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特開2024-160965癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞
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  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図1
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図2A
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図2B
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図3
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図4
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図5
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図6
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図7
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図8
  • 特開-癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160965
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】癌を治療するためのマウス抗CD19キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子、ベクター及びその細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20241108BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241108BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20241108BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241108BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20241108BHJP
   A61K 35/17 20150101ALN20241108BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
A61P35/00
A61K35/17
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072668
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】18/311409
(32)【優先日】2023-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521311643
【氏名又は名称】沛爾生技醫藥股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林成龍
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA66
4C087ZB26
4H045AA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸分子を提供する。
【解決手段】前記CARは、マウス抗CD19結合構造ドメインを含む一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片であって、前記マウス抗CD19結合構造ドメインは、CDR H1、CDR H2及びCDR H3を含む重鎖可変領域と、CDR L1、CDR L2及びCDR L3を含む軽鎖可変(VL)領域とを含む一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片と、4-1BBを含む共刺激構造ドメインと、CD3-ζの天然細胞内シグナル伝達構造ドメインを含む初代細胞内シグナル伝達構造ドメインとを含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子であって、前記キメラ抗原受容体は、
重鎖相補性決定領域1、重鎖相補性決定領域2及び重鎖相補性決定領域3を含む重鎖可変領域と、
軽鎖相補性決定領域1、軽鎖相補性決定領域2及び軽鎖相補性決定領域3を含む軽鎖可変領域とを含むマウス抗CD19結合構造ドメインを含み、
前記重鎖相補性決定領域1は、配列番号1を含み、前記重鎖相補性決定領域2は、配列番号2を含み、前記重鎖相補性決定領域3は、配列番号3を含み、前記軽鎖相補性決定領域1は、配列番号4を含み、前記軽鎖相補性決定領域2は、配列番号5を含み、前記軽鎖相補性決定領域3は、配列番号6を含む一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片と、
4-1BBを含む共刺激構造ドメインと、
CD3-ζの天然細胞内シグナル伝達構造ドメインを含む初代細胞内シグナル伝達構造ドメインと、
を含む、キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項2】
前記マウス抗CD19結合構造ドメインは、一本鎖可変断片、二本鎖可変断片、抗原結合断片、又はF(ab’)2である、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項3】
前記重鎖可変領域は、配列番号7又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号8又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項4】
前記マウス抗CD19結合構造ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項5】
