(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161039
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】飛翔体、指向制御システムおよび観測方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20241108BHJP
B64G 1/10 20060101ALI20241108BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20241108BHJP
H01Q 3/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01S13/90 176
B64G1/10 335
B64G1/66 C
H01Q3/00
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140706
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2022137489の分割
【原出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金城 勇翔
(57)【要約】
【課題】観測対象に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向を特定平面に対して直角に固定できるようにする。
【解決手段】観測衛星200は、アジマス方向Azが指定される観測対象102の位置での対象平面の法線方向に基づいて定義される特定平面の法線方向と一致するように且つ空中線201のボアサイト方向が観測対象102を指向するように空中線201の指向方向を調整し、空中線201の前記ボアサイト方向へビームを照射し、観測対象102に反射したビームを空中線201を使って受信する。観測対象102は、観測衛星200から見て前方視する方向または観測衛星200から見て後方視する方向に存在するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が指定される観測対象の位置での対象平面の法線方向に基づいて定義される特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向するように、前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
前記空中線の前記ボアサイト方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える飛翔体であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在するものであり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記対象平面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記対象平面は、前記観測対象の位置での地表面であり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の指向方向を調整する飛翔体。
【請求項2】
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が指定される観測対象の位置での対象平面の法線方向に基づいて定義される特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向するように、前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
前記空中線の前記ボアサイト方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える飛翔体であり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記対象平面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在する建物であり、
前記対象平面の法線方向は、前記建物の階層方向であり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の指向方向を調整する飛翔体。
【請求項3】
前記観測対象は、前記地表面に固定されたものである
請求項1または請求項2に記載の飛翔体。
【請求項4】
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項1または請求項2に記載の飛翔体。
【請求項5】
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致しない方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項1または請求項2に記載の飛翔体。
【請求項6】
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行する進行経路の代表地点であり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項1または請求項2に記載の飛翔体。
【請求項7】
前記観測対象は、地中の地点であり、
前記対象平面の法線方向は、前記観測対象の緯度経度での前記地表面の法線方向と同じである
請求項1または請求項2に記載の飛翔体。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の飛翔体に搭載される指向制御システムであり、
前記空中線制御装置と、
前記ビーム制御装置と、
を備える指向制御システム。
【請求項9】
飛翔体の空中線のアジマス方向が指定される観測対象の位置での対象平面の法線方向に基づいて定義される特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向するように、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の指向方向を調整し、
前記空中線の前記ボアサイト方向へビームを照射し、
前記空中線を使って、観測対象に反射したビームを受信する
観測方法であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在するものであり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記対象平面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記対象平面は、前記観測対象の位置での地表面である
