(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161069
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】危険度合い判定装置、危険度合い判定方法および危険度合い判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241108BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20241108BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241108BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241108BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20241108BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C21/26 C
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141878
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2023116290の分割
【原出願日】2014-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003889
【氏名又は名称】弁理士法人酒井総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沢 進
(72)【発明者】
【氏名】安士 光男
(72)【発明者】
【氏名】福田 達也
(57)【要約】
【課題】取得した生体情報の信頼度を向上でき、信頼できる生体情報を用いて所定区間毎の危険度を精度よく判定できること。
【解決手段】危険度合い判定装置100は、移動体の搭乗者の生体情報を取得する生体情報取得部101と、移動体が所定の速度以下となった第1地点における生体情報取得部101が取得した生体情報と、設定された基準値と、に基づいて、移動体が第1地点に到着するまでの間に移動した所定の区間の危険度合いを判定する判定部102と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の搭乗者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記移動体が所定の速度以下となった第1地点における前記生体情報取得部が取得した生体情報と、設定された基準値と、に基づいて、前記移動体が前記第1地点に到着するまでの間に移動した所定の区間の危険度合いを判定する判定部と、
を備えることを特徴とする危険度合い判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体の消費エネルギーを表示する危険度合い判定装置、危険度合い判定方法および危険度合い判定プログラムに関する。ただし、この発明の利用は、上述した危険度合い判定装置、危険度合い判定方法および危険度合い判定プログラムには限られない。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置の普及に伴い、道路上の危険箇所の情報をナビゲーション用の地図情報に反映させることが知られている。また、車両の運転中に、運転者の心拍数が急激に上昇したような場合には、「ヒヤリハット」と言われる危険な状態が発生しているものと推測することが知られている。
【0003】
従来技術として、運転者の精神状態が反映される生体反応データと、運転者の車両の操作データとを測定し、これらが大きく変化した場合に、危険反応が生じたと判定する技術がある(例えば、下記特許文献1参照。)。また、生体情報の取得方法として、シートに電極を配置して、心臓からの微弱な信号をセンシングする心電センサが開示されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-47914号公報
