(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016107
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】シリコン含有材料を製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C01B 21/068 20060101AFI20240130BHJP
C01B 32/963 20170101ALI20240130BHJP
【FI】
C01B21/068 C
C01B32/963
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185266
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2022506539の分割
【原出願日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】102019211921.2
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510261201
【氏名又は名称】シュミット シリコン テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペトリック, ゲオルギー
(72)【発明者】
【氏名】ハーン, ヨヘム
(72)【発明者】
【氏名】フェイナーグレ, ペーター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリコン含有材料を製造するための方法を提供する。
【解決手段】方法が、(a)ガスを、ガスが少なくとも部分的にプラズマ形態である過熱された状態に変換する工程、(b)過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程を含み、シリコン含有材料が、(c)混合物中のシリコンと直接化学反応させることができるか、又は過熱されたガス及び/又は混合物と接触すると熱的に分解する第二出発材料を混合物に添加する工程によって製造され、(d)工程(a)及び(b)が互いに空間的に分離して実施されることを特徴とする方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有材料を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)ガスを、ガスが少なくとも部分的にプラズマ形態である過熱された状態に変換する工程、
(b)過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程
を含み、
シリコン含有材料が、
(c)混合物中のシリコンと直接化学反応させることができるか、又は過熱されたガス及び/又は混合物と接触すると熱的に分解する第二出発材料を混合物に添加する工程
によって製造され、
(d)工程(a)及び(b)が互いに空間的に分離して実施されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
以下の追加の工程を有する、請求項1に記載の方法:
(a)製造されるシリコン含有材料の分解温度のより高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)混合物中のシリコンを、製造されるシリコン含有材料の分解温度より高い接触温度で第二出発材料と接触させる工程、
(c)シリコンと第二出発材料の接触から生じた混合物を、シリコン含有材料の粒子の製造のために、製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い温度に冷却する工程。
【請求項3】
以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、請求項2に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、過熱されたガスと接触すると炭素を放出する炭素源であること。
【請求項4】
以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、請求項2に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、過熱されたガスと接触すると窒素を放出する窒素源又は窒素であること。
【請求項5】
以下の追加の工程を有する、請求項1に記載の方法:
(a)シリコンの沸点より高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)ガス及びシリコンを含む混合物をシリコンの融点より低い温度に冷却して、第二出発材料と接触させるためのシリコン粒子を製造する工程、
(c)シリコン粒子を、第二出発材料の分解温度より高くかつシリコンの融点より低い接触温度で第二出発材料と接触させる工程。
【請求項6】
以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、請求項5に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特に粒子形態の金属シリコンであること、
(b)第二出発材料が、シリコン粒子と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
【請求項7】
以下の追加の工程を有する、請求項1に記載の方法:
(a)シリコンの融点より高い温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)ガス及びシリコンを含む混合物をシリコンの融点より低い温度に冷却して、第二出発材料と接触させるためのシリコン粒子を製造する工程、
