(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161031
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】バイオ医薬製品の製造、包装、配送及び評価で使用される共通接触面
(51)【国際特許分類】
A61J 1/14 20230101AFI20241108BHJP
A61J 1/20 20060101ALI20241108BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20241108BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61J1/14
A61J1/20 314C
B65D77/00 C
A61J1/05 311
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024137822
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2021543241の分割
【原出願日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】62/797,028
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512082716
【氏名又は名称】エスアイオーツー・メディカル・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】2250 Riley Street,Auburn,Alabama 36832 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エス・エイブラムス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ヴァイカルト
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド・タハ
(57)【要約】
【課題】本開示のシステムは、バイオ医薬製品製造、包装及び配送プロセスの有効性を向上させると同時に、高歩留まり、高品質のバイオ医薬製品の製造を確実にする、新規の解決法を提供する。
【解決手段】バイオ医薬品製造、包装、配送及び評価中にバイオ医薬製品と接触する少なくともいくつかの共通面によって特徴付けられる、容器、コネクタ又は他の機器のシステム。それらシステムを製造するとともに、それらにおいて使用のために接触面をカスタマイズする方法。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ医薬製品の製造、包装又は配送において使用される少なくとも2つの容器又はコネクタを備えるシステムであって、前記容器の各々が内部空洞を画定する壁を備え、前記容器が、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器の各々の前記壁が前記空洞に面する内面を有し、前記内面が、前記内面が前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する共通面によって特徴付けられ、前記共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 前記結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記結合コーティング又は層が、前記容器の前記壁に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、前記バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、前記バリアコーティング又は層が、前記結合コーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記pH保護コーティング又は層が、前記バリアコーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有する、システム。
【請求項2】
前記容器が、384ウェルプレート、96ウェルプレート、バイオリアクタ、採血管、瓶、バルク保管容器、カニューレ、捕獲カラム、カートリッジ、カテーテル、セルバンクバイアル、細胞分離装置、細胞バイアル、遠心ポンプ、遠心分離機チューブ、クロマトグラフィカラム、クロマトグラフィバイアル、浄化器、密封容器、容器施栓系、凍結保存容器、培養瓶、配送用容器、透析ろ過装置、分注ユニット、ELISAプレート、溶出バッグ、真空採血管、充填/仕上げ装置、ろ過装置、凍結乾燥機、回収容器、振とう器、工程内分析機器、中間カラム、静脈注射(IV)バッグ、培地バッグ、培地瓶、培地容器、メンブレンクロマトグラフィカラム、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート、混合バッグ、モニタリング装置、多目的バイオリアクタ、パッケージ充填装置、ポンプ、ペトリ皿、ピペットチップ、プレート、プランジャ、ポリッシュカラム、プレフィルドシリンジ、ルアーロックフィッティング付きプレフィルドシリンジ、一次包装、生産バイオリアクタ、生産発酵槽、ローラボトル、試料採取管、試料採取容器、種発酵槽、分離器、振とうフラスコ、単回使用バイオリアクタ、スライド、スピナフラスコ、固定針プレフィルドシリンジ、保管バッグ、滅菌装置、保存培養バイアル、保管容器、シリンジ(プレフィルド)、タンク、末端反応器、輸送用バッグ、限外ろ過/透析ろ過装置、限外ろ過装置、上流バイオリアクタ、弁、バイアル、ウイルスろ過装置、ウイルス不活性化容器及びウェーブバイオリアクタのうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記容器のうちの少なくとも1つが、バイオリアクタ、ポンプ、セルバンクバイアル、回収容器、保存培養バイアル、発酵槽、振とうフラスコ、振とう器、カラム、分離器、バッグ、ビーカ、タンク、シリンダ、バルク保管ユニット又は容器、単回使用バッグ、ローラボトル、保管チューブ及び試料採取容器からなる群から選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記容器のうちの少なくとも1つが、シリンジ、分注ユニット、バイアル及び静脈注射(IV)バッグからなる群から選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの容器が、(a)バルク量の前記バイオ医薬製品を保持するために有用な第1容器と、(b)必要としている対象に前記バイオ医薬製品の少なくとも一部を含む組成物を投与するために有用な第2容器とを含む。請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記容器のうちの1つ又は複数を1つ又は複数の別の容器又はコネクタに接続する1つ又は複数のコネクタをさらに備え、1つ又は複数の系列における前記容器のうちの少なくとも1つが壁を有し、前記壁の内面が、製造中の前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する面によって特徴付けられ、前記面が、前記第1容器及び前記第2容器の最内面に共通している、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記容器の1つ又は複数の系列における前記容器のうちの1つが、バイオリアクタ、発酵槽、ポンプ、ローラボトル、フラスコ、振とう器、分離器、バッグ、ビーカ、試料採取容器、シリンダ、ピペットチップ、スライド及びバイアルからなる群から独立して選択される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記容器の1つ又は複数の系列における前記容器のうちの少なくとも1つが、1つ又は複数のコネクタを介して、前記容器の1つ又は複数の系列における前記容器のうちの別のものに接続され、前記コネクタのうちの少なくとも1つが、内部空洞を画定する壁を備え、前記壁が、製造中の前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する面によって特徴付けられる内面を有し、前記面が、前記第1容器及び前記第2容器の最内面に共通している、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
各コネクタが、チューブ、配管、弁及びパイプからなる群から独立して選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記バルク量の前記バイオ医薬製品の製造において有用な容器の1つ又は複数の系列をさらに備え、前記1つ又は複数の系列における前記容器のうちの少なくとも1つが壁を有し、前記壁の内面が、製造中の前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する面によって特徴付けられ、前記面が、前記第1容器及び前記第2容器の面に共通しておらず、製造中の前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する前記面が、前記1つ又は複数の系列における前記容器のうちの別のものの少なくとも1つの前記壁の上の前記面に共通している、請求項5に記載のシステム。
【請求項11】
前記共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 前記結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記結合コーティング又は層が、前記容器の前記壁に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、前記バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、前記バリアコーティング又は層が、前記結合コーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記pH保護コーティング又は層が、前記バリアコーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
バイオ医薬製品の1つ又は複数の特徴、すなわち品質、純度及び完全性のうちの1つ又は複数を評価するのに有用な、少なくとも2つの容器又はコネクタを備えるシステムであって、前記容器の各々が内部空洞を画定する壁を備え、前記容器が、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器の各々の前記壁が前記空洞に面する内面を有し、前記内面が、前記内面が前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する共通面によって特徴付けられ、前記共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 前記結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記結合コーティング又は層が、前記容器の前記壁に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、前記バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、前記バリアコーティング又は層が、前記結合コーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記pH保護コーティング又は層が、前記バリアコーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有する、システム。
【請求項13】
前記共通面が、請求項5に記載の前記第1容器及び前記第2容器の前記共通面、請求項9に記載の前記1つ又は複数の容器の前記共通面、又はいずれとも同一ではない、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記共通面が、請求項5に記載の前記第1容器及び前記第2容器の前記共通面、及び請求項9に記載の前記1つ又は複数の容器の前記共通面のうちの一方又は両方と同一である、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
各容器が、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート及びペトリ皿からなる群から選択される、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項16】
前記バイオ医薬製品が、抗体、バルクバイオ医薬品製剤、細胞培養製剤、細胞懸濁液、培養液、バイオ医薬製品、バイオ医薬品物質、バイオ医薬品製剤、発現ベクタ/宿主製剤、回収細胞製剤、宿主細胞組成物、宿主細胞汚染物質、移動相、モノクローナル抗体製剤、生成物流、シードトレイン組成物、固定相、ペプチド又はタンパク質製剤、及び核酸製剤のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
バイオ医薬製品の製造、包装又は配送において有用な少なくとも2つの容器又はコネクタを備え、前記容器又はコネクタの各々が内部空洞を画定する壁を備え、前記容器又はコネクタが、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器又はコネクタの各々の前記壁が前記空洞に面する内面を有する、システムを製造する方法であって、