【特許文献2】特開2009-50679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のような生体情報の取得方法では、車両が走行している場合においては、走行に伴う振動や運転操作等により、発生する人体とセンサ間の接触抵抗の変化によって、ノイズが発生するため、正確に生体情報が取得できない虞がある。これによって危険状態の判定精度も低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる危険度合い判定装置は、移動体の搭乗者の生体情報を取得する生体情報取得部と、前記移動体が所定の速度以下となった第1地点における前記生体情報取得部が取得した生体情報と、設定された基準値と、に基づいて、前記移動体が前記第1地点に到着するまでの間に移動した所定の区間の危険度合いを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項7の発明にかかる危険度合い判定方法は、危険度合い判定装置が実施する危険度合い判定方法において、移動体の搭乗者の生体情報を取得する生体情報取得工程と、前記移動体が所定の速度以下となった第1地点における前記生体情報取得工程で取得した生体情報と、設定された基準値と、に基づいて、前記移動体が前記第1地点に到着するまでの間に移動した所定の区間の危険度合いを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項8の発明にかかる危険度合い判定プログラムは、請求項7に記載の危険度合い判定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる危険度合い判定装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態にかかる危険度合い判定装置の処理内容を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、ナビゲーション装置とサーバとを用いた危険度合い判定のシステム処理例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、地図データ上の危険経路を示す図である。
【
図6】
図6は、リンクへのヒヤリハットスコアの付与例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる危険度合い判定装置、危険度合い判定方法および危険度合い判定プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる危険度合い判定装置の機能的構成を示すブロック図である。危険度合い判定装置100は、生体情報取得部101と、判定部102と、移動情報取得部103と、を有する。このほか、記憶部104と、表示部105と、経路探索部106とを有してもよい。
【0012】
生体情報取得部101は、移動体の搭乗者の生体情報を取得する。生体情報の取得方法は、各種考えられ、この生体情報は、心拍数等、移動体の走行状態に伴い変化する情報を取得する。例えば、センサにより搭乗者の心拍数を検出することができる。
【0013】
判定部102は、移動体の移動時の所定区間における危険度を判定する。この判定部102は、移動体が所定の速度以下となった第1地点で生体情報取得部101が取得した生体情報と、あらかじめ設定された基準値とに基づいて、移動体が第1地点に到着するまでの間に移動した所定の区間(前回停止した第2地点と第1地点との間)の危険度合いを判定する。
【0014】
例えば、生体情報取得部101がセンサにより搭乗者の心拍数を検出する構成とすれば、判定部102は、心拍数の上昇があったとき、対応する所定の区間の危険度が高い(急ブレーキや急ハンドルを行うなど危険な走行状態が生じた)と判断することができるようになる。危険度が高い所定の区間は、いわゆる「ヒヤリハット」が生じやすい区間である可能性が高い。詳細は後述するが、この所定区間の危険度の情報を複数の移動体(危険度合い判定装置100)から収集することによって、さらに危険度の判定の精度を向上できるようになる。
【0015】
上記所定の速度以下、とは、生体情報取得部101が安定して生体情報を取得できる移動体の速度に対応して設定される。例えば、移動体は移動中、所定の速度を超えた走行時には、走行時の振動等により安定して生体情報を取得できない。一方、所定の速度以下、例えば移動体の停止時に取得するようにすれば、走行に伴う振動や運転操作等の影響を受けずに生体情報を安定して取得することができるようになる。
【0016】
上記の基準値は、移動体が第1地点に到着する前に、移動体が所定の速度以下となった別の地点(第2地点)における前記生体情報取得部101が取得した生体情報を用いることができる。
【0017】
移動情報取得部103は、移動体の移動に関する情報(速度、速度情報から算出した加速度等)を取得する。この場合、判定部102は、移動情報取得部103が取得した情報に基づいて、上記所定の区間を特定する。
