(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161040
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】水素供給システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/24 20060101AFI20241108BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20241108BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20241108BHJP
【FI】
C01B3/24
C01B3/56 Z
H01M8/0606
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140747
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2020062504の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】清家 匡
(72)【発明者】
【氏名】壱岐 英
(72)【発明者】
【氏名】前田 征児
(57)【要約】
【課題】水素を製造するときのCO
2を低減できる水素供給システムを提供する。
水素供給システムを提供する。
【解決手段】水素供給システム100は、電力を用いて脱水素反応部3を加熱する加熱機構20を備える。この加熱機構20へ電力を供給する電力供給部30は、加熱機構20へ再生可能エネルギーに基づく電力を供給することができる(
図2(b)参照)。これにより、加熱機構20は、再生可能エネルギーに基づく電力によって、脱水素反応部3を加熱することができる。水素供給システム100は、再生可能エネルギーを用いることにより、化石燃料を用いることなく、又は化石燃料を低減した状態で、水素を製造することができる。以上により、再生可能エネルギーを用いることにより、エネルギーを有効に利用することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の供給を行う水素供給システムであって、
水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、
電力を用いて前記脱水素反応部を加熱する加熱機構と、
前記加熱機構へ再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方を供給する電力供給部と、を備える、水素供給システム。
【請求項2】
前記電力供給部は、前記再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方を蓄電する蓄電部を備える、請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項3】
水素の供給を行う水素供給システムであって、
水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、
熱媒体を用いて前記脱水素反応部を加熱する加熱機構と、を備え、
前記脱水素反応部は、
前記脱水素反応を行う脱水素触媒が配置されると共に、前記原料が流通する第1の流路と、
前記第1の流路と並列に設けられると共に、前記熱媒体が流通する第2の流路と、を有し、
前記加熱機構は、
前記脱水素反応部の前記第2の流路へ前記熱媒体を供給する熱媒体供給部と、
前記熱媒体を介して前記脱水素触媒を加熱する加熱部と、を有する、水素供給システム。
【請求項4】
前記加熱部は、前記第2の流路の内部に設けられる、請求項3に記載の水素供給システム。
【請求項5】
前記第2の流路は、当該第2の流路が延びる第1の方向において、当該第2の流路内に設けられた仕切部材によって、複数の区画に分割される、請求項3又は4に記載の水素供給システム。
【請求項6】
前記加熱機構は、前記第2の流路の内部において、複数の前記区画のそれぞれに対して配置される複数の前記加熱部を有する、請求項5に記載の水素供給システム。
【請求項7】
前記加熱機構は、複数の前記区画のそれぞれの温度を検出する複数の温度検出部を備える、請求項5又は6に記載の水素供給システム。
【請求項8】
前記仕切部材は、前記第1の方向と交差する第2の方向における一方の端部側に、前記第1の方向への前記熱媒体の流通を許容する開口部を有する、請求項5~7の何れか一項に記載の水素供給システム。
【請求項9】
前記仕切部材は、異なる前記区画同士の間を塞ぎ、
前記加熱機構は、前記複数の区画のそれぞれに対して前記熱媒体を供給する複数の前記熱媒体供給部を有する、請求項5~7の何れか一項に記載の水素供給システム。
【請求項10】
水素の供給を行う水素供給システムであって、
水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、
電力を用いて前記脱水素反応部を加熱する加熱機構と、
前記加熱機構へ系統電力からの電力を供給する電力供給部と、を備える、水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の供給を行う水素供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水素供給システムとして、例えば特許文献1に挙げるものが知られている。特許文献1の水素供給システムは、原料の芳香族炭化水素の水素化物を貯蔵するタンクと、当該タンクから供給された原料を脱水素反応させることによって水素を得る脱水素反応部と、脱水素反応部で得られた水素を気液分離する気液分離部と、気液分離された水素を精製する水素精製部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような水素供給システムにおいて、脱水素反応部は、吸熱反応によって原料を脱水素反応させるものである。従って、水素供給システムは、脱水素反応部を加熱する加熱機構を備える。