・バイオ医薬製品を提供するステップと、
・仮接触面を提供するステップと、
・前記バイオ医薬製品が前記仮接触面と適合性があるか否かを判断するステップと、
・前記仮接触面を、前記バイオ医薬製品とのその適合性を向上させるように修正し、それにより、カスタマイズされた接触面を製造するステップと、
・前記カスタマイズされた接触面を使用して、前記容器/コネクタの前記内面が、前記内面が前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記内面上に存在するカスタマイズされた共通面によって特徴付けられるように、前記システムを製造するステップであって、前記カスタマイズされた共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 前記結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記結合コーティング又は層が、前記容器の前記壁に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、前記バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、前記バリアコーティング又は層が、前記結合コーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有し、
o 前記pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、前記pH保護コーティング又は層が、前記バリアコーティング又は層の前記内面に面する外面を有するとともに、前記空洞に面する内面を有する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記バイオ医薬製品が、抗体、バルクバイオ医薬品製剤、細胞培養製剤、細胞懸濁液、培養液、バイオ医薬製品、バイオ医薬品物質、バイオ医薬品製剤、発現ベクタ/宿主製剤、回収細胞製剤、宿主細胞組成物、宿主細胞汚染物質、移動相、モノクローナル抗体製剤、生成物流、シードトレイン組成物、固定相、ペプチド又はタンパク質製剤、及び核酸製剤のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記仮接触面が90°未満の水接触角を有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記仮接触面が、X線光電子分光法(XPS)及び任意選択的に水素前方散乱(HFS)分析又はラザフォード後方散乱(RBS)分析によって決定されるように1%未満のH結合ドナー基を有する、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBS分析によって決定されるように少なくとも1%未満のH結合アクセプタ基を有する、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記仮接触面が、XPSによって決定されるように1%未満のアニオン基及びカチオン基を有する、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記仮接触面に、XPSによって決定されるように、ケイ素以外の金属又はメタロイド原子が実質的にない、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記仮接触面が、プラズマ化学気相成長(PECVD)コーティングである、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBSによって決定される、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子の以下の統計的な比:Si=1:O=x:C=y:H=zを有し、式中、xが約1.5~約2.9であり、yが約0~約1であり、zが約0~約4の範囲内にある、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBSによって決定される、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子の以下の統計的な比:Si=1:O=x:C=y:H=zを有し、式中、xが0.5~2.4であり、yが0.6~3であり、zが2~9のである、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBSによって決定される、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子の以下の統計的な比:Si=1:O=x:C=y:H=zを有し、式中、xが1.5~2.9であり、yが約0であり、zが約0である、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記容器が、384ウェルプレート、96ウェルプレート、バイオリアクタ、採血管、瓶、バルク保管容器、カニューレ、捕獲カラム、カートリッジ、カテーテル、セルバンクバイアル、細胞分離装置、細胞バイアル、遠心ポンプ、遠心分離機チューブ、クロマトグラフィカラム、クロマトグラフィバイアル、浄化器、密封容器、容器施栓系、凍結保存容器、培養瓶、配送用容器、透析ろ過装置、分注ユニット、ELISAプレート、溶出バッグ、真空採血管、充填/仕上げ装置、ろ過装置、凍結乾燥機、回収容器、振とう器、工程内分析機器、中間カラム、静脈注射(IV)バッグ、培地バッグ、培地瓶、培地容器、メンブレンクロマトグラフィカラム、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート、混合バッグ、モニタリング装置、多目的バイオリアクタ、パッケージ充填装置、ポンプ、ペトリ皿、ピペットチップ、プレート、プランジャ、ポリッシュカラム、プレフィルドシリンジ、ルアーロックフィッティング付きプレフィルドシリンジ、一次包装、生産バイオリアクタ、生産発酵槽、ローラボトル、試料採取管、試料採取容器、種発酵槽、分離器、振とうフラスコ、単回使用バイオリアクタ、スライド、スピナフラスコ、固定針プレフィルドシリンジ、保管バッグ、滅菌装置、保存培養バイアル、保管容器、シリンジ(プレフィルド)、タンク、末端反応器、輸送用バッグ、限外ろ過/透析ろ過装置、限外ろ過装置、上流バイオリアクタ、弁、バイアル、ウイルスろ過装置、ウイルス不活性化容器及びウェーブバイオリアクタのうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
容器の前記仮接触面を、特定のバイオ医薬製品とのその適合性を向上させるように修正して、カスタマイズされた接触面を製造する方法が、
・前記仮接触面の前記水接触角を、元の水接触角の約10%~90%だけ低減させるステップと、
・XPS分析及び任意選択的にHFS分析又はRBS分析によって決定されるように、前記仮接触面のH結合ドナー基の割合を約10%~90%だけ低減させるステップと、
・XPS分析及び任意選択的にHFS分析又はRBS分析によって決定されるように、前記仮接触面のH結合アクセプタ基の割合を約10%~90%だけ増大させるステップと、
・XPS分析によって決定されるように、前記仮接触面のアニオン基、カチオン基、又は両方の割合を約10%~90%だけ低減させるステップと、
・XPS分析によって決定されるように、前記仮接触面のケイ素以外の金属又はメタロイド原子の割合を約10%~90%だけ低減させるステップと、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月25日に出願された米国仮特許出願第62/797,028号明細書の利益とその出願に対する優先権を主張するとともに、参照によりその出願の全体を援用する。
【0002】
本開示は、製造、包装及び配送中のバイオ医薬製品と接触する共通面を有する2つ以上の容器及び/又はコネクタによって特徴付けられるシステムに関する。本開示はまた、生体材料、バイオ医薬品組成物、並びにそれらの前駆体及び中間体(まとめて、バイオ医薬製品)の接触面との適合性を決定し且つ向上させるとともに、バイオ医薬製品の製造、包装及び配送中にバイオ医薬製品又はそれらの前駆体及び中間体と接触するカスタマイズされた共通面を有する2つ以上の容器及び/又はコネクタによって特徴付けられるシステムを提供する方法に関する。
【0003】
本開示は、広く、容器又は他の機器のシステムに関し、その容器又は他の機器のうちの2つ以上は、製造、包装及び配送中のバイオ医薬製品と接触する共通面によって特徴付けられる。これら共通面は、容器又は他の機器の壁において、それらの壁がバイオ医薬製品及び/若しくはそれを構成する組成物、バイオ医薬製品の前駆体若しくは中間体、並びに/又は、バイオ医薬製品を製造するために使用されるか若しくは治療薬として使用するための生体材料と接触する、実質的にすべての領域に存在する。さらに、本開示は、さまざまな生体材料及び/又はバイオ医薬製品並びにその前駆体又は中間体と適合性がある、バイオ医薬製品の製造、包装及び配送中に面がそれらの製品、組成物、前駆体又は中間体と接触する容器又は他の器具で使用される、カスタマイズされた共通面の開発に関する。
【背景技術】
【0004】
バイオ医薬製品又は生物学的製剤は、生体から製造されるか又は生体の構成要素を含む医薬品である。バイオ医薬製品は、他のタンパク質の活動及び細胞プロセスを制御するタンパク質、タンパク質の生成を制御するか又はそれ自体治療的に有用である遺伝子、植物、微生物、ウイルス、及びヒトを含む動物を含む生体において、生物学的に又は免疫学的に活性であるタンパク質、又は、免疫系の構成要素を抑制若しくは活性化する物質を生成するか、若しくはそれ自体で治療的に有用である細胞を含むことができる。本開示におけるバイオ医薬製品のタイプは、細胞、タンパク質(抗体、ホルモン及び酵素を含む)、核酸(DNA、RNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)、ワクチン、抗生物質、血液、血液成分、アレルゲン、遺伝子及び組織を含む。最終的に、バイオ医薬製品は、癌、関節リウマチ、帯状疱疹及びクローン病等、疾患及び病態を治療するために使用される。
【0005】
バイオ医薬製品は、通常、保管のために凍結させ、損傷が最小限であるように解凍し、反応容器又はバイオリアクタ内で増殖させなければならない、遺伝子操作された生細胞を必要とする、複雑な製造プロセスを使用して作成される。本開示のバイオ医薬製品を製造することができる生細胞としては、たとえば、微生物細胞(たとえば、大腸菌又は酵母細胞)、哺乳動物細胞株、植物細胞培養物、コケ及び他の植物が挙げられる。それらの細胞は、通常、さまざまな構成のバイオリアクタにおいて増殖する。それら細胞内で生成されると、所望のバイオ医薬製品は、それらを生成した培養細胞及び/又はそれらが分泌される培地から分離し、すべて、それらの複雑で脆弱な構造を損傷することなく、且つ(たとえば、細菌、ウイルス、マイクプラズマ、細胞片等による)微生物汚染なしに、精製しなければならない。
【0006】
大規模でのバイオ医薬製品の製造は、通常、一連の接続された容器内で行われ、前段階は上流構成要素及び下流構成要素を有する。バイオ医薬製品製造プロセスの概要については、Jozala AF et al.Brazilian J.of Microbiology 47S(2016)51-63;Hong MS et al.,Computers and Chem Engg.110(2018)106-114及びHughes B. and Hann LE,Biologics in General Medicine,(2007),Chapter7を参照されたい。上流プロセスは、初期細胞単離及び培養から、細胞バンク化及び細胞の培養拡大、最終的な回収(ハーベスト)(培養の終了、並びに生細胞バッチ、培地及び所望の生成物の収集)までのプロセス全体として定義される。上流プロセスでは、細胞又は細胞株(細胞培養物)は、最初にバイオリアクタ内で増殖する。バイオリアクタは、発酵、幹細胞成長、菌株選択及び細胞株最適化、バイオプロセスの展開、初期細胞スクリーニング及び培地選択を含む、広範囲の用途をサポートする。培養物内で所望の細胞及び所望の密度の細胞が生成された後、それらは培養されて、所望の生成物、たとえばバイオ医薬製品をもたらす。生成物は、細胞によって培地内に分泌され得るか、細胞内に残り得るか、又は細胞自体であり得る。各場合において、生成物は、所望の品質又は治療活性を有する精製されたバイオ医薬製品を得るために、下流プロセスに移される。
【0007】
バイオプロセスの下流部は、上流プロセスからの細胞塊及び/又は培地が、疾患又は病態の治療においてバイオ医薬製品を送達するための純度及び品質要件を満たすように処理される、部分を指す。典型的な下流処理のステップは、通常、以下を含む。(a)バイオマスの分離:バイオマス(微生物細胞)の分離は、一般に、遠心分離又は超遠心分離によって実施される。生成物が生体材料自体である場合、それは、処理のために回収され、消費された培地は廃棄される。生成物が細胞外である場合、バイオマスは廃棄される。限外ろ過が、遠心分離の別の選択肢である。(b)細胞破壊:所望の生成物が細胞内である場合、生成物が放出されるように、細胞バイオマスを破壊することができる。固体-液体は、通常、遠心分離又はろ過によって分離され、細胞片は廃棄される。(c)培養液の濃縮:細胞外生成物を含有する消費された培地、又は放出された生成物を含有する培地は、濃縮される。(d)初期精製:所望の生成物の物理化学的性質に従って、沈殿又はクロマトグラフィ等、たとえばバイオ医薬製品を含有する浄化された発酵培養液又は培地からの、生成物の回収のためのいくつかの方法を使用することができる。(e)脱水:非常に大量の培地内に少量の生成物が存在する場合、生成物を濃縮するために培地を除去することにより、容量が低減する。これは、真空乾燥又は逆浸透によって行われることが多い。(f)最終精製:これは、生成物を98~100%の純度にする最終ステップである。そして、精製された生物学的製品は、通常、最終的に消費者に配送する充填施設において調製される前に、バルクで保管される。調製又は充填中、バルク材料のアリコートは、通常、賦形剤と称される不活性成分と混合される。そして、調製された製品は、必要としている対象に製品を配送するために使用され且つ消費者が使用するために市場に送られる容器(たとえば、シリンジ又はバッグ)で包装される。