前記マウス抗CD19結合構造ドメインは、前記マウス抗CD19結合構造ドメインをコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、配列番号10、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項6】
前記4-1BBは、配列番号13のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項7】
前記4-1BBは、前記4-1BBをコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、配列番号14、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項8】
前記CD3-ζは、配列番号15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項9】
前記CD3-ζは、前記CD3-ζをコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、配列番号16、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項10】
前記キメラ抗原受容体は、前記一本鎖抗体又は前記一本鎖抗体断片、前記共刺激構造ドメイン、及び前記初代細胞内シグナル伝達構造ドメインを順に含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項11】
CD8ヒンジの膜貫通ドメインをさらに含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項12】
前記CD8ヒンジは、配列番号11のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項11に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項13】
前記CD8ヒンジは、前記CD8ヒンジをコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、配列番号12、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む、請求項11に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項14】
前記キメラ抗原受容体は、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項15】
前記キメラ抗原受容体は、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、配列番号18、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子。
【請求項16】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子を含む、ベクター。
【請求項17】
前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びレトロウイルスベクターからなる群から選択される、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
EF-1プロモーターをさらに含む、請求項16に記載のベクター。
【請求項19】
請求項16に記載のベクターを含み、ヒトT細胞である、細胞。
【請求項20】
前記T細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、又はそれらの組み合わせである、請求項19に記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キメラ抗原受容体に関し、特にマウス抗CD19キメラ抗原受容体に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞は、免疫逃避を促進する多くの特性を持っている。最近、キメラ抗原受容体T細胞(chimeric antigen receptor-T;CAR-T)は、腫瘍細胞治療を特異的に標的とするために設計される。CAR-Tは、患者の自体T細胞を遺伝子改変することによって生成される。単離、賦活化、遺伝子改変及び増幅などのプロセスにより、あらかじめ設計された遺伝子を患者のT細胞に導入し、生成されたCAR-Tは、そのCAR構造により特定の癌標的モチーフ(motif)を同時に発現し、且つ癌細胞に対して強化される細胞毒性を示す。そして、完全に調製されたCAR-Tを患者の体内に再注入して癌を治療する。
【0003】
上記の努力をしたにもかかわらず、より効果的なCAR-Tが求められ続けている。そのため、従来技術を改善する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示における一実施形態は、キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子を提供し、キメラ抗原受容体は、マウス抗CD19結合構造ドメインを含む一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片であって、マウス抗CD19結合構造ドメインは、重鎖相補性決定領域1(CDR H1)、CDR H2及びCDR H3を含む重鎖可変(heavy chain variable;VH)領域と、軽鎖相補性決定領域1(CDR L1)、CDR L2及びCDR L3を含む軽鎖可変領域(light chain variable;VL)とを含み、CDR H1は、配列番号1を含み、CDR H2は、配列番号2を含み、CDR H3は、配列番号3を含み、CDR L1は、配列番号4を含み、CDR L2は、配列番号5を含み、CDR L3は、配列番号6を含む一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片と、4-1BBを含む共刺激構造ドメイン(costimulatory domain)と、CD3-ζ(CD3 zeta)の天然細胞内シグナル伝達構造ドメインを含む初代細胞内シグナル伝達構造ドメイン(primary intracellular signaling domain)とを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、マウス抗CD19結合構造ドメインは、一本鎖可変断片(single-chain variable fragment;scFv)、二本鎖scFv、抗原結合断片(Fab)、又はF(ab’)2である。
