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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161009
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】四輪駆動車
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/346 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B60K17/346 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074826
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】102023000008961
(32)【優先日】2023-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】ファブリツィオ・ファヴァレット
【テーマコード(参考)】
3D043
【Fターム(参考)】
3D043AA01
3D043AA05
3D043AB17
3D043EA02
3D043EA23
3D043EA34
3D043EA42
(57)【要約】
【課題】最適な質量分布を備えた四輪駆動車を提供すること。
【解決手段】2つの第1の駆動輪を有する第1のアクスルと、第2のアクスルと、複数のシリンダが設けられている内燃エンジンと、内燃エンジンからの動きを第1の車輪に伝達するように構成されている変速機シャフトと、駆動シャフトから動きを受ける少なくとも1つのプライマリシャフトおよび少なくとも1つのセカンダリシャフトを設けられているギアボックスと、ギアボックスのセカンダリシャフトから動きを受けかつ動きを変速機シャフトを介して第1の車輪および第2の車輪に伝達する第1の遊星差動装置と、第1の遊星差動装置と第2の車輪との間に間置されており、第1の遊星差動装置から動きを受け、動きを第2の車輪に伝達する第2の遊星差動装置と、を有する自動車。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)であって、
2つの第1の駆動輪(2)を有する第1のアクスルと、
2つの第2の駆動輪(3)を有する第2のアクスルと、
乗員室(5)と、
複数のシリンダ(8)が設けられている内燃エンジン(4)であり、それぞれのピストン(9)が内面上で滑動し、駆動シャフト(10)が前記ピストン(9)に接続されており、長手方向にすなわち前記自動車(1)の運転方向に平行に配向されている、内燃エンジン(4)と、
長手方向に配向されており、かつ前記内燃エンジン(4)からの動きを前記第1の車輪(2)に伝達するように構成されている変速機シャフト(25)と、
前記駆動シャフト(10)から動きを受ける少なくとも1つのプライマリシャフト(18)および少なくとも1つのセカンダリシャフト(19)が設けられているギアボックス(16)と、
前記ギアボックス(16)の前記セカンダリシャフト(19)から動きを受け、かつ前記動きを前記変速機シャフト(25)を介して前記第1の車輪(2)および前記第2の車輪(3)に伝達する第1の遊星差動装置(22)と、
前記2つの第2の車輪(3)と同軸であり、前記第1の遊星差動装置(22)と前記第2の車輪(3)との間に間置されており、前記第1の遊星差動装置(22)から動きを受け、前記動きを前記第2の車輪(3)に伝達する第2の遊星差動装置(23)と
を含む、前記自動車(1)において、
前記自動車(1)は、前記2つの差動装置(22、23)が互いに同軸であり、並んで配置されていることを特徴とする、
自動車(1)。
【請求項2】
前記第1の遊星差動装置(22)は、
前記ギアボックス(16)の前記セカンダリシャフト(19)から動きを受ける第1のリングギア(32)と、
少なくとも2つの第1の遊星ギア(34)を支持し、動きを前記第2の遊星差動装置(23)に伝達する、第1のキャリア(33)と、
動きを前記変速機シャフト(25)に伝達する第1の太陽ギア(35)と、
を含む、請求項1に記載の自動車(1)。
【請求項3】
