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特開2024-161034反射防止フィルム積層体、それを備える物品及び反射防止フィルム積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161034
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】反射防止フィルム積層体、それを備える物品及び反射防止フィルム積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20241108BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20241108BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20241108BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241108BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241108BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241108BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241108BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241108BHJP
【FI】
G02B1/115
G02B1/14
G02B1/18
B32B27/36
B32B9/00 A
C09J201/00
C09J7/38
C09J7/29
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139855
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2021015178の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】田村 崇
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 匡明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕司
(72)【発明者】
【氏名】井上 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】久 貴行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠之介
(57)【要約】
【課題】視認性を向上し、ディスプレイ表面の飛散防止やシャープエッジの発生抑制に優れた反射防止フィルム積層体の提供。
【解決手段】第1面及び第2面を有する第1透明基材と、第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層、防汚層を有する反射防止層と、第2面上に設けられた粘着層と、を備え、ハードコート層は、第1面に接する単層であり、粘着層は、第2面に接し、無機多層膜層は低屈折率材料層と高屈折材料層の積層体であり、粘着層は二層の粘着剤層と、これに挟持され、それぞれに直接接着するPETフィルムからなる第2透明基材とからなり、入射角5°での可視光領域の反射率Yが0.8%以下、突き刺し試験での破断力が5.7N以上、第1透明基材の厚みが80μm以下、第2透明基材の厚みが12μm未満であり、二層の粘着剤層は、第2透明基材の両面に形成されている、反射防止フィルム積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する第1透明基材と、
前記第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層、防汚層を少なくとも含む反射防止層と、
前記第2面上に設けられた粘着層と、を備え、
前記ハードコート層は、前記第1面に接する単層であり、
前記粘着層は、前記第2面に接し、
前記無機多層膜層はそれぞれスパッタリング膜である低屈折率材料層と高屈折材料層の積層体であり、
前記粘着層は、二層の粘着剤層と、前記二層の粘着剤層に挟持され、前記二層の粘着剤層のそれぞれに直接接着するPETフィルムからなる第2透明基材とからなり、
標準光源D65による波長380nm~780nmの光を入射角5°で入射させた際の反射率Yが0.8%以下であり、かつ、
直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断力が5.7N以上であり、
前記第1透明基材の厚みが80μm以下であり、
前記第2透明基材の厚みが12μm未満であり、
前記二層の粘着剤層は、前記第2透明基材の両面に形成されている、反射防止フィルム積層体。
【請求項2】
第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する第1透明基材と、
