(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161041
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】コポリエステル樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/02 20060101AFI20241108BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08G63/02
C08L101/16 ZBP
C08L101/16
C08G63/02 ZBP
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140759
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2023571188の分割
【原出願日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2022084696
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023004027
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 敦久
(72)【発明者】
【氏名】西澤 周平
(72)【発明者】
【氏名】土肥 知樹
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 翔
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 英知
(72)【発明者】
【氏名】原野 千翔
(72)【発明者】
【氏名】三原 崇
(57)【要約】
【課題】熱成形性及び生分解性に優れた、コポリエステル樹脂及びその製造方法の提供。
【解決手段】
生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位である非生分解性ブロック(Y)と、を組み合わせてなるコポリエステル樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位である非生分解性ブロック(Y)と、を組み合わせてなるコポリエステル樹脂であって、
前記生分解性ブロック(X)は、ヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸(I-a)と、グリコール(I-b)とが結合した構造体に由来し、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来の生分解性ブロック(X)であり、
前記非生分解性ブロック(Y)は、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)に由来し、
前記ポリマー(y)における前記非生分解性を有する構成単位が、ブチレンサクシネートに由来する、コポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記生分解性ブロック(X)と、前記非生分解性ブロック(Y)とのモル比(X/Y)が、1/99~95/5である、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記生分解性ブロック(X)と、前記非生分解性ブロック(Y)とのモル比(X/Y)が、20/80~95/5である、請求項2に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記生分解性ブロック(X)の平均連鎖長は、1.2よりも大きい、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記ポリマー(y)における非生分解性を有する構成単位が、
1,4ブタンジオールとコハク酸とが結合した構造体に由来する構成単位である、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記二塩基酸(I-a)は、式(1)で表され、前記グリコール(I-b)は、式(2)で表される、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【化1】
式(1)
(式(1)中、nは、4~8の整数を表す。)
【化2】
式(2)
(式(2)中、Aは、炭素原子又は酸素原子を表し、R
1は水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はヒドロキシル基を表し、R
2は水素原子又はヒドロキシル基を表す。l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上を表す。
ただし、Aが酸素原子である場合R
1及びAと結合しているHは存在しない。また、R
1及びR
2のいずれかはヒドロキシル基であり、R
1及びR
2が共にヒドロキシル基ではない。)
【請求項7】
前記ポリマー(x)における前記生分解性を有する構成単位が、下記式(3A)又は下記式(3B)で表される、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【化3】
式(3A)
【化4】
式(3B)
(式(3A)、及び式(3B)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上であり、nは、4~8の整数を表す。)
【請求項8】
前記二塩基酸(I-a)が、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項9】
前記グリコール(I-b)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,9-ノナンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項10】
前記ポリマー(x)における生分解性を示す前記構成単位が、
エチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールとジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、及びエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項11】
前記コポリエステル樹脂の融点(Tm)が65℃以上である、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項12】
コポリエステル樹脂は、海水環境、淡水環境、土壌環境、及びコンポストの環境において、生分解性を発現する、請求項1に記載のコポリエステル樹脂。
【請求項13】
生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを組み合わせてなる請求項1~12のいずれかに記載のコポリエステル樹脂を製造する方法であって、
前記生分解性ブロック(X)は、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来のブロックであり、
前記非生分解性ブロック(Y)は、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)由来のブロックであり、
前記ポリマー(x)と、前記ポリマー(y)とをエステル交換反応させ、前記生分解性ブロック(X)と前記非生分解性ブロック(Y)とを含むブロック共重合体を得る工程、
を含む、コポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載のコポリエステル樹脂を含有する、樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の樹脂組成物からなる、シート又はフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂の多くは自然環境中では簡単には分解しない。そのため、合成樹脂による自然環境の悪化が問題となっている。例えば、廃棄された合成樹脂はマイクロプラスチックとなって海洋環境を汚染する。
【0003】
合成樹脂の大量廃棄による地球環境悪化の社会課題に対し、あらゆる環境下(海水、淡水、土壌、コンポスト等)で生分解性を有する樹脂を材料とした、サステナブルな製品群(包装材料、フィルム等)の需要が高まっている。
【0004】
あらゆる環境下で生分解性を示す樹脂として、例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)が挙げられる。PHAは、自然環境に優しい樹脂として注目され、幅広く利用されると共に今後の応用領域の拡大が求められている。
【0005】
しかしながら、PHAは溶融温度と熱分解温度が近く、加工時に熱分解が進行するため、汎用樹脂に対する低い熱成形性が課題となっている。また、PHAをモノマーから化学重合によってポリマーを合成する場合、重合温度の上限値が低いため、高分子量体の合成が困難である。そのため、汎用樹脂と同様の比較的高い温度での重合が可能であり、また、熱成形加工可能な生分解性樹脂が求められている。
【0006】
上記課題を解決するために、生分解性を発現する環境が限定的なポリエステルに特定の化学構造を導入することで、他の環境においても生分解性を発現させる技術が報告されている。例えば、非特許文献1及び2には、海水性分解性と熱物性を有するコポリエステル樹脂が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Polymer Degradation and Stability, 181, (2020), 109353
【非特許文献2】Polymer Degradation and Stability, 184, (2021), 109467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1及び2に開示されたコポリエステル樹脂は、トリブロック型共重合体であるため、コポリエステル樹脂の海水生分解性は、非海水分解性部位であるポリ乳酸部位の分子量に依存する。このため、コポリエステル樹脂を設計する上で分子量の制約があった。また、熱成形性及び生分解性のより一層の向上が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、熱成形性及び生分解性に優れた、コポリエステル樹脂及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1] 生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位である非生分解性ブロック(Y)と、を組み合わせてなるコポリエステル樹脂。
[2] 前記生分解性ブロック(X)と、前記非生分解性ブロック(Y)とのモル比(X/Y)が、1/99~95/5である、[1]に記載のコポリエステル樹脂。
[3] 前記生分解性ブロック(X)は、ヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸(I-a)と、グリコール(I-b)とが結合した構造体に由来し、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来の生分解性ブロック(X)である、[1]又は[2]に記載のコポリエステル樹脂。
[4] 前記非生分解性ブロック(Y)は、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)由来の非生分解性ブロック(Y)である、[1]~[3]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[5] 前記生分解性ブロック(X)の平均連鎖長は、1.2よりも大きい、[1]~[4]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[6] 前記ヒドロキシアルカン酸は、6-ヒドロキシヘキサン酸に由来する構成単位、又はポリカプロラクトンに由来する構成単位である、[3]~[5]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[7] 前記二塩基酸(I-a)は、式(1)で表され、前記グリコール(I-b)は、式(2)で表される、[3]~[6]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
【化1】
式(1)
(式(1)中、nは、4~8の整数を表す。)
【化2】
式(2)
(式(2)中、Aは、炭素原子又は酸素原子を表し、R
1は水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はヒドロキシル基を表し、R
2は水素原子又はヒドロキシル基を表す。l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上を表す。
ただし、Aが酸素原子である場合R
1及びAと結合しているHは存在しない。また、R
1及びR
2のいずれかはヒドロキシル基であり、R
1及びR
2が共にヒドロキシル基ではない。)
[8] 前記ポリマー(x)における前記生分解性を有する構成単位が、下記式(3A)又は下記式(3B)で表される、[3]~[7]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
【化3】
式(3A)
【化4】
式(3B)
(式(3A)、及び式(3B)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上であり、nは、4~8の整数を表す。)
[9] 前記二塩基酸(I-a)が、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[3]~[8]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[10] 前記グリコール(I-b)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,9-ノナンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[3]~[9]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[11] 前記ポリマー(x)における生分解性を示す前記構成単位が、
エチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールとジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、及びエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