観測方法。
【請求項10】
飛翔体の空中線のアジマス方向が指定される観測対象の位置での対象平面の法線方向に基づいて定義される特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が観測対象を指向するように、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の指向方向を調整し、
前記空中線の前記ボアサイト方向へビームを照射し、
前記空中線を使って、観測対象に反射したビームを受信する
観測方法であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在する建物であり、
前記特定平面の法線方向は、前記建物の階層方向である
観測方法。
【請求項11】
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が、前記観測対象の位置に応じて定義される特定平面の法線方向と一致するように前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
前記空中線の前記指向方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える飛翔体であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在するものであり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での対象平面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記対象平面は、前記観測対象の緯度経度での地表面である
飛翔体。
【請求項12】
前記空中線制御装置は、前記空中線の前記アジマス方向が前記特定平面の前記法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向するように、前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項11に記載の飛翔体。
【請求項13】
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記地表面に固定されたものであり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項11または請求項12に記載の飛翔体。
【請求項14】
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項11または請求項12に記載の飛翔体。
【請求項15】
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致しない方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項11または請求項12に記載の飛翔体。
【請求項16】
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行する進行経路の代表地点であり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項11または請求項12に記載の飛翔体。
【請求項17】
前記観測対象は、地中の地点であり、
前記対象平面の法線方向は、前記観測対象の緯度経度での前記地表面の法線方向と同じである
請求項11または請求項12に記載の飛翔体。
【請求項18】
請求項11に記載の飛翔体に搭載される指向制御システムであり、
前記空中線制御装置と、
前記ビーム制御装置と、
を備える指向制御システム。
【請求項19】
飛翔体の空中線のアジマス方向が観測対象の位置に応じて定義される特定平面の法線方向と一致するように前記空中線の指向方向を調整し、
前記空中線の前記指向方向へビームを照射し、
前記空中線を使って、観測対象に反射したビームを受信する
観測方法であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在するものであり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での対象平面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記対象平面は、前記観測対象の緯度経度での地表面である
観測方法。
【請求項20】
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が、観測対象の位置に応じて定義する特定平面の法線方向と一致するように前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
前記空中線の前記指向方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える飛翔体であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在するものであり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の緯度経度での建物の階層方向と、が形成する平面である
飛翔体。
【請求項21】
前記空中線制御装置は、前記空中線の前記アジマス方向が前記特定平面の前記法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向するように、前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項20に記載の飛翔体。
【請求項22】
前記観測対象は、前記地表面に固定されたものであり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項20または請求項21に記載の飛翔体。
【請求項23】
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項20または請求項21に記載の飛翔体。
【請求項24】
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致しない方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項20または請求項21に記載の飛翔体。
【請求項25】
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行する進行経路の代表地点であり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
