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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161061
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】と体加工システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20241108BHJP
   A22C 15/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B25J13/08 A
A22C15/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141718
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2021032902の分割
【原出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】594083955
【氏名又は名称】花木工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 宏
(72)【発明者】
【氏名】石田 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】三宅 章太
(72)【発明者】
【氏名】向井 誠也
(57)【要約】
【課題】と体の解体作業の際に、所定の加工の対象となる加工部位の位置情報を認識した上で、加工部位を自動的に加工する工程を迅速且つ正確に行う。
【解決手段】と体加工システム10は、トロリ19に保持されながら移動すると体Cの位置情報を検出すると体検出システム17を備えている。と体検出システム17は、トロリ19の移動方向における前方側に接触及び非接触を行えるように変位可能な突起部45Aと、突起部45Aの移動を可能にするアクチュエータと、突起部45Aの移動距離を検出するセンサとを備えている。アクチュエータは、突起部45Aがトロリ19に接触した状態で、突起部45Aをトロリ19の移動方向と逆方向に移動させるように駆動し、この際の駆動力は、突起部45Aをトロリ19に押し当てて突起部45Aとトロリ19の接触状態を維持しながら、トロリ19が前記移動方向に移動可能となるように設定される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
と体の解体処理にて所定の加工を行うと体加工システムにおいて、
前記と体が保持具に保持された状態で、所定の動力により当該保持具を所定の移動方向に移動させる際に、前記と体の位置情報を検出すると体検出システムを備え、
前記と体検出システムは、前記保持具の移動方向における前方側に接触及び非接触を行えるように変位可能な突起部と、当該突起部の移動を可能にするアクチュエータと、前記位置情報を検出するための前記突起部の移動距離を検出するセンサとを備え、
前記アクチュエータは、前記突起部が前記保持具に接触した状態で、前記突起部を前記保持具の移動方向と逆方向に移動させるように駆動し、この際の駆動力は、前記突起部を前記保持具に押し当てて前記突起部と前記保持具の接触状態を維持しながら、前記保持具が前記移動方向に移動可能となるように設定されることを特徴とすると体加工システム。
【請求項2】
と体の解体処理にて所定の加工を行うと体加工システムにおいて、
所定の動力により、前記と体を保持するトロリを所定の移動方向に移動させる際に、前記と体の位置情報を検出すると体検出システムを備え、
前記と体検出システムは、スライド移動する可動部を含む固定シリンダと、前記可動部に一体的に取り付けられ、前記トロリへの接触を可能に動作するトロリ接触シリンダと、前記固定シリンダ及び前記トロリ接触シリンダの駆動を制御するとともに、移動する前記と体の位置情報を求める制御処理手段とにより構成され、
前記固定シリンダは、前記と体の移動方向となる横方向に所定のタイミングで前記トロリ接触シリンダを前記横方向に移動させるアクチュエータに、前記トロリ接触シリンダの前記横方向の移動距離を検出するセンサが設けられた構成をなし、
前記トロリ接触シリンダは、前記トロリの移動方向に対して垂直方向に変位可能に動作する突起部を有し、当該突起部は、前記トロリ接触シリンダの駆動により、前記トロリに接触可能となる突出状態と、前記トロリに接触しない後退状態との間で変位動作し、