ここで、加熱機構で脱水素反応部を加熱するにはエネルギーが必要である。このとき、加熱機構が化石燃料を燃焼させて加熱を行うことでCO2が発生する。水素供給システムでは、水素を製造するときのCO2を低減することが求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、水素を製造するときのCO2を低減できる水素供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る水素供給システムは、水素の供給を行う水素供給システムであって、水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、電力を用いて脱水素反応部を加熱する加熱機構と、加熱機構へ再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方を供給する電力供給部と、を備える。
【0007】
水素供給システムは、電力を用いて脱水素反応部を加熱する加熱機構を備える。この加熱機構へ電力を供給する電力供給部は、加熱機構へ再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方を供給することができる。これにより、加熱機構は、再生可能エネルギーに基づく電力等によって、脱水素反応部を加熱することができる。水素供給システムは、再生可能エネルギーを用いることにより、化石燃料を用いることなく、又は化石燃料を低減した状態で、水素を製造することができる。また、水素供給システムは、二酸化炭素回収・貯留付火力発電を用いることにより、電力を得るときのCO2を低減できる。以上により、水素を製造するときのCO2を低減できる。
【0008】
電力供給部は、再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方を蓄電する蓄電部を備えてよい。再生可能エネルギーに基づく電力は、化石燃料によるエネルギーとは異なり、使用者の意図に従った出力を得にくい場合がある。例えば、太陽光発電、風力発電、及び水力発電などは、天候や自然の状態に左右される。これに対し、電力供給部は、電力を蓄電する蓄電部を備える。従って、蓄電部は、再生可能エネルギーが多く得られ、且つ、加熱機構で用いる電力が少ないときに、蓄電しておくことができる。そして、蓄電部は、得られる再生可能エネルギーが少ないタイミングで、蓄電しておいた電力を供給することができる。また、二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力を用いる場合、電力供給部は、当該電力を得やすいタイミング(電力が安いタイミングなど)で蓄電部に蓄電しておき、当該電力を得にくいタイミングにて、蓄電しておいた電力を供給することができる。
【0009】
本発明に係る水素供給システムは、水素の供給を行う水素供給システムであって、水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、 熱媒体を用いて脱水素反応部を加熱する加熱機構と、を備え、脱水素反応部は、脱水素反応を行う脱水素触媒が配置されると共に、原料が流通する第1の流路と、第1の流路と並列に設けられると共に、熱媒体が流通する第2の流路と、を有し、加熱機構は、脱水素反応部の第2の流路へ熱媒体を供給する熱媒体供給部と、熱媒体を介して脱水素触媒を加熱する加熱部と、を有する。
【0010】
加熱機構は、加熱部を有するため、吸熱反応を行う脱水素触媒に対して熱を供給することができる。ここで、脱水素反応部は、脱水素触媒によって脱水素反応が行われる第1の流路と並列に設けられた第2の流路を有する。加熱機構の熱媒体供給部は、このような第2の流路に熱媒体を供給する。また、加熱機構の加熱部は、熱媒体を介して脱水素触媒を加熱する。加熱機構は、加熱部の熱を熱媒体によって第2の流路内を拡散させ、脱水素触媒を加熱することができる。従って、加熱機構は、脱水素反応部内の加熱の均一性を向上することができる。このように加熱の均一性を向上することで、熱の利用効率が向上するため、エネルギーを有効に利用することができる。その結果、水素を製造するときのCO2を低減できる。
【0011】
加熱部は、第2の流路の内部に設けられてよい。この場合、加熱部が、第1の流路と並列に設けられた第2の流路に設けられる。従って、加熱部の熱は、効率よく脱水素触媒へ伝達される。
【0012】
第2の流路は、当該第2の流路が延びる第1の方向において、当該第2の流路内に設けられた仕切部材によって、複数の区画に分割されてよい。このように第2の流路を複数の区画に分割することで、加熱機構は、区画に応じて加熱態様を調整することが可能となる。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。
【0013】
加熱機構は、前記第2の流路の内部において、複数の区画のそれぞれに対して配置される複数の加熱部を有してよい。複数の加熱部は、それぞれの区画に応じて加熱態様を調整することができる。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。
【0014】
加熱機構は、複数の区画のそれぞれの温度を検出する複数の温度検出部を備えてよい。複数の温度検出部は、それぞれの区画の温度を検出することができるため、加熱機構は、当該検出結果に基づいて、区画に応じて加熱態様を調整することができる。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。
【0015】
仕切部材は、第1の方向と交差する第2の方向における一方の端部側に、第1の方向への熱媒体の流通を許容する開口部を有してよい。この場合、仕切部材で区切られた一方の区画内では、熱媒体が開口部へ向かって第2の方向における一方の端部側へ流れ、当該開口部を介して他方の区画へ流れる。このように、一方の区画内では、第2の方向へ向かう熱媒体の流れが形成されるため、当該区画における熱媒体の滞在時間を長くすることができる。
【0016】
