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  • 特開-NiTi形状記憶合金の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160979
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】NiTi形状記憶合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/34 20210101AFI20241108BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20241108BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20241108BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241108BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20241108BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20241108BHJP
   B22F 10/362 20210101ALI20241108BHJP
   B22F 10/36 20210101ALI20241108BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20241108BHJP
   B22F 10/32 20210101ALI20241108BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20241108BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241108BHJP
【FI】
B22F10/34
C22C19/03 A
C22C1/00 P
B22F10/28
B22F10/64
B22F9/08 A
B22F10/362
B22F10/36
B22F10/366
B22F10/32
B22F10/38
B33Y10/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073910
(22)【出願日】2024-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-09
(31)【優先権主張番号】202310490331.7
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520031405
【氏名又は名称】天津大学
【住所又は居所原語表記】No.92 Weijin Road, Nankai District Tianjin 300072, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】韓永典
(72)【発明者】
【氏名】劉敏倩
(72)【発明者】
【氏名】張雅晴
(72)【発明者】
【氏名】劉雪
(72)【発明者】
【氏名】▲イェン▼玉升
(72)【発明者】
【氏名】邵家駿
(72)【発明者】
【氏名】徐連勇
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA03
4K017BB09
4K017DA09
4K017FA14
4K018AA07
4K018BA04
4K018FA08
4K018KA56
(57)【要約】      (修正有)
【課題】從來技術の不足を克服するために、高性能NiTi形状記憶合金の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、選択的レーザ溶融法によりNiTi形状記憶合金を印刷し、室温に自然冷却してSLM-NiTi印刷物が得られ、等原子比のガスアトマイズ球状粉末Ni50Ti50を原材料とし、鋳放しNiTi形状記憶合金を基板として使用するステップ1と、ステップ1で得られたSLM-NiTi印刷物を750~1050℃で50min-90min保温し、冷却して高性能NiTi SMAが得られるステップ2とを含む高性能NiTi SMAの製造方法を提供する。本発明の方法によりSLM-NiTi積層造形印刷物をアニールすることによって、印刷物の力学的特性を顕著に向上できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NiTi SMAの製造方法であって、
選択的レーザ溶融法によりNiTi形状記憶合金を印刷し、室温に自然冷却してSLM-NiTi印刷物が得られ、等原子比のガスアトマイズ球状粉末Ni0Ti0を原材料とし、鋳放しNiTi形状記憶合金を基板として使用するステップ1と、
