(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160985
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】座標測定機用の測定アームおよび座標測定機
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
G01B5/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074212
(22)【出願日】2024-05-01
(31)【優先権主張番号】23170989
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504269327
【氏名又は名称】クリンゲルンベルク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Klingelnberg GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】アッカーショット,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ベルゲン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ヴュスター,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,ロビン
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062BC71
2F062CC07
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF05
2F062GG51
2F062GG71
2F062HH01
2F062HH04
2F062MM03
2F062MM06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大型部品のより信頼性の高い測定、特に内歯車の歯などの回転対称部品の内部特徴の信頼性の高い測定を可能にする、測定アームを特定し改良する。
【解決手段】座標測定機100用の測定アーム10は支持構造を有しており、支持構造は測定アームを座標測定機の可動スライド104に固定するための固定部を備えている。測定アームは測定対象部品上の測定値を取得するための測定ヘッドを有しており、測定ヘッドは支持構造に取り付けられている。支持構造は振動減衰用の補助的質量ダンパ18を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標測定機用の測定アームであって、
支持構造(12)を有しており、前記支持構造(12)は前記測定アーム(10)を前記座標測定機(100)の可動スライド(104)に固定するための固定部(14)を備えており、
測定対象である部品上の測定値を取得するための測定ヘッド(16)を有しており、前記測定ヘッド(16)は前記支持構造(12)に取り付けられており、
前記支持構造(12)は、振動減衰用の補助的質量ダンパ(18)を備えている、測定アーム。
【請求項2】
前記測定ヘッド(16)は前記支持構造(12)の前記補助的質量ダンパ(18)に固定されている、
請求項1に記載の測定アーム。
【請求項3】
前記支持構造(12)は、端部で互いに接続されており、長手方向軸(L1、L2、L3)が互いに対して角度を成し、特に互いに対して直角を成す、棒要素(28、30、32)を備えており、
前記支持構造(12)は、特に、ちょうど2つの棒要素またはちょうど3つの棒要素(28、30、32)を有している、
請求項1又は2に記載の測定アーム。
【請求項4】
前記補助的質量ダンパ(18)は、前記支持構造(12)の棒要素(32)の端部(34)に固定されている、
請求項3に記載の測定アーム。
【請求項5】
前記補助的質量ダンパ(18)が前記棒要素(32)の前記端部(34)と前記測定ヘッド(16)との間に配置されている、
請求項2又は4に記載の測定アーム。
【請求項6】
U字型配置を形成する、3つの棒要素(28、30、32)が設けられており、
特に、前記固定部(14)が前記U字型配置の第1自由突出端部(38)に形成されており、
前記測定ヘッド(16)が特に前記U字型配置の第2自由突出端部(18)上に配置されている、
請求項3~5のいずれか1つに記載の測定アーム。
