(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160964
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】コンプレッサーの空気ないしガスベアリングのためにシャフト上にリブないし溝を加工して形成する方法
(51)【国際特許分類】
B23B 5/00 20060101AFI20241108BHJP
B23B 5/48 20060101ALI20241108BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20241108BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20241108BHJP
F04D 29/057 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B23B5/00 Z
B23B5/48
F16C17/02 A
F16C17/04 A
F04D29/057 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024072657
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】23171475.9
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510010894
【氏名又は名称】ベレノス・クリーン・パワー・ホールディング・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】レジェップ・ガシ
【テーマコード(参考)】
3C045
3H130
3J011
【Fターム(参考)】
3C045BA12
3C045BA18
3C045CA05
3C045DA03
3C045EA02
3H130AA12
3H130AB02
3H130AB07
3H130AB12
3H130AB42
3H130AC13
3H130AC27
3H130BA24E
3H130BA87E
3H130DA02Z
3H130DB05X
3H130DD03Z
3H130DJ08X
3H130EB01D
3H130EC16D
3J011AA09
3J011BA02
3J011BA08
3J011CA02
3J011KA02
3J011KA03
3J011LA05
3J011PA10
3J011QA20
3J011SD01
3J011SD10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ローターシャフト上に、空気ないしガスベアリングのための溝ないしリブを迅速に形成する。
【解決手段】シャフトは、遠心コンプレッサーの縦軸のまわりを回転することができる。この方法によると、シャフト及びシャフトの軸方向ベアリング、のワーク部分上におけるすべてのリブないし溝(32、24)は、それぞれ1回で形成され、この形成は、ワーク部分又は面の開始箇所から終了箇所まで、シャフト(7)又は加工工具が取り付けられた工具ホルダー、を縦方向の加工方向に動かすことによって、かつ、シャフト又はシャフトの軸方向ベアリング、と接触する加工位置と、これと接触しない位置になるように、加工工具が往復運動を行うことによって、行われる。この加工工具の往復運動は、加工ユニットにおいて行われる正弦波プログラムと、作成対象のリブないし溝の所望の構成と、同期される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心コンプレッサー(1)の縦軸(A-A)のまわりを回転するように意図されたシャフト(7)上に、かつ/又は前記シャフト(7)の一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリング(24)上に、リブないし溝を加工して形成する方法であって、
前記シャフトを回転可能に駆動するために、電気モーターの少なくとも1つの永久磁石(16a)を備えるローター構造(16)が、前記シャフト(7)のまわり又は前記シャフト(7)内にて取り付けられるように意図されており、
前記遠心コンプレッサー(1)は、さらに、流体の入口(5)と圧縮流体の出口(6)があるケーシング(2)と、前記ケーシング(2)における前記シャフト(7)の2つの端に取り付けられるように意図された第1のコンプレッサー車(8)と第2のコンプレッサー車(10)と、前記シャフト(7)の第1の端に取り付けられるように意図された前側空気ないしガス半径方向ベアリング(18)と、及び/又は前記シャフト(7)の第2の端に取り付けられるように意図された後ろ側空気ないしガス半径方向ベアリング(22)とを備え、
前記方法は、前記軸方向ベアリング(24)がある加工対象の前記シャフト(7)を受けるように構成している加工ユニット(100)において行われ、
前記加工ユニット(100)は、前記シャフト(7)、又は前記シャフト(7)の前記軸方向ベアリング(24)、の少なくとも1つの部分上にリブないし溝を加工して形成するための加工工具(120、121)がある工具ホルダー(160)を備え、
前記リブないし溝(24a、32)のすべては、回転可能に駆動される前記シャフト、及び/又は前記シャフトの前記軸方向ベアリング(24)の前記ディスク、のワーク部分上に形成され、
この形成は、前記シャフト(7)、及び/又は前記シャフト(7)の前記軸方向ベアリング(24)の前記ディスク、又は前記工具ホルダー(160)の縦方向の加工方向におけるそれぞれ1回の変位によって、かつ、前記ワーク部分の開始箇所から終了箇所まで、前記シャフト(7)、及び/又は前記シャフト(7)の前記軸方向ベアリング(24)の前記ディスク、と接触する加工位置と、前記シャフト(7)、及び/又は前記シャフト(7)の前記軸方向ベアリング(24)の前記ディスク、と接触しない位置になるように前記加工工具(120、121)が往復運動を行うことによって、行われ、
前記加工工具(120、121)の前記往復運動は、前記加工ユニット(100)において行われる正弦波ブログラムと、また、前記シャフト(7)、及び/又は前記シャフト(7)の前記軸方向ベアリング(24)の前記ディスク、の部分上に形成されるリブないし溝の所望のプログラムされた構成と、同期するように行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シャフト(7)上にリブないし溝(32)を加工して形成する前に、前記シャフト(7)上に前記空気ないしガス軸方向ベアリング(24)を作る