【0006】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号7又はそれと少なくとも90%の同一性(identity)を持つ配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号8又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、マウス抗CD19結合構造ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、マウス抗CD19結合構造ドメインは、マウス抗CD19結合構造ドメインをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号10、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、4-1BBは、配列番号13のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、4-1BBは、4-1BBをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号14、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、CD3-ζは、配列番号15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、CD3-ζは、CD3-ζをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号16、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片、共刺激構造ドメイン及び初代細胞内シグナル伝達構造ドメインを順に含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体をコードする単離核酸分子は、CD8ヒンジ(hinge)の膜貫通ドメインをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、CD8ヒンジは、配列番号11のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、CD8ヒンジは、CD8ヒンジをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号12、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、前記キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号18、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0019】
本開示の別の実施形態は、上記のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びレトロウイルスベクターからなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、ベクターは、EF-1プロモーターをさらに含む。
【0022】
本開示の別の実施形態は、上記のベクターを含み、ヒトT細胞である細胞を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、又はそれらの組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面を合わせて以下の詳細な説明を読むと、本開示の様々な態様が最も理解しやすい。注意すべきことに、業界標準の操作手順に従って、さまざまな特徴的構造が比例して描かれていない可能性がある。実際に、論述を明確にするために、様々な特徴的構造の寸法を任意に増減することができる。本開示の上記及びその他の目的、特徴、利点、及び実施例をより明確にわかりやすくするために、図面を以下のように説明する。
図1】フローサイトメトリーを使用してP1ゲーティングされたRaji癌細胞株の表面でのCD19の発現である。
図2A】CD19+Raji癌細胞と5時間共培養した後に形質導入されていない(untransduced;UTD)及びCAR形質導入された初代T細胞(primary T cell、CD19.BB.z)のCD107aの脱顆粒(degranulation)の度合である。
図2B】CD4+CAR-T亜集団(CD4 CD19.BB.z)及びCD8+CAR-T亜集団(CD8 CD19.BB.z)を含む初代T細胞とCD19+Raji癌細胞とを5時間共培養した後に、形質導入されていない(CD4 UTD、CD8 UTD)及びCAR形質導入された初代T細胞のCD107aの脱顆粒の度合である。
図3】Raji癌細胞と、形質導入されていない(UTD)及びCAR形質導入された初代T細胞(mCD19)とを48時間共培養した後、ルシフェラーゼ(luciferase;Luc)に基づく細胞毒性実験に基づいて測定された特異的細胞溶解である。
図4】異なるE:Tの比でRaji癌細胞を露出させないか又は露出させる場合に、CAR形質導入された初代T細胞の増殖状況をフローサイトメトリーで測定する。
図5図4のCAR-T増殖モデルである。
図6】白血病異種移植(xenograft)動物モデルに対する研究設計である。
図7】同じイメージング条件で指定された期間に得られたG1~G4マウスの生物発光画像である。
図8】屠殺当日にRaji/Luc癌細胞移植マウスの器官(心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓、脳及び大腿骨)及び全身にわたるインビボ生物発光強度である。
図9】CAR-TをRaji/Luc癌モデルに投与したKaplan-Meierの生存率曲線である。バーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma)の無病生存率の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の記述をより詳細かつ完全にするために、以下では本開示の実施形態と具体的な実施例について例示的に説明するが、これは本開示の具体的な実施例を実施又は運用する唯一の形式ではない。以下に開示される各実施例は、有益な場合には互いに組み合わされてもよいし、代替されてもよいし、さらなる記載や説明を必要とせずに、一実施例に他の実施例を追加してもよい。以下の説明では、読者が以下の実施例を十分に理解できるように、多くの特定の詳細を詳細に述べる。しかしながら、本開示の実施例は、このような特定の詳細なしで実施することもできる。