前記第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層、防汚層を少なくとも含む反射防止層と、
前記第2面上に設けられた粘着層と、を備え、
前記ハードコート層は、前記第1面に接する単層であり、
前記粘着層は、前記第2面に接し、
前記無機多層膜層はそれぞれスパッタリング膜である低屈折率材料層と高屈折材料層の積層体であり、
前記粘着層は、二層の粘着剤層と、前記二層の粘着剤層に挟持され、前記二層の粘着剤層のそれぞれに直接接着するTACフィルムからなる第2透明基材とからなり、
標準光源D65による波長380nm~780nmの光を入射角5°で入射させた際の反射率Yが0.8%以下であり、かつ、
直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断力が5.7N以上であり、
前記第1透明基材の厚みが80μm以下であり、
前記二層の粘着剤層は、前記第2透明基材の両面に形成されている、反射防止フィルム積層体。
【請求項3】
前記第2透明基材の厚みが25μm以下である、請求項2に記載の反射防止フィルム積層体。
【請求項4】
前記粘着剤層を構成する粘着剤の25℃下における貯蔵弾性率は0.20~0.10MPa、かつ、損失正接が0.40~0.20である、請求項1~3のいずれか一項に記載の反射防止フィルム積層体。
【請求項5】
厚みが170μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の反射防止フィルム積層体。
【請求項6】
前記第1透明基材は、TACフィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の反射防止フィルム積層体。
【請求項7】
前記防汚層の第1透明基材とは反対側の面にさらに保護フィルムを備え、かつ、前記二層の粘着剤層のうち第1透明基材から離れた側の粘着剤層の第2透明基材とは反対側の面にさらに離型フィルムを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の反射防止フィルム積層体。
【請求項8】
前記第2透明基材と前記二層の粘着剤層との屈折率差は、いずれも0.12以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の反射防止フィルム積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の反射防止フィルム積層体を備えた物品。
【請求項10】
第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する、厚み80μm以下の第1透明基材を準備する準備工程と、
前記第1面に接するように単層のハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、
前記ハードコート層上に、スパッタリングにより低屈折率材料層と高屈折率材料層との積層体である無機多層膜層を形成する無機多層膜層形成工程と、
PETフィルムからなり、厚み12μm未満の第2透明基材と、前記第2透明基材の両面に直接接着して前記第2透明基材を挟持する二層の粘着剤層と、からなる粘着層を準備する粘着層準備工程と、
前記二層の粘着剤層の一方を前記第1透明基材の前記第2面に貼り合わせる貼合工程と、を有する、反射防止フィルム積層体の製造方法。
【請求項11】
第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する、厚み80μm以下の第1透明基材を準備する準備工程と、
前記第1面に接するように単層のハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、
前記ハードコート層上に、スパッタリングにより低屈折率材料層と高屈折率材料層との積層体である無機多層膜層を形成する無機多層膜層形成工程と、
TACフィルムからなり、厚み25μm以下の第2透明基材と、前記第2透明基材の両面に直接接着して前記第2透明基材を挟持する二層の粘着剤層と、からなる粘着層を準備する粘着層準備工程と、
前記二層の粘着剤層の一方を前記第1透明基材の前記第2面に貼り合わせる貼合工程と、を有する、反射防止フィルム積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止フィルム積層体に関し、特に自動車など輸送機械の内装等に設けられるディスプレイ等と組み合わせて好適に用いられる反射防止フィルム積層体に係るものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの輸送機械の操縦席などには、多くの情報を扱うために液晶パネルなどを用いたディスプレイが多用されるようになっている。ディスプレイには従前から、視認性向上などの点から反射防止フィルムが用いられている。
【0003】
他方、ディスプレイを輸送機械の操縦席などに用いる際には、事故などの際に衝撃で搭乗者の頭部をディスプレイで強打し、割れたガラスで負傷するなどの事象に対応する必要があることが知られている。ディスプレイに用いるカバーガラスの貼り合せ構造を工夫する、ディスプレイの設置構造を改良するなどの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/208995号
