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特開2024-161003混合冷媒組成物及びそれを含むヒートポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161003
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】混合冷媒組成物及びそれを含むヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20241108BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C09K5/04 C
F25B1/00 396U
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074709
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2023-0058372
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2024-0029329
(32)【優先日】2024-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】509349451
【氏名又は名称】エスケー エンムーブ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】カン ボン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ リ
(72)【発明者】
【氏名】ノ ジ ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ ミン
(57)【要約】
【課題】環境親和性が向上した混合冷媒組成物及びそれを含むヒートポンプを提供すること。
【解決手段】混合冷媒組成物及びそれを含むヒートポンプを開示する。例示的な実施形態による混合冷媒組成物は、二酸化炭素(Carbon dioxide、R-744)、トリフルオロヨードメタン(Trifluoroiodomethane、R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(1,1-Difluoroethane、R-152a)を含み、混合冷媒組成物の全重量におけるトリフルオロヨードメタン(R-13I1)と1,1-ジフルオロエタン(R-152a)との含有量の合計は60重量%以上および100重量%未満であってもよい。これにより、混合冷媒組成物による環境汚染を抑制することができ、混合冷媒組成物の冷房性能を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素(Carbon dioxide、R-744)、トリフルオロヨードメタン(Trifluoroiodomethane、R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(1,1-Difluoroethane、R-152a)を含み、
混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量と前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量との合計は60重量%以上及び100重量%未満である、混合冷媒組成物。
【請求項2】
前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量は0重量%超および40重量%以下である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項3】
前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量は35重量%~80重量%である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項4】
前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は20重量%~60重量%である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項5】
前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は30重量%~50重量%である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項6】
前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は5~80である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項7】
前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する二酸化炭素(R-744)の含有量の比は0.01~0.3である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項8】
前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は0.5~4である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項9】
前記混合冷媒組成物の1atmにおける沸点(boiling point)は-70℃~-30℃である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項10】
前記混合冷媒組成物の臨界温度(critical temperature)は105℃~120℃である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項11】
前記混合冷媒組成物の臨界圧力(critical pressure)は40bar~50barである、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項12】
前記混合冷媒組成物の1.5barの圧力における温度勾配(temperature glide)は5℃~40℃である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項13】
