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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160997
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】歯科用振動装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074605
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】63/464,141
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/467,855
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/647,075
(32)【優先日】2024-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516089577
【氏名又は名称】洪 澄祥
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】洪 澄祥
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052MM10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科用振動装置を提供する。
【解決手段】歯科用振動装置Vはコントローラ、マウスピース200、および複数の伝導素子を含む。伝導素子は中央伝導素子120、左伝導素子130、および右伝導素子140を含む。コントローラは筺体110内に収容される。伝導素子は、各々、振動モーターに接続される。伝導素子は、各々、筺体から延伸し、かつマウスピースに挿入される。マウスピースは、互いに離間している前歯部220、左後方歯部230、および右後方歯部240から構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体内に収容されるコントローラと、
マウスピースと、
中央伝導素子、左伝導素子、および右伝導素子を含む複数の伝導素子と、
を含み、
前記伝導素子は、各々、振動モーターに接続され、前記筺体から延伸し、かつ前記マウスピース中に挿入され、
前記マウスピースは、互いに離間している前歯部、左後方歯部、および右後方歯部から構成される、歯科用振動装置。
【請求項2】
前記マウスピースは口唇・頬縁部をさらに含み、前記前歯部、前記左後方歯部および前記右後方歯部は前記口唇・頬縁部に接続している、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項3】
前記マウスピースは、前記口唇・頬縁部から前方向に延伸するシールド部位をさらに含み、前記シールド部位は唇を覆って唾液が漏れ出ないようにすることができる、請求項2に記載の歯科用振動装置。
【請求項4】
全体的な側方観における前記前歯部の厚さ、前記左後方歯部の厚さ、および前記右後方歯部の厚さは、前端から後端に向けて次第に減少する、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項5】
前記マウスピースの前記前歯部は上歯側の方向への追加の厚みを有し、前記マウスピースが患者の口内に設置されると、前記患者の上前歯が前記前歯部を下方に押し、前記マウスピースを前端において下方に傾斜させる、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項6】
前記左後方歯部および前記右後方歯部の各々は下歯側の方向への追加の厚みを有し、前記マウスピースが患者の口内に設置されると、前記患者の下の後方歯が前記左後方歯部および前記右後方歯部を上方に押し、前記マウスピースを後端において上方に傾斜させる、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項7】
前記マウスピースの前記前歯部は主に上下方向に振動するよう制限されており、前記マウスピースの前記左後方歯部および前記右後方歯部は主に左右方向に振動するよう制限されている、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項8】
前記左後方歯部の振動方向は前記右後方歯部の振動方向とは異なる、請求項7に記載の歯科用振動装置。
【請求項9】
患者の前側から観察したときに、前記左後方歯部の前記振動方向と前記右後方歯部の前記振動方向とは逆V字型を形成する、請求項8に記載の歯科用振動装置。
【請求項10】
前記中央伝導素子は、前記マウスピースの前記前歯部に挿入され主に上下方向に振動するよう制限され、前記左伝導素子は前記マウスピースの前記左後方歯部に挿入され主に左右方向に振動するよう制限され、前記右伝導素子は前記マウスピースの前記右後方歯部に挿入され主に前記左右方向に振動するよう制限される、請求項1に記載の歯科用振動装置
【請求項11】