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空気ないしガス軸方向ベアリング(24)は、作成対象の軸方向ベアリング(24)の所望の直径と実質的に等しい直径のシャフト(7)のブランクを用いることによって作られ、
前記シャフト(7)のブランクは、前記加工ユニット(100)において縦軸(A-A)のまわりを回転され、
前記シャフト(7)の一端から、作成対象の軸方向ベアリング(24)のディスクの面の位置に対応する前記シャフト(7)の第1の位置へと、回転可能に、研磨性材料によって作られた加工工具(120)を動かして、前記シャフト(7)から薄い材料層を除去し、
前記シャフト(7)の所望の直径に達するまで、前記第1の端が前記軸方向ベアリング(24)の第1の位置へと縦方向に変位することによって、前記加工工具(120)によって、連続した複数の薄層が前記回転シャフト(7)から除去される
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
薄層を除去するための同じ加工操作が、前記シャフト(7)の反対側の端から、前記軸方向ベアリング(24)の第2の面に対応する前記軸方向ベアリングの第2の位置まで順次的に行われる
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
加工対象のシャフト(7)は、炭化タングステン又はセラミックスによって作られ、
前記加工工具(120)のヘッドは、ダイヤモンドによって作られ、
前記シャフト(7)は、加工中に、縦軸(A-A)のまわりを回転し、
前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記加工工具(120)の往復運動、及び前記シャフト(7)の縦方向の変位によって、前記第1の部分の開始箇所から前記第1の部分の終了箇所まで、前記シャフト(7)の前記第1の端の第1のワーク部分上におけるすべてのリブないし溝(32)がそれぞれ1回で形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加工対象のシャフト(7)は、炭化タングステン又はセラミックスによって作られ、
前記加工工具(120)のヘッドは、ダイヤモンドによって作られ、
前記シャフト(7)は、加工中に、縦軸(A-A)のまわりを回転し、
前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記加工工具(120)の往復運動、及び前記シャフト(7)の縦方向の変位によって、前記第1の部分の開始箇所から前記第1の部分の終了箇所まで、前記シャフト(7)の前記第1の端の第1のワーク部分上におけるすべてのリブないし溝(32)がそれぞれ1回で形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リブないし溝(32)の加工中に、前記加工ユニットがどのようにプログラムされているかに応じて、前記シャフト(7)の前記第1の端の前記第1のワーク部分の半分と前記シャフト(7)の前記第2の端の前記第2のワーク部分の半分が終わったときに、リブないし溝の向きを変えて、加工された前記第1及び第2の部分の長さにわたってV字状の溝を得て、これによって、前記シャフト(7)が制限速度を超えて回転しているように前記コンプレッサーが動作しているときに、前記第1の部分に配置された前側半径方向ベアリング(18)又は前記第2の部分に配置された後ろ側半径方向ベアリング(22)内にエア又はガスの圧力を発生させて、前記シャフト(7)と、1つ又は複数の前側半径方向ベアリング(18)及び後ろ側半径方向ベアリング(22)との機械的接触がなくなるようにする
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ワークピースは、前記シャフト(7)の一部を形成する一体的なディスクの形態である空気ないしガス軸方向ベアリング(24)であり、
前記ディスクの第1の面上におけるのリブないし溝をそれぞれ1回で形成するように第2の加工工具(120、121)を作動させるように、前記リブないし溝及びその構成が前記加工ユニット(100)においてプログラムされ、
この形成は、前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記加工工具又は回転するディスクを、前記ディスクの周部から前記リブないし溝の環状領域の底部まで又は逆に、単一の加工方向に動かすことによって、かつ、前記加工工具(120、121)の往復運動によって、行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記加工ユニット(100)がどのようにプログラムされているかに応じて、前記ディスクの周部から環状領域の底部まで又は逆に、前記加工工具又は前記回転ディスクを単一の加工方向に動かすことによって、かつ、前記加工工具(120、121)の往復運動によって、前記ディスクの第2の面上におけるすべてのリブないし溝(24a)をそれぞれ1回で形成する
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2つの面において同じ向き又は2つの異なる向きで、らせんの形態で、すべてのリブないし溝(24a)が形成されて、前記シャフト(7)が回転するときに溝を介して空気の層を発生させて、前記遠心コンプレッサー(1)の動作中に、縦方向に十分に良好にセンタリングされた位置に前記シャフトを保持する
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速遠心流体コンプレッサーの空気ないしガスベアリングのためにシャフト上にリブないし溝を加工して形成する方法に関する。このコンプレッサーは2段式コンプレッサーであり、流体の入口と圧縮流体の出口を備えるケーシングを備え、縦軸(主軸)のまわりを回転可能に取り付けられたシャフトを囲む。第1のコンプレッサー車と第2のコンプレッサー車が、シャフトに背中合わせに取り付けられ、第1のコンプレッサー車は第1の圧縮段を構成し、第2のコンプレッサー車は第2の圧縮段を構成する。遠心コンプレッサーは、さらに、第1のコンプレッサー車と第2のコンプレッサー車の間に配置され、シャフトを回転させるように構成しているモーター、好ましくは、同期電気モーターを備える。少なくとも1つの空気ないしガス軸方向ベアリングがシャフトの一部を形成し、シャフトの一端に取り付けられる。また、前側空気ないしガス軸方向ベアリングをシャフトの第1の端上に取り付けることができ、後ろ側空気ないしガス軸方向ベアリングをシャフトの第2の端上に取り付けることができる。
【背景技術】
【0002】