前記混合冷媒組成物の15barの圧力における温度勾配(temperature glide)は3℃~30℃である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項14】
前記混合冷媒組成物の-25℃における潜熱(latent heat)は100kJ/kg~250kJ/kgである、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項15】
前記混合冷媒組成物の地球温暖化係数(Global Warming Potentials、GWP)は1~75である、請求項1に記載の混合冷媒組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の混合冷媒組成物を含む、ヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含む組成物及びそれを含むヒートポンプに関し、より詳細には、互いに異なる冷媒を含む組成物及びそれを含むヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒とは、エアコン、冷蔵庫、冷却塔などに使用されるヒートポンプ(heat pump)から熱を奪うために使用される物質である。冷媒としては、例えば、自然冷媒、クロロフルオロカーボン(Chlorofluorocarbon、CFC)系冷媒、ヒドロクロロフルオロカーボン(Hydrochlorofluorocarbon、HCFC)系冷媒、ヒドロフルオロカーボン(Hydrofluorocarbon、HFC)系冷媒、ヒドロフルオロオレフィン(Hydrofluoroolefin、HFO)系冷媒が挙げられる。
【0003】
最近では、室内および屋外で使用されるヒートポンプの種類が多様化しており、電気自動車などの発達により小型化したヒートポンプが求められている。また、塩素(Cl)を含む冷媒の場合は、オゾン層破壊などの原因となるため、塩素原子を含まない冷媒を開発しようとする試みが進められている。
【0004】
例えば、ヒドロフルオロオレフィン系冷媒の一種である2,2,3,3-テトラフルオロプロペン(2,3,3,3-tetrafluoropropene、R-1234yf)は塩素原子を含まない。このため、地球温暖化係数(Global Warming Potential、GWP)が低く、自動車エアコンの冷媒などで活発に使用されている。
【0005】
しかし、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、低い成績係数(Coefficient Of Performance、COP)により、エアコンの冷媒として使用される場合、エアコンの性能が低いという問題があった。
【0006】
そこで、環境汚染を抑制しながらも成績係数の高い冷媒、または冷媒の組み合わせを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例示的な実施形態による1つの課題は、環境親和性が向上した混合冷媒組成物を提供することである。
【0008】
例示的な実施形態による1つの課題は、前記混合冷媒組成物を含み、冷房性能および暖房性能が向上したヒートポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な実施形態による混合冷媒組成物は、二酸化炭素(Carbon dioxide、R-744)、トリフルオロヨードメタン(Trifluoroiodomethane、R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(1,1-Difluoroethane、R-152a)を含み、前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量と前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量との合計は60重量%以上および100重量%未満であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量は、0重量%超および40重量%以下であってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量は35重量%~80重量%であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は20重量%~60重量%であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は30重量%~50重量%であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は20重量%~40重量%であってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は40重量%~60重量%であってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は5~80であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する前記二酸化炭素(R-744)の含有量の比は0.01~0.3であってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は0.5~4であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の1atmにおける沸点(boiling point)は-70℃~-30℃であってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の臨界温度(critical temperature)は105℃~120℃であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の臨界圧力(critical pressure)は40bar~50barであってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の1.5barの圧力における温度勾配(temperature glide)は5℃~40℃であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の15barの圧力における温度勾配(temperature glide)は3℃~30℃であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の-25℃における潜熱(latent heat)は、100kJ/kg~250kJ/kgであってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の地球温暖化係数(Global Warming Potentials、GWP)は1~75であってもよい。
