(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160977
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】イオン伝導性複合材料
(51)【国際特許分類】
H01B 1/08 20060101AFI20241108BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241108BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241108BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241108BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241108BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241108BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20241108BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01B1/08
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/056
H01M4/36 A
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/485
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01B1/06 A
C01G49/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】47
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024073777
(22)【出願日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】18/310,676
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】ニクヒレンドラ・シング
【テーマコード(参考)】
4G002
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G002AA06
4G002AA12
4G002AB02
4G002AD04
4G002AE05
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5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固体金属イオンバッテリーの電極の電解質成分および/または固体電解質として有用な高い金属イオン伝導率を示す新規の複合材料を提供する。
【解決手段】Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの粒子と金属イオン塩との混和物を含有する金属イオン伝導性組成物であって、Mは陽イオンであり、YはN、S及びSeからなる群から選択される陰イオンであり、Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、aは0~0.75の数であり、zは0~0.75の数である。Fe(1-a)MaO(1-z)YzX粒子の粒径は500nm以下であり、金属イオン塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛イオン及びアルミニウムイオンから選択される金属イオンを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の金属イオン塩と;
式Fe(1-a)MaO(1-z)YzX;
(式中、
Mは陽イオンであり、
Yは、N、SおよびSeからなる群から選択される陰イオンであり、
Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、
aは0~0.75の数であり、
zは0~0.75の数である)の複数の粒子との混和物を含み、
前記金属イオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンからなる群から選択され、
前記Fe(1-a)MaO(1-z)YzX粒子の粒径は500nm以下である、金属イオン伝導性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の金属イオン塩の陰イオン成分が、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、BF6
-およびPF6
-からなる群から選択される、請求項1に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項3】
セラミック電解質またはポリマー電解質をさらに含む、請求項1に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項4】
前記金属イオン塩と前記Fe(1-a)MaO(1-z)YzXとのモル比が1/10~1/1である、請求項1に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項5】
γ-LiPO4オキシ塩、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック電解質であるセラミック電解質を含む、請求項3に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項6】
金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物の含有率が、前記金属イオン伝導性組成物の30体積%以上である、請求項5に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項7】
ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー電解質を含む、請求項3に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項8】
金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物の含有率が、前記金属イオン伝導性組成物の1体積%以上である、請求項7に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項9】
アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルケトンおよび水からなる群から選択される最大15重量%の溶媒をさらに含む、請求項1に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項10】
Mが、H、Mg、Ca、Al、Ga、In、Se、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWからなる群から選択される、請求項1に記載の金属イオン伝導性組成物。
【請求項11】
aが0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
zが0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
aが0であり、かつzが0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
aが0であり、zが0であり、かつXがClである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種を挿入および脱離する能力のある負極活性材料を含む負極;
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種を挿入および脱離する能力のある正極活性材料を含む正極;ならびに
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種の伝導性である前記負極および前記正極の間の固体電解質を含み;