【特許文献2】国際公開第2002/009976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの提案に対して、反射防止フィルムなどの光学フィルムに粘着層を設けてディスプレイに貼りつけ、視認性を向上しつつ、事故などの際にはディスプレイ表面の飛散防止や、割れたガラスが破壊面から突出するいわゆるシャープエッジの発生を抑制することで、搭乗者の保護を図ることも考えられる。
【0006】
しかし、単に反射防止フィルムを、粘着剤層を介してディスプレイ表面のカバーガラスに貼り付けただけでは、シャープエッジの発生の抑制には不十分であることを見出した。 さらに本発明者らは、鋭意検討の結果、反射防止フィルムに粘着剤による貼りつけ機能を付与した反射防止フィルム積層体において、反射防止フィルムをディスプレイ表面のカバーガラスに貼りつける際に用いられる粘着層の構成を鋭意工夫することで、上記問題を解決することができ、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、視認性を向上しつつ、ディスプレイ表面の飛散防止やシャープエッジの発生抑制に優れた反射防止フィルム積層体及びそれを備える物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0009】
本発明の一態様に係る反射防止フィルム積層体は、第1面と該第1面に対して裏側の面である第2面とを有する第1透明基材と、前記第1面上に順に設けられたハードコート層、無機多層膜層、防汚層を少なくとも含む反射防止層と、前記第2面上に設けられた粘着層と、を備え、前記粘着層は、二層の粘着剤層と、前記二層の粘着剤層に挟持された第2透明基材とからなり、標準光源D65による波長380nm~780nmの光を入射角5°で入射させた際の反射率Yが0.8%以下であり、かつ、直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断力が5.7N以上である。
【0010】
上記態様に係る反射防止フィルム積層体は、前記第2透明基材が厚さ12μm未満のPETフィルムであってもよい。
【0011】
上記態様に係る反射防止フィルム積層体は、前記第2透明基材がTACフィルムであってもよい。
【0012】
上記態様に係る反射防止フィルム積層体は、前記無機多層膜層が、低屈折率材料層と高屈折材料層の積層体であり、低屈折率材料層と高屈折材料層がスパッタリング膜であってもよい。
【0013】
上記態様に係る反射防止フィルム積層体は、前記粘着剤層を構成する粘着剤の25℃下における貯蔵弾性率が0.20~0.10MPa、かつ、損失正接が0.40~0.20であってもよい。
【0014】
上記態様に係る反射防止フィルム積層体は、厚みが170μm以下であってもよい。
【0015】
上記態様に係る反射防止フィルム積層体は、前記防汚層の第1透明基材とは反対側の面にさらに保護フィルムを備え、かつ、前記二層の粘着剤層のうち第1透明基材から離れた側の粘着剤層の第2透明基材とは反対側の面にさらに離型フィルムを備えてもよい。
【0016】
本発明の他の態様に係る物品は、上記態様の反射防止フィルム積層体を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、視認性を向上しつつ、ディスプレイ表面の飛散防止やシャープエッジの発生抑制に優れた反射防止フィルム積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る反射防止フィルム積層体の断面模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る反射防止フィルム積層体の断面模式図である。
図3】(a)は突き刺し試験の概要を示す斜視図であり、(b)は突き刺し試験で用いる反射防止フィルム積層体サンプルをサンプル設置台に貼り付けた状態を示す平面模式図である。
図4図3(a)で図示した、反射防止フィルム積層体サンプルをサンプル設置台と押さえプレートで挟み込んだ状態の一部を拡大した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。一つの実施形態で示した構成を他の実施形態に適用することもできる。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係る反射防止フィルム積層体の断面模式図を示す。
【0021】
図1に示す反射防止フィルム積層体100は、第1面10aと第1面10aに対して裏側の面である第2面10bとを有する第1透明基材10と、第1面10a上に順に設けられたハードコート層21、無機多層膜層22、防汚層23を少なくとも含む反射防止層20と、第2面10b上に設けられた粘着層30と、を備え、粘着層30は、二層の粘着剤層31、33と、二層の粘着剤層31、33に挟持された第2透明基材32とからなり、標準光源D65による波長380nm~780nmの光を入射角5°で入射させた際の視感度反射率が0.8%以下であり、かつ、直径8mmの円錐状プローブを、突き刺し試験速度500mm/minで押し付けた場合の破断応力が5.7N以上である。