【請求項7】
前記補助的質量ダンパは、互いに直交する2つの空間方向で活動的であり、または
前記補助的質量ダンパ(18)は、互いに直交する3つの空間方向(X、Y、Z)で活動的である、
請求項1~6のいずれか1つに記載の測定アーム。
【請求項8】
前記補助的質量ダンパ(18)はハウジング(40)を備えており、
少なくとも1つの質量要素(42)は、スプリング(44)を用いて前記ハウジング(40)に固定されて、前記ハウジング(40)内に配置されており、
前記補助的質量ダンパ(18)はオイル(46)で充填されている、
請求項1~7のいずれか1つに記載の測定アーム。
【請求項9】
前記スプリング(44)は前記質量要素(42)の互いに反対を向く側面に配置されており、
特に、空間方向(X、Y、Z)ごとに2つ以上のスプリング(44)が設けられており、前記スプリング(44)は特に並列回路に配置されている、
請求項7又は8に記載の測定アーム。
【請求項10】
前記補助的質量ダンパ(18)は、第1減衰方向において第1剛性および/または第1減衰を有しており、
前記補助的質量ダンパ(18)は、第2減衰方向において第2剛性および/または第2減衰を有しており、
前記第1剛性は前記第2剛性とは異なっており、および/または前記第1減衰は前記第2減衰とは異なっている、
請求項7~9のいずれか1つに記載の測定アーム。
【請求項11】
前記第1剛性は、減衰されていない測定アーム(310)で決定される第1固有モードを考慮して画定されており、
前記第2剛性は、減衰されていない測定アーム(310)で決定される第2固有モードを考慮して画定されている、
請求項10に記載の測定アーム。
【請求項12】
座標測定機であって、
ワークピースを収容するためのターンテーブル(102)を有しており、前記ターンテーブル(102)は前記ワークピースを回転させるための回転軸(C1)を有しており、
測定アーム(10)を有しており、前記測定アーム(10)は請求項1~11のいずれか1つに記載のように設計されており、
前記測定アーム(10)を前記ワークピースに対して並進移動させるための3つの直線軸(X1、Y1、Z1)を有している、
座標測定機。
【請求項13】
前記測定アーム(10)は請求項7に記載のように設計されており、
前記3つの直線軸(X1、Y1、Z1)のうちの第1直線軸(X1)は、前記測定アーム(10)の第1空間方向(x)への並進変位のために構成されており、
前記3つの直線軸(X1、Y1、Z1)のうちの第2直線軸(Y1)は、前記測定アーム(10)の第2空間方向(y)への並進変位のために構成されており、
前記3つの直線軸(X1、Y1、Z1)のうちの第3直線軸(Z1)は、前記測定アーム(10)の第3空間方向(z)への並進変位のために構成されており、
前記第1空間方向(x)、前記第2空間方向(y)、および前記第3空間方向(z)はそれぞれ互いに直交する方向に向いており、
前記第1空間方向(x)、前記第2空間方向(y)、および前記第3空間方向(z)は、前記補助的質量ダンパ(18)の活動の互いに直交する3つの空間方向(X、Y、Z)と同一直線上に配向されている、
請求項12に記載の座標測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造を有する、座標測定機用の測定アームに関するものであり、支持構造は、測定アームを座標測定機の可動スライドに固定するための固定部を有し、測定対象部品上の測定値を取得するための測定ヘッドを有し、測定ヘッドは支持構造に取り付けられている。さらに、本発明は、このような測定アームを有する座標測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
座標測定機は、製造された部品の品質をチェックするために部品を測定するのに使用される。この場合、例えば、指定された製造許容範囲が維持されているかどうかがチェックされる。さらに、測定された部品の偏差に基づいて製造プロセスの修正が決定され得る。部品の偏差に基づいて修正された製造パラメータを導出することを、品質管理ループとも称する。
【0003】
座標測定機は、測定アームに取り付けられており部品の測定値を取得する座標測定機の測定ヘッドと測定対象部品との間の部品の測定中に相対移動を実行するために、数値制御される駆動軸を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、測定ヘッドを指定された測定パスに沿って配置しまたは部品に対する指定された測定点を記録するために、測定中は測定アームが移動させられる。このような測定アームは、対応する関連する固有振動数を有する1つ以上の固有モードを有するため、測定アームの動きによって測定アームの振動が発生する場合があり、測定結果が損なわれ、または測定が遅れる可能性がある。