前記負極活性材料、前記正極活性材料および固体電解質の少なくとも1つは、請求項1に記載の組成物を含む、固体金属イオンバッテリー。
【請求項16】
前記負極活性材料が、アルカリ金属、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の合金、亜鉛金属、亜鉛合金、アルミニウム金属、アルミニウム合金、黒鉛、硬質炭素、チタン酸リチウム(LTO)、スズ/コバルト合金、シリコン、インジウム、ビスマスおよびシリコン/炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項17】
前記正極活性材料が、LiCoO2、V2O5、CoSiO4、MoO3、CoSiO4、硫黄、Mo6S8、Al2O3、TiS2、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、硫黄元素および金属硫化物複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項18】
前記固体電解質が、少なくとも1種の金属イオン塩と;Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含む、請求項15に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項19】
前記固体電解質が、少なくとも1種の金属イオン塩と;Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物からなる、請求項15に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項20】
前記固体電解質が、セラミック電解質またはポリマー電解質の少なくとも1つをさらに含む、請求項18に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項21】
前記少なくとも1種の金属イオン塩と前記Fe(1-a)MaO(1-z)YzXとのモル比が1/10~1/1である、請求項18に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項22】
前記固体電解質が、γ-LiPO4オキシ塩、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック電解質であるセラミック電解質を含む、請求項20に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項23】
少なくとも1種の金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物の含有率が、前記固体電解質の30体積%以上である、請求項22に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項24】
前記固体電解質が、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー電解質を含む、請求項20に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項25】
少なくとも1種の金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物の含有率が前記固体電解質の1体積%以上である、請求項24に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項26】
前記負極活性材料が、少なくとも1種の金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、前記混和物の含有率が0.1体積%~50体積%である、請求項15に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項27】
前記負極活性材料が、伝導性炭素、Fe粒子およびTi粒子から選択される伝導性添加剤をさらに含む、請求項26に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項28】
前記正極活性材料が、少なくとも1種の金属イオン塩と;Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、前記混和物の含有率は0.1体積%~50体積%である、請求項15に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項29】
前記正極活性材料が、伝導性炭素、Fe粒子およびTi粒子から選択される伝導性添加剤をさらに含む、請求項28に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項30】
前記複数の粒子がFeOClである、請求項15に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項31】
Li+イオンを挿入および脱離する能力のある負極活性材料;
Li+イオンを挿入および脱離する能力のある正極活性材料;ならびに
Li+イオンの伝導性である、前記負極および前記正極の間の固体電解質を含み;
前記負極活性材料、前記正極活性材料および前記固体電解質の少なくとも1つは、請求項1に記載の組成物を含み、
前記少なくとも1種の金属イオン塩は、LiCl、LiClO4、LiBF6およびLiPF6からなる群から選択されるリチウム塩を含む固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項32】
前記負極活性材料が、リチウム金属、リチウム合金黒鉛、硬質炭素、チタン酸リチウム(LTO)、スズ/コバルト合金、シリコン、インジウム、ビスマスおよびシリコン/炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項33】
前記正極活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、硫黄元素および金属硫化物複合体からなる群から選択される活性材料を含む、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項34】
前記リチウム塩と前記Fe(1-a)MaO(1-z)YzXとのモル比が1/10~1/1である、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項35】
前記固体電解質が、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子を含む前記混和物からなる、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項36】
前記固体電解質が、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子を含む前記混和物を含む、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項37】
前記固体電解質が、セラミック電解質またはポリマー電解質の少なくとも1つをさらに含む、請求項36に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項38】
前記固体電解質が、γ-LiPO4オキシ塩、Li3.3PO3.9N0.17(LiPON)、Li10GeP2S12(LGPS)、Li9.54Si1.74P1.44Si11.7Cl0.3、Li7La3Zr2O12(LLZO)、ハライドドープチオリン酸リチウム(Li6PS5X、XはCl、BrまたはIである)、Li10SnP2S12(LSPS)、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物からなる群から選択されるセラミックス材料の少なくとも1つをさらに含む、請求項37に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項39】