の群から選ばれる少なくとも1種である、[3]~[10]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[12] 前記ポリマー(y)における前記非生分解性を有する構成単位が、ブチレンサクシネート、またはブチレンアジペートテレフタレートに由来する、[4]~[11]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[13] 前記ポリマー(y)における非生分解性を有する構成単位が、
1,4ブタンジオールとコハク酸とが結合した構造体に由来する構成単位、及び1,4ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸とが結合した構造体に由来する構成単位のいずれかである、[4]~[12]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[14] 前記生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)は、単位(A)及び単位(B)を含み、単位(A)及び単位(B)は、下記(i)~下記(iii)のいずれかである、[1]~[13]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
(i)
前記単位(A)が、「2-メチル-1,3プロパンジオールとアジピン酸と2-メチル-1,3プロパンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、前記単位(B)が、「1,4ブタンジオールとアジピン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位であるか、
(ii)
前記単位(A)が、「2-メチル-1,3プロパンジオールとセバシン酸と2-メチル-1,3プロパンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、前記単位(B)が、「1,4ブタンジオールとセバシン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位であるか、又は
(iii)
前記単位(A)が、「3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、前記単位(B)が、「1,4ブタンジオールとアジピン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位である。
[15] 前記コポリエステル樹脂の融点(Tm)が65℃以上である、[1]~[14]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[16] コポリエステル樹脂は、海水環境、淡水環境、土壌環境、及びコンポストの環境において、生分解性を発現する、[1]~[15]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂。
[17] 生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを組み合わせてなる[1]~[16]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂を製造する方法であって、
前記生分解性ブロック(X)は、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来のブロックであり、
前記非生分解性ブロック(Y)は、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)由来のブロックであり、
前記ポリマー(x)と、前記ポリマー(y)とをエステル交換反応させ、前記生分解性ブロック(X)と前記非生分解性ブロック(Y)とを含むブロック共重合体を得る工程、
を含む、コポリエステル樹脂の製造方法。
[18] [1]~[16]のいずれかに記載のコポリエステル樹脂を含有する、樹脂組成物。
[19] [18]に記載の樹脂組成物からなる、シート又はフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱成形性及び生分解性に優れた、コポリエステル樹脂及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のコポリエステル樹脂について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0014】
(コポリエステル樹脂)
本発明のコポリエステル樹脂は、生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位である非生分解性ブロック(Y)と、を組み合わせてなる樹脂である。
【0015】
物質が「生分解性を有する」とは、例えば、自然環境下に排出された際、微生物等の働きにより、物質が二酸化炭素や水に分解されることをいう。分解される「環境」としては、例えば、海水環境、淡水環境、土壌環境、及びコンポスト等が挙げられる。
ただし、本発明では、特に海水環境下における生分解性に着目する。
本発明において「生分解性を示す」とは、海水分解率が15%以上を示すことをいう。
一方、本発明において「非生分解性を示す」とは、海水分解率が15%未満を示すことをいう。
尚、本発明では、「海水環境」に対する分解性を規定しているが、海水環境以外の環境を対象から除外しているものではない。海水環境において生分解性を示すだけでなく、海水環境以外の淡水環境、土壌環境、又はコンポスト等の各環境においても分解率が15%以上を示すことがより好ましい。
【0016】
本発明のコポリエステル樹脂は、優れた生分解性を有し、汎用樹脂と同程度の比較的高い温度で重合及び熱成形加工ができる。つまり、本発明のコポリエステル樹脂は、優れた熱成形性及び生分解性を有する。そして、当該コポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を用いてシートやフィルム等を得ることができる。
【0017】
熱成形性及び生分解性に優れる効果が顕著に得られる、推定される作用機構の一例を下記に示す。
本発明のコポリエステル樹脂には、生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位である非生分解性ブロック(Y)とが組み合わされて存在している。環境中の酵素によって、このブロック(X)部位の切断が進行する。これにより、コポリエステル樹脂が微生物による代謝が可能なオリゴマーになり、コポリエステル樹脂全体が生分解する。さらに、本発明のコポリエステル樹脂には、熱成形性に優れた非生分解性を示す構成単位を有するブロック(Y)が含まれている。これにより、コポリエステル樹脂全体が優れた熱成形性を有する。
本発明のコポリエステル樹脂は、上記特徴に加え、生分解性を示す構成単位が複数種類それぞれ所定の割合でバランスよく含まれていることにより、環境中の酵素により生分解性部位の切断が進行する箇所を多く確保することができ、コポリエステル樹脂全体の生分解性促進につながる。
より詳しく説明すると、例えば、本発明のコポリエステル樹脂には、ヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸(I-a)と、グリコール(I-b)とが結合した構造体に由来し、生分解性を示す構成単位を有するポリマー(x)由来のブロック(X)が含まれている。環境中の酵素によって、このブロック(X)部位の切断が進行する。これにより、コポリエステル樹脂が微生物による代謝が可能なオリゴマーになり、コポリエステル樹脂全体が生分解する。さらに、本発明のコポリエステル樹脂には、熱成形性に優れた非生分解性を示す構成単位を有するポリマー(y)由来のブロック(Y)が含まれている。これにより、コポリエステル樹脂全体が優れた熱成形性を有する。
生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを特定の混合割合で含有させコポリエステル樹脂を形成しているため、特定の割合で存在する生分解性ブロック(X)部位の切断が進行することで、コポリエステル樹脂が微生物による代謝が可能なオリゴマーになり、コポリエステル樹脂全体が生分解する。さらに、本発明のコポリエステル樹脂は、非生分解性ブロック(Y)が特定の割合で存在しているため、コポリエステル樹脂全体が優れた熱成形性を有する。
またさらに、ポリマー(x)由来の生分解性ブロック(X)を特定の平均連鎖長でコポリエステル樹脂中に配列すると、環境中の酵素によって、この特定の平均連鎖長を有する生分解性ブロック(X)部位の切断が進行することで、コポリエステル樹脂が微生物による代謝が可能なオリゴマーになり、コポリエステル樹脂全体が生分解する。さらに、本発明のコポリエステル樹脂は、熱成形性に優れた非生分解性を有する構成単位を含有する、ポリマー(y)由来の非生分解性ブロック(Y)が特定のモル比で配列されているため、コポリエステル樹脂全体が優れた熱成形性を有する。
【0018】
以下、コポリエステル樹脂の構成成分について説明する。
コポリエステル樹脂は、生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを含み、より好ましくは、これら生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを適宜組み合わせて含む。
また、コポリエステル樹脂は、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来の生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)由来の非生分解性ブロック(Y)とを含む。
ポリマー(x)は、ヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸(I-a)と、グリコール(I-b)とが結合した構造体に由来し、生分解性を有する構成単位を含有するポリマーであることが好ましい。
一方、ポリマー(y)は、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマーであり、例えば、二塩基酸とグリコールとが結合した構造体に由来し、非生分解性を示す構成単位を有するポリマーであることが好ましい。
【0019】
<生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)>
ポリマー(x)は、少なくとも一つの生分解性を有する構成単位を含有する。ポリマー(x)に含まれる生分解性を有する構成単位は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリマー(x)に含有される構造単位は、ヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸(I-a)と、グリコール(I-b)とが結合した構造体に由来することが好ましい。
【0020】
ポリマー(x)の形成に用いられるヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸(I-a)や、グリコール(I-b)としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
ヒドロキシアルカン酸や二塩基酸の種類及びグリコールの種類の組み合わせ方により、結合して得られる構造体が示す海水分解率の値は異なるため、生分解性を示すポリマー(x)を形成するには、下記例示したヒドロキシアルカン酸及び二塩基酸や、グリコールの中から、結合した際の構造体が海水分解率15%以上を示すよう、適宜好ましい種類を選択するとよい。
【0021】
<<ヒドロキシアルカン酸>>
ヒドロキシアルカン酸としては、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシブタン酸(2-ヒドロキシ酪酸)、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸(2-ヒドロキシ吉草酸)、3-ヒドロキシペンタン酸、5-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチル-ペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、9-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、10-ヒドロキシデカン酸などのC1-6アルキル基を有していてもよいヒドロキシC2-15アルカン酸、12-ヒドキシステアリン酸、リシノール酸などの単位が挙げられる。
【0022】
なお、ヒドロキシアルカン酸の単位は、対応するラクトンの単位であってもよい。ラクトンの単位としては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ジメチルプロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-ジメチルブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン以外のジC1-12アルキル基を有していてもよいC3-15ラクトンなどの単位が挙げられる。
【0023】
これらのヒドロキシアルカン酸の単位及びラクトンの単位は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのヒドロキシアルカン酸の単位のうち、生分解性の点から、3-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸(4-ヒドロキシ酪酸)、3-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシノナン酸、3-ヒドロキシデカン酸、10-ヒドロキシデカン酸などのヒドロキシC3-10アルカン酸の単位(3-ヒドロキシ酪酸以外のヒドロキシC3-10アルカン酸の単位)又は対応するラクトンの単位が好ましい。
【0024】
ヒドロキシアルカン酸は、6-ヒドロキシヘキサン酸に由来する構成単位、又はポリカプロラクトンに由来する構成単位であることが好ましい。
ここで、ポリ(カプロラクトン)は、下記式(t)で示されるポリエステルである。
【0025】
【0026】
ポリ(カプロラクトン)は、ε-カプロラクトンの開環反応物である。ポリ(カプロラクトン)の構成単位は、6-ヒドロキシヘキサン酸(6HH)由来の構成単位(6HH-U)である。
ポリ(カプロラクトン)の構成単位とは、コポリエステル中における6-ヒドロキシヘキサン酸(6HH)の1残基を意味し、具体的には6-ヒドロキシヘキサン酸(6HH)のヒドロキシ基中の水素原子とカルボキシル基中のヒドロキシ残基を除いた構造を意味する。
