記ローター構造(16)は、前記シャフト(7)に固定されライニング(16b)で覆われた一又は複数の永久磁石(16a)を備え、
2つのフランジ(16c)が、又は1つのフランジ(16c)及び前記シャフト(7)にある肩部が、前記ライニング(16b)の横方向の端に取り付けられ又は配置されて、ローター(16)が高速で遠心力に耐えることを可能にする
ことを特徴とする請求項12に記載のワークピース。
【請求項14】
前記フランジ(16c)は、前記シャフト(7)と前記ライニング(16b)の間にて接合され又は収縮される
ことを特徴とする請求項11に記載のワークピース。
【請求項15】
前記ローター構造(16)は、管状の形態で前記シャフト(7)の内部に配置され、
前記一又は複数の永久磁石(16a)は、前記シャフト(7)内で収縮し、ロッド(11)上に配置され又は2つの端ロッド(11b、11d)に取り付けられる
ことを特徴とする請求項13に記載のワークピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速遠心流体コンプレッサーの回転シャフトを備えるワークピースの空気ないしガスベアリングのためのリブないし溝を加工して形成する方法、及びワークピースのコンポーネントを組み付ける方法に関する。このコンプレッサーは2段式コンプレッサーであり、流体の入口と圧縮流体の出口があるケーシングを備え、縦軸(主軸)のまわりを回転可能に取り付けられたシャフトを囲む。第1のコンプレッサー車と第2のコンプレッサー車が、シャフトに背中合わせに取り付けられ、第1のコンプレッサー車は第1の圧縮段を構成し、第2のコンプレッサー車は第2の圧縮段を構成する。遠心コンプレッサーは、さらに、第1のコンプレッサー車と第2のコンプレッサー車の間に配置され、シャフトを回転させるように構成しているモーター、好ましくは、同期電気モーターを備える。少なくとも1つの空気ないしガス軸方向ベアリングがシャフトの一端に取り付けられ、前側半径方向空気ないしガスベアリングがシャフトの第1の端に取り付けられ、後ろ側半径方向空気ないしガスベアリングがシャフトの第2の端に取り付けられる。
【0002】
本発明は、さらに、ワークピースのコンポーネントを加工及び/又は組み付けるための方法によって得られるワークピースに関する。
【背景技術】
【0003】
流体コンプレッサーは通常、ターボコンプレッサー又は遠心コンプレッサーと呼ばれる。これらは、永久磁石同期モーター(ブラシレスモーター)を形成するステーターとローターによって構成している。100000~500000rpmのような非常に高速な速度に達することがある。モーターはコンプレッサー車を高速で駆動し、コンプレッサー車は流体を圧縮する。前記流体は、空気、ガス、冷媒、又はその他の適切な流体であることができる。2つのコンプレッサー車を用いることで、流体は2倍圧縮される。
【0004】
これらのコンプレッサーは、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、水素自動車のような冷媒ガスを用いる移動式HVAC(暖房、換気、空調)システムにおいて用いることができる。これらのコンプレッサーは、ヒートポンプのような冷媒ガスを用いた固定システムでも用いることができる。
【0005】
これらのコンプレッサーは、典型的には、圧縮対象流体を循環させるための第1の回路と、コンプレッサーを冷却するために、特に、一方ではモーターと、モーターシャフトを支持する空気ないしガスベアリングとを冷却し、他方では電子コンポーネントを冷却するために、用いられる冷却液を循環させるための第2の回路とを備える。特に、モーターを高速で回転させるとモーターがかなり加熱されるため、損傷を防ぐためにコンプレッサーの部品を冷却する必要がある。これらの回路は、通常、少なくとも冷却回路に関するかぎり、コンプレッサー自体の内部に設けられる。コンプレッサーの駆動中、特に高速で冷却ガス又は空気の流れを容易にするための規定はなく、これは課題となる。また、ローターシャフトを支える空気ないしガスベアリングは、ローターシャフトを摩擦なく支持するように設計されていないため、ローターが高速で回転しているときに大きな発熱が発生し、別の課題になる。
【0006】
また、空気ないしガスの流れのために空気ないしガスベアリングに溝ないしリブが作られ、圧力と冷却が発生することが知られている。しかし、溝はレーザー加工によって特定の配置なしに作られ、これは加工時間が長すぎてそのコストが高すぎるという課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、各空気ないしガス半径方向ベアリング内のワークピースのローターシャフト上に、かつ、シャフトに取り付けられシャフトの一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリング上に、溝ないしリブを迅速に形成する方法によって、上記の様々な課題を解決することを目的の1つとする。シャフトにおける前記溝は、コンプレッサーのシャフトが各ベアリング内で高速で回転するときに重力に打ち勝ち、かつ、回転するロータシャフトが半径方向ベアリングにおいて空気ないしガス流に、機械的に接触せずに、保持されることを可能にして、したがって、摩擦が発生しないように構成している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の状況を鑑みて、本発明は、独立請求項1の特徴を有する、高速流体コンプレッサーの回転シャフトを備えるワークピースの空気ないしガスベアリングのためのリブないし溝を加工して形成する方法に関する。