流体コンプレッサーは通常、ターボコンプレッサー又は遠心コンプレッサーと呼ばれる。これらは、永久磁石同期モーター(ブラシレスモーター)を形成するステーターとローターによって構成している。100000~500000rpmのような非常に高速な速度に達することがある。モーターはコンプレッサー車を高速で駆動し、コンプレッサー車は流体を圧縮する。前記流体は、空気、ガス、冷媒、又はその他の適切な流体であることができる。2つのコンプレッサー車を用いることで、流体は2倍圧縮される。
【0003】
これらのコンプレッサーは、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、水素自動車のような冷媒ガスを用いる移動式HVAC(暖房、換気、空調)システムにおいて用いることができる。これらのコンプレッサーは、ヒートポンプのような冷媒ガスを用いた固定システムでも用いることができる。
【0004】
これらのコンプレッサーは、典型的には、圧縮対象流体を循環させるための第1の回路と、コンプレッサーを冷却するために、特に、一方ではモーターと、モーターシャフトを支持する空気ないしガスベアリングとを冷却し、他方では電子コンポーネントを冷却するために、用いられる冷却液を循環させるための第2の回路とを備える。特に、モーターを高速で回転させるとモーターがかなり加熱されるため、損傷を防ぐためにコンプレッサーの部品を冷却する必要がある。これらの回路は、通常、少なくとも冷却回路に関するかぎり、コンプレッサー自体の内部に設けられる。コンプレッサーの駆動中、特に高速で冷却ガス又は空気の流れを容易にするための規定はなく、これは課題となる。また、ローターシャフトを支える空気ないしガスベアリングは、ローターシャフトを摩擦なく支持するように設計されていないため、ローターが高速で回転しているときに大きな発熱が発生し、別の課題になる。
【0005】
また、空気ないしガスの流れのために空気ないしガスベアリングに溝ないしリブが作られ、圧力と冷却が発生することが知られている。しかし、溝はレーザー加工によって特定の配置なしに作られ、これは加工時間が長すぎてそのコストが高すぎるという課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ローターシャフト上に、シャフトの一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリングを含む、空気ないしガスベアリングのための、溝ないしリブを迅速に形成する方法によって、上記の様々な課題を解決することを目的の1つとする。シャフトにおける前記溝ないしリブは、コンプレッサーのシャフトが各ベアリング内で高速で回転するときに重力に打ち勝ち、回転するロータシャフトが半径方向ベアリングにおける空気ないしガス流に機械的に接触せず、したがって、仮想的には摩擦がないように、保持されるように構成している。
【0007】
このような状況で、本発明は、独立請求項1に記載の特徴を有する、遠心コンプレッサーの縦軸のまわりを回転することを意図されたシャフト上に、かつ/又は前記シャフトの一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリング上に、リブないし溝を加工して形成する方法に関する。
【0008】
従属請求項2~10に、本方法のいくつかの特定のステップについて定めている。
【0009】
加工ユニットにおけるコンプレッサーの、シャフト上に、かつ/又はワークピースシャフトの軸方向ベアリング上に、リブないし溝を加工して形成する本方法の1つの利点は、シャフトのワーク部分の開始箇所から終了箇所まで、往復運動をする加工工具によって、回転駆動されるシャフトのワーク部分上におけるすべてのリブないし溝が、それぞれ1回で得られることである。これを行うために、この加工工具の往復運動は、加工ユニットにおいて設定される正弦波プログラムと、そして、シャフトの部分に形成されるリブないし溝の所望の構成と、同期される。
【0010】
この加工ユニットにおけるコンプレッサーのワークピースシャフトの軸方向ベアリング上にリブないし溝を加工して形成する方法の1つの利点は、回転可能に駆動されるシャフトの軸方向ベアリングのディスクの1つ又は2つの面上に、すべてのリブないし溝が形成されることである。
【0011】
シャフト、及び/又はシャフトの軸方向ベアリング、の加工中に、シャフト、又は加工工具を担持する工具ホルダーも、加工工具が往復運動を行っている間に、縦方向の加工方向に変位する。
【0012】
この加工工具の往復運動は、加工ユニットがどのようにプログラムされているかに従って、振動周波数を変化させて加工工具の往復運動を高速化又は減速させて前記所望のリブないし溝を得ることができるような圧電発振器と比較される。この往復運動の間に、加工工具は、シャフト、又はシャフトの軸方向ベアリングと接触している加工位置にあることもあれば、別の時間には、シャフト、又はシャフトの軸方向ベアリングと接触しない位置にあることもある。
【0013】
ワークピースシャフトは、それを回転駆動する電気モーターのローター構造に、又はシャフトの一部を形成しシャフトの第1の端におけるコンプレッサー車と空気ないしガス半径方向ベアリングの間に配置された少なくとも1つの空気ないしガス軸方向ベアリングに、取り付けられる。リブないし溝は、軸方向ベアリングにおいてリブないし溝を加工して形成するための特定の工具によって、空気ないしガス軸方向ベアリングのディスクの、片面に又は好ましくは両面に、形成することができる。しかし、半径方向ベアリングのためのシャフトの部分上に、かつ、空気ないしガス軸方向ベアリングのディスクの片面又は両面上に、リブないし溝を加工して形成するために、同じ加工工具を用いることができる。
【0014】
この加工ユニットにおいてリブないし溝を加工して形成する方法の利点の1つは、空気ないしガス半径方向ベアリングのためのシャフトの各ワーク部分上に、1分未満で非常に迅速に非常に正確に、リブないし溝が形成されることである。同じことが、回転可能に駆動される空気ないしガス軸方向ベアリングのディスクの片面又は両面上に形成されるリブないし溝にも、当てはまる。加工工具は、シャフト、又は空気ないしガスベアリングの材料よりも硬い。
【0015】
したがって、正弦波関数のおかげで、シャフトの回転と、加工工具又はシャフトの縦方向の運動との間の同期を達成することが可能になる。正弦波関数の周波数と振幅は、溝の形状、溝の数、シャフトの回転速度、及び縦方向の変位の速度に応じて選択される。
【0016】
上で説明したように、加工ユニットを、正弦波プログラム又は関数に従って加工工具と同時に同期回転するようにプログラムして、各空気ないしガス半径方向ベアリングのシャフト及び空気ないしガス軸方向ベアリングの各ワーク部分上に、リブないし溝の構成を得ることができる。