【0026】
例示的な実施形態によるヒートポンプは、前述の混合冷媒組成物を含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
例示的な実施形態による混合冷媒組成物は、二酸化炭素(Carbon dioxide、R-744)、トリフルオロヨードメタン(Trifluoroiodomethane、R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(1,1-Difluoroethane、R-152a)を含むことができる。これにより、混合冷媒組成物に含まれる冷媒に塩素原子(Cl)が含まれないようにすることができ、オゾン層破壊などの環境汚染を抑制することができる。
【0028】
混合冷媒組成物の沸点(boiling point)は-30℃以下であってもよい。これにより、混合冷媒組成物が低温でも液体から気体に気化して周囲温度を効果的に下げることができる。
【0029】
また、混合冷媒組成物の臨界温度(critical temperature)は105℃以上であってもよい。これにより、エアコン等の冷却器の運転中に混合冷媒組成物が超臨界状態にならず、圧縮機の凝縮圧力が下がることがない。したがって、前記混合冷媒組成物を含むヒートポンプの成績係数を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、例示的な実施形態による熱交換器の冷房モードにおける熱交換のための混合冷媒の流れを示す概略的な模式図である。
図2図2は、例示的な実施形態による熱交換器の暖房モードにおける熱交換のための混合冷媒の流れを示す概略的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例示的な実施形態によれば、二酸化炭素(Carbon dioxide、R-744)、トリフルオロヨードメタン(Trifluoroiodomethane、R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(1,1-Difluoroethane、R-152a)を含む混合冷媒組成物、並びに前記混合冷媒組成物を含むヒートポンプが提供される。
【0032】
以下、具体的な実験例を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される実験例は、本発明の好適な実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解する一助となる役割を果たすものであるため、本発明は実験例に記載された事項のみに限定されて解釈されるものではない。
【0033】
例示的な実施形態によれば、混合冷媒組成物は塩素原子(Cl)を含まない冷媒の混合物であってもよい。塩素原子(Cl)を含まない冷媒としては、例えば、自然冷媒、ヒドロフルオロカーボン(Hydrofluorocarbon、HFC)系冷媒、ヒドロフルオロオレフィン(Hydrofluoroolefin、HFO)系冷媒などが挙げられる。
【0034】
前記自然冷媒は人工化合物ではなく、地球上に自然に存在する物質である。前記自然冷媒には、例えば、アンモニア(R-717)、二酸化炭素(R-744)、プロパン(R-290)、プロピレン(R-1270)及びブタン(R-600a)の少なくとも1つが含まれ得る。
【0035】
前記ヒドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒は、水素原子(H)、フッ素原子(F)、炭素原子(C)で構成される冷媒である。前記ヒドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒には、例えば、ジフルオロメタン(R-32)、トリフルオロヨードメタン(R-13I1)、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)、ペンタフルオロエタン(R-125)、1,1,1-トリフルオロエタン(R-143a)、トリフルオロメタン(R-23)、フルオロエタン(R-161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R-236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R-236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R-245fa)、および1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R-365mfc)の少なくとも1つが含まれ得る。
【0036】
前記ヒドロフルオロオレフィン(HFO)系冷媒は、水素原子(H)、フッ素原子(F)、炭素原子(C)で構成され、かつ前記炭素原子の間に少なくとも1つの二重結合を有する冷媒である。前記ヒドロフルオロオレフィン(HFO)系冷媒には、例えば、1,1,2-トリフルオロエチレン(R-1123)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ye)、3,3,3-トリフルオロプロペン(R-1243zf)、1,1-ジフルオロエチレン(R-1132a)、および1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(R-1225ye)の少なくとも1つが含まれ得る。
【0037】
例示的な実施形態では、混合冷媒組成物は、二酸化炭素(R-744)、トリフルオロヨードメタン(R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含むことができる。前記混合冷媒組成物に含まれる前記二酸化炭素(R-744)、前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)、および前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)は塩素原子(Cl)を含まない。
