(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160999
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】耐食性鋼(CRES)のブラダ
(51)【国際特許分類】
B29C 51/28 20060101AFI20241108BHJP
B29C 51/18 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B29C51/28
B29C51/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074640
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】23171421.3
(32)【優先日】2023-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524168817
【氏名又は名称】ジーケイエヌ フォッカー エアロスペース ベスローテン ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン インゲン, ヤープ ヴィレム
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AC03
4F208AJ02
4F208AJ08
4F208AK01
4F208AR02
4F208AR06
4F208AR11
4F208MA05
4F208MA10
4F208MB01
4F208MB29
4F208MC03
4F208MC05
4F208MH06
4F208MH10
4F208MK08
4F208MK15
(57)【要約】
【課題】オートクレーブ及び真空バッグ構成の必要性を排除する。
【解決手段】本発明は、成形プロセス中に金型の下部に付勢されて複合部品を形成する金属製のブラダを含む、脱オートクレーブ式の熱可塑性材料の成形装置及び成形方法に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部成形金型と該上部成形金型に対向する下部成形金型とを備え、前記上部成形金型と前記下部成形金型とは、部品を形成するために、両金型の間に空間を画定する、脱オートクレーブ式の熱可塑性材料の成形装置であって、
(i) 使用時に上下の成形金型の間に配置され、成形される部品の表面に接触する取り外し可能なカウルプレートと、
(ii) 使用時に取り外し可能なカウルプレートと上部金型との間に配置される膨張可能なブラダとを備え、
膨張可能なブラダは、カウルプレートに亘って延在し、対向する一対の可撓性表面と、周囲に延びるシールとを備える、装置。
【請求項2】
前記膨張可能なブラダは、2つの対向する層の形態であり、該2つの層の間に膨張チャンバを画定し、前記膨張チャンバと流体又はガスが連通する入口/出口ポートをさらに備えて、流体又はガスが前記膨張チャンバに出入りすることを可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記対向する層が金属層である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記金属層は、ステンレス鋼、鋼、めっき鋼、インバー鋼又はチタンから選択される材料から形成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記膨張可能なブラダは、前記膨張チャンバをシールするために、前記ブラダの前記周囲の周りに延在する溶接部を備える、請求項1乃至4の何れかに記載の装置。
【請求項6】
前記溶接部は、前記ブラダ及び入口/出口ポートの周囲に延在するレーザにより形成された溶接部である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記入口/出口ポートが、前記一対の可撓性表面から横方向に延在する圧力結合部の形態であり、前記圧力結合部が、前記一対の可撓性表面の平面に対して垂直に配置された流体またはガス圧力接続部を備え、前記溶接部が、前記流体またはガス圧力接続部を取り囲むように前記圧力結合部の周囲に延在する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記可撓性表面が、約0.3mmから約0.5mmの間の厚さである、請求項1乃至7の何れかに記載の装置。
【請求項9】
前記一対の可撓性表面が、異なる厚さである、請求項1乃至8の何れかに記載の装置。
【請求項10】
前記下部成形金型が、要求される成形部品の幾何学的形状の少なくとも一部に対応する幾何学的形状及び/又は凹部を有する、請求項1乃至9の何れかに記載の装置。
【請求項11】
カウルプレートは、部品の要求される幾何学的形状に対応する第1の面と、使用時に膨張可能なブラダに当接するように配置された対向する押圧面とを備える、請求項1乃至10の何れかに記載の装置。
【請求項12】
前記下部成形金型または上部成形金型は、共に成形される複数のサブパーツを受容するように配置される、請求項1乃至11の何れかに記載の装置。
【請求項13】
前記上部成形金型及び/又は下部成形金型が、冷却及び/又は加熱流体、電気または誘導要素を受け入れるための1つ又は複数の内部導管を備えて、前記上部成形金型及び/又は下部成形金型の温度の制御を可能にする、請求項1乃至12の何れかに記載の装置。
【請求項14】