【0009】
従属請求項2~8に、本方法のいくつかの特定のステップについて定めている。
【0010】
上記の状況を鑑みて、本発明は、さらに、独立請求項9及び10に記載の、回転シャフトを備えるワークピース上にリブないし溝を加工して形成する方法、及びワークピースのコンポーネントを組み付ける方法に関する。
【0011】
上記の状況を鑑みて、本発明は、さらに、独立請求項11に記載の、遠心コンプレッサーの縦軸のまわりを回転するように意図されており前記加工方法に従って加工されて形成されたリブないし溝があるように意図されているワークピースに関する。
【0012】
従属請求項12~15に、前記ワークピースのいくつかの特定の実施形態について定めている。
【0013】
加工ユニットにおけるコンプレッサーの回転シャフトを備えるワークピース上にリブないし溝を加工して形成する方法の1つの利点は、回転シャフトを備えるワークピースのワーク部分の開始箇所から終了箇所まで、往復運動をする加工工具によって回転駆動されるワーク部分上で、すべてのリブないし溝がそれぞれ1回で得られることである。これを行うために、この加工工具の往復運動は、加工ユニットにおいて設定される正弦波プログラムと、そして、ワーク部分に形成されるリブないし溝の所望の構成と、同期される。
【0014】
したがって、正弦波関数のおかげで、スピンドル又はシャフトの回転と、加工工具又はスピンドルの縦方向の運動との間の同期を達成することが可能になる。正弦波関数の周波数と振幅は、溝の形状、溝の数、シャフトの回転速度、及び縦方向の変位の速度に応じて選択される。
【0015】
また、回転シャフトを備えるワークピースの加工中に、ワークピース、又は加工工具を担持する工具ホルダーも、加工工具が往復運動を行う間に、縦方向の加工方向に変位する。
【0016】
この加工工具の往復運動は、加工ユニットがどのようにプログラムされているかに従って、振動周波数を変化させて加工工具の往復運動を高速化又は減速させて前記所望のリブないし溝を得ることができるような圧電発振器と比較される。この往復運動の間に、加工工具は、ワークピースと接触している加工位置にあることもあれば、別の時間にはワークピースと接触しない位置にあることもある。
【0017】
ワークピースは、主に、シャフトを備え、このシャフトは、コンプレッサー車と空気ないしガス半径方向ベアリングの間において、このシャフトを回転駆動する電気モーターのローター構造に、又はシャフトの第1の端に取り付けられ又はシャフトの一部を形成する少なくとも1つの空気ないしガス軸方向ベアリングに、取り付けられる。空気ないしガス軸方向ベアリングのディスクの、1つの面、又は好ましくは両面、上に、リブないし溝を形成することができる。代わりに、軸方向ディスクに対向する静的な軸方向ベアリングの1つの面上に、リブないし溝を形成することもできる。
【0018】
この加工ユニットにおいてリブないし溝を加工して形成する方法の利点の1つは、空気ないしガス半径方向ベアリングのためのシャフトの各ワーク部分上に、1分未満で非常に迅速に非常に正確に、リブないし溝が形成されることである。同じことが、回転駆動される空気ないしガス軸方向ベアリングのディスクの1つの面又は両面上に形成される溝ないしリブにも当てはまる。加工工具は、シャフト、又は空気ないしガスベアリングの材料よりも硬い。
【0019】
上で説明したように、加工ユニットを、正弦波プログラムに従って加工工具と同時に同期回転するようにプログラムして、各空気ないしガス半径方向ベアリングのシャフト及び空気ないしガス軸方向ベアリングの各ワーク部分上に、リブないし溝を得ることができる。
【0020】
このようなリブないし溝は、好ましくは、シャフト上の各加工部分の中心において各リブないし溝の向きが変わるV字形に加工され、このような加工のおかげで、高速で回転するシャフトは、機械的接触なしで、コンプレッサーにおける空気ないしガス半径方向ベアリング内に保持することができる。したがって、シャフトは、シャフトが高速回転する結果として溝ないしリブ内を通り抜ける空気ないしガスの圧力によって、実質的に摩擦なしで、各半径方向ベアリング内に保持される。6000rpmという低い回転数から、各空力半径方向ベアリングにおける空気ないしガスの圧力は、シャフトが静的半径方向ベアリングと機械的に接触しなくなって、機械的な摩擦をいずれも回避するように構成している。当然、シャフトの回転が速くなるほど、半径方向ベアリング内の空気圧が高くなり、空気ないしガスの摩擦が自動的に大きくなる。
【0021】
正弦波プログラム又は関数、及び溝ないしリブの所望の構成に従って、実質的に前記リブの上に配置される各静的半径方向ベアリングの内側の半分においてシャフト上における溝ないしリブの向きが逆になるように、加工ユニットと加工工具によって、溝ないしリブが加工されて形成される。これによって、シャフトの回転が速くなるほどますます大きくすることができるような空気ないしガスの圧力が発生する。