前記歯科用振動装置は、前記筺体および前記マウスピースを包み込む可撓性フィルムをさらに含む、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項12】
前記可撓性フィルムは前記左後方歯部と前記右後方歯部との間で伸びて接触部を形成し、患者の舌が前記接触部の表面に接触すると、前記舌は前記接触部側に拘束される、請求項11に記載の歯科用振動装置。
【請求項13】
前記可撓性フィルムは、前記可撓性フィルムを使用後に前記歯科用振動装置から引き抜いて廃棄できるようにする開口を有する、請求項11に記載の歯科用振動装置。
【請求項14】
前記歯科用振動装置は可撓性フィルムをさらに含み、前記可撓性フィルムは前記マウスピースと接続され、かつ前記左後方歯部と前記右後方歯部との間に位置する、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項15】
前記歯科用振動装置は、前記筺体を患者に固定させるように構成され、かつバックル付きリング部を有する締結部材をさらに含む、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項16】
前記リング部は、前記筺体の底部の下を通り、さらに前記患者の耳の上方を通るように構成され、かつ前記リング部は前記患者の頭部の周りを囲む、請求項15に記載の歯科用振動装置。
【請求項17】
前記締付部材は弾性を有し、かつ前記リング部は前記バックルによって形成され解除される、請求項15に記載の歯科用振動装置。
【請求項18】
前記歯科用振動装置は、前記筺体および前記マウスピースを包み込む可撓性フィルムをさらに含み、かつ前記締付部材は前記可撓性フィルムの周りを囲んで前記可撓性フィルムを前記筺体に固定させる、請求項15に記載の歯科用振動装置。
【請求項19】
前記マウスピースは、前記左後方歯部および前記右後方歯部の上面から突出している複数の防滑片をさらに含む、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項20】
前記前歯部の上面は、前記左後方歯部および前記右後方歯部の下面と実質的に平行である、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2023年5月4日に出願された米国仮特許出願第63/464,141号、および2023年5月19日に出願された米国仮特許出願第63/467,855号の優先権を主張し、参照することによりそれらの全体が本明細書に取り込まれる。
【0002】
本出願は概して歯科用振動装置に関し、より詳細には、模擬の人の摂食動作に基づいて歯および歯周組織に咬合荷重を生じさせるのに用いられる歯科用振動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、筺体内に収容されたコントローラと、コントローラ筺体からそれぞれ延伸すると共に振動モーターに接続された3つの離間した振動伝導素子と、3つの振動伝導素子が挿入されるマウスピースと、からなる歯科用振動装置を開示している。マウスピースは患者の上歯列弓と下歯列弓との間のスペースにフィットするようになっており、かつ歯列弓の形に合っている。しかし、現在の歯科用振動装置には、改善されなければならないいくつかの課題が依然としてある。
【0004】
例えば、1つ目の問題は、振動が脳の方に伝達されてしまい、患者に不快感を与え得る、ということである。振動エネルギーが荷重伝導面に沿って放出されると、一部の振動は上歯接触面に垂直に伝達され、それは脳の前額領域に向かう。
【0005】
2つ目の問題は、3つの離間した荷重伝導素子をその内部に挿入させた単一のU字型マウスピースは、素子間に振動干渉を生じさせてしまう、ということである。つまり、1つの振動伝導素子からの振動が、マウスピースの他の部分において、あまり減衰されずに感じられてしまう。
【0006】
3つ目の課題は、不正咬合の歯科矯正治療期間中に用いられるとき、歯科用振動装置を、変化する咬合の状況に合わせる必要がある、ということである。例えば、治療の早期の段階において、患者の弛緩状態の口内に設置されたマウスピースに後方歯が接触できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第2022/0378350A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、上述した問題をどのように解決するかが重要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、コントローラと、マウスピースと、中央伝導素子、左伝導素子、および右伝導素子を含む複数の伝導素子と、を含む歯科用振動装置を提供する。コントローラは筺体内に収容される。各伝導素子は振動モーターに接続される。各伝導素子は筺体から延伸し、マウスピース中に挿入される。マウスピースは、互いに離間している前歯部、左後方歯部および右後方歯部から構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、マウスピースは口唇・頬縁部をさらに含み、前歯部、左後方歯部および右後方歯部は口唇・頬縁部に接続している。