前記第2の遊星差動装置(23)は、
前記第1のキャリア(33)と一体になっており、前記第1のキャリア(33)から動きを受ける第2のリングギア(36)と、
少なくとも2つの第2の遊星ギア(38)を支持し、かつ第1のアクスルシャフト(28)と一体になっており、動きを一方の第2の車輪(3)に伝達する第2のキャリア(37)と、
第2のアクスルシャフト(24)と一体になっており、動きを他方の第2の車輪(3)に伝達する、第2の太陽ギア(39)と、
を含む、請求項2に記載の自動車(1)。
【請求項4】
前記第1の遊星差動装置(22)は中心が空洞であり、前記第2のアクスルシャフト(24)によって、左右に交差されている、請求項3に記載の自動車(1)。
【請求項5】
中空接続シャフト(40)が設けられており、前記中空接続シャフト(40)は、端部において、前記第1のキャリア(33)と一体になっており、反対側端部において、前記第2のリングギア(36)と一体になっている、請求項3に記載の自動車(1)。
【請求項6】
前記第1のリングギア(32)は、中間歯車(42)と噛み合う外歯(41)を有し、前記ギアボックス(16)の前記セカンダリシャフト(19)から動きを受ける、請求項2に記載の自動車(1)。
【請求項7】
前記第1のリングギア(32)の前記外歯(41)は傘歯であり、前記中間歯車(42)は傘ギアであり、前記第1のリングギア(32)の回転軸(31)に対して垂直な回転軸(43)を中心として回転する、請求項6に記載の自動車(1)。
【請求項8】
前記第1の太陽ギア(35)と同軸でありかつ一体になっている第1の変速機歯車(46)と、
前記第1の変速機歯車(46)と噛み合う第2の変速機歯車(47)と、
を含む、請求項2に記載の自動車(1)。
【請求項9】
前記第2の変速機歯車(47)を前記変速機シャフト(25)に接続する第1の傘ギア(48)を含む、請求項8に記載の自動車(1)。
【請求項10】
前記2つの遊星差動装置(22、23)は、横方向に配向されておりかつ前記ギアボックス(16)の前記セカンダリシャフト(19)に対して垂直な、回転軸(31)を中心として回転する、請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項11】
前記変速機シャフト(25)と前記第1の車輪(2)との間に間置されている第2の傘ギア(27)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項12】
前記内燃エンジン(4)は前記乗員室(5)の後ろに配置されており、「V」形であり、互いに分離されている2つのバンク(11)のシリンダ(8)を有し、前記シリンダ(8)よりも高く配置されている前記駆動シャフト(10)と共に配向されており、
前記変速機シャフト(25)は前記内燃エンジン(4)の下に配置されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項13】
前記変速機シャフト(25)は前記2つのバンク(11)のシリンダ(8)間に配置されている、すなわち前記2つのバンク(11)のシリンダ(8)によって横方向に範囲を定められている空間内に配置されている、請求項12に記載の自動車(1)。
【請求項14】
前記第1のアクスルは前部位置にあり、前記第2のアクスルは後部位置にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項15】
前記ギアボックス(16)は前記内燃エンジン(4)のクランクケース(7)の後ろに長手方向に配置されており、
前記ギアボックス(16)の前記プライマリシャフト(18)は長手方向に配向されており、前記内燃エンジン(4)の前記駆動シャフト(10)と同軸である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2023年5月5日に出願されたイタリアの特許出願No.102023000008961号による優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は四輪駆動車に関する。
【背景技術】
【0003】