【0022】
このような高速遠心流体コンプレッサーは、空気ないしガス半径方向ベアリング上におけるリブないし溝の形成のおかげで、過度な加熱がなく、非常に高速で回転することができる。
【0023】
また、第1のコンプレッサー車と第1の半径方向ベアリングの間に、軸方向ベアリングが設けられる。軸方向ベアリングのディスクの前面と後ろ面上の周部に、らせんの形態の溝ないしリブが形成される。シャフトが回転するに従って、シャフトを縦方向に良好にセンタリングされた位置に保持するように、溝によって空気の薄い層が発生する。
【0024】
添付の図面を参照しながら本発明の一実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴を一層明確に理解することができる。この説明は、例として与えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る高速遠心コンプレッサーについての縦軸A-Aに沿った縦断面の図を示している。
【
図2】
図2aは、本発明に係る、コンプレッサー車があるシャフト、空力軸方向及び半径方向ベアリング、及び一又は複数の永久磁石を備えるローター構造についての、縦軸A-Aに沿った縦断面図を示している。
図2bは、本発明に係る、第1のコンプレッサー車及び軸方向ベアリングの側からの正射影図を示している。
【
図3】本発明に係る、シャフトの外面の半径方向の変位と、一又は複数の永久磁石の内面の半径方向の変位との差を表すグラフを示している。
【
図4】本発明に係る、シャフトの上に示している各静的半径方向ベアリングにある溝ないしリブを示している
図2a及び2bのアセンブリーの3次元図である。
【
図5】本発明に係る、コンプレッサー車があるシャフトと、シャフトと一体的な少なくとも軸方向のベアリングと、シャフトの内側に配置された一又は複数の永久磁石を備えるローター構造とについての、縦軸A-Aに沿った、縦断面の図の第1の代替的実施形態を示している。
【
図6】本発明に係る、コンプレッサー車があるシャフトと、シャフトと一体的な少なくとも軸方向のベアリングと、シャフトの内側に配置された一又は複数の永久磁石を備えるローター構造とについての、縦軸A-Aに沿った、縦断面の図の第2の代替的実施形態を示している。
【
図7】空気ないしガス軸方向ベアリングの正射影図である。
【
図8】本発明に従って、静的半径方向ベアリングが配置されたシャフトの一端に配置されたリブないし溝についての縦断面の図である。
【
図9】本発明に係る、シャフトの2つの端に溝ないしリブが配置され、その上に静的空気ないしガス半径方向ベアリングがそれぞれ配置されているシャフトの図である。
【
図10】本発明に係る、遠心コンプレッサーのシャフト上に溝ないしリブを加工して形成するための加工ユニットの概要を示している。
【
図11】本発明に従って、空気ないしガス半径方向ベアリングのためにシャフト上に形成された精密リブのグラフである。
【
図12】本発明に従って、遠心コンプレッサーの空気ないしガスベアリング上に溝ないしリブを加工して形成するための加工ユニットの概要を三次元的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において、従来技術においてよく知られている遠心コンプレッサーの一部を形成するすべてのコンポーネントは、簡潔にしか説明していない。なぜなら、本発明は、本質的に、2つの静的な空気ないしガス半径方向ベアリング又は空気ないしガス軸方向ベアリングによってそれぞれ覆われるようにシャフトの2つの部分にリブないし溝を形成する方法に関係するためである。
【0027】
図1は、高速遠心コンプレッサー1についての縦軸A-Aに沿った断面を示している。遠心コンプレッサー1は、ケーシング2内に、前面2bと後面2cを通り抜ける縦軸A-Aのまわりを回転するように取り付けられた、炭化タングステン又はセラミックスによって作られたシャフト7と、シャフト7の各端において背中合わせに取り付けられる第1の遠心コンプレッサー車8と第2の遠心コンプレッサー車10とを備え、前記第1のコンプレッサー車8は、第1の圧縮段を構成し、前記第2のコンプレッサー車10は、第2の圧縮段を構成する。特に、この実施形態において、シャフト7は、中空であり、ねじ山付きロッド11を囲み、このシャフト7の各端にてコンプレッサー車8、10の一方がねじ込まれ、コンプレッサー車を容易に取り付けて取り外すことが可能になる。したがって、2つのコンプレッサー車8及び10は、同じシャフト7上にて駆動され、このことによって、エネルギー効率が改善し、ギアボックスの必要性がなくなる。コンプレッサー車8及び10の後ろ側には、コンプレッサー内の圧力を制御し軸力を平衡化するためのラビリンスシールがある。
【0028】
ケーシング2は、さらに、電気モーターを囲み、この電気モーターは、好ましくは同期モーターであり、第1のコンプレッサー車8と第2のコンプレッサー車10の間に配置され、シャフト7を回転させるように構成している。モーターは、ステーター14とローター構造16を備え、これらは、互いに相互作用して、少なくとも1つの永久磁石16aと同期電気モーターを形成する(ブラシレスモーター)。特に、ステーター14は、コイル14aと2つのフェライト要素14bによって形成され、これらは、ケーシング2に対して固定されるように取り付けられる。ローター構造16は、例えば接合によって、シャフト7と一体的にされた一又は複数の永久磁石16aを備え、ライニング16bによって覆われている。フランジ16cは、ライニングの側端に取り付けられ(例えば、接合によって)、磁石が高速にて遠心力に耐えられることを確実にする。