請求項20または請求項21に記載の飛翔体。
【請求項26】
前記観測対象は、地中の地点である
請求項20または請求項21に記載の飛翔体。
【請求項27】
請求項20に記載の飛翔体に搭載される指向制御システムであり、
前記空中線制御装置と、
前記ビーム制御装置と、
を備える指向制御システム。
【請求項28】
飛翔体の空中線のアジマス方向が観測対象の位置に応じて定義する特定平面の法線方向と一致するように前記空中線の指向方向を調整し、
前記空中線の前記指向方向へビームを照射し、
前記空中線を使って、観測対象に反射したビームを受信する
観測方法であり、
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在するものであり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の緯度経度での建物の階層方向と、が形成する平面である
観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、観測対象の観測を行うためのビーム指向制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、宇宙機を使った観測が行われている。
非特許文献1は、ビームが観測対象を指向するようにビームを回転制御することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-95226号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0018613号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A tomographic formulation of spotlight-mode synthetic apertureradar,Proc IEEE,vol.71,pp.917-925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、ビーム方向(ベクトル)を観測対象の方向に合わせるが、ビーム方向回りの回転について定義されていない。
そのため、観測対象に照射される電磁波の電場ベクトルの変動方向を意図した方向に制御できず、希望する電場ベクトル入射条件で観測対象を観測することができない。
【0006】
本開示は、観測対象に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向を観測対象が位置する平面の法線方向に対して直角に固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の飛翔体は、
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が指定される観測対象の位置での対象平面の法線方向に基づいて定義される特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向するように、前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
前記空中線の前記ボアサイト方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える。
前記観測対象は、前記飛翔体から見て前方視する方向または前記飛翔体から見て後方視する方向に存在するものである。
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記対象平面の法線方向と、が形成する平面である。
前記対象平面は、前記観測対象の位置での地表面である。
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の指向方向を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、観測対象に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向を観測対象が位置する平面の法線方向に対して直角に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における衛星観測システム100の構成図。
【
図2】実施の形態1における観測衛星200の構成図。
【
図4】実施の形態1における観測方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態および図面において、同じ要素または対応する要素には同じ符号を付している。説明した要素と同じ符号が付された要素の説明は適宜に省略または簡略化する。図中の矢印は信号、データ又は処理の流れを主に示している。
【0011】
実施の形態1.
衛星観測システム100について、
図1から
図9に基づいて説明する。
【0012】
***構成の説明***
図1に基づいて、観測システムとしての衛星観測システム100の構成を説明する。
衛星観測システム100は、飛翔体としての観測衛星200と地上局110を有する。衛星観測システム100は、飛翔体を使って観測を行う観測システムの例である。飛翔体は、人工衛星または航空機などである。
観測衛星200は、観測対象102の観測を行う人工衛星である。観測は、ビームを照射し、地表面に位置する観測対象102に反射したビームを受信することによって行われる。人工衛星は宇宙機ともいう。空中線201はアンテナともいう。
指向対象101は、空中線201から指向される地点である。具体的には、観測対象102が指向対象101になる。
観測対象102は、観測されるものである。具体的な観測対象102は、地表面に固定されたものである。
地上局110は、観測衛星200と通信する。
【0013】
観測衛星200を通る破線矢印は、観測衛星200が飛翔する軌道を表す。軌道はパスともいう。
【0014】
観測衛星200から指向対象101への一点鎖線の矢印は、ビーム指向方向Beamを表す。
ビーム指向方向Beamは、空中線201から照射されるビームの指向方向である。ビームは電磁波である。
【0015】
衛星位置Psatは、観測衛星200の位置である。衛星位置Psatは、空中線201の位置に相当する。
観測衛星200に付された3つの矢印は、ボアサイト方向Boa、アジマス方向Azおよびエレベーション方向Elを示す。
ボアサイト方向Boaは、空中線201のボアサイト方向である。
アジマス方向Azは、空中線201の水平偏波励振方向に相当する。
エレベーション方向Elは、空中線201のエレベーション方向であり、ボアサイト方向Boaとアジマス方向Azと直交する。
【0016】
対象位置Pgは、観測対象102の位置である。