(c)シリコン粒子を、第二出発材料の分解温度より高くかつシリコンの融点より低い温度で第二出発材料と接触させる工程。
【請求項8】
以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、請求項7に記載の方法:
(a)第一出発材料が、モノシランであること、
(b)第二出発材料が、シリコン粒子と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
【請求項9】
以下の追加の工程を有する、請求項1に記載の方法:
(a)シリコンの融点より高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)混合物中のシリコンを、製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い接触温度で、特に製造されるシリコン含有材料の分解温度より低くかつシリコンの融点より高い温度で第二出発材料と接触させる工程。
【請求項10】
以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、請求項2に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、混合物と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
【請求項11】
以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、請求項2に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、混合物と接触すると窒素を放出する窒素源又は窒素であること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載される本発明は、シリコン含有材料を製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン含有材料は、多くの技術分野で極めて重要である。例えば、窒化シリコンは、熱衝撃を受ける構成部品のための材料としての用途を見出されている。炭化シリコンは、その硬さのため、複合材料を含む機械構成部品の製造のための摩耗材として、又は半導体材料として好適である。炭素被覆ナノ又はマイクロスケールのシリコン粒子は、リチウムイオン電池におけるアノード材料としての用途を見出されている。
【0003】
前述のシリコン含有材料の製造は、極めて多様な出発材料から行なわれる。炭素被覆シリコン粒子は、シリコンブロックを粉砕することによって製造され、得られた粒子は、カーボンブラック又は炭素の他の変性物で直接被覆されることができる。あるいは、粒子は、有機ポリマーで被覆されることもでき、それは、次いで酸素非含有条件下で炭化される。窒化シリコンは、通常、1000℃より高い温度で窒素と純粋なシリコンを反応させることによって得られる。炭化シリコンは、通常、アチソン法によって、又は出発材料としてクロロシランを使用した蒸気相からの堆積によって作られる。
【0004】
前述の製造例は、原則として前述の材料の工業的生産のために好適である。しかしながら、材料の各々の製造において同じ出発材料から進めることができることが望ましい。
【0005】
さらに、公知の方法は、特に炭化シリコンの場合には、必要なレベルの純度で前述のシリコン含有材料を必ずしも与えず、従ってこれに関連して改良された製造方法を与えることが望ましいだろう。
【0006】
炭素被覆されたナノ又はマイクロスケールのシリコン粒子の製造の場合には、まず被覆される出発粒子を粉砕操作によって得る必要がないことが望ましいだろう。
【0007】
さらに、エネルギーの見地から前述の材料の製造を最適化することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【0008】
以下に記載される本発明の目的は、この目的のための解決策を提供することである。この解決策は、工業的規模で上述のようなシリコン含有材料を製造するために好適であるべきである。
【0009】
この目的の達成のため、本発明は、請求項1に特定された特徴を有する方法、及び請求項12に特定された特徴を有する装置を提案する。本発明の発展例は、従属請求項の主題である。
具体的には、本願発明によれば、以下の[1]~[15]の構成が提供される。
[1]シリコン含有材料を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)ガスを、ガスが少なくとも部分的にプラズマ形態である過熱された状態に変換する工程、
(b)過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程
を含み、
シリコン含有材料が、
(c)混合物中のシリコンと直接化学反応させることができるか、又は過熱されたガス及び/又は混合物と接触すると熱的に分解する第二出発材料をガス又は混合物に添加する工程
によって製造され、
(d)工程(a)及び(b)が互いに空間的に分離して実施されること
を特徴とする方法。
[2]以下の追加の工程を有する、[1]に記載の方法:
(a)製造されるシリコン含有材料の分解温度のより高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)混合物中のシリコンを、製造されるシリコン含有材料の分解温度より高い接触温度で第二出発材料と接触させる工程、
(c)シリコンと第二出発材料の接触から生じた混合物を、シリコン含有材料の粒子の製造のために、製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い温度に冷却する工程。