【0017】
このようなリブないし溝は、好ましくは、シャフト上の各加工部分の中心において各リブないし溝の向きが変わるV字形に加工され、このような加工のおかげで、高速で回転するシャフトは、機械的接触なしで、コンプレッサーにおける空気ないしガス半径方向ベアリング内に保持することができる。したがって、シャフトは、シャフトが高速回転する結果として溝ないしリブ内を通り抜ける空気ないしガスの圧力によって、実質的に摩擦なしで、各半径方向ベアリング内に保持される。6000rpmという低い回転数から、各空力半径方向ベアリングにおける空気ないしガスの圧力は、シャフトが静的半径方向ベアリングと機械的に接触しなくなって、機械的な摩擦をいずれも回避するように構成している。当然、シャフトの回転が速くなるほど、半径方向ベアリング内の空気圧が高くなり、空気ないしガスの摩擦が自動的に大きくなる。
【0018】
正弦波プログラム、及び溝ないしリブの所望の構成に従って、実質的に前記リブの上に配置される各静的半径方向ベアリングの内側の半分においてシャフト上における溝ないしリブの向きが逆になるように、加工ユニットと加工工具によって、溝ないしリブが加工されて形成される。これによって、シャフトの回転が速くなるほどますます大きくすることができるような空気ないしガスの圧力が発生する。
【0019】
このような高速遠心流体コンプレッサーは、空気ないしガス半径方向ベアリング上におけるリブないし溝の形成のおかげで、過度な加熱がなく、非常に高速で回転することができる。
【0020】
また、第1のコンプレッサー車と第1の半径方向ベアリングの間に、軸方向ベアリングが設けられる。軸方向ベアリングのディスクの前面と後ろ面上の周部に、らせんの形態の溝ないしリブが形成される。シャフトが回転するに従って、シャフトを縦方向に良好にセンタリングされた位置に保持するように、溝によって空気の薄い層が発生する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付の図面を参照しながら本発明の一実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴を一層明確に理解することができる。この説明は、例として与えられるものである。
【0022】
【
図1】本発明に係る高速遠心コンプレッサーについての縦軸A-Aに沿った縦断面の図を示している。
【
図2】
図2aは、本発明に係る、コンプレッサー車があるシャフト、空力軸方向及び半径方向ベアリング、及び一又は複数の永久磁石を備えるローター構造についての、縦軸A-Aに沿った縦断面図を示している。
図2bは、本発明に係る、シャフトの一部を形成する第1のコンプレッサー車及び軸方向ベアリングの側からの正射影図を示している。
【
図3】本発明に係る、シャフトの上に示している各静的半径方向ベアリングに、そして、シャフトの一部を形成する軸方向ベアリングにある、溝ないしリブを示している
図2a及び2bのアセンブリーの3次元図である。
【
図4】本発明に係る、第1の加工アセンブリーを用いて、コンプレッサーのシャフトの一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリングにおいて溝ないしリブを加工して形成し、第2の加工アセンブリーを用いて、半径方向ベアリングのためのシャフトの2つの部分において溝ないしリブを加工して形成するための、加工ユニットについての縦断面の図を示している。
【
図5】本発明に係る、第1の加工アセンブリーを用いて、コンプレッサーのシャフトの一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリングにおいて溝ないしリブを加工して形成し、第2の加工アセンブリーを用いて、半径方向ベアリングのためのシャフトの2つの部分において溝ないしリブを加工して形成するための、加工ユニットについての縦断面の図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、従来技術においてよく知られている遠心コンプレッサーの一部を形成するすべてのコンポーネントは、簡潔にしか説明していない。なぜなら、本発明は、本質的に、2つの静的な空気ないしガス半径方向ベアリングによってそれぞれ覆われるようにシャフトの2つの部分上に、又はシャフトの一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリング上に、リブないし溝を形成する方法に関係するためである。
【0024】
図1は、高速遠心コンプレッサー1についての縦軸A-Aに沿った断面を示している。遠心コンプレッサー1は、ケーシング2内に、前面2bと後面2cを通り抜ける縦軸A-Aのまわりを回転するように取り付けられた、炭化タングステン又はセラミックスによって作られたシャフト7と、シャフト7の各端において背中合わせに取り付けられる第1の遠心コンプレッサー車8と第2の遠心コンプレッサー車10とを備え、前記第1のコンプレッサー車8は、第1の圧縮段を構成し、前記第2のコンプレッサー車10は、第2の圧縮段を構成する。特に、この実施形態において、シャフト7は、中空であり、ねじ山付きロッド11を囲み、このシャフト7の各端にてコンプレッサー車8、10の一方がねじ込まれ、コンプレッサー車を容易に取り付けて取り外すことが可能になる。したがって、2つのコンプレッサー車8及び10は、同じシャフト7上にて駆動され、このことによって、エネルギー効率が改善し、ギアボックスの必要性がなくなる。コンプレッサー車8及び10の後ろ側には、コンプレッサー内の圧力を制御し軸力を平衡化するためのラビリンスシールがある。
【0025】
ケーシング2は、さらに、電気モーターを囲み、この電気モーターは、好ましくは同期モーターであり、第1のコンプレッサー車8と第2のコンプレッサー車10の間に配置され、シャフト7を回転させるように構成している。モーターは、ステーター14とローター構造16を備え、これらは、互いに相互作用して、少なくとも1つの永久磁石16aと同期電気モーターを形成する(ブラシレスモーター)。特に、ステーター14は、コイル14aと2つのフェライト要素14bによって形成され、これらは、ケーシング2に対して固定されるように取り付けられる。ローター構造16は、例えば接合によって、シャフト7と一体的にされた一又は複数の永久磁石16aを備え、チタン製のライニング16bによって被覆されている。チタン製のフランジ16cは、ライニングの側端に取り付けられ(例えば、接合によって)、ローターが高速にて遠心力に耐えられることを確実にする。
【0026】