【0026】
本明細書では、冠詞について特に限定されない限り、「1つの」と「この」は、単一又は複数を一般的に指すことができる。さらに理解できるように、本明細書で使用される「含む」、「含有する」、「有する」及び類似語は、記載されている特徴、領域、整数、工程、操作、要素及び/又はコンポーネントを示すが、前記又はさらなる1つ又は複数の他の特徴、領域、整数、工程、操作、要素、コンポーネント、及び/又はその群を除外するものではない。
【0027】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸分子のCARは、一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片を含む。一本鎖抗体又は一本鎖抗体断片は、マウス抗CD19結合構造ドメインを含み、膜貫通ドメインは、CD8ヒンジを含み、共刺激構造ドメインは、4-1BBを含み、初代細胞内シグナル伝達構造ドメインは、CD3-ζの天然細胞内シグナル伝達構造ドメインを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、マウス抗CD19結合構造ドメインは、重鎖相補性決定領域1(CDR H1)、CDR H2及びCDR H3を含む重鎖可変(VH)領域と、軽鎖相補性決定領域1(CDR L1)、CDR L2及びCDR L3を含む軽鎖可変(VL)領域とを含む。CDR H1は、配列番号1を含み、CDR H2は、配列番号2を含み、CDR H3は、配列番号3を含み、CDR L1は、配列番号4を含み、CDR L2は、配列番号5を含み、CDR L3は、配列番号6を含む。CDR領域は、Kabatの定義で限定されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域の全長は、配列番号7を含み、軽鎖可変領域の全長は、配列番号8、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、マウス抗CD19結合構造ドメインの一本鎖可変断片(scFv)の全長は、配列番号9のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、マウス抗CD19結合構造ドメインは、マウス抗CD19結合構造ドメインをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号10、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、CD8ヒンジは、配列番号11のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD8ヒンジは、CD8ヒンジをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号12、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、4-1BBは、配列番号13のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBは、4-1BBをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号14、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、CD3-ζは、配列番号15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3-ζは、CD3-ζをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号16、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、CARの全長は、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARの全長は、CARをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、配列番号18、又はそれと少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、配列番号10、12、14、16、18と少なくとも90%の同一性を持つ核酸配列については、それぞれ配列番号10、12、14、16及び18と90%~99%の同一性を持つ配列も本実施形態において同様な効果を提供することができる。例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又はこれらの値のうちのいずれか2つの値の間の任意の値である。
【0037】
いくつかの実施例では、前記核酸配列は、配列番号10、12、14、16及び18の縮重配列から選択される。「縮重配列」という用語とは、本開示において、ヌクレオチドの一部が置換された核酸配列である。つまり、配列番号10、12、14、16及び18の縮重配列とは、配列番号10、12、14、16及び18の配列長が一定である場合に、オリゴヌクレオチド配列と約1%~10%の変異が許容され得ることを意味する。
【0038】
いくつかの実施例では、前記核酸配列は、配列番号10、12、14、16及び18の誘導配列から選択される。「誘導配列」という用語とは、本開示におけるオリゴヌクレオチド配列の3’端及び/又は5’端が改変されており、且つオリゴヌクレオチド配列の一部又は全部が保持できることを意味する。
【0039】