【0027】
<<二塩基酸>>
二塩基酸は、特に限定されないが、例えば、非芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸ジカルボン酸、その無水物、そのハロゲン化物、そのエステル化物等が挙げられる。
【0028】
<<<非芳香族ジカルボン酸>>>
非芳香族ジカルボン酸は、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、不飽和結合含有非芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。非芳香族ジカルボン酸の炭素数は、特に限定されないが、例えば、炭素数3~15である。
【0029】
脂肪族ジカルボン酸は、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼラバイジン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、例えば、炭素数8~15の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、例えば、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
不飽和結合含有非芳香族ジカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0030】
<<<芳香族ジカルボン酸>>>
芳香族ジカルボン酸は、例えば、炭素数6~20の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、より具体的には、例えばオルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸名等が挙げられる。
【0031】
これらの二塩基酸のなかでも、生分解性の観点から、非芳香族ジカルボン酸が好ましく、脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、下記式(1)で表されるアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が更に好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸が更により好ましく、アジピン酸、及びセバシン酸が特に好ましい。二塩基酸は、2種以上が併用されていてもよい。
【0032】
【化6】
式(1)
(式(1)中、nは、4~8の整数を表す。)
【0033】
<<グリコール>>
グリコールは、非芳香族グリコール、芳香族グリコールが挙げられる。
【0034】
<<<非芳香族グリコール>>>
非芳香族グリコールは、脂肪族グリコール、脂環族グリコールが挙げられる。非芳香族グリコールの炭素数としては、例えば、炭素数1~15が挙げられる。
【0035】
脂肪族グリコールは、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0036】
脂環族グリコールは、例えば、炭素数6~15の脂環族ジオールが挙げられる。脂環族ジオールは、例えば、1,3-ビス(2-ヒドロキシプロピル)シクロペンタン、1,3-ビス(2-ヒドロキシブチル)シクロペンタン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2-ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2-ヒドロキシブチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0037】
芳香族グリコールは、例えば、炭素数6~20の芳香族グリコールが挙げられる。
炭素数6~20の芳香族グリコールは、例えば、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0038】
これらのグリコールのなかでも、生分解性の観点から、非芳香族グリコールが好ましく、脂肪族グリコールがより好ましく、下記式(2)で表されるグリコールが特に好ましい。グリコールは、2種以上が併用されていてもよい。
【0039】
【化7】
式(2)
(式(2)中、Aは、炭素原子又は酸素原子を表し、R
1は水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はヒドロキシル基を表し、R
2は水素原子又はヒドロキシル基を表す。l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上を表す。
ただし、Aが酸素原子である場合R
1及びAと結合しているHは存在しない。また、R
1及びR
2のいずれかはヒドロキシル基であり、R
1及びR
2が共にヒドロキシル基ではない。)
【0040】
上記炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。これらの中でも、反応性に優れる観点から、メチル基が好ましい。
【0041】
式(2)に表されるグリコールの中でも、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エタノール、3-(3-ヒドロキシプロポキシ)プロパン-1-オールが好ましく、生分解性に優れる観点から、2-メチルー1,3プロパンジオール、及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールがより好ましい。
【0042】
生分解性を有する構成単位は構造体に由来し、構造体は上記二塩基酸と上記グリコールとを任意に選び、これらを公知の方法によりエステル化反応させることにより得られる。
特に限定されないが、生分解性を有する構成単位の好適な一例としては、例えば、下記式(3A)又は下記式(3B)で表される構成単位が挙げられる。
【0043】
【0044】
【化9】
式(3B)
(式(3A)、及び式(3B)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上であり、nは、4~8の整数を表す。)
【0045】
式(3A)において、R3はメチル基、l及びmはそれぞれ独立して1又は2の整数、nは4~8の整数であるのが好ましい。
【0046】
生分解性を示すポリマー(x)を形成するには、上記例示した二塩基酸の中でも以下に記載の二塩基酸(I-a)を用いることが好ましい。
生分解性を示すポリマー(x)を形成する二塩基酸(I-a)が、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
また、生分解性を示すポリマー(x)を形成するには、上記例示したグリコールの中でも以下に記載のグリコール(I-b)を用いることが好ましい。
生分解性を示すポリマー(x)を形成するグリコール(I-b)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,9-ノナンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
ポリマー(x)における生分解性を示す前記構成単位としては、
エチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールとジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、及びエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0049】
中でも、ポリマー(x)における生分解性を示す前記構成単位として、
2-メチル-1,3プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3プロパンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位のいずれかであることがより好ましい。
【0050】
具体的な構造式で記載すると、例えば、下記式(3-1)~(3-3)等で表される構成単位等が挙げられる。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
<非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)>
ポリマー(y)は、非生分解性を有する構成単位を含有する。ポリマー(y)に含まれる非生分解性を有する構成単位は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非生分解性を有する構成単位は、非生分解性を有し、生分解性を有する構成単位と共重合体を形成できるものであれば、特に限定されない。
【0055】
ポリマー(y)の形成に用いられる二塩基酸やグリコールとしては、上記<生分解性を示す構成単位を有するポリマー(x)>の欄で記載した二塩基酸やグリコールの例示のとおりである。
二塩基酸の種類及びグリコールの種類の組み合わせ方により、結合して得られる構造体が示す海水分解率の値は異なるため、非生分解性を示すポリマー(y)を形成するには、上記例示した二塩基酸やグリコールの中から、結合した際の構造体が海水分解率15%未満を示すよう、適宜好ましい種類を選択するとよい。
非生分解性を有する構成単位は、特に限定されないが、上記<生分解性を示す構成単位を有するポリマー(x)>の欄で記載した上記式(1)で表される二塩基酸以外の二塩基酸と、グリコールとが結合した構造体に由来する構成単位を含有するものであるのが好ましい。
【0056】
非生分解性を有する構成単位は、特に限定されないが、例えば、ブチレンサクシネート、ブチレンアジペートテレフタレートなどに由来する構成単位が挙げられる。これらのなかでも、ポリマー(y)における非生分解性を有する構成単位が、下記式(4-1)で表されるブチレンサクシネート由来の構成単位(1,4ブタンジオールとコハク酸とが結合した構造体に由来する構成単位に対応)、及び下記式(4-2)で表されるブチレンアジペートテレフタレート由来の構成単位(1,4ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸とが結合した構造体に由来する構成単位)のいずれかであることが好ましい。
【0057】
【0058】
【0059】
<その他の構成単位を含有する任意のポリマー>
本発明のコポリエステル樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて上記以外の他の構成単位を有する任意のポリマーを含んでいてもよい。
【0060】
本発明のコポリエステル樹脂は、生分解性ブロック(X)と、非生分解性ブロック(Y)とを含むブロック共重合体であり、上記生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)と上記非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)とを、共重合させることによって得られる。
特に制限されないが、本発明のコポリエステル樹脂の好適な一例としては、例えば下記式(5)~式(8)等が挙げられる。
【0061】
【化15】
式(5)
(式(5)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0062】
【化16】
式(6)
(式(6)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0063】
【化17】
式(7)
(式(7)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0064】
【化18】
式(8)
(式(8)中、o、p、q及びrは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0065】
コポリエステル樹脂を構成する生分解性ブロック(X)の含有割合は、コポリエステル樹脂(100質量%)に対して、十分な生分解性を得る観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、同含有割合は、十分な熱成形性を得る観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。同含有割合は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上45質量%以下がより好ましい。
【0066】
コポリエステル樹脂を構成する非生分解性ブロック(Y)の含有割合は、コポリエステル樹脂(100質量%)に対して、十分な熱成形性を得る観点から、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。一方、同含有割合は、十分な生分解性を得る観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。同含有割合は、50質量%以上95質量%以下が好ましく、55質量%以上90質量%以下がより好ましい。
【0067】
生分解性ブロック(X)と、非生分解性ブロック(Y)とのモル比(X/Y)は、十分な生分解性を得る観点から、1/99以上であり、5/95以上が好ましく、5/95超えがより好ましく、10/90以上がさらに好ましく、15/85以上が特に好ましい。一方、同モル比(X/Y)は、十分な熱成形性を得る観点から、95/5以下であり、80/20以下が好ましく、70/30以下がより好ましく、50/50以下が特に好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。同モル比(X/Y)は、1/99以上95/5以下であり、5/95以上95/5以下が好ましく、5/95超え95/5以下がより好ましく、10/90以上80/20以下がさらに好ましく、15/85以上70/30以下がさらにより好ましく、15/85以上50/50以下が特に好ましい。
【0068】
生分解性ブロック(X)の平均連鎖長は、十分な生分解性を得る観点から、1.2よりも大きく、4.0以上が好ましく、4.2以上がより好ましく、5.0以上がさらにより好ましく、5.5以上が特に好ましい。一方、同平均連鎖長は、十分な熱成形性を得る観点から、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。同平均連鎖長は、1.2よりも大きく30以下であり、4.0以上30以下が好ましく、4.2以上20以下がより好ましく、5.0以上20以下が更に好ましく、5.5以上15以下が特に好ましい。
【0069】