四輪駆動車は、エンジンによって生成された動力を全四輪に放出し、したがって全グリップ状態におけるより高いトラクションを可能にする変速機システムを有する。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、駆動シャフトを有するエンジンと、一対の主駆動輪と、駆動シャフトを主駆動輪に永続的に接続しかつギアボックスおよび主差動装置を含む主変速機ラインと、通常は駆動される一対の従動輪と、駆動シャフトを従動輪にも接続するようになされており、かつ一方の側がギアボックスの上流で駆動シャフトに接続されており、他方の側が従動輪に接続されている少なくとも1つのセカンダリクラッチを含む、挿入可能な副変速機ライン(secondary transmission line)と、を設けられている、挿入可能な四輪駆動車を記載している。
【0005】
特許文献3が、入力シャフトと、第1の出力シャフトと、第2の出力シャフトと、第1の遊星ギアボックスと、第1の遊星ギアボックスに接続されている第2の遊星ギアボックスと、を含む、自動車の変速機を記載している。入力シャフト、2つの出力シャフト、および遊星ギアボックスは、入力シャフトを通る入力トルクが変換され、所定の割合で2つの出力シャフトに分配され、合成トルクの形成を防止するような方法で配置され、且つ設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2 142 395号明細書
【特許文献2】欧州特許第2 228 249号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2022/0402359号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、最適な質量分布を備えた、すなわち(2つのアクスル間の)中心位置に低く(路面に近接して)その重心を有する、四輪駆動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に従って、四輪駆動車が提供される。
【0009】
ここで、そのいくつかの非限定的実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】四輪駆動車の概略平面図である。
図2】明確にするために除去された部分がある、図1の自動車の変速機システムの斜視図である。
図3】明確にするために除去された部分がある、図1の自動車の変速機システムの斜視図である。
図4図1の自動車の内燃エンジンの上面斜視図である。
図5図1の自動車の内燃エンジンの下面斜視図である。
図6図1の自動車の内燃エンジンの側面図である。
図7図1の自動車の内燃エンジンの概略正面図である。
図8】明確にするために除去された部分がある、図1の自動車のギアボックスの平面図である。
図9】明確にするために除去された部分がある、図1の自動車のギアボックスの斜視図である。
図10】明確にするために除去された部分がある、図1の自動車のギアボックスの斜視図である。
図11】明確にするために除去された部分がある、図1の自動車のギアボックスの斜視図である。
図12図1の自動車の変速機システムの2つの遊星差動装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1では、番号1が、(フロントアクスルの一部である)2つの前部駆動輪2と(リアアクスルの一部である)2つの後部駆動輪3とを備えた自動車を示す。駆動輪2および3全てが、中心に配置されている(すなわちフロントアクスルとリアアクスルとの間に配置されている)内燃エンジン4から、それらの駆動トルクを受ける。
【0012】
自動車1では、2つの方向:水平でありかつ自動車1の運転方向に平行な長手方向Lおよび水平でありかつ自動車1の運転方向に対して垂直な(すなわち長手方向Lに対して垂直な)横方向T、が確認される。長手方向Lおよび横方向Tは水平であり、したがって(図7に示されている)垂直方向Vに対して垂直である。
【0013】
図1および図2に示されているように、自動車1は、2つの前輪2と2つの後輪3との間に配置されており且つ内部に運転席を含む乗員室5を含む。
【0014】
可能性のある実施形態によれば、内燃エンジン4は水素(または別のガス燃料)によって動力供給される。異なる実施形態によれば、内燃エンジン4はガソリン(または別の液体燃料)によって動力供給される。
