(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161021
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体用の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20241108BHJP
F16C 19/04 20060101ALI20241108BHJP
F16J 15/3288 20160101ALI20241108BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C19/04
F16J15/3288
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024131108
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2021512552の分割
【原出願日】2019-09-04
(31)【優先権主張番号】62/726,871
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/558,880
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ローマン
(57)【要約】
【課題】改良した電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体用の方法及び装置の提供。
【解決手段】軸受組立体が、内側リング軌道を有する内側リング(2)と、外側リング軌道を有する外側リング(1)と、内側リング軌道と外側リング軌道との間で転動又は回転する転動体(5)と、第1と第2の端部を有する少なくとも1つの導電部(7)と、少なくとも1つの導電部に連結されたシール(6)とを具備し、シールは内側リング又は外側リングのうちの一方のみに直接接触し、第1の端部は内側リング及び外側リングのうちの一方に電気接触し、第2の端部は内側リング及び外側リングのうちの他方に電気接触するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受組立体において、
内側リング軌道を有する内側リングと、
外側リング軌道を有する外側リングと、
前記内側リング軌道と前記外側リング軌道との間で転動又は回転する転動体と、
第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも1つの導電部と、
前記少なくとも1つの導電部に連結されたシールとを具備し、
前記シールは前記内側リング又は前記外側リングのうちの一方のみに直接接触し、
前記第1の端部は前記内側リング及び前記外側リングのうちの一方に電気接触し、前記第2の端部は前記内側リング及び前記外側リングのうちの他方に電気接触するように構成される軸受組立体。
【請求項2】
前記第1の端部に固定された導電性ブラシフィラメントを備え、前記第1の端部は、前記導電性ブラシフィラメントを介して前記内側リングと前記外側リングの一方に電気接触する請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項3】
前記導電性ブラシフィラメントは前記第1の端部に取り外し可能に固定される請求項2に記載の軸受組立体。
【請求項4】
前記導電性ブラシフィラメントは前記第1の端部に連結するキャップの一部である請求項2に記載の軸受組立体。
【請求項5】
前記キャップは、前記第1の端部に外嵌することによって、或いは、前記第1の端部に嵌入することによって、前記第1の端部に連結するように構成される請求項4に記載の軸受組立体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの導電部は、前記内側リングと前記外側リングの一方に電気接触する前記第1の端部を形成する導電性ブラシフィラメントを備える請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの導電部は第1の部分と、第2の部分とを備え、該第1と第2の部分は直接連結される請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項8】
導電性ブラシフィラメントは、前記第1と第2の部分によって保持されて、前記少なくとも1つの導電部の前記第1の端部を超えて突出する請求項7に記載の軸受組立体。
【請求項9】
前記導電性ブラシフィラメントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に保持される請求項8に記載の軸受組立体。
【請求項10】
前記少なくとも1つの導電部は実質的にU字形であり、前記第1の部分及び前記第2の部分は前記少なくとも1つの導電部の脚部である請求項7に記載の軸受組立体。
【請求項11】
導電性ブラシフィラメントは前記少なくとも1つの導電部に接着剤によって固定される請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項12】