前記上部成形金型及び/又は下部成形金型は、前記金型の熱質量を下げるために、前記金型の部品と対向しない側に1つまたは複数の凹部を備える、請求項1乃至13の何れかに記載の装置。
【請求項15】
前記金型が、前記加熱要素及び前記プレス機内の冷却チャネルの真上の位置で加熱/冷却プレスプラテンに接触する、請求項1乃至14の何れかに記載の装置。
【請求項16】
成形装置を用いて熱可塑性材料の部品を成形する脱オートクレーブ方法であって、成形装置は、上部成形金型と該上部成形金型に対向する下部成形金型とを備え、上部成形金型と下部成形金型とが、部品を形成するための空間を両金型の間に画定し、
(i) 使用時に上下の成形金型の間に配置され、成形される部品の表面に接触する取り外し可能なカウルプレートと、
(ii) 使用時に取り外し可能なカウルプレートと上部成形金型との間に配置され、カウルプレートに亘って延在し、一対の対向する可撓性表面と、周囲に延在するシールとを備える、膨張可能なブラダを備え、方法は、
(A) 積層体を形成するために下部成形金型上に複数の熱可塑性材料を含有した層を置く工程と、
(B) 積層体の上面上にカウルプレートを位置決めする工程と、
(C)膨張可能なブラダをカウルプレートの上面上に位置決めする工程と、
(D)上部成形金型を膨張可能なブラダの上面上に位置決めする工程と、
(E)上部成形金型及び/又は下部成形金型を選択的に加熱及び冷却し、同時に、所定の温度及び圧力手順に従ってカウルプレートを積層体に対して付勢するように膨張可能なブラダに圧力を選択的に印加する工程を含む、方法。
【請求項17】
前記所定の温度及び圧力手順は、
(A) 金型温度を所定の温度Tmaxまで連続的に上昇させる工程と、
(B) 最高温度Tmaxで金型温度を所定の時間(TmaxP)維持する工程と、
(C) 所定の時間TmaxPの終わりに加熱を終了する工程を備え、
更に、
(D) 成形時間T0からT1の間に、膨張可能なブラダに第1の圧力P1を印加し、成形時間T1からT2の間に、膨張可能なブラダに第2の圧力P2を印加し、成形時間T2からT3の間に、第3の圧力P3を印加する工程を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の圧力P1は、前記熱可塑性材料の温度が前記熱可塑性材料の温度Tgを超えるときに印加される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記膨張可能なブラダへの第3の圧力P3は、成形時間T2後に印加される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
多数の熱可塑性材料の部品を共に成形する方法であって、方法は、上部成形金型及び該上部成形金型に対向する下部成形金型を含む装置を使用し、上部成形金型及び下部成形金型は、多数の熱可塑性材料の部品を形成するため空間を両金型の間に画定し、装置は更に、
(i) 使用時に上下の成形金型の間に配置され、成形されるべき部品の表面に接触する取り外し可能なカウルプレートと、
(ii) 使用時に取り外し可能なカウルプレートと上部金型との間に配置されて、カウルプレートに亘って延在し、一対の対向する可撓性表面と、周囲に延在するシールとを備える、膨張可能なブラダとを備え、
共に成形する方法は、
(A) 第1の成形金型上及び/又は第1の成形金型内の凹部内に第1のサブコンポーネントを画定する熱可塑性材料の層を敷設または位置決めする工程と、
(B) 複数の熱可塑性樹脂を含有した層を、第1のサブコンポーネントを形成する層に対して、かつ下部金型上に配置して、未成形の多数の熱可塑性材料の部品の積層体を形成する工程と、
(C)前記積層体の上面上に前記カウルプレートを位置決めする工程と、
(D)前記膨張可能なブラダを前記カウルプレートの上面上に位置決めする工程と、
(E)前記上部成形金型を前記膨張可能なブラダの上面上に位置決めする工程と、
(F)前記上部成形金型及び/又は前記下部成形金型を選択的に加熱及び冷却し、同時に、前記膨張可能なブラダに圧力を選択的に加えて、所定の温度及び圧力手順に従って前記積層体に対して前記カウルプレートを付勢する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料を共に成形するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本明細書に記載される装置及び方法は、例えば、空気力学的構造に使用される熱可塑性材料の補強されたスキンを共に成形することを可能にするが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料のスキンと補強材とを共に成形することは、スキンと補強リブとを単一工程で共に接合する工程である。これは、従来、共に接合されるべき構成要素をオートクレーブ中に配置することによって行われ、オートクレーブは、構成要素を加熱し、予備含浸材料中の樹脂を一緒に接合させ、この工程は、部品が配置される真空バッグ装置を使用する。使用中、真空バッグは部品に均等な圧力を発生させ、良好な成形と高品質の完成品を保証する。真空バッグは、印加し、除去し、使用後に廃棄されるものとして廃棄物材料を発生させる労働集約的であるが、航空宇宙において使用されるような高性能な構成要素を形成するために必要とされる既存の製造技術の必須の部分である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者は、オートクレーブ及び真空バッグ装置の必要性を取り除く、構成要素の共成形に対する代替アプローチを確立した。具体的には、本発明者は、加熱されたプレス金型を使用することができる構成を考案した。従来の加熱されたプレス金型は、真空バッグ工程において従来達成されるような均等な圧力分布を許容しない。しかしながら、本発明者は、高品質の製品を維持しながら、オートクレーブ及び真空バッグ構成の必要性を排除する装置及び技術を確立した。