【0018】
記憶部104は、判定部102が判定した判定結果と、上記所定の区間を対応付けて記憶する。表示部105は、判定部102の判定結果である危険度を表示する。例えば、地図上で危険度合いを段階別の色などを用いて異なる表示態様で表示することができるようになる。
【0019】
経路探索部106は、目的地の設定入力により現在地から目的地までの走行経路を探索し、表示部105等に表示出力する。この経路探索部106は、判定部102の判定結果(危険度合い)に基づいて経路探索することができる。例えば、危険度合いが高い所定の区間を回避した走行経路を探索することができる。
【0020】
図2は、実施の形態にかかる危険度合い判定装置の処理内容を示すフローチャートである。危険度合い判定装置100が実行する処理内容を説明する。はじめに、移動体の移動時の速度が所定の速度以下(例えば停止)であるか判定する(ステップS201)。ここで、所定の速度以下でなければ待機し(ステップS201:Noのループ)、所定の速度以下となれば(ステップS201:Yes)、生体情報取得部101により移動体の搭乗者(例えば、運転者)の生体情報(例えば、運転者の心拍数)を取得する(ステップS202)。
【0021】
次に、判定部102によりステップS202で取得した生体情報の値が前回取得時の生体情報の値から変化があるかを判定する(ステップS203)。ここで、前回取得時の生体情報の値から大きな変化がなければ(ステップS203:No)、ステップS201の処理に戻る。
【0022】
一方、前回取得時の生体情報の値から大きな変化があれば(ステップS203:Yes)、判定部102は、この変化に基づく危険度を判定する(ステップS204)。これにより、生体情報を前回取得時以降、今回取得時までの所定区間についての危険度を判定できる。
【0023】
例えば、前回取得時の心拍数に対し、今回取得した心拍数が大きく増加した場合には、所定区間の危険度が高いと判定する。前回取得時の心拍数に対し、今回取得した心拍数の増加が少ないときには、所定区間の危険度は低いと判定する。なお、判定部102は、前回取得時の心拍数および今回取得した心拍数がいずれも高い場合には、所定区間の危険度が高いと判定することもできる。心拍数は個人差があるため、通常時の心拍数を基準にして増加分に複数の閾値を設定しておけば、危険度についても個人差を考慮して複数段階の危険度を判定できるようになる。
【0024】
上記一連の処理は、所定の速度以下となる毎(例えば停止毎)に実行される。これにより、移動体の移動中において、前回停止から今回停止までの所定区間毎の危険度を順次判定していくことができる。
【0025】
また、生体情報の取得は、移動体の停止時など所定の速度以下となる毎に実行されるから、移動体の走行時の振動等の影響に基づき雑音等を軽減してできるだけ正確な値を取得できるようになる。これにより、取得した生体情報の信頼度を向上できるようになり、信頼できる生体情報を用いて、所定区間毎の危険度を精度よく判定できるようになる。
【0026】
生体情報の変動は、運転ストレスの表れ(例えば心拍数上昇)として捉えることができ
、サーバ等が危険度判定装置から多くの運転者の心拍変動分布を収集し、地図データ上で統計的に処理することにより、危険度合いを地図データ上及び地図表示上で見つけることもできるようになる。その一方で、危険度が少なく運転ストレスの少ない地点やルートを見つけ、運転者に運転ストレスの少ないルートを提示することもできるようになる。
【実施例0027】
以下に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、車両に搭載されサーバと通信可能なナビゲーション装置を危険度合い判定装置100とし、本発明を適用した場合の一例について説明する。例えば、サーバは、ナビゲーション装置300からの情報を収集して地図上での危険度合いを示す危険マップを作成し、ナビゲーション装置300に配信することができる。これらサーバと、複数のナビゲーション装置300とにより危険度合い判定のシステムを構築できる。
【0028】
(ナビゲーション装置のハードウェア構成)
次に、ナビゲーション装置のハードウェア構成について説明する。
図3は、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3において、ナビゲーション装置300は、CPU301、ROM302、RAM303、磁気ディスクドライブ304、磁気ディスク305、光ディスクドライブ306、光ディスク307、音声I/F(インターフェース)308、マイク309、スピーカ310、入力デバイス311、映像I/F312、ディスプレイ313、カメラ314、通信I/F315、GPSユニット316、各種センサ317を備えている。各構成部301~317は、バス320によってそれぞれ接続されている。