前記制御処理手段では、前記突起部を前記突出状態にして前記トロリに押し当てながら前記突起部と前記トロリの接触状態を維持しつつ、前記トロリが前記トロリ接触シリンダと一体的に移動可能となるように、前記固定シリンダ及び前記トロリ接触シリンダの駆動が制御されることを特徴とすると体加工システム。
【請求項3】
前記制御処理手段では、前記と体の加工後に前記突起部を前記後退状態にした上で、前記トロリ接触シリンダを前記トロリの移動方向と逆方向に移動させ、次に加工される前記と体が保持される次の前記トロリに前記突起部を接触させるように、前記固定シリンダ及び前記トロリ接触シリンダの駆動が制御されることを特徴とする請求項2記載のと体加工システム。
【請求項4】
前記制御処理手段では、前記突起部が前記突出状態から前記後退状態に変位する際に、前記固定シリンダの駆動を一旦停止してから、前記後退状態にするように、前記固定シリンダ及び前記トロリ接触シリンダの駆動を制御することを特徴とする請求項3記載のと体加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、と体加工システムに係り、更に詳しくは、と体の解体処理時における所定の加工処理を自動的に行うと体加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に開示されているように、牛、豚等のと体の解体作業における一部の工程を自動化する装置やシステムが種々提案されている。例えば、特許文献1のシステムは、と体レールに沿って吊り下げられたラインを牛と体が通過する際に、当該牛と体を一旦停止して所定の切断処理を行うロボットと、当該切断処理を行うに際し、牛と体の尾骨の位置を検出するセンサとを備えている。当該センサは、カメラを利用して牛と体の尾骨までの距離を計測する測距装置として機能し、当該距離から尾骨の三次元座標データを算出する。なお、特許文献1には、牛と体の中の尾骨自体の認識をどのように行うのかについて、明確な開示は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-537444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、豚や牛のと体の解体処理において、と体の足部分を関節部から切断する工程があるが、関節部の位置や形状には個体差があり、人間の視認による判断でも、と体の表面からでは、関節部の特定が難しい。このことは、と体の解体作業の広範囲の工程における自動化を阻害する一要因となる。
【0005】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、と体の解体作業の際にラインを流れる各と体について、所定の加工の対象となる加工部位の位置情報を認識した上で、当該加工部位を自動的に加工する工程を迅速且つ正確に行うことができると体加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、と体の解体処理にて所定の加工を行うと体加工システムにおいて、前記と体が保持具に保持された状態で、所定の動力により当該保持具を所定の移動方向に移動させる際に、前記と体の位置情報を検出すると体検出システムを備え、前記と体検出システムは、前記保持具の移動方向における前方側に接触及び非接触を行えるように変位可能な突起部と、当該突起部の移動を可能にするアクチュエータと、前記位置情報を検出するための前記突起部の移動距離を検出するセンサとを備え、前記アクチュエータは、前記突起部が前記保持具に接触した状態で、前記突起部を前記保持具の移動方向と逆方向に移動させるように駆動し、この際の駆動力は、前記突起部を前記保持具に押し当てて前記突起部と前記保持具の接触状態を維持しながら、前記保持具が前記移動方向に移動可能となるように設定される、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、豚と体の足部分の関節部のように、正面からの視認のみでは位置の特定に困難が伴う部位であっても、その特徴をより識別し易くするように、異なる角度から複数の画像データを取得し、当該各画像データの画像処理を利用することで、より確実に加工部位を特定することができる。このため、当該加工部位の位置情報からロボット本体の動作制御を行うことで、加工部位の自動加工を迅速且つ正確に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係ると体加工システムの概略正面図である。
図2】前記と体加工システムの概略側面図である。
図3】前記と体加工システムの概略平面図である。
図4】前記と体加工システムの概略構成図である。
図5】(A)は、ロボット本体を主に表す概略側面図であり、(B)は、ロボット本体の概略正面図である。