【0008】
上記ステップの各々に、バイオ医薬製品(たとえば、バイオ医薬製品、並びに/又はその前駆体及び中間体、並びに/又はバイオ医薬製品を製造するために使用された若しくはそれ自体がバイオ医薬製品である、生の生体材料若しくは細胞を含む流体)と接触する面を有する、容器/コネクタが必要である。容器又はコネクタのうちのいくつかでは、バイオ医薬製品との接触期間は短い。他のものでは、接触期間はより長く、すなわち数日又は数週間である場合があり、さらに他のもの、たとえばバルク保管及び配送装置では、接触期間は数カ月である可能性がある。さらに、バイオ医薬製品は、それらの製造、包装及び配送の過程にわたり、さまざまな面と接触する可能性がある。たとえば、1つの製造業者は、バイオ医薬製品をもたらす細胞が培養されるバイオリアクタ又はローラボトル又は単回使用バッグを供給する場合があり、別の製造業者は、バイオ医薬製品を保管するために使用されるバルク容器を供給する場合があり、別の製造業者は、対象に配送するためのバイオ医薬製品の包装のためにバイアル若しくはバッグ、又はプレフィルドシリンジを供給する場合がある。バイオ医薬製品と接触する各異なる面は、材料を汚染し、好ましくないように材料と相互作用し、又は、バイオ医薬製品の生物学的活性に対して意図しない影響をもたらす可能性がある。さらに、材料は、さまざまな容器及び/又はコネクタの壁に付着して、疾患及び病態の治療のために対象に配送すべき生体材料製品の歩留まりの低下又は量の変動をもたらす可能性がある。
【0009】
これは、プラスチック容器を含む単回使用システムの使用の増大により特に問題である。バイオ医薬品業界は、近年、バイオ医薬製品の製造において、大規模の固定タンク施設から単回使用容器等の融通のきく機器に移行している。単回使用システムは、場所を節約し、規模及び空間計画における融通性を高め、開発及び変更における清掃コストを最小限にすることができる。Scott Rudge,European Pharmaceutical Review,Article 50692(2018)。しかしながら、大部分プラスチックから作製される単回使用容器は、バイオ医薬製品製造中にプロセス溶液に化学物質を浸出させる可能性がある。単回使用機器が加熱されるか又は溶剤と接触する場合、溶出物、すなわち浸出物の一部もあり得る(Monika Mahajani,SDI Blog(2019))。すべての製品接触面もまた、プロセス内に溶出物質を放出し、製造され、包装され、配送されている生体材料又はバイオ医薬製品に影響を及ぼす可能性がある。バイオ医薬製品の製造で使用される細胞株は、特に、溶出物及び浸出物(まとめて、E&L)に弱い可能性がある。たとえば、いくつかの細胞株は、プラスチック容器の接触面からの細胞毒性浸出液ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸(bDtBPP)に影響を受けやすく(Hammond M,et al.PDA J.Pharm.Sci.Technol.67(2)2013:123-134)、他の細胞株は、接触面におけるいくつかのスリップ剤のホルモン様の影響を受けやすい(Tappe A et al;Bioprocess International Jan 13,2016)。
【0010】
したがって、製造、包装及び配送中のバイオ医薬製品と接触する各異なる面は、(a)製品を汚染する(E&L又はプラスチック材料からの元素不純物等)、(b)製品の不安定性をもたらす(タンパク質が接触面上に吸着して劣化する場合等)、(c)製品の量を低減させ、品質を低下させる、(d)製品の貯蔵寿命を短くする、(e)生物学的活性に対して意図されない影響をもたらす(タンパク質凝集をもたらすシリコンオイル等)、(f)異なる接触面を有する容器にわたって移動するバッチにわたる製品の製品効力/品質/量/純度の変動をもたらす可能性を提示する。
【0011】
バイオ医薬品製造、購入及び配送プロセスにおいて、規制機関は、溶出物種の性質、プロセス流体、接触時間及び接触温度等の要素を含む、すべての接触面からのE&Lに対してリスク評価を行うように要求している(Smithers Rapra E&L Conference News;Introduction to Extractables and Leachables Testing(2015)を参照)。各異なる面に対してこうしたE&L評価を準備することは、時間のかかるプロセスであり得る。これらの時間は、貯蔵寿命及び長期保管が重要である容器の場合、深刻化する。
【0012】
FDA及び世界中の他の規制機関もまた、品質を管理する適切なシステムの下でのバイオ医薬製品の製造のための適正製造規範(good manufacturing practice)(GMP)のガイドラインを提供している。たとえば、Q7 Good Manufacturing Practice Guidelines for Active Pharmaceutical Ingredients(APIs);FDA Document 71518(2016)及びDocument 112426(2018)を参照されたい。規制ガイドラインを遵守するには、バイオ医薬製品の製造、包装及び配送において使用されるすべてのプロセス及び機器の注意深い検証が必要である。したがって、バイオ医薬製品の製造、包装及び配送プロセス中に異なる接触面を有する広範囲の容器を使用することにより、バイオ医薬製品の製造、包装及び配送に対する規制当局の承認を得るプロセスが大幅に遅れる可能性がある。
【0013】
さらに、製品品質及び/又はプロセスの再現性に影響を与える可能性がある、機器及び材料の変更を含む、製造プロセスに対する任意の修正、又は確立されたプロトコルからの逸脱は、使用のための材料の適合性に対して不利益な影響がないことを確実にするように検証しなければならない。これに関して、たとえば、GMPガイドラインは、「変更管理(Change Control)」を提供し、そこでは、製造プロセスに対するいかなる変更も、規制当局への申請及び当局の事前承認を必要とする。たとえば、Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations;FDA Document 71023(2006)及びPharma Change Control;The Executive Briefing Series;FDA News(2013)を参照されたい。製造プロセス及び機器の変更によって、異なる材料で機器を、ガイドラインに準拠するために別個に評価及び検証しなければならない場合、製造時間が遅延することになる可能性もある。
【0014】
本開示の好ましいバイオ医薬製品は、治療用タンパク質等のタンパク質、及び抗体等である。こうしたタンパク質及び抗体がフォールディングして体内に治療効果を引き起こすようにするアミノ酸相互作用もまた、タンパク質が接触する可能性がある面及び相互作用面とのタンパク質の望ましくない吸着をもたらす。タンパク質吸着により、不可逆的な変性及び凝集に至る可能性がある。本開示の他の好ましいバイオ医薬製品は、細胞ベースの治療において有用な細胞等、生体材料である。これらの生体材料もまた、それらが接触する面によって影響を受ける可能性がある。本開示のさらに他のバイオ医薬製品は、DNA、RNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む核酸であり得る。それらもまた、それらが接触する面によって影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、製品効力、品質、純度、貯蔵寿命等のあり得る問題を低減させるために、バイオ医薬製品、その中間体及び前駆体が接触する異なる面を最小限にする必要がある。高歩留まり、高品質、高純度製品を適時且つ費用効率の高い方法で製造するために、バイオ医薬製品の製造、包装及び配送に含まれる上流プロセス及び下流プロセスを最適化するとともに調和させる必要もある。共通接触面を有するバイオ医薬製品製造、包装及び配送システムの直接の利点は、規制機関によるこれらのシステムの検証に必要な時間の削減、したがって、最終製品のための市場へのより迅速且つより効率的な経路である。さらに、特定のバイオ医薬製品、その中間体及び前駆体と接触する面を、その面のその製品との適合性を向上させ、且つ変性若しくは吸着又は両方とともにバイオ医薬製品の面接触からもたらされる他の影響を低減させるか又は回避するために、カスタマイズする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの態様では、本開示のシステムは、バイオ医薬製品の製造、包装又は配送において使用される少なくとも2つの容器又はコネクタを備え、前記容器の各々は、内部空洞を画定する壁を備え、容器は、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器の各々の壁は、空洞に面する内面を有し、内面は、内面がバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する共通面によって特徴付けられ、共通面は、結合(tie)コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 結合コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、結合コーティング又は層は、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o バリアコーティング又は層は、SiOxを含み、xは1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層は2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層は、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o pH保護コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層は、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する。
【0017】
本開示の好ましい態様では、少なくとも2つの容器は、バルク量のバイオ医薬製品を保持するために有用な第1容器と、必要としている対象にそのバルク量のアリコートを投与するために有用な第2容器とを含む。
【0018】
他の好ましい態様では、少なくとも2つの容器は、バイオ医薬製品を製造するための細胞の培養において有用な容器を含む。
【0019】
本開示の他の態様では、少なくとも2つの容器/コネクタは、バイオ医薬製品を製造するための細胞の培養において有用な容器/コネクタの大部分、又は好ましくはすべてを含む。他の態様では、少なくとも2つの容器/コネクタは、バイオ医薬製品を製造するための細胞の培養において有用な容器/コネクタの大部分、又は好ましくはすべてと、それらの製品のバルク保管及び必要としている対象に送達するためのそれらの包装において有用な容器/コネクタの大部分、又は好ましくはすべてとを含む。
【0020】
本開示のシステムにはいくつかの利点がある。これら利点には、たとえば、バイオ医薬製品の歩留まり、品質、純度及び効力のあり得る問題を低減させることができる、容器及び/又はコネクタのうちの少なくとも2つの共通接触面がある。容器及びコネクタのうちの少なくとも2つ、好ましくはそれらのより多くにおける共通面により、各接触面を検証するために必要な、且つ接触面が規制機関(FDA等)によって承認される時間を短縮することができる。これにより、バイオ医薬製品に対する市販承認までの経路がより迅速になる。したがって、本開示のシステムは、バイオ医薬製品製造、包装及び配送プロセスの有効性を向上させると同時に、高歩留まり、高品質のバイオ医薬製品の製造を確実にする、新規の解決法を提供する。
【0021】
本開示の特定の実施形態を、以下の番号付き段落に示す。
1.バイオ医薬製品の製造、包装又は配送において使用される少なくとも2つの容器又はコネクタを備えるシステムであって、前記容器の各々が内部空洞を画定する壁を備え、容器が、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器の各々の壁が空洞に面する内面を有し、内面が、内面がバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する共通面によって特徴付けられ、共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、結合コーティング又は層が、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層が、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層が、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する、システム。