シャフト7は、シャフト7の一体的な部分を形成する、少なくとも1つの前側半径方向ベアリング18、1つの後ろ側半径方向ベアリング22、及び1つの軸方向ベアリング24を利用して、縦軸A-Aのまわりを回転可能にケーシング2内にて取り付けられる。遠心コンプレッサー1は、前側半径方向ベアリング18を担持するための前側半径方向ベアリング支持体26と、後ろ側半径方向ベアリング22を担持するための後ろ側半径方向ベアリング支持体28とを備え、これらはそれぞれモーターの前側と後ろ側にて、シャフト7のまわりに配置されるように構成している。また、後ろ側において、後ろ側半径方向ベアリング支持体28と後ろ側カバー3cの間にボリュート29が設けられる。ボリュート29には、圧縮後に接線方向の流体出口6に通じるオリフィスがある。また、第1のコンプレッサー車8と前側半径方向ベアリング支持体26の間にて、シャフト7のまわりに配置されるように構成している軸方向ベアリング24を担持するために、軸方向ベアリング支持体30が設けられる。軸方向ベアリングをモーターの後ろ側に設けることができることは明らかである。
【0027】
これらのベアリングは、摩擦をほとんど発生させないようにするために、非接触の空力タイプのベアリングである。このようなベアリングは、潤滑を必要とせず、メンテナンスもほとんど必要ない。特に、
図2a、2b、3、4及び5を参照すると、軸方向ベアリング24は、空力ベアリングである。本発明によると、軸方向ベアリング24は、シャフト7と同時に作られ同じベース材料によって作られて、作成の終わりにおいて一体的なユニットの形態でシャフト7と一体的な部品を形成するように、シャフト7の一部を形成する。
【0028】
この軸方向ベアリングは、ディスクによって構成しており、このディスクには、その面の少なくとも1つに、第1の溝24aがあり、この第1の溝24aは、好ましくは周部における環状領域にわたって渦巻き状であり、空気の薄い層を発生させるように構成している。好ましくは、軸方向ベアリング24には、
図4及び5を参照しながら下において説明する加工プロセスによって得られる、軸方向ベアリング24のディスクの前面と後ろ面の周部において、好ましくは渦巻き状である、溝ないしリブ24aがある。溝ないしリブ24aの向きは、前面が後ろ面にて、異なることができ、また、同じであることができる。溝ないしリブ24aがある軸方向ベアリング24は、前面と後ろ面からの空気の薄い層を発生させることによって、回転シャフト7を縦方向にセンタリングし続ける。前側半径方向ベアリング18と後ろ側半径方向ベアリング22は、空力ベアリングであり、シャフト7には、シャフト7が空気ないしガス半径方向ベアリング内で回転するときに空気ないしガスの薄い層を発生させるように構成しており前側半径方向ベアリング18と後ろ側半径方向ベアリング22に対向する第2の溝ないしリブ32がある。
【0029】
図2a及び2bにおいて、第1の遠心コンプレッサー車8と第2の遠心コンプレッサー車10は、依然として、シャフト7の各端において背中合わせに取り付けられていることがわかる。電気モーターの少なくとも1つの永久磁石16aを備えるローター構造16が、例えば、シャフト7の中央部分のまわり又は内にて、取り付けられて又は締め付けられて、縦軸A-Aのまわりを回転可能にシャフトを駆動し、シャフト7の一部を空気ないしガス軸方向ベアリングが形成する。また、前側空気ないしガス軸方向ベアリングをシャフトの第1の端上に取り付けることができ、後ろ側空気ないしガス軸方向ベアリングをシャフトの第2の端上に取り付けることができる。
【0030】
図3に示しているように、シャフト7の2つの端において、一端には、加工されたリブないし溝32の第1の部分があり、他端には、加工されたリブないし溝32の第2の部分がある。少なくとも1つの永久磁石16aを備えるローター構造16は、電気モーターの中心位置においてシャフトに取り付けられている。
【0031】
図3は、シャフト7と、そのシャフト7の第第1の端にある軸方向ベアリング24についての三次元図を示している。シャフト7の両端において、リブないし溝32の第1の部分を見ることができ、このリブないし溝32の上には第1の半径方向ベアリング18を示しており、また、リブないし溝32の第2の部分を見ることができ、このリブないし溝32の上には第2の半径方向ベアリング22を示している。また、シャフト7の一部を形成する空気ないしガス軸方向ベアリング24のディスクの面上にも、リブないし溝24aを示している。特定の深さのリブないし溝24aが、ディスクの周部から始まりディスクの中心の方へと続く環状領域に形成されている。リブないし溝24a及びその構成は、特に加工ユニットにおいて、加工工具を作動させて、すべてのリブないし溝をそれぞれ1回で形成するようにプログラムされている。すなわち、例えばディスクの周部からリブないし溝の環状領域の底部まで、工具ホルダー又は回転ディスクを単一の加工方向に動かすことによって行う。例えば、片面上のディスクの周部から開始して、正弦波プログラムに従って所定の速度でディスクを回転させる加工ユニットと同期して、加工工具の往復運動によって、溝部分が徐々に形成される。
【0032】
このプログラムによって、加工工具の制御された往復運動と組み合わせて、ディスクの回転及び加工工具の往復運動によって、すべての溝24aそれぞれの開始が達成される。これは、次の溝ないしリブ部分について、第1の溝部分から環状領域の端ないし底部まで継続的に繰り返される。このようなディスク24上に異なるリブないし溝24aを形成する方法において、ディスクの溝付き面当たりの加工時間は、1分未満であり、これは、レーザービームを用いる以前の加工技術よりも大幅に短い。
【0033】
加工ユニットは、正弦波プログラムに従って加工工具と同時の同期的なシャフト7の回転をして、前側空気ないしガス半径方向ベアリング18のためのシャフト7の第1のワークピース部分上にリブないし溝32の所定の構成を得るようにプログラムされている。例えば、第1の端と同じ側にあり加工方向が1つの方向のみであるシャフト7の第1のワーク部分から開始され、シャフト7の第1の端の第1の部分の端まで、すべてのリブないし溝32がそれぞれ1回で加工して形成され、このことによって、加工時間が大幅に短縮される。
【0034】
したがって、シャフト7の回転と、加工工具又はシャフト7の縦方向の変位の間の同期を正弦波関数が実際に達成すると判断することができる。正弦波関数の周波数と振幅は、溝32の形状、溝32の数、シャフトの回転速度、及び縦方向の変位の速度に応じて選択される。
【0035】