【0038】
前記二酸化炭素(R-744)は自然冷媒の一種であり、オゾン破壊係数(Ozone Depleting Potential、ODP)が0であり、地球温暖化係数(Glow Warming Potential、GWP)が1である。また、前記二酸化炭素(R-744)は腐食性、毒性、爆発性などがないものであり得る。前記二酸化炭素(R-744)を前記混合冷媒組成物に含むことにより、前記混合冷媒組成物の環境親和性および安定性を向上させることができる。
【0039】
前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)は、ヒドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒の一種であり、オゾン破壊係数(ODP)が0であり、地球温暖化係数(GWP)が5未満である。また、前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)は、熱的安定性及び化学的安定性が高いものであり得る。前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)を前記混合冷媒組成物に含むことにより、前記混合冷媒組成物の安定性を向上させることができる。
【0040】
前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)は、ヒドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒の一種であり、オゾン破壊係数(ODP)が0であり、地球温暖化係数(GWP)が150以下である。前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)は、分子質量および飽和密度が小さいものであり得る。前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を前記混合冷媒組成物に含むことにより、前記混合冷媒組成物の環境親和性を向上させることができる。また、低い飽和密度により、圧縮機における吐出圧力を低くすることができる。これにより、同じ圧力におけるエンタルピーの変化を増加させることができる。従って、混合冷媒組成物の冷凍能力を向上させることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物には、二酸化炭素(R-744)、トリフルオロヨードメタン(R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)以外の他の冷媒は混合されなくてもよい。例えば、前記混合冷媒組成物は、二酸化炭素(R-744)、トリフルオロヨードメタン(R-13I1)、および1,1-ジフルオロエタン(R-152a)のみからなっていてもよい。これにより、熱的安定性または化学的安定性の低い冷媒が混合されて混合冷媒組成物の熱的安定性および化学的安定性が低下することを防止することができる。また、混合冷媒組成物に蒸気圧(evaporating pressure)の低い冷媒が混合されて凝縮温度が上昇することを防止することができる。
【0042】
例示的な実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量と前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量との合計は、60重量%以上および100重量%未満であってもよい。
【0043】
トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量と1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量との合計が60重量%未満であると、熱的安定性及び化学的安定性が低下し、冷凍能力が低下することがある。トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量と1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量との合計が100重量%であると、地球温暖化係数が増加しすぎて環境親和性が低下することがある。前記含有量の範囲では、混合冷媒組成物の冷凍能力および環境親和性を共に向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量と前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量との合計は、60重量%~98重量%、80重量%~98重量%、または85重量%~98重量%であってもよい。前記含有量の範囲では、混合冷媒組成物の熱的安定性及び化学的安定性がより向上し、冷凍能力がより向上して、環境親和性を共に向上させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量は、0重量%超および40重量%未満、0.5重量%以上および40重量%未満、0.5重量%~20重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、または4重量%~5重量%であってもよい。
【0046】
前記二酸化炭素(R-744)の含有量の範囲では、混合冷媒組成物の平均地球温暖化係数(GWP)を減少させることができる。これにより、前記混合冷媒組成物の環境親和性をより向上させることができる。また、前記範囲では、前記二酸化炭素(R-744)の低い沸点により、外気温度が低い場合、暖房性能を向上させることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量は、0重量%超~99重量%以下、0重量%超~94.5重量%以下、20重量%~89.5重量%、30重量%~84.5重量%、35重量%~80重量%、または35重量%~79.5重量%であってもよい。
【0048】
前記範囲では、トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の低い地球温暖化係数により、混合冷媒組成物の環境親和性を向上させることができる。