【0022】
2.容器が、384ウェルプレート、96ウェルプレート、バイオリアクタ、採血管、瓶、バルク保管容器、カニューレ、捕獲カラム、カートリッジ、カテーテル、セルバンクバイアル、細胞分離装置、細胞バイアル、遠心ポンプ、遠心分離機チューブ、クロマトグラフィカラム、クロマトグラフィバイアル、浄化器、密封容器、容器施栓系、凍結保存容器、培養瓶、配送用容器、透析ろ過装置、分注ユニット、ELISAプレート、溶出バッグ、真空採血管、充填/仕上げ装置、ろ過装置、凍結乾燥機、回収容器、振とう器、工程内分析機器、中間カラム、静脈注射(IV)バッグ、培地バッグ、培地瓶、培地容器、メンブレンクロマトグラフィカラム、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート、混合バッグ、モニタリング装置、多目的バイオリアクタ、パッケージ充填装置、ポンプ、ペトリ皿、ピペットチップ、プレート、プランジャ、ポリッシュカラム、プレフィルドシリンジ、ルアーロックフィッティング付きプレフィルドシリンジ、一次包装、生産バイオリアクタ、生産発酵槽、ローラボトル、試料採取管、試料採取容器、種発酵槽、分離器、振とうフラスコ、単回使用バイオリアクタ、スライド、スピナフラスコ、固定針プレフィルドシリンジ、保管バッグ、滅菌装置、保存培養バイアル、保管容器、シリンジ(プレフィルド)、タンク、末端反応器、輸送用バッグ、限外ろ過/透析ろ過装置、限外ろ過装置、上流バイオリアクタ、弁、バイアル、ウイルスろ過装置、ウイルス不活性化容器及びウェーブバイオリアクタのうちの1つ又は複数からなる群から選択される、段落1のシステム。
【0023】
3.容器のうちの少なくとも1つが、バイオリアクタ、ポンプ、セルバンクバイアル、回収容器、保存培養バイアル、発酵槽、振とうフラスコ、振とう器、カラム、分離器、バッグ、ビーカ、タンク、シリンダ、バルク保管ユニット又は容器、単回使用バッグ、ローラボトル、保管チューブ及び試料採取容器からなる群から選択される、段落2のシステム。
【0024】
4.容器のうちの少なくとも1つが、シリンジ、分注ユニット、バイアル及び静脈注射(IV)バッグからなる群から選択される、段落2のシステム。
【0025】
5.少なくとも2つの容器が、(a)バルク量のバイオ医薬製品を保持するために有用な第1容器と、(b)必要としている対象に前記バイオ医薬製品の少なくとも一部を含む組成物を投与するために有用な第2容器とを含む。段落1~4のいずれか1つのシステム。
【0026】
6.容器のうちの1つ又は複数を1つ又は複数の別の容器又はコネクタに接続する1つ又は複数のコネクタをさらに備え、1つ又は複数の系列における前記容器のうちの少なくとも1つが壁を有し、その壁の内面が、製造中のバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する面によって特徴付けられ、上記面が、第1容器及び第2容器の最内面に共通している、段落5のシステム。
【0027】
7.容器の1つ又は複数の系列における容器のうちの1つが、バイオリアクタ、発酵槽、ポンプ、ローラボトル、フラスコ、振とう器、分離器、バッグ、ビーカ、試料採取容器、シリンダ、ピペットチップ、スライド及びバイアルからなる群から独立して選択される、段落6のシステム。
【0028】
8.容器の1つ又は複数の系列における容器のうちの少なくとも1つが、1つ又は複数のコネクタを介して、容器の1つ又は複数の系列における容器のうちの別のものに接続され、前記コネクタのうちの少なくとも1つが、内部空洞を画定する壁を備え、壁が、製造中のバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する面によって特徴付けられる内面を有し、上記面が、第1容器及び第2容器の最内面に共通している、段落6又は7のシステム。
【0029】
9.各コネクタが、チューブ、配管、弁及びパイプからなる群から独立して選択される、段落8のシステム。
【0030】
10.前記バルク量の前記バイオ医薬製品の製造において有用な容器の1つ又は複数の系列をさらに備え、1つ又は複数の系列における前記容器のうちの少なくとも1つが壁を有し、その壁の内面が、製造中のバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する面によって特徴付けられ、上記面が、第1容器及び前記第2容器の面に共通しておらず、製造中のバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する面が、1つ又は複数の系列における前記容器のうちの別のものの少なくとも1つの壁の上の面に共通している、段落5のシステム。
【0031】
11.共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、結合コーティング又は層が、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層が、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層が、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する、段落10のシステム。
【0032】
12.バイオ医薬製品の1つ又は複数の特徴、すなわち品質、純度及び完全性のうちの1つ又は複数を評価するのに有用な、少なくとも2つの容器又はコネクタを備えるシステムであって、前記容器の各々が内部空洞を画定する壁を備え、容器が、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器の各々の壁が空洞に面する内面を有し、内面が、内面がバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する共通面によって特徴付けられ、共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、結合コーティング又は層が、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層が、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層が、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する、システム。
【0033】
13.共通面が、段落5の第1容器及び第2容器の共通面、段落9の1つ又は複数の容器の共通面、又はいずれとも同一ではない、段落12のシステム。
【0034】
14.共通面が、段落5の容器及び第2容器の共通面、及び段落9の1つ又は複数の容器の共通面のうちの一方又は両方と同一である、段落12のシステム。
【0035】
15.各容器が、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート及びペトリ皿からなる群から選択される、段落11又は12のシステム。
【0036】
16.バイオ医薬製品が、抗体、バルクバイオ医薬品製剤、細胞培養製剤、細胞懸濁液、培養液、バイオ医薬製品、バイオ医薬品物質、バイオ医薬品製剤、発現ベクタ/宿主製剤、回収細胞製剤、宿主細胞組成物、宿主細胞汚染物質、移動相、モノクローナル抗体製剤、生成物流、シードトレイン組成物、固定相、ペプチド又はタンパク質製剤、及び核酸製剤のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、段落1~15のいずれかのシステム。
【0037】
17.バイオ医薬製品の製造、包装又は配送において有用な少なくとも2つの容器又はコネクタを備え、前記容器又はコネクタの各々が内部空洞を画定する壁を備え、容器又はコネクタが、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器又はコネクタの各々の壁が空洞に面する内面を有する、システムを製造する方法であって、
・バイオ医薬製品を提供するステップと、
・仮接触面を提供するステップと、
・バイオ医薬製品が仮接触面と適合性があるか否かを判断するステップと、
・仮接触面を、バイオ医薬製品とのその適合性を向上させるように修正し、それにより、カスタマイズされた接触面を製造するステップと、
・カスタマイズされた接触面を使用して、容器/コネクタの内面が、内面がバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において内面上に存在するカスタマイズされた共通面によって特徴付けられるように、システムを製造するステップであって、カスタマイズされた共通面が、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 結合コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、結合コーティング又は層が、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o バリアコーティング又は層が、SiOxを含み、xが1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層が2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層が、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o pH保護コーティング又は層が、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層が、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する、ステップと、
を含む、方法。
【0038】
18.バイオ医薬製品が、抗体、バルクバイオ医薬品製剤、細胞培養製剤、細胞懸濁液、培養液、バイオ医薬製品、バイオ医薬品物質、バイオ医薬品製剤、発現ベクタ/宿主製剤、回収細胞製剤、宿主細胞組成物、宿主細胞汚染物質、移動相、モノクローナル抗体製剤、生成物流、シードトレイン組成物、固定相、ペプチド又はタンパク質製剤、及び核酸製剤のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、段落17の方法。
【0039】
19.仮接触面が90°未満の水接触角を有する、段落17又は18の方法。
【0040】
20.仮接触面が、X線光電子分光法(XPS)及び任意選択的に水素前方散乱(HFS)分析又はラザフォード後方散乱(RBS)分析によって決定されるように1%未満のH結合ドナー基を有する、段落17~19のいずれかの方法。
【0041】
21.仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBS分析によって決定されるように少なくとも1%のH結合アクセプタ基を有する、段落17~20のいずれかの方法。
【0042】
22.仮接触面が、XPSによって決定されるように1%未満のアニオン基及びカチオン基を有する、段落17~21のいずれかの方法。
【0043】
23.仮接触面に、XPSによって決定されるように、ケイ素以外の金属又はメタロイド原子が実質的にない、段落17~22のいずれかの方法。
【0044】
24.仮接触面が、プラズマ(励起)化学気相成長(PECVD)コーティングである、段落17~23のいずれかの方法。
【0045】
25.仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBSによって決定される、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子の以下の統計的な比:Si=1:O=x:C=y:H=zを有し、式中、xが約1.5~約2.9であり、yが約0~約1であり、zが約0~約4の範囲内にある、段落17~24のいずれかの方法。
【0046】
26.仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBSによって決定される、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子の以下の統計的な比:Si=1:O=x:C=y:H=zを有し、式中、xが0.5~2.4であり、yが0.6~3であり、zが2~9のである、段落17~24のいずれかの方法。
【0047】
27.仮接触面が、XPS及び任意選択的にHFS又はRBSによって決定される、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子の以下の統計的な比:Si=1:O=x:C=y:H=zを有し、式中、xが1.5~2.9であり、yが約0であり、zが約0である、段落17~24のいずれかの方法。
【0048】