図6】と体検出システムの概略構成図である。
図7】(A)~(E)は、と体検出システムでの動作説明を行うための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1には、本実施形態に係ると体加工システムの概略正面図が示され、図2には、同概略側面図が示され、図3には、同概略平面図が示されている。これらの図において、前記と体加工システム10は、と体として豚と体C(各図中1点鎖線)の解体処理を行う際に、その左右両足の関節部Jを切断加工する工程を自動化するシステムとして機能する。
【0011】
具体的に、と体加工システム10では、図1中左側の区域となる位置認識ステーション11で、加工対象の豚と体Cの加工部位となる関節部Jの位置認識を行った後、同図中右側の区域となる加工ステーション12で関節部Jの切断加工を行うようになっている。また、と体加工システム10は、位置認識ステーション11から加工ステーション12に向かう方向(図1中右方)に豚と体Cを移動させる既存のと体移動機構14を併用している。なお、本発明はこれに限らず、と体移動機構14をシステム10の一構成とすることもできる。
【0012】
前記と体加工システム10は、詳細な図示を省略したフレームFRに後述する各種装置、部材、機器等が支持されており、複数の豚と体Cが流れるラインでの各豚と体Cの連続加工が可能になっている。
【0013】
このと体加工システム10は、加工対象の豚と体Cの中の関節部Jの位置情報を検出する加工部位検出システム15と、加工部位検出システム15の検出結果に基づき、関節部Jの切断加工を自動的に行うロボットシステム16と、これら加工部位検出システム15及びロボットシステム16での各種処理の実行に際し、豚と体Cの移動状態を検出すると体検出システム17とを備えている。
【0014】
前記と体移動機構14は、特に限定するものではないが、豚と体Cの頭部側及び前足側を下向きとして、豚と体Cを吊り下げた懸垂状態で、図1中左側から右側に向かう横方向に移動可能な構造をなす。このと体移動機構14は、図示しないモータ等の動力を利用して、豚と体Cを保持する保持具を前記横方向(水平方向)に移動させる構造となっている。当該保持具としては、豚と体Cの尻側に取り付けられるフックFと当該フックFが取り付けられるトロリ19とからなる。これら構造は、本発明の本質部分ではないため、詳細な図示説明を省略するが、本実施形態では、横方向に延びるスライダー20に沿ってトロリ19を移動させるボールねじ軸構造が採用される。その他、本発明においては、横方向に延びるベルトのツメにトロリ19を引っ掛けて、当該ベルトを回転させながらトロリ19を移動させる構造を採用することもできる。要するに、本発明のと体移動機構14としては、豚と体Cを横方向に移動させることができる限りにおいて、種々の態様の構造を採用できる。
【0015】
前記トロリ19は、スライダー20に沿って所定間隔毎に複数配置されており、特に限定されるものではないが、複数のトロリ19が存在し、各トロリ19には、それぞれ異なる個体の豚と体Cが懸垂状態で保持されている。なお、図1等においては、図面の錯綜を回避するため、トロリ19及び豚と体Cは、最も上流側となる1箇所を除き図示を省略している。
【0016】
前記加工部位検出システム15は、図4に示されるように、豚と体Cの前足部分を含む所定範囲の画像データを取得する撮像手段22と、画像データに基づく画像処理により、前足部分の関節部Jの位置情報を特定する画像処理手段23とを備えている。
【0017】
前記撮像手段22は、異なる2方向から豚と体Cを撮像することで、関節部Jにおける異なる形状上の特徴が各画像データに表れるように、位置認識ステーション11に固定配置された3Dカメラからなる第1及び第2のカメラ25,26により構成される。
【0018】
前記第1のカメラ25は、図1図3に概略的に示されるように、と体移動機構14により所定位置に到達した豚と体Cを腹部側から見た正面方向から撮像可能に配置されており、豚と体Cの左右上下の位置関係を認識可能となる画像データが取得される。
【0019】
前記第2のカメラ26は、前述の所定位置の豚と体Cを斜め後方から撮像可能となっており、当該方向における関節部Jの斜め後側の形状を認識可能となる画像データが取得される。
【0020】