【0022】
図2に示す反射防止フィルム積層体200のように、輸送時や保管時の取り扱い性の点から、防汚層23の第1透明基材10の側の面23bとは反対側の面23aにさらに公知の保護フィルム40を備えてもよい。保護フィルム40としては例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどを基材とし、天然ゴムや合成ゴム、アクリル樹脂などを主成分とする粘着剤層を有するものが挙げられる。
また、二層の粘着剤層31、33のうち第1透明基材10から離れた側の粘着剤層33の第2透明基材の側の面33aとは反対側の面33bにさらに、公知の離型フィルム50を備えてもよい。離型フィルム50としては例えば、シリコーン材料やフッ素系材料が表面に塗布されたポリエチレンテレフタレート製フィルムを挙げることができる。
【0023】
〔第1透明基材〕
第1透明基材10は、第1面10aと、第1面10aに対して裏側の面にあたる第2面10bを有する。
【0024】
第1透明基材10は、可視光域の光を透過可能な透明材料から形成されればよく、例えば、プラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムの構成材料の具体例としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、が挙げられる。また、光学特性を損なわない限りにおいて、補強材料が含まれていても良く、たとえばセルロースナノファイバーやナノシリカ等が挙げられる。特に、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられ、具体的には、トリアセチルセルロース(TAC)基材やポリメタクリル酸メチル基材が好適に用いられる。また、無機基材としてガラスフィルムを用いることもできる。
【0025】
プラスチックフィルムがTAC基材であると、その一面側にハードコート層21を形成したとき、ハードコート層21を構成する成分の一部が浸透してなる浸透層を形成でき、透明基材とハードコート層21との密着性及び互いの層間の屈折率差に起因した干渉縞の発生を抑制できる。
【0026】
また、第1透明基材10が光学的機能や物理的機能が付与されたフィルムであっても良い。光学的又は物理的な機能を有するフィルムの例としては、偏光板、位相差補償フィルム、熱戦遮断フィルム、透明導電フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
【0027】
第1透明基材10の厚みは特に限定されないが、例えば、25μm以上であることが好ましい。より好ましくは40μm以上である。
第1透明基材10の厚みが25μm未満であると、応力が加わった際にシワが発生しやすく、反射防止フィルム積層体100を製造する際に、第1透明基材10の上にハードコート層21を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。また、カールが大きくなり、引っかき硬度も悪化する懸念がある。
【0028】
製造時において、ロールで実施する場合は、第1透明基材10の厚みが300μmを超えると、反射防止フィルム積層体100を製造する際に、第1透明基材10をロール状にできなかったり、反射防止フィルム積層体100の薄膜化、軽量化及び低コスト化に不利となったりすることがある。また、ハードコート層21の積層時に、第1透明基材10からガス(水分や有機物等)が発生しやすくなり、ハードコート層21の形成の阻害要因となる場合がある。
【0029】
なお、第1透明基材10は、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理が施されていてもよい。これらの処理が予め施されていることで、第1透明基材10の上に形成されるハードコート層21との密着性を向上させることができる。また、ハードコート層21を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄等を行うことにより、第1透明基材10の表面を除塵、清浄化させておくことも好ましい。
【0030】
〔反射防止層〕
反射防止層20は、第1透明基材10の第1面10a上に設けられており、第1面10a側から順にハードコート層21、無機多層膜層22、防汚層23を備えている。
【0031】
<ハードコート層>
ハードコート層21は、第1透明基材10と無機多層膜層22との間に形成される有機物の硬化層、又は、無機物を含む有機物の硬化層である。
【0032】
ハードコート層21は、バインダー樹脂にフィラーとしてシリカ(Siの酸化物)粒子やアルミナ(酸化アルミニウム)粒子を含むものであればよい。これらシリカ粒子やアルミナ粒子は、ハードコート層21の無機多層膜層22側の表面から露出していてもよい。このような構成によれば、無機多層膜層22をハードコート層21のバインダー樹脂に強く接合させることができるとともに、露出したシリカ粒子やアルミナ粒子にさらに強固に付着するため、ハードコート層21と無機多層膜層22との密着性が向上し、反射防止フィルム積層体100の耐擦傷性を向上させることができる。