観測対象102に付された上向き矢印は、法線方向Nを表す。
法線方向Nは、観測対象102の位置での対象平面の法線方向である。
対象平面は、観測対象102の位置を基準とする平面である。具体的には、対象平面は地表面である。
観測対象102が建物である場合、法線方向Nは建物の階層方向に相当する。
【0017】
図2に基づいて、観測衛星200の構成を説明する。
観測衛星200は、空中線201S、空中線201R、位置センサ202および姿勢センサ203を備える。
空中線201Sは、送信用の空中線201である。
空中線201Rは、受信用の空中線201である。
位置センサ202は、観測衛星200を測位するためのセンサである。位置センサ202の具体例はGPSである。GPSはGlobal Positioning Systemの略称である。
姿勢センサ203は、観測衛星200の姿勢を計測するためのセンサである。姿勢センサ203の具体例はスタートラッカーである。
【0018】
観測衛星200は、通信装置211と対象記録装置212といった装置(コンピュータ)を備える。
観測衛星200は、指向制御システム220を備える。指向制御システム220は、指向制御装置221と空中線制御装置222とビーム制御装置223といった装置を備える。
観測衛星200は、受信装置231と観測結果記録装置232といった装置を備える。
装置は、処理回路を備える。
処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0019】
地上局110は、通信装置111を備える。
【0020】
***動作の説明***
観測衛星200の動作の手順は観測方法に相当する。
【0021】
図3に基づいて、観測方法の特徴を説明する。
観測対象102から空中線201への実線矢印は、観測対象102に対する空中線201の相対方向を表す。
網掛け平面は、ビームの水平偏波の電場ベクトルが存在する平面である。
網掛け平面において観測対象102に付された破線矢印は、観測対象102に入射するビームの水平偏波の電場ベクトルが変動する方向を表す。
地表面において観測対象102に付された点線矢印は、地表面に投影されたエレベーション方向Elを表す。
【0022】
観測衛星200の装置は以下のように動作する。
空中線制御装置222は、空中線201のアジマス方向Azが特定平面の法線方向と一致するように、且つ、空中線201のボアサイト方向Boaが指向対象101を指向するように、空中線201の指向方向を調整する。なお、空中線制御装置222は、観測衛星200の進行に合わせて空中線201の指向方向を調整する。
特定平面は、観測対象102に対する空中線201の相対方向と、観測対象102の位置での地表面の法線方向Nと、が形成する平面である。
ビーム制御装置223は、空中線201Sの指向方向へビームを照射する。但し、空中線201Sは、観測対象102を指向しているため、ビーム制御装置223は、電子走査によって、空中線201Sの指向方向からビーム指向方向を調整する必要はない。
受信装置231は、空中線201Rを使って、観測対象102に反射したビームを受信する。
【0023】
図4に基づいて、観測方法における手順を説明する。
ステップS110において、観測衛星200は、1つ以上の対象情報を受け付ける。
対象情報は、対象位置Pgと法線方向Nと観測条件を示す。
観測条件は、観測軌道および衛星観測点などを指定する。観測軌道は、観測が実施される軌道である。衛星観測点は、観測が実施される位置である。観測衛星200は、観測軌道の衛星観測点から観測対象102を観測する。
【0024】
対象情報は以下のように受け付けられる。
運用者は、地上局110の管制装置に対象情報を入力する。
通信装置111は、管制装置に入力された対象情報を送信する。
通信装置211は、対象情報を受信する。
対象記録装置212は、メモリなどの記憶装置を備え、受信された対象情報を記録する。
対象記録装置212には、対象リストが格納される。対象リストは、1つ以上の対象情報を示す。
【0025】
ステップS120において、指向制御装置221は、対象情報に基づいて、空中線201の指向方向(Boa,Az,El)およびビーム指向方向Beamを算出する。
【0026】
空中線201の指向方向およびビーム指向方向Beamは、以下のような手順で算出される。
位置センサ202は、各時刻に観測衛星200を測位する。姿勢センサ203は、各時刻に観測衛星200の姿勢を計測する。
指向制御装置221は、衛星位置Psatに合う観測条件を示す対象情報を対象リストから選択する。
指向制御装置221は、衛星位置Psatと対象位置Pgと法線方向Nに基づいて、空中線201の指向方向とビーム指向方向Beamを算出する。対象位置Pgと法線方向Nは、選択された対象情報に示される。
【0027】
空中線201の指向方向(Boa,Az,El)およびビーム指向方向Beamの算出の詳細を後述する。
【0028】
ステップS130において、空中線制御装置222は、空中線201を指向方向に向ける。
【0029】
空中線201は以下のように指向方向に向けられる。
指向制御装置221は、空中線指向指令を出力する。空中線指向指令は、空中線201の指向方向を指示する。出力された空中線指向指令は空中線制御装置222に入力される。
空中線制御装置222は、空中線指向指令で指示された指向方向に空中線201を向ける。このとき、空中線制御装置222は、観測衛星200の姿勢または空中線201の姿勢を調整することによって、空中線201を空中線指向指令で指示された指向方向に向ける。但し、空中線制御装置222は、観測衛星200の姿勢と空中線201の姿勢を調整することによって、空中線201の指向方向に向けてもよい。また、空中線制御装置222は、観測衛星200の姿勢のみを調整することによって、空中線201を空中線指向指令で指示された指向方向に向けてもよい。また、空中線制御装置222は、空中線201の姿勢のみを調整することによって、空中線201を空中線指向指令で指示された指向方向に向けてもよい。
観測衛星200の姿勢は、観測衛星200に具備された姿勢制御装置を制御することによって調整される。姿勢制御装置の例は、リアクションホイール、コントロールモーメントジャイロ、スラスタである。
また、空中線201は、駆動機構を具備しても良い。空中線201の姿勢は、空中線201に具備された駆動機構を制御することによって調整される。駆動機構の例は、ジンバルである。
空中線制御装置222は、観測衛星200の姿勢と空中線201の姿勢のそれぞれを調整するために、フィードバック制御またはフォードフォワード制御を行う。
【0030】
ステップS140において、ビーム制御装置223は、空中線201からビーム指向方向Beamへビームを照射する。
【0031】