28.容器が、384ウェルプレート、96ウェルプレート、バイオリアクタ、採血管、瓶、バルク保管容器、カニューレ、捕獲カラム、カートリッジ、カテーテル、セルバンクバイアル、細胞分離装置、細胞バイアル、遠心ポンプ、遠心分離機チューブ、クロマトグラフィカラム、クロマトグラフィバイアル、浄化器、密封容器、容器施栓系、凍結保存容器、培養瓶、配送用容器、透析ろ過装置、分注ユニット、ELISAプレート、溶出バッグ、真空採血管、充填/仕上げ装置、ろ過装置、凍結乾燥機、回収容器、振とう器、工程内分析機器、中間カラム、静脈注射(IV)バッグ、培地バッグ、培地瓶、培地容器、メンブレンクロマトグラフィカラム、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート、混合バッグ、モニタリング装置、多目的バイオリアクタ、パッケージ充填装置、ポンプ、ペトリ皿、ピペットチップ、プレート、プランジャ、ポリッシュカラム、プレフィルドシリンジ、ルアーロックフィッティング付きプレフィルドシリンジ、一次包装、生産バイオリアクタ、生産発酵槽、ローラボトル、試料採取管、試料採取容器、種発酵槽、分離器、振とうフラスコ、単回使用バイオリアクタ、スライド、スピナフラスコ、固定針プレフィルドシリンジ、保管バッグ、滅菌装置、保存培養バイアル、保管容器、シリンジ(プレフィルド)、タンク、末端反応器、輸送用バッグ、限外ろ過/透析ろ過装置、限外ろ過装置、上流バイオリアクタ、弁、バイアル、ウイルスろ過装置、ウイルス不活性化容器及びウェーブバイオリアクタのうちの1つ又は複数からなる群から選択される、段落17~27のいずれかの方法。
【0049】
29.容器の仮接触面を、特定のバイオ医薬製品とのその適合性を向上させるように修正して、カスタマイズされた接触面を製造する方法が、
・仮接触面の水接触角を、元の水接触角の約10%~90%だけ低減させるステップと、
・XPS分析及び任意選択的にHFS分析又はRBS分析によって決定されるように、仮接触面のH結合ドナー基の割合を約10%~90%だけ低減させるステップと、
・XPS分析及び任意選択的にHFS分析又はRBS分析によって決定されるように、前記仮接触面のH結合アクセプタ基の割合を約10%~90%だけ増大させるステップと、
・XPS分析によって決定されるように、仮接触面のアニオン基、カチオン基、又は両方の割合を約10%~90%だけ低減させるステップと、
・XPS分析によって決定されるように、仮接触面のケイ素以外の金属又はメタロイド原子の割合を約10%~90%だけ低減させるステップと、
のうちの少なくとも1つを含む、段落17~28のいずれかの方法。
【0050】
本開示のさらなる態様は、本明細書の説明及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1a】コーティングされたポリマーチューブ(本開示では2層及び3層)及びコーティングされていないポリマー、環状オレフィンポリマー(COP)容器の接触面に吸着したIgGタンパク質の量(ng/cm
2)を比較する。
【
図1b】コーティングされたポリマーチューブ(本開示では2層及び3層)及びコーティングされていないポリマー、環状オレフィンポリマー(COP)容器の接触面に保持されたIgGタンパク質の量(ng/cm
2)を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
定義
本開示をより容易に理解することができるために、最初にいくつかの用語を定義する。これらの定義は、本開示の残りの部分に鑑みて、且つ当業者によって理解されるように読まれるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び化学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。上記詳細な説明を通して追加の定義を示す。
【0053】
本明細書では例示的な方法及び材料を記載するが、さまざまな態様及び実施形態の実施又は試験において、本明細書に記載するものと同様又は等価な方法及び材料も使用することができる。材料、方法及び例は、単に例示的なものであり、限定的であるようには意図されていない。
【0054】
任意の実施形態による「備える、含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除するものではない。不定冠詞「1つの(a又はan)」は、別段の指示がない限り、複数を排除するものではない。単数形は複数形を含む。
【0055】
パラメータ範囲が示されている場合はいつでも、範囲の限界として与えられるパラメータ値と、前記範囲内にあるパラメータのすべての値とを開示するように意図されている。
【0056】
本明細書における「約」値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(且つ述べる)。たとえば、「約X」と言及する記載は、「X」の記載を含む。本明細書で用いる場合の「約」という用語は、有効数字の範囲内の±10%の差異を許容する。
【0057】
態様又は実施形態がマーカッシュ群又は代替の他の分類によって記載されている場合、本開示は、全体として列挙される群全体のみでなく、群の各要素を個々に、且つ主群のあり得るすべての下位群、及び群要素のうちの1つ又は複数を欠く主群もまた包含する。本開示は、群要素のうちの任意のものの1つ又は複数の明示的な排除、又はマーカッシュ群に列挙されていない他の要素の包含も想定している。
【0058】
本明細書で用いる場合の「システム」という用語は、バイオ医薬製品の製造、包装及び/又は配送においてともに作用する一組の容器/コネクタ又は容器/コネクタのいくつかの組を指す。システムは、包装及び保管の間及び後にバイオ医薬製品の品質を試験することを含む、製造プロセス及び/又はそのプロセスを使用して製造されたバイオ医薬製品の品質を試験するために有用な、一組の容器/コネクタも備えることができる。システムは、各々がバイオ医薬製品及び/又はその中間体若しくは前駆体と接触する面を有する、容器/コネクタを備える。いくつかの実施形態では、システムは、バイオ医薬製品製造プロセスにおける上流プロセスで使用される容器/コネクタのうちの2つ以上を備える。いくつかの実施形態では、システムは、バイオ医薬製品製造プロセスにおける上流プロセスで有用な容器/コネクタのうちの2つ以上を備える。いくつかの実施形態では、システムは、バイオ医薬製品製造、包装及び配送プロセスの品質管理において必要な容器/コネクタのうちの2つ以上を備える。さらに他の実施形態では、システムは、バイオ医薬製品製造、包装及び配送プロセスにおける上流プロセス及び下流プロセスの何らかの組合せにおいて有用な容器/コネクタとともに、プロセス及びそのさまざまな段階の品質管理で使用される容器/コネクタのうちの2つ以上を備える。
【0059】
本明細書で用いる場合の「容器」という用語は、バイオ医薬製品の製造、包装、配送及び/又は品質管理で使用される任意のタイプの物品であり得る。容器は、内部空洞を画定する壁を備える。本開示の文脈における容器は、任意選択的に、一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができる。各容器の壁は、空洞に面する内面を有し、内面は、内面がバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する1つの面によって特徴付けられる。本開示の文脈における容器/コネクタは、1つ又は複数の開口部、たとえば1つの開口部又は2つの開口部を有することができる。容器は、剛性壁若しくは可撓性壁又は両方の組合せを有することができる。剛性容器は、ステンレス鋼バイオリアクタ又はガラス若しくは金属ローラボトル等、ステンレス鋼等から作製することができる。可撓性容器は、プラスチックバイオリアクタ又は保管バッグ等の単回使用の使い捨てバッグのみであるか、又は剛性若しくは可撓性壁を有する容器とともに使用され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、上流プロセスにおける容器の系列は、バイオ医薬製品又はその前駆体、及び任意の流体溶剤、培地等と接触する任意の容器を含む。
【0061】
本開示の容器のいくつかの非限定的な例は、384ウェルプレート、96ウェルプレート、バイオリアクタ、採血管、瓶、バルク保管容器、カニューレ、捕獲カラム、カートリッジ、カテーテル、セルバンクバイアル、細胞分離装置、細胞シアル(cell cial)、遠心ポンプ、遠心分離機チューブ、クロマトグラフィカラム、クロマトグラフィバイアル、浄化器、密封容器、容器施栓系、凍結保存容器、培養瓶、配送用容器、透析ろ過装置、ELISAプレート、溶出バッグ、真空採血管、充填/仕上げ装置、ろ過装置、凍結乾燥機、回収容器、振とう器、工程内分析機器、中間カラム、静脈注射(IV)バッグ、培地バッグ、培地瓶、培地容器、メンブレンクロマトグラフィカラム、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート、混合バッグ、モニタリング装置、多目的バイオリアクタ、パッケージ充填装置、ポンプ、ペトリ皿、ピペットチップ、プレート、プランジャ、ポリッシュカラム、プレフィルドシリンジ、ルアーロックフィッティング付きプレフィルドシリンジ、一次包装、生産バイオリアクタ、生産発酵槽、ローラボトル、試料採取管、試料採取容器、種発酵槽、分離器、振とうフラスコ、単回使用バイオリアクタ、スライド、スピナフラスコ、固定針プレフィルドシリンジ、保管バッグ、滅菌装置、保存培養バイアル、保管容器、シリンジ(プレフィルド)、タンク、末端反応器、輸送用バッグ、限外ろ過/透析ろ過装置、限外ろ過装置、上流バイオリアクタ、弁、バイアル、ウイルスろ過装置、ウイルス不活性化容器又はウェーブバイオリアクタである。
【0062】
本明細書で用いる場合の「バイオ医薬品」、「バイオ医薬製品」等の用語は、生体(生体材料)から製造された又は生体の構成要素を含有する治療若しくは予防薬若しくは製品、及び/又は、タンパク質(抗体、ホルモン及び酵素を含む)、核酸(DNA、RNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)、ワクチン、抗生物質、血液、血液成分、細胞、アレルゲン、遺伝子及び組織を含む、本来の(操作されていない)生物学的供給源並びにそれらの前駆体及び中間体からの抽出を伴う手段によって製造された製品を指す。こうした製品は、治療、予防又は診断の目的で使用することができる。本明細書で用いる場合の(バイオ医薬製品の一部としての)「生体材料」という用語は、バイオ医薬製品を製造するために使用される原料(溶剤、培地、移動相、固定相等を含む)、細胞、細胞株、細胞懸濁液、接種材料、シードトレイン、生成物流、細胞培養物、発現ベクタ/宿主製剤、回収細胞、宿主細胞組成物、宿主細胞汚染物質、バイオマス等、及びたとえば細胞ベースの治療で使用される場合は生体材料自体を指す。
【0063】
本明細書で用いる場合の「面」という用語は、バイオ医薬製品と接触する、容器/コネクタの内面を指す。特に、本開示の容器/コネクタは、内部空洞を画定する壁を備え、容器/コネクタは、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができる。前記容器/コネクタの各々の壁は、空洞に面する内面を有し、内面は、内面がバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する面によって特徴付けられる。
【0064】
本明細書で用いる「共通面」という用語は、バイオ医薬製品の製造、包装及び配送で使用される少なくとも1つの他の容器/コネクタの内面と同一である、容器/コネクタの内面を指す。
【0065】
さまざまなコーティング又は層、すなわち、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及びpHコーティング又は層と、たとえばプラズマ化学気相成長法(PECVD)により、コーティング又は層を作成し施す方法とに関連する用語は、米国特許出願公開第2018-0334545A1号明細書、たとえば3層PECVDコーティングに関する米国特許第10016338号明細書、同第9937099号明細書及び同第9554968号明細書、同様にPECVDコーティングに関する米国特許第9878101号明細書、同第9863042号明細書、同第9764093号明細書、同第9458536号明細書、同第9272095号明細書(疎水性)及び同第7985188号明細書、たとえばポリマー面のプラズマ処理に関する米国特許第9662450号明細書、医薬品包装用の糖保護コーティングに関する米国特許第9545360号明細書、たとえば医薬品包装に関する米国特許出願公開第2015-0297800A1号明細書、可撓性バッグに関するPCT出願PCT/US2020/012638号明細書、並びに、たとえば採血管に関する米国仮特許出願第62/929,668号明細書に記載されている。これらの文献の各々は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0066】
本明細書で用いる場合の「コネクタ」という用語は、バイオ医薬製品製造作業において2つの別個のプロセス構成要素又は容器の間に、典型的には滅菌された、信頼性の高い接続及び流体移送を提供する器具を指す。コネクタは、雄雌の別があってもなくてもよく、単回使用にも多回使用にも好適であり得る。コネクタは、2つの剛性容器を互いに、2つの可撓性容器を互いに、又は剛性容器を可撓性容器に接続するために使用することができる。コネクタは、チューブ、配管、弁、パイプ等であり得る。たとえば、さまざまなタイプのコネクタに関して、Proctor G,Parker Bioprocess Filtration Team report(October 15,2019)を参照されたい。
【0067】
本開示において用いられるケイ素以外のメタロイドは、ホウ素、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)及びアスタチン(At)である。本明細書で用いられる金属は、限定されないがアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタノイド及びアクチノイドを含む、一般に認識される金属元素のうちの任意ものである。