【0049】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量は、20重量%~80重量%、20重量%~74.5重量%、45重量%~74.5重量%、55重量%~71.5重量%、または63重量%~71.5重量%であってもよい。
【0050】
前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の範囲では、混合冷媒組成物の熱的安定性および化学的安定性をより向上させることができる。
【0051】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量は、0重量%超~60重量%以下、0重量%超~54.5重量%以下、25重量%~54.5重量%、35重量%~51.5重量%、43重量%~51.5重量%であってもよい。前記範囲では、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量を増加させることができ、冷房性能を向上させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は、1重量%~60重量%、5重量%~60重量%、10重量%~60重量%、15重量%~60重量%、または20重量%~60重量%であってもよい。
【0053】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は、20重量%~40重量%、25重量%~40重量%、または28重量%~40重量%であってもよい。前記範囲では、トリフルオロヨウ化メタン(R-13I1)の含有量が増加し、地球温暖化係数が減少して、冷房性能が低下しすぎることを抑制することができる。これにより、混合冷媒の環境親和性および冷房効率を共に向上させることができる。
【0054】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量は、40重量%~60重量%、45重量%~60重量%、45重量%~55重量%、48重量%~55重量%、または48重量%~52重量%であってもよい。前記範囲では、1,1-ジフルオロメタン(R-152a)の高い潜熱により冷房性能が向上し、低い地球温暖化係数が過度に増加することを抑制することができる。これにより、混合冷媒の冷房性能および環境親和性を共に向上させることができる。
【0055】
前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量の範囲では、混合冷媒組成物の冷凍能力を向上させることができる。これにより、少量の混合冷媒組成物でも温度を制御することができ、前記混合冷媒組成物を含む空気調和機の効率を向上させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は5~80、8~80、または9~79であってもよい。
【0057】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は10~79、13~79、または14~79であってもよい。
【0058】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記二酸化炭素(R-744)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は9~70、9~60、または9~54であってもよい。
【0059】
前記含有量の比の範囲では、混合冷媒組成物の地球温暖化係数(GWP)の数値が増加することを防止しながら、混合冷媒組成物の高温安定性を向上させることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する前記二酸化炭素(R-744)の含有量の比は0.01~0.3、0.015~0.3、または0.015~0.2であってもよい。
【0061】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する前記二酸化炭素(R-744)の含有量の比は0.02~0.2、0.023~0.2、または0.025~0.2であってもよい。
【0062】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する前記二酸化炭素(R-744)の含有量の比は0.015~0.15、0.015~0.1、または0.015~0.09であってもよい。
【0063】
前記含有量の比の範囲では、混合冷媒組成物の地球温暖化係数(GWP)の数値が増加することを防止しながら、混合冷媒組成物の冷凍能力を向上させることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は0.5~4、0.55~4、または0.55~3.95であってもよい。
【0065】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロメタン(R-152a)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は1~3.95、1.2~3.95、または1.4~3.95であってもよい。
【0066】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の全重量における前記1,1-ジフルオロメタン(R-152a)の含有量に対する前記トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の含有量の比は0.55~3、0.55~2、または0.55~1.2であってもよい。
【0067】
前記含有量の比の範囲では、混合冷媒組成物の安定性が向上しつつ、地球温暖化係数(GWP)の数値が増加することを防止することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、1atmにおける混合冷媒組成物の沸点(boiling point)は-70℃~-30℃、-65℃~-30℃、または-60℃~-30℃であってもよい。
【0069】
混合冷媒組成物の沸点が-70℃未満であると、前記混合冷媒組成物の凝縮温度における凝縮圧力が上昇することがある。これにより、冷凍サイクルにおいて消費されるエネルギーが増加し、冷媒の効率が低下することがある。
【0070】
混合冷媒組成物の沸点が-30℃を超えると、前記混合冷媒組成物の凝縮温度における比体積が増加することがある。これにより、冷凍能力を向上させるために求められる前記混合冷媒組成物の量を満たすための空気調和機の体積が増加することがある。