ビームは以下のように照射される。
指向制御装置221は、ビーム指向指令を出力する。ビーム指向指令は、ビーム指向方向Beamを指示する。出力されたビーム指向指令はビーム制御装置223に入力される。
ビーム制御装置223は、空中線201Sを使って、ビーム指向指令で指示されたビーム指向方向Beamへビームを照射する。
【0032】
ステップS150において、観測衛星200は、観測対象102に対する観測結果を得る。
観測結果は、観測対象102を観測して得られたデータである。
【0033】
観測結果は以下のように得られる。
空中線201Sから照射されたビーム(送信波)は、観測対象102に反射する。
観測対象102に反射したビーム(反射波)は、空中線201Rに入射する。
受信装置231は、空中線201Rからビームを受信し、受信したビームを処理する。これにより、観測結果が得られる。
観測結果記録装置232は、メモリなどの記憶装置を備え、観測結果を記録する。
【0034】
ステップS120における指向方向の算出の詳細を説明する。
指向制御装置221は、以下の式を計算する。これにより、空中線201の指向方向(Boa,Az,El)およびビーム指向方向Beamが算出される。
【0035】
【0036】
各符号の上に付された矢印は、ベクトルを意味する。
【0037】
ボアサイト方向Boaは、対象位置Pgに対する衛星位置Psatの相対方向に相当する。ボアサイト方向Boaは式(1-1)を計算して算出される。
アジマス方向Azは、ボアサイト方向Boaと法線方向Nが形成する平面(特定平面)の法線方向に相当する。観測衛星200から見て、観測対象102が衛星直下点軌跡に対して右側に位置する場合、アジマス方向Azは式(1-2R)を計算して算出される。観測衛星200から見て、観測対象102が衛星直下点軌跡に対して左側に位置する場合、アジマス方向Azは式(1-2L)を計算して算出される。衛星直下点軌跡は、観測衛星200の直下の地点の軌跡である。つまり、衛星直下点軌跡は、地表面に投影された観測衛星200の軌道に相当する。
エレベーション方向Elは、ボアサイト方向Boaとアジマス方向Azの外積に相当する。エレベーション方向Elは式(1-3)を計算して算出される。
ビーム指向方向Beamは、式(1-4)に示すように、ボアサイト方向Boaに等しい。
【0038】
各方向は、ベクトル形式で表されてもよいし、基準方向からの角度を示す角度形式で表されてもよい。
【0039】
***実施の形態1の補足***
実施の形態1は、SAR(合成開口レーダ)を使った観測において、観測対象102に照射するビームの電場ベクトルの変動方向を一定に保つためのビーム指向制御に関するものである。
空中線制御装置222は、空中線201の回転2自由度を制御することによって、空中線201のアジマス方向を特定平面の法線ベクトルと一致させる。回転2自由度は任意の2軸回りの回転である。
特定平面は、観測対象102から空中線201への相対位置ベクトルと、観測対象102の地表面法線ベクトルと、が形成する平面である。
空中線制御装置222は、空中線201の残った回転1自由度を制御することによって、空中線201のボアサイト方向を観測対象102へ指向させる。回転1自由度は、空中線201のアジマス方向の軸回りの回転である。
これら一連の制御により、ビームは観測対象102を指向する。さらに、観測対象102に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向と観測対象102の地表面法線ベクトルとのなす角が直角に固定される。
【0040】
***実施の形態1の効果***
図5に、従来の宇宙機による観測におけるビーム指向制御を説明する。
宇宙機には、空中線が搭載される。
「交点」は、空中線のボアサイト方向と地表面の交点を意味する。
交点に付された2つの実線矢印は、空中線のエレベーション方向が地表面に投影された方向と、空中線のアジマス方向が地表面に投影された方向と、を表す。
従来、ビームの回転制御により、ビームが観測対象に指向していた。ビームの回転制御は、電子走査または機械駆動によって実現されていた。
しかし、ビーム方向(ベクトル)を観測対象の方向に合わせるが、ビーム方向回りの回転が定義されていない。そして、観測対象に照射される電磁波の電場ベクトルの変動方向を意図した方向に制御することは実施されていない。そのため、希望する電場ベクトル入射条件で観測対象を観測することができない、という課題があった。
【0041】
実施の形態1により、観測対象に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向を、観測対象の地表面法線方向に対して直角に固定することが可能となる。
【0042】
***実施例の説明***
対象位置Pgは、地上局110から観測衛星200に設定されてもよいし、観測衛星200において指向対象101の条件に基づいて設定されてもよい。
衛星位置Psatは、観測衛星200において測位されてもよいし、地上局110で算出され観測衛星200に設定されてもよい。例えば、地上局110では、複数のレーダのそれぞれから観測衛星200までの距離が測定され、衛星位置Psatは三角測量によって算出される。
法線方向Nは、地上局110から観測衛星200に設定されてもよいし、観測衛星200において対象位置Pgに基づいて算出されてもよい。
【0043】
以下に、観測対象102について実施例を説明する。
【0044】
図6に基づいて、第1実施例を説明する。
観測対象102は、観測衛星200の進行方向と合致する方向に地表面に位置する地点軌跡である。観測対象102の進行方向は、観測衛星200の進行方向が地表面に投影された方向に相当する。観測対象102は、観測衛星200の進行に合わせて進行する。
空中線制御装置222は、観測対象102の進行と観測衛星200の進行に合わせて空中線201の指向方向を調整する。
【0045】
図7に基づいて、第2実施例を説明する。
観測対象102は、観測衛星200の進行方向と合致しない方向に地表面に位置する地点軌跡である。観測対象102は、観測衛星200の進行とは関係なく観測領域を進行する。
空中線制御装置222は、観測対象102の進行と観測衛星200の進行に合わせて空中線201の指向方向を調整する。
【0046】
図8に基づいて、第3実施例を説明する。
観測対象102は、観測衛星200の進行方向と合致する方向に地表面に位置する地点軌跡の経路の代表地点であってもよい。観測期間中のいずれかの時刻における観測対象102の位置が代表地点である。
空中線制御装置222は、衛星観測点にて代表地点を観測対象102としたときの指向方向を算出する。指向方向は観測期間において維持される。
