IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

特開2024-161045アルミノシリケート含有組成物及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161045
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】アルミノシリケート含有組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20241108BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20241108BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20241108BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20241108BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20241108BHJP
   C04B 24/30 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B24/26 A
C04B24/26 F
C04B24/26 E
C04B24/26 H
C04B24/22 A
C04B24/18 A
C04B24/30 B
C04B24/26 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140792
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2020113078の分割
【原出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】新井 太一朗
(57)【要約】
【課題】 水硬性材料組成物の早期強度発現性に優れ、かつ、コストを抑制することができる組成物を提供する。
【解決手段】 アルミノシリケート及び水溶性高分子を含むアルミノシリケート含有組成物であって、該アルミノシリケートは、下記の測定方法により測定される平均粒子径が、10~2500nmであることを特徴とするアルミノシリケート含有組成物。
<平均粒子径の測定方法>
粒子径測定装置を用い、アルミノシリケート含有組成物の固形分0.1質量%の水分散液について動的光散乱法による散乱強度を測定し、平均粒子径を算出する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノシリケート及び水溶性高分子を含むアルミノシリケート含有組成物であって、
該アルミノシリケートは、下記の測定方法により測定される平均粒子径が、10~2500nmであることを特徴とするアルミノシリケート含有組成物。
<平均粒子径の測定方法>
粒子径測定装置を用い、アルミノシリケート含有組成物の固形分0.1質量%の水分散液について動的光散乱法による散乱強度を測定し、平均粒子径を算出する。
【請求項2】
前記水溶性高分子は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩並びにリン酸エステル基、水酸基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することを特徴とする請求項1に記載のアルミノシリケート含有組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子は、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有することを特徴とする請求項2に記載のアルミノシリケート含有組成物。
【請求項4】
前記水溶性高分子の含有割合は、アルミノシリケート含有組成物100質量%に対して、0.025~90.9質量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアルミノシリケート含有組成物。
【請求項5】
アルミノシリケートを含み、
該アルミノシリケートは、下記の測定方法により測定される平均粒子径が、10~2500nmであることを特徴とする硬化促進剤組成物。
<平均粒子径の測定方法>
粒子径測定装置を用い、硬化促進剤組成物の固形分0.1質量%の水分散液について動的光散乱法による散乱強度を測定し、平均粒子径を算出する。
【請求項6】
前記硬化促進剤組成物は、更に水溶性高分子を含むことを特徴とする請求項5に記載の硬化促進剤組成物。
【請求項7】
前記水溶性高分子は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩並びにリン酸エステル基、水酸基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することを特徴とする請求項6に記載の硬化促進剤組成物。
【請求項8】
前記水溶性高分子は、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有することを特徴とする請求項7に記載の硬化促進剤組成物。
【請求項9】
前記硬化促進剤組成物は、アルミニウム含有化合物及び/又はケイ素含有化合物を含んでいてもよく、前記水溶性高分子の含有割合は、アルミノシリケート、アルミニウム含有化合物及びケイ素含有化合物の合計含有量100質量%に対して、5~1000質量%であることを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
【請求項10】
前記硬化促進剤組成物中のケイ素原子の含有割合は、アルミニウム原子100モル%に対して、1~1000モル%であることを特徴とする請求項5~9のいずれかに記載の硬化促進剤組成物。
【請求項11】
請求項1~4のいずれかに記載のアルミノシリケート含有組成物及び/又は請求項5~10のいずれかに記載の硬化促進剤組成物と水硬性材料とを含むことを特徴とする水硬性材料組成物。
【請求項12】
アルミノシリケート含有組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、水溶性高分子の存在下でアルミニウム含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる工程(α)を含むことを特徴とするアルミノシリケート含有組成物の製造方法。
【請求項13】
水硬性硬化物の強度を早期に向上させる方法であって、
該方法は、請求項1~4のいずれかに記載のアルミノシリケート含有組成物及び/又は請求項5~10のいずれかに記載の硬化促進剤組成物を水硬性材料に添加する工程及び該添加工程で得られた組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする水硬性硬化物の早期強度向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミノシリケート含有組成物及びその製造方法に関する。より詳しくは、 プレキャスト用セメント等の水硬性材料組成物の硬化促進剤に有用なアルミノシリケート含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の建設現場において型枠を設置し、コンクリートを打設して造る現場打ち工法に対して、コンクリート構造物の基本となる部材を工場で製造した後、現場へ持ち込み躯体を組み立てるプレキャスト工法は、工期の短縮化、人件費の削減等の利点がある。
プレキャスト工法では、一般的にコンクリートを型枠に打設し、蒸気養生と呼ばれるコンクリートを高温恒湿下に曝す手法で硬化させた後に、型枠からコンクリートを脱型する。プレキャスト工法では脱型までの時間を短縮するため、コンクリートの早期の強度発現が求められる。
【0003】
コンクリートの早期強度を向上させるための技術が種々開発され、例えば特許文献1には、早強ポルトランドセメントと、半水石膏及び無水石膏の少なくとも一方の石膏と、珪酸ナトリウムと、硫酸アルミニウムと、シリカフュームとを特定の割合で含むモルタル・コンクリート用混和材が開示されている。特許文献2には(A)早強ポルトランドセメントと、(B)半水石膏及び無水石膏の少なくとも一方の石膏と、( C ) 珪酸ナトリウムと、(D)硫酸アルミニウムとを特定の割合で含むモルタル・コンクリート用混和材が開示されている。特許文献3には化学成分としてAl及びSOを有し、[SO]/[Al]のモル比が0.4~1.05である、セメント組成物が開示されている。特許文献4には水溶性カルシウム化合物と水溶性ケイ酸塩化合物との反応による硬化促進剤組成物の製造方法であって、前記水溶性カルシウム化合物と前記水溶性ケイ酸塩化合物との前記反応が、水硬性結合剤のための可塑剤として好適な水溶性櫛形ポリマーを含有する水溶液の存在下で実施される前記方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-001969号公報
【特許文献2】特開2020-001966号公報
【特許文献3】特開2019-099439号公報
【特許文献4】特表2012-501293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来コンクリートの早期強度を向上させるための種々の技術が開発されているものの、特許文献1~3に開示された組成物は、早期強度発現性において十分ではなく、特許文献4に開示された方法はコストが高いため、水硬性材料組成物の早期強度発現性に優れ、かつ、コストを抑制することができる組成物を開発する余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、水硬性材料組成物の早期強度発現性に優れ、かつ、コストを抑制することができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、水硬性材料組成物の早期強度発現性を高める技術について種々検討したところ、アルミノシリケート及び水溶性高分子を含む組成物において、アルミノシリケートの平均粒子径を特定の範囲とすることにより、水硬性材料組成物が早期強度発現性に優れ、かつ、コストを抑制することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、アルミノシリケート及び水溶性高分子を含むアルミノシリケート含有組成物であって、該アルミノシリケートは、下記の測定方法により測定される平均粒子径が、10~2500nmであるアルミノシリケート含有組成物である。
<平均粒子径の測定方法>
粒子径測定装置を用い、アルミノシリケート含有組成物の固形分0.1質量%の水分散液について動的光散乱法による散乱強度を測定し、平均粒子径を算出する。