前記シールは、前記少なくとも1つの導電部の一方側のみに連結される請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項13】
前記シールはシールリップを備えており、該シールリップは、
前記第1の端部によって直接接触される前記内側リングと前記外側リングの一方に接触する、或いは、
前記第1の端部によって直接接触されない前記内側リングと前記外側リングの一方に接触する請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項14】
前記シールは、可撓性シールリップであるシールリップを備える請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項15】
前記シールは、前記転動体と前記少なくとも1つの導電部との間にある請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項16】
前記少なくとも1つの導電部は、前記転動体のうちの1つの転動体の一方側のみにある請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項17】
前記少なくとも1つの導電部は、
伝導性リング、
前記転動体のうちの1つの転動体の対向する側の第1の導電部及び第2の導電部、
前記内側リング又は前記外側リングのうちの一方から延在する少なくとも1つの離散的部分のうちの1つを備え、
前記少なくとも1つの離散的部分は、リングではないとともに、前記内側リング又は前記外側リングのうちの他方まで延在しない請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項18】
電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体において、
内側リング及び外側リングであって、該内側リングは内側リング軌道を有し、該外側リングは外側リング軌道を有する、内側リング及び外側リングと、
複数の転動体を含む転がり組立体であって、前記複数の転動体は、前記内側リングの前記内側リング軌道及び前記外側リングの前記外側リング軌道上で転動するように支持される転がり組立体と、
前記内側リングと前記外側リングの一方に接触する第1のリングを含む少なくとも1つの導電性リングとを具備する転がり軸受組立体。
【請求項19】
前記少なくとも1つの導電性リングに固定された導電性ブラシフィラメントを備え、前記ブラシフィラメントは、前記導電性リングが接触する方とは反対側の前記内側リング又は前記外側リングに接触する請求項18に記載する転がり軸受組立体。
【請求項20】
前記内側リング又は前記外側リングのうちの前記ブラシフィラメントと同じリングに接触する可撓性シールリップを有する前記少なくとも1つの導電性リングに一体に接続されるシールを備える請求項19に記載する転がり軸受組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本特許出願は、2018年9月4日に出願された米国仮特許出願第62/726,871号及び2019年9月3日に出願された米国特許出願第16/558,880号を参照し、その優先権を主張し、その利益を主張する。これらの出願の全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、電気放電損傷の改善に関し、より詳細には、電気放電損傷保護構造(electrical discharge damage protection)を有する転がり軸受組立体用の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の手法の制限及び不利点が、そのような手法を、図面を参照して本開示の残りの部分において記載されている本方法及びシステムの幾つかの態様と比較すると、当業者には自明となるであろう。
【発明の概要】
【0004】
実質的に、図のうちの少なくとも1つの図によって示されるとともにこれに関連して説明されるように、また、特許請求の範囲においてより完全に述べられるように、電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体用の方法及び装置が提供される。
【0005】
これらの態様及び/又は他の態様は、添付図面に関して行う、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の態様による電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体の断面図である。
【
図2】本開示の態様による電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体の断面図である。
【
図3A】本開示の態様による伝導性ブラシフィラメントを導電部上に連結するための例示的なキャップを示す図である。
【