仕切部材は、異なる区画同士の間を塞ぎ、加熱機構は、複数の区画のそれぞれに対して熱媒体を供給する複数の熱媒体供給部を有してよい。複数の熱媒体供給部は、それぞれの区画に応じて熱媒体の供給態様を調整することができる。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。
【0017】
本発明に係る水素供給システムは、水素の供給を行う水素供給システムであって、水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、電力を用いて脱水素反応部を加熱する加熱機構と、加熱機構へ系統電力からの電力を供給する電力供給部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水素を製造するときのCO2を低減できる水素供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る水素供給システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】加熱機構に電力を供給する電力供給部の構成の一例を示す図である。
【
図3】脱水素反応部、及び加熱機構の構成を示す概略構成図である。
【
図4】変形例に係る水素供給システムの脱水素反応部、及び加熱機構の構成を示す概略構成図である。
【
図5】変形例に係る水素供給システムの脱水素反応部、及び加熱機構の構成を示す概略構成図である。
【
図6】加熱部を構成するヒータの配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る水素供給システムの好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る水素供給システムの構成を示すブロック図である。水素供給システム100は、有機化合物(常温で液体)を原料とするものである。なお、水素精製の過程では、原料である有機化合物(常温で液体)を脱水素した、脱水素生成物(有機化合物(常温で液体))が除去される。原料の有機化合物として、例えば、有機ハイドライドが挙げられる。有機ハイドライドは、製油所で大量に生産されている水素を芳香族炭化水素と反応させた水素化物が好適な例である。また、有機ハイドライドは、芳香族の水素化化合物に限らず、2-プロパノール(水素とアセトンが生成される)の系もある。有機ハイドライドは、ガソリンなどと同様に液体燃料としてタンクローリーなどによって水素供給システム100へ輸送することができる。本実施形態では有機ハイドライドとして、メチルシクロヘキサン(以下、MCHと称する)を用いる。その他、有機ハイドライドとしてシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン、ジメチルデカリン、エチルデカリンなど芳香物炭化水素の水素化物を適用することができる(なお、芳香族化合物は特に水素含有量の多い好適な例である)。水素供給システム100は、燃料電池自動車(FCV)や水素エンジン車に水素を供給することができる。なお、メタンを主成分とした天然ガスやプロパンを主成分としたLPG、あるいはガソリン、ナフサ、灯油、軽油といった液体炭化水素原料から水素を製造する場合にも適用可能である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る水素供給システム100は、液体移送ポンプ1、熱交換部2、脱水素反応部3、加熱機構20、気液分離部6、圧縮部7、及び水素精製部8を備えている。このうち、液体移送ポンプ1、熱交換部2、及び脱水素反応部3は、水素含有ガスを製造する水素製造部10に属する。また、気液分離部6、圧縮部7、及び水素精製部8は、水素の純度を高める水素純度調整部11に属する。また、水素供給システム100は、ラインL1~L12を備えている。なお、本実施形態では、原料としてMCHを採用し、水素精製の過程で除去される脱水素生成物がトルエンである場合を例として説明する。なお、実際には、トルエンのみならず、未反応のMCHと少量の副生成物及び不純物も存在するが、本実施形態中では、トルエンに混じって当該トルエンと同じ挙動を示す。従って、以下の説明において、「トルエン」と称して説明するものには、未反応のMCHや副生成物も含むものとする。
【0023】
ラインL1~L12は、MCH、トルエン、水素含有ガス、オフガス、高純度水素、または加熱媒体が通過する流路である。ラインL1は、液体移送ポンプ1が図示されないMCHタンクからMCHをくみ上げるためのラインであり、液体移送ポンプ1とMCHタンクを接続する。ラインL2は、液体移送ポンプ1と脱水素反応部3とを接続する。ラインL3は、脱水素反応部3と気液分離部6とを接続する。ラインL4は、気液分離部6と図示されないトルエンタンクとを接続する。ラインL5は、気液分離部6と圧縮部7とを接続する。ラインL6は、圧縮部7と水素精製部8とを接続する。ラインL7は、水素精製部8とオフガスの供給先とを接続する。ラインL8は、水素精製部8と図示されない精製ガスの供給装置とを接続する。ラインL11,L12は、加熱機構20のラインであって、熱媒体循環部4と脱水素反応部3とを接続する。ラインL11,L12は、熱媒体を流通させる。
【0024】
液体移送ポンプ1は、原料となるMCHを脱水素反応部3へ供給する。なお、外部からタンクローリーなどで輸送されたMCHは、MCHタンクにて貯留される。MCHタンクに貯留されているMCHは、液体移送ポンプ1によってラインL1,L2を介して脱水素反応部3へ供給される。
【0025】
熱交換部2は、ラインL2を流通するMCHとラインL3を流通する水素含有ガスとの間で熱交換を行う。脱水素反応部3から出てきた水素含有ガスの方がMCHよりも高温である。従って、熱交換部2では、水素含有ガスの熱によってMCHが加熱される。これにより、MCHは、温度が上昇した状態で脱水素反応部3へ供給される。なお、MCHは、ラインL7を介して水素精製部8から供給されたオフガスと合わせて、脱水素反応部3へ供給される。
【0026】