【0009】
上記水溶性高分子は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩並びにリン酸エステル基、水酸基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することが好ましい。
【0010】
上記水溶性高分子は、重量平均分子量が1,000~100,000であることが好ましい。
【0011】
上記水溶性高分子は、全構造単位100モル%に対して、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種を有する単量体由来の構造単位の割合が50~95モル%であることが好ましい。
【0012】
上記水溶性高分子は、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有することが好ましい。
【0013】
上記アルミノシリケート含有組成物は、アルミニウム含有化合物及び/又はケイ素含有化合物を含んでいてもよく、上記水溶性高分子の含有割合は、アルミノシリケート、アルミニウム含有化合物及びケイ素含有化合物の合計含有量100質量%に対して、5~1000質量%であることが好ましい。
【0014】
上記アルミノシリケート含有組成物中のケイ素原子の含有割合は、アルミニウム原子100モル%に対して、1~1000モル%であることが好ましい。
【0015】
上記水溶性高分子の含有割合は、アルミノシリケート含有組成物100質量%に対して、0.025~90.9質量%であることが好ましい。
【0016】
上記アルミノシリケートの含有割合は、アルミノシリケート含有組成物100質量%に対して、0.5~50質量%であることが好ましい。
【0017】
上記アルミノシリケート含有組成物は、水を含み、上記アルミノシリケートが水100gに対して0.5~50g分散していることが好ましい。
【0018】
本発明はまた、アルミノシリケートを含み、上記アルミノシリケートは、下記の測定方法により測定される平均粒子径が、10~2500nmである硬化促進剤組成物でもある。
<平均粒子径の測定方法>
粒子径測定装置を用い、硬化促進剤組成物の固形分0.1質量%の水分散液について動的光散乱法による散乱強度を測定し、平均粒子径を算出する。
【0019】
上記硬化促進剤組成物は、更に水溶性高分子を含むことが好ましい。
【0020】
上記水溶性高分子は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩並びにリン酸エステル基、水酸基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することが好ましい。
【0021】
上記水溶性高分子は、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有することが好ましい。
【0022】
上記硬化促進剤組成物は、アルミニウム含有化合物及び/又はケイ素含有化合物を含んでいてもよく、上記水溶性高分子の含有割合は、アルミノシリケート、アルミニウム含有化合物及びケイ素含有化合物の合計含有量100質量%に対して、5~1000質量%であることが好ましい。
【0023】
上記硬化促進剤組成物中のケイ素原子の含有割合は、アルミニウム原子100モル%に対して、1~1000モル%であることが好ましい。
【0024】
上記水溶性高分子の含有割合は、硬化促進剤組成物100質量%に対して、0.0025~90.9質量%であることが好ましい。
【0025】
上記アルミノシリケートの含有割合は、硬化促進剤組成物100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましい。
【0026】
上記硬化促進剤組成物は、水を含み、上記アルミノシリケートが水100gに対して0.05~50g溶解していることが好ましい。
【0027】
本発明はまた、上記アルミノシリケート含有組成物及び/又は上記硬化促進剤組成物と水硬性材料とを含む水硬性材料組成物でもある。
【0028】
上記水硬性材料組成物は、プレキャスト用セメントに用いられることが好ましい。
【0029】
本発明は更にアルミノシリケート含有組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、水溶性高分子の存在下でアルミニウム含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる工程(α)を含むアルミノシリケート含有組成物の製造方法でもある。
【0030】
上記工程(α)における水溶性高分子の使用量は、アルミニウム含有化合物及びケイ素含有化合物の合計使用量100質量%に対して、5~1000質量%であることが好ましい。
【0031】
上記工程(α)に用いる原料におけるケイ素原子の含有割合は、アルミニウム原子100モル%に対して、1~1000モル%であることが好ましい。
【0032】
上記工程(α)は、水中で攪拌しながら行うことが好ましい。
【0033】
本発明は更に、水硬性材料組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、上記製造方法で得られたアルミノシリケート含有組成物を水硬性材料に添加する工程(β)を含む水硬性材料組成物の製造方法でもある。
【0034】
本発明は更に、水硬性硬化物を製造する方法であって、上記製造方法は、上記製造方法で得られた水硬性材料組成物を硬化する工程(γ)を含む水硬性硬化物の製造方法でもある。
【0035】
本発明は更に、水硬性硬化物の強度を早期に向上させる方法であって、上記方法は、上記アルミノシリケート含有組成物及び/又は硬化促進剤組成物を水硬性材料に添加する工程及び該添加工程で得られた組成物を硬化する工程を含む水硬性硬化物の早期強度向上方法でもある。
【発明の効果】
【0036】
本発明のアルミノシリケート含有組成物は、上述の構成よりなり、早期強度発現性に優れ、かつ、コストを抑制することができるため、プレキャスト用セメント等の水硬性材料組成物の硬化促進剤等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0038】
<アルミノシリケート含有組成物>
本発明のアルミノシリケート含有組成物は、アルミノシリケート及び水溶性高分子を含み、アルミノシリケートは、上記の測定方法により測定される平均粒子径が、10~2500nmである。アルミノシリケートの平均粒子径が上記範囲であることにより、水硬性材料組成物に含まれる水酸化カルシウムが、カルシウムシリケート水和物、カルシウムアルミネート水和物やアルミニウムカルシウムシリケート水和物に変化する速度が向上し、これによりポゾラン反応が促進され、早期強度を発現させることができると考えられる。特許文献4に記載の方法は、カルシウムシリケート水和物がセメント中のトリカルシウムシリケートの水和反応を促進することにより、水硬性硬化物の強度を高めるものであり、本発明のアルミノシリケート含有組成物が早期強度を発揮するメカニズムとは異なる。
特許文献4においてカルシウムシリケート水和物を添加する反応では、無添加の場合と比較して発熱量が増加するのに対して、本発明においてアルミノシリケートを用いる反応では発熱量の増加は確認されない。このため、本発明のアルミノシリケート含有組成物を硬化促進剤として用いると初期の急激な発熱増が抑制されるため、温度によるひび割れを抑制することができる。
【0039】
上記アルミノシリケートの平均粒子径として好ましくは10~2000nmであり、より好ましくは10~1000nmであり、更に好ましくは10~800nmであり、一層好ましくは10~500nmであり、より一層好ましくは10~250nmであり、更に一層好ましくは10~200nmであり、特に好ましくは10~150nmであり、最も好ましくは10~100nmである。
【0040】
上記アルミノシリケートは、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部をアルミニウム原子に置き換えた構造を持つ化合物であれば特に制限されないが、例えば、下記式(1);
pM O・qAl・rSiO・mHO (1)
(式中、p、q、r、mは、整数を表す。Mは、アルカリ金属原子を表す。)で表すことができる。
【0041】
上記アルミノシリケート含有組成物中のケイ素原子の含有割合は、アルミニウム原子100モル%に対して、1~1000モル%であることが好ましい。
上記アルミノシリケート含有組成物は、アルミノシリケート、水溶性高分子以外にアルミニウム含有化合物及び/又はケイ素含有化合物を含んでいてもよく、上記ケイ素原子の含有割合は、アルミノシリケート及びケイ素含有化合物におけるケイ素原子の合計量に基づくものであり、上記アルミニウム原子の量はアルミノシリケートにおけるアルミニウム原子の合計量に基づく。
上記ケイ素原子の含有割合としてより好ましくは1~800モル%であり、更に好ましくは10~250モル%であり、特に好ましくは50~150モル%である。
【0042】
上記アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物としては特に制限されないが、例えばアルミノシリケート含有組成物の製造における未反応原料等が挙げられる。
上記アルミニウム含有化合物としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、アルミニウムホルモアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート等が挙げられ、好ましくは硫酸アルミニウムである。
上記ケイ素含有化合物としては、メタケイ酸ナトリウム等のメタケイ酸のアルカリ金属塩、ケイ酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、好ましくはメタケイ酸ナトリウムである。
【0043】
上記アルミノシリケートの含有割合は、アルミノシリケート含有組成物100質量%に対して、0.5~50質量%であることが好ましい。より好ましくは1~50質量%であり、更に好ましくは5~40質量%であり、特に好ましくは5~30質量%である。
【0044】
上記アルミノシリケート含有組成物は、水を含み、上記アルミノシリケートが水100gに対して0.5~50g分散していることが好ましい。より好ましくは1~50gであり、更に好ましくは5~40gであり、特に好ましくは5~30gである。
【0045】
上記アルミノシリケート含有組成物は、水溶性高分子を含むものであり、その含有割合は、アルミノシリケート含有組成物100質量%に対して、0.025~90.9質量%であることが好ましい。より好ましくは1~50質量%であり、更に好ましくは5~40質量%であり、特に好ましくは10~20質量%である。