[3]以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、[2]に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、過熱されたガスと接触すると炭素を放出する炭素源であること。
[4]以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、[2]に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、過熱されたガスと接触すると窒素を放出する窒素源又は窒素であること。
[5]以下の追加の工程を有する、[1]に記載の方法:
(a)シリコンの沸点より高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)ガス及びシリコンを含む混合物をシリコンの融点より低い温度に冷却して、第二出発材料と接触させるためのシリコン粒子を製造する工程、
(c)シリコン粒子を、第二出発材料の分解温度より高くかつシリコンの融点より低い接触温度で第二出発材料と接触させる工程。
[6]以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、[5]に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特に粒子形態の金属シリコンであること、
(b)第二出発材料が、シリコン粒子と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
[7]以下の追加の工程を有する、[1]に記載の方法:
(a)シリコンの融点より高い温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)ガス及びシリコンを含む混合物をシリコンの融点より低い温度に冷却して、第二出発材料と接触させるためのシリコン粒子を製造する工程、
(c)シリコン粒子を、第二出発材料の分解温度より高くかつシリコンの融点より低い温度で第二出発材料と接触させる工程。
[8]以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、[7]に記載の方法:
(a)第一出発材料が、モノシランであること、
(b)第二出発材料が、シリコン粒子と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
[9]以下の追加の工程を有する、[1]に記載の方法:
(a)シリコンの融点より高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)混合物中のシリコンを、製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い接触温度で、特に製造されるシリコン含有材料の分解温度より低くかつシリコンの融点より高い温度で第二出発材料と接触させる工程。
[10]以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、[2]に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、混合物と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
[11]以下の追加の工程及び/又は特徴の少なくとも一つを有する、[2]に記載の方法:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、混合物と接触すると窒素を放出する窒素源又は窒素であること。
[12]以下の特徴を有する、[1]~[11]のいずれかに記載の方法において粒状Si含有材料を製造するための装置(100):
(a)装置(100)が、ガスを、ガスが少なくとも部分的にプラズマ形態である過熱された状態に変換させることができる手段(106,107)を含むこと、
(b)装置(100)が、反応空間(101)、及びその中に開放する過熱されたガスのための第一供給部(105)を含むこと、
(c)装置(100)が、反応空間(101)中に直接開放する第二供給部(108)を含み、第二供給部(108)を通ってシリコン含有の第一出発材料が反応空間(101)中に供給されてガス及びシリコンを含む混合物を形成できること、
(d)装置(100)が、第三供給部(112)を含み、第三供給部(112)を通って、混合物中のシリコンと直接化学反応させることができるか、又は過熱されたガス及び/又は混合物と接触すると熱的に分解する第二出発材料を装置(100)に供給できること。
[13]以下の追加の工程を有する、[12]に記載の装置:
(a)第三供給部が、反応空間中に開放すること。
[14]以下の追加の工程を有する、[12]又は[13]に記載の装置:
(a)装置が、冷却手段(110,111)を含み、それにより反応空間(101)中に形成された混合物が冷却されることができること。
[15]以下の追加の工程を有する、[14]に記載の装置:
(a)第三供給部(112)が、空間(103)中に開放し、空間(103)を通って冷却手段によって冷却された混合物が流れること。
【0010】
本発明による方法は、普遍的に使用可能であり、様々なシリコン含有材料の製造のために好適であり、それは、各場合において同じ出発材料から進めて材料を製造することを可能にする。この方法は、以下の工程を常に含む:
(a)ガスを、ガスが少なくとも部分的にプラズマ形態である過熱された状態に変換する工程、
(b)過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させてガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(c)第二出発材料をガス又は混合物に添加することによってシリコン含有材料を製造する工程。
【0011】