【0011】
いくつかの実施形態において、マウスピースは、口唇・頬縁部から前方向に延伸するシールド部位をさらに含み、シールド部位は唇を覆って唾液が漏れるのを防ぐ。
【0012】
いくつかの実施形態において、全体的な側方観における前歯部の厚さ、左後方歯部の厚さ、および右後方歯部の厚さは、前端から後端に向けて次第に減少する。
【0013】
いくつかの実施形態において、マウスピースの前歯部は上歯側の方向への追加の厚みを有し、マウスピースが患者の口内に設置されると、患者の上前歯が前歯部を下方に押し、マウスピースを前端において下方に傾斜させる。
【0014】
いくつかの実施形態において、左後方歯部および右後方歯部の各々は下歯側の方向への追加の厚みを有し、マウスピースが患者の口内に設置されると、患者の下の後方歯が左後方歯部および右後方歯部を上方に押し、マウスピースを後端において上方に傾斜させる。
【0015】
いくつかの実施形態において、マウスピースの前歯部は上下方向に振動するよう制限されており、マウスピースの左後方歯部および右後方歯部は左右方向に振動するよう制限されている。
【0016】
いくつかの実施形態において、左後方歯部の振動方向は右後方歯部の振動方向とは異なる。
【0017】
いくつかの実施形態において、患者の前側から観察したときに、左後方歯部の振動方向と右後方歯部の振動方向とは逆V字型を形成する。
【0018】
いくつかの実施形態において、中央伝導素子はマウスピースの前歯部に挿入され主に上下方向に振動するよう制限され、左伝導素子はマウスピースの左歯部に挿入され主に左右方向に振動するよう制限され、右伝導素子はマウスピースの右歯部に挿入され主に左右方向に振動するよう制限される。
【0019】
いくつかの実施形態において、歯科用振動装置は、筺体およびマウスピースを包み込む可撓性フィルムをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、可撓性フィルムは左後方歯部と右後方歯部との間で伸びて接触部を形成し、患者の舌が接触部の表面に接触すると、舌は接触部側に拘束される。
【0021】
いくつかの実施形態において、可撓性フィルムは、可撓性フィルムを使用後に歯科用振動装置から引き抜いて廃棄できるようにする開口を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、歯科用振動装置は可撓性フィルムをさらに含み、可撓性フィルムはマウスピースと接続し、かつ左後方歯部と右後方歯部との間に位置する。
【0023】
いくつかの実施形態において、歯科用振動装置は、筺体を患者に固定させるように構成され、かつバックル付きリング部を有する締結部材をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、リング部は筺体の底部の下を通り、さらに患者の耳の上方を通るように構成され、かつリング部は患者の頭部の周りを囲む。
【0025】
いくつかの実施形態において、締付部材は弾性を有し、かつリング部はバックルによって形成され解除される。
【0026】
いくつかの実施形態において、歯科用振動装置は、筺体およびマウスピースを包み込む可撓性フィルムをさらに含み、かつ締付部材は可撓性フィルムの周りを囲んで可撓性フィルムを筺体に固定させる。
【0027】
いくつかの実施形態において、マウスピースは、左後方歯部および右後方歯部の上面から突出している複数の防滑片をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、前歯部の上面は、左後方歯部および右後方歯部の下面に実質的に平行である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付の図面を参照にして以下の詳細な説明および例を読むことにより、本発明をより充分に理解することができる。
図1】本発明の実施形態による歯科用振動装置の分解図である。
図2】本発明の実施形態による歯科用振動装置の概略図である。
図3】本発明の実施形態による振動器の断面図である。
図4】本発明の実施形態によるマウスピースの断面図である。
図5図1~4の歯科用振動装置を装着している患者を説明する概略図である。
図6】本発明の実施形態による前歯部、左後方歯部、および右後方歯部の振動方向の概略図である。
図7】本発明の別の実施形態による前歯部、左後方歯部、および右後方歯部の振動方向の概略図である。
図8】本発明の別の実施形態による歯科用振動装置の概略図である。
図9図8の歯科用振動装置を装着している患者を説明する概略図である。
図10】本発明の別の実施形態による歯科用振動装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
歯科用振動装置の実施形態の構成および使用を以下に詳細に記載する。しかしながら、これら実施形態は、様々な特定の文脈で具体化され得る多数の適用可能な発明概念を提供するということが理解されなければならない。記載される特定の実施形態は、それら実施形態を構成および使用する特定の方式を説明するに過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0031】