リチウムイオン塩およびFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子を含む前記混和物の含有率が、前記固体電解質の30体積%以上である、請求項37に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項40】
前記固体電解質が、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーをさらに含む、請求項37に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項41】
リチウムイオン塩およびFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子を含む前記混和物の含有率が、前記固体電解質の1体積%以上である、請求項40に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項42】
前記負極活性材料が、リチウムイオン塩およびFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子を含む前記混和物を含み、前記混和物の含有率が0.1体積%~50体積%である、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項43】
前記負極活性材料が、伝導性炭素、Fe粒子およびTi粒子から選択される伝導性添加剤をさらに含む、請求項42に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項44】
前記正極活性材料が、リチウムイオン塩およびFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子を含む前記混和物を含み、前記混和物の含有率は0.1体積%~50体積%である、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項45】
前記正極活性材料が、伝導性炭素、Fe粒子およびTi粒子から選択される伝導性添加剤をさらに含む、請求項44に記載の固体金属イオンバッテリー。
【請求項46】
前記複数の粒子がFeOClである、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【請求項47】
リチウムイオン塩;およびFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子を含む前記混和物が、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトンおよび水からなる群から選択される最大15重量%の溶媒をさらに含む、請求項31に記載の固体リチウムイオンバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、固体金属イオンバッテリーの電極の電解質成分および/または固体電解質として有用な高い金属イオン伝導率を示す新規の複合材料を対象とする。一実施形態において、本開示は、固体リチウムイオンバッテリーの電解質成分として有用な高いリチウムイオン伝導率を示す新規の複合材料を対象とする。
【背景技術】
【0002】
背景
Liイオンバッテリーは、携帯用電子機器の市場を伝統的に支配してきた。しかし、従来のLiイオンバッテリーは電解質の成分として可燃性の有機溶媒を含有し、この燃焼性は、懸念される安全リスクの根本であって、大規模エネルギー貯蔵の用途にとってLiイオンバッテリーの使用を限定または妨げる場合がある。
【0003】
可燃性の有機液体電解質を固体Li伝導性相と置き換えることで、この安全問題を緩和し、機械的および熱的安定性の改善などの付加的な利点を提供し得る。なおその上に、非水電解質で構成されたリチウムバッテリーは、充放電サイクルの繰り返しによって負極から正極に突き出る樹枝状のリチウム金属構造を形成することが知られている。そのような樹状突起構造が正極に突き出ると、樹状突起はバッテリーを短絡させ、エネルギーが急速に放出され有機溶媒の発火が開始し得る。
【0004】
したがって、可燃性溶媒を含有しない固体金属伝導性の電解質材料を用いるバッテリーに向けられた多大な研究開発努力が、継続している。
【0005】
通常、固体金属イオン伝導体または固体電解質と呼ばれる固体金属イオン伝導性相の主要な役割は、放電中に負極側から正極側に、充電中に正極側から負極側に金属イオンを伝導し、それと同時にバッテリー内の電極間の電子の直接輸送を阻止することである。
【0006】
なおその上に、大規模エネルギー貯蔵のためのバッテリーを提供するためには、実用的なエネルギー密度の増加が必要である。Li金属バッテリーおよび全固体バッテリーは、エネルギー密度の増加において可能性のある進歩を提示する。Li金属は、特別高い容量(3860mAh g-1)および最低の負の電気化学ポテンシャルを有するので、高エネルギー密度の将来性を提示する、理想的な負極候補である。Li-硫黄(Li-S)バッテリー、Li-酸素(Li-O2)バッテリー、Li負極対インターカレーションタイプ正極バッテリーなどを含むLi金属バッテリー(LMB)は、現在のLIBと比較して理論的なエネルギー密度の大幅な増加を提供する潜在能力を有する。
【0007】
Liイオンバッテリーは、ハイブリッド/純電気自動車、電動工具、および他の携帯用電子用途で使用するのに適切である、高いエネルギーおよび出力密度の組み合わせを提供する。Liイオンバッテリーもまた、その高エネルギー効率のために様々な送電網用途において使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リチウムは地殻中の存在割合が非常に低く、したがって、有用性が増すと、利用可能性が低下して、コスト増、およびリチウムバッテリーの経済的存続可能性への悪影響を引き起こす。
【0009】
したがって、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛およびアルミニウムを含む、より大きな利用可能性の他の金属に基づく次世代バッテリーシステムは、非常に興味深い。例えば、マグネシウムイオンバッテリー(MIB)およびアルミニウムイオンバッテリー(AIB)は、その安全性、低コストおよび環境との調和のためにリチウムイオンバッテリー(LIB)に対する代替案として潜在能力を有している。マグネシウムは、樹状突起を形成する傾向がなく、マグネシウムイオンバッテリーはリチウムイオンバッテリーより実質的に長く持続し得る。マグネシウムは、地殻で第2の最も豊富な元素であることが報告され、涸渇リスクを解消し、はるかに安価な製品を与える。
【0010】
しかしながら、次世代の固体リチウムイオンバッテリー、ならびに、将来世代の代替金属イオンバッテリーの開発は、電極活性材料の固体電解質および/または電解質成分として機能する電解質材料の開発を必要とする。
【0011】
そのような電解質材料は、以下を含む多くの重要な性質を提供しなければならない。
(1)高い金属イオン伝導率;
(2)陽極金属(リチウムイオンバッテリーの事例のLi)と接触する場合の化学的および電気化学的安定性;
(3)金属樹状突起貫通を阻止する機械的強度。
【0012】
(4)バッテリー製造中に効率的に加工することができ、高密度バッテリー構築物を提供する弾性。
【0013】
したがって、本出願の目的は、金属イオンバッテリー用の固体電解質および/または金属イオンバッテリー用の電極活性材料成分としての電解質材料として使用するのに適切な、高い金属イオン伝導率および上記に列挙された他の有利な性質を有する複合材料を提供することである。
【0014】
さらに本出願の目的は、固体金属イオンバッテリーおよび/またはこれらの材料を含有する固体金属イオンバッテリーを提供することである。
【0015】
本出願の特定の目的は、Li+イオンバッテリー用の固体電解質および/またはLi+イオンバッテリー用の電極活性材料成分としての電解質材料として使用するのに適切な、高いLi+イオン伝導率および上記に列挙される他の有利な性質を有する複合材料を提供することである。
【0016】
さらに、本出願の目的は、これらの材料を含有する固体リチウムイオンバッテリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施形態の概要
これらおよび他の目的は、本開示の実施形態によって提供され、その第1の実施形態は、以下:
少なくとも1種の金属イオン塩と;