工程(a)及び(b)は、シリコンの提供のために役立つが、潜在的な共反応体は、工程(c)で与えられ、それはシリコンと反応できるか、又は複合材料を形成できる。第二出発材料は、それが混合物中のシリコンと直接化学反応させることができるか、又は過熱されたガス及び/又は混合物と接触すると熱的に分解するように選択される。
【0012】
後者の場合には、分解は、シリコンと反応できるか又はシリコンと複合材料を形成できる物質又は化学元素を放出する。
【0013】
本発明の方法の特徴は、(d)工程(a)及び(b)が互いに空間的に分離して実施されることである。
【0014】
DE102008059408A1は、過熱されたガス流も導入される反応空間中にモノシラン(SiH4)を噴射することを開示する。ガス流と接触すると、モノシランは、その元素成分に分解される。形成された蒸気シリコンは、凝縮されることができる。凝縮は、液体シリコンの小さな液滴を形成する。液滴は、収集され、かくして得られた液体シリコンは、さらに直接、即ち直ちの冷却なしで処理されることができ、例えばフロートゾーン法又はチヨクラルスキー法で単結晶シリコンに変換されることができる。
【0015】
本発明は、この方法を構築するものであり、この方法の目的は、もはや純粋なシリコンの製造ではない。代わりに、この方法で与えられたシリコンは、シリコン含有材料を与えるためにさらに直接処理される。本発明によれば、この方法は、多くのシリコン含有材料の製造のための均一な出発点として役立つ。
【0016】
シリコンの製造のための基本原理は、DE102008059408A1から採用されている。過熱されたガスは、反応空間中でシリコン含有の第一出発材料と接触され、反応空間では、ガスは、出発材料と接触するとき、その特性に依存して、それを分解するか、又はそれを溶融するか、又はそれを蒸発するために十分に高い温度を持たなければならない。形成されたシリコンは、エネルギー的に有利な方法で、各場合において望まれるシリコン含有材料を与えるようにシリコンを直接与えるためにいずれの場合においても費やさなければならないエネルギーを利用することによってさらに直接処理される。
【0017】
本発明によれば、ここでのガスの加熱、特にプラズマ形成は、第一シリコン含有出発材料との接触が実施される反応空間内では実施されない。代わりに、本発明によれば、プラズマ形成、及びシリコン含有の第一出発材料と過熱されたガスの接触は、DE102008059408A1に既に記載されるように、互いに空間的に分離して実施される。
【0018】
ガスを過熱された状態に変換するため、対応する手段が与えられ、それは、プラズマ発生手段であることが好ましい。これは、形成されるシリコンの希望の純度に依存して選択されることができる。例えば、好適な手段は、誘導結合プラズマの製造のため、特に高純度シリコンの製造のためのものである。一方、低純度のシリコンを得ることは、DCプラズマ発生手段で達成されることができる。後者の場合において、電極間で形成されたアークは、ガスにエネルギーを入力してそれを過熱された状態に変換することを確実にする。
【0019】
DCプラズマ発生手段は、極めて簡単な設計を有するものであることができる。最も簡単な場合には、それらは、光アークの発生のための電極、及び好適な電圧供給源を含むことができ、電極は、加熱されるガスが流れる空間又は開口中に配置されることができる。
【0020】
DCプラズマ発生手段が使用される場合に、加熱とシリコン含有の第一出発材料と過熱されたガスの接触との間の前述の好ましい空間分離によって特に意味されるものは、ガスが最初にアークを通って流れ、アークがガスを加熱するか、又はガスをプラズマに変換し、次いで流れ方向でアークを越えてガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させるということである。構造に関して、これは、DCプラズマ発生手段の電極が反応空間中に開放する供給部に配置されるか、又はDCプラズマ発生手段がこの供給部の上流に接続されることで達成されることが好ましい。これが達成するものは、ガスの加熱又はプラズマ発生がシリコン含有の第一出発材料の供給から分離され、この供給によって悪影響を受けないことである。出願人の知識によれば、これは、工業的規模のプロセスで要求される高処理量のために不可欠である。
【0021】
誘導結合プラズマが使用されるとき、同じ理由のため、シリコン含有の第一出発材料との接触は、使用される誘導コイルの活性の範囲の外側で行なわれる。より好ましくは、ガスは、まず誘導コイルを通って流れ、誘導コイルは、それを加熱し、流れ方向で誘導コイルを越えてシリコン含有の第一出発材料と接触させられる。
【0022】
本発明による一部の好ましい実施形態では、過熱されたガスは、加熱された後、シリコン含有の第一出発材料と接触される前に、比較的低い温度を有する温度制御ガスと過熱されたガスの混合のような好適な技術手段によって実際に冷却される。これは、使用されるシリコン含有の第一出発材料の種類によっては、プラズマの温度がその蒸発又は分解のために必ずしも要求されないためである。温度制御ガスは、反応空間への過熱されたガスのために与えられた供給部の適切な供給点を介して、過熱されたガス中に混合されることができる。
【0023】
さらに、温度制御ガスの助けで第二出発材料の添加後に上記工程(b)から生じた混合物又は上記工程(c)から生じた混合物を冷却することが好ましい。
【0024】
過熱された状態に変換されるガスは、水素もしくはアルゴンのような貴ガスもしくは窒素又は前記ガスの混合物であることが好ましい。好適な例は、アルゴンと水素の混合物で、例えば10容量%対90容量%の割合のものである。
【0025】
過熱されたガスを発生するための装置の助けで、ガスは、1500℃~24000℃、好ましくは2000℃~20000℃、より好ましくは2000℃~15000℃の範囲の温度に加熱されることが好ましい。
【0026】