ポリマーブロック(Y)の平均連鎖長は、十分な熱成形性を得る観点から、4.0以上が好ましく、4.2以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましい。一方、同平均連鎖長は、十分な生分解性を得る観点から、40.0以下が好ましく、35以下がより好ましく、30.0以下が更に好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。同平均連鎖長は、4.0以上40.0以下が好ましく、4.2以上35以下がより好ましく、5.0以上30.0以下が更に好ましい。
【0070】
コポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、加工性及び取扱い性の観点から、5,000以上が好ましく、7,000以上がより好ましく、8,000以上が更に好ましく、10,000以上が特に好ましい。一方、同数平均分子量(Mn)は、十分な生分解性を得る観点から、150,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、70,000以下が更に好ましく、50,000以下が特に好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。同数平均分子量(Mn)は、5,000以上150,000以下が好ましく、5,000以上100,000以下が好ましく、7,000以上100,000以下がより好ましく、7,000以上70,000以下がより好ましく、10,000以上70,000以下が更に好ましく、8,000以上50,000以下が更に好ましい。
【0071】
コポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、加工性及び取扱い性の観点から、7,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上が更に好ましく、20,000以上が特に好ましい。一方、同重量平均分子量(Mw)は、十分な生分解性を得る観点から、200,000以下が好ましく、150,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。同重量平均分子量(Mw)は、7,000以上200,000以下が好ましく、10,000以上200,000以下が好ましく、10,000以上150,000以下がより好ましく、15,000以上150,000以下がより好ましく、15,000以上100,000以下が更に好ましく、20,000以上100,000以下が更に好ましい。
【0072】
コポリエステル樹脂において、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値を数平均分子量(Mn)の値で除して得られる分子量分布(Mw/Mn)は、分散度が低く、所望の特性を示す樹脂を得る観点から、4.5以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.7以下であることが更に好ましく、3.5以下であることが特に好ましい。
【0073】
コポリエステル樹脂のランダム性は、生分解性の観点から、0.07以上が好ましく、0.09以上がより好ましい。一方、コポリエステル樹脂のランダム性は、熱成形性の観点から、1.0以下が好ましく、0.9以下がより好ましい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。コポリエステル樹脂のランダム性は、0.07以上1.0以下が好ましく、0.09以上0.9以下がより好ましい。
【0074】
コポリエステル樹脂の融点(Tm)は、40℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上がより好ましく、95℃以上が更に好ましく、100℃以上が更により好ましく、102℃以上が特に好ましい。一方、コポリエステル樹脂の熱分解温度の上限値は特に限定されないが、通常250℃以下である。融点が上記範囲内であると、成形時の熱加工性に優れる。
【0075】
コポリエステル樹脂の海水環境下における生分解率は、コポリエステル樹脂が本発明でいう「生分解性」を示すことが必要であるため15%以上であるが、海水分解率が24%以上であるとより好ましく、40%以上であると更に好ましく、50%以上であると特に好ましい。
植種源:茜湾の沿岸(千葉県県習志野市茜浜付近)で採取した海水を採取植種源とする。
生分解度測定方法:試験瓶にソーダライム(二酸化炭素吸収剤)および圧力センサー(WTW社製、OxiTop-IDS(登録商標))を取付け、下記の条件下でBOD(生物学的酸素要求量)を測定し、生分解度を算出する。
培養温度:27℃、暗所
培養期間:28日間
生分解度の算出:
試料の生分解度は下記式に基づき算出する。
生分解度(%)=(BOD0-BODB)/ThOD×100
BOD0:試料の生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
BODB:空試験の平均生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
ThOD:試料が完全に酸化された場合に必要とされる理論的酸素要求量(計算値:mg)
【0076】
コポリエステル樹脂の淡水環境下における生分解度は、15%以上が好ましく、24%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。
本明細書において、コポリエステル樹脂の淡水環境下における生分解度は、植種源を猪名川(兵庫県池田市桃園付近)で採取した河川水とする以外は、上述した海水分解性と同様の方法により生分解度を算出した値である。
【0077】
コポリエステル樹脂の土壌環境下における生分解度は、15%以上が好ましく、24%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。
本明細書において、コポリエステル樹脂の土壌環境下における生分解度は、植種源を大篠塚市民農園(千葉県佐倉市大篠塚付近)で採取した土壌とする以外は、上述した海水分解性と同様の方法により生分解度を算出した値である。
【0078】
コポリエステル樹脂のコンポスト条件下におけるコンポスト分解率は、15%以上が好ましく、24%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。
本明細書において、コポリエステル樹脂のコンポスト条件下におけるコンポスト分解率は、JIS K6953-1:2011に準拠した方法により求めた値である。
培養温度:58℃
培養期間:28日間
【0079】
<単位(A)及び単位(B)のトライアッド単位を有するコポリエステル樹脂>
本発明のコポリエステル樹脂は、生分解性を示す2種類のトライアッド単位(単位(A)と単位(B))を含有することが好ましい。
本発明のコポリエステル樹脂に含まれている生分解性を示す2種類のトライアッド単位のうち、一方の単位(単位(A))は、第1のグリコールと二塩基酸とが結合した「第1のグリコール/二塩基酸/第1のグリコール」で表される構造体に由来した単位である。また、他方の単位(単位(B))は、第1のグリコールとは異なる種類の第2のグリコールと二塩基酸とが結合した「第2のグリコール/二塩基酸/第2のグリコール」で表される構造体に由来した単位である。
【0080】
本発明のコポリエステル樹脂に含まれている生分解性を示す2種類のトライアッド単位(単位(A)と単位(B))の好ましい組み合わせとしては、例えば、以下の(i)~(iii)のいずれかが挙げられる。
(i)
単位(A)が、「2-メチル-1,3プロパンジオールとアジピン酸と2-メチル-1,3プロパンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、単位(B)が、「1,4ブタンジオールとアジピン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位であるか、
(ii)
単位(A)が、「2-メチル-1,3プロパンジオールとセバシン酸と2-メチル-1,3プロパンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、単位(B)が、「1,4ブタンジオールとセバシン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位であるか、又は
(iii)
単位(A)が、「3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、単位(B)が、「1,4ブタンジオールとアジピン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位であるか、のいずれかであることが好ましい。
【0081】
(コポリエステル樹脂の製造方法)
本発明のコポリエステル樹脂は、一般的なコポリエステル樹脂の製造方法を用いて行うことができるが、所望の平均連鎖長を有するコポリエステル樹脂が得られ易い等の観点から、ポリエステル交換反応を用いるのが好ましい。
【0082】
本発明のコポリエステル樹脂の製造方法は、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来の生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)由来の非生分解性ブロック(Y)とを組み合わせてなるコポリエステル樹脂を製造する方法において、ポリマー(x)と、ポリマー(y)とをエステル交換反応させ、生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを含むブロック共重合体を得る工程、を含むのが好ましい。
【0083】
本発明のコポリエステル樹脂の製造方法の好ましい実施態様としては、例えば、ヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸とグリコールとを重縮合させて、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)を合成する工程と、
非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)を合成する工程と、
ポリマー(x)と、ポリマー(y)とをエステル交換反応させ、生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを含むブロック共重合体を得る工程と、を含む製造方法が挙げられる。
【0084】
<ポリマー(x)及びポリマー(y)を合成する工程>
ポリマー(x)及びポリマー(y)の合成方法は、特に限定されず、一般的なポリエステル樹脂の合成方法を用いて行うことができる。例えば、以下、ポリマー(y)が上記式(1)で表される二塩基酸以外の二塩基酸と、グリコールとが結合した構造体に由来する構成単位を含むポリエステル樹脂である場合について説明する。
【0085】
ポリマー(x)又はポリマー(y)の合成における原料である二塩基酸及びグリコールは、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)又は非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)の項目で説明したものを用いることができる。
ポリマー(x)又はポリマー(y)の合成における原料は、二塩基酸及びグリコール以外の他の原料を任意に含有していてもよい。他の原料としては、特に限定されないが、例えば、3価以上の多価アルコール、3価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0086】
二塩基酸と、グリコールとの配合比率としては、特に制限されないが、質量比(二塩基酸:グリコール)で、90:10~50:50が好ましく、80:20~50:50がより好ましい。
【0087】
反応は、無触媒で行われてもよいし、触媒存在下で行われてもよい。反応に用いられる触媒としては、例えば、酸触媒が挙げられる。酸触媒としては、例えば、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニルアセチルアセトナート等のチタン系触媒、テトラ-ブチル-ジルコネート等のジルコニア系触媒などが挙げられる。エステル交換反応及びエステル化反応の活性を高くできる点で、チタン系触媒を用いることが好ましい。チタン系触媒としては、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn-プロポキシド、チタニウムテトラn-ブトキシド、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン等が挙げられるが、取り扱い上の安定性と触媒としての活性との点からは、チタニウムテトライソプロポキシドが好ましい。
触媒の使用量は、二塩基酸及びグリコールの合計質量に対して通常0.001~5.0質量%の範囲である。
【0088】
ポリマー(x)又はポリマー(y)を合成する反応は、副生成物として、水、低級アルコール等が生じる。それらは、反応工程中に反応系から除去されることにより、縮合反応が進行しやすくなる。
【0089】
反応温度は、特に制限されないが、通常50~300℃である。反応雰囲気は、大気であってもよく、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気でもよい。反応時間は、通常1~48時間であるが、反応は、原料である二塩基酸又はグリコールが反応系内に残存しなくなるまで行うことが好ましい。反応の進行は、例えば、二塩基酸の減少を酸価測定によって追跡することで行うことができる。
【0090】
<エステル交換反応によるコポリエステル樹脂の製造工程>
エステル交換反応による重合体の合成方法は、特に限定されず、一般的なエステル交換反応による重合体の合成方法を用いて行うことができる。
【0091】
エステル交換反応に用いられる触媒としては、チタン系触媒を用いることが好ましい。チタン系触媒としては、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn-プロポキシド、チタニウムテトラn-ブトキシド、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン等が挙げられるが、取り扱い上の安定性と触媒としての活性との点からは、チタニウムテトライソプロポキシドが好ましい。
触媒の使用量は、ポリマー(x)及びポリマー(y)の合計質量に対して通常0.001~5.0質量%の範囲である。
【0092】
反応温度は、特に制限されないが、通常50~300℃である。反応雰囲気は、大気であってもよく、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気でもよい。
反応時間は、通常1~48時間である。
【0093】
(ポリウレタン)