図3B】本開示の態様による、伝導性ブラシフィラメントを導電部上に連結するための例示的なキャップを示す図である。
【
図4A】本開示の態様によるシールリップの一例を示す図である。
【
図4B】本開示の態様によるシールリップの一例を示す図である。
【
図4C】本開示の態様によるシールリップの一例を示す図である。
【
図5】本開示の態様による電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
概して、転がり軸受組立体は、例えば、電気モーター内におけるローターの回転をより円滑にするために使用することができる。しかしながら、電圧がモーターシャフト上に生じる場合があり、蓄積された電圧が軸受を通して放電する可能性がある。放電電圧は、転がり軸受を損傷する可能性があり、それにより、時間が経過すると、転がり軸受組立体は、モーターの継続的な運転のために交換する必要が生じることになる。
【0008】
本開示の種々の実施形態では、電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体について説明する。
【0009】
図1は、電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体の断面図を示す。
図1を参照すると、円形(又はリング状)である転がり軸受組立体100の断面が示される。断面図は、円形の転がり軸受組立体100の上部のものである。したがって、ページを横切って水平に延在するシャフト(図示せず)は、図示する断面の下にあるものとすることができる。円形の転がり軸受組立体100の下部の同様の断面(図示せず)は、シャフトの下にあることになる。したがって、シャフト及び下部断面が図面に含まれる場合、シャフトの上部は、上部分の図示する断面の内側リング2と接触しており、シャフトの下部は、下部分の断面の内側リング2と接触している。下部分の内側リングが下部分の外側リングの上になることに留意されたい。したがって、シャフトは内側リング2によって取り囲まれることになる。
【0010】
電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体100は、内側リング2と外側リング1とを備え、内側リングは内側リング軌道4を有し、外側リングは外側リング軌道3を有する。転がり軸受組立体100は、複数の転動体5を含み、複数の転動体5は、内側リング軌道4及び/又は内側リング軌道3上で転動するように支持される。時には、転動体5は内側リング軌道4及び外側リング軌道3の両方に接触する場合がある。また或る時には、転動体5は内側リング軌道4又は外側リング軌道3のうちの一方のみに接触する場合がある。これは、例えば、転がり軸受組立体100上の荷重及び荷重の場所に依存し得る。転動体5は、異なる例示的な転がり軸受組立体100について異なる適切な形状とすることができる。例えば、転がり軸受要素5は、球形、円柱形、又は他の適切な形状とすることができる。
【0011】
転がり軸受組立体100は、内側リング2又は外側リング1のうちの一方に接触する第1の端部を有する少なくとも1つの導電部7を更に含むことができる。導電部7は、例えば、リングの形状を有することができる。導電性ブラシフィラメント8を、少なくとも1つの導電部7に固定することができ、ブラシフィラメント8は、導電部7が接触する方とは反対側の内側リング2又は外側リング1に接触する。ブラシフィラメント8は、
図3A、3Bに示すようにキャップ9によって導電部7に連結することができる。用語「フィラメント(filaments)」は適用の容易さのために使用されるが、「フィラメント」が、単一のフィラメント又は複数のフィラメントを指すことができることが理解されるべきである。
【0012】
図1、2に示すように、導電部7は、2つの部分、すなわち、第1の部分7a及び第1の部分7bを備えることができる。本開示の幾つかの例は、導電部7の第1の部分7aのみを有することができる。フィラメント8は、例えば、第1の部分7aと第2の部分7bとの間に保持することができる。
【0013】
転がり軸受組立体100は、ブラシフィラメント8と同じ内側リング2又は外側リング1に接触することができる少なくとも1つの導電部7に一体に接続されるシール6を含むこともできる。他の例では、内側リング2又は外側リング1の両方に、又は、ブラシフィラメント8が接触しない内側リング2又は外側リング1のうちの一方に接触することができるシール6を有することができる。
【0014】
図1、2は、導電部7の一方側のみに連結した1つのシール6を示す。しかしながら、種々の例では、複数のシール6とし、1つ以上のシール6を導電部7の一方側又は両側に連結することができる。シール6は、フィラメント8と転動体5との間にあるとして示される。
図1において、シール6は、転動体5と導電部7の第1の部分7aとの間にあるものとして示される。
【0015】
したがって、図示するように、内側リング2と外側リング1との間に電気経路を構成することができ、それにより、転動体5を損傷することなくモーターシャフトの電圧を消散させることができる。