加工ユニットにおいて、シャフト7の第1の端の第1の部分上に形成されるリブないし溝32の特定の配置がプログラムされる。1つの望ましい実施形態において、リブないし溝32はそれぞれ、V字形である。すなわち、基本的にシャフト7の第1のワーク部分の中央から向きが変化する。これによって、コンプレッサー内で高速で回転するシャフトが、空気ないしガス半径方向ベアリングにおいて機械的に接触することなく保持される。6000rpmという低い回転数から、各空力半径方向ベアリングの空気圧又はガス圧は、シャフトが静的半径方向ベアリングと機械的に接触しなくなり、機械的な摩擦が回避されるように構成している。
【0036】
図1の補足として、コンプレッサー1は、アルミニウムによって作られたケーシング2を備え、その上面2aは、上部カバー3aによって閉じられ、前面2bと後ろ面2cはそれぞれ、前側カバー3bと後ろ側カバー3cによって閉じられる。ケーシングの側面2dは、その基部において接合されて、U字形の断面がある裏部2eを形成する。
【0037】
上部カバー3aは、コンプレッサーの電子コンポーネントと同じ側に配置される。したがって、コンプレッサーに搭載された電子コンポーネントへのアクセスは容易であり、上部カバー3aを介してアクセスされる。前側カバー3bと後ろ側カバー3cは、コンプレッサーの内部(モーター、ローター、ベアリングなど)に到達するために用いられる。ケーシング2の上面と上部カバー3aの間にガスケットが配置されている。このガスケットは、電子コンポーネントをほこりや湿気から保護する。
【0038】
ケーシング2は、前側カバー3bに設けられた、圧縮対象流体のための入口5と、ケーシング2の側面の1つに設けられた、圧縮流体のための接線方向の出口6とがある。
【0039】
図1において、ケーシング2には、ケーシング2の前面2bと後面2cの間で端から端まで縦軸A-Aに対して同軸に形成されている内側ハウジングがあり、この内側ハウジングは、前側半径方向ベアリング支持体26及び前側半径方向ベアリング18を受け、モータ及びロータ構造16が、シャフト7、後ろ側半径方向ベアリング支持体28と後ろ側半径方向ベアリング22、第2のコンプレッサー車10、及びボリュート29に取り付けられる。前面2bの側において、内側ハウジングは、前側カバー3bによって閉じられ、これによって、第1のコンプレッサー車8、軸方向ベアリング支持体30、及び軸方向ベアリング24が一体的になる。後ろ面2cの側において、内側ハウジングが後ろ側カバー3cによって閉じられる。
【0040】
有利なことに、圧縮対象流体がチャネル内を循環してモーターに入り、ステーター14とローター構造16の間を循環することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、符号57aによって示した箇所、が形成され、また、圧縮対象流体がモーターを冷却した後にモーターを出て前記チャネルに再度合流することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、符号57bによって示した箇所、が形成される。
【0041】
同様に、有利なことに、圧縮対象流体がチャネル54内を循環して、軸方向ベアリング24、前側半径方向ベアリング18及び後ろ側半径方向ベアリング22の近くを循環することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、
図1の符号59aによって示した箇所、が形成され、前記軸方向ベアリング24、前側半径方向ベアリング18及び後ろ側半径方向ベアリング22を冷却した後に、圧縮対象流体が前記チャネル54に再度合流することを可能にするように構成している、少なくとも1つのオリフィス、例えば、符号57bによって示した箇所、が形成される。
【0042】
したがって、圧縮対象流体は、入口5を通って第1の圧縮段に入った後、チャネル54内で、第1の圧縮段と第2の圧縮段の間で縦軸に沿って位置するコンプレッサーの部分を通過して、第2の圧縮段に再度合流する。この結果、圧縮対象流体は、内壁52とモーターのフェライト要素14bの間を通る際に、第2の圧縮段に入る前に、モーターを冷却し、モーターが失った熱を回収して効率を高める。また、オリフィス57a、57b、59aによって、流れをわずかに偏向させて、圧縮対象流体がステーター14とローター構造16の間及びベアリング内においても循環して、これらの要素するためを冷却し、モーターにおける熱損失及びベアリングにおける摩擦によって発生する熱損失を回復させることを可能にする。
【0043】
遠心コンプレッサー1は、100000rpm~500000rpmの範囲内の非常に大きな回転速度に到達することを可能にする。遠心コンプレッサー1は、第1の圧縮段で圧縮された流体がシステム全体を実質的に通過して、廃熱、特にモーター、ベアリング、及び電子コンポーネントからの廃熱、を回収することを可能にして、第2の圧縮段に入る前に効率を高める(圧縮対象流体の温度が上昇するに従ってその圧力も上昇する)。また、追加の冷却回路を使用せずに、コンプレッサーを冷却するために、圧縮対象流体のみを用いること、及びケーシングに搭載される電子デバイスのためのコンプレッサーにおける電子コンポーネントの構成によって、コンプレッサーが非常にコンパクトになる。したがって、本発明に係るコンプレッサーは、小さな体積しか占めないにもかかわらず、大きな回転速度及び高い圧縮比を有する。例えば、本発明に係るコンプレッサーは、L×W×H(cm)が14×8×11のオーダーの寸法構成とわずか1.6kgの重量に対して、3より大きい圧縮比と4kWのオーダーの出力を有する。
【0044】
例えば、本発明に係るコンプレッサーは、空気ないしガスからパワーを得る燃料電池、又は圧縮空気を用いる任意の他のシステム(工業用コンプレッサー、医療用コンプレッサー、船舶など)とともに用いることができる。
【0045】
本発明に係るコンプレッサーは、冷媒ガスとともに、電気式、ハイブリッド式又は水素を燃料とする車両におけるもののような移動体用のHVAC(暖房、換気及び空調:heating, ventilation and air conditioning)システムにおいて用いることができる。
【0046】
また、遠心コンプレッサーは、ヒートポンプのような冷媒ガスとともに固定システムでも用いることができる。
【0047】
遠心コンプレッサーは、天然ガスとともに用いることもできる。
【0048】
図4は、シャフト7の第1の端と第2の端の部分上にリブないし溝を形成し、そして、シャフト7の一部を形成する軸方向ベアリング24のディスクの第1の面上に、又はさらに、シャフト7の一部を形成する軸方向ベアリング24のディスクの第2の面上に、リブないし溝を形成するための加工ユニット100を示している。
【0049】