なお、特に限定されるものではないが、第1及び第2のカメラ25,26は、図3に例示するように、平面視において、30度から60度(好ましくは45度)程度の相対角度を隔てて配置されている。また、第1及び第2のカメラ25,26は、図2に例示するように、地面からの高さ位置が相対的に異なるように配置されている。更に、第1のカメラ25は、豚と体Cに対して水平方向から約30度程度の角度で下向きに撮像可能に配置される一方、第2のカメラ26は、豚と体Cに対して水平方向に撮像可能に配置される態様を例示できる。このように、撮像手段22としては、関節部Jの位置情報を正確に特定する画像処理手段23での後述の処理を行える画像データを取得できる限りにおいて、カメラの更なる増設の他、様々なカメラの適用や配置等、種々の態様を採用可能である。
【0021】
前記画像処理手段23は、と体加工システム10の各種動作制御や演算処理等を行うコンピュータ等からなるコントローラ28に設けられている。
【0022】
この画像処理手段23では、第1及び第2のカメラ25,26でそれぞれ取得された画像データについて、関節部Jの存在位置を推定し、当該存在位置が重複する位置を関節部Jの位置情報として特定する画像処理が行われる。具体的には、RGBデータと深度データからなる画像データを利用し、人工知能の深層学習により学習したデータに基づき、第1及び第2のカメラ25,26で取得した画像データ中において、左右の前足の関節部Jが同時に認識される。そして、第1及び第2のカメラ25,26で撮像されるタイミングでの豚と体Cの位置における左右各関節部Jの3次元位置座標が位置情報として特定される。
【0023】
なお、画像処理手段23での画像処理は、前述のように人工知能を利用した関節部Jの位置情報の特定に限定されず、人工知能を利用しないパターンマッチング等の他の公知の画像処理手法を用いることによる関節部Jの位置情報の特定も可能である。
【0024】
前記ロボットシステム16は、図4に示されるように、所定空間の範囲内で動作するロボット本体30と、ロボット本体30の動作制御を行う動作制御手段31とを備えている。
【0025】
前記ロボット本体30は、加工ステーション12(図1等)に配置されており、図5に示されるように、と体移動機構14により移動する豚と体Cの左右両足の関節部Jの切断加工を可能に動作する構造をなす。つまり、ロボット本体30は、動作制御手段31(図4)による動作制御により、懸垂状態で移動している豚と体Cに追従しながら、各関節部Jを切断可能に動作する。
【0026】
前記ロボット本体30は、と体移動機構14により移動される豚と体Cの腹部側に対向するように配置されており、特に限定されるものではないが、4自由度の動作を可能とする機構により構成される。すなわち、本実施形態のロボット本体30は、3自由度の回転動作を可能にするアーム33と、豚と体Cの移動方向に沿ってアーム33を並進移動させるスライダー34と、アーム33の先端側に取り付けられるエンドエフェクタとして機能し、関節部Jを切断するツールとなる手先ツール35とを備えている。
【0027】
前記アーム33は、図5(B)に示されるように、動作制御手段31で駆動制御されるモータ等の駆動装置Mを動力源として、3箇所の関節部分33Aを介し、構成部材の相対回転を許容する構造となっている。つまり、各関節部分33Aは、相互に平行となる回転軸R回りのみの相対回転を許容し、当該各回転軸は、豚と体Cの移動方向に同一となるスライダーの移動方向に沿う直動軸に常時沿うような構造となっている。従って、アーム33は、豚と体Cの移動方向に直交する面に沿ってのみ移動し、前述の横方向に対する振れを生じさせずに手先ツール35を移動させるようになっている。
【0028】
前記スライダー34は、豚と体Cの移動方向に沿って延びるレール37と、レール37に対して摺動可能に取り付けられるとともに、アーム33を支持する支持体38とを備えている。
【0029】
前記支持体38は、動作制御手段31で駆動制御されるモータ等の駆動装置Mを動力源として、レール37に沿って並進移動(直動)可能になっている。このため、アーム33は、レール37から垂下した状態で、豚と体Cの移動方向に沿って並進可能となるように、レール37に支持されることになる。この構造により、アーム33の基部は、その上方に位置するスライダー34となり、アーム33の下方には、床面との間で所定の空間部分を形成可能となる。当該空間部分を確保することにより、床面の洗浄や清掃を行い易くすることができ、より衛生的なロボットシステム16とすることができる。
【0030】
前記手先ツール35としては、特に限定されるものではないが、関節部Jの切断を行えるカッターや鋸を例示でき、動作制御手段31で駆動制御されるモータ等の駆動装置Mを動力源として、カッター等による切断動作が可能となっている。
【0031】