【0015】
図7に示されているように、内燃エンジン4は水素によって動力供給され、水素は、内燃エンジン4の上方に配置されている多数の円筒形状のタンク6内に高圧で(例えば約700バールの最大圧力で)貯蔵されており、図7に示されている実施形態では、タンク6は長手方向に配置されている(すなわち、それらの中心対称軸が長手方向に配向されている)が、あるいはそれらは横方向に配置され得る(すなわち、それらの中心対称軸が横方向に配向される)と考えられる。
【0016】
図7に示されているものによれば、内燃エンジン4は、複数のシリンダ8が内部に得られるクランクケース7を含む。各シリンダ8は、それぞれの燃焼室と、(それぞれの接続ロッドによって)駆動シャフト10に機械的に接続されており、燃焼によって生成された力を駆動シャフト10自体に伝達するそれぞれのピストン9と、を有する。内燃エンジン4は長手方向に配置されている。すなわち駆動シャフト10は(自動車1の運転方向に平行に)長手方向に配向されている。
【0017】
シリンダ8は、互いに分離されかつ傾けられて「V」形を画定している2つのバンク11に細分されている。すなわち、内燃エンジン4は「V」様に成形されており、互いに分離されかつある角度に置かれている2つのバンク11のシリンダ8を有する。換言すれば、内燃エンジン4では、シリンダ8のブロックが、文字「V」様に正確に成形された配置に従って、駆動シャフト10の軸に関してある角度で互いに分離されている。添付の図に示されている実施形態では、シリンダ8によって形成されている角度は120°であるが、図示されていない他の実施形態によれば、この角度は異なる(例えば、僅かにより大きいかまたは僅かにより小さい)可能性がある。
【0018】
2つのヘッド(またはシリンダヘッド)12が、クランクケース7に連結されており(接続されており)、シリンダ8の最上部(すなわちいわゆる「炎板」を備えたシリンダ8の上端部)を形成しており、明らかに、シリンダ8の「V」形配置の場合、2つのバンク11のシリンダ8の対のシリンダヘッド12が存在する。クランクケース7とシリンダヘッド12との組立ては、共に、内燃エンジン4のシリンダブロックを構成する。
【0019】
添付の図に示されている実施形態では、内燃エンジン4は長手方向に配置されている(配向されている)。すなわち駆動シャフト10は長手方向に配置されている(配向されている)。図示されていない他の実施形態では、内燃エンジン4は横方向に配置されている(配向されている)。
【0020】
添付の図に示されている実施形態では、内燃エンジン4は中心位置または後部位置に配置されている。すなわち、内燃エンジン4は乗員室5の後ろに配置されており、前輪2と後輪3との間に配置されている(添付の図に示されている中心配置)か、または後輪3を越えて配置されている(図示されていない後部配置)。
【0021】
図4図7に示されているものによれば、内燃エンジン4は、シリンダ8よりも高く配置されている駆動シャフト10に関して垂直に配向されている。換言すれば、内燃エンジン4は、従来の配置に対して「逆さまに」配置されており、それによりシリンダ8は最上部にあり、駆動シャフト10は底部にある。したがって、シリンダ8の天井を形成するヘッド12はクランクケース7の下に配置されており、内燃エンジン4の最下部を表す。
【0022】
図4図5および図6に示されているように、内燃エンジン4は、外部環境からの空気をシリンダ8内へ引き込む吸気システム13を含み、シリンダ8からの排気ガスを外部環境内へ吹き込む排気システム14を含む。
【0023】
図2および図3に示されているように、自動車1は、内燃エンジン4の駆動シャフト10を4つの駆動輪2および3に接続する変速機システム15を含む。変速機システム15は、内燃エンジン4の駆動シャフト10と後部駆動輪3との間に置かれているデュアルクラッチギアボックス16を含み、長手方向に配向されており、(図4図5および図6に最もよく示されているように)内燃エンジン4の後ろに配置されている。
【0024】