【0005】
測定アームの振動の問題は、例えば風力発電で使用されるような特に大きな歯車の測定中にますます多く発生する。このような歯車を測定し、特にベアリングポイントまたは内歯車の歯などの歯車の内部特徴を測定するために、長距離突出する測定アームが使用される。ここでは、測定アームの駆動部または取付部と、測定ヘッド領域の測定点との間に大きな距離が形成される。このような設計は、測定点までの距離またはレバーが大きいため、振動の影響に対してより敏感であり、突出した測定アームを使用せずに行い、測定ヘッドを取付部または駆動軸の直近に配置する、設計よりも振動が発生しやすいことは明らかである。
【0006】
図1は、この点に関して、座標測定機200の一例を示しており、座標測定機200は、ワークピースを収容するためのターンテーブル210を有しており、x、y、z方向への3つの駆動直線軸を有しており、直線軸に直接に取り付けられており、つまり座標測定機200に長距離突出する測定アームを有さない、測定ヘッド22を有している。
図2は、これと比較して、長距離を突出し、長距離まで延びて、上述した振動の傾向がある、測定アーム310を有する座標測定機300を示している。
【0007】
原理的には、測定アームを補強することによって、または相対移動の速度を調整することによって、座標測定機の軸の移動の結果として生じる上記の振動励起の問題に対処することが可能である。しかしながら、測定アームを補強すると重量が増大するので、対応する関連駆動部および取付部が、より大きな寸法になり、より高剛性にさせなければならなくなる可能性がある。相対移動の速度の調整、つまり特に軸の加速度と軸の速度の低減、および振動の減衰を待つ時間の維持は、測定時間の増大につながり、測定プロセスの効率が低下に至る。したがって、上記の両方の変形例は不利であり、全体として顧客側のコストが高くなる。
【0008】
この背景に対して、本発明は、特に大型部品のより信頼性の高い測定、特に内歯車の歯などの回転対称部品の内部特徴の信頼性の高い測定を可能にする、測定アームを特定し改良するという技術的課題に基づいている。さらに、このような測定アームを有する座標測定機が特定されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明のさらなる実施形態は、従属請求項および以下の説明から生じる。
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、支持構造を有する座標測定機用の測定アームに関するものであり、支持構造は測定アームを座標測定機の可動スライドに固定するための固定部を有しており、測定対象の部品の測定値を取得するための測定ヘッドを有しており、測定ヘッドは支持構造に取り付けられている。測定アームは、測定アームの支持構造が振動減衰用の補助的質量ダンパを有する点を特徴とする。
【0011】
出願人の研究により、冒頭で説明した振動の問題を除去するための非常に効率的な解決策は、測定アームに補助的質量ダンパを組み込むことであることが判明した。このようにして、可能性のある測定速度に悪影響を与え、または測定アーム全体の重量が大幅に増加したりすることなく、振動を低減または減衰させることができる。
【0012】
測定アームの支持構造は、例えば鋼材を有してもよい。鋼を使用すると、測定アームの堅牢で剛性の高い構造を実現できるという利点がある。代替的または追加的に、測定アームは鋼よりも軽量な金属材料を有し、および/または測定アームは複合材料、特に繊維複合材料を有することが提供されてもよい。
【0013】
測定ヘッドは、スイッチング測定プローブ、走査測定プローブなどの触覚測定プローブを有してもよい。この場合、触覚測定プローブは、例えば、ボール先端を備え、1つ以上の測定値を記録するために測定対象の部品と接触させられるように構成されている。
【0014】
代替的または追加的に、測定ヘッドは光学測定プローブを備え、このような光学測定プローブは光学距離センサとも称されてもよい。このような光学測定プローブは、部品に接触することなく測定値を取得するように構成されている。光学距離センサはポイントセンサであり、レーザ三角測量、共焦点または共焦点-色彩距離測定、干渉距離測定、二重周波数コム分光法などの測定原理のいずれかに従って作動することが、提供されてもよい。