【0004】
さらに、本明細書に記載の装置及び方法は、エネルギー消費及び廃棄物発生を有利に低減する。さらに、本明細書に記載される工程及び装置によれば、工程サイクル時間を大幅に短縮することができ、それによって、それを高速生産に適した工程とすることができる。
【0005】
本発明の態様は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0006】
本明細書に記載される本発明の第1の態様から見ると、上部成形金型及び該上部成形金型に対向する下部成形金型を備え、上部成形金型及び下部成形金型は、部品を形成するために両金型の間に空間を画定する脱オートクレーブ(OOA)式の熱可塑性材料の成形装置が提供され、該成形装置は、
(i) 使用時に上下の成形金型の間に配置され、成形されるべき部品の表面に接触する取り外し可能なカウルプレート(当て板)と、
(ii) 使用時に取り外し可能なカウルプレートと上部成形金型の間に配置される膨張可能なブラダとを備え、
該膨張可能なブラダは、カウルプレートに亘って延在し、一対の対向する可撓性表面と、周囲に延在するシールとを備える。
【0007】
脱オートクレーブ(OOA)という用語は、当業者によって理解される用語であり、オートクレーブを使用せずに熱可塑性材料の部品を成形する工程を指す。熱可塑性材料の部品を成形するためにオートクレーブを使用することは、使用される大型オートクレーブの熱慣性のために、費用と時間がかかる。オートクレーブの装填及び装填解除は、さらに、労働集約的であり、時間がかかる。
【0008】
本明細書に記載の装置及び方法によれば、単純で信頼性のある共成形装置が提供される。この構成は、一体化される予備含浸材料を装填するのがより簡単であり、使用するエネルギが少なく、成形装置の熱慣性が有利に低くなるため、重要なことに、サイクルタイムがより速くなる。
【0009】
CRES(クレス)の頭文字は、耐腐食性鋼を示すものとして当業界で知られている。
【0010】
本明細書に記載の装置及び方法によれば、加熱プレスは、膨張可能なブラダ、クレスのブラダと組み合わせて使用されて、成形プロセス中にバイアス圧力を生成して、オートクレーブで達成されるガス圧力の効果と同じ効果を達成する。有利には、本明細書に記載される膨張可能なブラダは、再利用可能であり、廃棄物を低減し、加熱及び成形化の間に部品に様々な圧力が加えられることを可能にする(以下に記載されるような)高圧一体型シールを備える。
【0011】
具体的には、一対の対向する可撓性表面及び周辺に延在するシールにより、着脱可能なカウルプレートの上面にほぼ静力学的圧力をかけることが可能になる。膨張可能なブラダの可撓性は、ブラダ及びカウルプレートの上面が、非常に厳しい公差で製造される必要がないことを意味し、金型の製造コストを低減し、金型全体と成形される部品に均一な圧力が加えられることを可能にする。
【0012】
有利には、取り外し可能なカウルプレート(成形される部品の上に配置され、成形される部品に圧力及び幾何学的形状を加えるために使用される剛性または半剛性部材)は、所望の部品を形成する層及びサブコンポーネントを下部工具表面上に横たわる(横たわるは、当該技術分野では「置かれた」とも呼ばれる)することを可能にする。膨張可能なブラダは、部品と接触するカウルプレートの側部の幾何学的形状のみが高い精度を必要とすることを意味する。
【0013】
有利には、大きなブラダの場合の溶接、又はブラダの薄いシートにおける偶発的な窪みのようなブラダ製造の凸凹は、製品表面が取り外し可能な半剛性のカウルプレートによって生成されるので、製品内に転送されない。
【0014】
膨張可能なブラダは、有利には、カウルプレートの縁部と重なり、かつ上部及び下部金型の周辺領域の間で終端するように、すなわち、上部金型及び下部金型が、部品が形成される中央領域の周りで接触するように配置される。これは、有利には、カウルプレート全体が、膨張可能なブラダの拡張によって付勢圧力を受けることを確実にする。
さらに、一緒にされる金型の圧縮力によってブラダが固定され、成形プロセス中にブラダとカウルプレートが動くのを防ぐ。
【0015】
有利には、膨張可能なブラダは、内部にガスまたは流体を導入することができる空間または室を画定する2つの対向する層の形態であってもよい。ガスまたは流体を空間に導入すると、2つの表面が離れる。これにより、一方の側では上部金型に、もう一方の側ではカウルプレートに圧力がかかる。2つの金型が一緒に連結されるので、室内の圧力のこの増加は、下部金型に対してカウルプレートを付勢する。
【0016】
膨張可能なブラダは、膨張する室とガスまたは流体が連通する入口/出口ポートを通してガスまたは流体を導入することによって、付勢効果を引き起こすように加圧され得る。次いで、ガスまたは流体は、室に出入りすることができる。ガスまたは流体自体は、高温に耐えることができる任意の適切な媒体であってもよい。有利には、圧縮空気は、漏れることなく素早く接続及び取り外しができるため、ガスボトルのコンプレッサシステムから使用することができる。
【0017】