Fe(1-a)MaO(1-z)YzX;
(式中、
Mは陽イオンであり、
Yは、N、SおよびSeからなる群から選択される陰イオンであり、
Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、
aは0~0.75の数であり、
zは0~0.75の数である)の複数の粒子との混和物、を含み、
金属イオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンからなる群から選択され、
Fe(1-a)MaO(1-z)YzX粒子の粒径は500nm以下である、金属イオン伝導性組成物を含む。
【0018】
第1の実施形態の一態様において、金属イオン塩の陰イオン成分は、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、BF6
-およびPF6
-からなる群から選択される。
【0019】
第1の実施形態の一態様において、金属イオン伝導性組成物は、セラミック電解質成分またはポリマー電解質成分をさらに含む。
【0020】
第1の実施形態の一態様において、金属イオン伝導性組成物中の金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXとのモル比は、1/10~1/1である。
【0021】
第1の実施形態の一態様において、Mは、H、Mg、Ca、Al、Ga、In、Se、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWからなる群から選択される。
【0022】
第1の実施形態の態様において、aは0であり、zは0であり、またはaおよびzは0である。さらに、これらの態様のいずれかにおいて、XはClであってもよい。
【0023】
第1の実施形態の一態様において、金属イオン伝導性組成物は、γ-LiPO4オキシ塩、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック電解質であるセラミック電解質を含み、金属イオン塩とFeOXの複数の粒子との混和物の含有率は、金属イオン伝導性組成物の30体積%以上である。
【0024】
第1の実施形態の一態様において、金属イオン伝導性組成物は、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー電解質を含み、金属イオン塩とFeOXの複数の粒子との混和物の含有率は、金属イオン伝導性組成物の1体積%以上である。
【0025】
第1の実施形態のさらなる態様において、金属イオン伝導性組成物は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトンおよび水からなる群から選択される溶媒を最大15重量%さらに含む。
【0026】
第2の実施形態において、本開示は、以下:
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種を挿入および脱離する能力のある負極活性材料を含む負極;
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種を挿入および脱離する能力のある正極活性材料を含む正極;ならびに
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種の伝導性である負極および正極の間の固体電解質を含み;
負極活性材料、正極活性材料および固体電解質の少なくとも1つは、第1の実施形態の組成物を含む、固体金属イオンバッテリーを提供する。
【0027】
第2の実施形態の一態様において、負極活性材料は、アルカリ金属、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の合金、亜鉛金属、亜鉛合金、アルミニウム金属、アルミニウム合金、黒鉛、硬質炭素、チタン酸リチウム(LTO)、スズ/コバルト合金、シリコン、インジウム、ビスマスおよびシリコン/炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0028】
第2の実施形態の一態様において、正極活性材料は、LiCoO2、V2O5、CoSiO4、MoO3、CoSiO4、硫黄、Mo6S8、Al2O3、TiS2、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、硫黄元素および金属硫化物複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0029】
第2の実施形態の一態様において、固体電解質は、金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含むかまたはそれからなる。
【0030】
第2の実施形態の一態様において、固体電解質はセラミック電解質またはポリマー電解質をさらに含む。
【0031】
第2の実施形態の一態様において、金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの比は1/10~1/1である。
【0032】
第2の実施形態の一態様において、固体電解質は、金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、γ-LiPO4オキシ塩、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物からなる群から選択される少なくとも1種のセラミック電解質であるセラミック電解質をさらに含み、かつ金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物の含有率は、固体電解質の30体積%以上である。
【0033】
第2の実施形態の一態様において、固体電解質は、金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー電解質をさらに含み、金属イオン塩およびFeOClの複数の粒子との混和物の含有率は、固体電解質の1体積%以上である。
【0034】
第2の実施形態の一態様において、負極活性材料は、金属イオン塩と;Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、混和物の含有率は0.1体積%~50体積%である。
【0035】
第2の実施形態の一態様において、正極活性材料は、金属イオン塩と;Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、混和物の含有率は0.1体積%~50体積%である。
【0036】
第3の実施形態において、本開示は、以下:
Li+イオンを挿入および脱離する能力のある負極活性材料;
Li+イオンを挿入および脱離する能力のある正極活性材料;ならびに
Li+イオンの伝導性である、負極および正極の間の固体電解質を含み;
ここで、
負極活性材料、正極活性材料および固体電解質の少なくとも1つは、第1の実施形態の組成物を含み、
金属イオン塩は、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF6およびLiPF6からなる群から選択されるリチウム塩である、固体リチウムイオンバッテリーを提供する。
【0037】
第3の実施形態の一態様において、aは0であり、zは0であるか、またはaおよびzは0である。さらに、これらの態様のうちのいずれかにおいて、XはClであってもよい。
【0038】
第3の実施形態の一態様において、負極活性材料は、リチウム金属、リチウム合金黒鉛、硬質炭素、チタン酸リチウム(LTO)、スズ/コバルト合金、シリコン、インジウム、ビスマスおよびシリコン/炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0039】
第3の実施形態の一態様において、正極活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、硫黄元素および金属硫化物複合体からなる群から選択される活性材料を含む。
【0040】
第3の実施形態の一態様において、リチウム塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXとのモル比は、1/10~1/1である。
【0041】