【0029】
なお、遠心コンプレッサーの縦軸A-Aのまわりを回転するように意図されたワークピースは、少なくとも1つのシャフト7と空気ないしガス軸方向ベアリング24を備え、前記シャフト7上にて又はその内部にて、電気モーターの少なくとも1つの永久磁石16aを備えるローター構造16が取り付けられて、シャフトが縦軸A-Aのまわりを回転するようにシャフトを駆動し、前記空気ないしガス軸方向ベアリング24は、シャフト7の一端に取り付けられ、又はシャフト7の一部を形成する。
図2aに示しているように、ワークピースは、さらに、シャフト7の2つの端に取り付けられた第1のコンプレッサー車8と第2のコンプレッサー車10と、シャフト7の第1の端に取り付けられた前側空気ないしガス半径方向ベアリング18と、シャフト7の第2の端に取り付けられた後ろ側空気ないしガス半径方向ベアリング22とを備える。
【0030】
図10及び12を参照しながら下で説明するように、この加工方法は、ワークピース、特にベアリング24を備えるシャフト7、を受けるように構成している加工ユニット100において行われ、この加工ユニット100は、ワークピースのシャフト7の少なくとも1つの部分においてリブないし溝を加工して形成するための工具とともに、工具ホルダー110を備える。
【0031】
シャフト7は、少なくとも1つの前側半径方向ベアリング18、1つの後ろ側半径方向ベアリング22、及び1つの軸方向ベアリング24を利用して、ケーシング2内にてその縦軸A-Aのまわりを回転することができるように、取り付けられる。遠心コンプレッサー1は、前側半径方向ベアリング18を担持するための前側半径方向ベアリング支持体26と、後ろ側半径方向ベアリング22を担持するための後ろ側半径方向ベアリング支持体28とを備え、これらはそれぞれモーターの前側と後ろ側にて、シャフト7のまわりに配置されるように構成している。また、後ろ側において、後ろ側半径方向ベアリング支持体28と後ろ側カバー3cの間にボリュート29が設けられる。ボリュート29には、圧縮後に接線方向の流体出口6に通じるオリフィスがある。また、第1のコンプレッサー車8と前側半径方向ベアリング支持体26の間にて、シャフト7のまわりに配置されるように構成している軸方向ベアリング24を担持するために、軸方向ベアリング支持体30が設けられる。軸方向ベアリングをモーターの後ろ側に設けることができることは明らかである。
【0032】
これらのベアリングは、摩擦をほとんど発生させないようにするために、非接触の空力タイプのベアリングである。このようなベアリングは、潤滑を必要とせず、メンテナンスもほとんど必要ない。特に、
図2a、2b及び4を参照すると、軸方向ベアリング24は、空力ベアリングであり、ディスクによって構成しており、このディスクには、その面の少なくとも1つに、第1の溝24aがあり、この第1の溝24aは、好ましくは周部における環状領域にわたって渦巻き状であり、空気の薄い層を発生させるように構成している。好ましくは、軸方向ベアリング24には、下において説明している加工プロセスによって得られる、軸方向ベアリング24のディスクの前面と後ろ面の周部において、好ましくは渦巻き状である、溝ないしリブ24aがある。溝ないしリブ24aの向きは、前面が後ろ面にて、異なることができ、また、同じであることができる。溝ないしリブ24aがある軸方向ベアリング24は、前面と後ろ面からの空気の薄い層を発生させることによって、回転シャフト7を縦方向にセンタリングし続ける。前側半径方向ベアリング18と後ろ側半径方向ベアリング22は、空力ベアリングであり、シャフト7には、シャフト7が空気ないしガス半径方向ベアリング内で回転するときに空気ないしガスの薄い層を発生させるように構成しており前側半径方向ベアリング18と後ろ側半径方向ベアリング22に対向する第2の溝ないしリブ32がある。
【0033】
図2a、2b及び4において、第1の遠心コンプレッサー車8と第2の遠心コンプレッサー車10は、依然として、シャフト7の各端において背中合わせに取り付けられていることがわかる。シャフト7の2つの端において、一端には、加工されたリブないし溝32の第1の部分があり、他端には、加工されたリブないし溝32の第2の部分がある。少なくとも1つの永久磁石16aを備えるローター構造16は、電気モーターの中心位置においてシャフトに固定されている。
【0034】
また、接合された、シャフト7の内側にて収縮した、又はライニング16bに配置された、一又は複数の直径方向に磁化された永久磁石16aを備えるローター構造16を有することも可能である。一又は複数の永久磁石16aは、各磁石を圧縮して遠心力に起因するオルソラジアルな引きを補償するために、できるだけ大きい剛性と干渉性を有するようにライニング16b内にて収縮させることができる。
【0035】