「相同性(homologous)」又は「同一性(identity)」という用語は、2つのポリマー分子の間(例として、2つの核酸分子の間、例えば2つのDNA分子又は2つのRNA分子、又は2つのポリペプチド分子の間)のサブユニット配列の同一性を意味する。2つの分子のサブユニットの位置がいずれも同様なモノマーサブユニットによって占有された場合、例えば2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニン(adenine)によって占有される場合、この位置で相同又は同一である。2つの配列の間の相同性は、一致する位置又は相同な位置の数に直接関係し、例えば2つの配列における位置の半分(例えば10サブユニット長のポリマーにおける5つの位置)が相同である場合に、2つの配列は、50%相同であり、90%の位置(例えば10分の9)が相同又は同一である場合に、2つの配列は、90%相同である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示は、CARをコードする核酸配列を含むベクターに関する。一実施形態では、前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はレトロウイルスベクターからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記ベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態では、前記ベクターは、プロモーターをさらに含む。いくつかの実施例では、前記プロモーターは、EF-1プロモーターである。いくつかの実施例では、前記プロモーターは、EF-1αプロモーターである。いくつかの実施例では、前記ベクターは、インビトロ転写ベクター(in vitro transcribed vector)である。
【0042】
いくつかの実施形態では、細胞は、上記のベクターを含む。一実施形態では、前記細胞は、ヒトT細胞である。いくつかの実施例では、前記T細胞は、CD8+T細胞である。
【0043】
以下にいくつかの実施例及び実験例を挙げて、本開示のマウス抗CD19キメラ抗原受容体をより詳細に説明するが、それらは、例示的な説明のためのものにすぎず、本開示を限定するためのものではなく、本開示の保護範囲は、後述の特許請求の範囲に規定されたものに準じている。
【0044】
実施例
【0045】
以下、一連の操作又は工程を用いて本開示の方法を説明するが、これらの操作又は工程に示される手順は、本開示の制限として解釈されるべきではない。例えば、いくつかの操作又は工程は、異なる手順で実行することができ、及び/又は他の工程と同時に実行することができる。さらに、本開示の実施形態を実現するために、すべての図示された操作、工程、及び/又は特徴を実行する必要はない。さらに、ここに記載の各操作又は工程は、複数のサブ工程又はサブ操作を含むことができる。
【0046】
実施例1 レンチウイルスの生成
【0047】
レンチウイルスは、CAR-T細胞を生成するための重要な材料であった。レンチウイルスは、特別に設計されたCARプラスミド配列をヒトT細胞に形質導入して、CARを発現するT細胞を生成するために用いられた。
【0048】
レンチウイルス生成用の細胞を製造するために、培養フラスコで培養された付着された293T細胞をトリプシンで単離した。FBS含有培地のトリプシン処理(trypsinization)が停止した後、293T細胞を遠心分離によって収集し且つ293T培地(10%のFBSを含むDMEM、2mMのグルタミン及び1mMのピルビン酸塩)に再懸濁した。アクリジンオレンジ/ヨウ化プロピジウム(acridine orange/propidium iodide)を使用して細胞を染色し、LUNA-FL(商標)自動蛍光セルカウンター(AO/PI及びセルカウンターと略す)を使用して自動的に細胞計数を行って293T細胞の数及び生存率を決定した。T875培養フラスコにおける293T細胞を使用してレンチウイルスを生成する場合、1.5×10個の細胞を200ミリリットル(mL)の培地に再懸濁し、均一に混合し、そしてT875培養フラスコに移した。そして細胞を含有するT875を37℃/5%のCOの加湿インキュベータに置いて細胞培養を行った。
【0049】
3日培養した後、293T細胞と、トランスフェクション試薬Polyjet(商標)及びGAG-Pol、Rev、VSV-G、CD19を遺伝子組換えして(上記のマウス抗CD19結合構造ドメイン、CD8ヒンジ、4-1BB、及びCD3-ζを含む)なる4つの単独DNAプラスミドを含有する、第5のDNAプラスミドTATを含有する又は含有しない培地とを共培養することにより、レンチウイルスパッケージングを開始した。DNAプラスミドの樹立は、主に受託合成により分子クローン技術で改変され、メーカーのプロトコールに基づいてトランスフェクション試薬Polyjet(商標)を使用してトランスフェクションプロセスを行った。293Tの元の培地を吸い出し、8mLのPolyJet/DNAプレミックスを含む108mLの無血清DMEMに交換した。そしてT875を37℃/5%のCOの加湿インキュベータに入れて細胞トランスフェクションを行った。
【0050】
12~18時間トランスフェクションした後、細胞培養物をPBSですすぎ、レンチウイルスを含有する上清を採取するために、100mLのOPTI-MEM培地(Opti-MEM、2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸、0.25%のアルブミン、及び20mMのHEPES)を補充した。レンチウイルスを連続的に生成し採取するために、T875を37℃/5%のCOの加湿インキュベータに入れて培養した。具体的には、レンチウイルスを含有する上清を24時間ごとに1~2回採取し、採取するごとに100mLの新鮮なOPTI-MEM培地に交換した。
【0051】
レンチウイルスを含有する上清を採取するごとに、0.45μmのフィルターカップで浄化し且つ4℃で一時的に保管した。メーカーの指示に基づいて、タンジェンシャルフローろ過(tangential flow filtration;TFF)装置KrosFlo(登録商標)でレンチウイルスサンプルをさらに精製し、緩衝液を交換して濃縮した。特定の手順で接続された滅菌容器、チューブ、中空糸及びペリスタポンプによって生成される圧力によって駆動されるレンチウイルスサンプルを使用して、細胞や細胞破片など、レンチウイルス中の潜在的な汚染物を浄化し、T細胞の形質導入に対してより適するように、レンチウイルスを緩衝液に交換し、より高い濃度に濃縮した。TFFで処理されたレンチウイルスを0.2μmのろ紙で滅菌し、-80℃で保存した。
【0052】