加工ユニット100は、所定の回転速度ωでリブないし溝を加工して形成するときにシャフト7の両端においてシャフト7を保持しシャフト7を回転させるための2つのスピンドル140がある旋盤130を備える。加工ユニット100の第1の鉛直方向の柱ないし壁102上に、第1のスピンドル140が位置しており、第1の鉛直方向の柱ないし壁102とは反対側にある第2の鉛直方向の柱ないし壁103上に、第2のスピンドル140が位置している。加工ユニット100の2つの鉛直方向の壁102、103は、基部101によって接続されており、この基部101には、少なくとも1つの加工工具120、又は2つの加工工具120、121、又は複数の他の異なる加工工具を担持することができる少なくとも1つの工具ホルダー160をガイドするための手段が配置されている。加工工具100の基部101において工具ホルダー160をガイドするための手段は、例えば、ベース101にある1つ又は2つのガイドレール(図示せず)、上を縦方向A-Aに動くことができる。
【0050】
すでに説明したように、2つのスピンドル140の間に配置され縦軸A-Aのまわりを回転可能に駆動されるシャフト7の前側の第1の部分又は後ろ側の第2の部分上にリブないし溝を加工して形成するために、工具ホルダー160を、シャフト7に平行に、そして好ましくは水平に、動かして、第1の加工工具120を加工位置に配置することができる。第1の加工工具120は、シャフト7の部分に垂直に向いて、シャフト7のワーク部分の1つ上にリブないし溝を加工して形成することができるようにする。その後に、工具ホルダー160は、シャフト7の第2のワーク部分の方へとシャフト7に平行に再び動かされる。
【0051】
この加工ユニット100の第1の代替的実施形態において、第2の加工工具121を、第1の加工工具120として同じ工具ホルダー160に取り付けられるようにしたり、又は第1の加工工具120の方向とは垂直の方向に向いている別の工具ホルダー(図示せず)に取り付けるようにしたりすることができる。この第2の加工工具121を、シャフト7の一部を形成する軸方向ベアリング24のディスクの少なくとも1つの面上にリブないし溝を加工して形成することに用いることができる。そのために、工具ホルダー160を、軸方向ベアリング24のディスクの位置まで、シャフト7に平行に動かす。第2の加工工具121は、ディスクの近くに配置された後に、軸方向ベアリング24のディスクの面の少なくとも1つ上にリブないし溝を加工して形成するように駆動される。
【0052】
なお、この加工ユニットの第1の代替的実施形態において、2つの加工工具に対して同じ工具ホルダーを使って、片持ちされる部分が発生して、加工精度が悪くなることを避けることが好ましい。同じ工具ホルダー160を用いることによって、設定が異なることで2つの工具ホルダーが発生させる加工誤差が累積することがなくなる。
【0053】
1つの代替的実施形態において、シャフト7を回転可能に保持するスピンドル140を縦方向の加工方向に動かして、リブないし溝を形成することができる。すでに述べたように、縦方向にて取り付けたり動かしたりすることができるように、シャフト7は管状である。シャフト7が管状であるので、シャフト7の両端において、2つのスピンドル140は、それらの端を、シャフト7の管の内側に部分的に挿入して、シャフト7をロックした状態で保持して、加工のために設定された回転速度ωでシャフト7を回転させることができる。当然、加工動作中に、加工対象シャフト7とともに2つのスピンドル140は、縦方向に動くことができる。
【0054】
この代替的実施形態において、加工ユニット100は、さらに、旋盤130の構造に接続される少なくとも1つの工具ホルダー160を備える。当然、加工ユニット100の寸法は、実際よりも小さく描いている。工具ホルダー160は、第1の加工工具120を担持しており、この第1の加工工具120の加工ヘッドは、溝ないしリブを加工して形成するためにシャフトと接触し、加工ユニットがどのようにプログラムされているかに応じて往復運動をすることができる。加工工具120の加工ヘッドの少なくとも端部は、炭化タングステン又はセラミックスによって作られたシャフト7上にリブないし溝を加工して形成するために、ダイヤモンドによって作ることができる。これは、正弦波プログラムに従ってシャフト7を第1の加工工具120と同時に同期回転させて、各前側又は後ろ側空気ないしガス半径方向ベアリングに対して、シャフト7のワーク部分上に、リブないし溝の所定の構成を得るように行われる。
【0055】
また、1つの代替的実施形態において、シャフト上にリブないし溝を加工して形成するために、シャフト7ではなく、第1の加工工具120が取り付けられた工具ホルダー7を、縦方向の加工方向に動かすこともできる。
【0056】
加工ユニット100がどのようにプログラムされているかに応じて、第1の加工工具120の往復運動の周波数を変えることもできる。特に、加工工具の往復運動は、加工ユニットにおいて行われた正弦波ブログラムによって、また、シャフト7、及び/又はシャフト7の軸方向ベアリング24のディスク、の部分上にリブないし溝を形成する所望のプログラムされた構成に、同期するように行われる。
【0057】
なお、シャフト7の軸方向ベアリング24は、シャフト7と同じ材料によって一体的に作られる。したがって、シャフト7と、シャフト7の軸方向ベアリング24は、用いられる材料に応じてモールド操作によって、あるいは好ましくは、シャフト7の前側と後ろ側の部分上にリブないし溝を加工して形成するために用いられる、加工ユニット100の工具ホルダーの少なくとも1つの加工工具を用いることによって、作ることができる。この場合、工具ホルダー160の第1の加工工具120を用いることができる。また、シャフト7の初期ブランク上に軸方向ベアリング24を作るために、すでに管状であってもよい、このシャフト7の初期ブランクは、初期に、実質的に作成対象の軸方向ベアリング24の最終的な外径に対応する直径を有することができる。このブランクは、加工ユニット100の2つのスピンドル140に取り付けられて、縦軸のまわりを回転することができるようにする。シャフト7のブランクの材料よりも硬い、より研磨性が高い材料で作られている必要がある、第1の加工工具120は、回転シャフトの第1の端から、作成対象の軸方向ベアリング24のディスクの面の位置に対応するシャフト7の第1の位置へと動く。この第1の加工操作は、回転シャフトのブランクと、機械加工工具120を伴い、これによって、シャフトのブランクから第1の薄い材料層を除去することができる。その後に、所望のシャフトの直径に達するまで、第1の端が軸方向ベアリング24の第1の位置まで縦方向に変位することによって、加工工具120によって複数の他の連続した薄層が回転シャフトから除去されて、軸方向ベアリング24がシャフト7上に作られる。シャフトの続きがシャフトの反対側の端にある軸方向ベアリングの第2の位置から始まる場合、薄層を除去することによる機械加工は、シャフトのブランクの反対側においても行う必要があり、これは、管状ブランクの方向を変えて、シャフトのブランクを2つの反対側のスピンドル140に取り付けて、前と同様に加工工具120が工具ホルダー160に取り付けられた状態で操作を繰り返すことによって行う。このことによって、加工工具120を用いて加工ユニット100における別の位置から工具ホルダー160を動かさなくてはならないのではなく、スピンドル140の間のシャフトのブランクの向きを変えることが容易になる。