膨張可能なブラダを形成する層は、任意の適切な材料から形成されてもよい。加熱された金型を必要とする成形化のために、層は、有利には、ステンレス鋼などの金属から形成され得る。鋼は、約0.05mmから約1mmの厚さを有することができ、これにより、2つの層の間の室が加圧されるときに可撓性が可能になる。
【0018】
他の適切な材料としては、鋼、めっき鋼、インバー鋼、またはチタンのような耐久性のある溶接可能な金属シートが挙げられる。
【0019】
膨張可能なチャンバは、2つの可撓性層の周囲(または2つの対向する表面の周囲の領域)をシールすることによって形成されてもよい。金属を使用することができるので、シールは、溶接ビードを使用して有利に形成することができる。溶接部は、有利には、薄い可撓性層を一緒に溶接することを可能にするレーザ溶接技術を用いて形成することができる。さらに、膨張可能なブラダ上で上部金型と下部金型が組み合わされる際に、上部金型と下部金型の表面と干渉しないように、レーザ溶接により、浅い溶接ビードを形成することが可能になる。
【0020】
溶接部は、膨張可能なブラダのまさに周囲に配置されてもよく、または2つの対向する可撓性表面の周辺領域内に配置されてもよい。したがって、ブラダに穴を開け、熱電対センサやカウルプレート吊り下げロッドを通すことができる局所的な非加圧領域を生成することができる。大型のカウルプレートを製品から吊り上げる場合、カウルプレート吊り棒を使用することができる。その場合、カウルプレートはブラダを挟んで吊りロッドで上部金型に接続される。
【0021】
膨張可能なブラダの室に圧力を導入し、室から圧力を除去するために、入口ポート及び出口ポートが設けられる。有利には、入口/出口ポートは、一対の可撓性表面から横方向に延びる圧力結合部の形態であってもよい。事実上、2つの表面の一部は、標準の嵌合面から横方向外側に延びて、入口/出口ポートのための結合領域として作用し得る延長タブを形成する。このような延長タブを設けることによって、2つの可撓性表面が、カウルプレートの接触領域を横切って互いに接近したままとなることが可能となる。すなわち、延長タブがなければ流体の入口/出口ポートを収容するのに必要とされるであろう接触の中断はない。これは、有利には、膨張可能なブラダが、カウルプレートと金型との間に配置され、圧力結合部を介してブラダから離れた加圧システムとガスまたは流体が連通することを可能にする。
【0022】
圧力結合部自体は、一対の可撓性表面の面に垂直に配置されたガスまたは流体圧力接続部を備えてもよい。事実上、圧力接続部は、ブラダを形成する2つの可撓性表面の平面内に延在し、接続部は、有利には、その平面に対して約90度で配置され得る。
これにより、ブラダの高さが最も低くなる一方で、ガスや流体の出入りを可能にするガス又は流体結合部が可能になる。
【0023】
有利には、上述のシール溶接部は、ブラダの周囲に延在する連続した溶接部であってもよく、また、加圧されたガスまたは流体を導入する結合部を取り囲むように圧力接続部であってもよい。
【0024】
ブラダの層は、静水圧に近い圧力を作り出すために、可能な限り薄くすることが有利であり得る。下限値は、周囲に強固な溶接部を作る可能性と、ブラダの取り扱いと耐久性によって決まります。ブラダのシートが薄すぎると、溶接が困難になり、ブラダが再使用するには脆くなりすぎる。一例では、約0.3mmから約0.5mmのシートを使用することができる。より薄いシートを使用することもできる。別の構成では、厚さが組み合わされたシートが使用されてもよい。例えば、カウルプレートに接触する約0.3mmのシートと、上部金型に接触する約0.5mmのシートとを有するブラダを有利に使用することができる。より厚いシートは、ブラダの取り扱いを提供し、より薄いシートは、静水圧を提供する。
【0025】
下部成形金型は、必要とされる成形部品の幾何学的形状の少なくとも一部に対応する幾何学的形状及び/又は凹部を有していてもよい。例えば、縦通材と航空面を共に成形する工程では、下部金型は、縦通材の形状に対応する凹部と、所望の航空面の形状に対応する滑らかな上部表面とから構成される場合がある。
共に成形されるとき、2つのサブコンポーネントは、次いで、一緒に成形されて、2つの成形されたサブパーツから形成される単一の成形された部品を形成することができる。下部金型(及び実際には上部金型)は、所望の最終的な構成要素の形状を形成するために、任意の適切な方法で適合され得ることが認識されるであろう。
【0026】
カウルプレートは、成形されるべき熱可塑性樹脂の層の積層体に圧力及び力を伝達するように作用する。カウルプレートは、部品の必要とされる幾何学的形状に対応する第1の面と、膨張可能なブラダと当接するように使用時に配置される対向する圧縮面(例えば、上面)とを備えてもよい。有利には、このようにしてカウルプレートと膨張可能なブラダとの組み合わせを使用すると、カウルプレートの裏側が幾何学的形状において非常に正確である必要がないので、ニッケルのガルバニック蒸着によって作られたカウルプレートを使用することができる。これは、二重に湾曲した航空面にとって特に魅力的である。成形される積層体に当接する下面のみが、所望の部品形状に対応する特定の形状を必要とする。
【0027】
下部成形金型又は上部成形金型は、様々な金型ブロック、凹部などを使用して共に成形される複数のサブ部品を受け入れるように有利に配置され得て、所望の形状を形成することが、当業者によって認識されるであろう。
【0028】