空中線201の指向方向と空間座標系の関係は固定される。観測期間において空中線201の指向方向と空間座標系の関係が維持されることにより、次のような効果が得られる。観測期間中の全ての時刻において、地表面に対して照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向と電波照射点の地表面法線ベクトルとの成す角が近似的に直角に固定される。電波照射点はビーム指向と地表面の交点である。空間座標系は、軌道座標系でもよいし、慣性座標系でもよい。
【0047】
図9に基づいて、第4実施例を説明する。
観測対象102は、地中の地点である。
電波照射点はビーム方向と地表面の交点である。
対象位置Pgは、観測対象102の位置である。
法線方向Nは、対象位置Pgの緯度経度における地表面の法線方向である。
対象平面の法線方向は、法線方向Nと同じである。
【0048】
実施の形態2.
空中線201の指向方向から逸らしてビームが照射される形態について、主に実施の形態1と異なる点を
図10に基づいて説明する。
【0049】
***構成の説明***
衛星観測システム100の構成は、実施の形態1における構成と同じである。
但し、指向対象101は観測対象102でなくても良い。
【0050】
***動作の説明***
図10に基づいて、観測方法の特徴を説明する。
空中線制御装置222は、空中線201のアジマス方向Azが特定平面の法線方向と一致するように、且つ、空中線201のボアサイト方向Boaが観測対象102を指向する方向から逸らし角度θに応じて逸れた方向を指向するように、空中線201の指向方向を調整する。
特定平面は、観測対象102に対する空中線201の相対方向と、観測対象102の位置での地表面の法線方向と、が形成する平面である。
ビーム制御装置223は、電子走査によって、空中線201Sの指向方向から逸らし角度θに応じて逸らした方向へビームを照射する。
逸らし角度θは、空中線201のエレベーション方向Elにおける角度である。
空中線201は観測対象102より遠い指向対象101を指向し、ビームは指向対象101より近い観測対象102を指向する。
または、空中線201は観測対象102より近い指向対象101を指向し、ビームは指向対象101より遠い観測対象102を指向する。
【0051】
観測方法における手順は、実施の形態1における手順と同じである(
図4を参照)。
但し、ステップS110で受け付けられる対象情報は、さらに、逸らし角度θを示す。
また、ステップS120における指向方向の計算式は、以下の通りである。
【0052】
【0053】
rotation{X,Y,Z}は、単位ベクトルXを単位ベクトルY回りにZ度右手回転する演算を意味する。
【0054】
アジマス方向Azは、対象位置Pgに対する衛星位置Psatの相対方向と法線方向Nの外積に相当する。観測衛星200から見て、観測対象102が衛星直下点軌跡に対して右側に位置する場合、アジマス方向Azは式(2-1R)を計算して算出される。観測衛星200から見て、観測対象102が衛星直下点軌跡に対して左側に位置する場合、アジマス方向Azは式(2-1L)を計算して算出される。
エレベーション方向Elは、対象位置Pgに対する衛星位置Psatの相対方向をアジマス方向Azの軸回りに逸らし角度θに応じて回転させた方向に相当する。エレベーション方向Elは式(2-2)を計算して算出される。
ボアサイト方向Boaは、アジマス方向Azとエレベーション方向Elの外積に相当する。ボアサイト方向Boaは式(2-3)を計算して算出される。
ビーム指向方向Beamは、衛星位置Psatに対する対象位置Pgの相対方向に相当する。ビーム指向方向Beamは式(2-4)を計算して算出される。
【0055】
***実施の形態2の補足***
空中線制御装置222は、空中線201の回転2自由度を制御することによって、空中線201のアジマス方向を特定平面の法線ベクトルと一致させる。
特定平面は、観測対象102から空中線201への相対位置ベクトルと、観測対象102の地表面法線ベクトルと、が形成する平面である。
空中線制御装置222は、空中線201の残った回転1自由度を制御することによって、逸らし角度θに応じて空中線201のボアサイト方向を観測対象102から逸れた指向対象101(地表面に投影されたエレベーション方向Elに逸れた位置)に指向させる。
ビーム制御装置223は、電子走査により、ビームを観測対象102に指向させる。
これら一連の制御により、ビームは観測対象102を指向する。さらに、観測対象102に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向と観測対象102の地表面法線ベクトルとのなす角が直角に固定される。
さらに、逸らし角度θを設定することにより、空中線201のボアサイト軸回りの回転レートを低減することが可能となる。
【0056】
逸らし角度θがゼロである場合、実施の形態2は実施の形態1と同等である。
【0057】
***実施の形態2の効果***
実施の形態2により、プラットフォームの空中線のボアサイト軸回りの回転レートを大きく向上させなくても、観測対象に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向を、観測対象の地表面法線方向に対して直角に固定することが可能となる。
【0058】
***実施例の説明***
逸らし角度θは、地上局110から観測衛星200に設定されてもよいし、観測衛星200において設定されてもよい。
【0059】
逸らし角度θは、アジマス方向Azの軸回りの角度で設定される。
逸らし角度θにより、指向地点は観測対象からエレベーション方向Elに逸れることになる。
これは、通常、電子走査による調整範囲がエレベーション方向El方向で大きいことを考慮した実施例である。
【0060】
実施の形態1の実施例は、実施の形態2に適用してもよい。
【0061】
実施の形態3.
空中線201の指向方向から逸らしてビームが照射される形態について、主に実施の形態1と異なる点を
図11に基づいて説明する。
【0062】
***構成の説明***
衛星観測システム100の構成は、実施の形態1における構成と同じである。
但し、指向対象101は観測対象102でなくても良い。
【0063】
***動作の説明***
図11に基づいて、観測方法の特徴を説明する。
観測衛星200に付された二点鎖線は、観測対象102の法線方向Nと観測対象102に対する空中線201の相対方向の外積の方向を表す。
地表面において指向対象101に付された点線矢印は、地表面に投影されたエレベーション方向Elおよびアジマス方向Azを表す。
【0064】
空中線制御装置222は、空中線201のアジマス方向Azが特定平面の法線方向と一致するように、且つ、空中線201のボアサイト方向Boaが観測対象102を指向する方向から逸らし角度θに応じて逸れた方向を指向するように、空中線201の指向方向を調整する。