【0058】
当然、所望の直径を有するようにシャフト7を作り軸方向ベアリング24を作った後に、工具ホルダー160に接続された第1の工具機械加工120によって、シャフトの前側及び後ろ側の部分上にリブないし溝を加工して形成することができる。
【0059】
典型的には、加工対象のシャフト7は、炭化タングステン又はセラミックスによって作られる。したがって、加工工具120は、典型的には、ダイヤモンド加工ヘッドを備える。このことによって、第1の部分の開始箇所から第1の部分の終了箇所まで、シャフト7の第1の端の第1のワーク部分上におけるすべてのリブないし溝をそれぞれ1回で形成することができ、これは、加工ユニット100がどのようにプログラムされているかに応じて、加工工具120の往復運動によって、また、回転シャフト7の加工の縦方向における変位によって、さらには、第1の工具ホルダー160、又は工具ホルダー160における第1の工具120の縦方向の変位によって、行われる。
【0060】
この加工ユニット100の第1の実施形態において、第1の加工工具120に対して垂直な方向に工具ホルダー160に取り付けられた第2の加工工具121は、2つのスピンドル140の間に取り付けられたシャフト7の向きを変えることによって、軸方向ベアリング24のディスクの一方の面上に、又はディスクの2つの面上に、リブないし溝を形成するようにされる必要がある。
【0061】
また、第1の加工工具120によってシャフトの前側の第1の部分と後ろ側の第2の部分上に、リブないし溝を順次的に加工して形成することができる。加工ユニットがどのようにプログラムされているかに応じて、シャフト7の第1のワーク部分と第2のワーク部分の半分が終わったときに、リブないし溝の向きを変えて、加工された第1及び第2の部分の長さにわたってV字状の溝を得ることができる。その目的は、シャフト7が制限速度を超えて回転しているようにコンプレッサーが動作しているときに、第1の部分に配置された前側半径方向ベアリング又は第2の部分に配置された後ろ側半径方向ベアリング内に空気ないしガスの圧力を発生させて、シャフトと、1つ又は複数の前側及び後ろ側の半径方向ベアリングとの機械的接触がなくなるようにすることである。
【0062】
ディスクの形態の軸方向ベアリング24を加工するために、第2の加工工具121のみが使用され、この第2の加工工具121は、軸A-Aに沿って縦方向に変位可能な工具ホルダー160に取り付けることができる。ディスクの第1の面上におけるすべてのリブないし溝をそれぞれ1回で形成するように第2の加工工具121を作動させるように、リブないし溝及びその構成が加工ユニット100においてプログラムされ、この形成は、前記加工ユニット100がどのようにプログラムされているかに応じて、加工工具又は回転するディスクを、ディスクの周部からリブないし溝の環状領域の底部まで又は逆に、単一の加工方向に動かすことによって、かつ、加工工具121の往復運動によって、行われる。アキシアルベアリング24のディスクの2つの面を、2つのスピンドル140の間でシャフト7の向きを逆にすることによって、第2の加工工具によって加工して形成することができる。
【0063】
アキシアルベアリング24のディスクの1つ又は2つの面上に、2つの面上に同じ向きを有するように、又は2つの異なる向きを有するように、らせん状のリブないし溝を形成することができ、その目的は、遠心コンプレッサーの動作中に軸を縦方向の十分に良好にセンタリングされた位置を維持するようにシャフト7が回転しているときに、溝を介して空気の層を発生させることである。
【0064】
また、第1の加工工具120と第2の加工工具121の両方を、工具ホルダー160において第1の方向又はそれとは反対の第2の方向に動かして、工具ホルダー160における矢印によって象徴的に示しているように第1の加工工具120が、又は各加工工具120、121が、シャフト7のワーク部分と接触するようになったり離れたりするようになることができる。
【0065】
図5は、
図4の加工ユニット100の一部を部分的に用いている。しかし、この
図5においては、工具ホルダー160は1つだけであり、また、加工工具120も1つだけである。この加工工具120は、シャフト7の前側および後ろ側の部分上にリブないし溝を加工して形成するための図示した位置(1)と、軸方向ベアリング24のディスクの1つの面又は好ましくは2つの面上にリブないし溝を加工して形成するための図示した位置(2)となるように、工具ホルダー160の軸150のまわりを回転可能に、向いており又は動く。
【0066】
図4に示している工具ホルダー160に関して、この工具ホルダー160を、例えば加工ユニット100の基部101に配置された1つ又は複数のガイドレール上を、縦方向に動かすことができる。
【0067】
この加工機100の第2の実施形態は、
図4に示した第1の実施形態よりも使いやすいように感じるが、シャフト7の部分および軸方向ベアリング24のディスク上にリブないし溝を形成することが必ずしも迅速であるわけではない。この
図5に示したすべての要素は、
図4を参照しながら説明した要素と同一であるため、その説明を繰り返さない。工具ホルダー160は、2つを超える数の加工工具を装備することができるが、シャフト7の1つ又は2つの部分上に、又はアキシアルベアリング24のディスクの1つ又は2つの面上に、リブないし溝を加工して形成するために、1つの加工工具のみが動作する。
【0068】
当然、本発明は、説明した例に限定されず、当業者に明白な様々な代替形態が可能であり、変更を行うことができる。当然、遠心コンプレッサーと組み合わせることが知られている他の組み合わせも可能である。上記で説明したものではない他のワークピースに対して、均等な加工要素を用いて、リブないし溝の迅速かつ正確な加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 遠心コンプレッサー
2 ケーシング
5 流体入口
6 圧縮流体の出口
7 シャフト
8、10 コンプレッサー車
16 ローター構造
16a 永久磁石
18、22 半径方向ベアリング
24 軸方向ベアリング
24a、32 リブないし溝
100 加工ユニット
120、121 加工工具
160 工具ホルダー
【外国語明細書】