図8図11に示されているように、ギアボックス16は、駆動シャフト10によって回転させられるバスケット17と、バスケット17内に並んで含有されており、バスケット17から動きを取る2つのクラッチと、を含む。さらに、ギアボックス16は、互いに同軸であり、一方を他方の中に挿入し、かつ対応するクラッチに各々接続されており、対応するクラッチから動きを受ける2つのプライマリシャフト18を含む。各クラッチが、バスケット17と一体になっている駆動ディスク(したがって、それらは、常に、バスケット17が拘束されている駆動シャフト10と一緒に回転する)と、駆動ディスクが組み入れられておりかつ対応するプライマリシャフト18と一体になっている被駆動ディスク(したがってそれらは、常に、対応するプライマリシャフト18と一緒に回転する)と、を含む。
【0025】
デュアルクラッチギアボックス16は、駆動輪2および3に動きを伝達する単一のセカンダリシャフト19を含み、代替的な等価の実施形態によれば、デュアルクラッチギアボックス16は、駆動輪2および3に動きを代替的に伝達する2つのセカンダリシャフト19を含む。ギアボックス16は複数のギアと各プライマリシャフト18とを有し、セカンダリシャフト19は複数のギア機構によって互いに機械的に連結されており、その各々はそれぞれのギアを画定し、プライマリシャフト18上に取り付けられているプライマリ歯車と、セカンダリシャフト19上に取り付けられているセカンダリ歯車と、を含む。各プライマリ歯車は、それぞれのプライマリシャフト18にスプライン結合されており、常に、プライマリシャフト18自体と一体的に回転し、それぞれのセカンダリ歯車と永続的に噛み合っている。他方、各セカンダリ歯車はセカンダリシャフト19上に遊休的に取り付けられている。さらに、ギアボックス16は、デュアルシンクロナイザを含み、その各々はセカンダリシャフト19と同軸に取り付けられており、2つのセカンダリ歯車間に配置されており、2つのそれぞれのセカンダリ歯車をセカンダリシャフト19に交互に係合させる(すなわち、2つのそれぞれのセカンダリ歯車を交互にセカンダリシャフト19と角度的に一体にさせる)ように始動されるようになされている。換言すれば、各シンクロナイザは、一方のセカンダリ歯車をセカンダリシャフト19に係合させるように一方の方向に動かされ得るか、またはそれは、他方のセカンダリ歯車をセカンダリシャフト19に係合させるように他方の方向に動かされ得る。
【0026】
添付の図に示されている好適な実施形態によれば、ギアボックス16のプライマリシャフト18は内燃エンジン4の駆動シャフト10と同軸であり、すなわち、内燃エンジン4はギアボックス16と一直線になっている。
【0027】
図4図5および図6に示されているように、ギアボックス16は内燃エンジン4の駆動シャフト10に直接接続されており、内燃エンジン4と一直線になっており、内燃エンジン4の後ろに配置されている。具体的には、ギアボックス16は内燃エンジン4のエンジンブロックの上部と垂直に揃っている。すなわち、ギアボックス16はクランクケース7の上部と垂直に揃っている。
【0028】
図4図5および図6に示されているように、自動車1は、(やはり)デュアルクラッチギアボックス16を中に含有し、かつ格納体20の高さが前部から後部に向かって次第に減少するように後部に向かって先細の形状を有する格納体20を含む。すなわち、格納体20の前壁が格納体20の後壁よりも高い。詳細には、格納体20は、格納体20の先細形状に因り、水平に対して傾斜している底部に底壁21を有する。
【0029】
図2および図3に示されているように、変速機システム15は、ギアボックス16のセカンダリシャフト19から動きを受けかつ前輪2(すなわちフロントアクスル)と後輪3(すなわちリアアクスル)の両方に動きを伝達する遊星差動装置22を含む。換言すれば、遊星差動装置22は、(ギアボックス16の介在により)内燃エンジン4から来る動きを、前輪2(すなわちフロントアクスル)と後輪3(すなわちリアアクスル)との間で分割する。
【0030】
変速機システム15は、2つの後輪3と同軸の遊星差動装置23を含み、この遊星差動装置は遊星差動装置22と後輪3との間に間置されており、遊星差動装置22から動きを受け、(図1にも示されている)2つの対応するリアアクスルシャフト24によって、動きを後輪3に伝達し、リアアクスルシャフトの各々は後輪3と一体になっており、格納体20から横方向に出ている。
【0031】