【0071】
一実施形態では、1atmにおける混合冷媒組成物の沸点は-60℃~-34℃、または-57.4℃~-34.7℃であってもよい。
【0072】
一実施形態では、1atmにおける混合冷媒組成物の沸点は-50℃~-33℃、または-49.6℃~-32.7℃であってもよい。
【0073】
混合冷媒組成物の沸点が前記範囲であると、比体積が減少し、空気調和機の体積が減少して、冷媒の冷凍能力を向上させることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の臨界温度(critical temperature)は105℃~120℃、105℃~115℃、105℃~113℃、または106℃~112℃であってもよい。臨界温度とは、特定の物質が液体状態で存在できる最高温度であり、冷媒の臨界温度が低いと、冷凍サイクルにおける前記冷媒の液化が困難な場合がある。
【0075】
前記臨界温度の範囲では、前記混合冷媒組成物が冷凍サイクルにおいて超臨界流体状態にならないようにすることができる。これにより、前記混合冷媒組成物の一部が液化しないことを抑制することができ、冷凍能力を向上させることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の臨界圧力(critical pressure)は40bar~50bar、42bar~50bar、または42.5bar~48.5barであってもよい。臨界圧力とは、特定の物質が液体状態で存在できる最大圧力であり、冷媒の臨界圧力が高いと、冷凍サイクルにおける前記冷媒の液化が困難な場合がある。
【0077】
前記臨界圧力の範囲では、前記混合冷媒組成物が冷凍サイクルにおいて超臨界流体状態にならないようにすることができる。これにより、前記混合冷媒組成物の一部が液化しないことを抑制することができ、冷凍能力を向上させることができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の1.5barの圧力における温度勾配(temperature glide)は5℃~40℃、5℃~35℃、5℃~30℃、または5℃~28℃であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の15barの圧力における温度勾配(temperature glide)は3℃~30℃、3℃~25℃、または3℃~20℃であってもよい。
【0080】
前記温度勾配の範囲では、同じ体積のヒートポンプを使用する場合、容量を向上させることができる。また、前記温度勾配の範囲では、冷媒の熱伝達効率を向上させることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、-25℃における潜熱(latent heat)は、100kJ/kg~250kJ/kg、120kJ/kg~250kJ/kg、または140kJ/kg~250kJ/kgであってもよい。
【0082】
前記潜熱の範囲では、混合冷媒組成物が相変化する間に放出する熱または吸収する熱が十分であり得る。これにより、前記混合冷媒組成物の熱効率を向上させることができる。
【0083】
一実施形態では、-25℃における潜熱は、145kJ/kg~250kJ/kg、145kJ/kg~230kJ/kg、または145kJ/kg~200kJ/kgであってもよい。
【0084】
前記潜熱の範囲では、混合冷媒組成物の熱効率が低下することを抑制しつつ、混合冷媒組成物の環境親和性を向上させることができる。
【0085】
一実施形態では、-25℃における潜熱は、150kJ/kg~250kJ/kg、180kJ/kg~250kJ/kg、または200kJ/kg~250kJ/kgであってもよい。
【0086】
前記潜熱の範囲では、混合冷媒組成物の環境親和性が低下することを抑制しつつ、混合冷媒組成物の熱効率を向上させることができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物の地球温暖化係数(GWP)は1~75、10~75、15~75、または20~75であってもよい。
【0088】
地球温暖化係数(GWP)は、任意の化学物質の1kgが地球の対流圏に放出されたとき、一定期間(例えば、100年)の間に地球温暖化に及ぼす影響を、二酸化炭素(CO)を基準物質として換算した数値である。例えば、二酸化炭素(R-744)の地球温暖化係数(GWP)は1であり得る。例えば、トリフルオロヨードメタン(R-13I1)の地球温暖化係数(GWP)は1であり得る。例えば、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)の地球温暖化係数(GWP)は124であり得る。
【0089】
前記地球温暖化係数の範囲では、混合冷媒組成物の使用および処理による環境汚染を抑制することができる。
【0090】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の地球温暖化係数は20~75、20~65、または20~55であってもよい。
【0091】
前記地球温暖化係数の範囲では、混合冷媒組成物の冷房効率の低下を抑制しつつ、地球温暖化係数を減少させることができる。
【0092】
一実施形態では、前記混合冷媒組成物の地球温暖化係数は30~75、40~75、または50~75であってもよい。
【0093】
前記地球温暖化係数の範囲では、地球温暖化係数が増加しすぎることを抑制しつつ、冷房効率を向上させることができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物のオゾン破壊係数(ODP)は0であり得る。
【0095】
オゾン破壊係数(ODP)は、トリクロロフルオロメタン(CFC-11)のオゾン層破壊に対する影響を1と想定したとき、任意の化学物質がオゾン層破壊に影響を及ぼす程度を換算した数値である。
【0096】
オゾン破壊係数(ODP)が0であることにより、混合冷媒組成物の使用および処理による環境汚染を抑制することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記混合冷媒組成物は可燃性が低くてもよい。前記混合冷媒組成物は、例えば、アメリカ暖房冷凍空調学会(The American Society of Heating、Refrigerating and Air-Conditioning Engineers、ASHRAE)の冷媒安全群の分類において、A2L等級以下であってもよい。これにより、ヒートポンプの運転および漏れ時の安定性を向上させることができる。