【0033】
また、ハードコート層21のフィラーであるシリカ粒子やアルミナ粒子は、例えば、平均粒子径が800nm以下、好ましくは780nm以下、さらに好ましくは100nm以下で単一粒子の状態でハードコート層21のバインダー樹脂に分散されていることが好ましい。このようなフィラーとしてシリカ粒子やアルミナ粒子が分散されていることで、ハードコート層21の表面に微細な凹凸を形成でき、また、ハードコート層21の高硬度化とともに、反射防止フィルム積層体100との密着性の向上を図ることができる。
【0034】
ハードコート層21のバインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線や電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。
【0035】
ハードコート層21のバインダー樹脂に用いる電離放射線硬化型樹脂としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等を挙げることができる。
また、2以上の不飽和結合を有する電離放射線硬化型樹脂である化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能化合物等を挙げることができる。なかでも、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)及びペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)が好適に用いられる。なお、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。また、電離放射線硬化型樹脂として、上述した化合物をPO(プロピレンオキサイド)、EO(エチレンオキサイド、CL(カプロラクトン)等で変性したものも使用できる。
【0036】
ハードコート層21のバインダー樹脂に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0037】
ハードコート層21のバインダー樹脂に用いる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂(かご状、ラダー状などのいわゆるシルセスキオキサン等を含む)等を挙げることができる。
【0038】
ハードコート層21は、有機樹脂と無機材料を含んでいても良く、有機無機ハイブリッド材料でもよい。一例としてはゾルゲル法で形成されたものが挙げられ、無機材料としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアが挙げられ、有機材料としてはアクリル樹脂が挙げられる。
【0039】
ハードコート層21の厚みは特に限定されないが、例えば、0.5μm以上であることが好ましい。より好ましくは1μm以上である。上限としては100μm以下である。
ハードコート層21の厚みが0.5μm未満であると、強度が不足して引っかき硬度が悪化する懸念がある。一方、ハードコート層21の厚みが厚すぎると、反射防止層20の薄膜化、軽量化及び低コスト化に不利となったりすることがある。
【0040】
なお、ハードコート層21としては、単一の層であってもよく、複数の層であってもよい。また、ハードコート層21は、例えば、紫外線吸収性能、帯電防止性能、屈折率調整機能、硬度調整機能等公知の機能が更に付与されていてもよい。
また、ハードコート層21に付与される機能は、単一のハードコート層21中に付与されていてもよく、複数の層に分割して付与されていてもよい。
【0041】
<無機多層膜層>
無機多層膜層22は、光学機能、本実施形態では反射防止機能を発現させる積層体である。本実施形態の無機多層膜層22は、ハードコート層21側から順に低屈折率層aと高屈折率層bとが交互に積層されたものであり、例えば、ハードコート層21側および防汚層23側はいずれも低屈折率層aとされた合計5層の積層体とすることができる。
このうち、ハードコート層21に接する低屈折率層aは、ハードコート層21に対する接着層としての機能を有する。
なお、低屈折率層aと高屈折率層bとの層数は、5層に限定されるものではなく、任意の層数の低屈折率層aと高屈折率層bとを形成することができる。
【0042】
低屈折率層aは、SiO(Siの酸化物)等を主成分とした層である。SiO単層膜は無色透明であり、低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20~1.60であり、より好ましくは0~1.50である。
Siの酸化物を含む無機薄膜層は、50%以内の別の元素を含んでも良い。
耐久性向上の目的でNa、硬度向上の目的でZr、Al、またNを含んでも良い。
含有量は、好ましくは10%以下である。