なお、シャフト7と、このシャフト7の外側に取り付けられた一又は複数の磁石16aとの間のク後ろ側ランスは、高速かつ高温で磁石16aがシャフト7に対してクランプされることを防ぐのに十分でなければならない。このような状態は、磁石16aの内側を大きな二軸張力の状態にし、したがって、磁石16aが破損してしまうリスクを高めてしまう。特に、各磁石16aの内面の半径方向の変位は、半径方向における磁石の負の熱膨張係数に起因するシャフト7の外面の半径方向の変位よりも小さくすることができる。このことを
図3の斜線領域によって示しており、ここで、ローター構造16の急な減速の終わりのときであってまだ高温のときに、磁石16aの内面がシャフト7の外面に近づく。
【0036】
図3は、本発明に係る、シャフト7の外面の半径方向の変位と、一又は複数の永久磁石16aの内面の半径方向の変位との差を示しているグラフである。xは磁石の直径磁化の方向に対応し、yは加熱中に磁石が半径方向に収縮する直交方向に対応する。接合によって取り付ける場合、この差は、シャフト7と永久磁石16aの間の接着剤によって弾性的に収容される半径方向の変形に対応する。
【0037】
接着剤が高温かつ高速での引張応力下で半径方向の変形に耐えることができる場合(
図3に示している10μmまで)、シャフト7と磁石16aの間に接合を形成することができる。この場合、接着剤が動作温度(例えば、150℃で)で反ったり、弾性率が数桁低下したりするときに、耐荷重の役割を果たさなくなり、有用ではなくなる。
【0038】
図2a及び4において、フランジ16cがライニング16bの側端に取り付けられて、遠心力を受ける、磁石16a、又はシャフト7上にて平行に並んだ複数の磁石16aの機械的完全性を確実にする。フランジ16cは、シャフト7とライニング16bの間で接合されたり収縮したりすることができる。
【0039】
シャフト7上のフランジ16c、ライニング16bにおけるフランジ16c、及び磁石16a上のライニング16bの収縮嵌まり合い(材料と干渉の選択)を最適化することによって、接着剤を含まないアセンブリーが達成される。したがって、磁石16a又は各磁石16aからフランジ16cを介してシャフト7へと、トルクが伝達される。接着剤を含まないアセンブリーは、特に、接着剤接合によって作られるアセンブリーにおいて第1の曲げモードの周波数が回転周波数の方へと危険なほど減少するような高速かつ高温において、接着剤接合よりも剛性が優れていることを確実にする。
【0040】
ライニング16b又はケーシングは、理想的には炭素繊維によって作ることができ、あるいは代わりに、チタン合金又はモリブデン合金によって作ることができる。フランジ16cは、理想的にはチタン合金によって作られ、あるいは代わりに、非磁性鋼によって作られる。ライニング16bにおけるフランジ16cの直径的干渉は、一又は複数の磁石16a上のライニング16bの直径的干渉と理想的には同じであり、又はわずかに小さい。
【0041】
なお、ライニング16bとフランジ16cが同じ材料によって作られている場合、特に永久磁石構造16aをシャフト7の外側に取り付けるために、ライニング16bを2つのフランジ16cのうちの少なくとも1つと組み合わせて単一の部品を形成することができる。また、フランジ16cを、シャフト7に形成された肩部(フランジのための収縮嵌まり合い当接体、磁石の軸方向のポジショニング)によって置き換えることができる。
【0042】
下において説明するように、特に
図10において、シャフトを回して得られる溝ないしリブを裸の状態でシャフトに形成することができるが、それにもかかわらず、ライニング16b、永久磁石16a及びフランジ16cからなるアセンブリーがシャフト7に取り付けられた後にそれらの溝ないしリブを形成することが好ましい。これによって、
図2aの断面に示している2つの空力ベアリング18及び22のための最良の幾何学的許容差があることを確実にする。
【0043】
ライニング16b、永久磁石16a及びフランジ16cからなるアセンブリーがシャフト7に取り付けられる前又は後に、シャフトに対するレーザーアブレーションによって得られる溝ないしリブを形成することができるが、磁石16aがシャフト7の内側にある場合に軸方向ディスク24がシャフト7上に配置されて収縮した後に、前記溝ないしリブを形成することが好ましい。いずれにせよ、レーザーアブレーションの前に、ベアリング(及び随意的に、仕上げ前に組み付けられた場合に軸方向ディスクを含むアセンブリー)の最終的な形状を得ることが必要である。
【0044】
シャフト7に取り付けられる前に磁石16aを磁化することができるが、ローター構造16を取り付け、測定し、平衡化した後で磁石16aを磁化して、これらの工程を容易にすることが好ましい。
【0045】