【0098】
例示的な実施形態によれば、ヒートポンプは前記混合冷媒組成物を含むことができる。これにより、ヒートポンプは、環境親和性および安定性が向上し、冷凍性能を向上させることができる。
【0099】
前記ヒートポンプは、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を含むことができる。前記圧縮機では、前述の混合冷媒組成物を圧縮して高温および高圧状態とすることができ、前記膨張弁では、前述の混合冷媒組成物を膨張させて低温および低圧状態とすることができる。
【0100】
例えば、前述の混合冷媒組成物は、前記ヒートポンプ内における圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を循環しながら熱を放出したり熱を吸収したりすることができる。混合冷媒組成物は、前記圧縮機内で高温および高圧の気体状態に維持することができる。前記混合冷媒組成物は、前記凝縮器で熱を放出して液体状態に液化することができる。前記混合冷媒組成物は、前記膨張弁で低温および低圧の液体、または液体と気体の混合状態に維持することができる。前記混合冷媒組成物は、蒸発器で熱を吸収して気体状態に気化することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、前記ヒートポンプはオイルを含むことができる。例えば、前記オイルは、ポリエステル(polyester、POE)、鉱油(mineral oil)、アルキルベンゼン(alkylbenzene、AB)、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol、PAG)、ポリビニルエーテル(polyvinyl ether、PVE)などを含むことができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、前記ヒートポンプの成績係数(Coefficient of Performance、COP)は1~10であってもよい。成績係数(COP)は、ヒートポンプを作動する際に、投入される作業量に対する有効に得られた熱量の比を意味する。
【0103】
前述の冷媒を用いて、前記範囲の成績係数を有する高効率のヒートポンプを提供することができる。
【0104】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これらの実施例は単に本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0105】
実施例及び比較例
(1)混合冷媒組成物
下記表1~5に示す成分および含有量(重量%)を有する混合冷媒組成物を準備した。
準備した混合冷媒組成物の沸点、臨界温度、臨界圧力、1.5barおよび15barにおける温度勾配、および-25℃における潜熱を測定した。測定した混合冷媒組成物の沸点、臨界温度、臨界圧力、1.5barおよび15barにおける温度勾配、および-25℃における潜熱を下記の表1~5に示す。
前記混合冷媒組成物の沸点、臨界温度、臨界圧力、温度勾配および潜熱は、REFPROP(Ver 10、NIST)を用いて測定した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
表1に示す具体的な成分は以下の通りである。
R-744:二酸化炭素(Carbon dioxide)
R-13I1:トリフルオロヨードメタン(Trifluoroiodomethane)
R-152a:1,1-ジフルオロエタン(1,1-Difluoroethane)
R-1234yf:2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(2,3,3,3-Tetrafluoropropene)
【0112】
実験例1:GWPの計算
実施例による混合冷媒組成物に含まれるR-744、R-13I1及びR-152aの「気候変動に関する政府間パネル」(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)による地球温暖化係数(GWP)に基づいて、R-744、R-13I1及びR-152aのそれぞれの重量比によって算術平均して、混合冷媒組成物の地球温暖化係数(GWP)を計算した。
【0113】
具体的には、GWPはIPCC AR4およびWiebbles(1995)を参照して計算し、R-13I1の値およびR-744の値は1、R-152aの値は124と計算した。
【0114】
前記IPCCによる地球温暖化係数(GWP)は、100年を基準とした地球温暖化係数(GWP)を基盤とした。
【0115】
計算された地球温暖化係数(GWP)を下記の表6~10に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
実験例2:冷房評価
図1は、例示的な実施形態による熱交換器の冷房モードにおける熱交換のための混合冷媒の流れを示す概略的な模式図である。
【0122】
図2は、例示的な実施形態による熱交換器の暖房モードにおける熱交換のための混合冷媒の流れを示す概略的な模式図である。
【0123】
図1及び図2における矢印の方向は、混合冷媒の流れを示すためのものである。
【0124】
図1を参照すると、冷房モードでは、混合冷媒はコンプレッサー10を通して圧縮され、内部コンデンサー18および膨張弁(加熱)14を順にバイパスし、外部コンデンサー12で熱を放出し、次に膨張弁(冷房)20で膨張し、蒸発器16を通して熱を再吸収する。
【0125】
図2を参照すると、暖房モードでは、混合冷媒はコンプレッサー10で圧縮され、内部凝縮器18で熱を放出し、膨張弁(加熱)14で膨張し、外部コンデンサー12から吸熱し、さらに外部コンデンサー12で熱を吸収する。図1および図2のプロセス図は、冷媒を冷却モード中に膨張バルブ20に送るか、暖房モード中に冷却器22を通して送ることができるバルブ24を更に示す。モーターインバーター26は、冷却需要に基づいて冷却システムのモーターの速度を調整できるようにすることで、エネルギー効率を向上させるために使用される。このシステムは、冷媒蒸気のみがコンプレッサー10に入るようにするために、コンプレッサー10の前にアキュムレータ28も含む。システムは、バッテリ30およびPTCヒーター32も含むことができる。バッテリ30は、システムの様々な構成要素のための主電源またはバックアップ電源として使用され、例えば、蒸発器コイルなどを除霜するためのPTCヒーターに電力を供給することができる。