ステップ1で得られたSLM-NiTi印刷物を750~1050℃で50min-90min保温し、水冷法により冷却してNiTi SMAが得られるステップ2と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ステップ1において、型番がRenishaw AM400の選択的レーザ溶融装置を用いてNiTi形状記憶合金を印刷することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ1において、印刷過程は、下記のとおりであり、即ち、
まず、基板を取り付け、取り付ける前に基板の表面をサンドブラスト処理し、基板表面の汚物を除去して均一で微細な凹凸面を形成し、これによって粉散布の均一性及び基板と粉末の付着性を向上させ、次に、粉体を積載し、積載前に粉末をホッパに入れる前に250メッシュの標準篩により振動篩分けし、これによって粉末の流動性を向上させ、さらに、選択的レーザ溶融装置に付属する専用ソフトウェアにより3Dモデルに対してスライス、パラメータ設定及びスキャンストラテジー編集を行い、最終的に3Dデータ導入装置を生成し、熱応力の累積を回避するために、連続層の間に67°の回転角度を採用し、レーザパワーを150Wに設定し、スキャン速度を900mm/sに設定し、スキャンピッチを50μmに設定し、層厚さを40μmに設定し、最後に、酸素含有量を調整し、基板を予熱して印刷することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸素含有量を調整するときの酸素含有量の閾値は100ppm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基板を予熱するときの予熱温度は、150-170℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ1において、基板の面積は、248×248×20mmであり、SLM-NiTi印刷物のサイズは、5×5×5mmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ2で得られた高性能NiTi SMAは、結晶粒径が6.592~150.582μmであり、破断伸びが11.92~13.95%であり、100%の超弾性を実現することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ2で得られた高性能NiTi SMAのオーステナイト結晶の配向は<110>であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金材料の技術分野に関し、特に、高性能NiTi形状記憶合金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NiTi形状記憶合金(SMA)は、その独特の形状記憶効果と超弾性により、航空宇宙、生物医学、その他の分野で広く使用されている。しかし、NiTi SMA は機械加工性能が低く、溶接性が低いため、任意の幾何学的形状の部品を加工して準備することは非常に困難であり、そのさらなる推進と応用が大幅に制限されている。選択的レーザ熔融(SLM)技術は、最終形状に近い複雑なコンポーネントを一度に成形する機能を備えている。したがって、選択的レーザ溶融技術に基づいてNiTi SMAの研究を行うことは非常に重要である。
從來の製造方式と比較して、SLM技術により製造されたNiTi SMAは、延性が悪く、工業化応用を満たすことができない。したがって、SLM-NiTi SMA の引張特性を改善する効果的な方法を見つける必要がある。アニールは、積層造形印刷物に最も一般的に使用される後処理方法の1つであり、印刷物のミクロ組織を効果的に調整して材料の力学的特性を改善させる目的を達成することができる。現在、從來金属材料のアニールプロセスは、相対的に成熟している。
しかしながら、從來の合金と異なり、NiTi SMAは、その独特な非拡散性マルテンサイト変態過程により、その強化メカニズムが從來の金属と異なる。強化メカニズムの違いによって、そのアニールプロセスは、単に從來合金のアニールプロセスを僅かに修正して得ることができず、強化メカニズムに対するアニールの影響を理解した上に新たに設計しなければならない。そのため、SLM-NiTi印刷物のアニールプロセスは成熟しておらず、その結果、工業での実用化は実現できない。したがって、SLM-NiTi SMAのアニーリングプロセスに関する研究は、その工学的応用にとって非常に重要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、從來技術の不足を克服するために、高性能NiTi形状記憶合金の製造方法を提供することである。
【0004】
本発明の目的を達成するための技術的手段は、下記である。
【0005】
選択的レーザ溶融法によりNiTi形状記憶合金を印刷し、室温に自然冷却してSLM-NiTi印刷物が得られるステップ1と、
ステップ1で得られたSLM-NiTi印刷物を750~1050℃で50min-90min、好ましくは1h保温し、冷却して高性能NiTi SMAが得られるステップ2と、
を含む高性能NiTi SMAの製造方法。
【0006】