別段の定義がない限り、ここで用いられる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。別段の定義がない限り、各用語は通常使用される辞書に定義されているもので、本開示の関連技術および背景または文脈と一致する意味を有すると解されるべきであって、理想化された形または過度に厳格な形で解されるべきではない、という点が理解されなければならない。
【0032】
図1および図2を参照すると、本発明の実施形態において、歯科用振動装置Vは振動器100およびマウスピース200を含んでいる。患者が歯科用振動装置Vを使用する際、振動器100はマウスピース200に挿入され、かつマウスピース200は患者の口内に設置され得る。振動器100の振動時において、長い年月にわたりついた、異常なパターンを伴う患者の咀嚼習慣が治療または調整され得るようになる。
【0033】
図1から図3に示されるように、振動器100は、筺体110、中央伝導素子120、左伝導素子130、右伝導素子140、複数の振動モーター150、およびコントローラ160を主に含む。中央伝導素子120、左伝導素子130、および右伝導素子140は筺体110に接続されていると共に、筺体110から後方向N1に延伸する。中央伝導素子120、左伝導素子130、および右伝導素子140は患者の前歯、左後方歯、および右後方歯にそれぞれ対応している。よって、中央伝導素子120は左伝導素子130と右伝導素子140との間に配置され、かつ中央伝導素子120の延伸する長さは左伝導素子130および右伝導素子140の長さよりも短い。この実施形態では、左伝導素子130の延伸する長さは右伝導素子140の延伸する長さと実質的に同じであるが、これに限定はされない。
【0034】
各伝導素子は振動モーター150のうちの1つにそれぞれ接続し、これにより振動モーター150からの振動エネルギーが中央伝導素子120、左伝導素子130および右伝導素子140に伝達され得るようになっている。この実施形態では、振動モーター150は中央伝導素子120、左伝導素子130および右伝導素子140の口腔外部位に位置する。
【0035】
コントローラ160は筺体110内に収容されると共に、振動モーター150に電気的に接続されている。コントローラ160は、振動モーター150に信号を伝送して振動モーター150を作動または停止させるように構成されている。換言すると、各振動モーター150はコントローラ150により個別に作動され得る。そして振動モーター150からの振動エネルギーは、伝導素子に沿って中央伝導素子120、左伝導素子130および右伝導素子140の口腔内部位に伝わる。
【0036】
図1図2および図4に示されるように、マウスピース200は、口唇・頬縁部210、前歯部220、左後方歯部230、右後方歯部240、ならびにシールド部位250を主に含む。右後方歯部240、前歯部220、および左後方歯部230は口唇・頬縁部210に接続されていると共に、後方向N1に延伸しており、シールド部位250は口唇・頬縁部210に接続されていると共に、前方向N2に延伸している。マウスピース200は、口唇・頬縁部210、前歯部220、左後方歯部230、右後方歯部240、ならびにシールド部位250全体にわたって延伸する内部空間Sを有する。内部空間Sを外部環境に露出させる開口251が、シールド部位250に形成される。よって、振動器100の中央伝導素子120、左伝導素子130、および右伝導素子140は開口251を介して内部空間Sに挿入され得るようになっている。具体的には、中央伝導素子120、左伝導素子130、および右伝導素子140は、マウスピース200の前歯部220、左後方歯部230、および右後方歯部240にそれぞれ挿入されるように構成されている。この実施形態では、マウスピース200は、口腔内歯科用途に適した弾性材料、例えばシリコーンから作られたものであるが、これに限定はされない。
【0037】
この実施形態では、前歯部220、左後方歯部230、および右後方歯部240が互いに離間している(言い換えると、前歯部220と左後方歯部230との間には間隙G1があり、前歯部220と右後方歯部240との間には間隙G2がある)という点に留意する必要がある。間隙が介在するこの構成は振動による干渉の量を減らすことができ、かつ振動エネルギーがより効率的に前歯部220、左後方歯部230、および右後方歯部240から前歯、左後方歯、および右後方歯にそれぞれ伝わり得る。
【0038】
全体的な側方観における前歯部220の厚さ、左後方歯部230の厚さ、および,右後方歯部240の厚さは、前端202から後端202に向けて次第に減少する(例えば、図4中の点線で示されるように)。したがって、マウスピース200が患者の口内に設置されると、前歯部220、左後方歯部230、および右後方歯部240は支柱として作用し、顎を開けた状態に保たせる。このことにより、患者は、マウスピース200を口内に設置し顎を開けた状態に保ちながら顎筋を休ませることができる。