高屈折率層の屈折率は、好ましくは2.00~2.60であり、より好ましくは2.10~2.45である。このような高屈折率の誘電体としては、五酸化ニオブ(Nb、屈折率2.33)、酸化チタン(TiO、屈折率2.33~2.55)、酸化タングステン(WO、屈折率2.2)、酸化セリウム(CeO、屈折率2.2)、五酸化タンタル(Ta、屈折率2.16)、酸化亜鉛(ZnO、屈折率2.1)、酸化インジウムスズ(ITO、屈折率2.06)などが挙げられる。
【0043】
こうした低屈折率層aと高屈折率層bとを交互に積層することによって、防汚層23側から入射した光が拡散され、一方向に反射することを防止し、反射防止機能を発揮させることができる。
【0044】
無機多層膜層22は、低屈折率層aと高屈折率層bとをスパッタリングによって形成することができる。この時、低屈折率層aの成膜時と高屈折率層bの成膜時とでスパッタリングターゲットを変えて成膜すればよい。また、例えば1種類の材料をターゲットとして、スパッタリング時の酸素流量を変えることによって、ターゲット材料からなる層とターゲット材料の酸化物からなる層を交互に形成し、低屈折率層と高屈折率層としても良い。
【0045】
無機多層膜層22を構成する低屈折率層aの膜厚は、反射防止機能を必要とする波長域に応じて適宜選択されるが、例えば、1nm以上200nm以下であればよい。また、高屈折率層bの膜厚は、15nm以上200nm以下の範囲であればよい。
【0046】
なお、低屈折率層aと高屈折率層bの膜厚は、それぞれ全てが同一の膜厚である必要は無く、無機多層膜層22の設計に応じて適宜選択することができる。例えば、ハードコート層21側から順に、30~120nmの低屈折率層a、10~50nmの高屈折率層b、30~120nmの低屈折率層a、50~200nmの高屈折率層b、50~200nmの低屈折率層aなどにすることができる。
【0047】
<防汚層>
防汚層23は、無機多層膜層22の最外面に形成され、無機多層膜層22の汚損を防止し、また、タッチパネル等に適用する際に耐摩耗性によって無機多層膜層22の損耗を抑制する。
【0048】
防汚層23を構成するフッ素系有機化合物としては、フッ素変性有機基と、反応性シリル基(例えばアルコキシシラン)とからなる化合物が好ましく用いられる。一例として、パーフルオロデシルトリエトキシシラン(FDTS)が挙げられる。市販品としては、オプツールDSX(ダイキン株式会社製)、KY-1901(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
なお、防汚層23は、必要に応じて光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、界面活性剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0050】
防汚層23は、前述のフッ素化合物を可溶な溶媒で希釈し、バーコーターなど公知の塗布装置を用いて無機多層膜層22上に塗布したのちに乾燥させて形成してもよいし、蒸着法などで形成しても良い。
【0051】
〔粘着層〕
粘着層30は、第1透明基材10の第2面10b上に設けられ、第2透明基材32と、第2透明基材32の両面に設けられた二層の粘着剤層31,33とからなる。
【0052】
<第2透明基材>
第2透明基材32は、可視光域の光を透過可能な透明材料から形成されていればよく、例えば、プラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムの構成材料の具体例としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。特に、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられ、具体的には、トリアセチルセルロース(TAC)基材やポリエチレンテレフタレート基材、ポリメタクリル酸メチル樹脂が好適に用いられる。
【0053】
第2透明基材32の材料の引っ張り弾性率としては、490~4500MPaが好ましい。
【0054】
第2透明基材32の屈折率は、反射防止フィルム積層体としての光学特性を損なわないために第1透明基材10の屈折率との差が小さいことが好ましいが、例えば0.1未満とすることができる。
【0055】
<粘着剤層>
本実施形態の粘着剤層31、33は、粘着剤としてはゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の各種の感圧粘着剤を使用できるが、無色透明とすることが可能で、反射防止フィルム積層体の光学特性の損失を少なくすることや粘着性の調整が容易なこと、材料の選択性の点からアクリル系粘着剤が好ましい。
【0056】
粘着剤層31、33と第2透明基材32の屈折率差は、反射防止フィルム積層体の光学特性を損なわない観点から可能な限り少ないことが好ましいが、例えば0.12以下とすることができる。
【0057】
また、第2透明基材32の両面に形成される粘着剤層31、33は、所望とする光学特性や耐衝撃性の観点から、同一の組成物からなるものあっても異なる組成物からなるものであっても良いが、両面における屈折率差が少ない方が光学特性上好ましい。
【0058】
粘着剤層31、33の貯蔵弾性率は、耐衝撃性の観点から、25℃に於ける貯蔵弾性率が0.20~0.10MPaであり、且つ損失正接が0.40~0.20であることが望ましい。