【0029】
CPU301は、ナビゲーション装置300の全体の制御を司る。ROM302は、ブートプログラム、データ更新プログラム、地図データ表示プログラム、および上述した危険度合い判定などのプログラムを記録している。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU301は、RAM303をワークエリアとして使用しながら、ROM302に記録された各種プログラムを実行することによって、ナビゲーション装置300の全体の制御を司る。
【0030】
磁気ディスクドライブ304は、CPU301の制御にしたがって磁気ディスク305に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。磁気ディスク305は、磁気ディスクドライブ304の制御で書き込まれたデータを記録する。磁気ディスク305としては、例えば、HD(ハードディスク)やFD(フレキシブルディスク)を用いることができる。
【0031】
また、光ディスクドライブ306は、CPU301の制御にしたがって光ディスク307に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。光ディスク307は、光ディスクドライブ306の制御にしたがってデータが読み出される着脱自在な記録媒体である。光ディスク307は、書き込み可能な記録媒体を利用することもできる。着脱可能な記録媒体として、光ディスク307のほか、MO、メモリカードなどを用いることができる。
【0032】
磁気ディスク305および光ディスク307に記録される情報の一例としては、地図データ、車両情報、道路情報、走行履歴などが挙げられる。地図データは、カーナビゲーションシステムにおいて走行可能距離に関する情報を表示する際に用いられ、建物、河川、地表面などの地物(フィーチャ)を表す背景データ、道路の形状をリンクやノードなどで表す道路形状データなどを含んでいる。ここで、車両情報、道路情報および走行履歴とは、推定消費エネルギー算出の推定式に変数として用いる道路に関するデータである。
【0033】
音声I/F308は、音声入力用のマイク309および音声出力用のスピーカ310に
接続される。マイク309に受音された音声は、音声I/F308内でA/D変換される。マイク309は、例えば、車両のダッシュボード部などに設置され、その数は単数でも複数でもよい。スピーカ310からは、ルート案内などの所定の音声信号を音声I/F308内でD/A変換した音声が出力される。
【0034】
入力デバイス311は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたリモコン、キーボード、タッチパネルなどが挙げられる。入力デバイス311は、リモコン、キーボード、タッチパネルのうちいずれか一つの形態によって実現されてもよいが、複数の形態によって実現することも可能である。
【0035】
映像I/F312は、ディスプレイ313に接続される。映像I/F312は、具体的には、例えば、ディスプレイ313全体を制御するグラフィックコントローラと、即時表示可能な画像情報を一時的に記録するVRAM(Video RAM)などのバッファメモリと、グラフィックコントローラから出力される画像データに基づいてディスプレイ313を制御する制御ICなどによって構成される。
【0036】
ディスプレイ313には、アイコン、カーソル、メニュー、ウインドウ、あるいは文字や画像などの各種データが表示される。ディスプレイ313としては、例えば、TFT液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどを用いることができる。
【0037】
カメラ314は、車両内部あるいは外部の映像を撮影する。映像は静止画あるいは動画のどちらでもよく、例えば、カメラ314によって車両外部を撮影し、撮影した画像をCPU301において画像解析したり、映像I/F312を介して磁気ディスク305や光ディスク307などの記録媒体に出力したりする。
【0038】