第3の実施形態の一態様において、固体電解質は、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物からなるか、またはそれを含む。
【0042】
第3の実施形態の一態様において、固体電解質は、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、γ-LiPO4オキシ塩、Li3.3PO3.9N0.17(LiPON)、Li10GeP2S12(LGPS)、Li9.54Si1.74P1.44Si11.7Cl0.3、Li7La3Zr2O12(LLZO)、ハライドドープチオリン酸リチウム(Li6PS5X、XはCl、BrまたはIである)、Li10SnP2S12(LSPS)、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物からなる群から選択されるセラミックス材料の少なくとも1つをさらに含み、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物の含有率は、固体電解質の30体積%以上である。
【0043】
第3の実施形態の一態様において、固体電解質は、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーをさらに含み、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物の含有率は、固体電解質の1体積%以上である。
【0044】
第3の実施形態の一態様において、負極活性材料は、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、混和物の含有率は0.1体積%~50体積%である。
【0045】
第3の実施形態の一態様において、正極活性材料は、リチウムイオン塩と;Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含み、混和物の含有率は0.1体積%~50体積%である。
【0046】
第3の実施形態の一態様において、リチウムイオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトンおよび水からなる群から選択される最大15重量%の溶媒をさらに含む。
【0047】
前述の説明は、本開示の一般的な導入および要約を提供するように意図され、他の方法で明示的に述べられない限り、その開示を限定するようには意図されない。さらなる利点に加えて、目下好ましい実施形態は、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明を参照することによって最も理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本開示の実施形態について、Fe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zX(触媒)粒径および金属イオン伝導率の関係を示すグラフである。
【
図2】Fe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zX(触媒)粒径の効果の模式的概念、および本開示の電解質複合体中に形成される金属イオンの通り道の性質および含有率を示す図である。
【
図3】本開示の一態様の複合体中の金属塩含有率と金属イオン伝導率との関係を示すグラフである。
【
図4】本開示の一実施形態に従ってFeOClとLiClとの混和物を調製する一方法を図式的に示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に従ってFeOClとLiClとの混和物を調製する一方法を図式的に示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に従ってFeOClとLiClとの混和物を調製する一方法を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
好ましい実施形態の説明
この説明の全体を通して、「電気化学セル」、「バッテリー」という用語は、本記載の文脈が明白に電気化学セルとバッテリーの相違を示さなければ交換可能に用いられてもよい。さらに、「固体電解質」、「固体イオン伝導体」という用語は、明示的に異なって指定されない限り交換可能に用いられてもよい。「金属イオン伝導性組成物」という記載は、本明細書において開示されるような金属イオン塩と;Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を明示的に指す。金属イオン塩、M、Y、a、zおよびXの特性は、論じられている本開示の実施形態によって決定される。
【0050】
実用的な用途において、固体電解質または電極活性材料成分としての資格を得るには、金属イオン伝導性材料はいくつかの一定の判定基準を満たさなければならない。第1に、それは、通常、室温で10-6S/cm以上の望ましい金属イオン伝導率を示すべきである。第2に、材料は、化学的、電気化学的および熱的劣化に対する良好な安定性を有するべきである。第3に、材料は、バッテリー調製中に高密度を有する成分層を形成するのに最小圧力が必要とされるような弾性を有するべきである。第4に、材料の合成が工業規模製造に資するべきであり、コストは、従来の公知材料と比較して相対的に低くなければならない。
【0051】
可能性のある電解質材料の継続している調査において、本発明者らは、以下のパラグラフに記載される鉄オキシハライドと金属イオン塩との新規混和物が、上記列挙の固体金属イオン電解質、殊にリチウムイオン電解質として機能するための要件を満たしそれにより本開示を提供することを発見した。
【0052】
したがって、本開示の第1の実施形態は、金属イオン塩とFe(1-a)MaO(1-z)YzXの複数の粒子との混和物を含む金属イオン伝導性組成物であって、金属イオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンからなる群から選択され、Mは陽イオンであり、Yは、N、SおよびSeからなる群から選択される陰イオンであり、Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲンであり、aは0~0.75の数であり、zは0~0.75の数であり、Fe(1-a)MaO(1-z)YzX粒子の粒径は500nm以下である、金属イオン伝導性組成物を提供する。
【0053】
鉄オキシハライドは、酸化鉄、ハロゲン化鉄、含まれる場合ドーパントMおよびYの供給源、水を含有する混合物を100℃~400℃の温度で熱処理することによって、またはFeX3・6H2O、含まれる場合ドーパントMおよびYの供給源の混合物を、200℃を超える温度で熱分解することによって得ることができる。酸化鉄はFeO、Fe2O3およびF3O4のいずれであってもよい。ハロゲン化鉄は、FeF2、FeF3、FeF2・水和物、FeF3・水和物、FeCl2、FeCl3、FeCl2・水和物、FeCl3・水和物FeBr2、FeBr3、FeBr2・水和物、FeBr3・水和物、FeI2、FeI3、FeI2・水和物、FeI3・水和物のいずれであってもよい。酸化鉄、ハロゲン化鉄と水との混和物は、100℃~℃の温度で1秒~1000時間アニールされる。単一相が好ましいが、しかし、また、多重相もまた許容できる。合成されたFe(1-a)MaO(1-z)YzXは、水、またはHClなどの酸、または有機溶媒ですすがれてもよい。溶媒は加熱によって除去されてもよい。
【0054】
Mは複合材料のドーパントと考えられてもよく、H、Mg、Ca、Al、Ga、In、Se、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWのうちのいずれかまたは1つまたは複数の陽イオンであってもよい。これらのドーパントの起源はハライド塩または酸化物形態を含む。
【0055】
Yもまた複合材料のドーパントと考えられてもよく、その元素形態、またはその鉄塩を供給源としてもよい。
【0056】
整数「a」は、0~0.75、好ましくは0~0.5、最も好ましくは0~0.33の値であってもよい。好ましい一実施形態において、「a」は0である。
【0057】
整数「z」は、0~0.75、好ましくは0~0.5、最も好ましくは0~0.33の値であってもよい。好ましい一実施形態において、「z」は0である。