上記の技術的手段において、前記ステップ1では、型番がRenishaw AM400の選択的レーザ溶融装置を用いてNiTi形状記憶合金を印刷する。
【0007】
上記の技術的手段において、前記ステップ1では、等原子比のガスアトマイズ球状粉末Ni0Ti0を原材料とし、鋳放しNiTi形状記憶合金を基板として使用する。
【0008】
上記の技術的手段において、前記ステップ1では、印刷過程は、下記のとおりであり、即ち、
まず、基板を取り付け、取り付ける前に基板の表面をサンドブラスト処理し、基板表面の汚物を除去して均一で微細な凹凸面を形成し、これによって粉散布の均一性及び基板と粉末の付着性を向上させ、次に、粉体を積載し、積載前に粉末をホッパに入れる前に250メッシュの標準篩により振動篩分けし、これによって粉末の流動性を向上させ、さらに、選択的レーザ溶融装置に付属する専用ソフトウェア(QuantAM及びMaterial Editor)により3Dモデルに対してスライス、パラメータ設定及びスキャンストラテジー編集を行い、最終的に3Dデータ導入装置を生成し、熱応力の累積を回避するために、連続層の間に67°の回転角度を採用し、レーザパワーを150Wに設定し、スキャン速度を900mm/sに設定し、スキャンピッチを50μmに設定し、層厚さを40μmに設定し、最後に、酸素含有量を調整し、基板を予熱して印刷する。
【0009】
上記の技術的手段において、成形品の酸化を防止するために、酸素含有量を調整するときの酸素含有量の閾値が100ppm未満である。
【0010】
上記の技術的手段において、製造過程に発生する残留応力を減少させるために、基板を予熱するときの予熱温度は150-170℃である。
【0011】
上記の技術的手段において、前記ステップ1では、基板の面積は248×248×20(mm)であり、SLM-NiTi印刷物のサイズは5×5×5(mm)である。
【0012】
上記の技術的手段において、前記ステップ2では、水冷法により冷却する。
【0013】
上記の技術的手段において、前記ステップ2で得られた高性能NiTi SMAは、結晶粒径が6.592~150.582μmであり、破断伸びが11.92~13.95%であり、100%の超弾性を実現する。
【0014】
上記の技術的手段において、前記ステップ2で得られた高性能NiTi SMAのオーステナイト結晶の取向は<110>である。
【0015】
従来技術と比較して、本発明は下記の有益な効果を有する。
【0016】
1.本発明の方法によりSLM-NiTi積層造形印刷物をアニールすることによって、印刷物の力学的特性を顕著に向上させることができる。
【0017】
2.750~1050℃で50min-90minアニールしてから水冷した後、アニールプロセスを行っていないNiTi SMAと比較して、引張強さは僅か2.7%~20.3%低下しながら、破断伸びは17.1%~56.3%向上し、かつ100%の超弾性が実現される。
【0018】
3.アニールプロセスにより可塑性、超弾性などの部品の使用安定性を決定する重要な指標を顕著に向上させ、印刷物の実際使用の信頼性を向上させることができる。本方法は、SLM-NiTi積層造形品の実際の耐用年数の延長に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】引張及び超弾性試験の試験片の模式図である。
図2】比較例1及び実施例1~3におけるSLM-NiTi試験片の(a)印刷状態、(b)750℃の熱処理状態、(c)950℃の熱処理状態、(d)1050℃の熱処理状態を示す。
図3】比較例1及び実施例1~3におけるSLM-NiTi試験片の結晶粒径の統計図である。
図4】比較例1及び実施例1~3におけるSLM-NiTi試験片の引張性能の試験結果である。
図5】比較例1及び実施例1~3におけるSLM-NiTi試験片の超弾性試験結果を示す。(a)印刷状態、(b)750℃の熱処理状態、(c)950℃の熱処理状態、(d)1050℃の熱処理状態。
図6】比較例1及び実施例1~3におけるSLM-NiTi試験片の(a)相転移温度及びNi含有量、(b)室温XRD画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、ここで説明される具体的な実施例は、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
全ての実施例は、いずれも下記の方式を採用する。型番がRenishaw AM400の選択的レーザ溶融を用いてSLM-NiTi印刷物を製造する。原料として球状又は類球状のガスアトマイズ等原子比Ni0Ti0粉末を使用し、基板として鋳放しNiTi合金を使用し、サイズが248mm×248mm×20mmである。
【0022】
比較例1
印刷状態SLM-NiTi SMAは、下記の方法により製造される。