【0039】
この実施形態では、前歯部220は上歯側の方向への追加の厚みD1をさらに有し、左後方歯部230および右後方歯部240は下歯側の方向への追加の厚みD2を有する。言い換えると、前歯部220は、図4において漸減する上側の点線から上方に突出する部分を有しており、かつ左後方歯部230および右後方歯部240の各々は、図4において漸減する下側の点線から下方に突出する部分を有している。
【0040】
図5に示されるように、上述した追加の厚みD1のために、マウスピース200が患者の口内に設置されると、患者の上の前歯が前歯部220を下方に押し、マウスピース200を前端202において下方に傾斜させる。同様に、上述した追加の厚みD2のために、マウスピース200が患者の口内に設置されると、患者の下の後方歯が左後方歯部230および右後方歯部240を上方に押し、マウスピース200を後端201において上方に傾斜させる。よって、振動エネルギーが脳へではなく、鼻尖部へと向かうこととなり、患者の不快感を防ぐことができる。また、治療の早期の段階において、患者の弛緩状態の口内に設置されたマウスピースに後方歯が接触できないという状況を回避することもできる。歯科用振動装置Vは、患者の口内に設置されたときにマウスピース200を前端202において下方に傾斜させることによって、歯科矯正治療期間中に変化する咬合に対応することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、マウスピース200は前歯部220にのみ追加の厚みD1を有し、左後方歯部230および右後方歯部240は追加の厚みを含まない。いくつかの実施形態において、マウスピース200は左後方歯部230および右後方歯部240にのみ追加の厚みD2を有し、前歯部220は追加の厚みを含まない。
【0042】
図4に示されるように、患者の咬合が行い易くなるよう、前歯部220の上面221は、左後方歯部230の下面231および右後方歯部240の下面241に実質的に平行であってよい。
【0043】
また、マウスピース200は、左後方歯部230および右後方歯部240に接続され、それらの上面232および242から突出する複数の防滑片260をさらに含んでいてよい。防滑片260もまた、患者の咬合を行い易くさせることができる。
【0044】
シールド部位250は口唇・頬縁部210に接続されており、かつ前方向N2に延伸している。前方向N2は後方向N1とは反対である。マウスピース200が患者の口内に設置されると、シールド部位250が顔の唇周囲を覆い、唾液が漏れるのを防ぐことができる。
【0045】
図6を参照すると、この実施形態では、マウスピース200の前歯部220は主に上下方向V1に振動するよう制限されており、マウスピース200の左後方歯部230および右後方歯部240は主に左右方向V2に振動するよう制限されている。これにより、異常なパターンを伴う患者の咀嚼習慣が有効に治療または調整され得ることとなる。
【0046】
例えば、図3に示されるように、振動器100は複数のヒンジ170をさらに含んでいてよい。ヒンジ170は、左伝導素子130および右伝導素子140の上下方向V1における移動の自由度を小さくし、かつ左伝導素子130および右伝導素子140を左右方向V2においてより多く移動させることができる。中央伝導素子120に対応する振動モーター150は、中央伝導素子120を上下方向V1においてより多く移動させられるよう、筺体110に結合されていてよい。
【0047】
図7に示されるように、本発明の別の実施形態では、マウスピース200の前歯部220は主に上下方向V1に振動するよう制限されており、マウスピース200の左後方歯部230および右後方歯部240は主に左右方向V2に振動するよう制限されており、かつ左後方歯部230の振動方向は右後方歯部240の振動方向とは異なる。患者の前側から観察したときに、左後方歯部230の振動方向と右後方歯部240の振動方向とは逆V字型を形成し得る。この振動の構成は、一般的な人の咀嚼の動きに近いため、異常なパターンを伴う患者の咀嚼習慣が有効に治療または調整され得ることとなる。
【0048】
いくつかの実施形態において、中央伝導素子120における振動モーター150は主に上下方向V1にだけ振動することができ、左伝導素子130および右伝導素子140における振動モーター150は主に左右方向V2にだけ振動することができる。
【0049】
図8を参照すると、本発明の別の実施形態では、歯科用振動装置Vは振動器100、マウスピース200、可撓性フィルム300、および締付部材400を含む。振動器100およびマウスピース200の構造は、図1図7の実施形態におけるものと同じなので、簡略にするためそれらの特徴については繰り返さない。
【0050】
可撓性フィルム300は、互いに連結されている振動器100およびマウスピース200を包み込み、マウスピース200の左後方歯部230と右後方歯部240との間の可撓性フィルム300の部分は、接触部310として画定され得る。締付部材400は筺体110に固定されると共に、バックル420付きリング部410を有している。