上記のようにして得られるコポリエステル樹脂の一実施形態として、ポリウレタンが挙げられる。
ポリウレタンは、本発明のコポリエステルとポリイソシアネートを反応させて得られる。必要に応じて、コポリエステル以外のポリオールや鎖伸長剤、鎖停止剤、化架橋剤を併用してもよい。
具体的には、ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートを反応することにより得られ、ポリオールとして、少なくとも本発明のコポリエステルが用いられる。従って、ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートの反応により得られる反応生成物であり、ポリウレタンは、ポリオール由来の構造単位及びポリイソシアネート由来の構造単位を有し、少なくとも本発明のコポリエステル由来の構造単位を有する。
【0094】
本発明のコポリエステルは、ポリエステルポリオールであることが好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオールが挙げられる。縮合系ポリエステルポリオールは、例えば、低分子多価アルコール(エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3-又は1,4-)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール、ソルビトール等の糖類等)と、多価塩基性カルボン酸(グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、オリゴマー酸等)との反応生成物である。
【0095】
鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水;エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン等のアミン化合物を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪族ポリオール化合物が好ましく、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
【0096】
ポリオール100質量%中の本発明のコポリエステルの含有量は、好ましくは10~100質量%、より好ましくは50~100質量%である。
【0097】
ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートがより好ましい。
【0098】
得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することもできる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノヒドロキシ化合物、並びにアミノ基を有するモルホリン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0099】
得られるポリウレタンの耐熱性や強度を上げる目的で、必要に応じて3個以上の活性水素基やイソシアネート基を持つ架橋剤を使用することができる。
【0100】
ポリウレタンは、公知のポリウレタンの製造方法により得ることができる。具体的には、例えば、ポリオールとポリイソシアネートと前記鎖伸長剤とを仕込み、反応させることによって製造する方法が挙げられる。これらの反応は、例えば、50~100℃の温度で、3~10時間行うことが好ましい。また、反応は、有機溶剤中で行ってもよい。
【0101】
有機溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル溶剤;などを用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0102】
ポリウレタン100質量%中の本発明のコポリエステル由来の構造単位の含有量は、好ましくは10~98質量%、より好ましくは20~98質量%である。
これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、ポリウレタン中の各構造単位の含有量は、NMRにより測定される。
【0103】
ポリウレタンの数平均分子量(Mn)は、下限は5,000以上でもよく、6,000以上でもよく、7,000以上でもよく、8,000以上でもよく、10,000以上でもよく、上限は1,000,000以下でもよく、500,000以下でもよく、100,000以下でもよく、500,000以下でもよく、15,000以下でもよい。これらの上限と下限はいずれの組み合わせでも用いられる。
ポリウレタンの数平均分子量(Mn)は、5,000~1,000,000でもよく、6,000~500,000でもよく、7,000~100,000でもよく、8,000~500,000でもよく、10,000~15,000でもよい。
上記範囲であれば、効果がより好適に得られる傾向がある。なお、本明細書において、ポリウレタンの数平均分子量(Mn)はGPCにより測定される値である。
【0104】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物として、前述の本実施形態のコポリエステル、ポリウレタンを含む熱可塑性樹脂組成物、または、熱硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0105】
<熱可塑性樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物が、熱可塑性樹脂組成物である場合、例えば、必要に応じて、更に、他の樹脂、結晶化核剤、熱安定剤、加水分解防止剤、その他の添加剤などを含んでも良い。
【0106】
<<結晶化核剤>>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物に用いられる結晶化核剤は、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等のバイオマス資源由来の熱可塑性樹脂に用いられる結晶化核剤であれば、どのようなものでもよい。例えば、タルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好ましく用いられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いてもよい。
【0107】
<<熱安定剤及び加水分解防止剤>>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂組成物の熱安定剤として、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤を含み、加水分解防止剤としてカルボジイミド化合物系加水分解防止剤、例えば、ポリカルボジイミド樹脂(商品名:カルボジライト、日清紡ケミカル株式会社製)などを含んでいることが好ましい。添加する熱安定剤及び加水分解防止剤は、上記3種の添加剤のうちから選択される一つでもよいが、上記2種の熱安定剤及び加水分解防止剤は、それぞれ機能が異なっており、それぞれの添加剤がともに加えられたものが好ましい。熱安定剤及び加水分解防止剤の添加量は、種類により異なるが、一般的には、それぞれ熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、0.1質量部から5質量部程度が好ましい。
【0108】
<<その他の添加剤>>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、更にシリコーン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤、有機リン系難燃剤、金属酸化物系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等を添加することが好ましい。これにより、難燃性が向上して延焼が抑制できるとともに、生分解性樹脂組成物の流動性が向上するため、より優れた成形性を確保することができる。
【0109】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、充填剤を添加することができる。充填剤としては、タルク、マイカ、モンモリロナイト、カオリン等を挙げることができる。これらの充填剤が結晶核となることにより、コポリエステルの結晶化が促進され、成形体の衝撃強度および耐熱性が向上する。また、成形体の剛性も大きくできる。
【0110】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤、可塑剤、相溶化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、離型剤等の各種添加剤を適宜配合することもできる。可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。相溶化剤は、共重合体Aと共重合体Bの相溶化剤として機能するものであれば特に制限はない。相溶化剤としては、無機充填剤、グリシジル化合物、酸無水物をグラフト若しくは共重合した高分子化合物、及び有機金属化合物が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いてもよい。これらの混練により、耐熱性、曲げ強度、衝撃強度、難燃性等も改善されるため、更にノートパソコン、携帯電話等を代表とする電子機器用筐体等の成形体への適用が促進される。
【0111】
また、充填剤として、従来公知の各種フィラーを配合することも出来る。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤なども添加することができる。そのフィラーは、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これらは一種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
【0112】
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、全組成物中、通常1~80重量%であり、好ましくは3~70重量%、より好ましくは5~60重量%である。
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末などが挙げられる。これらは一種または二種以上の混合物として使用することも出来る。有機系フィラーの添加量は、全組成物中、通常、0.01~70重量%である。
【0113】
組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、フィラー、熱可塑性樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することも出来る。
【0114】
<熱硬化性樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物である場合、例えば、他の樹脂、水酸基、カルボキシル基等の反応性基を有する本実施形態のコポリエステルを熱硬化性樹脂主剤として含み、更に、前記反応性基と熱反応しうるイソシアネート硬化剤やポリアミン硬化剤等の硬化剤を含む。
【0115】
本実施形態にかかる硬化剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのイソシアネート基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、及びこのアロファネート化合物;これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート体;これらのポリイソシアネートに由来するビゥレット体;トリメチロールプロパン変性したアダクト体;前記した各種のポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネート等の多官能イソシアネートや、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ノナエチレンデカミン、ピペラジンあるいは、炭素原子数が2~6のアルキル鎖を有するN-アミノアルキルピペラジン等のポリエチレンポリアミンや、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン、もしくはIPDA)等のアミン化合物が挙げられる。
【0116】
<樹脂組成物の硬化物>
本実施形態の樹脂組成物の硬化物は、前述の熱可塑性樹脂組成物としての樹脂組成物、又は前述の熱硬化性樹脂組成物としての樹脂組成物の硬化物である。
【0117】
本明細書中のポリマーは、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、弾性繊維、ウレタン原料、自動車部品、スポーツ用品、防振材、制振材、繊維処理剤、バインダーなど、広範囲な用途に使用できる。
【0118】
コポリエステルは、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、弾性繊維、ウレタン原料、自動車部品、スポーツ用品など、広範囲な用途に使用できる。
【0119】
ポリウレタンは、様々な用途に使用できる。具体的には、人工皮革、合成皮革、靴、熱可塑性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂、塗料、ラミネート接着剤、防振材、制振材、自動車部品、スポーツ用品、繊維処理剤、バインダーなど、広範囲な用途に使用できる。
【0120】
(コーティング剤)
コーティング剤は、本発明のコポリエステル樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
【0121】
コーティング剤は、種々の基材上に適用できる。コーティング剤の用途の一例について説明する。
コーティング剤は、例えば、食品包装容器の基材の表面コートに用いられる。基材としては、例えば、スチレン系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ナイロン系樹脂フィルム等のプラスチックフィルム、またはこれらの積層体などが挙げられる。基材としては、例えば、紙、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等が挙げられる。コーティング剤は、生分解性の基材に対して好適に用いられる。生分解性の基材とは、例えば、紙、ポリエステル系のフィルム、ポリオレフィン系のフィルム、デンプン系フィルム等が挙げられる。
コーティング剤は、インキ、または接着剤等として用いることができる。
【0122】
(インキ)
インキは、本発明のコポリエステル樹脂と、着色剤とを含有し、更に必要に応じて、顔料分散剤、水、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