【0015】
測定ヘッドを支持構造の補助的質量ダンパに固定することが、提供されてもよい。このようにして、補助的質量ダンパの減衰効果は測定ヘッドの直近で展開され、これによって、できるだけ正確な測定値を迅速に取得することを可能とするために振動が測定ヘッド領域において減衰され得る。
【0016】
たとえば、測定ヘッドは補助的質量ダンパに取り外し可能に固定されてもよい。例えば、測定ヘッドを補助的質量ダンパにねじ込まれてもよく、これにより、測定ヘッドを補助的質量ダンパに固定するために、例えば1つのねじ接続または2つ以上のねじ接続が設けられる。代替的な例示的実施形態によれば、測定ヘッドは、クランプ接続、キャッチ接続、ピン接続などの他の取り外し可能な固定手段または固定タイプによって、補助的質量ダンパに接続されてもよいことは明らかである。
【0017】
代替的に、測定ヘッドが補助的質量ダンパに恒久的に接続されることが提供されてもよい。例えば、測定ヘッドは、接着剤接合によって、または溶接接合、はんだ接合などの材料接合によって、補助的質量ダンパに接続され得る。この場合、リベット接続などの非破壊的に取り外しできない機械的接続も恒久的な接続とみなされる。
【0018】
測定アームの一実施形態によれば、支持構造は、端部で互いに接続され、その長手方向軸が互いに対して角度を成し、特に互いに対して直角を成す棒要素を有することが提供されてもよい。
【0019】
棒要素は、それぞれの縦軸に沿って測定された長さが縦軸に垂直に測定された厚さの倍数に対応する、長方形の棒要素であってもよい。特に、長手軸に沿って測定された各棒要素のそれぞれの長さは、長手軸に垂直に測定された各棒要素の厚さの少なくとも3倍、特に、長手軸に垂直に測定された各棒要素の厚さの少なくとも4倍または少なくとも5倍に相当する。
【0020】
例えば、支持構造がちょうど2つの棒要素を有すること、または支持構造がちょうど3つの棒要素を有することが提供されてもよい。
【0021】
測定アームの一実施形態によれば、補助的質量ダンパが支持構造の棒要素の端部に固定されることが提供されてもよい。
【0022】
特に、補助的質量ダンパは、支持構造の棒要素の1つに取り外し可能に固定され、特にねじ止めされることが提供されてもよい。代替的に、補助的質量ダンパが支持構造の棒要素の1つに恒久的に接続されることが提供されてもよい。取り外し可能な接続と恒久的な接続の定義に関しては、測定ヘッドの固定に関する前述の説明に参照がなされる。
【0023】
測定アームの一実施形態によれば、補助的質量ダンパが棒要素の端部と測定ヘッドとの間に配置されることが提供されてもよい。これにより、補助的質量ダンパを測定アームへのコンパクトな組み込みが可能になる。
【0024】
補助的質量ダンパの厚さは、関連付けられた棒要素の長手方向延在部に対して垂直に測定され、また長手方向延在部に対して横方向にも測定され、関連する要素の厚さ以下であり、または補助的質量ダンパの断面積は、補助的質量ダンパが固定される関連付けられた棒要素の断面積以下であることが提供されてもよい。このようにして、補助的質量ダンパの支持構造へのコンパクトな組み込みが可能となり、これにより、補助的質量ダンパが固定された棒要素が共同で覆われてもよい。換言すれば、補助的質量ダンパは、棒要素の長手方向延在部に対して横方向から見た関連する測定アームの寸法を拡大することなく、測定アームの既存の構造に組み込むことができる。これには、座標測定機の相対移動中に考慮する必要のある、支持構造に組み込まれた補助的質量ダンパに起因したさらなる衝突構造が発生しないという利点がある。したがって、本発明に係る測定アームは、補助的質量ダンパの形態の組み込まれた減衰要素を有しない測定アームと同様に作動させることができる。
【0025】
測定アームの一実施形態によれば、U字型配置を形成する3つの棒要素を設けることができる。特に、U字型配置は、例えば内径が1000mm以上および/または係数(モジュラス)が8mmを超える大型の歯車の内部特徴の測定を可能にする。この場合、測定ヘッドは、測定対象の歯車の通路開口部の領域内に配置され得、歯車の一部は、U字型測定アームの脚の間に突出し、測定中における測定アームの歯車との衝突が回避され得る。
【0026】