【0058】
オキシ塩化鉄は、Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの好ましい形態であってもよく、音波処理などの機械的処理で剥離してより小さな層状粒子になる層状構造を有するスミレ色の不透明な結晶として得られる。オキシ塩化鉄は、環境上持続性の有機材料の酸化分解用のFenton触媒として知られ、廃水処理および土壌改善などの用途に有用であり得る。さらに、オキシ塩化鉄は塩化物イオンバッテリー用の正極活性材料として記載されてきた。
【0059】
しかしながら、本発明者らは、式Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの鉄オキシハライド、とりわけ金属イオン伝導性材料としての金属塩と組み合わせたオキシ塩化鉄の先行する記載または使用を承知していない。
【0060】
理論によって制約を受けることはないが、Fe(1-a)MaO(1-z)YzXの鉄は、伝導性イオン源である金属塩の陰イオンと結合し、それによりFe(1-a)MaO(1-z)YzX剥離粒子と金属イオン塩との混和物の複合体の伝導性流路を通って移動するように金属イオンを解放し、それにより高い金属イオン伝導を促進すると考えられる。この理由により、Fe(1-a)MaO(1-z)YzXは金属イオン伝導を促進する触媒と考えられてもよく、本開示の全体を通して「触媒」と称されてもよい。
【0061】
Feと効果的に結合する任意の陰イオンが用いられてもよいが、陰イオンF-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、BF6
-およびPF6
-が好ましく、Cl-は最も好ましい。
【0062】
さらに、本開示によると、本発明者らは、500nm以下に触媒粒子サイズを制御することによって、伝導率を著しく増加させ得ると判断している。500nm以下の粒径に関して、伝導率および金属イオン粒径の関係は、
図1に示されるように逆の線形曲線に近い。したがって、好ましい実施形態において、Fe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zX粒径は1nm以下から200nmまでであってもよく、最も好ましい実施形態において、Fe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zX粒径は10nm以下から100nmまでであってもよい。
【0063】
粒径は、当業者によって認識され実施されているようなレーザー回折、動的光散乱、直接画像化技法を含む従来の方法によって求められてもよい。
【0064】
図2に図式的に示されるように、触媒(Fe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zX)の粒径が減少するにつれて、金属イオンの伝導通り道は相対的体積が増加し、それにより
図1に示されるようにイオン伝導率を高める。
図2はまた、触媒と金属塩との混和物を説明する。長方形の触媒(Fe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zX)粒子は、図の背景によって示される、金属塩(伝導性のイオン源)と混ぜ合わせられる。金属イオンの伝導通り道は粒子の境界で形成される。
【0065】
なおその上に、本発明者らは、電解質複合体の金属イオン伝導率が、金属塩とFe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zXの相対的モル比に依存することを発見した。したがって、本開示の例示の複合体である式FeOCl-XLiClの複合体について
図3に示すように、LiClおよびFeOClの1/10(0.1)から1/1(1.0)の間、好ましくは、2/10(0.2)~8/10(0.8)、最も好ましくは4/10(0.4)~7/10(0.7)のモル含有率比に最適のモル比がある。
【0066】
Fe(1-a)MaO(1-z)YzX/金属塩複合材料は、驚いたことに弾性があり、低い印加圧力で高密度の電解質層の調製が可能になる比較的低いヤング率を示し、それによりバッテリー製作を容易にする。本開示の複合体のヤング率は、1~18GPa、好ましくは1~14GPa、最も好ましくは1~10GPaの範囲であってもよい。この弾性率は、一般に約24~約40GPaの範囲のヤング率を有する従来のリチウムイオン伝導性の硫化物固体電解質と比較して優れている。
【0067】
本開示のFe(1-a)MaO(1-z)YzX/金属塩組成物は、金属イオンバッテリー用の固体電解質として、電極活性材料層の伝導率を高める成分として、電極活性材料上のコーティング層または任意のそれらの組み合わせとして用いられてもよい。
【0068】
金属イオン伝導性組成物は、固体金属イオンバッテリーセパレーターの専用成分として適用されてもよいが、また、本開示の金属イオン伝導性組成物およびセラミックイオン伝導性材料および/またはポリマー電解質の混合物を含有する電解質セパレーターを提供することも可能である。そのような組み合わせは、機械的強度、イオン伝導性および他の判定基準についての特定のバッテリー要件を満たすように設計されてもよい。
【0069】
金属イオン伝導体として従来から公知の任意のセラミック電解質が、構成される金属イオンバッテリーの特性に依存して用いられてもよい。典型的なセラミックス材料は、以下に限定されないが、γ-LiPO4オキシ塩、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物を含んでもよい。これらのセラミック電解質およびそれらの変形は、当業者に知られており、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、亜鉛イオンおよびアルミニウムイオンに伝導性の任意のセラミック電解質が、本開示に記載されるように用いられてもよい。
【0070】
金属イオン伝導性組成物およびセラミック電解質を含有する固体電解質が用いられる場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は、加工可能な延性および高い金属イオン伝導率を有する電解質組成物を提供するためには30体積%以上である。セラミックス材料は金属イオン伝導性組成物よりはるかに高いヤング率を有し、金属イオン伝導性組成物の含有率が30体積%未満である場合、組成物の作業性は悪化し得る。好ましくは、金属イオン伝導性組成物の含有率は、40体積%~98体積%であり、最も好ましくは金属イオン伝導性組成物の含有率は、合計電解質組成物の50体積%~95体積%である。
【0071】
金属イオン伝導性組成物と組み合わせてもよいポリマー電解質は、ポリマー電解質として従来から用いられている任意のポリマーを含んでもよい。そのようなポリマーは以下に限定されないが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)を含む。これらの混合物が用いられてもよい。
【0072】
金属イオン伝導性組成物およびポリマー電解質を含有する固体電解質が用いられる場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は、加工可能な延性および高い金属イオン伝導率を有する電解質組成物を提供するためには1体積%以上である。ポリマー状材料は低いヤング率を有し、したがって、高い金属イオン伝導率および良好な作業性を有する電解質を調製することができる。好ましくは金属イオン伝導性組成物の含有率は10体積%~98体積%であり、最も好ましくは金属イオン伝導性組成物の含有率は、合計電解質組成物の20体積%~95体積%である。
【0073】
なおその上に、金属イオン伝導性組成物、1種または複数のセラミック電解質および1種または複数のポリマー電解質を含有する固体電解質組成物を調製し用いることができる。
【0074】
目標粒径のFe(1-a)MaO(1-z)YzXは、アセトンまたはアセトンと別の溶媒、例えばメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールとの混合物中で乾燥したFe(1-a)MaO(1-z)YzXを分散させ、続いて目標の剥離粒径が得られるまで混合物を音波処理することによって調製されてもよい。次いで、溶媒は除去されてもよく、または混合物は、以下のパラグラフにおいて記載されるような金属塩を含む混和物を調製するために用いられてもよい。