特定平面は、観測対象102に対する空中線201の相対方向と、観測対象102の位置での地表面の法線方向と、が形成する平面を、観測対象102の位置での地表面の法線方向回りに面回転角度φに応じて回転した平面である。
ビーム制御装置223は、電子走査によって、観測対象102の方向へビームを照射する。
【0065】
観測方法における手順は、実施の形態1における手順と同じである(
図4を参照)。
但し、ステップS110で受け付けられる対象情報は、さらに、面回転角度φと逸らし角度θを示す。
また、ステップS120における指向方向の計算式は、以下の通りである。
【0066】
【0067】
rotation{X,Y,Z}は、単位ベクトルXを単位ベクトルY回りにZ度右手回転する演算を意味する。
【0068】
アジマス方向Azは、対象位置Pgに対する衛星位置Psatの相対方向と法線方向Nの外積を、法線方向Nの軸回りに面回転角度φに応じて回転させた方向に相当する。観測衛星200から見て、観測対象102が衛星直下点軌跡に対して右側に位置する場合、アジマス方向Azは式(3-1R)を計算して算出される。観測衛星200から見て、観測対象102が衛星直下点軌跡に対して左側に位置する場合、アジマス方向Azは式(3-1L)を計算して算出される。
ボアサイト方向Boaは、衛星位置Psatに対する対象位置Pgの相対方向を、法線方向Nの軸回りに面回転角度φに応じて回転させた方向を、アジマス方向Azの軸回りに逸らし角度θに応じて回転させた方向に相当する。ボアサイト方向Boaは式(3-2)および式(3-3)を計算して算出される。
エレベーション方向Elは、ボアサイト方向Boaとアジマス方向Azの外積に相当する。エレベーション方向Elは式(3-4)を計算して算出される。
ビーム指向方向Beamは、衛星位置Psatに対する対象位置Pgの相対方向に相当する。ビーム指向方向Beamは式(3-5)を計算して算出される。
【0069】
***実施の形態3の補足***
空中線制御装置222は、空中線201の回転2自由度を制御することによって、空中線201のアジマス方向を特定平面の法線ベクトルと一致させる。
特定平面は、観測対象102から空中線201への相対位置ベクトルと、観測対象102の地表面法線ベクトルと、が形成する平面を、観測対象102の位置での地表面の法線方向回りに面回転角度φに応じて回転した平面である。
空中線制御装置222は、空中線201の残った回転1自由度を制御することによって、空中線201のボアサイト方向を、逸らし角度θに応じた方向に指向させる。
ビーム制御装置223は、電子走査により、ビームを観測対象102に指向させる。
これら一連の制御により、ビームは観測対象102を指向する。さらに、観測対象102に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向と観測対象102の地表面法線ベクトルとのなす角が直角に固定される。
さらに、逸らし角度θを設定することにより、空中線201のボアサイト軸回りの回転レートを低減することが可能となる。
【0070】
面回転角度φがゼロであり、且つ、逸らし角度θがゼロである場合、実施の形態3は実施の形態1と同等である。
面回転角度φがゼロである場合、実施の形態3は実施の形態2と同等である。
【0071】
***実施の形態3の効果***
実施の形態3により、プラットフォームの空中線のボアサイト軸回りの回転レートを大きく向上させなくても、観測対象に照射される水平偏波の電場ベクトルの変動方向を、観測対象の地表面法線方向に対して直角に固定することが可能となる。
【0072】
***実施例の説明***
面回転角度φと逸らし角度θは、地上局110から観測衛星200に設定されてもよいし、観測衛星200において設定されてもよい。
【0073】
面回転角度φは、観測対象の地表面の法線方向回りの角度として設定される。面回転角度φにより、指向地点は観測対象からアジマス方向Azに逸れることになる。
逸らし角度θは、アジマス方向Az軸回りの角度で設定する。逸らし角度θのより、指向地点は観測対象からエレベーション方向Elに逸れることになる。
【0074】
実施の形態1の実施例は、実施の形態3に適用してもよい。
【0075】
***実施の形態の補足***
各実施の形態は、好ましい形態の例示であり、本開示の技術的範囲を制限することを意図するものではない。各実施の形態は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。フローチャート等を用いて説明した手順は、適宜に変更してもよい。
【0076】
「装置」は、「部」、「処理」、「回路」または「サーキットリ」と読み替えてもよい。
【0077】
以下に、本開示の諸態様を付記として記載する。
(付記1)
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が特定平面の法線方向と一致するように前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
前記空中線の前記指向方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える飛翔体であり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での対象平面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記対象平面は、前記観測対象が位置する平面である
飛翔体。
【0078】
(付記2)
前記空中線制御装置は、前記空中線の前記アジマス方向が前記特定平面の前記法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向するように、前記空中線の前記指向方向を調整する
付記1に記載の飛翔体。
【0079】
(付記3)
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記地表面に固定されたものであり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
付記1または付記2に記載の飛翔体。
【0080】
(付記4)
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
付記1または付記2に記載の飛翔体。
【0081】
(付記5)
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致しない方向に前記地表面を進行するものであり、
前記空中線制御装置は、前記観測対象の進行と前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