固定部がU字型配置の第1自由突出端部に形成されてもよく、測定ヘッドがU字型配置の第2自由突出端部に配置されてもよい。
【0027】
測定アームの一実施形態によれば、補助的質量ダンパが互いに直交する2つの空間方向でアクティブであり、または補助的質量ダンパが互いに直交する3つの空間方向でアクティブであることが提供されてもよい。したがって、補助的質量ダンパは、その減衰効果が特に指定された空間方向の方向に応じて展開されるように位置合わせされてもよい。したがって、特定の望ましくない振動をターゲットにして減衰することが可能になる。
【0028】
測定アームの一実施形態によれば、補助的質量ダンパはハウジングを備え、ハウジング内にはスプリングを使用してハウジングに固定された少なくとも1つの質量要素が配置され、補助的質量ダンパにはオイルが充填されていることが提供されてもよい。特に、質量要素はオイルと直接に接触しており、質量要素の動きはオイルによって減衰される。特に、隙間にオイル層が形成されるように、質量要素とハウジングとの間の隙間にオイルが充填され、質量要素の動きによってオイル層のせん断が生じ、速度に比例した減衰が得られる。したがって、質量要素は特に振動質量であり、質量要素はさらに特にスプリングのみによってハウジングに固定される。
【0029】
質量要素は、重量が1kg以上、特に重量が5kg以上であってもよい。質量要素の重量は、重量が20kg以下、特に重量が10kg以下であってもよい。
【0030】
補助的質量ダンパは、2つ以上のさらなる質量要素を有することが提供されてもよい。特に、2つ以上のさらなる質量要素のそれぞれが、上述の方法でハウジングにバネ式に接続され、オイルと減衰が能動的であるように接触していることが提供されてもよい。
【0031】
それぞれの質量要素とオイルとの間に、膜などの質量要素の動きをオイルに伝達する1つ以上の中間要素が設けられることが、提供されてもよい。
【0032】
特に、質量要素、または複数の質量要素が設けられる場合には、各質量要素がオイルと直接接触し、それぞれの質量要素とオイルとの間に中間要素が設けられていないことが提供される。
【0033】
スプリングは、質量要素の互いに反対を向く側面に配置されてもよく、特に、空間方向ごとに2つ以上のスプリングが設けられ、スプリングは特に並列回路で配置される。スプリングによる質量要素の二面固定は、ハウジング内での質量要素の吊り下げである。したがって、質量要素は、ハウジングの指定された境界内およびそれぞれの可能なスプリングの運動内で自由に振動できる。
【0034】
指定された空間方向に沿った対応するスプリングの向きまたは位置合わせにより、対応する空間方向に沿った補助的質量ダンパの振動および減衰挙動の定義が可能となり、それぞれが指定された剛性を有する、指定された数の関連するスプリングが使用される。
【0035】
したがって、異なるスプリングおよび/または空間方向ごとに異なる数のスプリングを使用することにより、方向に応じた減衰動作の設定が可能になる。例えば、引張ばねおよび/または圧縮ばねを使用できる。
【0036】
補助的質量ダンパは第1減衰方向に第1剛性および/または第1減衰を有しており、補助的質量ダンパは第2減衰方向に第2剛性および/または第2減衰を有しており、第1剛性は第2剛性とは異なっており、および/または第1減衰は第2減衰とは異なっていることが提供されてもよい。
【0037】
補助的質量ダンパの一実施形態によれば、第1剛性は減衰されていない測定アーム上で決定された第1固有モードを考慮して定義され、第2剛性は減衰されていない測定アーム上で決定された第2固有モードを考慮して定義されることが提供されてもよい。この目的のために、例えば、減衰されていない測定アームの固有モードと関連付けられた固有振動数および振動形態を決定するために、実験および/またはコンピュータ支援シミュレーションによるモード解析が実行されてもよい。
【0038】
本発明によれば、ワークピースを受けるためのターンテーブルを有しており、ターンテーブルがワークピースを回転させるための回転軸を有しており、測定アームを有しており、測定アームは本発明にしたがって設計されており、ワークピースに対する測定アームの並進変位のための3つの直線軸を有する、座標測定機が特定される。本発明に係る座標測定機は、特に、測定アームの支持構造の補助的質量ダンパが測定ヘッド領域の振動を低減させるので、大型部品であっても効率的かつ正確な測定を可能にする。
【0039】
