(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161012
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】コーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎製造方法
(51)【国際特許分類】
A23N 12/08 20060101AFI20241108BHJP
A23F 5/04 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A23N12/08 A
A23F5/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074936
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2023075969
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390006600
【氏名又は名称】ユーシーシー上島珈琲株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595080887
【氏名又は名称】株式会社ヒートエナジーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】小和瀬 一圭
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 盛司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】尾原 英
(72)【発明者】
【氏名】萩原 和徳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
【テーマコード(参考)】
4B027
4B061
【Fターム(参考)】
4B027FQ02
4B027FR20
4B061AA10
4B061BA09
4B061CD05
4B061CD17
(57)【要約】
【課題】水素を燃料とするバーナを使用しつつ、従来の焙煎装置と同等の味覚を再現することができる、コーヒー豆焙煎装置を提供する。
【解決手段】コーヒー豆焙煎装置1は、水素および炭化水素系燃料を用いる水素混焼バーナ10と、前記水素混焼バーナ10で発生した熱風を焙煎の熱源に使用する焙煎機20と、コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、前記水素混焼バーナ10を制御する制御装置30とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素および炭化水素系燃料を用い、ターンダウン比1:10以上の調整可能な水素混焼バーナと、
前記水素混焼バーナで発生した熱風を焙煎の熱源に使用する焙煎機と、
コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、前記水素混焼バーナを制御する制御装置と、
前記水素混焼バーナで発生した熱風の温度を測定する温度測定装置を備え、
前記制御装置は、
前記温度測定装置で測定された測定温度が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように前記水素混焼バーナを制御する、
コーヒー豆焙煎装置。
【請求項2】
前記水素混焼バーナは、
バーナ本体と、
バーナ先端部と、
前記バーナ本体の内部に配置され、ノズル先端が断面円状の水素を供給する水素供給ノズルと、
前記バーナ本体の内部に配置され、前記水素供給ノズルの外側に設けられる断面リング状の酸化剤を供給する酸化剤供給ノズルと、
前記バーナ本体の内部に配置され、前記酸化剤供給ノズルの外側に設けられる断面リング状の炭化水素系燃料を供給する燃料供給ノズルと、
所定圧力の水素源と、水素配管と、水素配管に設けられる弁と、
所定圧力の酸化剤源と、酸化剤配管と、酸化剤配管に設けられる弁と、
所定圧力の炭化水素系燃料源と、炭化水素系燃料配管と、炭化水素系燃料配管に設けられる弁と、
を備え、
前記制御装置は、
前記水素配管に設けられる弁、酸化剤配管に設けられる弁、炭化水素系燃料配管に設けられる弁のうち、1種以上の弁の弁開度を調節することで、燃焼力を制御する、
請求項1に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項3】
前記水素混焼バーナは、
前記バーナ先端部から熱風を、前記酸化剤配管へ循環するための循環配管と、循環配管に設けられる吸引ポンプと、循環配管に設けられる弁と、
を備え、
前記制御装置は、
前記循環配管に設けられる吸引ポンプの駆動と、前記循環配管に設けられる弁の弁開度を調節することで、熱風の循環量を制御する、
請求項2に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項4】
前記コーヒー豆の焙煎プロファイルは、味覚向上、香り向上および/または健康成分の増強を実現できる焙煎時の製品温度カーブとなるように設定されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項5】
水素混焼バーナで発生した熱風でコーヒー豆の焙煎をするコーヒー豆焙煎製造方法であって、
コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、ターンダウン比1:10以上の調整可能な水素混焼バーナを制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップは、
温度測定装置で測定された熱風の測定温度が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように水素混焼バーナを制御し、
前記コーヒー豆の焙煎プロファイルは、味覚向上、香り向上および/または健康成分の増強を実現できる焙煎時の製品温度カーブとなるように設定されている、
コーヒー豆焙煎製造方法。
【請求項6】
前記制御ステップは、
温度測定装置で測定された測定温度(PV_t)が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように水素混焼バーナをフィードバック制御し、
水素配管に設けられる弁、酸化剤配管に設けられる弁、炭化水素系燃料に設けられる弁のうち、1種以上の弁の弁開度を調節することで、燃焼力(火力)を制御し、および/または、
循環配管に設けられる吸引ポンプの駆動と、循環配管に設けられる弁の弁開度を調節することで、廃ガスの循環量を制御する、
請求項5に記載のコーヒー豆焙煎製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコーヒー豆焙煎装置の熱風を発生するための熱源として、例えば、天然ガス、液化石油ガス、木材などを燃焼するバーナや、電気ヒータ、ハロゲン、赤外線、マイクロ波などの熱源などが挙げられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
バーナとしては、例えば、一種類の燃料と酸化剤をそれぞれ供給するノズルを備えるバーナと、複数種類の燃料(水素、都市ガス)と酸化剤(空気)とをそれぞれ供給するノズルを備える混焼バーナとがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-537262号公報
【特許文献2】特許第6173395号
【特許文献3】特許第7064474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の熱風発生の熱源として都市ガスなどの炭化水素系燃料を用いたバーナでは、必然的に二酸化炭素が発生する。そのため、温暖化対策として、コーヒー豆の焙煎装置においても、二酸化炭素の発生を抑制することが期待されている。
また、上述の混焼バーナでは、水素を利用することを開示しているものの、コーヒー豆の焙煎装置で使用することについては示されてはいない。特に、コーヒー豆の焙煎装置で使用するためには、従来の焙煎装置と同等の味覚を再現する必要がある。
【0006】
本開示の第一の目的は、水素を燃料とするバーナを使用しつつ、従来の焙煎装置と同等の味覚を再現することができる、コーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎製造方法を提供することである。
また、第二の目的は、熱風発生時に二酸化炭素フリーを実現できる、コーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎製造方法を提供することである。
また、第三の目的は、混焼バーナにおいて水素および炭化水素系燃料の混合比を自由に設定できる、コーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎製造方法を提供することである。
また、第四の目的は、水素バーナにおいて高いターンダウン比を用いることで、新規な焙煎プロファイルを設計できる、コーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎製造方法を提供することである。
また、第五の目的は、水素バーナにおいて高いターンダウン比を用いることで、味覚の向上または、焙煎後の健康成分の増強を可能とする、コーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
コーヒー豆焙煎装置(1)は、
水素および炭化水素系燃料を用い、ターンダウン比1:10以上の調整可能な水素混焼バーナ(10)と、
前記水素混焼バーナで発生した熱風を焙煎の熱源に使用する焙煎機(20)と、
コーヒー豆の焙煎プロファイル(焙煎における熱風温度設定値データ(SV_t))に応じて、前記水素混焼バーナを制御する制御装置(30)と、
を備える。
「炭化水素系燃料」は、例えば、都市ガス、プロパンガス、エタンガスなどが挙げられる。
「水素混焼バーナ」は、水素燃料のみを使用してもよい。
「焙煎機」は、熱風式焙煎機、半熱風式焙煎機であってもよい。
「制御装置」は、焙煎機の制御および/または水素混焼バーナの制御を実行していてもよい。
【0008】
前記コーヒー豆焙煎装置(1)は、
前記水素混焼バーナ(10)で発生した熱風の温度を測定する温度測定装置(40)を備え、
前記制御装置(30)は、
前記温度測定装置(40)で測定された測定温度(PV_t)が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように前記水素混焼バーナ(10)をフィードバック制御してもよい。
1つ以上の前記温度測定装置(40)は、任意の焙煎前の熱風供給配管、焙煎機内部配管、焙煎使用後の熱風排出配管に設けられていてもよい。