脱水素反応部3は、MCHを脱水素反応させることによって水素を得る機器である。すなわち、脱水素反応部3は、脱水素触媒を用いた脱水素反応によってMCHから水素を取り出す機器である。脱水素触媒は、特に制限されないが、例えば、白金触媒、パラジウム触媒及びニッケル触媒から選ばれる。これら触媒は、アルミナ、シリカ及びチタニア等の担体上に担持されていてもよい。有機ハイドライドの反応は可逆反応であり、反応条件(温度、圧力)によって反応の方向が変わる(化学平衡の制約を受ける)。一方、脱水素反応は、常に吸熱反応で分子数が増える反応である。従って、高温、低圧の条件が有利である。脱水素反応は吸熱反応であるため、脱水素反応部3は熱媒体循環部4からラインL11,L12を循環する熱媒体を介して熱を供給される。脱水素反応部3は、脱水素触媒中を流れるMCHと熱媒体循環部4からの熱媒体との間で熱交換可能な機構を有している。脱水素反応部3で取り出された水素含有ガスは、ラインL3を介して気液分離部6へ供給される。ラインL3の水素含有ガスは、液体であるトルエンを混合物として含んだ状態で、気液分離部6へ供給される。
【0027】
加熱機構20は、熱媒体循環部4によって熱媒体をラインL11を介して脱水素反応部3へ供給する。また、加熱機構20は、循環する熱媒体を加熱することで、脱水素反応部3を加熱する。加熱後の熱媒体は、ラインL12を介して熱媒体循環部4に戻される。熱媒体は特に限定されないが、オイルなどが採用されてよい。加熱機構20の詳細な構成については、後述する。
【0028】
気液分離部6は、水素含有ガスからトルエンを分離するタンクである。気液分離部6は、混合物としてトルエンを含む水素含有ガスを貯留することによって、気体である水素と液体であるトルエンとを気液分離する。また、気液分離部6に供給される水素含有ガスは、熱交換部2で冷却される。なお、気液分離部6は、冷熱源からの冷却媒体によって冷却されてよい。この場合、気液分離部6は、気液分離部6中の水素含有ガスと冷熱源からの冷却媒体との間で熱交換可能な機構を有している。気液分離部6で分離されたトルエンは、ラインL4を介して後述のトルエン地下タンク23(貯留部)へ供給される。トルエン地下タンク23については後述する。気液分離部6で分離された水素含有ガスは、圧縮部7の圧力によりラインL5,L6を介して水素精製部8へ供給される。なお、水素含有ガスを冷やすと当該ガスの一部(トルエン)は液化し、気液分離部6によって、液化しないガス(水素)と分離することができる。ガスを低温とした方が、分離の効率は良くなり、圧力を上げると更に、トルエンの液化が進む。
【0029】
水素精製部8は、脱水素反応部3で得られると共に気液分離部6で気液分離された水素含有ガスから、脱水素生成物(本実施形態ではトルエン)を除去する。これによって、水素精製部8は、当該水素含有ガスを精製して高純度水素(精製ガス)を得る。得られた精製ガスは、ラインL8へ供給される。なお、水素精製部8で生じたオフガスは、ラインL7を介して脱水素反応部3へ供給される。
【0030】
水素精製部8は、採用する水素精製方法によって異なるが、具体的には、水素精製方法として膜分離を用いる場合には、水素分離膜を備える水素分離装置であり、PSA(Pressure swing adsorption)法又はTSA(Temperature swing adsorption)法を用いる場合には、不純物を吸着する吸着材を格納する吸着塔を複数備えた吸着除去装置である。
【0031】
水素精製部8が膜分離を用いる場合について説明する。この方法では、所定温度に加熱された膜に、圧縮部(不図示)によって所定圧力に加圧された水素含有ガスを透過させることによって、脱水素生成物を除去し、高純度の水素ガス(精製ガス)を得ることができる。膜を透過した透過ガスの圧力は、膜を透過する前の圧力と比べて低下する。一方、膜を透過しなかった非透過ガスの圧力は、膜を透過する前の所定圧力と略同一である。このとき、膜を透過しなかった非透過ガスが、水素精製部8のオフガスに該当する。
【0032】
水素精製部8に適用される膜の種類は特に限定されず、多孔質膜(分子流によって分離するもの、表面拡散流によって分離するもの、毛管凝縮作用によって分離するもの、分子ふるい作用によって分離するものなど)や、非多孔質膜を適用することができる。水素精製部8に適用される膜として、例えば、金属膜(PbAg系、PdCu系、Nb系など)、ゼオライト膜、無機膜(シリカ膜、カーボン膜など)、高分子膜(ポリイミド膜など)を採用することができる。
【0033】
水素精製部8の除去方法として、PSA法を採用する場合について説明する。PSA法で用いられる吸着材は、高圧下では水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着し、低圧下では吸着したトルエンを脱着する性質を持つ。PSA法は、吸着材のこのような性質を利用するものである。すなわち、吸着塔内を高圧にすることにより、水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去し、高純度の水素ガス(精製ガス)を得る。吸着により吸着塔内の吸着材の吸着機能が低下した場合には、吸着塔内を低圧にすることにより、吸着材に吸着したトルエンを脱着し、併せて除去した精製ガスの一部を逆流させることにより当該脱着されたトルエンを吸着塔内から除去することで、吸着材の吸着機能を再生する(このとき、トルエンを吸着塔内から除去することで排出される少なくとも水素とトルエンを含む水素含有ガスが、水素精製部8からのオフガスに該当する)。
【0034】
水素精製部8の除去方法として、TSA法を採用する場合について説明する。TSA法で用いられる吸着材は、常温下では水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着し、高温下では吸着したトルエンを脱着する性質を持つ。TSA法は、吸着材のこのような性質を利用するものである。すなわち、吸着塔内を常温にすることにより、水素含有ガスに含まれるトルエンを吸着材に吸着させて除去し、高純度の水素ガス(高純度水素)を得る。吸着により吸着塔内の吸着材の吸着機能が低下した場合には、吸着塔内を高温にすることにより、吸着材に吸着したトルエンを脱着し、併せて除去した高純度水素の一部を逆流させることにより当該脱着されたトルエンを吸着塔内から除去することで、吸着材の吸着機能を再生する(このとき、トルエンを吸着塔内から除去することで排出される少なくとも水素とトルエンを含む水素含有ガスが、水素精製部8からのオフガスに該当する)。