換言すれば、遊星差動装置22は、ギアボックス16のセカンダリシャフト19から動きを受け、フロントアクスルとリアアクスルとの間で動きを分配し、一方、遊星差動装置23は遊星差動装置22から動きを受け、2つの後輪3間で動きを分配する。
【0032】
変速機システム15は、長手方向に配向されておりかつ(ギアボックス16および遊星差動装置22の介在により)後部位置に配置されている内燃エンジン4からの動きを前部駆動輪2に伝達するように構成されている変速機シャフト25を含む。すなわち、変速機シャフト25の後端部が(ギアボックス16のセカンダリシャフト19から動きを受ける)遊星差動装置22から動きを受け、変速機シャフト25の前端部が動きを前部駆動輪2に伝達する。
【0033】
図7に最もよく示されているように、変速機シャフト25は、(前述されているように、シリンダ18よりも高く配置されている駆動シャフト10と共に配向されている)内燃エンジン4の下に配置されている。詳細には、変速機シャフト25は2つのバンク11のシリンダ18間に配置されている。すなわちそれは、2つのバンク11のシリンダ18によって横方向に範囲を定められている空間内に配置されている。
【0034】
図2および図3に示されている実施形態によれば、変速機システム15は、変速機シャフト25から、前方位置に配置されている傘ギア27経由で、動きを受け、かつ2つの対応するフロントアクスルシャフト28(その各々は前輪2と一体になっている)経由で、動きを前輪2に伝達する遊星差動装置26を含む。
【0035】
図1に示されている代替的実施形態によれば、変速機システム15は、前部に配置されている遊星差動装置26を伴わず、変速機シャフト29はフロントアクスルに配置されており、横方向に(すなわち、変速機シャフト25に対して垂直に)配向されており、2つの前輪2と同軸であり、変速機シャフト25から、傘ギア27経由で、動きを受ける。2つの反対側端部における駆動シャフト29は、2つのフロントクラッチ30の介在によって、2つのフロントアクスルシャフト28に接続されている。2つのフロントクラッチ30の機能は、必要に応じて、2つの前輪2間の回転速度の差異を可能にすること、およびまた、動的トラクション制御(「トルクベクタリング」)を実施するために、各前輪2にかけられる駆動トルクを修正すること、である。
【0036】
添付の図に示されている実施形態では、変速機シャフト25は、ギアボックスのセカンダリシャフト19から、遊星差動装置22経由で、動きを受ける。他の図示されていない実施形態によれば、変速機シャフト25は、内燃エンジン4の駆動シャフト10(したがって、ギアボックス16の下流の代わりにギアボックス16の上流)から動きを直接受け、これらの図示されていない実施形態では明らかに、遊星差動装置22は、それが必要ないので、存在しない。これらの図示されていない実施形態では、2つの前輪2への駆動トルクの分配は、特許文献1および特許文献2に記載されているように実施され得るか、またはそれは、変速機シャフト25から動きを受けかつ動きを前輪2に伝達するトルクコンバータを使用して、実施され得る。
【0037】
図12に示されているように、2つの遊星差動装置22と23とは互いに同軸に配置されており、横方向に配置され、2つの後輪3の回転軸31と一致する同一の回転軸31を中心として回転する。すなわち、2つの後輪3は、横方向に(ギアボックス16のセカンダリシャフト19に対して垂直に)配置されており(配向されており)かつ2つの遊星差動装置22および23と同軸でもある回転軸31を中心として回転する。
【0038】
遊星差動装置22は、ギアボックス16のセカンダリシャフト19から動きを受けるリングギア(32)(すなわち、内歯を備えた歯車)と、少なくとも2つの遊星ギア34(すなわち外歯を備えた歯車)を支持しかつ動きを遊星差動装置23に伝達するキャリア33と、動きを変速機シャフト25に伝達する太陽ギア35(すなわち、外歯を備えた、中心に配置されている歯車)と、を含む。キャリア33は、太陽ギア35とリングギア32との間に間置されている2つ以上の遊星ギア34の枢動のフレームとしての機能を果たす構造物である。
【0039】