【0068】
本明細書で用いる場合の、バイオ医薬製品製造、包装及び配送プロセスにおける「上流プロセス」という用語は、かなりの規模で細胞株が発生しバイオマスが生成される、典型的なバイオプロセシング段階を指す。上流処理は、それぞれ細菌発酵又は哺乳動物細胞培養と称される、細菌培養ベース又は細胞培養ベースいずれかの生成物の増殖である。上流プロセスでは、接種材料が(細胞を単離及び精製することにより)作成され、増殖培地が作成され、大規模生成物発生のために増殖速度が向上する。適切な細胞密度に達すると、培養物は下流プロセスに移される。商業生産では、上流プロセスは、1,000L~10,000Lの範囲の容積の1つ又は複数の容器(バイオリアクタ等)で行うことができる。種培養物は、典型的には、これらの大型の製造容器に接種する前に一連の通路において増殖する。
【0069】
上流プロセスでは、容器内の接触面は、バイオ医薬製品(その中間体又は前駆体を含む)、及び/又はバイオ医薬製品を生成するために使用されるか又はそれ自体がバイオ医薬製品である生体材料と接触する可能性がある。たとえば、タンパク質バイオ医薬製品の前駆体は、アンフォールディングタンパク質、ポリペプチド、部分的な後処理化学修飾がなし又はありの未処理タンパク質、タンパク質の中間形態等であり得る。生体材料は、細胞、細胞の接種材料、細胞培養物、細胞株、バイオマス等であり得る。上流プロセスで使用される容器の1つ又は複数の系列における容器の例としては、バイオリアクタ、発酵槽、ポンプ、ローラボトル、フラスコ、振とう器、カラム、分離器、バッグ、ビーカ、試料採取容器、シリンダ、ピペットチップ、スライド、バイアル等が挙げられる。
【0070】
本明細書で用いる場合の、バイオ医薬製品製造、包装及び配送プロセスにおける「下流プロセス」という用語は、典型的には、以下の非限定的なステップを含む。(a)不溶物の除去:生成物は、粒子を含まない液体における溶質として捕捉され、たとえば、抗生物質を含有する発酵培養液からの細胞、細胞片又は他の粒状物質の分離である。これを達成する典型的な操作は、ろ過、遠心分離、沈降、沈殿、凝集、電気沈殿及び重力沈降である。植物及び動物組織等の固体源から生成物を回収するために、粉砕、ホモジナイゼーション又は浸出等、さらなる操作を使用することができる。(b)生成物単離は、特性が所望の生成物とは著しく異なる成分の除去である。大部分の生成物の場合、水は主要不純物であり、単離ステップは、その大部分を除去し、操作すべき物質の体積を低減させるとともに生成物を濃縮するように設計される。生成物単離操作は、単位操作のうちのいくつかである、溶剤の抽出、吸着、限外ろ過及び沈殿のステップを含む。(c)生成物精製は、物理特性及び化学特性において生成物に類似する汚染物質を分離するように行われる。その結果、この段階のステップは、実施するのに費用がかかるとともに、高感度且つ高性能の機器を必要とする。この段階は、下流処理費用全体のかなり部分をもたらす。精製操作の例としては、アフィニティ、サイズ排除、逆相クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、結晶化及び分別沈殿が挙げられる。(d)生成物最終精製は、安定しており、容易に輸送可能であり、且つ好都合である形態での生成物(製品)の包装で終了する、最終下流処理ステップを言う。典型的な操作としては、結晶化、脱水、凍結乾燥及び噴霧乾燥が挙げられる。生成物及びその意図される使用に応じて、最終精製は、生成物を滅菌するとともに、生成物の安全性を損なう可能性がある汚染物質及びウイルスを除去するか又は不活性化する操作も含むことができる。こうした操作は、ウイルスの除去又は脱パイロジェンを含むことができる。
【0071】
引用したすべての参考文献は、任意の目的でそれらの全体が援用される(矛盾がある場合、本明細書が優先される)。
【0072】
詳細な説明
ここで、幾つかの実施形態において、本開示についてより十分に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に示す実施形態に限定されるように解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は例である。本明細書に記載する各実施形態は、個々に、又は本明細書に記載する他の任意の実施形態と組み合わせて使用することができる。
【0073】
下流バイオ医薬製品製造、包装及び配送システム
本開示の1つの態様は、バイオ医薬製品を製造、包装及び配送する下流プロセスで使用することができる、共通接触面を含む2つ以上の容器を備えるシステムである。
【0074】
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、本開示のシステムは、少なくとも、バルク量のバイオ医薬製品を保持する第1容器と、必要としている対象に前記バイオ医薬製品の少なくとも一部を含む組成物を投与するために有用な第2容器とを備える。第1容器の例は、タンク、シリンダ、バルク保管ユニット又は容器、単回使用バッグ、ローラボトル、保管チューブ等である。第2容器の例は、シリンジ、分注ユニット、バッグ、バイアル、静脈注射(IV)バッグ等である。
【0075】
この例示的な実施形態における容器の各々は、内部空洞を画定する壁を備え、容器は、任意選択的に一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器の各々の壁は、空洞に面する内面を有し、内面は、内面がバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する共通面によって特徴付けられ、共通面は、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、
o 結合コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、結合コーティング又は層は、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o バリアコーティング又は層は、SiOxを含み、xは1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層は2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層は、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、
o pH保護コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層は、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、下流プロセスにおけるいくつかの容器及び機器の接触面は、下流アセンブリにおける他の容器のものと共通する接触面によって特徴付けられない。たとえば、不純物及び/又はバイオ医薬品材料を捕捉するために表面上に化学改質されたリガンドを有する、フィルタ、精製コーム、クロマトグラフィカラム等は、タンク、シリンダ、バルク保管ユニット又は容器、単回使用バッグ、ローラボトル、保管チューブ、シリンジ、分注ユニット、バイアル等、下流プロセスの他の容器に存在する接触面と同じ接触面を有する可能性はない。同様に、下流プロセスにおける他の容器は、共通の容器を有する可能性はない。しかしながら、好ましい実施形態では、下流プロセスで使用される複数の容器及びコネクタ、場合によりそれらの大部分は、共通面を共有する。
【0077】
上流バイオ医薬品製造システム
本開示の一態様は、バイオ医薬製品を製造する上流プロセスにおいて使用することができる、共通接触面を含む2つ以上の容器を備えたシステムである。
【0078】
本開示のこの態様におけるいくつかの実施形態では、本開示のシステムは、前記バイオ医薬製品の製造において有用な容器の1つ又は複数の系列を備え、1つ又は複数の系列における前記容器のうちの少なくとも1つは、内壁を有し、内壁は、製造中のバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において内壁上に存在する面によって特徴付けられ、その面は、上流プロセス又は下流プロセスで使用される容器及びコネクタの別のものの最内面に共通している。たとえば、いくつかの実施形態では、上流プロセスは、バイオ医薬製品の製造に有用な容器の1つ又は複数の系列を含むことができ、その1つ又は複数の系列における前記容器のうちの少なくとも1つは壁を有し、その壁の内面は、製造中のバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する面によって特徴付けられ、上記面は、下流プロセスにおける容器又はコネクタのうちのいずれの面にも共通しないが、製造中のバイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において前記壁上に存在する面は、上流プロセスで使用される容器又はコネクタの1つ又は複数の系列における前記容器のうちの別のものの少なくともの1つの壁の面に共通する。たとえば、所望の医薬品をもたらす細胞を増殖させるか又は回収するために使用することができる、上流プロセスにおける容器の系列の各容器(すなわち、生産容器又はバイオリアクタ)は、同一の共通接触面を有することができる。しかしながら、この面は、バイオ医薬製品を保持するか又はそれを必要とする対象に配送する下流プロセスの容器に存在する接触面とは異なり得る。
【0079】
他の実施形態では、共通面は、上流プロセス及び下流プロセスにおいて使用される1つ又は複数の容器又はコネクタによって共有される。1つの好ましい実施形態では、共通面は、バイオ医薬製品をもたらす細胞を培養するために使用される容器(たとえば、バイオリアクタのうちの1つ又は複数、好ましくはすべて)と、バルクバイオ医薬製品を保管する容器、及び好ましくはまた、必要とする対象にバイオ医薬製品を配送するために使用される容器とのうちの1つ又は複数によって共有される。より好ましくは、共通面は、バイオリアクタを互いに、且つバルク容器及び配送容器と連結する、さまざまなコネクタ及び他の機器によっても共有される。
【0080】
上記態様では、共通面はいくつかの実施形態では、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、結合コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、結合コーティング又は層は、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、バリアコーティング又は層は、SiOxを含み、xは1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層は2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層は、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、pH保護コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層は、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する。
【0081】
コネクタ
いくつかの実施形態では、上流プロセス又は下流プロセスにおける1つ又は複数の容器は、互いに接続することができる。さらに他の実施形態では、連続製造、包装及び/又は配送システム等では、コネクタは、上流プロセスにおける1つ又は複数の容器を、下流プロセスにおける1つ又は複数の容器に接続することができる。すべての実施形態において、コネクタの例としては、チューブ、配管、弁、パイプ等が挙げられる。
【0082】
いくつかの実施形態では、コネクタは、2つの処理ユニットの間に滅菌接続を提供する。いくつかの実施形態では、コネクタは、3つ以上の処理ユニットの間に滅菌接続を提供する。たとえば、容器の系列は、コネクタを介して互いに接続することができ、その系列は複数の容器を有することができる。いくつかの実施形態では、コネクタは、容器のアレイを互いに直列に接続することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のコネクタは、内部空洞を画定する壁を備え、壁は、製造中にバイオ医薬品、生成物、中間体、又はプロセス若しくは生体材料と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する面によって特徴付けられる内面を有し、上記面は、別の上流若しくは下流プロセス、容器又はコネクタの最内面に共通している。
【0083】
品質管理機器