通信I/F315は、無線・有線のネットワークに接続され、ナビゲーション装置300およびCPU301のインターフェースとして機能する。ネットワークとして機能する通信網には、公衆回線網や携帯電話網、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN、WAN、CANなどがある。通信I/F315は、例えば、ネットワークモジュールや公衆回線用接続モジュールやETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)ユニット、FMチューナー、VICS(Vehicle Information and Communication System:登録商標)/ビーコンレシーバなどである。
【0039】
GPSユニット316は、GPS衛星からの電波を受信し、車両の現在位置を示す情報を出力する。GPSユニット316の出力情報は、各種センサ317の出力値とともに、CPU301による車両の現在位置の算出に際して利用される。現在位置を示す情報は、例えば、緯度・経度、高度などの、地図データ上の1点を特定する情報である。
【0040】
各種センサ317は、車速センサ、加速度センサ、角速度センサ、傾斜センサなどの、車両の位置や挙動を判断するための情報を出力する。各種センサ317の出力値は、CPU301による車両の現在位置の算出や、速度や方位の変化量の算出に用いられる。
【0041】
図1に示した危険度合い判定装置100の各構成部は、
図3に示したROM302、RAM303、磁気ディスク305、光ディスク307などに記録されたプログラムやデータを用いて、CPU301が所定のプログラムを実行し、ナビゲーション装置300における各部を制御することによってその機能を実現する。また、このナビゲーション装置300は、移動体から経路探索の要求時には、移動体の現在位置と目的地との情報に基づき、CPU301のプログラム実行により経路探索を行う経路探索の機能を有する。
【0042】
(サーバのハードウェア構成)
ナビゲーション装置300と通信可能なサーバについても、
図3と同様の構成を有する。なお、このサーバにおいては、
図3に記載のGPSユニット316、各種センサ317、カメラ314等は不要である。
【0043】
ところで、
図1に示した危険度合い判定装置100の危険度合い判定にかかる機能をサーバが有してもよい。この場合、上述したサーバは、ナビゲーション装置300から移動体が所定の速度以下(例えば停止)となる毎に、移動体の搭乗者(例えば運転者)の生体情報を受信すれば、前回受信時からの変動に基づいてそれまでの区間の危険度を判定することができる。
【0044】
(危険度合い判定のシステム処理例)
図4は、ナビゲーション装置とサーバとを用いた危険度合い判定のシステム処理例を示すフローチャートである。ナビゲーション装置300側の処理とサーバ側の処理とをそれぞれ記載してある。
【0045】
ナビゲーション装置300側の処理は、はじめに、移動体の移動時の速度が所定の速度以下、(この例では停止中)であるか判定する(ステップS401)。移動体が停止中でなければ待機し(ステップS401:Noのループ)、停止中であれば(ステップS401:Yes)、移動体の搭乗者(例えば、運転者)の生体情報として心拍数を取得するとともに、移動体の位置(緯度経度)を検出する(ステップS402)。
【0046】
次に、ナビゲーション装置300は、ステップS402で取得した生体情報の値(心拍数)が前回取得時の生体情報の値(心拍数)から変化があるかを判定する(ステップS403)。ここで、前回取得時の生体情報の値に大きな変化がなければ(ステップS403:No)、ステップS401の処理に戻る。
【0047】
一方、前回取得時の生体情報の値(心拍数)に大きな変化があれば(ステップS403:Yes)、ナビゲーション装置300は、この変化に基づいて危険経路を決定する(ステップS404)。この危険経路は、生体情報を前回取得時以降、今回取得時までの所定区間について危険度が高い危険経路であると決定する。
【0048】
この後、ナビゲーション装置300は、危険経路の情報をサーバに送信し(ステップS405)、移動体の1回の停止中の処理を終了する。
【0049】
サーバ側の処理は、ナビゲーション装置300から送信された危険経路の情報を移動体の停止毎にデータ収集する(ステップS411)。このデータ収集は、異なる複数の移動体のナビゲーション装置300からそれぞれ収集することができる。
【0050】
そして、サーバは、受信した危険経路を地図データ上の位置に重ね、この危険経路から危険エリアを推定する(ステップS412)。危険エリアは、例えば、複数の移動体(ナビゲーション装置300)から送信された危険経路を地図データ上の位置に重ねたときに危険経路の重なり数が多い経路(例えば、重ね合わせで色が濃くなる経路)を含む範囲とする。
【0051】