【0075】
Fe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zXと金属イオン塩との混和物を調製する方法は限定されるものではなく、本開示の性質を有する混合物を調製する任意の方法が用いられてもよい。例示の3つの方法がここで記載され、LiClおよびFeOClの複合体について
図4~6に図式的に示される。同じ方法が一般に、金属イオン塩とFe
(1-a)M
aO
(1-z)Y
zXの他の組み合わせに適用されてもよい。
【0076】
(i)液相法(
図4)
リチウム塩(LiCl)は、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノールもしくはイソプロピルアルコール、または芳香族溶媒、例えばベンゼンもしくはトルエンから選択される溶媒もしくは溶媒の混合物に溶解される。リチウム塩は溶媒に完全に溶解されることが好ましいが、しかし、いくらかは溶解しないままであってもよい。目標粒径のFeOClは溶媒混合物に添加され、溶媒中のFeOXの分散を促進するために振盪、超音波処理または他の処理をすることにより分散される。次いで、溶媒は複合混和物を得るために蒸発され、リチウム塩は、FeOClの表面にシェルコーティングとして堆積する。
【0077】
(ii)噴霧法(
図5)
リチウム塩(LiCl)は、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノールもしくはイソプロピルアルコール、または芳香族溶媒、例えばベンゼンもしくはトルエンから選択される溶媒もしくは溶媒の混合物に溶解される。リチウム塩は溶媒に完全に溶解されることが好ましいが、しかし、いくらかは溶解しないままであってもよい。次いで、得られた溶媒混合物は、目標粒径のFeOCl粒子上に噴霧される。次いで、溶媒は複合混和物を得るために蒸発され、リチウム塩はFeOClの表面にシェルコーティングとして堆積する。
【0078】
(iii)メカノケミカル法(
図6)
目標粒径のリチウム塩(LiCl)およびFeOClはセラミックまたは金属釜に装入され、1rpm~5000rpmの範囲で釜の回転によってセラミックまたは金属の球と共に摩砕される。このメカノケミカル処理によって、リチウム塩はFeOXの表面に被覆される。得られた粉末は、室温から400℃の範囲の温度で熱処理されてもよい。
【0079】
残余の量の溶媒は、結果として得られる金属イオン伝導性組成物中に性能を損なうことなく存在し得ると判断された。それにより、金属イオン伝導性組成物は、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される最大15重量%の残存溶媒を含有していてもよい。これはまた、溶媒からの残余の混入水を含んでもよい。
【0080】
本開示はまた、以下:
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種を挿入および脱離する能力のある負極活性材料を含む負極;
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種を挿入および脱離する能力のある正極活性材料を含む正極;ならびに
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ZnイオンおよびAlイオンの少なくとも1種の伝導性である、負極および正極の間の固体電解質を含み;
負極活性材料、正極活性材料および固体電解質の少なくとも1つは、先の記載において開示された金属イオン伝導性組成物を含む、固体金属イオンバッテリーを提供する。
【0081】
負極活性材料は、アルカリ金属、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の合金、亜鉛金属、亜鉛合金、アルミニウム金属、アルミニウム合金、黒鉛、硬質炭素、チタン酸リチウム(LTO)、スズ/コバルト合金、シリコン、インジウム、ビスマスおよびシリコン/炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0082】
負極活性材料が金属イオン伝導性組成物を含有する場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は0.1体積%~50体積%であってもよい。負極は、好適な溶媒中に活性材料および金属イオン伝導性組成物を分散させ、集電体上に分散混合物を塗布することにより調製されてもよい。従来から公知の方法に従って、溶媒は乾燥により除去され、材料は圧力下で密度を高められてもよい。結合剤および導電剤などの他の添加剤もまた、活性材料組成物に含まれてもよい。標準的な集電体材料は、以下に限定されないがアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、炭素、カーボン紙および炭素布を含む。
【0083】
代替として、金属イオン伝導性組成物は、活性材料層および電解質セパレーターの間に入るように、負極活性材料の表面に被覆層として塗布されてもよい。
【0084】
正極活性材料は、LiCoO2、V2O5、CoSiO4、MoO3、CoSiO4、硫黄、Mo6S8、Al2O3、TiS2、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、元素硫黄および金属硫化物複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0085】
正極活性材料が金属イオン伝導性組成物を含有する場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は0.1体積%~50体積%であってもよい。正極は、好適な溶媒中に活性材料および金属イオン伝導性組成物を分散させ、集電体上に分散混合物を塗布することにより調製されてもよい。従来から公知の方法に従って、溶媒は乾燥により除去され、材料は圧力下で密度を高められてもよい。結合剤および導電剤などの他の添加剤もまた、活性材料組成物に含まれてもよい。標準的な集電体材料は、以下に限定されないがアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、炭素、カーボン紙および炭素布を含む。
【0086】
代替として、金属イオン伝導性組成物は、活性材料層および電解質セパレーターの間に入るように、正極活性材料の表面に被覆層として塗布されてもよい。
【0087】
固体電解質は金属イオン伝導性組成物のみから組み立てられてもよく、それにより、固体電解質は金属イオン伝導性組成物からなることができる。
【0088】
代替として、固体電解質は、金属イオン伝導性組成物ならびにセラミック電解質およびポリマー電解質の少なくとも1つを含有してもよい。
【0089】
先に開示されたように、金属イオン伝導体として従来から公知の任意のセラミック電解質は、構成される金属イオンバッテリーの特性に依存して用いられてもよい。典型的なセラミックス材料は、以下に限定されないが、γ-LiPO4オキシ塩、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物を含んでもよい。これらのセラミック電解質およびそれらの変形は当業者に知られており、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、亜鉛イオンおよびアルミニウムイオンに伝導性の任意のセラミック電解質が、本開示に記載されるように用いられてもよい。
【0090】
金属イオン伝導性組成物およびセラミック電解質を含有する固体電解質が用いられる場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は、加工可能な延性および高い金属イオン伝導率を有する電解質組成物を提供するためには30体積%以上である。セラミックス材料は金属イオン伝導性組成物よりはるかに高いヤング率を有し、金属イオン伝導性組成物の含有率が30体積%未満である場合、組成物の作業性は悪化し得る。好ましくは、金属イオン伝導性組成物の含有率は40体積%~98体積%であり、最も好ましくは、金属イオン伝導性組成物の含有率は合計電解質組成物の50体積%~95体積%である。
【0091】