【0016】
導電部7は、導電部7の脚部も構成する2つの部分を有する略U字形として示されるが、本開示の種々の例はそのように限定される必要はない。例えば、導電部7は、例えば、コッターピン又はヘアピンのような断面が略U字形の単一の部品とすることでき、フィラメント8は、コッターピン状の(又はヘアピン状の)導電部7の脚部の間に保持される。したがって、本開示の種々の例では、フィラメント8を導電部7によって保持することが可能な異なる構成を使用することができる。
【0017】
フィラメント8は、そのような目的に適する1つ又は多くの方法によって導電部7に留める(又は、連結する、取り付ける等)ことができる。例えば、フィラメント8は、接着剤を使用することによって、第1の部分7a及び第2の部分7bのうちの一方又は両方に留めることができる。
【0018】
図1、2は、転動体5の両側の導電部7を示す。しかしながら、本開示の他の例では、転動体5の一方側のみに導電部7を有することができる。本開示の幾つかの例において、導電部7は、リングの形状とすることができ、一方、本開示の他の例において、導電部7は、リングでないものとすることができる。
【0019】
例えば、
図5は、転がり軸受組立体100の側面図を示す。
図5は、外側リング1と内側リング2とを有する転がり軸受組立体100を示し、導電部7は、外側リング1又は内側リング2のうちの一方から延在する少なくとも1つの離散的部分を備え、少なくとも1つの離散的部分は、リングではないとともに、内側リング2又は外側リング1のうちの他方まで延在しない。例えば、
図5は、外側リング1から延在するが内側リング2に達しない4つの離散的導電部7を示す。これらの離散的導電部7は、対応するシール6及びフィラメント8等の同様の付帯部品を有することができる。これらの離散的導電部7は、第1の部分7a及び第2の部分7bを備えることもできる。
【0020】
4つの離散的導電部7が示されるが、本開示の種々の例では、1つ以上の導電部7を有することができる。さらに、離散的導電部7の形状は、
図5に示す長方形の例とは異なるものとすることができる。
【0021】
図2は、電気放電損傷保護構造を有する別の転がり軸受組立体の断面図を示す。
図2は、シール6がブラシフィラメント8の隣にあり、導電部7が両者の間にないことを除いて、
図1と同様である。
【0022】
図3A、3Bは、フィラメント8の一部とすることができるキャップ9を示す。キャップ9は、例えば、導電部7の端部に外嵌する(fit over)ことができる。したがって、キャップ9は、導電部7のいずれかの端部にフィラメント8を取り付けることができるように構成することができる。例えば、キャップ9は、第2の部分7bの端部のうちの一方に、又は、第1の部分7aの底端部に取り付けることができる。導電部7の形状及び構成に応じて、キャップ9は、導電部7の異なる部分に嵌合する(fit)ことができる。キャップ9は、「キャップ(cap)」と呼ばれるが、例えば、導電部7の端部の穴に嵌入する(fit into)ように構成することもできる。
【0023】
キャップ9が、導電部7の端部に外嵌しようが、導電部7の端部に嵌入しようが、又は別様に嵌合しようが、フィラメント8をキャップ9によって導電部7に取り付ける任意の適切な方法によって、フィラメント8を取り付けることができる。
【0024】
種々のアイテムは、互いに「留められる(fastened)」、「取り付けられる(attached)」、「固定される(fixed)」、又は「連結される(coupled)」ものとして論じることができる。この固定する/連結することは、永久的に固定する又は取り外し可能に固定するものとすることができる。例えば、2つのオブジェクトを永久的に固定する/連結するのは、2つのオブジェクトを分離することが難しい場合、又は、オブジェクトの一方又は両方を損傷することにつながる場合とすることができる。永久的な固定の例としては、溶解する又は緩むことを意図しない接着剤、又はリベット打ち、圧着、圧力ばめ(force fitting)、溶接等のような機械式締結とすることができる。取り外し可能な固定/連結は、2つのオブジェクト又は交換部品を再び固定/連結することができるように、2つのオブジェクトを引き離すことを意図されることを示すことができる。例えば、取り外し可能な固定/連結は、溶解する又は緩めることができる接着剤を使用する、又は、ねじ、ボルト、ラッチ、フック及びループファスナー等のような機械式締結機構を使用するものとすることができる。取り外し及び連結に必要とされる労力の量に応じて、締結プロセスを永久的とするか取り外し可能とするかを考えることができることが留意され得る。
【0025】
締結が取り外し可能であるか、永久的であるかによらず、又は、本開示の例にいずれの方法が適用されるか否かによらず、機械式締結の幾つかの例は、圧着、ステーキング(staking)、リベット打ち、圧締(又は締まりばめ)、ねじ/ボルトを使用すること、フック及びループファスナー、ラッチを使用すること、張力又は圧縮等によって力を加えること、又は、本明細書で述べる軸受組立体等のデバイスにおいて使用することができる他の技術を含むとすることができる。