【0059】
粘着層30の製造方法としては特に限定されず、第2透明基材32に、溶剤にて希釈した粘着剤組成物を塗布し乾燥する方法、粘着剤組成物が無溶剤の紫外性硬化性組成物からなる場合には、第2透明基材32上に塗布したのちに紫外線を照射し硬化する方法、粘着剤層31、33を設けた離型シートから、第2透明基材32に粘着剤層を転写する方法等があげられ、これらを組み合わせても良い。粘着層の厚さは特に限定されないが、5~30μm程度とするのが好ましい。
【0060】
〔反射防止フィルム積層体の製造方法〕
反射防止フィルム積層体の製造方法の一例としては、第1透明基材の第1面に反射防止層を形成した後、前述の方法にて製造した粘着層を、一方の粘着剤層を用いて貼り合せる方法が挙げられる。または、先に第1透明基材の第2面に粘着層を貼り合せた後に、第1面に反射防止層を形成しても良い。
【0061】
また、先に第1透明基材の第2面に、粘着剤層の一方を形成したのちに離型フィルムを保護のため貼り合せ、第1透明基材の第1面に反射防止層を形成したのち、離型フィルムを剥離し、別途製造した、第2透明基材の片面にのみ粘着剤層を設けた物を貼り合せるなどの方法が挙げられる。
【0062】
〔物品〕
本実施形態における物品は、例えば液晶表示パネルや有機EL表示パネルなど、画像表示部の表示面に、前述の反射防止フィルム積層体を設けたものである。これにより、例えば液晶表示パネルや有機EL表示パネル、殊に自動車等の輸送機械の内外に設けられる液晶表示パネルや有機EL表示パネルなどに対し、事故時などに強度の力でこれらに衝突した際に生じる傷害の低減作用を付与することが可能となる。
【0063】
また、物品としては画像表示装置に限定されず、例えば本実施形態の反射防止フィルム積層体が表面に設けられた窓ガラスやゴーグル、太陽電池の受光面、スマートフォンの画面やパーソナルコンピューターのディスプレイ。情報入力端末、タブレット端末、電光表示板、ガラステーブル表面、遊技機、航空機や電車などの運行支援装置、ナビゲーションシステム、計器盤、光学センサーの表面、ヘルメットのバイザー、鏡、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられる。
【実施例0064】
〔実施例1〕
第1透明基材を厚み80μmのTACフィルムとし、TACフィルムの第1面に下記表1に示した光硬化性樹脂組成物をバーコーターにて塗布した後、樹脂組成物を光重合、乾燥させ、厚み5μmのハードコート層を形成した。
【表1】
【0065】
次に、グロー放電処理の処理速度を8300W・min/mにてハードコート層の表面処理を行った。
【0066】
グロー処理後、スパッタリングにより厚み10nmのSiOxからなる密着層(低屈折率層)を成膜し、密着層上にNb膜(高屈折率層)、SiO層(低屈折率層)、Nb膜(高屈折率層)、及びSiO層(低屈折率層)とからなる、厚み200nmのAR層(無機多層膜層)を成膜した。さらに、AR層上にパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物からなる厚み10nmの防汚層を形成し、反射防止層を得た。
【0067】
一方、第2透明基材として、厚み25μmのTACフィルム(屈折率1.49)を用い、その両面に厚み10μmとなるように屈折率1.47を示すアクリル系粘着剤をバーコーターで塗布して粘着剤層を形成し、粘着層を得た。
【0068】
その後に、粘着層における粘着剤層の第1面を第1透明基材の第2面に貼り合せ、粘着層を有する反射防止フィルム積層体を得た。
【0069】
〔実施例2〕
第2透明基材を厚み6μmの透明PETフィルム(屈折率1.58)としたほかは、実施例1と同様にして、反射防止フィルム積層体を得た。
【0070】
〔実施例3〕
第2透明基材を厚み9μmの透明PETフィルム(屈折率1.58)としたほかは、実施例1と同様にして、反射防止フィルム積層体を得た。
【0071】
〔比較例1〕
厚み75μmの離型処理を行ったPETフィルム上に、厚み25μmとなるようにアクリル系粘着剤を塗布し、第2透明基材を有さない粘着層を形成した。その後に、この粘着層を実施例1と同様に得た反射防止層に貼り合せ、第2透明基材を有さない粘着層を有する反射防止フィルム積層体を得た。
【0072】
〔比較例2〕
第2透明基材を厚み16μmの透明PETフィルム(屈折率1.58)としたほかは、実施例1と同様にして、反射防止フィルム積層体を得た。
【0073】
〔比較例3〕
第2透明基材を厚み25μmの透明PETフィルム(屈折率1.58)としたほかは、実施例1と同様にして、反射防止フィルム積層体を得た。
【0074】
〔評価〕
上記の実施例、比較例の反射防止フィルム積層体について、以下に示す方法にて、ガラスパネルの飛散抑制効果及び光学特性を評価した。
【0075】
〔突き刺し試験〕