【0126】
実施例52、62、74、76、83及び比較例1の冷媒の組み合わせを用いて、異なる外気温度で前述した熱交換器により冷房評価および暖房評価を行った。前記冷房評価は外気温度を45℃に設定して行い、前記暖房評価は外気温度を-7℃及び-20℃にそれぞれ設定して行った。前記実施例及び比較例による暖房評価の条件を下記表11に示す。
【0127】
具体的には、外気温度(℃)、外気相対湿度(%)、圧縮機回転数(RPM)、外気風量(m/hr)、換気空気調節(Heating Ventilating,and Air Conditioning,HVAC)温度(℃)、HVAC相対湿度(%)、HVAC風量(m/hr)及び冷媒充填量(g)を下記表11に示す。
【0128】
冷房評価は、1D解析プログラムのGT-SUITE(Gamma社製)により検証した。具体的には、冷房評価(外気温度:45℃)では、冷房性能(kW)、消費電力(kW)及び成績係数を評価し、暖房評価(外気温度:-7℃、-20℃)では、暖房性能(kW)、消費電力(kW)、成績係数及び/または吐出温度(℃)を評価した。
【0129】
前記成績係数は、下記式1を用いて計算した。
【0130】
【数1】
【0131】
評価の結果を表12~17に示す。
具体的には、ポリエステル(polyester、POE)の130gをオイルとして使用した場合の評価結果を表12、14及び16に示し、RB 100EV(ENEOS社製)の180gをオイルとして使用した場合の評価結果を表13、15及び17に示す。
【0132】
【表11(1)】
【表11(2)】
【0133】
【表12】
【0134】
【表13】
【0135】
混合冷媒としてR-744、R-13I1及びR-152aを使用し、R-13I1とR-152aの含有量の合計が60重量%以上である実施例による冷媒の組み合わせを使用し、オイルとしてPOEを使用した実験例では、冷房評価(外気温度:45℃)における冷房性能が6.75以上であった。
【0136】
混合冷媒としてR-744、R-13I1及びR-152aを使用し、R-13I1とR-152aの含有量の合計が60重量%以上である実施例による冷媒の組み合わせを使用し、オイルとしてRB 100EV(ENEOS社製)を使用した実験例では、冷房評価(外気温度:45℃)における冷房性能および成績係数がそれぞれ6.09及び1.7以上であった。
【0137】
混合冷媒としてR-1234yfを単独で使用した比較例1による冷媒を使用し、オイルとしてPOEを使用した実験例では、冷房評価(外気温度:45℃)における冷房性能が低下した。
【0138】
混合冷媒としてR-1234yfを単独で使用した比較例1による冷媒を使用し、オイルとしてRB 100EV(ENEOS社製)を使用した実験例では、冷房評価(外気温度:45℃)における冷房性能及び成績係数が低下した。
【0139】
【表14】
【0140】
【表15】
【0141】
混合冷媒としてR-744、R-13I1及びR-152aを使用し、R-13I1とR-152aの含有量の合計が60重量%以上である実施例による冷媒の組み合わせを使用し、オイルとしてPOEを使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-7℃)における暖房性能が3.15kW以上、吐出温度が20.2℃以上であった。
【0142】
混合冷媒としてR-744、R-13I1及びR-152aを使用し、R-13I1とR-152aの含有量の合計が60重量%以上である実施例による冷媒の組み合わせを使用し、オイルとしてRB 100EV(ENEOS社製)を使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-7℃)における暖房性能が4.01kW以上、吐出温度が24.3℃以上であった。
【0143】
混合冷媒としてR-1234yfを単独で使用した比較例1による冷媒を使用し、オイルとしてPOEを使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-7℃)における暖房性能が2.97kW、吐出温度が17.6℃であった。
【0144】
混合冷媒としてR-1234yfを単独で使用した比較例1による冷媒を使用し、オイルとしてRB 100EV(ENEOS社製)を使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-7℃)における暖房性能が3.25kW、吐出温度が20.1℃であった。
【0145】
【表16】
【0146】
【表17】
【0147】
混合冷媒としてR-744、R-13I1及びR-152aを使用し、R-13I1とR-152aの含有量の合計が60重量%以上である実施例を冷媒の組み合わせとして使用し、オイルとしてPOEを使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-20℃)における暖房性能が2.49kW以上、吐出温度が3.6℃以上であった。
【0148】
混合冷媒の全重量におけるR-744の含有量を4重量%以上に増加させた実施例を冷媒の組み合わせとして使用した実験例2-6、2-9及び2-18では、混合冷媒の全重量に対してR-744を3重量%で含む実施例を冷媒の組み合わせとして使用した実験例2-3に比べて暖房性能が相対的に増加した。
【0149】
混合冷媒としてR-744、R-13I1及びR-152aを使用し、R-13I1とR-152aの含有量の合計が60重量%以上である実施例を冷媒の組み合わせとして使用し、オイルとしてRB 100EV(ENEOS社製)を使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-20℃)における暖房性能が2.57kW以上、吐出温度が-1℃以上であった。
【0150】
混合冷媒としてR-1234yfを単独で使用した比較例1を冷媒として使用し、オイルとしてPOEを使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-20℃)における暖房性能が低下し、吐出温度が減少した。
【0151】
混合冷媒としてR-1234yfを単独で使用した比較例1を冷媒として使用し、オイルとしてRB 100EV(ENEOS社製)を使用した実験例では、暖房評価(外気温度:-20℃)における暖房性能が低下し、吐出温度が減少した。
図1
図2