遊星差動装置23は、遊星差動装置22のキャリア33と一体になっており、キャリア33から動きを受けるリングギア36(すなわち内歯を備えた歯車)と、少なくとも2つの遊星ギア38(すなわち外歯を備えた歯車)を支持し、リアアクスルシャフト24と一体になっており、動きを後輪3に伝達するキャリア37と、他方のアクスルシャフト24と一体になっており、動きを他方の後輪3に伝達する太陽ギア39(すなわち外歯を備えた、中心に配置されている歯車)と、を含む。キャリア37は、太陽ギア39とリングギア36との間に間置されている2つ以上の遊星ギア38の枢動のフレームとしての機能を果たす構造物である。
【0040】
好適な実施形態によれば、遊星差動装置22は中心が中空であり、リアアクスルシャフト24の一方によって、左右に交差されている。さらに、一方の端部で遊星差動装置22のキャリア33と一体になっておりかつ反対側端部で遊星差動装置23のリングギア36と一体になっている(リアアクスルシャフト24の一方が通過する)中空接続シャフト40が存在する。接続シャフト40は、遊星差動装置22のリングギア32を通り抜けて形成されている(2つのリアアクスルシャフト24の一方も通過する)中心貫通孔を通過する。
【0041】
好適な実施形態によれば、遊星差動装置22のリングギア32は、ギアボックス16のセカンダリシャフト19から動きを受け、(長手方向に配向されている)遊星差動装置22のリングギア32の回転軸31に対して垂直な(横方向に配向されている)回転軸43を中心として回転する中間傘形歯車42と噛み合う(図8図11に示されている)外傘形歯41を有する。図8に最もよく示されているように、中間傘形歯車42は、ギアボックス16のセカンダリシャフト19から歯車45経由で動きを受け、(長手方向に配向されておりかつ回転軸43を中心として回転する)支持シャフト44上に取り付けられている。
【0042】
図10に最もよく示されている好適な実施形態によれば、変速機システム15は、遊星差動装置22の太陽ギア35と同軸でありかつ一体になっている変速機歯車46と、変速機歯車46と噛み合う変速機歯車47と、変速機歯車47を変速機シャフト25に接続する傘ギア48と、を含む。
【0043】
図12に最もよく示されている好適な実施形態によれば、変速機歯車46を遊星差動装置22の太陽ギア35に接続する(すなわち、一体化する)(リアアクスルシャフト24の一方が通過する)中空接続シャフト49が存在する。接続シャフト49は、遊星差動装置22のリングギア32を通り抜けて形成されている(2つのリアアクスルシャフト24の一方も通過する)中心貫通孔を通過する。
【0044】
図6に示されているように、自動車1は、路面と対向する後部空力抽出器(50)を含み、内燃エンジン4のエンジンブロック(クランクケース7とシリンダヘッド12とを含む)の後壁で始まり、ギアボックス16の下に(すなわちギアボックス16が中に配置されている格納体20の下に)配置されている。好適な実施形態によれば、(内部にギアボックス16が配置されている)格納体20の底壁21は後部空力抽出器50と同一の傾斜を有する。すなわち格納体20の底壁21は、それと同一の傾斜を有する後部空力抽出器50の形状を再生させる。このようにして、後部空力抽出器50は、ギアボックス16の真下の(すなわちギアボックス16が中に配置されている格納体20の下の)利用可能な空間全体を活用する。
【0045】
内燃エンジン4が水素によって動力供給されないが液体燃料によって動力供給される実施形態では、液体燃料タンクは、水素タンク15および16よりもずっと小さい体積を有し、圧力下にない場合、(水素タンク15および16が何百バールもの圧力に耐えなければならずかつしたがって円筒形状または球形状を有さなければならない一方)他の非規則的に成形された容積内に配置される「複雑な」形状を有し得る。したがって、本実施形態では、内燃エンジン4の上方の(大)容積が自由であり、本体に特定の形状を与えて空力効率を最適化するのに使用され得る。
【0046】
本明細書において説明されている実施形態は組み合わせられることが可能である。
【0047】
前述されている自動車1は多くの利点を有する。
【0048】