【0009】
前記コーヒー豆焙煎装置(1)は、
焙煎中のコーヒー豆の温度(あるいは周辺雰囲気温度)を測定する温度測定手段を備えていてもよい。
温度測定手段は、コーヒー豆に接触して温度を測定する温度計、非接触式の温度計でもよい。
【0010】
前記焙煎プロファイルは、上記装置(1)あるいは制御装置(30)のメモリに保存されていてもよい。焙煎プロファイルは、外部装置から送られてきてもよい。上記装置(1)は、焙煎プロファイルを設定するプロファイル設定部を有していてもよい。
【0011】
前記焙煎プロファイルは、コーヒーの味覚向上、香り向上、健康成分の増強を実現できる焙煎時の製品温度カーブとなるように設定される。本発明では、従来の天然ガス100%バーナでは実現できない製品温度カーブを実現できる。
製品温度カーブは、下に凸の曲線であって、焙煎初期、焙煎中期、焙煎後期の3分割したときに、焙煎初期において180℃以上で維持する期間を有し、焙煎初期から徐々に温度減少させて焙煎中期に下に凸の最小値を有し、焙煎中期から焙煎後期にかけて徐々に温度を高くする構成である。例えば、以下の製品温度カーブがある。
(1)焙煎中期から焙煎後期にかけての温度上昇傾き(増加率)に比べ、焙煎後期の後半における温度上昇傾き(増加率)を小さくする期間を有する。
(2)焙煎初期において、焙煎中期の下に凸の最小値に向かう温度減少の傾きが、天然ガスバーナで実現できる温度減少傾き(減少率)よりも高くする期間を有する。
(3)味覚、香りを維持し、健康成分の熱分解を抑制するように、下に凸の最小値前の温度減少率、下に凸の最小値の温度、下に凸の最小値以後の温度増加率を設定する。
製品温度は、焙煎中の豆に直接接触する位置に設けられた温度計で測定された値でもよく、非接触式温度計で焙煎中の豆を測定した値でもよい。
(4)焙煎プロファイルにおいて、焙煎初期の最大温度は、焙煎後期の最大温度よりも小さい、同等、大きく設定できる。
【0012】
前記水素混焼バーナ(10)は、
バーナ本体(11)と、
バーナ先端部(12)と、
前記バーナ本体(11)の内部に配置され、ノズル先端が断面円状の水素を供給する水素供給ノズル(13)と、
前記バーナ本体(11)の内部に配置され、前記水素供給ノズルの外側に設けられる断面リング状の酸化剤(例えば、空気、酸素)を供給する酸化剤供給ノズル(14)と、
前記バーナ本体の内部に配置され、前記酸化剤供給ノズルの外側に設けられる断面リング状の炭化水素系燃料を供給する燃料供給ノズル(15)と、
を備えていてもよい。
前記水素混焼バーナ(10)は、
所定圧力の水素源(S2)(例えば、本管、ボンベ、シリンダ)と、水素配管(L2)と、水素配管(L2)に設けられる弁(V2)(例えば、調節弁、仕切弁)と、任意のガスフローメータと、任意のガス圧計と、
所定圧力の酸化剤源(S1)(例えば、本管、ボンベ、シリンダ、圧送ポンプ、コンプレッサー)と、酸化剤配管(L1)と、酸化剤配管(L1)に設けられる弁(V1)(例えば、調節弁、仕切弁)と、任意のガスフローメータと、任意のガス圧計と、
所定圧力の炭化水素系燃料源(S3)(例えば、本管、ボンベ、シリンダ)と、炭化水素系燃料配管(L3)と、炭化水素系燃料配管(L3)に設けられる弁(V3)(例えば、調節弁、仕切弁)と、任意のガスフローメータと、任意のガス圧計と、
を備えていてもよい。
前記制御装置(30)は、
前記水素配管に設けられる弁、前記酸化剤配管に設けられる弁、前記炭化水素系燃料配管に設けられる弁のうち、1種以上の弁の弁開度を調節することで、燃焼力(火力)を制御(混焼比率を制御)してもよい。前記制御装置(30)は、燃焼力(火力)の増減に応じて、弁開度を比例制御してもよい。
【0013】
前記水素混焼バーナ(10)は、
前記バーナ先端部から熱風(廃ガス)を、前記酸化剤配管(L1)へ循環するための循環配管(L10)と、循環配管(L10)に設けられる吸引ポンプ(P10)と、循環配管(L10)に設けられる弁(例えば、調節弁、仕切弁)と、任意のガスフローメータと、任意のガス圧計と、
を備えていてもよい。
前記制御装置(30)は、
前記循環配管(L10)に設けられる吸引ポンプ(P10)の駆動と、前記循環配管(L10)に設けられる弁(V10)(例えば、調節弁、仕切弁)の弁開度を調節することで、熱風(廃ガス)の循環量を制御してもよい。
【0014】
前記コーヒー豆焙煎装置(1)は、
前記焙煎プロファイルを記憶する記憶装置(31)を備えていてもよい。
【0015】
コーヒー豆焙煎製造方法は、
ターンダウン比1:10以上の調整可能な水素混焼バーナで発生した熱風でコーヒー豆の焙煎をするコーヒー豆焙煎製造方法であって、
コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、水素混焼バーナを制御する制御ステップを含む。
前記制御ステップは、
温度測定装置で測定された熱風の測定温度(PV_t)が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように水素混焼バーナをフィードバック制御してもよい。
前記制御ステップは、
水素配管に設けられる弁、酸化剤配管に設けられる弁、炭化水素系燃料に設けられる弁のうち、1種以上の弁の弁開度を調節することで、燃焼力(火力)を制御(混焼比率を制御)してもよい。
前記制御ステップは、
循環配管に設けられる吸引ポンプの駆動と、循環配管に設けられる弁の弁開度を調節することで、廃ガスの循環量を制御してもよい。