【0035】
続いて、上述した水素供給システム100の特徴的な部分について説明する。
【0036】
図2は、加熱機構20に電力を供給する電力供給部30の構成の一例を示す図である。
図3は、加熱機構20の一例を示す概念図である。
図3に示すように、加熱機構20は、電気ヒータを有しているため、電力を用いて脱水素反応部3を加熱することができる。従って、
図2に示すように、水素供給システム100は、加熱機構20へ電力を供給する電力供給部30を備える。
【0037】
図2(a)に示す電力供給部30は、系統電力を効率よく用いることができるシステムである。電力供給部30は、電力源31Aと、蓄電池33(蓄電部)と、ラインL21と、ラインL22と、を備える。電力源31Aは、電力市場からの系統電力を供給する。電力源31Aは、CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)付火力発電による電力を供給することができる。CCS付火力発電は、排出された二酸化炭素を大気中に出さずに回収して地下などに貯留する技術を用いた火力発電である。従って、CCS付火力発電は、通常の火力発電に比してCO
2の発生を抑制することができる。ラインL21は、電力源31Aと蓄電池33とを接続するラインである。電力源31Aは、ラインL21を介して電力を蓄電池33に供給する。なお、ラインL21には、受電盤32及びPCS34が設けられている。従って、電力源31Aからの電力は、受電盤32で調整されて、PCS34で交流から直流に変換されて、蓄電池33へ供給される。ラインL22は、蓄電池33と加熱機構20とを接続するラインである。蓄電池33は、ラインL22を介して電力を加熱機構20に供給する。なお、ラインL22は、PCS34に接続される。従って、蓄電池33からの電力は、PCS34で直流から交流に変換されて、加熱機構20へ供給される。例えば、電力供給部30は、電力市場での電力単価の安い時には、電力源31Aからの電力を蓄電池33にて蓄電すると共に、加熱機構20で用いる。そして、電力単価が高いときには、電力供給部30は、蓄電池33から放電して電力を加熱機構20へ供給する。なお、系統電力による電力源31Aからも再生可能エネルギーを供給可能である。また、系統電力による電力源31Aは、CCS付火力発電や再生可能エネルギーに基づく電力に限定されず、様々な発電方法に基づく電力を供給可能であってよい。また、電力供給部30は、受電盤32から直接加熱機構20へ電力を供給してもよい。
【0038】
図2(b)に示す電力供給部30は、再生可能エネルギーに基づく電力を供給することができるシステムである。電力供給部30は、電力源31Bと、蓄電池33(蓄電部)と、ラインL21と、ラインL22と、を備える。電力源31Bは、再生可能エネルギーに基づく電力を供給する。再生可能エネルギーとは、自然界の力を利用して得られるエネルギーであり、再生可能エネルギーによる発電方式として、太陽光発電、水力発電、風力発電、波力発電、潮力発電、地熱発電などが挙げられる。再生可能エネルギーを用いた場合、加熱機構20は、化石燃料を燃焼させてエネルギーを得る場合と異なり、二酸化炭素を排出することなく、あるいは排出量を抑制した状態で、水素を製造することができる。電力源31Bは、ラインL21を介して電力を蓄電池33に供給する。なお、ラインL21には、電力源31Bから供給された直後の電力を調整するPCS34Aと、蓄電池33へ供給される直前の電力を調整するPCS34Bが設けられている。従って、電力源31Aからの電力は、PCS34Aで直流から交流に変換され、PCS34Bで交流から直流に変換されて、蓄電池33へ供給される。蓄電池33は、ラインL22を介して電力を加熱機構20に供給する。なお、ラインL22は、PCS34Bに接続される。従って、蓄電池33からの電力は、PCS34Bで直流から交流に変換されて、加熱機構20へ供給される。再生可能エネルギーに基づく電力は環境に依存して変動がある。例えば、太陽光発電は、天気に依存するため、加熱機構20による加熱が必要なタイミングで、必ずしも必要な電力が得られるとは限らない。従って、電力供給部30は、多く電力が得られるタイミングでは、電力源31Bからの電力を蓄電池33にて蓄電すると共に、加熱機構20で用いる。そして、電力源31Bからの電力が不足するときには、電力供給部30は、蓄電池33から放電して加熱機構20へ電力を供給する。なお、電力供給部30は、系統電力による電力源31Aと再生可能エネルギーによる電力源31Bを両方備えて、両者を使い分けてもよい。
【0039】
次に、
図3を参照して、加熱機構20の具体的な構成について詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る脱水素反応部3、及び加熱機構20の構成を示す概略構成図である。
図3に示すように、脱水素反応部3は、円筒状の脱水素反応容器40を有する。脱水素反応容器40は、ヘッダ部41、42と、MCH流路43(第1の流路)と、熱媒体流路46(第2の流路)と、を備える。MCH流路43は、脱水素反応を行う脱水素触媒44が配置されると共に、MCHが流通する流路である。MCH流路43は、複数の管状部材を互いに離間させた状態で並列に並べることによって構成される(例えば、
図6及び
図7参照)。ヘッダ部41は、複数の管状部材で構成されるMCH流路43の入口側の端部に設けられる。ヘッダ部41は、ラインL2に接続され、当該ラインL2から供給されたMCHを内部空間で分散させる。これにより、ヘッダ部41は、それぞれのMCH流路43へMCHを分配する。ヘッダ部41は、複数の管状部材で構成されるMCH流路43の出口側の端部に設けられる。ヘッダ部42は、それぞれのMCH流路43からの水素含有ガスを内部空間で集約し、ラインL3へ供給する。