図5に、本発明に係る、コンプレッサー車8及び10があるシャフト7と、シャフト7と一体的な少なくとも軸方向のベアリング24と、シャフト7内に配置されている一又は複数の永久磁石16aがあり管状であるロータ構造16についての縦軸A-Aに沿った縦断面図によって第1の代替的実施形態を示している。この場合、前記一又は複数の永久磁石16aは、シャフト7の内側で収縮していたり、半径方向ク後ろ側ランスを小さくして取り付けられたりしている。なお、ロッド11とシャフト7の内側にて取り付けられた一又は複数の磁石16aの間のク後ろ側ランスは、磁石16aが高速かつ高温でロッド11にクランプされることを防ぐのに十分大きくなければならない。高速や高温であると、磁石16aの内部は二軸張力が高い状態となり、したがって、破損のリスクが高まる。ロッドの2つの端11b及び11dにはねじ山があって、まず、第1のコンプレッサー車8の雌ねじ8bを、次に、第2のコンプレッサー車10の雌ねじ10bを、ロッドにねじ込むことができる。シャフト7と磁石16aの間に半径方向の遊びがある場合に肩部11cが形成されて、コンプレッサー車8がねじ込まれた後に磁石16aとねじ山付きロッド11を軸方向に固定する。コンプレッサー車10を締め付けることによって、ねじ山付きロッド11とシャフト7が互いに軸方向に固定される。
【0046】
磁石16aがシャフト7の内側にあり、収縮嵌まり合いを可能にするにはシャフト7の材料が脆弱すぎる場合、磁石16aは、接合によって、又は引張応力下に置かれたロッドを介した軸方向クランプによって、シャフト7に固定される。また、シャフトにおいて直接ねじ山を加工して形成することによって、固体磁石において軸方向クランプ力を発生させて、中空シャフト7に磁石を保持する車をねじ込む。
【0047】
したがって、ロッド11bの肩部と、車8の管状端8bの間で、中空の磁石がわずかに軸方向に圧縮される。車8をきつくすると、ロッド11と磁石16aの間の熱膨張の相違が補償される。車10をきつくすると、ロッド11とシャフト7の間の熱膨張の相違が補償され、トルクを伝達するために十分な接着性が維持される。
【0048】
図6は、コンプレッサー車8及び10があるシャフト7と、シャフト7と一体的な少なくとも軸方向のベアリング24と、一又は複数の永久磁石16aが中空シャフト7内に配置されているローター構造16についての、縦軸A-Aに沿った縦方向の第2の代替的実施形態を示している。この代替的実施形態は、ほぼ固体の磁石16aをシャフト7の内側にて組み付けるための、接合及び軸方向クランプを組み合わせたものである。これを行うために、一端にのみねじ山があり他端に肩部が形成されたロッド11b及び11dは、それらの滑らかな部分にて、ほぼ固体の磁石16a内にて接合され、反対側では車にねじ込まれる。この結果、磁石は軸方向の牽引力を受けて、車がシャフト7に予荷重をかけられて、接着によってトルクが伝達されることを可能にする。
【0049】
図7は、空気ないしガス軸方向ベアリング24の一実施形態を示している。この
図7に正射影図で示しているように、特定の深さのリブないし溝24aが、ディスクの周部から始まりディスクの中心の方へと続く環状領域に形成されている。リブないし溝24a及びその構成は、特に加工ユニットにおいて、加工工具を作動させて、すべてのリブないし溝をそれぞれ1回で形成するようにプログラムされている。すなわち、例えばディスクの周部からリブないし溝の環状領域の底部まで、工具ホルダー又は回転ディスクを単一の加工方向に動かすことによって行う。例えば、片面上のディスクの周部から始まって、正弦波プログラム又は関数に従って所与の速度でディスクを回転させる加工ユニットと同期する、加工工具の往復運動によって、溝部分が徐々に形成される。
【0050】
このプログラムと、加工工具の制御された往復運動と組み合わさって、すべての溝24aそれぞれの開始は、ディスクの回転及び加工工具の往復運動によって達成される。これは、次の溝ないしリブ部分に対して、第1の溝部分から環状領域の端ないし底部まで継続的に繰り返される。このようなディスク24上に異なるリブないし溝24aを形成する方法において、ディスクの溝付き面当たりの加工時間は1分未満であり、これは、レーザービームを用いる以前の加工技術とは大幅に短い。
【0051】
図8は、シャフト7の第1の端において形成されたリブないし溝32の第1の部分を縦断面の図によって示しており、本加工方法によって形成されたリブないし溝32の第1の部分に第1の空気ないしガス半径方向ベアリング18が接している様子を示している。
【0052】
上記の軸方向ディスク上における溝ないしリブの形成と同様に、これらの溝ないしリブ32の加工中に、シャフト7は、加工ユニットによってその縦軸のまわりを回転され、その縦軸に沿って加工方向に動く。工具ホルダー内に配置された加工工具は、加工ユニットがどのようにプログラムされるかに応じた周波数で、加工されるシャフトの第1の部分とは反対側に、往復運動をする。なお、シャフト7を縦方向に動かす代わりに、工具ホルダーを縦方向の加工方向に動かすことができる。すべてのリブないし溝32は、回転駆動されるシャフトの第1の端の第1のワーク部分において加工工具によってそれぞれ1回で得られ、この加工工具は、シャフト7の第1のワーク部分の開始箇所から終了箇所まで、往復運動を行う。
【0053】
加工ユニットは、正弦波プログラムに従ってシャフト7を加工工具と同時に同期回転させて、前側ガス半径方向ベアリング18のために、シャフト7の第1のワーク部分上のリブないし溝32の所定の構成を得る。例えば、第1の端と同じ側での1つの加工方向のみにおけるシャフト7の第1のワーク部分の開始箇所からシャフト7の第1の端の第1の部分の終了箇所まで、すべてのリブないし溝32がそれぞれ1回で加工されて形成されて、加工時間が大幅に短縮される。