インキは、例えば、印刷インキである。
インキは、例えば、水性インキであってもよいし、水を含有しないインキ(溶剤系インキ)であってもよい。
【0123】
(接着剤)
接着剤は、本発明のコポリエステル樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、硬化剤、有機溶剤などのその他の成分を含有する。
接着剤は、上記の各種基材にラミネートして、主として食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いるラミネート用接着剤組成物としても使用可能である。
そのような接着剤は、例えば、本発明のコポリエステル樹脂と、ポリマーポリオールと、ポリイソシアネートとを含有する2液硬化型接着剤や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる1液型接着剤が使用できる。これらの接着剤は溶剤型、無溶剤型、水性型、アルコール型接着剤を必要に応じて使用できる。
【0124】
(シート)
シートは、本発明のコポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を用いてなる。樹脂組成物は、本発明のコポリエステル樹脂の他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
シートとしては、例えば、無延伸シート、二軸延伸シート、発泡シートなどが挙げられる。
シートの用途としては、特に限定されないが、例えば、食品包装用容器、建設材料、家庭電化製品、雑貨など幅広く用いることができる。
【0125】
(フィルム)
フィルムは、本発明のコポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を用いてなる。樹脂組成物は、本発明のコポリエステル樹脂の他に、他の樹脂、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、熱安定化剤などが挙げられる。
フィルムとしては、例えば、無延伸フィルム、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルムなどが挙げられ、例えば、フィルム原材料のペレットを押出機で溶融後、T-ダイやインフレーション法により成膜することで作製できる。T-ダイ法の場合、ロールの速度差で縦延伸を、テンターを用いて横延伸を行うことにより二軸延伸フィルムが得られる。
【0126】
(積層体)
積層体は、本実施形態のシート及びフィルムから選ばれる少なくとも1種を有し、更に必要に応じて印刷層、樹脂フィルムなどのその他の構成を有する。
積層体は、例えば、本実施形態のシート及びフィルムから選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に、機械強度や耐薬性の向上付与などのためにフィルムやシートを貼り合わせて得られる。具体的には、シートやフィルムの表面側及び裏面側の少なくともいずれかにポリスチレン系インフレーションフィルムを熱ラミネーションしたり、オレフィン系フィルム(CPP)を、接着剤を用いて貼り合わせたりして得られる。
使用される接着剤としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の接着剤であってもよいし、公知の接着剤であってもよい。
【0127】
(成形体)
成形体は、本実施形態のシート、フィルム及び積層体から選ばれる少なくとも1種を成形して得られる。
成形体は、例えば、本実施形態のシート、フィルム及び積層体を熱成形して得られる。熱成形方法としては、例えば、熱板接触加熱成形法、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法等が挙げられ、特に熱源に赤外線ヒーターを用いた間接加熱成形を好ましく用いることができる。
【実施例0128】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
<化学構造の評価>
実施例及び比較例において樹脂の化学構造は核磁気共鳴(13C-NMR)を用い、下記の条件により同定した。
測定装置:JEOL RESONANCE製「JNM-ECM400S」
磁場強度:100MHz
積算回数:1000回
溶媒:重水素化クロロホルム
常磁性緩和試薬:クロム(III)アセチルアセテート
試料濃度:200mg/1.0mL
【0130】
<平均連鎖長の評価>
<<ピーク積分値の算出>>
得られた13C-NMRスペクトルをJEOL Delta v5.3.1ソフトウェアより波形分離処理を行い、トライアドピーク積分値を算出した。
<<4元系ポリエステルの平均連鎖長の算出>>
下記に示す式に基づき、平均連鎖長を算出した。
Lx-y=(Ix-y-x×2)/(Ix-w-x+Iz-y―x+Iz-y-x+Ix-y-z+Iy-x-w)+1
L:平均連鎖長
I:トライアドピーク積分値
x:2-メチルー1,3プロパンジオール由来の構成単位
y:アジピン酸由来の構成単位
z:1,4ブタンジオール由来の構成単位
w:コハク酸由来の構成単位
【0131】
[ヒドロキシアルカン酸を含むコポリエステルの平均連鎖長の算出]
下記に示す式に基づき、平均連鎖長を算出した。
Lh-h=1+2×(Is-h-h+Ih-h-h)/(Is-h-b+Ih-h―b+Ib-s-h+Ih-s-h)
L:平均連鎖長
I:トライアドピーク積分値
h:6-ヘキサノエート由来の構成単位
s:1,4-サクシネート由来の構成単位
b:1,4-ブタノエート由来の構成単位
【0132】
<分子量の評価>
実施例及び比較例において樹脂の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
測定装置: システムコントローラー Waters 600 Controller
送液ポンプ Waters Model Code 60F
RI(示差屈折計)検出器 Waters 2414
オートサンプラー Waters 717plus Autosampler
データ処理:Waters Empower3
測定条件
測定条件:カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム(CHCl3)
流速 1.0ml/分
標準:ポリスチレン
カラム: Shodex GPC LF-G 1本
Shodex GPC LF-804 4本
試料:樹脂固形分換算で0.4質量%のクロロホルム溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0133】
<酸化の評価>
実施例及び比較例において下記の手順で樹脂の酸価を算出した。
栓三角フラスコ中に試料約1gを量り採り、アセトン20mLを加えて溶解し、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、下記式により酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0134】
<融点測定>
測定装置:Mettler社製DSC822
測定条件:窒素気流下、昇降温度速度5℃/min、測定温度範囲-60℃~180℃
【0135】
<生分解性の評価>
実施例及び比較例において下記の手順で生分解度を算出し、生分解度の値から生分解性を評価した。
【0136】
<<海水分解性の評価>>
植種源:茜湾の沿岸(千葉県県習志野市茜浜付近)で採取した海水を採取植種源とした。
生分解度測定方法:試験瓶にソーダライム(二酸化炭素吸収剤)および圧力センサー(WTW社製、OxiTop-IDS(登録商標))を取付け、下記の条件下でBOD(生物学的酸素要求量)を測定し、生分解度を算出した。
培養温度:27℃、暗所
培養期間:28日間
生分解度の算出:
実施例又は比較例の樹脂である試料の生分解度は下記式に基づき算出した。
生分解度(%)=(BOD0-BODB)/ThOD×100
BOD0:試料の生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
BODB:空試験の平均生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
ThOD:試料が完全に酸化された場合に必要とされる理論的酸素要求量(計算値:mg)
評価基準:
A(最優):生分解度が50%以上
B(優):生分解度が40%以上50%未満
C(良):生分解度が24%以上40%未満
D(可):生分解度が15%以上24%未満(実用下限)
E(不可):生分解度が15%未満(実用に適さない)
【0137】
<<淡水分解性の評価>>
植種源を猪名川(兵庫県池田市桃園付近)で採取した河川水とした以外は、海水分解性の評価記載の方法と同様の操作により分解性を評価した。
【0138】
<<土壌分解性の評価>>
植種源を大篠塚市民農園(千葉県佐倉市大篠塚付近)で採取した土壌とした以外は、海水分解性の評価記載の方法と同様の操作により分解性を評価した。
【0139】
<<コンポスト分解性の評価>>
JIS K6953-1:2011に準拠した方法により、コンポスト分解率を測定した。
培養温度:58℃
培養期間:28日間
評価基準:
A(最優):コンポスト分解率が50%以上
B(優):コンポスト分解率が40%以上50%未満
C(良):コンポスト分解率が24%以上40%未満
D(可):コンポスト分解率が15%以上24%未満(実用下限)
E(不可):コンポスト分解率が15%未満(実用に適さない)
【0140】
(合成例1)
<ポリ(2-メチル-1,3プロパンジオール/アジピン酸)(P(2MPD/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、2-メチル-1,3プロパンジオール(2MPD)396質量部、アジピン酸(AA)604質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温200℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(2MPD/AA)を得た。P(2MPD/AA)の構造を式(9)に示す。
【0141】
【化19】
式(9)
(式(9)中、aは正の整数を表す)
【0142】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水63%、淡水65%、土壌78%であり、コンポスト分解率は83%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが10071であり、重量平均分子量Mwが31524であった。
【0143】
(合成例2)
<ポリ(1,4ブタンジオール/コハク酸)(P(BG/SA))の合成>
原料として、1,4ブタンジオール(BG)441質量部、コハク酸(SA)559質量部,チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.2質量部を使用し、反応液の液温220℃にした以外は、合成例1と同様に行い、P(BG/SA)を得た。P(BG/SA)の構造を式(10)に示す。
【0144】
【化20】
式(10)
(式(10)中、bは正の整数を表す)
【0145】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水3%、淡水3%、土壌10%であり、コンポスト分解率は13%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが12254であり、重量平均分子量Mwが28416であった。
【0146】
(合成例3)
<ポリ(2-メチル-1,3プロパンジオール/セバシン酸)(P(2MPD/SebA))の合成>
原料として、2-メチル-1,3プロパンジオール(2MPD)322質量部、セバシン酸(SebA)678質量部,チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.2質量部を使用し、合成例1と同様に行い、P(2MPD/SebA)を得た。P(2MPD/SebA)の構造を式(11)に示す。
【0147】
【化21】
式(11)
(式(11)中、cは正の整数を表す)
【0148】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水65%、淡水65%、土壌74%であり、コンポスト分解率は83%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが19587であり、重量平均分子量Mwが63356であった。
【0149】
(合成例4)
<ポリ(3-メチル-1,5プロパンジオール/アジピン酸)(P(3MPD/AA))の合成>
原料として、3-メチル-1,5プロパンジオール(3MPD)458質量部、アジピン酸(AA)542質量部,チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.2質量部を使用し、合成例1と同様に行い、P(3MPD/AA)を得た。P(3MPD/AA)の構造を式(12)に示す。
【0150】
【化22】
式(12)
(式(12)中、dは正の整数を表す)
【0151】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水63%、淡水64%、土壌78%であり、コンポスト分解率は85%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが13880であり、重量平均分子量Mwが42954であった。
【0152】
(合成例5)
<ポリ(1,4ブタンジオール/アジピン酸/テレフタル酸)(P(BG/AA/tPA))の合成>
原料として、1,4ブタンジオール(BG)398質量部、アジピン酸(AA)292質量部,テレフタル酸(tPA)332質量部, チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.2質量部を使用し、反応液の液温220℃にした以外は、合成例1と同様に行い、P(BG/AA/tPA)を得た。P(BG/AA/tPA)の構造を式(13)に示す。
【0153】
【化23】
式(13)
(式(13)中、e,fはそれぞれ独立して正の整数を表す)
【0154】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水3%、淡水3%、土壌8%であり、コンポスト分解率は10%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが26445であり、重量平均分子量Mwが81430であった。
【0155】
(合成例6)