座標測定機の一実施形態によれば、補助的質量ダンパは、互いに直交する3つの空間方向で活動的であり、3つの直線軸のうちの第1直線軸は測定アームの第1空間方向への並進変位用に構成されており、3つの直線軸のうちの第2直線軸は測定アームの第2空間方向への並進変位用に構成されており、3つの直線軸のうちの第3直線軸は測定アームの第3空間方向への並進変位用に構成されており、第1、第2、および第3空間方向はそれぞれ互いに直交しており、第1、第2、および第3空間方向は補助的質量ダンパの活動の互いに直交する3つの空間方向と共線状に配向されていることが提供されてもよい。したがって、補助的質量ダンパの活動は、座標測定機の直線軸の移動方向に沿って方向付けられている。したがって、直線軸の軸方向の加速によって生じる振動は、方向に応じて意図的に減衰させることができる。
【0040】
代替的な実施形態によれば、補助的質量ダンパがちょうど1つの作用方向を有しており、または補助的質量ダンパがちょうど2つの作用方向を有していることが提供されてもよい。したがって、補助的質量ダンパは、関連する測定アームに適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下、本発明が、例示的な実施形態を示す図面に基づいてさらに詳細に説明される。
【
図1】
図1は従来技術に係る座標測定機を示している。
【
図2】
図2は従来技術に係る突出する測定アームを有する座標測定機を示している。
【
図3】
図3は本発明に係る測定アームを示している。
【
図5】
図5は本発明に係るよる座標測定機を示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図3は、座標測定機用の本発明に係る測定アーム10を示している。
【0043】
測定アーム10は支持構造12を有している。支持構造12は、測定アーム10を座標測定機の可動スライドに固定するための固定部14を有している。
【0044】
測定アーム10は、測定対象部品の測定値を取得するための測定ヘッド16を有している。測定ヘッド16は支持構造12に取り付けられている。
【0045】
支持構造12は、振動を減衰するための補助的質量ダンパ18を有している。
【0046】
測定ヘッド16は、その端部にボール先端24が固定されたピンチップ22を有する、触覚測定プローブ20を備えている。このように測定値を取得するために、測定対象部品に接触させるためのボール先端24が設けられている。対応するボール先端24を有するこのような触覚測定プローブ20の使用は、座標測定技術の分野における従来技術である。測定プローブ20は、測定ヘッド16に着脱可能かつ交換可能に取り付けられている。
【0047】
測定ヘッド16は、支持構造12の補助的質量ダンパ18に固定されている。この場合、測定ヘッド16は、補助的質量ダンパ18に取り外し可能かつ交換可能に、具体的には、概略的に示されているねじ接続部26によって固定されている。
【0048】
支持構造12は、3つの棒要素28、30、32を有している。棒要素28、30、32は、端部で互いに接続されている。具体的には、棒要素28は端部で棒要素30に接続されており、棒要素30は端部で棒要素32に接続されている。棒要素28および30の縦軸L1およびL2は、互いに対して直角をなしている。棒要素30、32の縦軸L2およびL3は、互いに対して直角をなしている。
【0049】
縦軸L1はZ軸と平行に向いている。縦軸L2はy軸と平行に向いている。縦軸L3はZ軸と平行に向いている。
【0050】
補助的質量ダンパ18は、支持構造12の棒要素32の端部34に固定されている。この場合、補助的質量ダンパ28は、支持構造の棒要素32に、具体的には、概略的にのみ示されているねじ接続36によって、取り外し可能に接続されている。
【0051】
この場合、補助的質量ダンパ18は、棒要素32の端部34と測定ヘッド16との間に配置されている。
【0052】
この場合、3つの棒要素28、30、32はU字型の配置を形成する。この場合、固定部14は、U字型配置の第1自由突出端部38に配置されている。測定ヘッド16は、U字型配置の第2自由突出端部に形成されており、第2自由突出端部は、この場合、補助的質量ダンパ18によって形成されている。
【0053】
図4は補助的質量ダンパ18を模式的表示で示している。この場合、補助的質量ダンパは、互いに直交する3つの空間方向X、Y、Zで活動的であり、空間方向X、Y、Zは、示されている座標系x、y、zの軸と同一直線上に向いている。補助的質量ダンパ18が互いに直交する対応する空間方向X、Y、Zの負の方向にも明らかに活動的であることを示すために、それぞれの場合において対応する反対方向に追加の方向矢印が示されている。