【0016】
「コーヒー豆」は、コーヒー豆の産地(銘柄)および種類を問わず、すべてのコーヒー豆を含む。
【0017】
前記制御装置は、メモリ、プロセッサー、ソフトウエアプログラムを有する情報処理装置(例えば、コンピュータ、サーバ)や、専用回路、ファームウエアなどで構成してもよい。情報処理装置は、オンプレミスまたはクラウドのいずか一方、あるいは両方の組み合わせであってもよい。
【0018】
(効果)
(1)水素を燃料とするバーナを使用することで、従来の天然ガスなどの焙煎装置と同等の味覚を再現することができる。
(2)熱風発生時に二酸化炭素フリーを実現できる。
(3)混焼バーナにおいて水素および炭化水素系燃料の混合比を自由に設定できる。
(4)水素バーナにおいて高いターンダウン比を用いることができ、新規な焙煎プロファイルを設計できる。
(5)水素バーナにおいて高いターンダウン比を用いることができ、味覚の向上、香り、焙煎後の健康成分の増強を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1のコーヒー豆焙煎装置の一例を示す図である。
【
図3】混焼バーナの配管構成の一例を示す図である。
【
図4】製品温度カーブおよび焙煎プロファイルの一例を示す図である。
【
図5】実施例3の製品温度カーブおよび焙煎プロファイルの一例を示す図である。
【
図7】実施例4の製品温度カーブの一例を示す図である。
【
図8】実施例5の製品温度カーブの一例を示す図である。
【
図9】実施例6の製品温度カーブの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
図1に実施形態1のコーヒー豆焙煎装置1の機能の一例を示す。
図2に混焼バーナの構造の一例を示す。
図3に混焼バーナ―の配管構成の一例を示す。
図1から3は、構成および機能の一例を示しており、限定されるものではなく各種の構成の変更が可能である。
【0021】
コーヒー豆焙煎装置1は、水素混焼バーナ10、焙煎機20、制御装置30、記憶装置31、温度測定装置40を備える。
【0022】
水素混焼バーナ10は、水素および炭化水素系燃料を用い、ターンダウン比1:10以上の調整可能なバーナ機能を有する。炭化水素系燃料の供給を止め、水素燃料の供給のみも可能である。ターンダウン比1:10以上であるが、1:15、1:20が好ましい。本実施形態において、炭化水素系燃料は、圧縮天然ガスであるがこれに制限されない。水素燃料は0.1MPaの圧縮水素である。酸化剤は空気である。
【0023】
図2を参照しつつ水素混焼バーナ10の構造を説明する。水素混焼バーナ10は、バーナ本体11と、バーナ先端部12とを備える。バーナ先端部12はその先端に向かうほど開口面積が大きくなる。
バーナ本体11の内部には、ノズル先端が断面円状の水素を供給する水素供給ノズル13と、水素供給ノズル13の外側に設けられる断面リング状の空気を供給する酸化剤供給ノズル14と、酸化剤供給ノズル14の外側に設けられる断面リング状の圧縮天然ガスを供給する燃料供給ノズル15と、が形成されている。水素燃料と天然ガスを直接接触させるのではなく、酸化剤をその間に噴射させることで、各々の燃料に適した混合領域を形成する構造となっている。
【0024】
焙煎機20は、水素混焼バーナ10で発生した熱風を焙煎の熱源に使用する。本実施形態の焙煎機20は、ドラム式熱風焙煎機あるいは流動床式熱風焙煎機である。
制御装置30は、コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、水素混焼バーナ10を制御する。記憶装置31は、焙煎プロファイル311を記憶する。焙煎プロファイル311は、焙煎時間に応じた熱風温度設定値データ(SV_t)を含む。
【0025】
図3を参照しつつ水素混焼バーナ10の配管構成を説明する。水素混焼バーナ10は、0.1MPaの圧縮水素シリンダS2と、水素配管L2と、水素配管L2に設けられるフローメータ付き流量調節弁V2と、空気圧送ポンプPと、空気配管L1と、空気配管L1に設けられるフローメータ付き流量調節弁V1と、圧縮天然ガスシリンダS3と、天然ガス配管L3と、天然ガス配管L3に設けられるフローメータ付き流量調節弁V3と、を備える。
水素混焼バーナ10は、バーナ先端部12から熱風(廃ガス)を、空気配管L1へ循環するための循環配管L10と、循環配管L10に設けられる吸引ポンプP10と、循環配管L10に設けられるフローメータ付き流量調節弁と、を備える。
温度測定装置40は、焙煎前の熱風供給配管に設けられている。温度測定装置40は、水素混焼バーナ10で発生した熱風の温度を測定する。
水素混焼バーナ10からの熱風は、焙煎機20の流動床21へ送られる。
【0026】
水素混焼バーナ10のバーナ制御部101は、焙煎プロファイル311および制御装置30からの指令に対応して、燃焼を制御(燃料供給量、空気供給量を比例制御)できる。制御装置30は、温度測定装置40で測定された測定温度(PV_t)が、焙煎プロファイル311に対応するように水素混焼バーナ10のバーナ制御部101へ指令しフィードバック制御してもよい。
制御装置30は、直接あるいはバーナ制御部101へ指令することで、水素配管L2に設けられる流量調節弁V2、空気配管L1に設けられる流量調節弁V1、天然ガス配管L3に設けられる流量調節弁V3のうち、1種以上の流量調節弁の弁開度を調節することで、燃焼力(火力)を制御する。水素と天然ガスの供給量、空気量の各比率を制御できる。燃焼力(火力)の増減に応じて、各弁開度を比例制御できる。