【0046】
上記水溶性高分子の含有割合はまた、アルミノシリケート、アルミニウム含有化合物及びケイ素含有化合物の合計含有量100質量%に対して、5~1000質量%であることが好ましい。より好ましくは10~500質量%であり、更に好ましくは50~200質量%であり、特に好ましくは75~125質量%である。
【0047】
上記水溶性高分子は、水100gに対して100g溶解させたときの不溶分が50g以下であるものであれば特に制限されないが、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩並びにリン酸エステル基、水酸基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するものであることが好ましい。
中でも好ましくはカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩であり、より好ましくはカルボキシル基又はその塩である。
【0048】
上記水溶性高分子の重量平均分子量は特に制限されないが、1,000~100,000であることが好ましい。より好ましくは2,000~80,000であり、更に好ましくは3,000~50,000であり、特に好ましくは5,000~40,000である。なお、上記水溶性高分子の重量平均分子量は、GPCにより、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
【0049】
上記水溶性高分子がカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩並びにリン酸エステル基、水酸基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有し、かつ、水溶性高分子の重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、上記官能基がアルミノシリケートに吸着し、水溶性高分子の立体反発によりアルミノシリケートをより充分に分散し、アルミノシリケートの凝集をより充分に抑制することができる。これにより、水硬性材料組成物に含まれる水酸化カルシウムが、カルシウムシリケート水和物、カルシウムアルミネート水和物やアルミニウムカルシウムシリケート水和物に変化する速度がより向上し、ポゾラン反応がより促進され、早期強度発現性がより向上する。
【0050】
上記水溶性高分子が、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有する場合、全構造単位100モル%に対して、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩からから選ばれる少なくとも一種有する単量体(以下、酸基を有する単量体ともいう。)由来の構造単位の割合が50~95モル%であることが好ましい。これにより、アルミノシリケートへの吸着性がより向上する。酸基を有する単量体由来の構造単位の割合としてより好ましくは65~95モル%であり、更に好ましくは70~95モル%であり、特に好ましくは80~90モル%である。
【0051】
上記カルボキシル基又はその塩を有する水溶性高分子(以下、カルボン酸系水溶性高分子ともいう。)としては、特に制限されないが、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位を有する重合体、カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位を有する重合体が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が好適である。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、イタコン酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物、又は、ハーフエステルが好ましい。
【0052】
上記カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体としては、カルボキシル基を有し、カルボキシル基以外の置換基を有していてもよいベンゼン化合物、及びカルボキシル基を有し、カルボキシル基以外の置換基を有していてもよいナフタレン化合物から選ばれる1種以上の単量体が挙げられ、カルボキシル基を有し、カルボキシル基以外の置換基を有していてもよいベンゼン化合物が好ましい。具体的には、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸、イソフタル酸、オキシナフトエ酸、及びこれらの異性体から選ばれる1種以上の単量体が挙げられ、ヒドロキシ安息香酸、及び安息香酸から選ばれる1種以上の単量体が好ましく、ヒドロキシ安息香酸がより好ましい。
【0053】
上記リン酸基若しくはその塩又はリン酸エステル基を有する水溶性高分子(以下、リン酸系水溶性高分子ともいう。)としては、特に制限されないが、下記式(2);
-OPO (2)
(式中、Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、有機アミン基、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。)で表される基を有することが好ましい。
置換基を有していてもよい炭化水素基としては特に制限されないが、例えば芳香族アルコール類及びキノン類由来の基が挙げられる。
【0054】
上記リン酸基若しくはその塩又はリン酸エステル基を有する水溶性高分子は、リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基と芳香族基とを有する単量体(以下、リン酸基含有単量体ともいう)由来の構造単位を有するものであることが好ましい。
中でも下記式(3);
【0055】
【化1】
【0056】
(式中、Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、有機アミン基、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。Qは、直接結合又は2価の連結基を表す。Rは、水素原子、又は、リン酸塩基及びリン酸エステル基以外の置換基を表す。)で表される構造単位を有するものであることがより好ましい。
上記Q-OPO 、Rの結合位置及び結合数は特に制限されず、これらを複数有していてもよい。
【0057】
上記Qは、2価の連結基であれば特に制限されないが、ヘテロ原子を有していてもよい
2価の炭化水素基であることが好ましい。より好ましくは(ポリ)オキシアルキレン基である。オキシアルキレン基の具体例及び好ましい例としては、後述するオキシアルキレン基と同様のものが挙げられ、最も好ましくはオキシエチレン基である。(ポリ)オキシアルキレン基の平均付加モル数は、1~10が好ましく、より好ましくは1~5であり、更に好ましくは1~2であり、最も好ましくは1である。
【0058】
上記Rの置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基等が挙げられる。
【0059】
上記リン酸基含有単量体として具体的には、例えば、フェノキシエタノール、フェノキシジグリコール、(メトキシフェノキシ)エタノール、メチルフェノキシエタノール、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテル、ノニルフェノール、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ナフトール、及び、フルフリルアルコール等の芳香族アルコール類及びキノン類のリン酸化物が挙げられる。
上記リン酸化物として具体的にはフェノキシエタノールホスフェート、フェノキシジグリコールホスフェート、(メトキシフェノキシ)エタノールホスフェート、メチルフェノキシエタノールホスフェート、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテルホスフェート、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテルジホスフェート、及び、ノニルフェノールホスフェート等が挙げられる。
中でも好ましくは、フェノキシエタノールホスフェート、フェノキシジグリコールホスフェート、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテルジホスフェートであり、より好ましくは、フェノキシエタノールホスフェートである。
上記芳香族アルコール類及びキノン類のリン酸化には、リン酸(塩)やポリリン酸(塩)等のリン酸化合物を用いることが好ましい。
【0060】
上記スルホン酸基又はその塩を有する水溶性高分子(以下、スルホン酸系水溶性高分子ともいう。)としては、特に制限されないが、不飽和スルホン酸系単量体由来の構造単位を有する重合体、スルホン酸基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位を有する重合体等が挙げられる。上記スルホン酸基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位を有する重合体としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0061】
上記不飽和スルホン酸系単量体としてはスルホン酸(塩)基とエチレン性不飽和炭化水素基を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0062】
上記スルホン酸基と芳香族基とを有する単量体としては、スルホン酸基を有し、スルホン酸基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物、及びスルホン酸基を有し、スルホン酸基以外の置換基を有してもよいナフタレン化合物から選ばれる1種以上の単量体が挙げられ、スルホン酸基を有し、スルホン酸基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物が好ましい。具体的には、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、及びこれらの異性体から選ばれる1種以上の単量体が挙げられ、ベンゼンスルホン酸、及びフェノールスルホン酸から選ばれる1種以上の単量体が好ましく、フェノールスルホン酸がより好ましい。
【0063】
上記水酸基を有する水溶性高分子としてはポリビニルアルコール及びその変性物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子等が挙げられる。
【0064】