なお、ロボット本体30の構成部材や部品等は、豚と体Cの切断時に飛散する血液、油等の汚物等や埃が付着しにくい材質を採用すると良い。また、ロボット本体30に対して水等による洗浄等を可能にするよう、各種部材をステンレス等の防錆材で形成し、関節部分33Aに防水構造を採用することもできる。更に、各関節部分33Aの可動領域に塗布される潤滑剤としては、食品安全性の維持の観点からさ食品グリースを採用するとよい。以上により、特別なカバーや器具を併用することなく、食用の豚と体Cの加工に際し、より衛生的なシステムにすることができる。
【0032】
また、ロボット本体30は、前述の構成に限定されるものではなく、同様の加工作業を自動的に行える限りにおいて、自由度数や構造等、種々の公知のロボット構造を採用し、若しくは代替することができる。
【0033】
前記動作制御手段31は、前述のコントローラ28に設けられ、そのコンピュータにより、加工部位検出システム15で検出された関節部Jの位置情報と、と体検出システム17で検出された豚と体Cの移動情報とに基づき、手先ツール35で関節部Jを切断するように、ロボット本体30の動作制御が実行される。
【0034】
前記と体検出システム17は、図6に概念的に示されるように、位置認識ステーション11に存在する豚と体Cの関節部Jの位置情報を取得するタイミングを検出する第1の位置検出部41と、加工ステーション12内を移動している豚と体Cの位置情報を検知する第2の位置検出部42とを備えている。
【0035】
前記第1の位置検出部41は、特に限定されるものではないが、透過型レーザセンサ等からなり、位置認識ステーション11内の所定の位置をトロリ19が通過すると、図示省略した発光部から受光部へのレーザ光が遮断されるように配置される。そして、当該レーザ光の遮断が検知されると、加工部位検出システム15により、対応するトロリ19に保持された豚と体Cの関節部Jの位置検出が、前述の通り行われる。
【0036】
前記第2の位置検出部42は、加工ステーション12内に設置され、所定の動力源によりスライド移動する可動部を含む固定シリンダ44と、当該可動部に一体的に取り付けられ、トロリ19への接触を可能に動作するトロリ接触シリンダ45と、固定シリンダ44及びトロリ接触シリンダ45の駆動を制御するとともに、移動する豚と体Cの位置情報を求める制御処理手段46(図4参照)とにより構成される。
【0037】
前記固定シリンダ44は、詳細な構造を図示省略するが、豚と体Cの移動方向となる横方向に所定のタイミングでトロリ接触シリンダ45を移動させるアクチュエータ(直動アクチュエータ、ロッドレスシリンダ等)に、エンコーダ等のセンサが設けられた構成となっている。この固定シリンダ44では、前記センサによりトロリ接触シリンダ45の横方向の移動距離を検出し、当該移動距離を所定のタイミングでロボットシステム16の動作制御手段31に伝送するようになっている。
【0038】
前記トロリ接触シリンダ45は、豚と体Cに繋がるトロリ19の移動方向に対して垂直方向に変位可能に動作する突起部45Aを有する。突起部45Aは、トロリ接触シリンダ45の駆動により、トロリ19に接触可能となる突出状態と、トロリ19に接触しない後退状態との間で変位動作する。前記突出状態では、後述するように、トロリ19の移動方向における前方側で突起部45Aが接触するように設定される。当該接触した状態では、トロリ接触シリンダ45が、トロリ19とともに一体的に移動する移動体として機能する。
【0039】
前記制御処理手段46は、特に限定されるものではないが、前述のコントローラ28に設けられており、後述するように、そのコンピュータにより、固定シリンダ44及びトロリ接触シリンダ45を駆動制御するとともに、それらの各種動作を伴って、対象となる豚と体Cの移動情報を検出するようになっている。
【0040】
なお、前記と体検出システム17は、前述の構造に限定されず、豚と体Cの移動情報を検出できる限りにおいて、様々なセンサ等の計測機器や計測システムを採用することもできる。
【0041】
次に、前記と体加工システム10での各部動作について説明する。
【0042】
先ず、足部を切断する対象の豚と体Cが、フックFを介して各トロリ19に取り付けられ、と体移動機構14により、各豚と体Cが、ラインの上流側となる位置認識ステーション11から、同下流側の加工ステーション12に向かって横方向に移動する。
【0043】
ここで、と体検出システム17の第2の位置検出部42は、図7(A)に示されるように、加工ステーション12の入口寄りの所定位置が、トロリ接触シリンダ45の移動距離計測の原点となる基準位置Pとされ、トロリ接触シリンダ45は、トロリ19及びその周囲の関連部品に干渉しない条件で、突起部45Aが突出状態とされる。
【0044】
この状態から、位置検出の対象となる豚と体Cを保持するトロリ19が、図7(A)中の破線で示されるように、第1の位置検出部41で通過検知されると、加工部位検出システム15により、当該トロリ19に保持された豚と体Cの関節部Jの位置情報が検出される。