上部金型及び/又は下部金型は、冷却及び/又は加熱流体、電気または誘導加熱要素を受容するための1つまたは複数の内部導管をさらに備え得て、上部金型及び/又は下部金型の温度の制御を可能にする。したがって、一定の成形時間にわたって、共に成形する工程を温度及び圧力に関して制御することができる。温度及び圧力は、瞬間的なフィードバック及び/又は所定の温度及び圧力プロファイルに従って、成形時間にわたって変化させることができる。
【0029】
金型の温度慣性を最適化するために、各金型は、金型の部分と対向しない側に1つ以上の凹部または空洞を備えることができる。実際には、複数のポケットが各金型の背面に設けられる。これにより、中実金型の場合に起こり得る熱慣性が有利に低減される。
これは、有利には、金型が、所与の加熱及び冷却電力に対して、より迅速に加熱及び冷却することを可能にする。1つの構成では、凹部は、剛性を維持するために、中間壁を備えた凹部のグリッドまたはマトリックスを形成することができる。
【0030】
1つの構成では、ブラダ及びカウルプレートは、上部金型に接続されて、1つのパッケージまたはアセンブリを形成することができる。したがって、上部金型が部品から持ち上げられると、ブラダとカウルプレートの両方が同時に持ち上げられる。そうするために、カウルプレートは、ブラダの穴を通して上部金型にそれを接続するための懸架ロッドなどを含むことができる。
【0031】
別の構成では、膨張可能なブラダは、夫々が独立した圧力結合部に接続された複数の室を備えて形成されてもよい。したがって、異なる時間に、異なる圧力が、カウルプレートに亘る異なる位置に印加され得る。さらに別の構成では、複数の独立した膨張可能なブラダが、互いに近接して設けられてもよい。したがって、温度、圧力、及び部品全体の位置に関する複雑な形状及び複雑な成形プロファイルを実現することができる。
【0032】
別の態様から見ると、成形装置を使用して熱可塑性材料の部品を成形する脱オートクレーブ方法が提供され、成形装置は、上部成形金型及び該上部成形金型に対向する下部成形金型を備え、上部成形金型及び下部成形金型は、部品を形成するために両金型の間に空間を画定し、
(i) 使用時に上下の成形金型の間に配置され、成形される部品の表面に接触する取り外し可能なカウルプレート(当て板)と、
(ii) 使用時に取り外し可能なカウルプレートと上部金型との間に配置され、カウルプレートに亘って延在し、一対の対向する可撓性表面と、周囲に延在するシールとを備える、膨張可能なブラダを備え、方法は、
(A) 積層体を形成するために下部成形金型上に複数の熱可塑性材料を含有した層を置く工程と、
(B)積層体の上面上にカウルプレートを位置決めする工程と、
(C)膨張可能なブラダをカウルプレートの上面上に位置決めする工程と、
(D)上部成形金型を膨張可能なブラダの上面上に位置決めする工程と、
(E)上部成形金型及び/又は下部成形金型を選択的に加熱及び冷却し、同時に、所定の温度及び圧力手順に従ってカウルプレートを積層体に対して付勢するように膨張可能なブラダに圧力を選択的に印加する工程を含む。
【0033】
したがって、説明される方法によれば、成形プロセスは、上述の成形装置を使用して、特定の一連の工程で提供される。具体的には、膨張可能なブラダは、好都合には、成形または共に成形するプロセスを最適化するために、温度プロファイルと組み合わせて選択的に制御される。
【0034】
所定の方法でのカウルプレートに対する膨張可能なブラダの拡張により、温度及び圧力の観点からオートクレーブ内での成形プロセスの複製が可能になる。さらに、均等な圧力が、カウルプレートの全体にわたって制御された方法で加えられてもよく、これは、部品を形成する部品またはサブ部品に均一かつ制御された成形圧力を生じさせる。
【0035】
所定の温度及び圧力手順は、例えば、以下の工程を含んでもよい。
(A) 金型温度を所定の温度Tmaxまで連続的に上昇させる工程と、
(B) 最高温度Tmaxで金型温度を所定の時間(TmaxP)維持する工程と、
(C) 所定の時間TmaxPの終わりに加熱を終了する工程を備え、
更に、
(D) 成形時間T0からT1の間に、膨張可能なブラダに第1の圧力P1を印加し、成形時間T1からT2の間に、膨張可能なブラダに第2の圧力P2を印加し、成形時間T2からT3の間に、第3の圧力P3を印加する工程を備える。
【0036】
事実上、加熱された金型を通して成形温度を上昇させると同時に、成形部品にかかる圧力に段階的なプロファイルが提供される。
【0037】
具体的には、成形材料の温度が特定の材料のガラス転移温度(Tg)に達したとき、すなわち、材料が軟化し始め、より塑性になったとき(例えばPEKK、これは158℃を超える)、ブラダ圧力が印加される。有利には、カウルプレートに変形または窪みが形成されることなく、膨張可能なブラダによってカウルプレートを成形部品に押し付けることができる。
【0038】
冷却時にて、製品が結晶化温度(例えば、PEKKの場合、これは240℃である)に達するとに、膨張可能なブラダの圧力は引き抜かれる。
【0039】
金型は、押圧プラテン内の加熱要素及び冷却流路の真上の位置で加熱/冷却押圧プラテンに接触し、金型への熱流を最適化することができる。こうして、金型への熱流れを最適化することができる。
【0040】
有利なことに、ブラダを減圧した後、金型をプレス機から移動させ、外気、送風機、又は冷却プレートシステムなどの適切な手段で室温まで冷却することができる。
これにより、プレス稼働時間が30%を超えて短縮され、所定時間内により多くの金型を処理することができる。
【0041】