本開示の一態様は、以下の特徴、すなわち、(i)バイオ医薬製品を構成する組成物、(ii)バイオ医薬製品の前駆体、及び(iii)バイオ医薬製品を製造するために使用される生体材料のうちの1つ又は複数の品質、純度及び完全性のうちの1つ又は複数を評価するのに有用な容器の1つ又は複数の系列を備えるシステムであり、前記容器の各々は、内部空洞を画定する壁を備え、容器は、任意選択的に、一端において又は一側面において開放しているか又は開放することができ、前記容器の各々の壁は、空洞に面する内面を有し、内面は、内面が前記バイオ医薬製品と接触する実質的にすべての領域において壁上に存在する共通面によって特徴付けられ、共通面は、結合コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及び任意選択的にpH保護コーティング又は層を含み、結合コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、結合コーティング又は層は、容器の壁に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、バリアコーティング又は層は、SiOxを含み、xは1.5~2.9であり、バリアコーティング又は層は2~1000nm厚さであり、バリアコーティング又は層は、結合コーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有し、pH保護コーティング又は層は、SiOxCy又はSiNxCyを含み、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、pH保護コーティング又は層は、バリアコーティング又は層の内面に面する外面を有するとともに、空洞に面する内面を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、製造、包装及び配送プロセス中のバイオ医薬製品の品質、純度及び完全性を評価するのに有用なシステムは、バイオマニュファクチャリングプロセス、材料及び製品に対する品質管理を維持する機器を備える。品質管理(QC)及び品質保証(QA)は、最終製品が、一貫しており、安全であり、有効であり、予測可能であり、且つ欠陥がないことを確実にするために、製薬会社に対して、材料、プロセス、機器、技法、環境及び人員を徹底的に検査することを要求する、バイオ医薬品業界の本質的な機能である。QC応用としては、FT-IR/ラマン顕微鏡法による微量分析、MALDI-TOF-MSによる微生物同定、NMRによる化合物同一性の決定及び定量解析、XRD分光法による原材料分析、FT-IR分光器による偽造分析、LC-MSによるAPIの分析を挙げることができる。バイオ医薬品材料のQC試験に使用することができる容器の例としては、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート、ペトリ皿、ピペットチップ、バイアル等が挙げられる。
【0085】
本開示のいくつかの実施形態では、バイオ医薬製品の品質、量、純度、完全性等の態様が試験されるとき、無傷細胞のこれらの態様を試験するために使用される機器の接触面は、これらの細胞が増殖し回収された容器のうちの少なくともいくつかの接触面と同一である。他の実施形態では、無傷細胞のこれらの態様を試験するために使用される機器の接触面は、これらの細胞が増殖し回収された容器の接触面と同一ではない。いくつかの実施形態では、バイオ医薬品材料(すなわち、バイオ医薬品組成物及び/又はその前駆体)の品質、量、純度、完全性等の態様が試験されるとき、バイオ医薬品のこれらの態様を試験するために使用される機器の接触面は、バイオ医薬製品が精製され、保持され、又は包装された下流プロセスにおける容器のうちの少なくともいくつかの接触面と同一である。他の実施形態では、バイオ医薬品のこれらの態様を試験するために使用される機器の接触面は、バイオ医薬製品が精製され、保持され、又は包装された下流プロセスにおける容器の接触面と同一ではない。
【0086】
仮接触面の適合性の決定
本開示の一態様は、バイオ医薬製品を製造、包装又は配送する方法であり、本方法は、バイオ医薬製品を提供するステップと、仮接触面を提供するステップと、バイオ医薬製品が仮接触面と適合性があるか否かを判断するステップと、仮接触面を、バイオ医薬製品とのその適合性を向上させるように修正し、それにより、カスタマイズされた接触面を製造するステップと、2つ以上の容器又はコネクタにおいてカスタマイズされた接触面を使用するステップであって、各容器又はコネクタが空洞及び内壁を備え、2つ以上の容器の内壁が、バイオ医薬製品の製造、包装又は配送においてカスタマイズされた共通面を含む、ステップとを含む。
【0087】
任意の実施形態では、仮接触面の適合性を決定するために、以下の分析試験方法のうちの1つ又は複数を使用することができる。
【0088】
放射標識タンパク質吸着実験を、以前発表された文献、たとえば、Mingchao Shenら、Y.Vickie Panら又はT.A.Horbettによって著された前述に引用し援用した論文に従って実施することができる。これらの方法は、本明細書の実施例において、ペプチドの表面吸着及び変性を決定するために使用される。
【0089】
X線光電子分光法(XPS)は、たとえば、Physical Electronics,Eden Prairie,MNによって販売されているPHI Quantum 2000機器を使用することによって実施することができる。XPSを使用して、プラズマ処理されたマイクロプレート又は他の容器及び機器の、水素以外の表面原子組成を決定することができる。使用されるX線源は、1486.6eVでの単色化Alkαであり得る。受光角度及び脱出角度は、それぞれ±23°及び45°であり得る。分析面積は、1400×300μmであり得る。これらの条件は、本明細書の実施例において、表面変化と水素結合ドナー基及びアクセプタ(受容体)基の存在とを決定するために使用される。
【0090】
面の水接触角の測定は、たとえば、評価すべき面上に蒸留及び脱イオン水の5~10マイクロリットル液滴を配置することによって実施することができる。固体液体界面におけるベクトルと液体空気界面におけるベクトルとの間に形成された角度が測定される。これらの条件は、本明細書の実施例において使用される。
【0091】
測定された水接触角は、0~180度であり得る。概して、90度を超える角度は、疎水性とみなされ、90度未満の角度は、親水性とみなされる。0度に近づく角度は、極めて親水性が高いとみなされ、180度に近づく角度は極めて疎水性が高いとみなされる。
【0092】
仮接触面の修正
本開示のこの態様のいくつかの実施形態では、仮接触面を修正又はカスタマイズするステップは、バイオ医薬製品との仮接触面の適合性を向上させ、以下のステップのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、仮接触面を修正するステップは、少なくとも一部には、仮接触面の水接触角を低減させることによって実施される。他の実施形態では、仮接触面を修正するステップは、少なくとも一部には、仮接触面のX線光電子分光法(XPS)及び水素前方散乱(HFS)分析によって決定されるようにH結合ドナー基の割合を低減させることにより、実施される。いくつかの実施形態では、仮接触面を修正するステップは、少なくとも一部には、仮接触面のX線光電子分光法(XPS)及び水素前方散乱(HFS)分析又はラザフォード後方散乱(RBS)分析によって決定されるようにH結合ドナー基の割合を低減させることにより、実施される。水素前方散乱(HFS)分析又はラザフォード後方散乱(RBS)分析は、接触面の水素含有量の2つの異なる分析である。いずれか又は両方を使用することができる。他の実施形態では、仮接触面を修正するステップは、少なくとも一部には、仮接触面のX線光電子分光法(XPS)及び水素前方散乱(HFS)分析又はラザフォード後方散乱(RBS)分析によって決定されるようにH結合ドナー基の割合を増大させることにより、実施される。いくつかの実施形態では、仮接触面を修正するステップは、少なくとも一部には、仮接触面のX線光電子分光法(XPS)及びラザフォード後方散乱(RBS)分析によって決定されるようにH結合ドナー基の割合を増大させることにより、実施される。他の実施形態では、仮接触面を修正するステップは、少なくとも一部には、仮接触面のXPSによって決定されるようにアニオン基及びカチオン基又は両方の割合を低減させることにより、実施される。さらに他の実施形態では、仮接触面を修正するステップは、少なくとも一部には、仮接触面のケイ素以外の金属若しくはメタロイド原子又は両方の割合を低減させることにより、実施される。本方法は、それらのステップのうちの任意の1つ又は任意の組合せを任意の順序で実行することによって実施される。
【0093】
本開示の別の態様は、ケイ素原子、酸素原子、炭素原子及び水素原子の以下の統計的な比を含むカスタマイズされたバイオ医薬製品接触面であり、そこでは、水素以外の原子の割合はXPSによって決定され、水素の割合は水素前方散乱(HFS)分析又はラザフォード後方散乱(RBS)によって決定され、Si=1:O=x:C=y:H=zであり、式中、xは約1.5~約2.9であり、yは約0~約1であり、zは約0~約4の範囲内にある。
【0094】
任意選択的に、カスタマイズされたバイオ医薬製品接触面は、90°未満の水接触角を有する。任意選択的に、バイオ医薬製品接触面は、X線光電子分光法(XPS)及び水素前方散乱(HFS)分析によって決定されるように、1%未満のH結合ドナー基を有する。任意選択的に、バイオ医薬製品接触面は、X線光電子分光法(XPS)及びラザフォード後方散乱(RBS)分析によって決定されるように、1%未満のH結合ドナー基を有する。任意選択的に、バイオ医薬製品接触面は、XPS及びHFS分析によって決定されるように、少なくとも1%のH結合アクセプタ基を有する。任意選択的に、バイオ医薬製品接触面は、XPS及びRBS分析によって決定されるように、少なくとも1%のH結合アクセプタ基を有する。任意選択的に、カスタマイズされたバイオ医薬製品接触面は、XPS分析によって決定されるように、1%未満のアニオン基及びカチオン基を有する。任意選択的に、カスタマイズされたバイオ医薬製品接触面は、XPS分析によって決定されるように、ケイ素以外の金属又はメタロイド原子が本質的にない。
【0095】
任意選択的に、任意の実施形態では、カスタマイズされた接触面は、以下のタイプの容器のうちの少なくとも1つに、特定のバイオ医薬製品とのその適合性を向上させるように適用することができる。すなわち、384ウェルプレート、96ウェルプレート、バイオリアクタ、採血管、瓶、バルク保管容器、カニューレ、捕獲カラム、カートリッジ、カテーテル、セルバンクバイアル、細胞分離装置、細胞バイアル、遠心ポンプ、遠心分離機チューブ、クロマトグラフィカラム、クロマトグラフィバイアル、浄化器、密封容器、容器施栓系、凍結保存容器、培養瓶、配送用容器、透析ろ過装置、分注ユニット、ELISAプレート、溶出バッグ、真空採血管、充填/仕上げ装置、ろ過装置、凍結乾燥機、回収容器、振とう器、工程内分析機器、中間カラム、静脈注射(IV)バッグ、培地バッグ、培地瓶、培地容器、メンブレンクロマトグラフィカラム、マイクロプレート、マイクロタイタプレート、マイクロウェルプレート、混合バッグ、モニタリング装置、多目的バイオリアクタ、パッケージ充填装置、ポンプ、ペトリ皿、ピペットチップ、プレート、プランジャ、ポリッシュカラム、プレフィルドシリンジ、ルアーロックフィッティング付きプレフィルドシリンジ、一次包装、生産バイオリアクタ、生産発酵槽、ローラボトル、試料採取管、試料採取容器、種発酵槽、分離器、振とうフラスコ、単回使用バイオリアクタ、スライド、スピナフラスコ、固定針プレフィルドシリンジ、保管バッグ、滅菌装置、保存培養バイアル、保管容器、シリンジ(プレフィルド)、タンク、末端反応器、輸送用バッグ、限外ろ過/透析ろ過装置、限外ろ過装置、上流バイオリアクタ、弁、バイアル、ウイルスろ過装置、ウイルス不活性化容器及びウェーブバイオリアクタである。任意選択的に、任意の実施形態では、修正された接触面は、先行するリストに列挙された複数(2つ、3つ、4つ等)のタイプの容器に適用することができる。任意選択的に、任意の実施形態では、カスタマイズされた接触面は、製造、包装又は配送中のバイオ医薬製品と接触する少なくとも2つの容器又は機器の接触面に使用されるように指定することができる。
【0096】
非特異的タンパク質吸着を阻止する面の特徴
本開示の他の実施形態では、複数の、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上の接触面は、たとえば、プラズマ化学気相成長(「PECVD」)によって施されるシリカ系コーティングをカスタマイズすることにより、非特異的タンパク質吸着を阻止するか又は低減させるように、所与のバイオ医薬製品に対してカスタマイズされる。すなわち、(1)親水性/極性面、(2)実質的な割合の水素結合アクセプタを有する面、(3)実質的な割合の水素結合ドナーを有していない面、及び(4)非荷電面である。
【0097】
接触面上のコーティングの組成は、酸素ガス流量に対する有機ケイ素ガスの混合比とPECVDプロセスの印加電圧又は電力とを調整することにより、適合させることができる。異なるバルク特性及び表面特性により、多種多様のコーティングを生成することができる。たとえば、優れたガス及び浸出物バリア特性並びに親水性表面特性により、純粋且つ高濃度のシリカ(すなわち、SiO2)を堆積させることができる。これは、ガス混合物における高い酸素対有機ケイ素ガスのガス比と高い印加電力とによって達成される。有機ケイ素ガスからのすべての炭素は、有機ケイ素ガスと酸素との反応の副生成物であるCOxガスとして、真空システムによりプロセスから除去される。
【0098】
親水性/極性面
他の態様では、シリカ系コーティングは、バイオ医薬製品と接触する好適な水接触角、たとえば、適度に親水性である30~60度の接触角を提供するように、最適化することができる。
【0099】