【0026】
図4A、
図4B、及び
図4Cは、シール6の一端又は両端のリップを示す。
図4Aにおいて、シール6の下部端にリップ6aが示される。
図4Bにおいて、シール6の上部端にリップ6bが示される。
図4Cにおいて、シール6の下部端及びシール6の上部端にリップ6a及びリップ6bがそれぞれ示される。リップ6a及び/又はリップ6bは可撓性リップとすることができる。シール6は可撓性シールとすることもできる。本開示の種々の態様において、シール6は、リップ(6a、6b)と同様の材料又は異なる材料で作ることができる。
【0027】
したがって、本開示が、軸受組立体であって、例えば、内側リング軌道を有する内側リングと、外側リング軌道を有する外側リングと、内側リング軌道と外側リング軌道との間で転動又は回転する転動体とを備えることができる、軸受組立体を提供することが分かる。転動体は、特定の時間において軸受組立体にかかる荷重に応じて、異なる時間において内側リング軌道と外側リング軌道のうちの一方又は両方に接触することができる。軸受組立体は、第1の端部と第2の端部とを有する少なくとも1つの導電部を備えることもでき、第1の端部は内側リング及び外側リングのうちの一方に電気接触し、第2の端部は、内側リング及び外側リングのうちの他方に電気接触するように構成される。
【0028】
軸受組立体は、少なくとも1つの導電部に連結されたシールを備えることができ、シールは、内側リング又は外側リングのうちの一方のみに直接接触するように構成される。第1の端部は、内側リング及び外側リングのうちの一方に電気接触するように構成することができ、第2の端部は、内側リング及び外側リングのうちの他方に電気接触するように構成することができる。
【0029】
軸受組立体は、第1の端部に固定された導電性ブラシフィラメントを備えることができ、第1の端部は、導電性ブラシフィラメントを介し内側リング又は外側リングのうちの一方に電気接触する。「フィラメント」は説明の容易さのために使用されるが、本開示の「フィラメント」が単一のフィラメント又は複数のフィラメントを指すことができることが理解されるべきである。
【0030】
導電性ブラシフィラメントは、導電部の第1の端部に取り外し可能に固定することができる。導電性ブラシフィラメントは、第1の端部に連結するキャップの一部によって保持することができる。キャップは、例えば、第1の端部に外嵌することによって又は第1の端部に嵌入することによって、第1の端部に連結するように構成することができる。
【0031】
少なくとも1つの導電部は、内側リング及び外側リングのうちの一方に電気接触する第1の端部を形成する導電性ブラシフィラメントを備えることができる。少なくとも1つの導電部は、例えば、ともに直接連結される第1の部分及び第2の部分を備えることもできる。
【0032】
導電性ブラシフィラメントは第1の部分及び第2の部分によって保持されて、少なくとも1つの導電部の第1の端部を超えて延在することができる。したがって、本開示の幾つかの態様において、導電性ブラシフィラメントは、第1の部分と第2の部分との間に保持することができる。少なくとも1つの導電部は、例えば、略U字形とすることができ、第1の部分及び第2の部分は、少なくとも1つの導電部の脚部とすることができる。
【0033】
導電性ブラシフィラメントは少なくとも1つの導電部に接着剤によって留めることができる。
【0034】
シールは、少なくとも1つの導電部の一方側のみに連結することができる。シールはシールリップを備えることができ、シールリップは、第1の端部によって接触される内側リング又は外側リングのうちの一方に接触する、又は、第1の端部によって直接接触されない内側リング又は外側リングのうちの一方に接触する。シールはまた、可撓性シールリップであるシールリップを備えることができる。本開示の種々の態様において、シールは、転動体と少なくとも1つの導電部との間にあり得る。
【0035】
少なくとも1つの導電部は、転動体のうちの1つの転動体の対向する側に第1の導電部及び第2の導電部を備えることができる。種々の態様は、転動体のうちの1つの転動体の一方側のみの導電部を開示することができる。
【0036】
導電部は、例えば、伝導性リングとすることができる。
【0037】
少なくとも1つの導電部は、例えば、内側リング又は外側リングのうちの一方から延在する少なくとも1つの離散的部分とすることもでき、少なくとも1つの離散的部分は、リングではないとともに、内側リング又は外側リングのうちの他方まで延在しない。離散的部品は、説明の容易さのためにピラーと考えることができるが、本開示の種々の態様では、弧を含む異なる形状を有することができる。内側リング及び外側リングが互いに対して移動することから、導電部が、一端を内側リング又は外側リングのうちの一方に固定することができ、一方、他端を固定しないとすることができる点も留意され得る。
【0038】