これにより、地図データ上で危険エリアの範囲を示す危険マップが作成される(ステップS413)。例えば、危険マップ上で危険経路や危険エリアは、視認しやすい赤色等を用いて表示することができる。作成した危険マップは、サーバに接続された複数の移動体(ナビゲーション装置300)や、PC、スマートホンなどに配信することができる。ユーザは、配信された危険マップを参照することにより、実際に移動体の走行時に「ヒヤリ
ハット」が多く発生する危険経路や危険エリアを容易に判別できるようになる。
【0052】
ナビゲーション装置300では、配信された危険マップが示す情報を用いてルート探索や運転者への報知を行うことができる。これにより、ナビゲーション装置300は目的地までの経路探索時に危険経路や危険エリアを避けた予定経路を探索することができると共に燃費のよい走行が行え、事故の低減も可能となる。
【0053】
上記の処理では、ナビゲーション装置300側が危険経路を決定する構成としたが、これに限らず、サーバ側で危険経路の決定を行ってもよい。この場合、ステップS405の処理では、ステップS402で取得・検出した移動体の停止毎の心拍数と移動体の位置(緯度経度)とをサーバに送信する。サーバでは、移動体の停止毎の心拍数の変化(ステップS403)の判断処理を行い、心拍数に大きな変化があれば、この変化に基づいて危険経路を決定する。危険経路は、地図データ上での前回と今回の移動体の位置(緯度経度)に基づき求める。
【0054】
また、上述したナビゲーション装置300からサーバへの危険経路の情報の送信(アップロード)は、移動体の停止中に限らず、随時、定期的、運転者のアップロード操作等各種のタイミングで行ってもよい。
【0055】
また、サーバは、ナビゲーション装置300への危険経路や危険エリアの配信(ダウンロード)の際に、サーバがナビゲーション装置300から取得した移動体の現在地と目的地、および危険経路の算出を行い、危険経路を避けた目的地までの予定経路を探索し、ナビゲーション装置300に配信することもできる。
【0056】
また、サーバが行う情報の集計処理では、上記の各種情報と共に運転者の属性(男性、女性、年齢、運転経験(初心者等)、運送業者等)や移動体の属性(軽車両、普通乗用車両、タクシー、大型トラック、小型トラック、宅配トラック等、バス等)も加えて集計処理してもよい。これにより、移動体の属性に適した危険経路や危険エリアをこの移動体のナビゲーション装置300に配信できる。さらに、運転者の属性や時間別に適した危険経路や危険エリアを報知することもできる。
【0057】
また、上述した処理例では、生体情報として心拍数を用いるが、この心拍数について、心拍数の平均値を求めたり、心拍数の変化率を求めてもよい。また、心拍数と共に速度、速度情報から算出した加速度以外の車両情報(Gセンサ等による移動体の横方向の加速度、縦方向の加速度、ブレーキ操作量、ハンドル操作量等)も同時に取得してもよい。これにより、例えば、加速度変化が大きい地点が急ブレーキや急ハンドル等が行われた地点であると判断でき、危険度をより正確に判断できるようになる。
【0058】
また、同一道路でも、直進、右折、左折等で走行状態は異なる。このため、生体情報とともに、移動体の位置や経路、時間情報、車両速度、加速度情報等は、交差点等の道路形状情報と直進、右折、左折等の車両操作および車両進行状況と共に取得し、直進、右折、左折等の場合に分けてもよい。これにより、直進、右折、左折等に分けて危険度を判断できるようになる。また、取得した各種情報は、地図データ上のリンク情報やノード情報に付与してもよい。
【0059】
(危険経路の判定について)
上述した心拍数を用いた危険度合いの判定例について具体的に説明する。上述した「ヒヤリハット」の事象の抽出には、一拍一拍を毎分の心拍数に換算した瞬時心拍数を用い、瞬時心拍数の増加により危険度を判定する。
【0060】
具体的には、心拍数が増加した「ヒヤリハット」事象発生前の30拍の瞬時心拍数の平均を、事象発生前の平均瞬時心拍数H1として算出する。また、「ヒヤリハット」事象発生後の30拍の瞬時心拍数の平均を、事象発生後の平均瞬時心拍数H2として算出する。そして、心拍数の変化の上昇率=(H2-H1)/(H1+H2)を求める。この心拍数の変化の上昇率は、上述した危険度であり、以下ではヒヤリハットスコアと呼ぶ。
【0061】
ここで、生体情報(心拍数)の変化を検出する場合の基準について説明する。心拍数等の生体情報で状態の変化を判断する基準値は、世の中の平均値等の一定の統計値を基準に一定値を設定する。そして、基準値よりも心拍数が増加した場合、「ヒヤリハット」事象発生と判断する。このほか、測定した値の中で変化がない状態の測定値の平均を基準値に用いてもよい。
【0062】