【0051】
図9に示されるように、改善された歯科用振動装置Vの使用中に、マウスピース200は患者の口内に設置され、締付部材400のリング部410は筺体110の底部側の下を通って患者の頭部の周りを囲む。リング部410の少なくとも一部は患者の耳の上方(つまり、患者の耳と頭頂部との間)に配される。よって、マウスピース200は前端202において傾斜し得ることになり、脳へ向かう振動エネルギーが減少され得る。
【0052】
締付部材400は弾性材料から作製されたものであってよく、リング部410はバックル420によって形成され解除されてよい。よって、締付部材400は様々な寸法の患者の頭部に適応することができ、かつ締付部材400の組み付けが容易となり得る。
【0053】
引き続き図9において、歯科用振動装置Vの使用中に、患者の舌Tは、接触部310において可撓性フィルム300の下面311または上面312に接触する。患者の舌Tの位置は拘束されるため、鼻咽頭(nasopharynx)から中咽頭(oropharynx)を通り咽喉頭(laryngopharynx)に至るまでの気道(respiratorytract)が口蓋垂(palatine uvula)によって塞がれないため、いびきの問題が回避され得る。
【0054】
可撓性フィルム300は例えばポリエチレン(PE)から作製されたものであってよい。この実施形態では、可撓性フィルム300は開口340を含んでいてよく、可撓性フィルム300および締付部材400は使い捨てであってよい。患者が歯科用振動装置Vを使用した後、締付部材400は取り外すことができ、振動器100およびマウスピース200は開口340から抜き取ることができる。そして、可撓性フィルム300は処分(廃棄)することができる。振動器100およびマウスピース200は患者の口に直接接触しないため、洗浄プロセスを省くことができる。
【0055】
図10に示されるように、本発明の別の実施形態では、歯科用振動装置Vは振動器100、マウスピース200、可撓性フィルム300、および締付部材400を含む。振動器100、マウスピース200、および締付部材400の構造は図8および図9の実施形態におけるものと同じなので、簡略にするためそれらの特徴については繰り返さない。この実施形態では、可撓性フィルム300はマウスピース200に直接固定され、かつマウスピース200の左後方歯部230と右後方歯部240との間に配置されており、患者の歯がマウスピース200に直接接触して振動を受けることができるようになっている。
【0056】
まとめると、本発明の実施形態は、コントローラと、マウスピースと、中央伝導素子、左伝導素子および右伝導素子を有する複数の伝導素子と、を含む歯科用振動装置を提供する。コントローラは筺体内に収容されている。伝導素子は、各々、振動モーターに接続されている。伝導素子は、各々、筺体から延伸し、マウスピース中に挿入される。マウスピースは、互いに離間している前歯部、左後方歯部、および右後方歯部から構成される。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態およびそれらの利点を詳細に記載したが、添付の各請求項の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書に各種の交換、置換および変更を加えてもよいということが、理解されなければならない。例えば、本明細書に記載された特徴、機能、プロセス、および材料の多くは、本開示の範囲内にとどまりながらも変更可能であるということを、当業者は容易に理解できるであろう。また、本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップから成る特定の実施形態に限定されるよう意図されていない。当業者は本開示の公開から容易に理解できるので、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす、または実質的に同じ結果を達成する既存のもしくは後に開発されるであろうプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを本開示に従って使用し得る。よって、添付の各請求項は、かかるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップがそれらの範囲内に含まれるように意図されている。さらに、添付の各請求項の範囲には、かかる変更および類似の構成が全て包含されるよう、最も広い解釈が与えられなければならない。
【0058】
例を用いて好ましい実施形態の観点から本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されないということが理解されなければならない。むしろ、それは(当業者には明らかであろうが)各種の変更および類似の構成がカバーされるよう意図されている。よって、添付の各請求項の範囲には、かかる変更および類似の構成が全て包含されるよう、最も広い解釈が与えられなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