まず、基板を取り付け、取り付ける前に基板の表面をサンドブラスト処理し、基板表面の汚物を除去して均一で微細な凹凸面を形成し、これによって粉散布の均一性及び基板と粉末の付着性を向上させ、次に、粉体を積載し、積載前に粉末をホッパに入れる前に250メッシュの標準篩により振動篩分けし、これによって粉末の流動性を向上させ、さらに、装置に付属する専用ソフトウェア(QuantAM及びMaterial Editor)により3Dモデルに対してスライス、パラメータ設定及びスキャンストラテジー編集を行い、最終的に3Dデータ導入装置を生成し、熱応力の累積を回避するために、連続層の間に67°の回転角度を採用し、レーザパワーを150Wに設定し、スキャン速度を900mm/sに設定し、スキャンピッチを50μmに設定し、層厚さを40μmに設定し、最後に、酸素含有量を調整し、基板を予熱して印刷した。成形品の酸化を防止するために、SLM動作時の酸素含有量閾値を100ppm未満に設定し、製造過程に発生する残留応力を減少させるために、基体を170℃に予熱した。印刷終了後にチャンバーと共に4時間冷却し、印刷状態のSLM-NiTiSMA(As-SLMと記する)を得た。
【0023】
印刷状態(比較例1)及び熱処理状態SLM-NiTi SMA(実施例1~3)のミクロ組織及び性能を研究するために、試験片を5mm×5mm×5mmの試験片に加工して研磨した。その力学及び超弾性を試験するために、試験片を図1に示されるサイズに従って加工し、伸び計(測定レンジ25mm)を備えたLishiLD26型電子式万能試験機により試験した。ここで、引張速度は5×10-4/s。
【0024】
超弾性試験方法は、室温下で試験片に2、4、6及び8%の歪みを加え、2MPaまでアンロードした。
【0025】
比較例1で得られた印刷状態SLM-NiTi SMAは、結晶粒径が8.982μmであり、引張強さが921.62±6MPaであり、破断伸びが10.18±0.31%であり、歪みを加えたときに、超弾性を示さなかった。
【0026】
実施例1
比較例1で得られた印刷状態SLM-NiTi SMAを750℃で1hアニールし、水冷した後にアニール状態SLM-NiTiSMA(S750と記する)を得た。その結晶粒径は6.592μmであり、引張強さは896.75±7MPaであり、破断伸びは11.92±0.84%であり、2%歪みを加えた後の超弾性回復率は90.5%であり、4%歪みを加えた後の超弾性回復率は81%であり、6%歪みを加えた後の超弾性回復率は42.17%であり、8%歪みを加えた後の超弾性回復率は24.75%であった。
【0027】
実施例2
比較例1で得られた印刷状態SLM-NiTi SMAを950℃で1hアニールし、水冷後にアニール状態SLM-NiTiSMA(S950と記する)を得た。その結晶粒径は47.678μmであり、引張強さは816.24±6MPaであり、破断伸びは15.91±1.20%であり、2%歪みを加えた後の超弾性回復率は100%であり、4%歪みを加えた後の超弾性回復率は86%であり、6%歪みを加えた後の超弾性回復率は50.33%であり、8%歪みを加えた後の超弾性回復率は32%であった。
【0028】
実施例3
比較例1で得られた印刷状態SLM-NiTi SMAを1050℃で1hアニールし、水冷した後にアニール状態SLM-NiTiSMA(S1050と記する)を得た。その結晶粒径は150.582μmであり、引張強さは733.99±6MPaであり、破断伸びは13.95±0.78%であり、2%歪みを加えた後の超弾性回復率は100%であり、4%歪みを加えた後の超弾性回復率は84.75%であり、6%歪みを加えた後の超弾性回復率は47.33%であり、8%歪みを加えたときに失効した。
【0029】
上記の比較例1及び実施例1~3について
印刷状態(比較例1)及び熱処理状態SLM-NiTi SMA(実施例1~3)のミクロ組織、引張性能及び超弾性試験を研究した結果、アニール温度の上昇についれて、結晶粒径及び破断伸びは徐々に高くなるのに対し、引張強さは減少する傾向にあることが見出された(図3、4)。特に、アニール処理後のSLM-NiTi試験片は、顕著な超弾性を示し、950℃で超弾性が最適であった(図5)。これらの現象のメカニズムを理解することは、適切なアニールプロセスを選択して実際の応用を満たすのに有利である。
【0030】
引張性能及び超弾性変化のメカニズムを研究するために、まず、印刷状態及び熱処理状態のSLM-NiTiSMAの相転移挙動、Ni含有量及び室温相組織に対して特徴付けを行った(図6)。熱処理した後に、試験片Ni含有量は増加し、相転移温度が低下し、室温組織は、マルテンサイトからオーステナイトに変換し、これによって、熱処理状態の試験片は超弾性を示した。
【0031】
図2-4及び図6から分かるように、750℃では、SLM-NiTi試験片に再結晶化が発生し、試験片のミクロ組織は、印刷状態の細長い柱状結晶から均一で微細な等軸晶に変換した。試験片の破断伸びは17.1%向上し、強度は僅か2.7%低下した。950℃では、SLM-NiTi試験片の組織は、粗大の柱状結晶と等軸晶の混合相であった。この場合、破断伸びは56.3%向上し、強度は11.4%低下した。1050℃では、SLM-NiTi試験片の組織は、粗大の柱状結晶であった。この場合、破断伸びは37.0%向上し、強度は20.3%低下した。明らかなように、細結晶は強度が強化され、酸化物はその延性を低下させた。
【0032】