制御装置30は、直接あるいはバーナ制御部101へ指令することで、循環配管L10に設けられる吸引ポンプP10の駆動と、循環配管L10に設けられる流量調節弁V10の弁開度を調節することで、熱風(廃ガス)の循環の開始停止、循環量を制御できる。燃焼力(火力)を下げるときに、循環を開始したり循環量を増加させて、バーナに供給される酸素濃度を低下させる制御を行える。また、これにより、NOx発生量を低減することもできる。
【0027】
本実施形態によれば、混焼バーナにおいて水素および炭化水素系燃料の混合比を自由に設定できる。水素バーナにおいて高いターンダウン比を用いることができ、新規な焙煎プロファイル(製品温度カーブ)を設計できる。水素バーナにおいて高いターンダウン比を用いることができ、味覚の向上、香りの向上、焙煎後の健康成分の増強を可能にできる。
「味覚」は、例えば、酸味、コク、苦味、香気(香り)などが挙げられる。香気は嗅覚を刺激するため、嗅覚の向上と言い換えてもよい。従来の炭化水素系燃料のバーナではできない、高いターンダウン比による新規な焙煎プロファイル(製品温度カーブにより、味覚成分の低下を抑制できる。
「健康成分」は、例えば、クロロゲン酸類、トリゴネリンなどが挙げられる。健康成分は高温で分解されることが知られていた。従来の炭化水素系燃料のバーナではできない、高いターンダウン比による新規な焙煎プロファイル(製品温度カーブ)により、健康成分の熱分解を抑制できる。
【0028】
(実施例1、2)
実施形態1における水素混焼バーナを使用した焙煎の実施例1、2と、通常の圧縮天然ガスバーナを使用した焙煎の比較例1について説明する。
コーヒー豆:5kg
焙煎時間:15分
使用熱源:水素 0.1MPa
:天然ガス 10kPa(0.01MPa)
混焼条件(実施例1):水素:天然ガス=50%:50%(熱量比である)
水素のみ(実施例2):水素100%
供給圧力:10kPa
【0029】
図4において、焙煎時の製品温度カーブおよび焙煎プロファイルの一例を示す。実施例1、2と比較例1のバーナにおける焙煎プロファイル(熱風温度設定条件)の一例を示す。実施例1を実線、実施例2を一点破線、比較例1を破線で示す。同じ製品温度カーブを実現するための、各焙煎プロファイルはそれぞれ異なっている。製品温度は、焙煎中の豆に直接接触する位置に設けられた温度計で測定された値である。
【0030】
(味覚評価)
実施例1、2と比較例1のそれぞれの味覚評価を行った。
抽出液の取得方法は以下の通りである。
抽出方法:ペーパードリップ法
抽出条件:コーヒー粉20g、注湯量320g、蒸らし時間20秒
官能評価
被験者:14名
抽出サンプルをブラインドにし、以下の官能評価基準に従って絶対評価を実施した(N=14)。5項目(酸味、苦味、渋味、濃厚感、後味)の味覚の強弱を9レベル(-4(非常に弱い)から+4(非常に強い)までで、中央値0を普通とする)で評価する。
表1の評価結果において、比較例1(天然ガス)の焙煎品を基準として有意差検定(t検定:有意水準5%)を行った。実施例1(混焼)、実施例2(水素専焼)のいずれでも、従来の燃料焙煎と同等の味覚を形成できた。
【0031】
【0032】
(焙煎度(L値)評価)
実施例1、2と比較例のそれぞれの焙煎度(L値)評価を行った。
焙煎度 : 測色計(日本電色工業(株)製 ZE-6000)
表2に焙煎度(L値)の測定結果を示す。いずれもL値20.2±0.1以内であり、同等の焙煎度だった。
【0033】
【0034】
(水素専用バーナ:実施例3)
実施形態1における水素混焼バーナにおいて、水素燃料のみを使用(以下、「水素専用バーナ」と呼ぶ。)して、従来の燃料バーナでは実行できない新しい焙煎コントロールを実施する。
水素専用バーナは、本実施形態ではターンダウン比が1:20であり、従来のターンダウン比1:5よりも大きい。従来の燃料よりも、燃焼力レベルを非常に低く設定できる。
【0035】
(条件)
コーヒー豆:5kg
焙煎時間:17分
使用熱源:水素 0.1MPa
水素のみ(実施例3):水素100%
水素のみ(参考例1):水素100%
比較例2 :天然ガス100%
供給圧力:10kPa
【0036】
図5において、焙煎時の製品温度カーブおよび焙煎プロファイルの一例を示す。実施例3における焙煎プロファイル(熱風温度設定条件)の一例を示す。実施例3を一点破線で示す。参考例1を実線で、比較例2を破線で示す。比較例2は、実施例3の製品温度カーブを近似させて設定した。ターンダウン比が異なるため、同じ製品温度カーブを設定できず、各焙煎プロファイルはそれぞれ大きく異なっている。
実施例3の製品温度カーブは、焙煎中期の下に凸の最小値以後の温度上昇傾きを比較例2のそれよりも小さくする期間を設け、味覚の向上を実現している。実施例3では、さらに、焙煎後期で変曲点を1つ有している。
【0037】
(味覚評価)
実施例3(水素専焼)と比較例2(天然ガス)と参考例1のそれぞれの味覚評価を行った。
抽出液の取得方法は以下の通りである。
抽出方法:ペーパードリップ法
抽出条件:コーヒー粉20g、注湯量320g、蒸らし時間20秒
(A)官能評価
被験者:14名
抽出サンプルをブラインドにし、以下の官能評価基準に従って絶対評価を実施した(N=14)。5項目の味覚の強弱を9レベル(-4(非常に弱い)から+4(非常に強い)までで、中央値0を普通とする)で評価する。