いくつかの実施形態において、中央伝導素子はマウスピースの前歯部に挿入され主に上下方向に振動するよう制限され、左伝導素子はマウスピースの左後方歯部に挿入され主に左右方向に振動するよう制限され、右伝導素子はマウスピースの右後方歯部に挿入され主に左右方向に振動するよう制限される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体内に収容されるコントローラと、
マウスピースと、
中央伝導素子、左伝導素子、および右伝導素子を含む複数の伝導素子と、
を含み、
前記伝導素子は、各々、振動モーターに接続され、前記筺体から延伸し、かつ前記マウスピース中に挿入され、
前記マウスピースは、互いに離間している前歯部、左後方歯部、および右後方歯部から構成される、歯科用振動装置。
【請求項2】
前記マウスピースは口唇・頬縁部と、前記口唇・頬縁部から前方向に延伸するシールド部位と、をさらに含み、前記前歯部、前記左後方歯部および前記右後方歯部は前記口唇・頬縁部に接続していて、前記シールド部位は唇を覆って唾液が漏れ出ないようにすることができる、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項3】
全体的な側方観における前記前歯部の厚さ、前記左後方歯部の厚さ、および前記右後方歯部の厚さは、前端から後端に向けて次第に減少する、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項4】
前記マウスピースの前記前歯部は上歯側の方向への追加の厚みを有し、前記マウスピースが患者の口内に設置されると、前記患者の上前歯が前記前歯部を下方に押し、前記マウスピースを前端において下方に傾斜させる、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項5】
前記左後方歯部および前記右後方歯部の各々は下歯側の方向への追加の厚みを有し、前記マウスピースが患者の口内に設置されると、前記患者の下の後方歯が前記左後方歯部および前記右後方歯部を上方に押し、前記マウスピースを後端において上方に傾斜させる、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項6】
前記マウスピースの前記前歯部は主に上下方向に振動するよう制限されており、前記マウスピースの前記左後方歯部および前記右後方歯部は主に左右方向に振動するよう制限されている、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項7】
前記左後方歯部の振動方向は前記右後方歯部の振動方向とは異なり、患者の前側から観察したときに、前記左後方歯部の前記振動方向と前記右後方歯部の前記振動方向とは逆V字型を形成する、請求項6に記載の歯科用振動装置。
【請求項8】
前記中央伝導素子は、前記マウスピースの前記前歯部に挿入され主に上下方向に振動するよう制限され、前記左伝導素子は前記マウスピースの前記左後方歯部に挿入され主に左右方向に振動するよう制限され、前記右伝導素子は前記マウスピースの前記右後方歯部に挿入され主に前記左右方向に振動するよう制限される、請求項1に記載の歯科用振動装置
【請求項9】
前記歯科用振動装置は、前記筺体および前記マウスピースを包み込む可撓性フィルムをさらに含む、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項10】
前記可撓性フィルムは前記左後方歯部と前記右後方歯部との間で伸びて接触部を形成し、患者の舌が前記接触部の表面に接触すると、前記舌は前記接触部側に拘束される、請求項9に記載の歯科用振動装置。
【請求項11】
前記歯科用振動装置は可撓性フィルムをさらに含み、前記可撓性フィルムは前記マウスピースと接続され、かつ前記左後方歯部と前記右後方歯部との間に位置する、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項12】
前記歯科用振動装置は、前記筺体を患者に固定させるように構成され、かつバックル付きリング部を有する締結部材をさらに含む、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【請求項13】
前記リング部は、前記筺体の底部の下を通り、さらに前記患者の耳の上方を通るように構成されて、かつ前記リング部は前記患者の頭部の周りを囲み、前記締付部材は弾性を有し、かつ前記リング部は前記バックルによって形成され解除される、請求項12に記載の歯科用振動装置。
【請求項14】
前記歯科用振動装置は、前記筺体および前記マウスピースを包み込む可撓性フィルムをさらに含み、かつ前記締付部材は前記可撓性フィルムの周りを囲んで前記可撓性フィルムを前記筺体に固定させる、請求項12に記載の歯科用振動装置。
【請求項15】
前記前歯部の上面は、前記左後方歯部および前記右後方歯部の下面と実質的に平行である、請求項1に記載の歯科用振動装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【外国語明細書】