上記水溶性高分子は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらの塩並びにリン酸エステル基、水酸基から選ばれる少なくとも一種の官能基のほかに、更に(ポリ)オキシアルキレン基を有するものであることが好ましい。
水溶性高分子がこれらの基を有するものであることにより、アルミノシリケートの分散性をより向上させ、ポゾラン反応がより促進され、早期強度発現性がより向上する。
【0065】
上記(ポリ)オキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~8のアルキレンオキシドが挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記(ポリ)オキシアルキレン基が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、(ポリ)アルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0066】
上記オキシアルキレン基の平均付加モル数nは、1~500であることが好ましい。この平均付加モル数が大きいほど、得られる重合体の親水性が向上し、分散性能が向上する傾向があり、500以下であれば、共重合反応性が低下することを抑制することができる。平均付加モル数nとして好ましくは2~400であり、より好ましくは5~300であり、更に好ましくは10~200であり、特に好ましくは15~150であり、最も好ましくは20~100である。
【0067】
上記水溶性高分子が(ポリ)オキシアルキレン基を有するものである場合、(ポリ)オキシアルキレン基含有単量体由来の構造単位を有する重合体であることが好ましい。
(ポリ)オキシアルキレン基含有単量体としては特に制限されないが、下記式(4);
【0068】
【化2】
【0069】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(RO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の数である。xは、0~2の数を表す。 yは、0又は1を表す。)で表される化合物や、(ポリ)アルキレングリコール鎖と芳香族基及び/又は複素環式芳香族基とを有する単量体(以下、芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体ともいう)が挙げられる。
【0070】
上記式(4)において、(RO)で表されるオキシアルキレン基の好ましい形態は上述のとおりであり、n1の好ましい範囲は上記nと同様である。
上記式(4)において、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基である。好ましくはR、Rが水素原子であって、Rが水素原子、又は、メチル基である。
【0071】
上記式(4)において、Rは水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基であればよく、炭素原子数1~30の炭化水素基としては、ラジカル重合性の不飽和結合を有しないものが好ましく、炭素原子数1~30のアルキル基(脂肪族アルキル基又は脂環族アルキル基)、炭素原子数6~30のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基が好適であるが、炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が低下するため、Rが炭化水素基の場合の炭素原子数としては、1~22が好ましく、1~18がより好ましく、1~12が更に好ましく、1~4が特に好ましい。また、Rとしては、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基の場合が最も好ましい。
【0072】
上記式(4)において、xは、0~2の数を表し、yは、0又は1を表すが、yが0の場合には、式(4)で表される化合物はエーテル系の単量体となり、この場合、xは2であることが好ましい。また、この場合、Rはメチル基であることがより好ましい。
上記yが1の場合には、式(4)で表される化合物はエステル系の単量体となり、この場合xは0であることが好ましい。また、この場合、Rは水素原子、又は、メチル基であることがより好ましく、更に好ましくは、Rがメチル基である。
上記式(4)において、yが0であり、Rが水素原子である化合物としては、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル等が挙げられる。
【0073】
上記式(4)において、yが0であり、Rが炭素原子数1~30の炭化水素基である化合物としては、メトキシ(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル等が挙げられる。
【0074】
上記式(4)において、yが1であり、Rが水素原子である化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0075】
上記式(4)において、yが1であり、Rが炭素原子数1~30の炭化水素基である化合物としては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
エトキシポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基の炭素数が1~30であるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
上記式(4)で表される化合物として好ましくは、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。
【0077】
上記芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体としては、上述の芳香族アルコール;アニリン等の芳香族アミンにアルキレンオキシドを付加させた化合物が挙げられる。好ましくは、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ナフトール、及び、フルフリルアルコール等の芳香族アルコール類にアルキレンオキシドを付加させた化合物である。
上記芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体由来の構造単位の中でも、下記式(5);
【0078】
【化3】
【0079】
(式中、Qは、直接結合又は2価の連結基を表す。Rは、水素原子、又は、リン酸塩基及びリン酸エステル基以外の置換基を表す。ROは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の数である。)で表される構造単位を有するものであることが好ましい。
【0080】
上記Qにおける2価の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、-NH-、ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基等が挙げられる。ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基は、上記式(3)のQにおけるヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基と同様である。Qとして好ましくは酸素原子、-NH-であり、より好ましくは酸素原子である。
における炭素数1~30の炭化水素基は、上記式(4)のRにおける炭素数1~30の炭化水素基と同様である。
としては水素原子が好ましい。
n2として好ましくは5~200であり、より好ましくは10~150であり、更に好ましくは12~120である。
【0081】
上記芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体としては、2-フェノキシエタノール、フェノキシポリエチレングリコール等が好ましい。
【0082】
上記カルボン酸系水溶性高分子が(ポリ)オキシアルキレン基を有する場合、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(a)と上記式(4)で表される化合物由来の構造単位(b)とを有する重合体、又は、カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位と芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体由来の構造単位とを有する重合体であることが好ましい。
カルボン酸系水溶性高分子が、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位(a)と上記式(4)で表される化合物由来の構造単位(b)とを有する重合体である場合、その他の単量体由来の構造単位(c)を有していてもよい。
【0083】
その他の単量体としては、不飽和カルボン酸系単量体と上記式(4)で表される化合物と共重合可能である限り特に制限されないが、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを1~300モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2~300のポリアルキレングリコールとのジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2~18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2~300のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類
【0084】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4-(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩(有機アンモニウム塩);メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等のジエン類
【0085】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン-ビス-(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-メタクリレート)等のシロキサン誘導体等が挙げられる。
【0086】
上記カルボン酸系水溶性高分子において構造単位(a)の含有割合は、全構造単位100質量%に対して7~50質量%であることが好ましい。より好ましくは10~45質量%であり、更に好ましくは12~30質量%である。