金属イオン伝導性組成物と組み合わせてもよいポリマー電解質は、ポリマー電解質として従来から用いられる任意のポリマーを含んでもよい。そのようなポリマーは、以下に限定されないが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)を含む。これらの混合物が用いられてもよい。
【0092】
金属イオン伝導性組成物およびポリマー電解質を含有する固体電解質が用いられる場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は、加工可能な延性および高い金属イオン伝導率を有する電解質組成物を提供するためには1体積%以上である。ポリマー状材料は低いヤング率を有し、したがって、高い金属イオン伝導率および良好な作業性を有する電解質が調製されてもよい。好ましくは、金属イオン伝導性組成物の含有率は10体積%~98体積%であり、最も好ましくは、金属イオン伝導性組成物の含有率は合計電解質組成物の20体積%~95体積%である。
【0093】
なおその上に、金属イオン伝導性組成物、1種または複数のセラミック電解質および1種または複数のポリマー電解質を含有する固体電解質組成物が調製され用いられてもよい。
【0094】
好ましい一実施形態において、本開示は、以下:
Li+イオンを挿入および脱離する能力のある負極活性材料;
Li+イオンを挿入および脱離する能力のある正極活性材料;ならびに
Li+イオンの伝導性である、負極および正極の間の固体電解質を含み;
負極活性材料、正極活性材料および固体電解質の少なくとも1つは、上記の金属イオン伝導性組成物を含み、金属イオン塩は、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF6およびLiPF6からなる群から選択されるリチウム塩である、を含む固体リチウムイオンバッテリーを提供する。
【0095】
固体リチウムイオンバッテリー用の複合材料の触媒部分は、FeOCl、とりわけ、上述のFeOCl/LiCl複合体であってもよい。
【0096】
負極活性材料は、リチウム金属、リチウム合金黒鉛、硬質炭素、チタン酸リチウム(LTO)、スズ/コバルト合金、シリコン、インジウム、ビスマスおよびシリコン/炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0097】
負極活性材料が金属イオン伝導性組成物を含有する場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は0.1体積%~50体積%であってもよい。負極は、好適な溶媒に活性材料および金属イオン伝導性組成物を分散させ、集電体上に分散混合物を塗布することにより調製されてもよい。従来から公知の方法に従って、溶媒は乾燥により除去され、材料は圧力下で密度を高められてもよい。結合剤および導電剤などの他の添加剤もまた、活性材料組成物に含まれてもよい。標準的な集電体材料は、以下に限定されないがアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、炭素、カーボン紙および炭素布を含む。
【0098】
代替として、金属イオン伝導性組成物は、活性材料層と電解質セパレーターの間に入るように、負極活性材料の表面に被覆層として塗布されてもよい。
【0099】
正極活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、硫黄元素および金属硫化物複合体からなる群から選択される活性材料を含んでもよい。
【0100】
正極活性材料が金属イオン伝導性組成物を含有する場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は0.1体積%~50体積%であってもよい。正極は、好適な溶媒中に活性材料および金属イオン伝導性組成物を分散させ、集電体上に分散混合物を塗布することにより調製されてもよい。従来から公知の方法に従って、溶媒は乾燥により除去され、材料は圧力下で密度を高められてもよい。結合剤および導電剤などの他の添加剤もまた、活性材料組成物に含まれてもよい。標準的な集電体材料は、以下に限定されないがアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、炭素、カーボン紙および炭素布を含む。
【0101】
代替として、金属イオン伝導性組成物は、活性材料層と電解質セパレーターの間に入るように、正極活性材料の表面に被覆層として塗布されてもよい。
【0102】
固体電解質は金属イオン伝導性組成物のみから組み立てられてもよく、それにより、固体電解質は金属イオン伝導性組成物からなることができる。
【0103】
代替として、固体電解質は、金属イオン伝導性組成物ならびにセラミック電解質およびポリマー電解質の少なくとも1つを含有していてもよい。
【0104】
リチウムイオン伝導体として従来から公知の任意のセラミック電解質も用いられてもよい。典型的なセラミックス材料は、以下に限定されないが、γ-LiPO4オキシ塩、Li3.3PO3.9N0.17(LiPON)、Li10GeP2S12(LGPS)、Li9.54Si1.74P1.44Si11.7Cl0.3、Li7La3Zr2O12(LLZO)、ハライドドープチオリン酸リチウム(Li6PS5X、XはCl、BrまたはIである)、Li10SnP2S12(LSPS)、NASCIONホスファート、ペロブスカイト酸化物およびガーネット酸化物を含んでもよい。
【0105】
これらのセラミック電解質およびそれらの変形は当業者に知られており、本開示に記載されるように、リチウムイオンに伝導性の任意のセラミック電解質も用いられてもよい。
【0106】
金属イオン伝導性組成物およびセラミック電解質を含有する固体電解質が用いられる場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は、加工可能な延性および高い金属イオン伝導率を有する電解質組成物を提供するためには30体積%以上である。セラミックス材料は金属イオン伝導性組成物よりはるかに高いヤング率を有し、金属イオン伝導性組成物の含有率が30体積%未満である場合、組成物の作業性は悪化し得る。好ましくは、金属イオン伝導性組成物の含有率は、40体積%~98体積%であり、最も好ましくは金属イオン伝導性組成物の含有率は、合計電解質組成物の50体積%~95体積%である。
【0107】
金属イオン伝導性組成物と組み合わせてもよいポリマー電解質は、ポリマー電解質として従来から用いられている任意のポリマーを含んでもよい。そのようなポリマーは以下に限定されないが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(メタクリル酸メチル)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)を含む。これらの混合物が用いられてもよい。
【0108】
金属イオン伝導性組成物およびポリマー電解質を含有する固体電解質が用いられる場合、金属イオン伝導性組成物の含有率は、加工可能な延性および高い金属イオン伝導率を有する電解質組成物を提供するためには1体積%以上である。ポリマー状材料は低いヤング率を有し、したがって、高い金属イオン伝導率および良好な作業性を有する電解質を調製することができる。好ましくは金属イオン伝導性組成物の含有率は10体積%~98体積%であり、最も好ましくは金属イオン伝導性組成物の含有率は、合計電解質組成物の20体積%~95体積%である。
【0109】
なおその上に、金属イオン伝導性組成物、1種または複数のセラミック電解質および1種または複数のポリマー電解質を含有する固体電解質組成物を調製し用いることができる。
【0110】
上記の記載は、当業者が本発明の使用を可能にするように提示され、特定の用途およびその要件の文脈において提供される。好ましい実施形態への様々な変形は当業者にとって容易に明白であり、本明細書において定義される一般的な原理は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用されてもよい。したがって、本発明は、示された実施形態に限定されることを意図せず、本明細書において開示された原理および特色と矛盾しない最も広い範囲が与えられるべきである。この点に関して、本発明内の特定の実施形態が、広く考慮された本発明のすべての利点を示すと限らないことはある。
【外国語明細書】