表3の評価結果において、参考例1の焙煎品を基準として有意差検定(t検定:有意水準5%)を行った。
【0038】
【0039】
(焙煎度(L値)評価)
参考例1、実施例3と比較例2のそれぞれの焙煎度(L値)評価を行った。
焙煎度 : 測色計(日本電色工業(株)製 ZE-6000)
表4に焙煎度(L値)の測定結果を示す。いずれもL値20.9±0.3以内であり、同等の焙煎度だった。
【0040】
【0041】
(C)味覚センサ
分析装置:インテリジェントセンサーテクノロジー社製の味認識装置(型名:SA402B)
抽出液を室温(20℃)まで冷却し、味覚センサSA402Bを用いて『CA0(酸味)』『CT0(塩味)』『C00(苦味雑味)』『AE1(渋味刺激)』『AAE(旨味)』の5本のセンサを使用してコーヒーの味覚(『酸味』、『苦味』、『渋味』、『濃厚感』、『苦味の余韻』、『旨味コク』)を測定した。
各分析バッチで、コーヒーの濃度を示すBrix値を1.05、pHを5.70に調整した容器詰めブラックコーヒー抽出液を基準品として測定し、各コーヒーの分析結果は基準品との差分を味覚データとして用いた。
参考例1の味覚数値を基準「0」とし、基準との差分をレーダーチャート(
図6)に示した。
味覚センサによっても、実施例3(水素専焼)において、酸味強度が強いことを確認した。
実施例3(水素専用)では、従来の燃料焙煎では実現できない、味覚を形成できた。
【0042】
(実施例4:香り向上)
(条件)
コーヒー豆:5kg
焙煎時間:12分
使用熱源:水素 0.1MPa
実施例4 :水素100%
比較例4 :天然ガス100%
参考例4 :天然ガス100%(標準焙煎)
供給圧力:10kPa
【0043】
図7において、焙煎時の製品温度カーブの一例を示す。実施例4を一点鎖線、参考例4を実線、比較例4を破線で示す。参考例4は、標準の焙煎温度カーブである。実施例4の製品温度カーブは、焙煎初期で高火力による高温度期間を有し、焙煎後期の後半に温度上昇傾きを比較例3のそれよりも小さくする期間を設けて、香りの向上を実現した。比較例4の焙煎プロファイルを、実施例4の製品温度カーブに近づけるように設定したが、実施例4のように焙煎後期の後半に温度上昇傾きを小さくすることができなかった。
【0044】
(香気)
実施例4(水素専焼)と、参考例4(標準)、比較例4(天然ガス)のそれぞれのコーヒー粉の香り測定を行った。コーヒー粉の香り測定の方法は以下の通りである。
[ガスクロマトグラフィーによる香気成分の測定]
コーヒー液に含まれる香気成分量は、ガスクロマトグラフィーにより以下の条件で分析し、ピークの総面積を総香気量として算出した。
(a)測定試料の調整
各コーヒー粉3gをバイアル瓶に採取し、密栓した。密栓したバイアル瓶を、ガスクロマトグラフィー用オートサンプラーHS-20NXにて80℃で30分間加温し、その気相をガスクロマトグラフィーに導入し、分析を行った。
(b)測定条件
測定装置:島津製作所製ガスクロマトグラフィー GC-2030
カラム:ジーエルサイエンス(株)製TC-WAX(Φ0.32mm×60m DF 0.50μm)
キャリヤーガス:ヘリウム
カラム流量:3.52ml/分
カラム温度:40℃・0min→55℃・1min(5℃/minにて昇温)→80℃・1min(10℃/minにて昇温)→120℃・1min(12℃/minにて昇温)→180℃・1min(15℃/minにて昇温)→215℃・1min(15℃/minにて昇温)
検出器:FID(検出器温度240℃)
総香気量の測定結果を表5に示す。(基準の総香気量を「100」として表示する)実施例4は、参考例4(標準)よりも総香気量が12.6%高く、天然ガスバーナに比べ、水素バーナによって香りを増加できたことを確認できた。L値は、上記と同じ測定方法である。
【0045】
【0046】
(実施例5:クロロゲン酸類の増加)
(条件)
コーヒー豆:5kg
焙煎時間:17分
使用熱源:水素 0.1MPa
実施例5 :水素100%
比較例5 :天然ガス100%
参考例5 :天然ガス100%(標準焙煎)
供給圧力:10kPa
【0047】
図8において、焙煎時の製品温度カーブの一例を示す。実施例5を四角プロット線、参考例5を丸プロット線、比較例5を三角プロット線で示す。参考例5は、標準の焙煎温度カーブである。実施例5の製品温度カーブは、焙煎初期で、温度減少率を大きくして、低い温度期間領域を有して焙煎初期にやさしく熱をかける。下に凸の最小値も標準よりも低い温度とし、焙煎後期の後半、標準と同じ温度まで上昇させる。比較例5の焙煎プロファイルを、実施例5の製品温度カーブに近づけるように設定したが、実施例5のような製品温度カーブを実現することができなかった。
【0048】
(クロロゲン酸類量)
実施例5(水素専焼)と、参考例5(標準)、比較例5(天然ガス)のそれぞれのクロロゲン酸類量、総香気量を測定した。「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸(3-CQA)、4-カフェオイルキナ酸(4-CQA)及び5-カフェオイルキナ酸(5-CQA)等のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルロイルキナ酸(3-FQA)、4-フェルロイルキナ酸(4-FQA)及び5-フェルロイルキナ酸(5-FQA)等のモノフェルロイルキナ酸と、3,4-ジカフェオイルキナ酸(3,4-diCQA)、3,5-ジカフェオイルキナ酸(3,5-diCQA)及び4,5-ジカフェオイルキナ酸(4,5-diCQA)の総称である。