【0045】
その後、図7(B)に示されるように、そのトロリ19の移動方向の前方部分に、突出状態の突起部45Aが当接することとなる。このとき、固定シリンダ44は、トロリ接触シリンダ45をトロリ19の移動方向と逆方向に移動させるように駆動するが、この駆動力よりも、と体移動機構14によるトロリ19の移動力が大きくなるように設定される。
【0046】
従って、図7(C)に示されるように、突起部45Aがトロリ19に押し当てられながら、それらの接触状態が維持され、トロリ接触シリンダ45は、トロリ19と一体的に下流側に移動することになる。この際、固定シリンダ44に設けられたエンコーダ等のセンサにより、トロリ接触シリンダ45の基準位置Pからの移動距離Lが計測される。これにより、トロリ接触シリンダ45と一体的に移動しているトロリ19に保持された豚と体Cの位置情報が経時的に特定される。特に限定されるものではないが、この位置情報は、と体加工システム10内の所定位置を原点とする絶対座標系として求められる。
【0047】
その後、第1及び第2の位置検出部41,42で検出された位置情報から、ロボットシステム16の動作制御がなされる。すなわち、ロボットシステム16の動作制御手段31において、第1の位置検出部41で検出された豚と体Cの関節部Jの位置情報と、移動している豚と体Cの経時的な位置情報とを対応させ、豚と体の関節部Jの絶対座標系における経時的な位置情報が算出される。そして、当該経時的な関節部Jの位置情報に基づいて、ロボット本体30の動作制御がなされ、トロリ19とともに移動している豚と体Cの関節部Jを切断するように、ロボット本体30に保持された手先ツール35を所定の軌跡で動作させながら動作させる。なお、関節部Jを切断した後の足部分は、図示省略した回収箱に落下するようになっている。
【0048】
先の豚と体Cの関節部Jの切断後は、その豚と体Cから手先ツール35が、ロボット本体30の動作より、図示省略した洗浄槽の通過等による洗浄作業後、所定位置に退避し、次のトロリ19に保持された豚と体Cの切断作業に備える。
【0049】
加えて、豚と体Cの関節部Jの切断後は、トロリ接触シリンダ45の駆動により、図7(D)に示されるように、突起部45Aが、トロリ19に対して非接触となる後退状態に変位し、この後退状態から、固定シリンダ44の駆動により、トロリ接触シリンダ45がトロリ19の移動方向と逆方向に移動する。なお、突起部45Aを突出状態から後退状態に変位させる際に、突起部45Aのトロリ19に対する押圧力を軽減するため、固定シリンダ44の駆動を一旦停止し、突起部45Aを後退状態にしてから、再度、固定シリンダ44を駆動させても良い。
【0050】
なお、固定シリンダ44の可動範囲の限界となる最下流側の所定位置に、トロリ接触シリンダ45が達した場合には、安全対策として、ロボット本体30の動作を含むと体加工システム10全体の動作を一旦緊急停止するように設定される。
【0051】
そして、図7(D)の破線で示されるように、前述の切断作業後の豚と体Cを保持するトロリ19及びその関連部品等に干渉しない所定時間後に、当該トロリ19の移動方向の後方位置にトロリ接触シリンダ45が移動してから、再度、トロリ接触シリンダ45の駆動により、突起部45Aが突出状態とされる。
【0052】
更に、図7(E)に示されるように、固定シリンダ44の駆動により、トロリ接触シリンダ45が、第1の位置検出部41で位置通過が検出された後行する次のトロリ19に向かって移動する。そして、当該次のトロリ19に、突出状態の突起部45Aが接触したときに、前述の通り、当該トロリ19に保持された豚と体Cの移動情報が特定され、ロボット本体30での切断作業が行われる。以上の動作は、各トロリ19について繰り返し行われ、所定間隔で送られる豚と体Cの足部分の切断加工が、順次自動的に連続して行われる。
【0053】
従って、以上の実施形態によれば、次の各種効果を得ることができる。
【0054】
前記と体移動機構14により、一定間隔に設けられた複数のトロリ19に保持された各豚と体Cに対し、豚と体Cの移動に追従してロボット本体30が動作制御されることにより、ラインを停止することなく、順次加工ステーション12に到達する豚と体Cの関節部Jの位置を正確に把握しながら連続して切断することができる。この結果、前記と体加工システム10では、より迅速な連続加工作業が可能となる。
【0055】