【0040】
熱媒体流路46は、MCH流路43と並列に設けられると共に、熱媒体が流通する流路である。熱媒体流路46は、脱水素反応容器40の外周壁部の内部に形成される。脱水素反応容器40の外周壁部は、全てのMCH流路43を外周側から取り囲む。これにより、脱水素反応容器40の外周壁部よりも内側であって、MCH流路43の外側の空間が、熱媒体流路46として構成される(例えば、
図6及び
図7参照)。なお、
図3~
図7において、熱媒体が存在する箇所には、ドット模様が付されている。
【0041】
加熱機構20は、熱媒体供給部25と、加熱部21と、を備える。熱媒体供給部25は、上述の熱媒体循環部4と、ラインL11,L12と、を備えて構成される。熱媒体循環部4は熱媒体を圧送するポンプによって構成される。本実施形態では、供給側のラインL11は、熱媒体流路46のうち、ヘッダ部42側の端部に設けられている。回収側のラインL12は、熱媒体流路46のうち、ヘッダ部41側の端部に設けられている。従って、熱媒体は、MCH流路43内の流体の流れとは反対側へ向かって、すなわち対向流をなすように、熱媒体流路46を流れる。
【0042】
ラインL12には、熱媒体槽22が設けられる。そして、当該熱媒体槽22には、加熱部21が設けられる。加熱部21は、熱媒体を介して脱水素触媒44を加熱する。本実施形態では、加熱部21は、電力供給部30から供給された電力によって発熱するヒータによって構成される。当該構成により、熱媒体は、熱媒体槽22で加熱部21によって加熱され、ラインL11を介して熱媒体流路46へ供給される。
【0043】
ここで、熱媒体流路46は、当該熱媒体流路46が延びる上下方向(第1の方向)において、当該熱媒体流路46内に設けられた仕切部材50によって、複数の区画に分割される。なお、本実施形態では、上下方向は、脱水素反応容器40が延びる軸方向に相当し、MCH流路43が延びる方向にも対応する。また、本実施形態では、脱水素反応容器40の軸方向が上下方向と平行になるように配置されているが、軸方向が水平方向となるように配置されてもよい。脱水素反応容器40は、上下方向に互いに離間するように配置された複数の仕切部材50を有する。仕切部材50は、上下方向と交差(ここでは直交)する水平方向(第2の方向)に広がる部材である。本実施形態では、仕切部材50として、バッフル51,52が設けられる。バッフル51は、水平方向における一方の端部側に、上下方向への熱媒体の流通を許容する開口部51aを有する。バッフル52は、水平方向における開口部51aとは反対側に、開口部52aを有する。バッフル51とバッフル52とは、上下方向において互い違いに配置される。従って、熱媒体流路46を流れる熱媒体は、バッフル51の開口部51aとバッフル52の開口部52aを蛇行するように流れて行く。バッフル51とバッフル52とで挟まれる各区画内では、熱媒体は、バッフル51,52に沿って水平方向へ流れる。
【0044】
次に、本実施形態に係る水素供給システム100の作用・効果について説明する。
【0045】
水素供給システム100は、電力を用いて脱水素反応部3を加熱する加熱機構20を備える。この加熱機構20へ電力を供給する電力供給部30は、加熱機構20へ再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方を供給することができる(
図2(a)(b)参照)。これにより、加熱機構20は、再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方によって、脱水素反応部3を加熱することができる。水素供給システム100は、再生可能エネルギーを用いることにより、化石燃料を用いることなく、又は化石燃料を低減した状態で、水素を製造することができる。また、水素供給システム100は、CCS付火力発電を用いることにより、電力を得るときのCO
2を低減できる。以上により、水素を製造するときのCO
2を低減できる。また、加熱機構20が化石燃料を燃焼させて脱水素反応部3を加熱する場合、化石燃料を貯留するタンクが必要となる。これに対し、本実施形態に係る水素供給システム100では、化石燃料タンクを不要(あるいは小型化)とすることができる。
【0046】
電力供給部30は、再生可能エネルギーに基づく電力、及び二酸化炭素回収・貯留付火力発電に基づく電力の少なくとも一方を蓄電する蓄電池33を備えてよい。再生可能エネルギーに基づく電力は、化石燃料によるエネルギーとは異なり、使用者の意図に従った出力を得にくい場合がある。例えば、太陽光発電、風力発電、及び水力発電などは、天候や自然の状態に左右される。これに対し、電力供給部30は、電力を蓄電する蓄電池33を備える。従って、蓄電池33は、再生可能エネルギーが多く得られ、且つ、加熱機構20で用いる電力が少ないときに、蓄電しておくことができる。そして、蓄電池33は、得られる再生可能エネルギーが少ないタイミングで、蓄電しておいた電力を供給することができる。また、CCS付火力発電に基づく電力を用いる場合、電力供給部30は、当該電力を得やすいタイミング(電力が安いタイミングなど)で蓄電池33に蓄電しておき、当該電力を得にくいタイミングにて、蓄電しておいた電力を供給することができる。
【0047】
加熱機構20は、加熱部21を有するため、吸熱反応を行う脱水素触媒44に対して熱を供給することができる。ここで、脱水素反応部3は、脱水素触媒44によって脱水素反応が行われるMCH流路43と並列に設けられた熱媒体流路46を有する。加熱機構20の熱媒体供給部25は、このような熱媒体流路46に熱媒体を供給する。また、加熱機構20の加熱部21は、熱媒体を介して脱水素触媒を加熱する。加熱機構20は、加熱部21の熱を熱媒体によって熱媒体流路46内で拡散させ、脱水素触媒44を加熱することができる。従って、加熱機構20は、脱水素反応部3内の加熱の均一性を向上することができる。このように加熱の均一性を向上することで、熱の利用効率が向上するため、エネルギーを有効に利用することができる。その結果、水素を製造するときのCO2を低減できる。