<ポリ(エチレングリコール/アジピン酸)(P(EG/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール(EG)306質量部、アジピン酸(AA)694質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温190℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(EG/AA)を得た。P(EG/AA)の構造を式(14)に示す。
【0156】
【化24】
式(14)
(式(14)中、aは正の整数を表す)
【0157】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水50%、淡水52%、土壌55%であり、コンポスト分解率65%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが5568であり、重量平均分子量Mwが14619であった。
【0158】
(合成例7)
<ポリ(ジエチレンエチレングリコール/アジピン酸)(P(DEG/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、ジエチレンエチレングリコール(DEG)431質量部、アジピン酸(AA)569質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温200℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(DEG/AA)を得た。P(DEG/AA)の構造を式(15)に示す。
【0159】
【化25】
式(15)
(式(15)中、aは正の整数を表す)
【0160】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水63%、淡水65%、土壌70%であり、コンポスト分解率78%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが14200であり、重量平均分子量Mwが102600であった。
【0161】
(合成例8)
<ポリ(1,2―プロパンジオール/アジピン酸)(P(1,2PG/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、1,2―プロパンジオール(1,2PG)351質量部、アジピン酸(AA)649質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温200℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(1,2PG/AA)を得た。P(1,2PG/AA)の構造を式(16)に示す。
【0162】
【化26】
式(16)
(式(16)中、aは正の整数を表す)
【0163】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水71%、淡水67%、土壌75%であり、コンポスト分解率81%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが6870であり、重量平均分子量Mwが14070であった。
【0164】
(合成例9)
<ポリ(1,3―ブタンジオール/アジピン酸)(P(1,3BG/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、1,3―ブタンジオール(1,3BG)391質量部、アジピン酸(AA)609質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温190℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(1,3BG/AA)を得た。P(1,3BG/AA)の構造を式(17)に示す。
【0165】
【化27】
式(17)
(式(17)中、aは正の整数を表す)
【0166】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水60%、淡水59%、土壌63%であり、コンポスト分解率78%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが14700であり、重量平均分子量Mwが92000であった。
【0167】
(合成例10)
<ポリ(1,3―プロパンジオール/アジピン酸)(P(1,3PG/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、1,3―プロパンジオール(1,3PG)351質量部、アジピン酸(AA)649質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温200℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(1,3PG/AA)を得た。P(1,3PG/AA)の構造を式(18)に示す。
【0168】
【化28】
式(18)
(式(18)中、aは正の整数を表す)
【0169】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水47%、淡水49%、土壌55%であり、コンポスト分解率68%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが5540であり、重量平均分子量Mwが24500であった。
【0170】
(合成例11)
<ポリ(1,4―ブタンジオール/アジピン酸)(P(1,4BG/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、1,4―ブタンジオール(1,4BG)391質量部、アジピン酸(AA)609質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温220℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(1,4BG/AA)を得た。P(1,4BG/AA)の構造を式(19)に示す。
【0171】
【化29】
式(19)
(式(19)中、aは正の整数を表す)
【0172】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水61%、淡水62%、土壌68%であり、コンポスト分解率78%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが27200であり、重量平均分子量Mwが132000であった。
【0173】
(合成例12)
<ポリ(1,5―ペンタンジオール/アジピン酸)(P(1,5PG/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、1,5―ペンタンジオール(1,5PG)426質量部、アジピン酸(AA)574質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温220℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(1,5PG/AA)を得た。P(1,5PG/AA)の構造を式(20)に示す。
【0174】
【化30】
式(20)
(式(20)中、aは正の整数を表す)
【0175】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水63%、淡水65%、土壌67%であり、コンポスト分解率76%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが6210であり、重量平均分子量Mwが26900であった。
【0176】
(合成例13)
<ポリ(1,6―ヘキサンジオール/アジピン酸)(P(1,6HD/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、1,6―ヘキサンジオール(1,6HD)458質量部、アジピン酸(AA)542質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温220℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(1,6HD/AA)を得た。P(1,6HD/AA)の構造を式(21)に示す。
【0177】
【化31】
式(21)
(式(21)中、aは正の整数を表す)
【0178】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水55%、淡水54%、土壌62%であり、コンポスト分解率68%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量がMn9634であり、重量平均分子量Mwが30394であった。
【0179】
(合成例14)
<ポリ(1,9―ノナンジオール/アジピン酸)(P(1,9ND/AA))の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、1,9―ノナンジオール(1,9ND)535質量部、アジピン酸(AA)465質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.1質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温220℃、蒸気温98℃を維持しながらエステル化反応を進行させ、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、P(1,9ND/AA)を得た。P(1,9ND/AA)の構造を式(22)に示す。
【0180】
【化32】
式(22)
(式(22)中、aは正の整数を表す)
【0181】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水58%、淡水57%、土壌65%であり、コンポスト分解率75%であった。平均分子量の測定の結果、数平均分子量Mnが4410であり、重量平均分子量Mwが28900であった。
【0182】
(実施例1)
撹拌機、窒素ガス導入管を備えたガラス容器に合成例1で得たP(2MPD/AA)57質量部、合成例2で得たP(BG/SA)443質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.05質量部を仕込み、窒素気流下、容器温度200℃で3時間維持し、2MPD/AA及びBG/SAを構成単位として含む、コポリエステル樹脂を得た。得られたコポリエステル樹脂の構造を式(A-1)に示す。
【0183】
【化33】
式(A-1)
(式(A-1)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0184】
平均連鎖長の評価の結果、2MPD/AA平均連鎖長は6.9であった。
生分解性の評価の結果、海水分解性は16%、コンポスト分解率は62%であった。
生分解性の評価の結果を下記表1(表1A、表1B)に示す。以下、表1A及び表1Bをまとめて、表1ともいう。
【0185】
(実施例2~6)
P(2MPD/AA)及びP(BG/SA)の配合量、並びに反応時間である維持時間を表1に記載の値に変更した以外は、実施例1と同様に行い、コポリエステル樹脂を得た。
【0186】
(実施例7)
原料として、合成例2で得たP(BG/SA)305質量部、合成例3で得たP(2MPD/SebA)195質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.05質量部を仕込み、反応時間である維持時間を表1に記載の値に変更した以外は、実施例1と同様に行い、コポリエステル樹脂を得た。得られたコポリエステル樹脂の構造を式(A-2)に示す。
【0187】
【化34】
式(A-2)
(式(A-2)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0188】
(実施例8)
原料として、合成例2で得たP(BG/SA)319質量部、合成例4で得たP(3MPD/AA)181質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.05質量部を仕込み、反応時間である維持時間を表1に記載の値に変更した以外は、実施例1と同様に行い、コポリエステル樹脂を得た。得られたコポリエステル樹脂の構造を式(A-3)に示す。
【0189】
【化35】
式(A-3)
(式(A-3)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0190】
(実施例9)
原料として、合成例1で得たP(2MPD/AA)104質量部、合成例5で得たP(BG/AA/tPA)390質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.05質量部を仕込み、反応時間である維持時間を表1に記載の値に変更した以外は、実施例1と同様に行い、コポリエステル樹脂を得た。得られたコポリエステル樹脂の構造を式(A-4)に示す。
【0191】
【化36】
式(A-4)
(式(A-4)、o、p、q及びrは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0192】
(実施例10)
温度計、攪拌機、窒素ガス導入口、環流冷却器を備えた四つ口フラスコに実施例5で得たP(2MPD/AA/BG/SA)を500質量部入れ、酢酸エチル300質量部に溶解させてポリエステルポリオールの酢酸エチル溶液を得た。前記溶液にジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.1質量部とイソホロンジイソシアネート(IPDI)13質量部を仕込み、窒素気流下70~80℃を維持し反応を行った。イソシアネート重量率が0.05質量%未満となった時点で反応を終了させ、ポリエステルウレタンポリオール溶液を得た。
【0193】
(実施例11)
原料として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)10質量部に変更した以外は、実施例10と同様に行い、ポリエステルウレタンポリオール溶液を得た。
【0194】
(実施例12)
原料として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)15質量部に変更した以外は、実施例10と同様に行い、ポリエステルウレタンポリオール溶液を得た。
【0195】
(比較例1)
合成例2で得られたP(BG/SA)を用いた。
【0196】
実施例1~9、及び比較例1の反応条件及び評価結果を表1にまとめた。また、実施例10~12の反応条件及び評価結果を表2にまとめた。
【0197】
【0198】
【0199】
【表2】