【0054】
補助的質量ダンパ18はハウジング40を有している。ハウジング40の内側には質量要素42が配置されている。質量要素42は、ハウジング40の内側において、上記3つの空間方向X、Y、Zのそれぞれに取り外し可能に取り付けられた振動質量である。
【0055】
質量要素42は、スプリング44によってハウジング40に固定されている。
【0056】
スプリング44はそれぞれ質量要素42の互いに反対を向く側面に配置されており、それによって質量要素42は各可能な移動方向においてハウジング40に対してスプリング弾性態様で支持されている。
【0057】
複数のスプリング44は、空間方向X、Y、Zごとに設けられており、各側から見て平行回路状に配置されている。
【0058】
補助的質量ダンパの剛性は、空間方向X、Y、Zに依存して異なり得る。これは、スプリングの数、または選択されるスプリングの寸法又はタイプによって画定され得る。
【0059】
この場合、補助的質量ダンパ18の剛性は、決定された固有モードを考慮して画定されている。
【0060】
補助的質量ダンパ18のハウジング40はオイル46で充填されている。オイル46は、質量要素42とハウジング40との間に形成された隙間48を満たしており、それによってハウジング40に対する質量要素42のX、Y、Zのいずれかの方向への移動がオイル46のせん断とそれに伴う速度比例減衰を生じさせる。
【0061】
図5は、本発明に係る座標測定機100を示している。座標測定機100は、内歯歯車などの測定対象となる部品またはワークピースを収容するためのターンテーブル102を有している。
【0062】
ターンテーブル102は、測定対象のワークピースを自身の軸Cを中心に回転させるためのCNC制御回転軸C1または回転軸C1を有している。ワークピースは、たとえば、内歯歯車などの回転対称部品であってもよい。
【0063】
座標測定機100は、補助的質量ダンパ18を有する本発明に係る測定アーム10を有している。
【0064】
さらに、座標測定機100は、測定アーム10をワークピースに対して直交空間方向x、y、zに沿って並進移動させるための3つの直線軸X1、Y1、Z1を有しており、x、y、zは直交座標系を形成している。
【0065】
3つの直線軸X1、Y1、Z1のうちの第1直線軸X1は、直交空間方向x、y、zのうちの第1空間方向xにおける測定アームの並進変位のために構成されている。3つの直線軸X1、Y1、Z1のうちの第2直線軸Y1は、直交空間方向x、y、zのうちの第2空間方向yにおける測定アームの並進変位のために構成されている。3つの直線軸X1、Y1、Z1のうちの第3直線軸Z1は、直交空間方向x、y、zのうちの第3空間方向zにおける測定アームの並進変位のために構成されている。
【0066】
第1、第2、および第3の空間方向x、y、zは、補助的質量ダンパ18の活動の互いに直交する3つの空間方向X、Y、Zと同一直線上に向いている。
【0067】
図5は、測定アーム10が、その固定部14によって、座標測定機100のy方向に移動可能なスライド104に固定されていることを概略的に示している。
【符号の説明】
【0068】
10:測定アーム
12:支持構造
14:固定部
16:測定ヘッド
18:補助的質量ダンパ
20:測定プローブ
22:ピンチップ
24:ボール先端
26:ねじ接続
28:棒要素
30:棒要素
32:棒要素
34:端部
36:ねじ接続
38:端部
40:ハウジング
42:質量要素
44:スプリング
46:オイル
48:隙間
100:座標測定機
102:ターンテーブル
104:スライド
200:座標測定機
210:ターンテーブル
220:測定ヘッド
300:座標測定機
310:減衰されていない測定アーム
L1:縦軸
L2:縦軸
L3:縦軸
x:空間方向
X1:直線軸
y:空間方向
Y1:直線軸
z:空間方向
Z1:直線軸
C:ワークピース軸
C1:回転軸
X:補助的質量ダンパの作動方向
Y:補助的質量ダンパの作動方向
Z:補助的質量ダンパの作動方向
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標測定機であって、
ワークピースを収容するためのターンテーブル(102)を有しており、前記ターンテーブル(102)が前記ワークピースを回転させるための回転軸(C1)を有しており、