図2-3、図5及び図6から分かるように、超弾性試験期間において、1050℃ではSLM-NiTi試験片は早期に断裂した。これは、酸化物及び粗結晶によりSLM-NiTi試験片の信頼性が低下したためである。
【0033】
したがって、超弾性NiTi SMAが高強度を必要とする場合、750℃のアニール温度で1hアニールして均一で微細な等軸晶を得ることが好適である。これによって、NiTi SMAは、超弾性を有するとともに、強度が高い。超弾性NiTi SMAに高可塑性が必要である場合、950~1050℃のアニール温度で1hアニールして粗結晶を得ることが好適である。これによって、NiTi SMAは、超弾性を有するとともに可塑性が高い。また、超弾性NiTi SMAが良好な総合的な性能を必要とする場合、750~950℃のアニール温度で1hアニールして粗結晶と細結晶が混在した組織を得ることが好適である。これによって、NiTi SMAは、超弾性に加え、高可塑性及び優れた信頼性を有する。
【0034】
SLM-NiTi試験片は、熱処理温度の上昇につれて順に回復、再結晶化、及び異常成長の3つの過程を経ることによって、結晶粒径は減少してから増大した。また、熱処理温度の上昇につれて、試験片の結晶配向は変化し続け、特に、<110>配向が強くなった。知られているように、SLM-NiTi合金の延性は、結晶の配向と密接に関連している。<001>配向では、試験片は早期に断裂し、引張性能が大幅に低下する。これに対し、<110>配向では、試験片は比較的高い伸び率を有し、引張性能に有利である。熱処理温度が750℃を超えた場合、試験片は再結晶化過程を完成させ、印刷状態の合金試験片と比較して、<110>配向が強くなることで試験片の可塑性が高くなった。また、熱処理温度の上昇につれて、Ti原子の拡散能力は徐々に活性化され、過飽和Ti原子が活性化され、TiNi析出相が析出し、これによって、基体中のNi原子含有量が高くなり、相転移温度が低下し、室温物相組織がオーステナイト相に変換し、試験片は超弾性を示した。また、細結晶が応力マルテンサイト変態を抑制するため、熱処理過程(熱処理温度750~1050℃)における合金は以上に成長し、結晶粒径が大きくなり、合金に応力誘導マルテンサイトが発生しやすくなり、最終的には優れた超弾性が達成される。しかし、熱処理温度超が1050℃を超えた場合、合金は酸化物を生成しやすいため、引張及び機能特性が悪くなる。
【0035】
以上の説明は、本発明の好ましい実施形態に過ぎない。当業者であれば、本発明の原理から逸脱しない限り、複数の改良及び修飾を加えることができる。これらの改良及び修飾は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NiTi SMAの製造方法であって、
選択的レーザ溶融法によりNiTi形状記憶合金を印刷し、室温に自然冷却してSLM-NiTi印刷物が得られ、等原子比のガスアトマイズ球状粉末Ni Ti を原材料とし、鋳放しNiTi形状記憶合金を基板として使用するステップ1と、
ステップ1で得られたSLM-NiTi印刷物を950℃60min保温し、水冷法により冷却してNiTi SMAが得られるステップ2と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ステップ1において、印刷過程は、下記のとおりであり、即ち、
まず、基板を取り付け、取り付ける前に基板の表面をサンドブラスト処理し、基板表面の汚物を除去して均一で微細な凹凸面を形成し、これによって粉散布の均一性及び基板と粉末の付着性を向上させ、次に、粉体を積載し、積載前に粉末をホッパに入れる前に250メッシュの標準篩により振動篩分けし、これによって粉末の流動性を向上させ、さらに、選択的レーザ溶融装置に付属する専用ソフトウェアにより3Dモデルに対してスライス、パラメータ設定及びスキャンストラテジー編集を行い、最終的に3Dデータ導入装置を生成し、熱応力の累積を回避するために、連続層の間に67°の回転角度を採用し、レーザパワーを150Wに設定し、スキャン速度を900mm/sに設定し、スキャンピッチを50μmに設定し、層厚さを40μmに設定し、最後に、酸素含有量を調整し、基板を予熱して印刷することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸素含有量を調整するときの酸素含有量の閾値は100ppm未満であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
基板を予熱するときの予熱温度は、150-170℃であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ1において、基板の面積は、248×248×20mmであり、SLM-NiTi印刷物のサイズは、5×5×5mmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ2で得られた高性能NiTi SMAのオーステナイト結晶の配向は<110>であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。