上記カルボン酸系水溶性高分子において構造単位(b)の含有割合は、全構造単位100質量%に対して50~93質量%であることが好ましい。より好ましくは55~90質量%であり、更に好ましくは70~88質量%である。
上記カルボン酸系水溶性高分子において構造単位(c)の割合は、全構造単位100質量%に対して0~40質量%であることが好ましい。より好ましくは0~30質量%であり、更に好ましくは0~20質量%であり、特に好ましくは0~10質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0087】
上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位と上記式(4)で表される化合物由来の構造単位を有する重合体として具体的には、特開平9-86990号公報に記載の如く(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a)、(メタ)アクリル酸系単量体(b)95~2重量%、及び、これらの単量体と共重合可能な他の単量体(c)からなる共重合体;特開2001-220417号公報に記載の如く炭素数5のアルケニル基を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを必須の構成単位として含む共重合体;特開2002-121055号公報に記載の如く炭素数4のアルケニル基を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを必須の構成単位として含む共重合体;特開2002-121056号公報に記載の如く炭素数2または3のアルケニル基を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを必須の構成単位として含む共重合体;特開平10-236858号公報に記載の如く炭素数5のアルケニル基を有する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(I)、不飽和マレイン酸系単量体(II)、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開2004-307590号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノビニルエーテル類由来の構成単位(A)と、不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位(B)、及び、(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリレート類等由来の構成単位(C)とを必須の構成単位として含む共重合体等が挙げられる。
【0088】
上記カルボン酸系水溶性高分子がカルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位と芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体由来の構造単位とを有する重合体である場合、上記カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位と上記式(5)で表される構造単位とを有することが好ましい。
この場合、上記カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位と式(5)で表される構造単位とのモル比(前者/後者)は、0.1~9であることが好ましい。より好ましくは0.25~4である。
【0089】
上記カルボン酸系水溶性高分子がカルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位と芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体由来の構造単位とを有する重合体である場合、カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位、芳香族基含有(ポリ)アルキレングリコール単量体由来の構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、例えば上記スルホン酸基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位、リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基と芳香環族基とを有する単量体由来の構造単位、後述のその他の芳香族基を有する単量体由来の構造単位が挙げられる。上記カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位と上記式(5)で表される構造単位以外のその他の構造単位の割合としては特に制限されないが、上記カルボキシル基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位と上記式(5)で表される構造単位の合計100モル%に対して0~50モル%であることが好ましい。より好ましくは0~40モル%であり、更に好ましくは0~30モル%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0090】
上記リン酸系水溶性高分子が(ポリ)オキシアルキレン基を有する場合、上記式(3)で表される構造単位と上記式(5)で表される構造単位とを有することが好ましい。
この場合、式(3)で表される構造単位と式(5)で表される構造単位とのモル比(式(3)/式(5))は、0.3~4であることが好ましい。より好ましくは0.4~3.5であり、更に好ましくは0.45~3である。
【0091】
上記リン酸系水溶性高分子は、リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基を有する構造単位、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、上記スルホン酸基と芳香族基とを有する単量体由来の構造単位、下記のその他の芳香族基を有する単量体由来の構造単位が挙げられる。
その他の芳香族基を有する単量体としては、後述するアルデヒド化合物と反応可能な、フェノキシアルコール、フェノール、ナフトール、アニリン、ベンゼン-1,2-ジオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、及び2,3-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基を有する構造単位及び(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する構造単位以外のその他の構造単位の割合としては特に制限されないが、リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基を有する構造単位及び(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する構造単位の合計100モル%に対して0~50モル%であることが好ましい。より好ましくは0~40モル%であり、更に好ましくは0~30モル%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0092】
上記芳香族基を有する単量体由来の構造単位を有する重合体において上記構造単位がアルデヒド化合物由来の2価の連結基により結合していることが好ましい。
上記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール等の炭素数1~5のアルキル基とアルデヒド基とを有する化合物:グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。好ましくはホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、パラホルムアルデヒドであり、最も好ましくはホルムアルデヒドである。
【0093】
例えば、上記式(3)で表される構造単位と上記式(5)で表される構造単位とがアルデヒド化合物由来の2価の連結基により結合している形態は下記式(6);
【0094】
【化4】
【0095】
(式中、Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、有機アミン基、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。Q、Qは、同一又は異なって、直接結合又は2価の連結基を表す。Rは、同一又は異なって、水素原子、又は、リン酸塩基及びリン酸エステル基以外の置換基を表す。ROは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の数である。)で示される。
上記リン酸系水溶性高分子等の芳香族基を有する単量体由来の構造単位を有する重合体において各単量体由来の構造単位がメチレン基により結合していることが好ましい。
【0096】
芳香族基を有する単量体由来の構造単位を有するリン酸系水溶性高分子として具体的には、特表2008-517080号公報に記載の如く、下記成分C1、成分C3、及び任意に成分C2からなる重縮合生成物が挙げられる。
〔成分C1〕
5から10の炭素原子又はヘテロ原子を有する芳香族化合物又は複素芳香族化合物であって、該芳香族化合物又は複素芳香族化合物にO原子又はN原子を介して結合される、1分子当たり平均して1から300の、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレン基を含む、芳香族化合物又は複素芳香族化合物
〔成分C2〕
(C2-1)フェノール、(C2-2)フェノールエーテル、(C2-3)ナフトール、(C2-4)ナフトールエーテル、(C2-5)アニリン、(C2-6)フルフリルアルコール、並びに(C2-7)メラミン又はその誘導体、尿素又はその誘導体、及びカルボキサミドからなる群より選択されるアミノプラスト形成剤、からなる群より選択される、任意成分としての少なくとも1つの芳香族化合物
〔成分C3〕
ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、及びベンズアルデヒド、又はその混合物からなる群より選択されるアルデヒド(ここでベンズアルデヒドはさらに、COOMa、SO3Ma、及びPOMaの式で表される酸性基(MはH、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アミン基であり、aは1/2、1、又は2であってもよい)を有してもよい。)