CD19 CAR構築体は、マウス抗CD19結合構造ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激構造ドメイン、及び初代細胞内シグナル伝達構造ドメインを含む一本鎖抗体を含んだ。マウス抗CD19結合構造ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含んだ。重鎖可変領域は、CDR H1(配列番号1)、CDR H2(配列番号2)及びCDR H3(配列番号3)を含み、軽鎖可変領域は、CDR L1(配列番号4)、CDR L2(配列番号5)及びCDR L3(配列番号6)を含んだ。重鎖可変領域の全長は、配列番号7を含み、軽鎖可変領域の全長は、配列番号8を含んだ。マウス抗CD19結合構造ドメインのscFvの全長は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、マウス抗CD19結合構造ドメインをコードする核酸配列は、配列番号10であった。膜貫通ドメインは、CD8ヒンジであり、CD8ヒンジは、配列番号11のアミノ酸配列を含み、CD8ヒンジをコードする核酸配列は、配列番号12であった。共刺激構造ドメインは、4-1BBであり、4-1BBは、配列番号13のアミノ酸配列を含み、4-1BBをコードする核酸配列は、配列番号14であった。初代細胞内シグナル伝達構造ドメインは、CD3-ζの天然細胞内シグナル伝達構造ドメインであり、CD3-ζは、配列番号15のアミノ酸配列を含み、CD3-ζをコードする核酸配列は、配列番号16であった。CARの全長は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、CARをコードする核酸配列は、配列番号18であった。
【0053】
実施例2 CAR-Tの生成
【0054】
メーカーの手順に基づいて、Ficoll(登録商標)-Paque Premium密度勾配培地及びSepMate(商標)で健常な患者の全血サンプルから末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells;PBMCs)を単離した。単離後、PBMCsを2%のヒトアルブミンを含むPBSに2×10個の細胞/mL~5×10個の細胞/mLの細胞密度で再懸濁した。
【0055】
PBMCを同定するために、AO/PI及びセルカウンターを使用して細胞を染色することにより、細胞のサイズ、生存率、及び総数を決定した。T細胞の数を定量するために、DuraClone IM Phenotyping BASICチューブを使用してPBMCを染色し、フローサイトメトリー(CytoFLEX)によりそのCD3+細胞の百分率(%)を分析した。
【0056】
再懸濁したPBMCサンプルからT細胞を単離し、それらを賦活化するために、Dynabeads(登録商標)磁気ビーズをPBMC細胞懸濁液に添加し、添加量は、特定のDynabeads(登録商標)とT細胞との比を満たすようにCD3+T細胞の総数に基づいて決定された。混合したDynabeads(登録商標)及びPBMCサンプルをゆっくりと回転させ、そして磁力ホルダーに置いて固定し、ビーズ及び細胞を選択して磁気ビーズ-細胞複合体を形成した。そして2%のヒトアルブミンを含むPBSの細胞懸濁緩衝液をT細胞培養用の完全なX-VIVO(商標)15培地と置き換えた。
【0057】
Dynabeads(登録商標)で単離されるT細胞の総数を(AO/PI及びセルカウンターで)定量し、T細胞(磁気ビーズ-細胞複合体)を1×10個の細胞/mLの細胞密度で培養フラスコに接種した。そしてT細胞を含有する培養フラスコを37℃/5%のCOの加湿インキュベータに入れて一晩培養した。
【0058】
一晩培養した後、あらかじめ力価を測定したレンチウイルスを解凍し、T細胞を含有する培養フラスコに添加し、少なくとも20回軽くピペッティング(pipetting)し、培地と混合した。培養フラスコを37℃/5%のCOの加湿インキュベータに戻してレンチウイルス形質導入及びT/CAR-T細胞のさらなる増幅を行った。
【0059】
2日培養した後、磁力固定装置を使用して磁気ビーズを固定し、そして磁気ビーズにおける細胞をあらかじめ存在した培地ですすぎ、Dynabeads(登録商標)を磁気ビーズ-細胞複合体から分離した。磁気ビーズを細胞から完全に分離することを確保し、磁気ビーズによる細胞生成物の汚染を最小限に抑えるために、ビーズ除去プロセスを複数回繰り返した。そしてAO/PI染色及びセルカウンターを用いて、分離したCAR-T細胞の細胞サイズの特徴、生存率及び総数を検査した。
【0060】
G-Rex(登録商標) 10M急速増殖細胞培養システムを使用してCAR-T細胞をさらに4日増幅した。3×10個のCAR-T細胞をG-Rex(登録商標)に添加し、100mLの完全なX-VIVO(商標)15で培養した。CAR-T細胞を含有するG-Rex(登録商標)を37℃/5%のCOの加湿インキュベータに置いて4日培養した。
【0061】
G-Rex(登録商標)で4日培養した後、G-Rex(登録商標)を反転して混合し、増幅したCAR-Tをシリンジ及び三方バルブでサンプリングした。AO/PI染色及びセルカウンターを用いて、増幅倍数を計算するためのCAR-T細胞の総数を定量した。T細胞の百分率、より具体的には、CAR-T細胞の百分率を決定するために、細胞に対して、DuraClone IM Phenotyping BASICチューブでそのCD3+細胞の百分率(%)を染色して分析するだけではなく、さらにビオチン化したα-マウスF(ab’)2抗体でそのCAR+細胞の百分率(%)を測定し、いずれもフローサイトメトリー(CytoFLEX)で定量した。そして、得られた特徴付けられた(characterized)CAR-T細胞を様々な実験に用いた。
【0062】
実施例3 CAR-Tの賦活化と毒性
【0063】
CD107aの脱顆粒過程は、顆粒膜と免疫エフェクター細胞の細胞質膜との融合に伴う結果、リソソーム関連タンパク質の表面が露出した。CD107aなどのこれらのリソソーム関連タンパク質は、一般的に溶解顆粒の周辺の脂質二重層にあった。そのため、細胞質膜でのCD107aの発現は、免疫細胞が賦活化され及び細胞毒性が脱顆粒されるマーカーとして使用することができる。
【0064】
Raji癌細胞株は、CD19+細胞であり、フローサイトメトリーによりP1ゲーティング(P1 gating)されると、表面でのCD19の発現率は、99.96%に達した(図1)。Raji癌細胞と、形質導入されていない又はCAR形質導入された初代T細胞とを異なるエフェクター細胞と腫瘍細胞との比(エフェクター:ターゲットの比、effector to target(E:T)ratio)(0.3:1、1:1、3:1及び10:1)で5時間培養し、CAR形質導入されたT細胞でのみ明らかなCD107aの脱顆粒が観察された(図2A)。CD4+CAR-T細胞亜集団は、CD8+CAR-T亜集団よりも明らかな脱顆粒効果があるようであった(図2B)。