また、本開示において、電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体であって、内側リング及び外側リングであって、内側リングは内側リング軌道を有し、外側リングは外側リング軌道を有する、内側リング及び外側リングと、複数の転動体を含む転がり組立体であって、複数の転動体は、内側リングの内側リング軌道及び外側リングの外側リング軌道上で転動するように支持される、転がり組立体と、内側リング又は外側リングのうちの一方に接触する第1のリングを含む少なくとも1つの導電性リングとを備える、転がり軸受組立体が提供されることが分かる。
【0039】
転がり軸受組立体は、少なくとも1つの導電性リングに固定された導電性ブラシフィラメントも備えることができ、ブラシフィラメントは、導電性リングが接触する方とは反対側の内側リング又は外側リングに接触する。転がり軸受組立体は、内側リング又は外側リングのうちのブラシフィラメントと同じリングに接触する可撓性シールリップを有する少なくとも1つの導電性リングに一体に接続されるシールを更に備えることができる。
【0040】
本明細書で使用する「及び/又は」は、「及び/又は」によって連結されるリストにおける項目のうちの任意の1つ以上の項目を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、3つの要素の組{(x),(y),(x,y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x及び/又はy」は、「x及びyのうちの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y及び/又はz」は、7つの要素の組{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x、y及び/又はz」は、「x、y及びzのうちの1つ以上」を意味する。本明細書で使用する「例示的な」という用語は、非限定的な例、事例又は例証としての役割を果たすことを意味する。本明細書で使用する「例えば」という用語は、1つ以上の非限定的な例、事例又は例証のリストを開始する。
【0041】
本方法及び/又はシステムを、或る特定の実施態様を参照して記載してきたが、当業者であれば、本方法及び/又はシステムの範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができること及び均等物に置き換えることができることを理解するであろう。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの改変を行うことができる。したがって、本方法及び/又はシステムは、開示されている特定の実施態様に限定されない。代わりに、本方法及び/又はシステムは、字義通りにでも均等論のもとにおいても、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施態様を含む。
【符号の説明】
【0042】
1 外側リング
2 内側リング
3 外側リング軌道
4 内側リング軌道
5 転動体
6 シール
6a リップ
6b リップ
7 導電部
7a 第1の部分
7b 第2の部分
8 導電性ブラシフィラメント
9 キャップ
100 軸受組立体
【手続補正書】
【提出日】2024-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
本方法及び/又はシステムを、或る特定の実施態様を参照して記載してきたが、当業者であれば、本方法及び/又はシステムの範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができること及び均等物に置き換えることができることを理解するであろう。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの改変を行うことができる。したがって、本方法及び/又はシステムは、開示されている特定の実施態様に限定されない。代わりに、本方法及び/又はシステムは、字義通りにでも均等論のもとにおいても、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施態様を含む。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
軸受組立体において、
内側リング軌道を有する内側リングと、
外側リング軌道を有する外側リングと、
前記内側リング軌道と前記外側リング軌道との間で転動又は回転する転動体と、
第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも1つの導電部と、
前記少なくとも1つの導電部に連結されたシールとを具備し、
前記シールは前記内側リング又は前記外側リングのうちの一方のみに直接接触し、
前記第1の端部は前記内側リング及び前記外側リングのうちの一方に電気接触し、前記第2の端部は前記内側リング及び前記外側リングのうちの他方に電気接触するように構成される軸受組立体である。
第2の態様は、