第1に、前述されている自動車1は、最適な質量分布を有して実施される四輪駆動を可能にする。すなわち、前述されている自動車1は、その重心を中心位置に(2つのアクスル間に)かつ非常に低く(すなわち路面に近接して)有する。この結果は、(図7に明確に示されているように、)内燃エンジン4の下を通過し、2つのバンク11のシリンダ8間の空間を活用する変速機シャフト25により達成される。これにより、(変速機シャフト25用の余地を作るために、いかなる方法でも内燃エンジン4の位置を上げる必要なく)内燃エンジン4の重心を非常に低く設定することが可能になる。したがって、前述されている自動車1では、軸距の長さ(すなわちフロントアクスルとリアアクスルとの間の距離)を最小限にしかつ自動車1の重心を中心の非常に低い位置に配置するために、駆動システムの要素全ての特に好ましい(すなわち非常に機能的であると同時にコンパクトな)配置を達成することが可能である。
【0049】
さらに、前述されている自動車1は、極度に大きい後部空力シュート(aerodynamic chute)(抽出器)の構築を可能にし、したがって、いかなる抵抗の不利益(penalization of drag)もなく非常に高い空力負荷の生成を可能にする。前述されている自動車1では、内燃エンジン4が中心/後部位置に配置されて(したがって、フロントアクスルとリアアクスルとの間に最適な質量分布を有して)いても、空力抽出器50は非常に大きいサイズを有し(すなわちそれはドラッグの軽度増大のために高い空力負荷を生成し)、同時に、軸距は比較的短い(すなわち、自動車1は極度に高性能の動的挙動を示す)。これは、とりわけ、内燃エンジン4を駆動シャフト10と共により高く配置することによって達成される。また、これは、ギアボックス16がより高く配置されること、したがって自動車1の後部の下部の空間を解放して、非常に大きい空力抽出器50を収容することを可能にする。
【0050】
最後に、内燃エンジン4のシリンダ8の「V」形配置は、「高温」区域(すなわちシリンダ8に特に近接した排気システム14)が内燃エンジン4の底部に(内燃エンジン4の下に)かつしたがって内燃エンジン4の上方に配置されている水素タンク16から離して配置されること(およびしたがって水素タンク16が排気システム14から熱を受けないこと)を可能にする。さらに、内燃エンジン4のシリンダ8の「V」形配置は、「冷温」区域(すなわち吸気システム13)が(内燃エンジン4の上方に)内燃エンジン4の最上部にかつしたがって内燃エンジン4の上方に配置されている水素タンク16に近接して配置されることを可能にする(しかし、吸気システム13の温度は本質的に周囲温度であり、したがって水素タンク16を加熱することはできない)。換言すれば、シリンダ8の「V」形配置では、「高温」区域(すなわちシリンダ8に特に近接した排気システム14)が水素タンク16から遠く離れているので、シリンダ8の「V」形配置は、シリンダ8の直列配置と比較して、かなり改善された熱管理を可能にする。
【符号の説明】
【0051】
1 自動車
2 前輪、前部駆動輪
3 後輪、後部駆動輪
4 内燃エンジン
5 乗員室
6 タンク
7 クランクケース
8 シリンダ
9 ピストン
10 駆動シャフト
11 バンク
12 シリンダヘッド、ヘッド
13 吸気システム
14 排気システム
15 変速機システム
16 ギアボックス、デュアルクラッチギアボックス、水素タンク
17 バスケット
18 プライマリシャフト
19 セカンダリシャフト
20 格納体
21 底壁
22 第1の遊星差動装置
23 第2の遊星差動装置
24 リアアクスルシャフト、第2のアクスルシャフト
25 変速機シャフト
26 遊星差動装置
27 第2の傘ギア
28 フロントアクスルシャフト、第1のアクスルシャフト
29 変速機シャフト
30 フロントクラッチ
31 回転軸
32 第1のリングギア
33 第1のキャリア
34 第1の遊星ギア
35 第1の太陽ギア
36 第2のリングギア
37 第2のキャリア
38 第2の遊星ギア
39 第2の太陽ギア
40 中空接続シャフト
41 外傘形歯
42 中間傘形歯車
43 回転軸
44 支持シャフト
45 歯車
46 第1の変速機歯車
47 第2の変速機歯車
48 第1の傘ギア
49 接続シャフト
50 後部空力抽出器
L 長手方向
T 横方向
V 垂直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】