上記実施例から、本発明のコポリエステル樹脂は、熱成形性や生分解性、特に生分解性に優れていることが確認できた。
【0200】
(合成例15)
<ポリ(カプロラクトン)(PCL)の合成>
撹拌機、窒素ガス導入管、精留管、及び水分分離器等を備えた反応容器に、ε-カプロラクトン(εCL)487質量部、メタンスルホン酸5質量部を仕込み、窒素気流下、反応液の液温100℃を維持しながら開環重合反応を5時間進行させ、ポリ(カプロラクトン)(PCL)を得た。PCLの構造を式(23)に示す。
【0201】
【化37】
式(23)
(式(23)中、aは正の整数を表す)
【0202】
上記記載の平均分子量の測定方法を用いて、平均分子量を測定した。数平均分子量Mnが14,630であり、重量平均分子量Mwが23,882であった。
上記記載の1H-NMRの測定方法を用いて、1H-NMRスペクトルを測定した。その結果は、以下である。
1H-NMR δ(CDCl3):1.30-1.38(m,2H),1.57-1.64(m,4H),2.26(t,2H),4.01(t,2H)
【0203】
生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水78%、淡水77%、土壌79%であり、コンポスト分解率は83%であった。
【0204】
<Capa6400(Ingevity、製品PCL)>
平均分子量の評価の結果、数平均分子量Mnが24400であり、重量平均分子量Mwが87757であった。生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水76%、淡水77%、土壌78%であり、コンポスト分解率は81%であった。
【0205】
<BioPBS(三菱ケミカル、製品P(BG/SA))>
平均分子量の評価の結果、数平均分子量Mnが59499であり、重量平均分子量Mwが171333であった。生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水2%、淡水1%、土壌6%であり、コンポスト分解率は12%であった。
【0206】
<Ecoflex(BASF、製品P(BG/AA/tPA))>
平均分子量の評価の結果、数平均分子量Mnが26445であり、重量平均分子量Mwが81430であった。生分解性の評価の結果、生分解度はそれぞれ海水1%、淡水1%、土壌6%であり、コンポスト分解率は10%であった。
【0207】
(実施例13)
撹拌機、窒素ガス導入管を備えたガラス容器にCapa6400(Ingevity、製品PCL)5.4質量部、BioPBS(三菱ケミカル、製品P(BG/SA))400質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.08質量部を仕込み、減圧下、容器温度200℃で6時間維持し、PCL及びBG/SAを構成単位として含む、コポリエステルを得た。得られたコポリエステルの構造を式(B-1)に示す。
【0208】
【化38】
式(B-1)
(式(B-1)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0209】
上記記載の方法により、生分解性ブロック(X)の平均連鎖長として、PCLを構成する6-ヒドロキシヘキサン酸(6HH)由来の構成単位(6HH―U)の平均連鎖長を算出した。また、生分解性を評価し、平均分子量を測定した。
それらの結果を下記表3(表3A、表3B)に示す。以下、表3A及び表3Bをまとめて、表3ともいう。
【0210】
(実施例14)
撹拌機、窒素ガス導入管を備えたガラス容器に合成例15で得たPCLを11質量部、合成例2[]っ[]で得たP(BG/SA)400質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.08質量部を仕込み、窒素気流下、容器温度200℃で3時間維持し、PCL及びBG/SAを構成単位として含む、コポリエステルを得た。得られたコポリエステルの構造を式(B-2)に示す。
【0211】
【化39】
式(B-2)
(式(B-2)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0212】
実施例13と同様な方法を用いて、平均連鎖長を算出し、生分解性を評価し、平均分子量を測定した。
それらの結果を表3に示す。
【0213】
(実施例15、17、18、20~22)
PCL及びP(BG/SA)の配合量、並びに反応時間である維持時間を表3に記載の値に変更した以外は、実施例14と同様に行い、コポリエステルを得た。
実施例13と同様な評価を行った。その結果を表3に示す。
【0214】
(実施例16、19、23)
PCL及びP(BG/SA)の配合量、並びに反応時間である維持時間を表3に記載の値に変更した以外は、実施例13と同様に行い、コポリエステルを得た。
実施例13と同様な評価を行った。その結果を表3に示す。
【0215】
(実施例24)
撹拌機、窒素ガス導入管を備えたガラス容器にCapa6400(Ingevity、製品PCL)197質量部、BioPBS(三菱ケミカル、製品P(BG/SA))300質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.09質量部を仕込み、窒素気流下、容器温度200℃で5時間維持し、PCL及びBG/SAを構成単位として含む、コポリエステルを得た。得られたコポリエステルの構造を式(B-3)に示す。
【0216】
【化40】
式(B-3)
(式(B-3)中、o、p、及びqは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0217】
実施例13と同様な評価を行った。その結果を表3に示す。
【0218】
(実施例25)
原料として、Capa6400(Ingevity、製品PCL)52質量部、Ecoflex(BASF、製品P(BG/AA/tPA))351質量部、チタニウムテトライソプロポキシド(TIPT)0.08質量部を用い、実施例13と同様に行い、コポリエステルを得た。得られたコポリエステルの構造を式(B-4)に示す。
【0219】
【化41】
式(B-4)
(式(B-4)中、o、p、q及びrは、それぞれ独立して正の整数を表す)
【0220】
実施例13と同様な評価を行った。その結果を表3に示す。
【0221】
【0222】
【表3B】
上記実施例から、本発明のコポリエステル樹脂は、熱成形性や生分解性、特に生分解性に優れていることが確認できた。
【0223】
本願は、以下の発明をも包含する。
(1)
生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)と、非生分解性を有する構成単位である非生分解性ブロック(Y)と、を組み合わせてなるコポリエステル樹脂。
(2)
前記生分解性ブロック(X)と、前記非生分解性ブロック(Y)とのモル比(X/Y)が、1/99~95/5である、(1)に記載のコポリエステル樹脂。
(3)
前記生分解性ブロック(X)は、ヒドロキシアルカン酸、又は二塩基酸(I-a)と、グリコール(I-b)とが結合した構造体に由来し、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来の生分解性ブロック(X)である、(1)に記載のコポリエステル樹脂。
(4)
前記非生分解性ブロック(Y)は、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)由来の非生分解性ブロック(Y)である、(1)に記載のコポリエステル樹脂。
(5)
前記生分解性ブロック(X)の平均連鎖長は、1.2よりも大きい、(1)に記載のコポリエステル樹脂。
(6)
前記ヒドロキシアルカン酸は、6-ヒドロキシヘキサン酸に由来する構成単位、又はポリカプロラクトンに由来する構成単位である、(3)に記載のコポリエステル樹脂。
(7)
前記二塩基酸(I-a)は、式(1)で表され、前記グリコール(I-b)は、式(2)で表される、(3)に記載のコポリエステル樹脂。
【化42】
式(1)
(式(1)中、nは、4~8の整数を表す。)
【化43】
式(2)
(式(2)中、Aは、炭素原子又は酸素原子を表し、R
1は水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はヒドロキシル基を表し、R
2は水素原子又はヒドロキシル基を表す。l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上を表す。
ただし、Aが酸素原子である場合R
1及びAと結合しているHは存在しない。また、R
1及びR
2のいずれかはヒドロキシル基であり、R
1及びR
2が共にヒドロキシル基ではない。)
(8)
前記ポリマー(x)における前記生分解性を有する構成単位が、下記式(3A)又は下記式(3B)で表される、(3)に記載のコポリエステル樹脂。
【化44】
式(3A)
【化45】
式(3B)
(式(3A)、及び式(3B)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、l及びmは、それぞれ独立して0~4の整数で、かつl+mが1以上であり、nは、4~8の整数を表す。)
(9)
前記二塩基酸(I-a)が、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(3)に記載のコポリエステル樹脂。
(10)
前記グリコール(I-b)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,9-ノナンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(3)に記載のコポリエステル樹脂。
(11)
前記ポリマー(x)における生分解性を示す前記構成単位が、
エチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、ジエチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,2-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-プロピレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、2-メチル-1,3-プロパンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,3-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,4-ブタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、1,9-ノナンジオールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールと1,6-ヘキサンジオールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとジエチレングリコールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、エチレングリコールとジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
エチレングリコールとセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、及びエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸とセバシン酸とが結合した構造体に由来する構成単位、
の群から選ばれる少なくとも1種である、(3)に記載のコポリエステル樹脂。
(12)
前記ポリマー(y)における前記非生分解性を有する構成単位が、ブチレンサクシネート、またはブチレンアジペートテレフタレートに由来する、(4)に記載のコポリエステル樹脂。
(13)
前記ポリマー(y)における非生分解性を有する構成単位が、
1,4ブタンジオールとコハク酸とが結合した構造体に由来する構成単位、及び1,4ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸とが結合した構造体に由来する構成単位のいずれかである、(4)に記載のコポリエステル樹脂。
(14)
前記生分解性を発現する構成単位である生分解性ブロック(X)は、単位(A)及び単位(B)を含み、単位(A)及び単位(B)は、下記(i)~下記(iii)のいずれかである、(1)に記載のコポリエステル樹脂。
(i)
前記単位(A)が、「2-メチル-1,3プロパンジオールとアジピン酸と2-メチル-1,3プロパンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、前記単位(B)が、「1,4ブタンジオールとアジピン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位であるか、
(ii)
前記単位(A)が、「2-メチル-1,3プロパンジオールとセバシン酸と2-メチル-1,3プロパンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、前記単位(B)が、「1,4ブタンジオールとセバシン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位であるか、又は
(iii)
前記単位(A)が、「3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位で、前記単位(B)が、「1,4ブタンジオールとアジピン酸と1,4ブタンジオールとが結合した構造体」に由来するトライアッド単位である。
(15)
前記コポリエステル樹脂の融点(Tm)が65℃以上である、(1)に記載のコポリエステル樹脂。
(16)
コポリエステル樹脂は、海水環境、淡水環境、土壌環境、及びコンポストの環境において、生分解性を発現する、(1)に記載のコポリエステル樹脂。
(17)
生分解性ブロック(X)と非生分解性ブロック(Y)とを組み合わせてなる(1)~(16)のいずれかに記載のコポリエステル樹脂を製造する方法であって、
前記生分解性ブロック(X)は、生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(x)由来のブロックであり、
前記非生分解性ブロック(Y)は、非生分解性を有する構成単位を含有するポリマー(y)由来のブロックであり、
前記ポリマー(x)と、前記ポリマー(y)とをエステル交換反応させ、前記生分解性ブロック(X)と前記非生分解性ブロック(Y)とを含むブロック共重合体を得る工程、
を含む、コポリエステル樹脂の製造方法。
(18)
(1)~(16)のいずれかに記載のコポリエステル樹脂を含有する、樹脂組成物。
(19)
(18)に記載の樹脂組成物からなる、シート又はフィルム。