【0054】
したがって、シャフト7の回転と、加工工具又はシャフト7の縦方向の変位の間の同期を正弦波関数が実際に達成すると判断することができる。正弦波関数の周波数と振幅は、溝32の形状と、溝32の数と、シャフトの回転速度と、縦方向の変位の速度とに応じて選択される。
【0055】
加工ユニットにおいて、シャフト7の第1の端の第1の部分上に形成されるリブないし溝32の特定の構成がプログラムされる。1つの望ましい実施形態において、リブないし溝32はそれぞれ、V字形である。すなわち、基本的にシャフト7の第1のワーク部分の中央から向きが変化する。これによって、コンプレッサー内で高速で回転するシャフトが、空気ないしガスジャーナルベアリング内にて機械的に接触することなく保持されることが確実になる。6000rpmという低い回転数から、各空力半径方向ベアリングにおける空気ないしガスの圧力は、シャフトが静的ジャーナルベアリングと機械的に接触しなくなるような圧力であり、これによって、機械的な摩擦をいずれも避けることができる。
【0056】
図9は、加工されたリブないし溝32がシャフト7の第1の端にある第1の部分と、シャフト7の第2の端にある第2の部分とがあるシャフト7を示している。これらの第1の部分と第2の部分は、
図6を参照しながら上で説明したのと同様に加工されて形成される。シャフト7の2つの端において同じ構成のV字形のリブないし溝32を形成することができる。
【0057】
図1を補足すると、コンプレッサー1は、アルミニウムによって作られたケーシング2を備え、このケーシング2の上面2aは、上部カバー3aによって閉じられ、前面2b及び後ろ面2cはそれぞれ、前側カバー3b及び後ろ側カバー3cによって閉じられる。ケーシングの側面2dは、それらの基部において接合されて、断面がU字形である底部2eを形成する。
【0058】
上部カバー3aは、コンプレッサーの電子コンポーネントと同じ側に配置される。したがって、コンプレッサーに搭載された電子コンポーネントへのアクセスは容易であり、上部カバー3aを介してアクセスされる。前側カバー3bと後ろ側カバー3cは、コンプレッサーの内部(モーター、ローター、ベアリングなど)に到達するために用いられる。ケーシング2の上面と上部カバー3aの間にガスケットが配置されている。このガスケットは、電子コンポーネントをほこりや湿気から保護する。
【0059】
ケーシング2は、前側カバー3bに設けられた、圧縮対象流体のための入口5と、ケーシング2の側面の1つに設けられた、圧縮流体のための接線方向出口6とがある。
【0060】
図1において、ケーシング2には、ケーシング2の前面2bと後面2cの間で端から端まで縦軸A-Aに対して同軸に形成されている内側ハウジングがあり、この内側ハウジングは、前側半径方向ベアリング支持体26及び前側半径方向ベアリング18を受け、モータ及びロータ構造16が、シャフト7、後ろ側半径方向ベアリング支持体28と後ろ側半径方向ベアリング22、第2のコンプレッサー車10、及びボリュート29に取り付けられる。前面2bの側において、内側ハウジングは、前側カバー3bによって閉じられ、これによって、第1のコンプレッサー車8、軸方向ベアリング支持体30、及び軸方向ベアリング24が一体的になる。後ろ面2cの側において、内側ハウジングが後ろ側カバー3cによって閉じられる。
【0061】
有利なことに、圧縮対象流体がチャネル内を循環してモーターに入り、ステーター14とローター構造16の間を循環することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、符号57aによって示した箇所、が形成され、また、圧縮対象流体がモーターを冷却した後にモーターを出て前記チャネルに再度合流することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、符号57bによって示した箇所、が形成される。
【0062】
同様に、有利なことに、圧縮対象流体がチャネル54内を循環して、軸方向ベアリング24、前側半径方向ベアリング18及び後ろ側半径方向ベアリング22の近くを循環することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、
図1の符号59aによって示した箇所、が形成され、前記軸方向ベアリング24、前側半径方向ベアリング18及び後ろ側半径方向ベアリング22を冷却した後に、圧縮対象流体が前記チャネル54に再度合流することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、符号57bによって示した箇所、が形成される。
【0063】
したがって、圧縮対象流体は、入口5を通って第1の圧縮段に入った後、チャネル54内で、第1の圧縮段と第2の圧縮段の間で縦軸に沿って位置するコンプレッサーの部分を通過して、第2の圧縮段に再度合流する。この結果、圧縮対象流体は、内壁52とモーターのフェライト要素14bの間を通る際に、第2の圧縮段に入る前に、モーターを冷却し、モーターが失った熱を回収して効率を高める。また、オリフィス57a、57b、59aは、流れにわずかな偏差があることを許容して、圧縮対象流体がステーター14とローター構造16の間及びベアリング内も循環して、これらの要素を冷却し、モーターの熱損失とベアリングの摩擦による熱損失を回復させる。