さらには、これら平均値を基準として一定割合を掛けた値を変化を判断する判定値にしてもよい。また、基準値および判定値は、常に一定値を用いてもよいし、前回の測定値を次の判断の基準に用いるなど順次更新してもよい。また、基準値および判定値は、定期的に更新してもよいし状況に応じて不定期に更新してもよい。リンクやノード等の地点や経路毎に変化させてもよい。また、月日や時刻等の時間情報に応じて変化させてもよい。
【0063】
図5は、地図データ上の危険経路を示す図である。上述した危険度(ヒヤリハットスコア)を対応する道路データ上のリンク情報、あるいはノード情報に付与して、危険経路501を表示することができる。
【0064】
図5に示すように、移動体の2点の停止位置(ノードA-B)間の危険経路501が地図データ上の複数リンク(n1~n4)にまたがる場合には、ヒヤリハットスコアを各リンクやノード等に割り振ってもよい。
【0065】
ナビゲーション装置300(危険度合い判定装置100)の記憶部104は、地図データと危険経路501を記憶する。地図データは、基本的には、交差点に対応するノードと2つの交差点(ノード)を結ぶ道路に対応する道路リンクとの集合から構成されており、地図の表示または目的地までのルート計算などに用いられる。
図5の例では、ノードAとノードBでそれぞれ心拍数を検出した場合、これらノードAとBを結ぶリンクにヒヤリハットスコアを付与する。
【0066】
(複数リンクへのヒヤリハットスコアの付与例)
図6は、リンクへのヒヤリハットスコアの付与例を示す図である。停止したノードA-B間でのリンク1~3に対して図示のようにヒヤリハットスコアを分割して付与する。
【0067】
1走行区間(ノードA-B間)のリンクに付与するヒヤリハットスコアは、リンク毎に一定値のポイントを割り当ててもよいし、生体情報の変化状況に対応してポイント値を変化させて設定してもよい。また地点や時刻、加速度変化やブレーキ操作量、ハンドル操作量、車両加速度等の情報も用いて変化させてもよいし、それらに加え生体情報の変化状況も考慮して変化させてもよい。例えば、1走行区間が複数のリンクで構成される場合、各リンクへのポイント付与はポイントをリンク数で割るなど一定値でもよいし、各リンクの距離や速度に応じて設定するなど変化させてもよい。また、サーバ等を用いた多くのデータの統計処理等により、あるリンクや経路のヒヤリハットが多い場合はその経路やリンクのポイント付与を大きくする等変化させても良い。
【0068】
付与例1では、区間(ノードA-B間)のヒヤリハットスコアが1の場合、3つのリンク1~3に均等に0.33ずつヒヤリハットスコアをポイント付与する。付与例2では、区間(ノードA-B間)のヒヤリハットスコアが2の場合、3つのリンク1~3の距離に
対応して割り当てたもので、リンク1には0.7、リンク2には0.5、リンク3には0.8のヒヤリハットスコア(ポイント)を付与している。
【0069】
なお、1走行区間の複数のノードにヒヤリハットスコアを割り当てる場合、リンク両端の一方のノードに割り当てればよい。
【0070】
このようなリンクあるいはノードに対するヒヤリハットスコアの割り当てにより、ナビゲーション装置300は、危険経路501としてノードあるいはリンク毎の危険度(ヒヤリハットスコア)をサーバに送信する。これにより、サーバでは、複数の移動体(ナビゲーション装置300)から取得した危険経路をノードやリンク単位で集計することができ、ノードやリンク単位で危険度を判定することができるようになる。また、サーバは、ノードやリンク単位で危険経路をナビゲーション装置300に配信することができるようになる。
【0071】
上記の危険経路や危険エリアは、業務用途向けとしては、トラック運行管理者への情報提示、運行管理者や運転者への運行ルート提示に適用できる。また、一般のドライバー向けとして、危険地点報知、危険度の高い地点を回避した危険回避ルートの提示等に適用できる。また、自動運転車両向けとして、危険度の高い地点やルートの情報を利用した危険ルートを回避した安全度の高いルートの提示等に適用できる。このほか、行政サービス向けとして、施設管理者等の施設改良に向けて利用できる情報の提供、警察等への安全向上に向けて利用できる情報の提供(例えば、危険度の高い地点の提示、信号や標識等の検討用情報、注意喚起等)に適用できる。
【0072】
なお、本実施の形態で説明した危険度合い判定の方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD-ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。