【0048】
熱媒体流路46は、当該熱媒体流路46が延びる上下方向において、当該熱媒体流路46内に設けられた仕切部材50によって、複数の区画に分割されてよい。このように熱媒体流路46を複数の区画に分割することで、加熱機構20は、区画に応じて加熱態様を調整することが可能となる。本実施形態では、バッフル51,52によって、各区画における熱媒体の流れる向きや滞在時間を調整している。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。
【0049】
仕切部材50を構成するバッフル51は、水平方向における一方の端部側に、上下方向への熱媒体の流通を許容する開口部51aを有する。また、仕切部材50を構成するバッフル52は、水平方向における他方の端部側に、上下方向への熱媒体の流通を許容する開口部52aを有する。この場合、バッフル51で区切られた上流側の区画内では、熱媒体が開口部51aへ向かって水平方向における一方の端部側へ流れ、開口部51aを介して下流側の区画へ流れる。このように、バッフル51の上流側の区画内では、水平方向へ向かう熱媒体の流れが形成されるため、当該区画における熱媒体の滞在時間を長くすることができる。また、バッフル51の下流側の区画内では、開口部52aへ向かって熱媒体が流れるため、当該区画における熱媒体の滞在時間を長くすることができる。
【0050】
なお、脱水素反応は吸熱反応であるため、MCH流路43の入口側の部分、中間部分、及び出口側の部分において、互いに吸熱量が異なる。ここでは、入口側の部分の吸熱量が大きくなる。例えば、熱媒体を入口側から供給した場合、入口側の脱水素触媒44は十分に加熱できるが、熱媒体の熱量が減少して、出口側の脱水素触媒44の加熱が不十分になる可能性がある。これに対し、本実施形態では、加熱機構20は、出口側から熱媒体を供給し、MCH流路43の流体に対して対向流とすることで、上述の様な熱量の不足を回避し、転化率を向上することができる。なお、熱媒温度は例えば300~340℃とすることが好ましい。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0052】
例えば、
図4に示す加熱機構20及び脱水素反応部3を採用してもよい。
図4に示す変形例においては、加熱機構20が、熱媒体流路46の内部において、複数(ここでは三つ)の区画E1,E2,E3のそれぞれに対して配置される複数の加熱部21A,21B,21Cを有している。ここでは、熱媒体供給部25は、熱媒体流路46に対して、ヘッダ部41側から熱媒体を供給し、ヘッダ部42側から熱媒体を回収している。熱媒体流路46には、ヘッダ部41側から順に、一つ目のバッフル51、一つ目のバッフル52、二つ目のバッフル51、及び二つ目のバッフル52が設けられている。このうち、入口側の区画E1は、一つ目のバッフル51と一つ目のバッフル52との間に形成される。中間部分の区画E2は、一つ目のバッフル52と二つ目のバッフル51との間に形成される。出口側の区画E3は、二つ目のバッフル51と二つ目のバッフル52との間に形成される。
【0053】
ここで、熱媒体流路46内に設けられる加熱部21(21A,21B,21C)のヒータは、熱媒体流路46の水平方向の温度分布が均一になるように配置される。例えば、
図6に示すような配置が採用されてよい。例えば、
図6(a)に示すように、MCH流路43が所定の列をなすように配置されている場合、加熱部21のヒータをMCH流路43の列と列の間のそれぞれの隙間に配置してよい。また、
図6(b)に示すように、複数列に一本の割合で、加熱部21のヒータを配置してもよい。また、
図6(c)に示すように、加熱部21のヒータを一回折り返すようにして、MCH流路43の列の間を張り巡らしてもよい。また、
図6(d)に示すように、加熱部21のヒータを複数回折り返すように配置してもよい。
【0054】
また、加熱機構20は、複数の区画E1,E2,E3のそれぞれの温度を検出する複数の温度検出部を備えてよい。具体的には、
図7に示すように、区画E1,E2,E3のそれぞれに対して、熱媒体流路46内に温度検出部56が配置されている。温度検出部56として、例えば熱電対などが採用される。また、
図7(a)(b)(c)に示すように、温度検出部56は、熱媒体の偏流を確認できるように、水平方向において互いに間隔をあけるように配置される。
【0055】
以上のように、加熱部21は、熱媒体流路46の内部に設けられている。この場合、加熱部21が、MCH流路43と並列に設けられた熱媒体流路46に設けられる。従って、加熱部21の熱は、効率よく脱水素触媒44へ伝達される。
【0056】
また、加熱機構20は、熱媒体流路46の内部において、複数の区画E1,E2,E3のそれぞれに対して配置される複数の加熱部21A、21B,21Cを有する。複数の加熱部21A,21B,21Cは、それぞれの区画E1,E2,E3に応じて加熱態様を調整することができる。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。
【0057】
加熱機構20は、複数の区画E1,E2,E3のそれぞれの温度を検出する複数の温度検出部56を備える。複数の温度検出部56は、それぞれの区画E1,E2,E3の温度を検出することができるため、加熱機構20は、当該検出結果に基づいて、区画E1,E2,E3に応じて加熱態様を調整することができる。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。前述のように、入口側の区画E1の脱水素触媒44の吸熱量が大きいため、区画E1での熱の不足が生じた場合、加熱部21は、温度検出部56にて当該状況を把握し、出力を上げる。
【0058】
また、
図5に示す加熱機構20及び脱水素反応部3を採用してもよい。