別法として、PECVD中、高い酸素対有機ケイ素比を維持するが、電力は低減させることにより、コーティングをより高親水性とすることができる。水は、有機ケイ素化合物と酸素との反応の副生成物である。高電力では、水蒸気は真空システムから除去される。低電力では、水蒸気は、シラノール(すなわち、Si-OH)基としてコーティング内に混入する可能性がある。シラノール基は極性であり、表面親水性を向上させる。極端な場合、ゼロに近い水接触角を提供することができる。
【0100】
他の態様では、中位から低い電力で酸素対有機ケイ素流量比を低減させることにより、より疎水性の高い面を生成することができる。これにより、非極性脂肪族又は他の炭素及び水素含有基が面内に組み込まれ、したがって、親水性が低下するか又は疎水性が向上する。結果としてのコーティングは、有機シリカ又は有機シロキサンとしてより適切に特徴付けられ、それは、その分子構造を通して、実質的な割合の炭素原子とともにケイ素原子及び酸素原子を含有するためである。別法として、有機シロキサンコーティングにおいて、80~100度の水接触角を達成することができる。極性基を低減させ且つ表面粗さを増大させることにより、さらなる疎水性を組み込むことができる。これは、ガス混合物から酸素を除去するとともに、より高い炭素対酸素比を有するシロキサンモノマーをさらに選択することにより、達成することができる。テトラメチルシラン(SiC4H12)及びトリメチルシラン(SiC3H10)等、構造内に酸素を有していないシランモノマーは、非常に疎水性の高いコーティングをもたらすことができる。この場合、100度を超える水接触角が可能である。
【0101】
水素結合アクセプタ及びドナー
他の態様では、これらのシリカ系コーティングは、より少ない水素結合ドナー及びより多い水素結合アクセプタを有するコーティングを提供するように最適化することができる。
【0102】
水素結合ドナー基は、水素原子に共有結合した電気陰性度が高い原子(たとえば、O、N、Cl、F)を含有する。水素結合アクセプタ基は、電子の唯一の対を有する電気陰性度の高い原子を含有する。水素結合は、水素結合ドナー基とアクセプタ基との間に形成される。水素結合は、共有結合及びイオン結合よりも弱いが、ファンデルワース結合よりも強い。有機化合物における水素結合アクセプタ及びドナーの例を、概して
図1に示す。
【0103】
【0104】
多くのバイオ医薬製品用の接触面において特に有用である結合タイプは、水素結合アクセプタであって、水素結合ドナーではない。
【0105】
非荷電面
いくつかのバイオ医薬製品は荷電面を有し、こうした製品は、荷電接触面によって変性し且つその上に吸着する傾向がある。したがって、それらの状況において、概して接触面をカスタマイズすることは好ましい。
【実施例0106】
すべての実施例が、プラズマ化学気相成長(PECVD)によって堆積するシリカ系コーティングに基づく。すべての実施例に対してPECVD中に利用される前駆体は、酸素ガスと混合されるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)である。シロキサン化学族における代替的な前駆体を同様に使用することができる。バイオ医薬製品の発見、開発、製造、包装及び配送において有用な任意の容器又は機器の上に、コーティングを堆積させることができる。すべての場合において、シリカ系コーティングは、バイオ医薬製品と直接接触する。
【0107】
実施例1~3は、通常のホウケイ酸ガラス又は通常のプラスチックと比較して、生物学的(すなわち、タンパク質)薬剤の吸着、変性及び凝集を最小限にするために有用性がある、好ましいシリカ系コーティングを提供する。実施例4は、より好ましいシリカ系コーティングを提供する。
【0108】
タンパク質の吸着、変性及び凝集を低減させるか又は防止する、PECVDによるシリカ系コーティングの有利な表面特徴の達成は、プラズマのエネルギー密度を調整することによって成し遂げられる。プラズマのエネルギー密度は、キログラムあたりのジュールすなわちJ/kgの単位での複合パラメータW/FMによって定義することができる。Wは、ワットでの印加電力に対応し、Fは、毎分標準立方センチメートルすなわちsccmでの流量であり、Mは、ガス混合物のプラズマ重合成分の分子量である。以下の式を使用して、J/kgの単位でHMDSO及び酸素ガスの混合物のW/FMが計算される。
【数1】
【0109】
【0110】
表1に要約されている異なるコーティングに対応する化学反応は以下の通りである。
1)SiO2C6H18+21/2 O2 → SiO2+9 H2O+6 CO2;実施例1
2)SiO2C6H18+A O2 → B SiOxHz+ C H2O+D CO2;実施例3
3)SiO2C6H18 +A O2 → B SiOxCyHz+C H2O+D CO2;実施例2、4
【0111】
【0112】
実施例1
以下、バイオ医薬製品の変性及び凝集に至る相互作用を低減させる化学的特徴を有する好ましい接触面について記載する。シリカ系コーティングは、以下の化学官能基特徴(表4)を有する純二酸化ケイ素(すなわち、SiO2)である。
・正味電荷中性(XPSによってアニオン基もカチオン基も検出されない、1%未満)
・親水性(水接触角30~80度)
・水素結合ドナー基(XPSによって検出、1%未満)
・水素結合アクセプタ基なし(XPSによって検出、1%未満)
・すべての脂肪族基なし(XPSによって検出、1%未満)、アルカリ、アルカリ性、遷移、メタロイド(Si除く)及びポスト遷移金属なし
【0113】
これらの特徴は、放射標識タンパク質吸着試験によって決定されるように、バイオ医薬製品におけるより疎水性が高く且つ荷電したタンパク質及びペプチドの吸着を低減させるのに好都合である。吸着は、30ng/cm2未満であると予想される。
【0114】
実施例2
以下、バイオ医薬製品の吸着、変性及び凝集に至る相互作用を低減させる化学的特徴を有する好ましい接触面について記載する。シリカ系コーティングは、以下の化学官能基特徴(表4)を有するオレガノシロキサン(すなわち、SiOxCyHz)である。
・正味電荷中性(XPSによってアニオン基もカチオン基も検出されない、1%未満)
・親水性(水接触角50~90度)
・水素結合ドナー基(XPSによって検出、1~10%)
・水素結合アクセプタ基なし(XPSによって検出、1%未満)
・アルカリ、アルカリ性、遷移、メタロイド(Si除く)及びポスト遷移金属なし
【0115】
これらの特徴は、放射標識タンパク質吸着試験によって決定されるように、バイオ医薬製品におけるより親水性が高く且つ荷電したタンパク質及びペプチドの吸着を低減させるのに好都合である。吸着は、30ng/cm2未満であると予想される。
【0116】
実施例3
以下、バイオ医薬製品の変性及び凝集に至る相互作用を低減させる化学的特徴を有する好ましい接触面について記載する。シリカ系コーティングは、以下の化学官能基特徴(表4)を有するシリコーン酸化物(すなわち、SiOxHy)である。
・正味電荷中性(XPSによってアニオン基もカチオン基も検出されない、1%未満)
・親水性(水接触角<50度)
・水素結合ドナー基(Si-OH、XPSによって検出、1~50%)
・水素結合アクセプタ基なし(XPSによって検出、1%未満)
・アルカリ、アルカリ性、遷移、メタロイド(Si除く)及びポスト遷移金属なし
【0117】
これらの特徴は、放射標識タンパク質吸着試験によって決定されるように、バイオ医薬製品におけるより親水性が高く且つ荷電したタンパク質及びペプチドの吸着を低減させるのに好都合である。吸着は、30ng/cm2未満であると予想される。
【0118】
実施例4
以下、バイオ医薬製品の変性及び凝集に至る相互作用を低減させる化学的特徴を有する別の好ましい接触面について記載する。シリカ系コーティングは、以下の化学官能基特徴(表4)を有するシリコーン酸化物(すなわち、SiOxCyHz)である。
・正味電荷中性(XPSによってアニオン基もカチオン基も検出されない、1%未満)
・親水性(水接触角<50度)
・水素結合ドナー基なし(Si-OH、XPSによって検出、1%未満)
・水素結合アクセプタ基(XPSによって検出、1~50%)
・アルカリ、アルカリ性、遷移、メタロイド(Si除く)及びポスト遷移金属なし
【0119】
これらの特徴は、放射標識タンパク質吸着試験によって決定されるように、バイオ医薬製品におけるより親水性が高く且つ荷電したタンパク質及びペプチドの吸着を低減させるのに好都合である。吸着は、30ng/cm2未満であると予想される。
【0120】
【0121】
実施例5
バイオ医薬製品、特にタンパク質及び抗体の非経口投与用の容器の面におけるタンパク質吸着は、タンパク質凝集に対する前駆体として関与してきた。調製及び後続する補体活性化におけるこれらの製品の凝集体形成は、バイオ医薬製品が投与される対象において有害な薬物相互作用(adverse drug interaction)(ADR)をトリガする可能性がある。タンパク質は、表面吸着により製剤形態から変性し、その後、凝集体として脱落する。抗体及び組み換えタンパク質等、バイオ医薬製品の製造及び包装において使用されるシステムは、理想的には、タンパク質吸着を最小限にし、タンパク質凝集体形成、最終的にはADRのリスクを低減させる接触面を含むべきである。
【0122】
面が本開示の接触面によって特徴付けられる容器(たとえば、チューブ)上のIgGタンパク質吸着及び保持を、コーティングされていないポリマー、環状オレフィンポリマー(COP)容器のものと比較した。ポリマーチューブにおけるコーティングは、本開示の独自のシリカ(2層)及びオルガノシリカ(3層)コーティングからなる。記載する以下の研究に対するさまざまな反応物は、以下の通りである。すなわち、アジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich,MO)、ヨウ化ナトリウム(NaI)(Sigma-Aldrich,MO)、一塩基性リン酸ナトリウム(Fisher Scientific,NJ)、水酸化ナトリウム(Fisher Scientific,NJ)、塩化ナトリウム結晶(NaCl)(EMD Millipore,MA)及びクエン酸水和物(J.T.Baker,NJ)である。
【0123】
IgG放射標識、精製及び収集
ウシIgG(Sigma-Aldrich,MO)を、Horbett T.A.J.Biomed.Mater.Res.(1981)15(5):673-695において変更されているような一塩化ヨウ素(ICl)法を使用して放射標識した。簡単に、2:1比でのICl/NaCl混合物0.5mlを添加した、0.5ml 2×ホウ酸溶液(Fisher Scientific,NJ)に、1mCiのヨウ素125放射性核種(Perkin-Elmer,MA)を添加した。次に、アジ化ナトリウム(cPBSz)を含むクエン酸リン酸緩衝液生理食塩水での10mg/mlウシIgGを0.5ml添加し、20分間、ヨウ素化反応を、氷状で実施し、その後サイズ排除クロマトグラフィカラムに通した。40画分を収集して、標識されたタンパク質及び遊離ヨウ素ピークを捕捉しヨウ素化効率を評価した。タンパク質ピークからの画分を合わせてプールし、第2クロマトグラフィカラムに通して、画分収集及びピーク同定を繰り返した。精製された標識タンパク質画分を合わせてプールし、鉛容器内に配置し、さらなる使用まで-80℃冷凍装置で凍結させた。
【0124】
タンパク質吸着調査
タンパク質吸着調査の前に、処理済みチューブ(群の2層コーティングチューブ、3層コーティングチューブ、及びコーティングされていないCOPチューブ群ごとにn=5)を、1時間、10mM NaI(cPBSzI)を含む1mlのcPBS溶液に浸漬した。吸着のために、標識IgGを解凍し、その後、cPBSzIにおけるウシIgGの0.1mg/mL溶液に添加して、放射標識ウシIgGすなわち「放射性(hot)」タンパク質を作成した。cPBSzI緩衝液をトランスファピペットで吸引し、その後、各チューブに1mLの「放射性」タンパク質を添加し、2時間吸着させた後、cPBSzIで3回すすいだ。次いで、Perkin Elmer Wizard2ガンマカウンタを使用して、各すすいだチューブの放射能を、タンパク質スタンダードとともに1分間測定した。
【0125】
タンパク質保持調査
チューブ内のタンパク質保持、すなわち、チューブの面にタンパク質がどれくらい密に保持されるかを評価するために、最初に、上述したように、チューブ(n=10/群)において2時間、「放射性」IgGタンパク質を吸着させた。次に、チューブの各々に1mlの1%SDS溶液を添加し、IgGタンパク質を抽出するために一晩置いた。トランスファピペットを使用してSDS溶液を吸引し、チューブをこの場合もまたcPBSzIで3回すすぎ、Perkin Elmer Wizard2ガンマカウンタを使用して、それらの放射能を、タンパク質スタンダードとともに1分間測定した。処理されていないチューブを対照として使用した。吸着及び保持データは、ng/cm2で報告した。
【0126】
図1aに示すように、2層及び3層コーティングを含むチューブは、コーティングされていないCOPチューブと比較して1/4~1/5のIgGタンパク質吸着を示す。
図1bに示すように、SDS抽出は、すべてのチューブから吸着したIgGタンパク質を除去することができる。しかしながら、2層又は3層コーティングを含むチューブに保持されるものと比較して、コーティングされていないCOPチューブの面には、より大量の吸着されたIgGタンパク質が保持される。最後に、コーティングされた容器と比較して、すすぎ後、コーティングされていないCOPチューブからより大量の吸着されたタンパク質が除去された。
【0127】
結果
これらの結果により、2層又は3層コーティングを含む接触面を備えた本開示のシステムが、コーティングされた容器の面におけるタンパク質吸着及び保持を最小限にする適合性のある面を提供することが実証された。