【0065】
ルシフェラーゼに基づく細胞毒性実験は、CAR形質導入されたT細胞と1:1、3:1及び10:1のE:Tの比でそれぞれ48時間共培養すると、20%、40%及び80%を超えるCD19+Raji癌細胞が溶解されたことを示した(図3)。細胞毒性は、高いE:Tの比で強化され、明らかな用量依存性の効果があった。
【0066】
実施例4 CAR-Tの増殖
【0067】
ベースラインの時にカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(carboxyfluorescein succinimidyl ester;CFSE)をマーカーとしてCAR-T細胞を染色し、72時間から開始して6日継続し、異なるE:Tの比のRaji癌細胞と接触した後、CFSE強度の低下及びCAR形質導入されたT細胞の増殖状況を観察した。Raji癌細胞と接触した後、明らかなCAR-Tの増殖が観察され(図4)、CAR-Tの細胞分裂のモードを示した(FCS Express(商標)7、De Novoソフトウェア、カリフォルニア州、米国)(図5)。
【0068】
実施例5 白血病異種移植動物モデル
【0069】
Raji/Luc癌細胞を6~8週齢の雄ASIDマウス(0日目とした)の尾静脈(1×10個の細胞/200μL/マウス)に注射した。7日目(D7)に、マウスにCAR-T細胞を1回静脈内注射(i.v.)した。予定された日に生物発光イメージング(bioluminescence imaging;BLI)により腫瘍の進行を監視した。マウスの体重及び臨床徴候(clinical sign)の観察を毎週記録した。蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting;FACS)によりCAR-T細胞の持続性を週1回に監視した。BLIにより器官(心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓、脳及び大腿骨)のルシフェラーゼ活性(図6)を測定した。
【0070】
表1は、群分け及び投与を示した。Raji/Luc癌細胞注射群の第1のブロック因子(block factor)は、マウスの体重であった。体重に基づいて、マウスを10個のレベル(低から高まで、1つのレベルに4匹のマウス)に分けた。各レベルのマウスを各群にランダムに分けた。CAR-T細胞注射群の第2のブロック因子は、生物発光シグナルであった。生物発光シグナルに基づいて、マウスを10個のレベル(低から高まで、1つのレベルに4匹のマウス)に分けた。各レベルのマウスを各群にランダムに分けた。
【0071】
【表1】
【0072】
同じイメージングの条件で指定された期間に得られたG1~G4マウスの生物発光画像である図7を参照されたい。符号X、▲、及び●は、それぞれD17~D25の人道的エンドポイント(ほとんどのマウスが麻痺症状を発症)、D28~D56の人道的エンドポイント(ほとんどのマウスの体重が減少)及びD56の実験的エンドポイント(生存)を表した。各群の生物発光強度の平均値(x10、光子/秒/cm/sr)は、表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
結果によれば、G1群の生理食塩水群マウスは、Raji癌細胞が注射された後、2~3週間以内に死亡したことを示した。逆に、E:Tの比が高い場合に、生物発光強度は、最初の週から3週間にかけて明らかに用量依存的に減少し、その中でD17~D25の間に、ほとんどのマウスは、癌により麻痺症状を伴って死亡した(図7において符号xで示した)。なお、D28~D56の間に、ほとんどのマウスは、移植片対宿主病(Graft-versus-host disease;GVHD、一般的に拒絶反応として呼ばれる)により体重減少を伴って死亡し(図7において符号▲で示す)、病理学的セクションによりさらに証明された。なお、G4群に示すように、最初の週から2週間にかけての生物発光強度の減少は、腫瘍が初期の数週に減少したことを示したが、D28~D56の間に、ほとんどのマウスは、GVHDにより体重減少を伴って死亡した。
【0075】
図8は、屠殺当日にRaji/Luc癌細胞移植マウスの器官(心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓、脳及び大腿骨)及び全身のインビボ生物発光強度であった。屠殺当日に各群の指定された器官の生物発光強度の平均値(光子/秒/cm/sr)は、表3に示した。
【0076】
【表3】
【0077】
結果によれば、生物発光強度は、心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓、脳及び大腿骨などの全身にわたるRaji癌細胞の分布を表すことを示した。すべての器官の生物発光強度は、高いE:Tの比でいずれも低減し、明らかな用量依存性の効果があった。
【0078】
図9に示すように、図9は、CAR-Tを投与したRaji/Luc癌モデルのKaplan-Meier生存率曲線である。CAR-T投与後の実際の生存率を分析するために、GVHDにより死亡したマウスを除外した。バーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma)の無病生存率曲線において、生理食塩水のみを投与したG1群のマウスは、すべてRaji癌細胞移植後の24日で死亡した。これに対して、E:T=1:1のG2群の生存率は、25%、E:T=3:1のG3群の生存率は、70%、そして驚くべきことに、E:T=10:1のG4群のRaji癌細胞移植後28日以内の生存率は、100%であった。
【0079】
本開示は、上記のように実施形態で開示されているが、本開示を限定するために使用されるものではなく、いかなる当業者であれば、本開示の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更と修正を行うことができるので、本開示の保護範囲は、後に添付された特許請求の範囲によって規定されている者を基準とする。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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