【0049】
抽出液の取得方法は以下の通りである。
抽出方法:ペーパードリップ法
抽出条件:コーヒー粉20g、注湯量320g、蒸らし時間20秒
得られた抽出液を室温(20℃)まで冷却し、以下の分析条件で高速液体クロマトグラフ法を用いてクロロゲン酸類量を測定した。
カラム:Inertsil(R) ODS-3(粒子径:5μm,内径:4.6mm,長さ:150mm)
カラムオーブン温度:35℃
移動相:A液 30 mg/L HEDP含有水-アセトニトリル-酢酸(1000:50:3,v/v/v)
B液 アセトニトリル
C液 メタノール
流量:0.8mL/min
サンプル注入量:10μL
検出波長:324nm
グラジエント条件:表6に示す。
【0050】
【0051】
測定された9種のクロロゲン酸類の面積値から5-カフェオイルキナ酸を標準物質とし作成した検量線により,5-カフェオイルキナ酸(5-CQA)換算の3-CQA,4-CQA,5-CQA,3-FQA,4-FQA,5-FQA,3,4-diCQA,3,5-diCQA,4,5-diCQA の濃度(μg/mL)を算出する.3-CQA,4-CQA,3-FQA,4-FQA,5-FQA,3,4-diCQA,3,5-diCQA,4,5-diCQA について,(式1)により各クロロゲン酸類(CGA)の濃度(μg/mL)に換算する。
(式1):
CGA(μg/mL)=[5-CQA換算のCGA濃度(μg/mL)]×(ε5-CQA/M5-CQA)×(MCGA/εCGA)
ここでCGAは3-CQA,4-CQA,3-FQA,4-FQA,5-FQA,3,4-diCQA,3,5-diCQA,4,5-diCQAのいずれかを表す。εCGAは各クロロゲン酸類のモル吸光係数を表し,それぞれの値は以下の通りである。
ε3-CQA=1.84×10-4(L/(mol・cm)),
ε4-CQA=1.80×10-4(L/(mol・cm)),
ε5-CQA=1.95×10-4(L/(mol・cm)),
ε3-FQA=1.90×10-4(L/(mol・cm)),
ε4-FQA=1.95×10-4(L/(mol・cm)),
ε5-FQA=1.93×10-4(L/(mol・cm)),
ε3,4-diCQA=3.18×10-4(L/(mol・cm)),
ε3,5-diCQA=3.16×10-4(L/(mol・cm)),
ε4,5-diCQA=3.32×10-4(L/(mol・cm))
【0052】
また、MCGAは各クロロゲン酸類の分子量を表し,それぞれの値は以下の通りである。
M3-CQA=354.31,
M4-CQA=354.31,
M5-CQA=354.31,
M3-FQA=368.34,
M4-FQA=368.34,
M5-FQA=368.34,
M3,4-diCQA=516.45,
M3,5-diCQA=516.45,
M4,5-diCQA=516.45
【0053】
クロロゲン酸類量の測定結果を表7に示す(基準のクロロゲン酸類量を「100」として表示する)(N=2の平均)。実施例5は、参考例5(標準)よりもクロロゲン酸類量が13.6%高く、天然ガスバーナに比べ、水素バーナによってクロロゲン酸類量を増加できたことを確認できた。L値は、上記と同じ測定方法である。
【0054】
【0055】
(実施例6:トリゴネリンの増加)
(条件)
コーヒー豆:5kg
焙煎時間:16分
使用熱源:水素 0.1MPa
実施例6 :水素100%
比較例6 :天然ガス100%
参考例6 :天然ガス100%(標準焙煎)
供給圧力:10kPa
【0056】
図9において、焙煎時の製品温度カーブの一例を示す。実施例6を四角プロット線、参考例6を丸プロット線、比較例6を三角プロット線で示す。参考例6は、標準の焙煎温度カーブである。実施例6の製品温度カーブは、焙煎中期の下に凸の最小値の後の焙煎後期において変曲点を1つ有するように温度上昇カーブを設定し、トリゴネリンの分解を抑制できた。比較例6の焙煎プロファイルを、実施例6の製品温度カーブに近づけるように設定したが、実施例6のような製品温度カーブを実現することができなかった。
【0057】
(トリゴネリン)
実施例6(水素専焼)と、参考例6(標準)、比較例6(天然ガス)のそれぞれのトリゴネリン量を測定した。
抽出液の取得方法は以下の通りである。
抽出方法:ペーパードリップ法
抽出条件:コーヒー粉20g、注湯量320g、蒸らし時間20秒
得られた抽出液を室温(20℃)まで冷却し、以下の分析条件で高速液体クロマトグラフ法を用いてトリゴネリン量を測定した。
カラム:CAPCELL PAK C18 AQ (粒子径:3μm,内径:4.6mm,長さ:250mm)
カラムオーブン温度:35℃
移動相:A液 0.005mol/L 過塩素酸含有水
:B液 アセトニトリル
流量:0.5mL/min
サンプル注入量:10μL
検出波長:264nm
グラジエント条件:表8に示す。
【0058】
【0059】
測定されたトリゴネリンの面積値からトリゴネリン標準溶液を標準物質とし作成した検量線によりトリゴネリン量を算出する。トリゴネリン標準溶液は(式2)より,分子量換算でトリゴネリンとして200mgとなるよう,標準品であるトリゴネリン塩酸塩(Sigma社)253.2mgを超純水に溶解し,200mLに定容したものをトリゴネリン標準溶液(100mg/100mL)とする.