減圧後にブラダを完全に収縮させるために、ブラダ内部に真空圧をかけ、全ての製品について同じ初期ブラダ形状を作り出す。ブラダが部分的に膨らんだままだと、上部金型の閉鎖時に次の製品に意図しない高圧が発生する可能性がある。
【0042】
本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される発明の他の態様を形成する以下のものを含むが、これらに限定されない様々な構成要素のために使用され得る。
補強されていない平旦または湾曲した部品、
(格子)バットジョイント補強材又は形成されたラミネート補強材を有する補強部品、
一体化された補強材、リブ、スパー及びフレームを有する又は有さない、平坦で、単一及び二重の湾曲した航空機の表面、
補強材を有する又は有さない、I、C又はZの梁、リブ、フレーム。
【0043】
PEKKプリプレグ(予備含浸)は、Solvay、Toray、Hexcel、Barday(商標)などのいくつかの製造業者によって製造される。本発明者らが使用する典型的な高性能の熱可塑性マトリックスは、PEKK、PEEK、LMPAEK及びPPSであるが、任意の繊維を有する任意の熱可塑性材料を使用することができる。
【0044】
さらなる態様から見ると、多数の熱可塑性材料の部品を共に成形する方法が提供され、この方法は、上部成形金型及び該上部成形金型に対向する下部成形金型を備える装置を使用し、上部成形金型及び下部成形金型は、多数の熱可塑性材料の部品を形成するための空間を両金型の間に画定し、装置は、
(i) 使用時に上下の成形金型の間に配置され、成形される部品の表面に接触する取り外し可能なカウルプレートと、
(ii) 使用時に取り外し可能なカウルプレートと上部金型との間に配置されて、カウルプレートに亘って延在し、一対の対向する可撓性表面と、周囲に延在するシールとを備える、膨張可能なブラダとを備え、
共に成形する方法は、
(A) 第1の成形金型上及び/又は第1の成形金型内の凹部内に第1のサブコンポーネントを画定する熱可塑性材料の層を敷設または位置決めする工程と、
(B) 複数の熱可塑性材料を含有した層を、第1のサブコンポーネントを形成する層に対して、かつ下部金型上に配置して、未成形の多数の熱可塑性材料の部品の積層体を形成する工程と、
(C) 前記積層体の上面上に前記カウルプレートを位置決めする工程と、
(D) 前記膨張可能なブラダをカウルプレートの上面に位置決めする工程と、
(E) 上部成形金型を膨張可能なブラダの上面に位置決めする工程と、
(F) 上部成形金型及び/又は下部成形金型を選択的に加熱及び冷却し、同時に、膨張可能なブラダに圧力を選択的に加えて、所定の温度及び圧力手順に従って、前記積層体に対してカウルプレートを付勢する工程を含む。
【0045】
本明細書に記載される発明のさらなる態様は、本明細書に記載される方法に従って形成される空気力学的構成要素に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の態様は、添付の図面を参照して、例としてのみ記載される。
【
図1】脱オートクレーブ成形用の金型を提供する従来の試みを示す図である。
【
図2】脱オートクレーブ成形用の金型を提供する従来の試みを示す図である。
【
図3】本明細書に記載の装置に従った構成を示す図である。
【
図4】
図3に示された構成に対応し、成形部に近接して配置されたカウルプレートが追加されている。
【
図5A】本明細書に記載の構成による、カウルプレート及び膨張可能なブラダを示す図である。
【
図5B】
図5Aに示される膨張可能ブラダの圧力結合を示す図である。
【
図6】本明細書に記載される装置の構成要素の分解図である。
【
図7】上部金型の上面と熱質量低減凹部を示す図である。
【
図8】本明細書に記載される方法及び装置を使用する例示的な成形プロセスの温度、圧力及び時間のグラフを示す。
【
図9】本明細書に記載の方法及び装置から得られる部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、様々な修正及び代替の形態が可能であるが、特定の実施形態が、例として図面に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本明細書に添付される図面及び詳細な説明は、開示される特定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、むしろ、特許請求の範囲に係る本発明の精神及び範囲内に入るすべての修正、均等物、及び代替物を包含することを意図することを理解されたい。
【0048】
本明細書における先行技術文献へのいかなる言及も、そのような先行技術が広く知られているか、または当該分野における共通の一般的知識の一部を形成することを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、単語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、及び類似の単語は、排他的または網羅的な意味で解釈されるべきではない。言い換えれば、それらは、「含むが、これに限定されない」ことを意味することを意図している。本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明される。特許請求の範囲に記載の本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではないことが理解されるであろう。本発明は、個々の実施形態だけでなく、本明細書に記載の実施形態の組み合わせも包含することも認識されるであろう。