図5に示す変形例においては、仕切部材50を構成するバッフル53は、異なる区画E1,E2,E3同士の間を塞いでいる。また、加熱機構20は、複数の区画E1,E2,E3のそれぞれに対して熱媒体を供給する複数の熱媒体供給部25A,25B,25Cを有している。なお、加熱機構20は、熱媒体流路46の内部において、複数の区画E1,E2,E3のそれぞれに対して配置される複数の加熱部21A,21B,21Cを有している。熱媒体流路46には、ヘッダ部41側から順に、一つ目のバッフル51、一つ目のバッフル53、二つ目のバッフル51、二つ目のバッフル53、及び三つ目のバッフル51が設けられている。このうち、入口側の区画E1は、ヘッダ部41と一つ目のバッフル53との間に形成される。中間部分の区画E2は、一つ目のバッフル53と二つ目のバッフル53との間に形成される。出口側の区画E3は、二つ目のバッフル53とヘッダ部42との間に形成される。なお、各区画E1,E2,E2において、熱媒体供給部25A,25B,25Cは、バッフル51の上側から熱媒体を供給し、バッフル51の下側から熱媒体を回収する。なお、各区画E1,E2,E3には、
図7に示すような温度検出部56が設けられている。
【0059】
以上のように、仕切部材50を構成するバッフル53は、異なる区画E1,E2,E3同士の間を塞ぎ、加熱機構20は、複数の区画E1,E2,E3のそれぞれに対して熱媒体を供給する複数の熱媒体供給部25A,25B,25Cを有する。複数の熱媒体供給部25A、25B,25Cは、それぞれの区画E1,E2,E3の温度検出部56の検出結果に応じて熱媒体の供給態様を調整することができる。これにより、熱の利用効率を向上してエネルギーを有効に利用することができる。
【0060】
なお、
図3~
図5に示すように、加熱機構20は、熱媒体を脱水素反応部3に供給することで、脱水素触媒44を加熱していた。これに代えて、あるいはこれに加えて、加熱機構20は、脱水素反応部3の上流側のラインL2にて、MCHを加熱してもよい。例えば、ラインL2には、加熱機構20からの熱媒体とMCHとの間で熱交換を行う熱交換部がもうけられてよい。
【0061】
水素供給システムは、水素の供給を行う水素供給システムであって、水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、電力を用いて脱水素反応部を加熱する加熱機構と、加熱機構へ系統電力からの電力を供給する電力供給部と、を備えてよい。
【0062】
その他、上記実施形態では、水素供給システムとしてFVCのための水素ステーションを例示したが、例えば家庭用電源や非常用電源などの分散電源のための水素供給システムであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
3…脱水素反応部、20…加熱機構、21,21A,21B,21C…加熱部、25,25A,25B,25C…熱媒体供給部、30…電力供給部、33…蓄電池(蓄電部)、43…MCH流路(第1の流路)、44…脱水素触媒、46…熱媒体流路(第2の流路)、50…仕切部材、51,52,53…バッフル(仕切部材)、56…温度検出部、100…水素供給システム。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の供給を行う水素供給システムであって、
水素化物を含む原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る脱水素反応部と、
熱媒体を用いて前記脱水素反応部を加熱する加熱機構と、を備え、
前記脱水素反応部は、
前記脱水素反応を行う脱水素触媒が配置されると共に、前記原料が流通する第1の流路と、
前記第1の流路と並列に設けられると共に、前記熱媒体が流通する第2の流路と、を有し、
前記加熱機構は、
前記脱水素反応部の前記第2の流路へ前記熱媒体を供給する熱媒体供給部と、
前記熱媒体を介して前記脱水素触媒を加熱する加熱部と、を有する、水素供給システム。
【請求項2】
前記第2の流路は、当該第2の流路が延びる第1の方向において、当該第2の流路内に設けられた仕切部材によって、複数の区画に分割される、請求項1記載の水素供給システム。
【請求項3】
前記加熱機構は、前記第2の流路の内部において、複数の前記区画のそれぞれに対して配置される複数の前記加熱部を有する、請求項2に記載の水素供給システム。
【請求項4】
前記加熱機構は、複数の前記区画のそれぞれの温度を検出する複数の温度検出部を備える、請求項3の水素供給システム。
【請求項5】
複数の前記加熱部として、前記第2の流路の前記第1の方向と交差する第2の方向の温度分布が均一になるように複数の加熱部ヒーターが配置されている、請求項3又は4に記載の水素供給システム。
【請求項6】
前記第2の流路には複数の仕切部材が設けられており、少なくとも 1 つの仕切部材は、前記第2の方向における一方の端部側に、前記第1の方向への前記熱媒体の流通を許容する開口部を有し、複数の区画の各区画内では、前記熱媒体は、前記仕切部材に沿って前記第2の方向へ流れ、前記開口部を蛇行するように流れて行く、請求項5に記載の水素供給システム。
【請求項7】
前記第2の流路には複数の第1の仕切部材および複数の第2の仕切部材が設けられており、前記第1の仕切部材は、前記第2の方向における一方の端部側に、前記第1の方向への前記熱媒体の流通を許容する第1の開口部を有し、前記第2の仕切部材は、前記第2の方向における前記第1の開口部とは反対側に、前記第1の方向への前記熱媒体の流通を許容する第2の開口部を有し、前記第1の仕切部材と前記第2の仕切部材とは、前記第1の方向において互い違いに配置される 請求項5に記載の水素供給システム。
【請求項8】
前記第2の流路には複数の第1の仕切部材および複数の第2の仕切部材が設けられており、前記第1の仕切部材は、前記第2の方向における一方の端部側に、前記第1の方向への前記熱媒体の流通を許容する第1の開口部を有し、前記第2の仕切部材は、前記複数の区画のうち異なる区画同士の間を塞ぎ、前記第1の仕切部材と前記第2の仕切部材とは、前記第1の方向において互い違いに配置される、請求項5に記載の水素供給システム。