【0097】
上記リン酸系水溶性高分子は、構造中に芳香族基を有しないものであってもよく、このような形態としては、例えば、リン酸基含有単量体として下記式(7)及び/又は(8);
【0098】
【化5】
【0099】
(式中、R、R11、R14は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。OR10、OR12、OR13は、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。n、n、nは、同一又は異なって、1~30の数を表す。Mは、式(6)におけるMと同様である。)で表される単量体由来の構造単位を有するものが挙げられる。
【0100】
構造中に芳香族基を有しないリン酸系水溶性高分子として、例えば、上記式(7)及び/又は(8)で表される単量体由来の構造単位と上記式(4)で表される化合物由来の構造単位とを有する重合体が挙げられる。具体的には例えば、特開2006-052381号公報に記載の如く(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体とリン酸エステル系単量体からなる共重合体等が挙げられる。
【0101】
上記水溶性高分子としては、カルボン酸系水溶性高分子、リン酸系水溶性高分子、スルホン酸系水溶性高分子が好ましい。
カルボン酸系水溶性高分子としては、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル/アクリル酸共重合体、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル/アクリル酸共重合体、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましい。
リン酸系水溶性高分子としては、上記式(6)で表される構造を有する重合体がより好ましい。
スルホン酸系水溶性高分子としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩等がより好ましい。
【0102】
上記水溶性高分子の製造方法としては特に制限されないが、単量体成分を通常用いられる方法で重合することにより製造することができる。
【0103】
本発明のアルミノシリケート含有組成物は、アルミノシリケート、水溶性高分子、アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては特に制限されないが、例えば消泡剤、AE剤他、界面活性剤等が挙げられる。
その他の成分の含有割合としては特に制限されないが、アルミノシリケート含有組成物100質量%に対して、0~20質量%であることが好ましい。より好ましくは0~10質量%であり、更に好ましくは0~5質量%であり、特に好ましくは0~1質量%である。
【0104】
上記界面活性剤としてはアニオン性(系)、カチオン性(系)、ノニオン性(系)、両性の各種界面活性剤、及び、高分子界面活性剤の1種又は2種以上を用いることができる。
上記アニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0105】
上記アニオン系界面活性剤として好適な市販品としては、例えば、ラテムルWX、ラテムル118B、ペレックスSS-H、エマルゲンA-60、B-66、レベノールWZ(花王社製)、ニューコール707SF、ニューコール707SN、ニューコール714SF、ニューコール714SN、AB-26S、ABEX-2010、2020、2030、DSB(ローディア日華社製)等を挙げることができる。
また、これらのノニオンタイプに相当する界面活性剤も使用することができる。
【0106】
上記アニオン系界面活性剤としては、また反応性界面活性剤として、反応性アニオン系界面活性剤、スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤、アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルS-120、S-120A、S-180及びS-180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS-2(商品名、三洋化成工業社製)、アデカリアソープSR-10、SR-20、SR-30(ADEKA社製)等が挙げられる。
アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
更に、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製「エレミノールRS-30」、日本乳化剤社製「アントックスMS-60」等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネー卜塩(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンKH-10」等)等のアリル基を有する硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、花王社製「ラテムルPD-104」等)、1-プロペニル基とポリオキシエチレン基と硫酸アンモニウム塩基とを有する芳香族炭化水素化合物(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンBC-10」等)等も用いることができる。
【0107】
また、上記アニオン系界面活性剤としては、更に反応性界面活性剤として、下記の界面活性剤等も用いることができる。
炭素数3~5の脂肪族不飽和カルボン酸のスルホアルキル(炭素数1~4)エステル塩型界面活性剤、例えば、2-スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3-スルホプロピル(メタ)アクリレートアンモニウム塩等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩型界面活性剤;スルホプロピルマレイン酸アルキルエステルナトリウム塩、スルホプロピルマレイン酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩、スルホエチルフマル酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩等の脂肪族不飽和ジカルボン酸アルキルスルホアルキルジエステル塩型界面活性剤。
【0108】
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物、トリイソプロパノールアミン、ジェファーミン類等が挙げられる。また、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製「アデカリアソープER-20」等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、花王社製「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」等)、1-プロペニル基とポリオキシエチレン基とを有する芳香族化合物(例えば、第一製工業製薬社製、「アクアロンRN-20」等)等の反応性を有するノニオン系界面活性剤も用いることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0109】
上記カチオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0110】
上記両性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0111】
上記高分子界面活性剤としては特に限定されず、例えば、非イオン性高分子界面活性剤として、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記界面活性剤の中でも、環境面からは、非ノニルフェニル型の界面活性剤を用いることが好適である。
【0112】
<アルミノシリケート含有組成物の製造方法>
本発明のアルミノシリケート含有組成物の製造方法は特に制限されないが、水溶性高分子の存在下でアルミニウム含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させて製造することが好ましい。
本発明はまた、アルミノシリケート含有組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、水溶性高分子の存在下でアルミニウム含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる工程(α)を含むアルミノシリケート含有組成物の製造方法でもある。
水溶性高分子、アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物の具体例、好ましい形態は上述のとおりである。
【0113】
上記工程(α)は、水溶性高分子の存在下でアルミニウム含有化合物とケイ素含有化合物とを反応させる限り特に制限されないが、水中で攪拌しながら行うことが好ましい。
これにより、得られるアルミノシリケートの平均粒子径をより好適な範囲とすることができる。
上記工程(α)における原料の添加方法は特に制限されないが、水溶性高分子、アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物を水溶液として混合することが好ましい。
また、上記工程(α)において上記化合物を一括投入する方法であっても、逐次添加する方法であってもよいが、好ましくは、水溶性高分子、アルミニウム含有化合物、ケイ素含有化合物の1又は2成分を含む水溶液に、残りの成分を滴下することが好ましい。
より好ましくは水溶性高分子、アルミニウム含有化合物を含む水溶液に対して、ケイ素含有化合物の水溶液を滴下する方法である。
【0114】
上記工程(α)における水溶性高分子の使用量は、アルミニウム含有化合物及びケイ素含有化合物の合計使用量100質量%に対して、5~1000質量%であることが好ましい。より好ましくは10~500質量%であり、更に好ましくは50~200質量%であり、特に好ましくは75~125質量%である。
【0115】
上記工程(α)に用いる原料におけるケイ素原子の含有割合は、アルミニウム原子100モル%に対して、1~1000モル%であることが好ましい。より好ましくは10~800モル%であり、更に好ましくは50~500モル%であり、特に好ましくは50~300モル%である。
【0116】
上記工程(α)の反応温度は特に制限されないが、10~90℃であることが好ましい。より好ましくは20~80℃である。
【0117】
<硬化促進剤組成物>