【0049】
本明細書に記載される様々な実施形態は、特許請求の範囲の特徴の理解及び教示を助けるためにのみ提示される。これらの実施形態は、実施形態の代表的な例としてのみ提供され、網羅的及び/又は排他的ではない。本明細書に記載される利点、実施形態、実施例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲、または特許請求の範囲の均等物に対する限定とみなされるべきではなく、特許請求の範囲の本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、修正が行われ得ることを理解されたい。本発明の様々な実施形態は、本明細書に具体的に記載されたもの以外の開示された要素、構成要素、特徴、部分、ステップ、手段などの適切な組み合わせを適切に含み、それらから構成され、またはそれらから本質的に構成され得る。加えて、本開示は、現在特許請求はされていないが、将来特許請求され得る他の発明を含み得る。
【0050】
本明細書に記載される本発明の態様の特徴は、任意の適切な組み合わせで便利かつ互換的に使用され得ることが認識されるであろう。
【0051】
詳細な説明
本明細書に記載の装置及び方法は、オートクレーブを必要としない工程における熱可塑性材料の成形に関する。これは、当技術分野において「脱オートクレーブ」またはOOA法として知られている。具体的には、本明細書に記載される装置及び方法は、既存のシステムの問題を克服するために共に機能する、改良された加熱される金型及び膨張可能なブラダの装置を含む。
【0052】
共に成形する技術をオートクレーブから加熱プレスに移すときに克服すべきいくつかの問題がある。第1に、2つの硬い金型がプレスに使用される場合、特に薄い部品に対して、プリプレグされた材料と金型公差のために、最適ではない圧力分布が得られる。第2に、部品の縁部での複合材料の絞り出しを防止することは困難である。以下に説明する膨張可能なブラダの構成は、油圧シールを使用することなく、既存の方法でこれらの問題を除去する。具体的には、必要な成形圧力を加えるために、縁部で溶接され、空気または油圧流体のいずれかで加圧される2つの「クレス膜」または層の使用である。
【0053】
念のため、従来のオートクレーブによる熱可塑性樹脂部品の成形化の原理を
図1に示す。部品1は、高温耐性箔(一般的にはカプトンまたはアルミニウム-3a)を有する内側モールドライン(IML)金型2上で真空にバッグ詰めされ、適切なシール材3で縁部でシールされる。真空バッグ箔及び封止材の両方は使い捨てである。圧力は、オートクレーブ内の圧力を上昇させることによって加えられ、残りのガスは、真空システムを介して排気される。熱は、オートクレーブ中の空気または窒素を加熱することによって加えられる。
【0054】
オートクレーブ法にはいくつかの欠点がある。
大容量の空気を圧縮して400℃まで加熱する必要がある。これには多くのエネルギーが必要である。
真空バッグ、封止材及び吸排気管は使い捨てであり、廃棄物である。
熱可塑性樹脂の成形のサイクル時間は、加熱及び冷却能力のために約6時間であり、これは、高速生産にはあまり適していない。
【0055】
これらの欠点を克服するために、本発明者は、熱可塑性樹脂部品の成形化のための代替の方法及び装置を確立した。
【0056】
図2を参照すると、従来の成形の別の例が示されている。
【0057】
平坦なプラテンプレスを用いて、成形されていないラミネート積層体に圧力を加える。プレス機では2枚の加熱/冷却プレート(4、5)が取り付けられている。これらのプレートの間には、IML(内側モールドライン)6及びOML(外側モールドライン)金型7からなる金型セットが配置される。典型的には、これらの金型は、金属製で剛性である。
【0058】
加熱/冷却プラテンによって温度サイクルが適用され、加熱/冷却プラテンは、375℃までの加熱と、375℃での滞留段階と、それに続く部品を凝固させるための冷却段階とを含む。このプレス成形方法は、平坦な積層体または層の積層体を成形するために使用される。
【0059】
しかしながら、適合する金型は、部品内の良好な圧力及び厚さ分布を得るために非常に正確でなければならない。部品材料が局所的な厚さのばらつき(典型的には+/-8%)を有する場合、適合する金型は、薄い部品よりも厚い部品を圧縮し、層の横移動(層が圧力の低い場所に移動する)による空隙や面内のうねりが発生する可能性がある。
さらに、
図2に示す開いた縁部8にてラミネート積層体から層が押し出される。これは、積層体の縁部に箔を適用することによって防止されるが、これは労働集約的である。
【0060】
本発明は、
図3及び
図4を参照して例示されるように、上述の高温シールの問題を克服することを目的とする。
【0061】
具体的には、この膜は、縁部(周縁)にてレーザ溶接11された2枚の薄いステンレス鋼シートまたは膜9、10からなる。これにより、膨張して熱可塑性樹脂部品に圧力を発生させることができるブラダ(バルーン)が形成される。このようにして、縁部における膜の高温シールを必要としない。加えて、上部金型の閉鎖は、ブラダの緊密性を保証するために重要ではない。レーザ溶接は内部圧力に耐えるだけの強度があるので、上下の金型の間にギャップ12があることがある。
【0062】
図4は、本明細書に記載の装置による、補強されたスキンの共成形に使用される最終システムを示す。オートクレーブのバッグ詰め手順と比較して同じ圧力分布及び挙動を有するように、カウルプレート13を追加することができる。