本明細書において突き刺し試験とは、高さ9mm、直径9mmの円状の開口を設けたサンプル設置台(厚み9mm)の開口上に、反射防止フィルム積層体サンプルを粘着剤層を用いて貼り付け(図3(b)参照)、高さ3mm、直径11mmの円状の開口を有する押さえプレート(厚み3mm)を開口同士が重なるようにして押さえて固定したもの(図4参照)を用意した後に、反射防止フィルム積層体サンプルのうち、その開口に重複する部分に対し所定の突き刺し治具(プローブ)を一定の突き刺し速度で押し込んでいき(図3(a)参照)、反射防止フィルム積層体サンプルが破断(破れ)する際の力(破断力)を測定するものである。
【0076】
突き刺し試験用のサンプルは、上述の実施例及び比較例の反射防止フィルム積層体を30mm角に切り出して作製した。
突き刺し治具としては直径8mmで先端側が円錐状のステンレス製の突き刺し治具(円錐状プローブ)を用いた。円錐状部分の長さは6mmであり、円錐状部分の先端は尖っている。
測定は、前記のサンプル設置台を押さえプレートを上にして試験機(EZ-SX、島津製作所株式会社製)にセットして、突き刺し治具を500mm/minの突き刺し速度で反射防止フィルム積層体サンプルに押し付け、反射防止フィルム積層体サンプルが破断する際の力(破断力)を測定した。
【0077】
本発明の反射防止フィルム積層体では、破断力は5.7N以上であることを要する。
【0078】
〔落球試験〕
本明細書において落球試験とは、上述の実施例及び比較例の反射防止フィルム積層体を、8インチのカバーガラス付きLCDモジュールのカバーガラスに貼合わせて、試験用サンプルを作製し、貼り合せ面を上面とした試験用サンプルに対し、6.8Kgの鉄球を2.4mの高さから落下させて、割れたカバーガラスの飛散防止効果、及び、割れたカバーガラスのシャープエッジ発生防止効果を評価するものである。上記のカバーガラス付きLCDモジュールとは、厚み1.1mmの化学強化ソーダライムガラスをカバーガラスとして設けたLCDモジュールである。
【0079】
<飛散防止性評価>
落球試験後に、割れたLCDモジュールのカバーガラスの飛散の有無を目視で確認した。
【0080】
<シャープエッジ評価>
落球試験後に、割れたLCDモジュールのカバーガラスが反射防止フィルム積層体を突き破っているか否かを確認した。
【0081】
〔光学特性評価〕
また、反射防止フィルム積層体の反射率Y(%)、全光線透過率(%)、虹ムラを以下の方法で測定した。
【0082】
<反射率Y(%)>
反射率Yとは、視感度補正反射率を意味しており(視感度とは、人間の眼の色感覚、つまり、網膜の色知覚細胞の感度の感受度に相当するもの)、具体的には、JIS Z8701に規定されるC光源に対する380nm~780nmの分光反射率に対して、CIEが定義した等色関数Y(λ)を用いて、視感度補正したものである。反射光Yは、分光光度計等を用いて測定することができる。
分光光度計U-4100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、入射角5°、標準光源D65の条件下で測定した。
【0083】
本発明の反射防止フィルム積層体では、反射率Yは0.8%以下であることを要する。
【0084】
<全光線透過率(%) >
全光線透過率とは、標準光源D65相当の光を測定対象に入射したとき透過した全ての光をいい、JIS K7361に規定される方法に準拠して作製されたヘイズメーターを用いて測定された値をいう。
全光線透過率は、ヘイズメーターNDH-5000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0085】
本発明の反射防止フィルム積層体では、全光線透過率は94%以上であることが好ましい。
【0086】
<虹ムラ>
虹ムラは、各界面において光の反射が生じると、反射した光がお互いに干渉し合って虹色の干渉ムラをいう。
虹ムラは、反射防止フィルム積層品とソーダーライムガラスを貼り合せたものを、白色を表示させた液晶ディスプレイに重ねながら回転させ、色調の変化の有無を確認した。
【0087】
<第2透明基材と粘着剤層の屈折率差>
本発明の反射防止フィルム積層体では、第2透明基材と粘着剤層の屈折率差は0.12以下であることが好ましい。
【0088】
各種試験結果を下記表2に示す。
【表2】
【0089】
実施例に係る反射防止フィルム積層体は、反射率が所定の値より低いため、特に自動車などの輸送機械に設けられるディスプレイと組み合わせた場合に好適な反射防止性能を有しつつ、シャープエッジの発生を抑制しているため、事故時などの衝撃により、例えば乗員がディスプレイに頭部を強打した際には、仮にディスプレイを構成するガラスが割れた場合でも、乗員に対する傷害を軽減することが期待できる。
【0090】
比較例1に係る反射防止積層体は、反射率は所定の性能を満たすものの、突き刺し試験の破断力が低く、シャープエッジの発生を抑制することができず、事故時の乗員保護性能は劣ることが推察される。
【0091】
比較例2~3に係る反射防止フィルム積層体は、突き刺し試験による破断力は高いものの、反射率が高く、反射防止機能に劣り、特に自動車などの輸送機械に設けられるディスプレイと組み合わせる場合には好適なものとはならない。
【符号の説明】
【0092】
10 第1透明基材
10a 第1面
10b 第2面
20 反射防止層
21 ハードコート層
22 無機多層膜層
23 防汚層
30 粘着層
31、33 粘着剤層
32 第2透明基材
図1
図2
図3
図4