本発明のアルミノシリケート含有組成物は、硬化促進剤として、セメントペースト、モルタル、コンクリート等を含む水硬性材料組成物に加えて用いることができる。また、超高強度コンクリートにも用いることができる。
【0118】
本発明はまた、アルミノシリケートを含み、上記アルミノシリケートは、上記の測定方法により測定される平均粒子径が、10~2500nmである硬化促進剤組成物でもある。
上記アルミノシリケートの好ましい形態、平均粒子径の好ましい範囲は上述のとおりである。
【0119】
上記硬化促進剤組成物は更に水溶性高分子を含んでいてもよい。
上記水溶性高分子の具体例、好ましい形態は上述のとおりである。
上記硬化促進剤組成物は、アルミニウム含有化合物及び/又はケイ素含有化合物、上述のその他の成分を含んでいてもよく、これらの具体例、好ましい形態は上述のとおりである。
【0120】
上記硬化促進剤組成物におけるアルミノシリケート、水溶性高分子、その他の成分の含有割合の好ましい範囲は、以下に記載する以外は上述のアルミノシリケート含有組成物におけるこれらの含有割合の好ましい範囲と同様である。
【0121】
上記硬化促進剤組成物が水溶性高分子を含む場合、その含有割合は、硬化促進剤組成物100質量%に対して、0.025~90.9質量%であることが好ましい。より好ましくは1~50質量%であり、更に好ましくは5~40質量%であり、特に好ましくは10~20質量%である。
【0122】
上記硬化促進剤組成物におけるアルミノシリケートの含有割合は、硬化促進剤組成物100質量%に対して、0.05~50質量%であることが好ましい。より好ましくは1~40質量%であり、更に好ましくは2~40質量%であり、特に好ましくは5~30質量%である。
【0123】
<水硬性材料組成物>
本発明はまた、本発明のアルミノシリケート含有組成物及び/又は硬化促進剤組成物と水硬性材料とを含む水硬性材料組成物でもある。
上記水硬性材料組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含む通常用いられるものが好適である。また、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム、石灰石等の微粉体を添加したものであってもよい。
なお、超高強度コンクリートとは、セメント組成物の分野で一般的にそのように称されているもの、すなわち従来のコンクリートに比べて水セメント比を小さくしてもその硬化物が従来と同等又はより高い強度となるようなコンクリートを意味し、例えば、水セメント比が25質量%以下、更に20質量%以下、特に18質量%以下、特に14質量%以下、特に12質量%程度であっても通常の使用に支障をきたすことのない作業性を有するコンクリートとなり、その硬化物が60N/mm以上、更に80N/mm以上、より更に100N/mm以上、特に120N/mm以上、特に160N/mm以上、特に200N/mm以上の圧縮強度を示すことになるものである。
【0124】
本発明の本発明のアルミノシリケート含有組成物及び/又は硬化促進剤組成物の含有量は、特に制限されないが、セメント添加中の固形分(すなわち不揮発分)100質量%中、2質量%以上50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは3質量%以上40質量%以下、更に好ましくは4質量%以上35質量%以下、特に好ましくは5質量%以上30質量%以下である。
【0125】
上記水硬性材料組成物はまた、通常使用される他のセメント分散剤や減水剤を更に含有していてもよく、複数の併用も可能である。他のセメント分散剤(減水剤)としては特に限定されないが、上述の水溶性高分子化合物が挙げられ、中でもカルボン酸系水溶性高分子、リン酸系水溶性高分子、スルホン酸系水溶性高分子が好適である。
これらセメント分散剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
また、本発明の水硬性材料組成物において、必要に応じて、他の添加剤等を含んでいてもよい。他の添加剤等としては、水溶性高分子物質、高分子エマルション、遅延剤、早強剤・促進剤、消泡剤、AE剤、その他界面活性剤、防水剤、防錆剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等を挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0127】
上記セメント分散剤を併用する場合には、使用するセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的に決められないが、上記他の添加剤等と上記セメント分散剤との配合質量の割合は、5~95:95~5であることが好ましい。より好ましくは、10~90:90~10である。
【0128】
上記水硬性材料組成物は、各種水硬性材料、すなわちセメントや石膏等のセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。これらの水硬性組成物の中でも、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も好ましく、上記アルミノシリケート含有組成物及び/又は上記硬化促進剤組成物と、セメントとを含むセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0129】
上記水硬性材料組成物において、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。本発明の水硬性材料組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0130】
上記水硬性材料組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量100~185kg/m、使用セメント量250~800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.12~0.74であることが好ましい。より好ましくは、単位水量120~175kg/m、使用セメント量270~800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.15~0.65である。このように本発明の水硬性材料組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明の水硬性材料組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15~0.5(好ましくは0.15~0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0131】
上記水硬性材料組成物において、上記アルミノシリケートの配合割合としては、例えば、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01~1質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に1質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.05~0.5質量%であり、更に好ましくは0.1~0.4質量%である。なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
<固形分測定方法>
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固形分測定物の質量で除することで固形分を測定する。
【0132】
本発明のアルミノシリケート含有組成物及び/又は硬化促進剤組成物を使用することにより、得られる水硬性材料組成物は早期強度発現性に優れることから、プレキャストセメント(プレキャストコンクリート)に有効に適用できる。本発明の水硬性材料組成物がプレキャスト用セメントに用いられる形態は本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0133】
本発明の水硬性材料組成物の製造方法は特に制限されないが、本発明のアルミノシリケート含有組成物又は上記製造方法で得られたアルミノシリケート含有組成物を水硬性材料に添加して製造することが好ましい。
本発明は更に、水硬性材料組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、本発明のアルミノシリケート含有組成物又は上記製造方法で得られたアルミノシリケート含有組成物を水硬性材料に添加する工程(β)を含む水硬性材料組成物の製造方法でもある。
上記工程(β)におけるアルミノシリケート含有組成物の添加方法は特に制限されないが、アルミノシリケート含有組成物を水等の溶媒に分散させて添加することが好ましい。
【0134】
本発明は更に、水硬性硬化物を製造する方法であって、上記製造方法は、本発明の水硬性材料組成物又は上記製造方法で得られた水硬性材料組成物を硬化する工程(γ)を含む水硬性硬化物の製造方法でもある。
上記硬化工程(γ)は、水硬性材料組成物を15~90℃で硬化する工程であることが好ましい。硬化温度として好ましくは20~85℃であり、より好ましくは30~85℃であり、更に好ましくは35~85℃であり、特に好ましくは40~80℃である。
【0135】
上記水硬性硬化物の製造方法は、上記硬化工程(γ)を湿度40~100%の条件で行うことが好ましい。より好ましくは湿度50~100%であり、更に好ましくは湿度60~100%である。
【0136】
上記硬化工程(γ)は、1段階で行っても、2段階以上で行ってもよいが、2段階で行うことが好ましい。温度15~30℃、湿度40~60%の条件下で1段目、温度40~90℃、湿度60~100%の条件下で2段目を行うことが好ましい。
【0137】
上記水硬性硬化物の製造方法は、上記水硬性材料組成物を型枠に流し込む工程を含むことが好ましく、型枠に流し込む工程後に上記硬化工程(γ)を行うことが好ましい。
【0138】
上記水硬性硬化物の製造方法は、上記硬化工程(γ)を蒸気養生して行うことが好ましい。
【0139】
上記水硬性硬化物の製造方法は、上記硬化工程(γ)を1~10時間行うことが好ましい。より好ましくは1.5~8時間であり、更に好ましくは2~6時間である。
【0140】
本発明は更に、上記アルミノシリケート含有組成物及び/又は上記硬化促進剤組成物と水硬性材料とを含む水硬性材料組成物を15~90℃で硬化する方法でもある。硬化温度として好ましくは20~85℃であり、より好ましくは30~85℃であり、更に好ましくは35~85℃であり、特に好ましくは40~80℃である。
【0141】
本発明は更に、水硬性硬化物の強度を早期に向上させる方法であって、上記方法は、上記アルミノシリケート含有組成物を水硬性材料に添加する工程及び該添加工程で得られた組成物を硬化する工程を含む水硬性硬化物の早期強度向上方法でもある。