【0064】
遠心コンプレッサー1は、100000rpm~500000rpmの範囲内の非常に大きな回転速度に到達することを可能にする。遠心コンプレッサー1は、第1の圧縮段で圧縮された流体がシステム全体を実質的に通過して、廃熱、特にモーター、ベアリング、及び電子コンポーネントからの廃熱、を回収することを可能にして、第2の圧縮段に入る前に効率を高める(圧縮対象流体の温度が上昇するに従ってその圧力も上昇する)。また、追加の冷却回路を使用せずに、コンプレッサーを冷却するために、圧縮対象流体のみを用いること、及びケーシングに搭載される電子デバイスのためのコンプレッサーにおける電子コンポーネントの構成によって、コンプレッサーが非常にコンパクトになる。したがって、本発明に係るコンプレッサーは、小さな体積しか占めないにもかかわらず、大きな回転速度及び高い圧縮比を有する。例えば、本発明に係るコンプレッサーは、L×W×H(cm)が14×8×11のオーダーの寸法構成とわずか1.6kgの重量に対して、3より大きい圧縮比と4kWのオーダーの出力を有する。
【0065】
例えば、本発明に係るコンプレッサーは、空気ないしガスからパワーを得る燃料電池、又は圧縮空気を用いる任意の他のシステム(工業用コンプレッサー、医療用コンプレッサー、船舶など)とともに用いることができる。
【0066】
本発明に係るコンプレッサーは、冷媒ガスとともに、電気式、ハイブリッド式又は水素式の車両におけるもののような移動体用のHVAC(暖房、換気及び空調:heating, ventilation and air conditioning)システムにおいて用いることができる。
【0067】
また、遠心コンプレッサーは、ヒートポンプのような冷媒ガスとともに固定システムでも用いることができる。
【0068】
遠心コンプレッサーは、天然ガスとともに用いることもできる。
【0069】
図10は、シャフト7の第1の端と第2の端の部分にリブないし溝を形成するための加工ユニット100の概要を示している。
【0070】
加工ユニット100は、リブないし溝を加工して形成するときにシャフト7を保持しシャフト7を回転させるためのスピンドル140がある旋盤130を備える。1つの代替的実施形態において、回転してシャフトを保持するスピンドルは、矢印Smで示すように、縦方向の加工方向に動いて、リブないし溝を形成することができる。
【0071】
加工ユニット100は、さらに、旋盤130の構造に接続される工具ホルダー110を備える。工具ホルダー110は、加工工具120を担持しており、加工工具120の加工ヘッドは、溝ないしリブを加工して形成するためにシャフトと接触し、加工ユニットがどのようにプログラムされているかに応じて往復運動をすることができる。加工工具120の加工ヘッドは、炭化タングステン又はセラミックスによって作られたシャフト7上にリブないし溝を加工して形成するために、ダイヤモンドによって作ることができる。これは、正弦波プログラムに従ってシャフト7を加工工具と同時に同期回転させて、各前側又は後ろ側空気ないしガスジャーナルベアリングに対して、シャフト7のワーク部分上に、リブないし溝の所定の構成を得るように行われる。
【0072】
また、1つの代替的実施形態において、シャフト上にリブないし溝を加工して形成するために、シャフト7ではなく、工具ホルダー110を縦方向の加工方向に動かすこともできる。
【0073】
加工ユニット100がどのようにプログラムされているかに応じて、工具の往復運動の周波数を変えることもできる。
【0074】
図11は、加工工具の往復運動によって得られる、空気ないしガスベアリングのための精密リブないし溝を示している。これは、加工される材料、加工操作のためのシャフトの回転速度、シャフトの直径、及び他の多くのパラメータによって決まる。
【0075】
最後に、
図12は、空気ないしガス軸方向ベアリング24のディスクの1つ又は2つの面にリブないし溝を形成するための加工ユニット100を示している。この加工ユニット100は、
図10を参照しながら説明したものと同じ要素を備え、この
図12を参照しながら繰り返し説明することはしない。工具ホルダー110が旋盤130の構造に接続されている形態のみに注意する必要がある。
【0076】
当然、本発明は、説明した例に限定されず、当業者に明白な様々な代替形態が可能であり、変更を行うことができる。当然、遠心コンプレッサーと組み合わせることが知られている他の組み合わせも可能である。上記で説明したものではない他のワークピースに対して、均等な加工要素を用いて、リブないし溝の迅速かつ正確な加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 遠心コンプレッサー
2 ケーシング
5 流体の入口
6 圧縮流体の出口
7 シャフト
8 第1のコンプレッサー車
10 第2のコンプレッサー車
11 ロッド
11b、11d 端ロッド
16 ローター構造
16a 永久磁石
16b ライニング
16c フランジ
18、22 半径方向ベアリング
24 軸方向ベアリング
24a、32 リブないし溝
100 加工ユニット
110 工具ホルダー
120 加工工具
【外国語明細書】