(式2):
トリゴネリン量(mg)=トリゴネリン塩酸塩量(mg)×(MT)/(MTHC)
※MT,MTHCはそれぞれトリゴネリン,トリゴネリン塩酸塩の分子量を表し,分子量は以下の通りである。
MT=137.14
MTHC=173.60
【0060】
トリゴネリン量の測定結果を表9に示す(基準のトリゴネリン量を「100」として表示する)(N=2の平均)。実施例6は、参考例6(標準)よりもトリゴネリン量が13.2%高く、天然ガスバーナに比べ、水素バーナによってトリゴネリン量を増加できたことを確認できた。L値は、上記と同じ測定方法である。
【0061】
【0062】
(方法)
コーヒー豆焙煎製造方法は、ターンダウン比1:10以上の調整可能な水素混焼バーナで発生した熱風でコーヒー豆の焙煎をするコーヒー豆焙煎製造方法である。
コーヒー豆焙煎製造方法は、コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、水素混焼バーナを制御する制御ステップを含む。
制御ステップは、温度測定装置で測定された測定温度(PV_t)が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように水素混焼バーナをフィードバック制御してもよい。
制御ステップは、水素配管に設けられる弁、酸化剤配管に設けられる弁、炭化水素系燃料に設けられる弁のうち、1種以上の弁の弁開度を調節することで、燃焼力(火力)を制御(混焼比率を制御)してもよい。
制御ステップは、循環配管に設けられる吸引ポンプの駆動と、循環配管に設けられる弁の弁開度を調節することで、廃ガスの循環量を制御してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 コーヒー豆焙煎装置
10 水素混焼バーナ
20 焙煎機
30 制御装置
31 記憶装置
40 温度測定装置
【手続補正書】
【提出日】2024-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンダウン比が1:10以上となるように、水素および炭化水素系燃料を調整可能な水素混焼バーナと、
前記水素混焼バーナで発生した熱風を焙煎の熱源に使用する焙煎機と、
コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、前記水素混焼バーナを制御する制御装置と、
前記水素混焼バーナで発生した熱風の温度を測定する温度測定装置を備え、
前記制御装置は、
前記温度測定装置で測定された測定温度が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように前記水素混焼バーナを制御する、
コーヒー豆焙煎装置。
【請求項2】
前記水素混焼バーナは、
バーナ本体と、
バーナ先端部と、
前記バーナ本体の内部に配置され、ノズル先端が断面円状の水素を供給する水素供給ノズルと、
前記バーナ本体の内部に配置され、前記水素供給ノズルの外側に設けられる断面リング状の酸化剤を供給する酸化剤供給ノズルと、
前記バーナ本体の内部に配置され、前記酸化剤供給ノズルの外側に設けられる断面リング状の炭化水素系燃料を供給する燃料供給ノズルと、
所定圧力の水素源と、水素配管と、水素配管に設けられる弁と、
所定圧力の酸化剤源と、酸化剤配管と、酸化剤配管に設けられる弁と、
所定圧力の炭化水素系燃料源と、炭化水素系燃料配管と、炭化水素系燃料配管に設けられる弁と、
を備え、
前記制御装置は、
前記水素配管に設けられる弁、酸化剤配管に設けられる弁、炭化水素系燃料配管に設けられる弁のうち、1種以上の弁の弁開度を調節することで、燃焼力を制御する、
請求項1に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項3】
前記水素混焼バーナは、
前記バーナ先端部から熱風を、前記酸化剤配管へ循環するための循環配管と、循環配管に設けられる吸引ポンプと、循環配管に設けられる弁と、
を備え、
前記制御装置は、
前記循環配管に設けられる吸引ポンプの駆動と、前記循環配管に設けられる弁の弁開度を調節することで、熱風の循環量を制御する、
請求項2に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項4】
前記コーヒー豆の焙煎プロファイルは、炭化水素系燃料のみを用いたターンダウン比が1:10未満でのバーナと比較して前記水素混焼バーナの燃焼力レベルを低く設定した状態を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項5】
前記コーヒー豆の焙煎プロファイルは、炭化水素系燃料のみを用いたターンダウン比が1:10未満でのバーナによる焙煎と比較して味覚向上、香り向上および/または健康成分であるクロロゲン酸類あるいはトリゴネリンの増強を実現できる焙煎時の製品温度カーブとなるように設定されている、
請求項4に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項6】
水素混焼バーナで発生した熱風でコーヒー豆の焙煎をするコーヒー豆焙煎製造方法であって、
コーヒー豆の焙煎プロファイルに応じて、ターンダウン比が1:10以上となるように、水素および炭化水素系燃料を調整可能な水素混焼バーナを制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップは、
温度測定装置で測定された熱風の測定温度が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように水素混焼バーナを制御し、
前記コーヒー豆の焙煎プロファイルは、炭化水素系燃料のみを用いたターンダウン比が1:10未満でのバーナと比較し前記水素混焼バーナの燃焼力レベルを低く設定した状態を含む、
コーヒー豆焙煎製造方法。
【請求項7】
前記コーヒー豆の焙煎プロファイルは、該炭化水素系燃料のみを用いたターンダウン比が1:10未満でのバーナによる焙煎と比較して味覚向上、香り向上および/または健康成分であるクロロゲン酸類あるいはトリゴネリンの増強を実現できる焙煎時の製品温度カーブとなるように設定されている、
請求項6に記載のコーヒー豆焙煎製造方法。
【請求項8】
前記制御ステップは、
温度測定装置で測定された測定温度(PV_t)が、前記コーヒー豆の焙煎プロファイルに対応するように水素混焼バーナをフィードバック制御し、
水素配管に設けられる弁、酸化剤配管に設けられる弁、炭化水素系燃料に設けられる弁のうち、1種以上の弁の弁開度を調節することで、燃焼力(火力)を制御し、および/または、
循環配管に設けられる吸引ポンプの駆動と、循環配管に設けられる弁の弁開度を調節することで、廃ガスの循環量を制御する、
請求項6に記載のコーヒー豆焙煎製造方法。