上記早期強度向上方法における添加工程及び硬化工程の好ましい形態は、それぞれ、水硬性材料組成物の製造方法における添加工程(β)水及び硬性硬化物の製造方法における硬化工程(γ)と同様である。
【実施例0142】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0143】
<アルミノシリケートの平均粒子径の測定>
初めに得られた水分散体をアドバンテック社製の濾紙 No.2を用いて濾過し、不純物等を取り除き、得られた濾液を用いて以下の操作を行った。
粒子径測定装置を用い、アルミノシリケート含有組成物の固形分0.1質量%の水分散液について動的光散乱法による散乱強度を測定し、Z-平均粒子径を算出した。
装置:Malvern社製Zetasizer Nano
測定温度:20.0℃
測定溶媒:イオン交換水
【0144】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)に以下の測定条件により測定した。
(GPC分析法)
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
標準物質試料液注入量:100μL(重合体濃度0.1質量%の溶離液溶液)
重合体試料液注入量:100μL(重合体濃度0.5質量%の溶離液溶液)
【0145】
(GPC解析条件(重合体の分析)
得られたRIクロマトグラムにおいて、重合体溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、重合体を検出・解析した。ただし、単量体や単量体由来の不純物のピークが重合体ピークに一部重なって測定された場合、それらと重合体の重なり部分の最凹部において垂直分割して重合体部と単量体部や不純物部とを分離し、重合体部のみの分子量・分子量分布を計算した。凹部が無い場合はまとめて計算した。
重合体純分は、RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
重合体純分=(重合体ピーク面積)/(重合体ピーク面積+単量体や不純物のピーク面積)
【0146】
<早期強度評価>
(モルタル試験)
モルタル試料の調製:
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±15%の環境下で行った。モルタル配合は、C/S/W=535/1350/214(g)とした。
ただし、
C:セメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製)
S:細骨材(セメント強さ試験用標準砂、セメント協会製)
W:試料と消泡剤のイオン交換水溶液
とし、Wについては下記実施例、比較例で得られた水硬性材料用添加剤及び消泡剤を含み、イオン交換水中充分に均一溶解させた。
モルタルミキサー(ホバート社製ミキサー、型番:N-50)を用い、混練容器へS及びWを投入し、1速で40秒間混練した。さらに1速で混練しながら、Cを20秒かけて投入した。混練を始めてから60秒後に2速に変更し、さらに30秒間混練した。その後ミキサーを停止し、30秒間モルタルの掻き落としを行い、60秒間静置した。その後、さらに2速で60秒間混練を行い、モルタルを調製した。なお、空気量は消泡剤であるオキシアルキレン系消泡剤を添加して3.0%未満となるように調整した。
【0147】
(圧縮強度の測定)
混練後、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、蒸気養生後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:50mm×100mm
供試体養生(室温養生):温度20℃、湿度50%、恒温恒湿空気養生を12時間行った。
供試体養生(蒸気養生):温度20℃、湿度50%、恒温恒湿空気養生を4時間行った後、恒温恒湿オーブンを用いて温度80℃、湿度98%下でさらに6時間養生を行った。
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
【0148】
<製造例1>
L-アスコルビン酸0.3部を水78.1部に溶解させた溶液(1a)を調製した。3-メルカプトプロピオン酸2.9部を水17.9部に溶解させた溶液(1b)を調製した。アクリル酸(AA)32.8部を水8.2部に溶解させた溶液(1c)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水43.3部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN-50)の80%水溶液302.8部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過酸化水素2%水溶液を13.8部投入した。
30分後、上述の混合溶液(1a)を4.5時間かけて、上述の混合溶液(1b)を3.5時間かけて、上述の混合溶液(1c)を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。 混合溶液(1a)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=7.0まで中和した。このようにして、共重合体(1)を含む重合体溶液を得た。
【0149】
<製造例2>
過流酸ナトリウム1.8部を水33.8部に溶解させた溶液(2a)を調製した
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23)(MPG-23)122.2部、3-メルカプトプロピオン酸3.8部、メタクリル酸(MAA)37.8部を水69.6部に溶解させた溶液(2b)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水131.0部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で93℃に昇温した後、上述の混合溶液(2a)を5時間かけて、上述の混合溶液(2b)を4時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は93℃で一定とした。
混合溶液(2a)の滴下終了後、1時間引き続き93℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=5.0まで中和した。このようにして、共重合体(2)を含む重合体溶液を得た。
【0150】
<製造例3>
L-アスコルビン酸0.3部を水191.2部に溶解させた溶液(3a)を調製した。3-メルカプトプロピオン酸2.2部を水13.5部に溶解させた溶液(3b)を調製した。アクリル酸(AA)32.2部を水8.0部に溶解させた溶液(3c)を調製した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水30.0部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN-50)の80%水溶液209.8部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過酸化水素2%水溶液を12.8部投入した。
30分後、上述の混合溶液(3a)を4.5時間かけて、上述の混合溶液(3b)を3.5時間かけて、上述の混合溶液(3c)を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。 混合溶液(3a)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=7.0まで中和した。このようにして、共重合体(3)を含む重合体溶液を得た。
【0151】
上記製造例1~3で得られた共重合体(1)~(3)の単量体組成、重量平均分子量を表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
<実施例1>
硫酸アルミニウム・14~18水和物(固形分53.9%)9.28gをイオン交換水40.7gに溶解させ、そこに共重合体(1)(固形分55%)を15.6g添加し混合しこれを溶液(A1)とした。次にメタケイ酸ナトリウム・9水和物(固形分42.9%)8.31gをイオン交換水41.7gに溶解させ、これを溶液(B1)とした。室温下で溶液(A1)を攪拌し、そこに溶液(B1)を約10分間かけてゆっくりと滴下することでアルミノシリケート組成物(1)を得た。アルミノシリケートの平均粒子径は51nmであった。
【0154】
<実施例2>
硫酸アルミニウム・14~18水和物(固形分53.9%)9.28gをイオン交換水40.7gに溶解させ、そこに共重合体(2)(固形分45%)を19.0g添加し混合しこれを溶液(A2)とした。次にメタケイ酸ナトリウム・9水和物(固形分42.9%)8.31gをイオン交換水41.7gに溶解させ、これを溶液(B2)とした。室温下で溶液(A2)を攪拌し、そこに溶液(B2)を約10分間かけてゆっくりと滴下することでアルミノシリケート組成物(2)を得た。アルミノシリケートの平均粒子径は270nmであった。
【0155】
<実施例3>
硫酸アルミニウム・14~18水和物(固形分53.9%)9.28gをイオン交換水40.7gに溶解させ、そこに共重合体(3)(固形分40%)を21.4g添加し混合しこれを溶液(A3)とした。次にメタケイ酸ナトリウム・9水和物(固形分42.9%)8.31gをイオン交換水41.7gに溶解させ、これを溶液(B3)とした。室温下で溶液(A3)を攪拌し、そこに溶液(B3)を約10分間かけてゆっくりと滴下することでアルミノシリケート組成物(3)を得た。アルミノシリケートの平均粒子径は32nmであった。
【0156】
<比較例1>
硫酸アルミニウム・14~18水和物(固形分53.9%)9.28gをイオン交換水40.7gに溶解させこれを溶液(A4)とした。次にメタケイ酸ナトリウム・9水和物(固形分42.9%)8.31gをイオン交換水41.7gに溶解させ、これを溶液(B4)とした。室温下で溶液(A4)を攪拌し、そこに溶液(B4)を約10分間かけてゆっくりと滴下することでアルミノシリケート組成物(4)を得た。アルミノシリケートの平均粒子径は2550nmであった。
【0157】
セメント用混和剤として実施例1~3で得られたアルミノシリケート組成物(1)~(3)、比較例1として共重合体非存在下で調整したアルミノシリケート組成物(4)と共重合体(1)、及び比較例2~4として製造例1~3で得られた共重合体(1)~(3)を表2に記載の割合で用いて上述の方法により圧縮強度を測定した。また、比較例5としてセメント混和剤無添加で圧縮強度測定を行った。結果を表2に示す。強度比は比較例2との比で表した。
【0158】
【表2】