前記第1の端部に固定された導電性ブラシフィラメントを備え、前記第1の端部は、前記導電性ブラシフィラメントを介して前記内側リングと前記外側リングの一方に電気接触する第1の態様における軸受組立体である。
第3の態様は、
前記導電性ブラシフィラメントは前記第1の端部に取り外し可能に固定される第2の態様における軸受組立体である。
第4の態様は、
前記導電性ブラシフィラメントは前記第1の端部に連結するキャップの一部である第2の態様における軸受組立体である。
第5の態様は、
前記キャップは、前記第1の端部に外嵌することによって、或いは、前記第1の端部に嵌入することによって、前記第1の端部に連結するように構成される第4の態様における軸受組立体である。
第6の態様は、
前記少なくとも1つの導電部は、前記内側リングと前記外側リングの一方に電気接触する前記第1の端部を形成する導電性ブラシフィラメントを備える第1の態様における軸受組立体である。
第7の態様は、
前記少なくとも1つの導電部は第1の部分と、第2の部分とを備え、該第1と第2の部分は直接連結される第1の態様における軸受組立体である。
第8の態様は、
導電性ブラシフィラメントは、前記第1と第2の部分によって保持されて、前記少なくとも1つの導電部の前記第1の端部を超えて突出する第7の態様における軸受組立体である。
第9の態様は、
前記導電性ブラシフィラメントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に保持される第8の態様における軸受組立体である。
第10の態様は、
前記少なくとも1つの導電部は実質的にU字形であり、前記第1の部分及び前記第2の部分は前記少なくとも1つの導電部の脚部である第7の態様における軸受組立体である。
第11の態様は、
導電性ブラシフィラメントは前記少なくとも1つの導電部に接着剤によって固定される第1の態様における軸受組立体である。
第12の態様は、
前記シールは、前記少なくとも1つの導電部の一方側のみに連結される第1の態様における軸受組立体である。
第13の態様は、
前記シールはシールリップを備えており、該シールリップは、
前記第1の端部によって直接接触される前記内側リングと前記外側リングの一方に接触する、或いは、
前記第1の端部によって直接接触されない前記内側リングと前記外側リングの一方に接触する第1の態様における軸受組立体である。
第14の態様は、
前記シールは、可撓性シールリップであるシールリップを備える第1の態様における軸受組立体である。
第15の態様は、
前記シールは、前記転動体と前記少なくとも1つの導電部との間にある第1の態様における軸受組立体である。
第16の態様は、
前記少なくとも1つの導電部は、前記転動体のうちの1つの転動体の一方側のみにある第1の態様における軸受組立体である。
第17の態様は、
前記少なくとも1つの導電部は、
伝導性リング、
前記転動体のうちの1つの転動体の対向する側の第1の導電部及び第2の導電部、
前記内側リング又は前記外側リングのうちの一方から延在する少なくとも1つの離散的部分のうちの1つを備え、
前記少なくとも1つの離散的部分は、リングではないとともに、前記内側リング又は前記外側リングのうちの他方まで延在しない第1の態様における軸受組立体である。
第18の態様は、
電気放電損傷保護構造を有する転がり軸受組立体において、
内側リング及び外側リングであって、該内側リングは内側リング軌道を有し、該外側リングは外側リング軌道を有する、内側リング及び外側リングと、
複数の転動体を含む転がり組立体であって、前記複数の転動体は、前記内側リングの前記内側リング軌道及び前記外側リングの前記外側リング軌道上で転動するように支持される転がり組立体と、
前記内側リングと前記外側リングの一方に接触する第1のリングを含む少なくとも1つの導電性リングとを具備する転がり軸受組立体である。
第19の態様は、
前記少なくとも1つの導電性リングに固定された導電性ブラシフィラメントを備え、前記ブラシフィラメントは、前記導電性リングが接触する方とは反対側の前記内側リング又は前記外側リングに接触する第18の態様における転がり軸受組立体である。
第20の態様は、
前記内側リング又は前記外側リングのうちの前記ブラシフィラメントと同じリングに接触する可撓性シールリップを有する前記少なくとも1つの導電性リングに一体に接続されるシールを備える第18の態様における転がり軸受組立体である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受組立体において、
内側リング軌道を有する内側リングと、
外側リング軌道を有する外側リングと、
前記内側リング軌道と前記外側リング軌道との間で転動又は回転する転動体と、
第1の端部及び第2の端部を有する少なくとも1つの導電部と、
前記少なくとも1つの導電部に連結されたシールとを具備し、
前記シールは前記内側リング又は前記外側リングのうちの一方のみに直接接触し、
前記第1の端部は前記内側リング及び前記外側リングのうちの一方に電気接触し、前記第2の端部は前記内側リング及び前記外側リングのうちの他方に電気接触するように構成される軸受組立体。
【外国語明細書】