測定アーム(10)を有しており、
前記測定アーム(10)は、支持構造(12)を有しており、前記支持構造(12)は前記測定アーム(10)を前記座標測定機(100)の可動スライド(104)に固定するための固定部(14)を備えており、
前記測定アーム(10)は、測定対象である部品上の測定値を取得するための測定ヘッド(16)を有しており、前記測定ヘッド(16)は前記支持構造(12)に取り付けられており、
前記支持構造(12)は、振動減衰用の補助的質量ダンパ(18)を備えており、
前記支持構造(12)は、端部で互いに接続されており、長手方向軸(L1、L2、L3)が互いに対して角度を成す、棒要素(28、30、32)を備えており、
前記測定アーム(10)の前記ワークピースに対する並進移動用の3つの直線軸(X1、Y1、Z1)を有している、座標測定機。
【請求項2】
前記測定ヘッド(16)は前記支持構造(12)の前記補助的質量ダンパ(18)に固定されている、
請求項1に記載の座標測定機。
【請求項3】
前記棒要素(28、30、32)は、互いに対して直角を成しており、前記支持構造(12)は、特に、ちょうど2つの棒要素またはちょうど3つの棒要素(28、30、32)を有している、
請求項1又は2に記載の座標測定機。
【請求項4】
前記補助的質量ダンパ(18)は、前記支持構造(12)の棒要素(32)の端部(34)に固定されている、
請求項3に記載の座標測定機。
【請求項5】
前記補助的質量ダンパ(18)が前記棒要素(32)の前記端部(34)と前記測定ヘッド(16)との間に配置されている、
請求項2に記載の座標測定機。
【請求項6】
U字型配置を形成する、3つの棒要素(28、30、32)が設けられており、
特に、前記固定部(14)が前記U字型配置の第1自由突出端部(38)に形成されており、
前記測定ヘッド(16)が特に前記U字型配置の第2自由突出端部(18)に配置されている、
請求項3に記載の座標測定機。
【請求項7】
前記補助的質量ダンパは、互いに直交する2つの空間方向で活動的であり、または
前記補助的質量ダンパ(18)は、互いに直交する3つの空間方向(X、Y、Z)で活動的であり、
前記3つの直線軸(X1、Y1、Z1)のうちの第1直線軸(X1)は、前記測定アーム(10)の第1空間方向(x)への並進変位のために構成されており、
前記3つの直線軸(X1、Y1、Z1)のうちの第2直線軸(Y1)は、前記測定アーム(10)の第2空間方向(y)への並進変位のために構成されており、
前記3つの直線軸(X1、Y1、Z1)のうちの第3直線軸(Z1)は、前記測定アーム(10)の第3空間方向(z)への並進変位のために構成されており、
前記第1空間方向(x)、前記第2空間方向(y)、および前記第3空間方向(z)はそれぞれ互いに直交する方向に向いており、
前記第1空間方向(x)、前記第2空間方向(y)、および前記第3空間方向(z)は、前記補助的質量ダンパ(18)の活動の互いに直交する3つの空間方向(X、Y、Z)と同一直線上に配向されている、
請求項1又は2に記載の座標測定機。
【請求項8】
前記補助的質量ダンパ(18)はハウジング(40)を備えており、
少なくとも1つの質量要素(42)は、スプリング(44)を用いて前記ハウジング(40)に固定されて、前記ハウジング(40)内に配置されており、
前記補助的質量ダンパ(18)はオイル(46)で充填されている、
請求項1又は2に記載の座標測定機。
【請求項9】
前記スプリング(44)は前記質量要素(42)の互いに反対を向く側面に配置されており、
特に、空間方向(X、Y、Z)ごとに2つ以上のスプリング(44)が設けられており、前記スプリング(44)は特に並列回路に配置されている、
請求項7に記載の座標測定機。
【請求項10】
前記補助的質量ダンパ(18)は、第1減衰方向において第1剛性および/または第1減衰を有しており、
前記補助的質量ダンパ(18)は、第2減衰方向において第2剛性および/または第2減衰を有しており、
前記第1剛性は前記第2剛性とは異なっており、および/または前記第1減衰は前記第2減衰とは異なっている、
請求項7に記載の座標測定機。
【請求項11】
前記第1剛性は、減衰されていない測定アーム(310)で決定される第1固有モードを考慮して画定されており、
前記第2剛性は、減衰されていない測定アーム(310)で決定される第2固有モードを考慮して画定されている、
請求項10に記載の座標測定機。
【外国語明細書】