また、加工部位検出システム15では、第1及び第2のカメラ25,26を用いることで、正面視の画像データのみでは形状認識が難しい関節部Jの位置が、関節部Jの形状がはっきり表れる別の角度からの画像データで補完でき、個体でバラつきがあって見分けが難しい関節部Jの自動認識精度をより向上させることができる。特に、本実施形態では、左右前足の関節部Jの認識を同時に行うことができ、より効率的に関節部Jの位置情報を特定することができる。加えて、このような関節部Jの自動認識を画像処理によって行うため、豚と体CへのX線等の照射を行わずに、より簡易な構成で関節部Jの位置情報の取得が可能になる。
【0056】
更に、ロボット本体30のアーム33は、豚と体Cの移動方向に対して垂直となる面に沿う方向の回転運動と、豚と体Cの移動方向に沿う並進運動との動作に限定され、左右方向の揺動を行わない構造となっている。従って、アーム33の基部は、並進するスライダー34となり、アーム33の横に作業者が存在するような場合でも、床面に設置するアームの基部が回転する従来構造のロボットに比べ、作業者がアーム33と不意に衝突する可能性を低減させ、システムの安全性をより向上させることができる。
【0057】
前記実施形態のと体加工システム10の変形例として、以下の各態様を選択又は追加し、若しくは代替して適用することもできる。
【0058】
第1の変形例としては、図示省略しているが、懸垂状態の豚と体Cの移動に伴って発生する豚と体Cの振動等、ロボット本体30による加工を妨げる豚と体Cの動きを規制する動き規制手段を更に設けると良い。この動き規制手段としては、豚と体Cの移動方向に延びるとともに、移動する豚と体Cに接触するベルトを回転させるコンベア装置や、豚と体Cの移動方向に延びる棒状部材等の配置を例示できる。
【0059】
第2の変形例としては、豚と体Cの後足の切断加工を同時に行えるシステム構成を採用することもできる。この構成では、ロボット本体30に、後足を切断する別の手先ツール35を移動させるアーム33を更に設けるとともに、加工部位検出システム15に、後足のカメラ撮像を行う撮像手段22を更に設け、前述と同様の画像処理によって後足の関節部Jの位置情報を特定することで、ロボット本体30で後足も同時に切断加工する態様を例示できる。
【0060】
第3の変形例としては、前記実施形態のと体加工システム10に、ロボットシステム16での加工状態を自動判定する自動判定システムを付加することもできる。当該自動判定システムでは、加工ステーション12の出口側にも、切断加工後の豚と体Cの足部を含む所定範囲を撮像可能なカメラを更に設け、当該カメラによる画像データと、切断加工前に加工部位検出システム15により取得した画像データとを対比する。そして、その加工状態、すなわち、足部の切断加工が完了しているか否かが、公知の画像処理等を用いて画像処理部で自動判定され、その結果がシステム内で管理される。これにより、適正に加工作業が終了したかを自動的に確認でき、その結果をシステムにフィードバックすることが可能になり、豚と体Cにおける解体作業のプロセスの円滑な運用を支援することができる。
【0061】
第4の変形例としては、前述のロボットシステム16に対し、ロボット本体30を横方向に移動させる並進1自由度の構成を省略し、と体移動機構14で、加工ステーション12の所定位置で豚と体Cを一旦停止し、当該位置で静止する豚と体Cに対してロボット本体30の動作による切断加工を行う態様を採用することもできる。この場合、前記と体検出システム17での第2の位置検出部42の構成を簡略若しくは省略することができる。
【0062】
なお、前記実施形態では、と体加工システム10として、豚と体Cの足部の切断を加工対象としているが、本発明はこれに限らず、前記実施形態と本質的に同一の構成により、所望の加工作業に対応する手先ツール35に交換することで、豚と体Cに対するその他種々の加工作業、例えば、首切り、腹割、内臓掻き出しを行うことが同一のシステムで可能になる。また、前記と体加工システム10の他のと体の加工作業への適用も可能である。
【0063】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 と体加工システム
11 位置認識ステーション
12 加工ステーション
15 加工部位検出システム
16 ロボットシステム
17 と体検出システム
19 トロリ(保持具)
22 撮像手段
23 画像処理手段
25 第1のカメラ(カメラ)
26 第2のカメラ(カメラ)
33 アーム
33A 関節部分
34 スライダー
35 手先ツール(ツール)
41 第1の位置検出部
42 第2の位置検出部
44 固定シリンダ(センサ)
45 トロリ接触シリンダ(移動体)
C 豚と体(と体)
F フック(保持具)
J 関節部(加工部位)
R 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7