付記1または付記2に記載の飛翔体。
【0082】
(付記6)
前記対象平面は、前記地表面であり、
前記観測対象は、前記飛翔体の進行方向と合致する方向に前記地表面を進行する進行経路の代表地点であり、
前記空中線制御装置は、前記飛翔体の進行に合わせて前記空中線の前記指向方向を調整する
付記1または付記2に記載の飛翔体。
【0083】
(付記7)
前記観測対象は、地中の地点であり、
前記対象平面の法線方向は、前記観測対象の緯度経度での前記地表面の法線方向と同じである
付記1または付記2に記載の飛翔体。
【0084】
(付記8)
付記1から付記7のいずれか1項に記載の飛翔体に搭載される指向制御システムであり、
前記空中線制御装置と、
前記ビーム制御装置と、
を備える指向制御システム。
【0085】
(付記9)
空中線のアジマス方向が特定平面の法線方向と一致するように前記空中線の指向方向を調整し、
前記空中線の前記指向方向へビームを照射し、
前記空中線を使って、観測対象に反射したビームを受信する
観測方法であり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での対象平面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記対象平面は、前記観測対象が位置する平面である
観測方法。
【0086】
(付記10)
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向する方向から逸らし角度に応じて逸れた方向を指向するように、前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
電子走査によって、前記空中線の前記指向方向から前記逸らし角度に応じて逸らした方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える飛翔体であり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での前記地表面の法線方向と、が形成する平面であり、
前記逸らし角度は、前記空中線のエレベーション方向における角度である
飛翔体。
【0087】
(付記11)
前記空中線は、前記観測対象より遠い指向対象を指向し、
前記ビームは、前記指向対象より近い前記観測対象を指向する
付記10に記載の飛翔体。
【0088】
(付記12)
前記空中線は、前記観測対象より近い指向対象を指向し、
前記ビームは、前記指向対象より遠い前記観測対象を指向する
付記10に記載の飛翔体。
【0089】
(付記13)
付記10から付記12のいずれか1つに記載の飛翔体に搭載される指向制御システムであり、
前記空中線制御装置と、
前記ビーム制御装置と、
を備える指向制御システム。
【0090】
(付記14)
空中線のアジマス方向が特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が観測対象を指向する方向から逸らし角度に応じて逸れた方向を指向するように、前記空中線の指向方向を調整し、
電子走査によって、前記空中線の前記指向方向から前記逸らし角度に応じて逸らした方向へビームを照射し、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する
観測方法であり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での地表面の法線方向と、が形成する平面である
観測方法。
【0091】
(付記15)
ビームを照射し、地表面に位置する観測対象に反射したビームを受信するための空中線と、
前記空中線のアジマス方向が特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が前記観測対象を指向する方向から逸らし角度に応じて逸れた方向を指向するように、前記空中線の指向方向を調整する空中線制御装置と、
電子走査によって、前記空中線の前記指向方向から前記逸らし角度に応じて逸らした方向へビームを照射するビーム制御装置と、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する受信装置と、
を備える飛翔体であり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での前記地表面の法線方向と、が形成する平面を、前記観測対象の位置での前記地表面の法線方向回りに面回転角度に応じて回転した平面であり、
前記面回転角度は、前記地表面の法線方向回りの角度として設定され、
前記逸らし角度は、前記空中線のエレベーション方向における角度である
飛翔体。
【0092】
(付記16)
前記空中線は、前記観測対象より遠い指向対象を指向し、
前記ビームは、前記指向対象より近い前記観測対象を指向する
付記15に記載の飛翔体。
【0093】
(付記17)
前記空中線は、前記観測対象より近い指向対象を指向し、
前記ビームは、前記指向対象より遠い前記観測対象を指向する
付記15に記載の飛翔体。
【0094】
(付記18)
付記15から付記17のいずれか1つに記載の飛翔体に搭載される指向制御システムであり、
前記空中線制御装置と、
前記ビーム制御装置と、
を備える指向制御システム。
【0095】
(付記19)
空中線のアジマス方向が特定平面の法線方向と一致するように、且つ、前記空中線のボアサイト方向が観測対象を指向する方向から逸らし角度に応じて逸れた方向を指向するように、前記空中線の指向方向を調整し、
電子走査によって、前記空中線の前記指向方向から前記逸らし角度に応じて逸らした方向へビームを照射し、
前記空中線を使って、前記観測対象に反射したビームを受信する
観測方法であり、
前記特定平面は、前記観測対象に対する前記空中線の相対方向と、前記観測対象の位置での地表面の法線方向と、が形成する平面を、前記観測対象の位置での前記地表面の法線方向回りに面回転角度に応じて回転した平面であり、
前記面回転角度は、前記地表面の法線方向回りの角度として設定される
観測方法。
【符号の説明】
【0096】
100 衛星観測システム、101 指向対象、102 観測対象、110 地上局、111 通信装置、200 観測衛星、201 空中線、202 位置センサ、203 姿勢センサ、211 通信装置、212 対象記録装置、220 指向制御システム、221 指向制御装置、222 空中線制御装置、223 ビーム制御装置、231 受信装置、232 観測結果記録装置、Az アジマス方向、Beam ビーム指向方向、Boa ボアサイト方向、El エレベーション方向、N 法線方向、Pg 対象位置、Psat 衛星位置、θ 逸らし角度、φ 面回転角度。