【0063】
図5A及び
図5Bは、
図3及び
図4に示されるような膨張可能なブラダの例示的な配置と、圧力結合とをより詳細に示す。
【0064】
図5Aは、膨張可能なブラダ14及びカウルプレート13を示し、ブラダ14は
図3に示される鋼の膜9及び鋼の膜10によって形成される。
図5Aに示されるように、カウルプレートは、膨張可能なブラダの上部に配置され、膨張可能なブラダは、カウルプレートを取り囲む周縁領域15を画定するために、面積がより大きい。膨張可能なブラダは、周縁領域15内にレーザで形成された溶接部16を備え、すなわち、該溶接部16はカウルプレートが配置される領域内には配置されない。
【0065】
図5Aはまた、ブラダ圧力結合部17、すなわち、ブラダの内外に加圧流体またはガスを伝達するために使用される結合部を示す。図示のように、ブラダの本体との接続が行われ、圧縮機、ポンプ、ボトルなどからの流体またはガスを連通させてブラダに圧力を加えるために導管が使用される。
【0066】
図5Bは、圧力結合部の有利な構成をより詳細に示す。具体的には、ブラダの膜9及び10の2つの部分は、2つの膜と同じ平面内で結合部または領域18に延在し、即ち、2つの部分または領域18は、膜表面に対して垂直ではなく外向きに延在する。これは、ブラダの表面が、金型への挿入のため、及びカウルプレートとの整列のために、可能な限り平坦であり得ることを確実にする。
【0067】
2つの部分または領域18は、線及び点線19によって示されるように、膜9と10との間の空間への垂直方向の流体またはガスの流れを可能にする開口を備えてもよい。次いで、流体または気体は、ブラダが可能な限り薄く留まることができるように、線19に沿ってブラダ内の空洞20内に流れ得る。
図5Aに戻って、ねじ留め弁21を使用して、上述のように流体またはガスを連通させるために、パイプを開口部に接続することができる。
【0068】
図6は、本明細書に記載の方法及び装置による、成形前の装置の構成を示す。
【0069】
図示のように、成形装置は上部金型22及び内側モールドライン金型23を備え、内側モールドライン金型は、形成または成形される形状の下部輪郭を画定する面であり、該面に対して熱可塑性の層の積み重ねが配置されまたは置かれる。
【0070】
熱可塑性層の積層体が、内側モールドライン金型23上に置かれて、熱可塑性層の積層体またはラミネートを形成し、次いで、カウルプレート24が、積層体の上部に配置される。カウルプレートは、一旦成形された所望の部品形状の輪郭を規定する下面を有し、所望の部品形状が精密に機械加工または形成される。カウルプレートの上面は、精密機械加工を必要とせず、膨張可能なブラダまたはクレス膜25から圧力を受けるように配置される。図示のように、クレス膜または膨張可能なブラダ25は、圧力結合部26に接続されている。
【0071】
次いで、上部金型は、膨張可能なブラダの上に配置され、形成物全体は、プレス機内に配置されて、
図6に示される個々の構成要素を一緒に、かつ所定の位置に固定する。
【0072】
図7は、上部金型22の上面を図示している。
図7に示されるように、上部金型は、下部金型/IML金型23上に配置される。
図7は、上部金型の上面に位置するポケット27の凹部を図示している。
凹部の目的は、熱質量を下げることにより金型の加熱及び冷却時間を改善することである。これにより、部品をより迅速にプレス機から取り出し、別のサイクルを再開することができる。これにより、製造の処理能力が最大化された。
【0073】
金型の質量は、背面にポケットを適用することによって約50%だけ下げられる。そのため、熱サイクルに必要な冷暖房電力が少なくて済み、その結果、冷暖房システムのコストが低くなる。ポケットの配置は、有利には、リブがプレスプラテンの加熱及び冷却チャネル位置に対応するようにし、加熱及び冷却速度を最適化する。
【0074】
図8は、本明細書に記載の装置及び方法を用いた成形化のための温度及び圧力のプロファイルの一例を示す。
【0075】
図示されるように、成形サイクル中に使用される3つの個別の圧力と、3つの個別の加熱冷却期間がある。
【0076】
この工程は、ブラダに対する特定の真空排気圧力で開始し、ブラダを完全に縮めるために適用される。これにより、カウルプレートに未成形の部品から生じる無理な力がかかり、カウルプレートが恒久的に変形することを防ぐ。金型が加熱され、部品の温度が熱可塑性マトリックス材料のTgを上回ると、材料は軟化し、ブラダ内の圧力は成形圧力まで上昇する。これはまた、へこみからカウルプレートを守る。部品が成形温度に達すると、必要な成形時間の間、温度は一定に保たれる。次に、部品が冷却され、部品温度が熱可塑性マトリックス材料のTc(結晶化温度)よりも低くなると、ブラダの圧力が解放され、真空圧が加えられ、その結果、ブラダが縮まる。これにより、部品と金型の膨張差によって生じる熱応力により、部品がさらに冷却されたときに部品自体を解放することができる。温度がTcを下回り、ブラダ圧力が解放されると、金型は、プレス機から移動され得る。
【0077】
図9は、本明細書に記載される方法及び装置を使用する、共に成形された部品を図示する。得られた部品は、航空機の表面に同時成形されたスパー29及びリブ30を有する、輪郭のある滑らかな航空機の表面28を有する。示されるように、オートクレーブを必要とせずに、本明細書に記載される膨張可能なブラダ及び金型装置を使用して、複雑な湾曲した構成要素を形成することができる。
【外国語明細書】