使用される温度制御ガスは、例えば水素もしくはアルゴンのような貴ガスもしくは窒素又は前述のガスの混合物であることができる。
【0027】
ガスの加熱と、ガスとシリコン含有出発材料の接触との間の空間分離は、プラズマの安定性を損なわずに多量のシリコン含有出発材料を変換できることを確実にする。
【0028】
シリコン含有の第一出発材料はまた、希望の純度に依存して選択されることができる。高い物理的純度の材料の製造のため、好適なシリコン含有の第一出発材料は、特に上述のモノシラン又はトリクロロシラン(SiHCl3)のようなガス状のシリコン含有出発材料である。後者は、モノシランと比較して、それが過熱されたガスとの接触により化学的に攻撃的な分解物を形成するという欠点を有する。モノシランの分解は、対照的にシリコン及び水素のみを形成する。
【0029】
多くの場合において、第一出発材料として粒状金属シリコンから進めることも可能である。これは、特に冶金シリコンの粒子であることができる。もし高い物理的純度の材料が作られるなら、使用される金属シリコンは、代替的にポリシリコン又は結晶シリコンであることができる。金属シリコンは、過熱されたガス、特にプラズマと接触すると溶融又は蒸発する。例えば、粒状シリコンは、キャリアガス流、例えば水素の助けで反応空間中に供給されることができる。
【0030】
使用される粒状シリコン含有出発材料はまた、粒子形態の石英であることもできる。石英は、水素プラズマと接触すると金属シリコンに還元されることができる。
【0031】
原則として、さらに、粒状シリコン含有出発材料として粒状シリコン合金、例えば粒状フェロシリコンを使用することも可能である。
【0032】
「粒状」は、好ましくはシリコン含有の第一出発材料が10nm~100μmの平均サイズを有する粒子の形態であることを意味するものと理解されるべきである。粒状シリコン含有の第一出発材料は、100μmを超えるサイズを有する粒子を含有しないことが好ましい。
【0033】
上記の観察から明らかなように、シリコンは、シリコン含有の第一出発材料と過熱されたガスの接触から生じる混合物中で蒸気形態であることが好ましく、接触状態に依存して、おそらく少なくとも部分的に極めて小さい液滴の形態であることが好ましい。
【0034】
過熱されたガスと第一出発材料が接触され、第二出発材料がガス又は混合物に加えられる、上記の工程(b)及び(c)に関して、多数の好ましい方法がある:
・ 好ましい方法では、第一及び第二出発材料は、過熱されたガスと同時に接触され、例えば過熱されたガスの流れ中に同時に供給される。形成された混合物は、次いでシリコン及び過熱されたガスだけでなく、第二出発材料及び/又はその分解物、及びおそらくシリコンと第二出発材料の反応からの化合物も含む。
・ さらに好ましい方法では、シリコン及び過熱されたガスの混合物がまず形成され、第二出発材料が続く工程でそれに加えられる。
・ 原則として、まず第二出発材料と過熱されたガスの混合物を形成し、続く工程でのみ第一出発材料を加えることが可能である。これは、特に第二出発材料がシリコンとの化学反応に直接入ることができる場合に、即ち、第二出発材料の上流の熱分解に対する必要性がない場合に好ましいかもしれない。
・ 一部の好ましい方法では、過熱された状態に変換されるガスが第二出発材料であること、又は第二出発材料が少なくとも部分的にガスに加えられることも可能である。その場合において、シリコンとの接触は、シリコン含有の第一出発材料と過熱されたガスの接触の直後に行なわれる。
【0035】
炭化シリコン及び窒化シリコンの製造のために特に好適である方法の第一の特に好ましい変形例では、方法は、以下の工程(a)~(c)の少なくとも一つを具備する:
(a)過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させてガスとシリコンを含む混合物を形成することを、製造されるシリコン含有材料の分解温度のより高い接触温度で実施する工程、
(b)混合物中のシリコンを、製造されるシリコン含有材料の分解温度より高い接触温度で第二出発材料と接触させる工程、
(c)シリコンと第二出発材料の接触から生じる混合物を、シリコン含有材料の粒子の製造のため、製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い温度に冷却する工程。
【0036】
より好ましくは、すぐ上の特徴(a)~(c)は、互いに組み合わせて実施される。
【0037】
工程(a)及び(b)は、上述のように(A)同時に又は連続して実施されることができる。後者の場合には、(B)最初に第一出発材料が過熱されたガスに加えられた後、工程(a)から生じた混合物中に第二出発材料を供給するか、又は(C)第二出発材料は、第一出発材料と接触されるとき、過熱されたガスの少なくとも一部である。
【0038】
(A)の場合において、工程(a)及び(b)における接触温度は、第一及び第二出発材料と過熱されたガスの接触から生じる混合物の温度を意味する。
【0039】
(B)の場合において、工程(a)における接触温度は、工程(a)から生じる混合物の温度を意味し、工程(b)における接触温度は、工程(b)から生じる混合物の温度を意味する。好ましくは、工程(a)及び(b)における接触温度は、本質的に同じである。
【0040】
(C)の場合において、工程(a)及び(b)における接触温度は、少なくとも部分的に第二出発材料からなる過熱されたガスと第一出発材料の接触から生じる混合物の温度を意味する。
【0041】
より好ましくは、工程(a)において選択された接触温度は、シリコンの沸点より低く、かつ製造されるシリコン含有材料の分解温度より高い温度である。
【0042】
工程(c)において、シリコンと第二出発材料の接触から生じる混合物は、製造されるシリコン含有材料の分解温度より低く、かつシリコンの融点より高い温度に冷却されることがより好ましい。
【0043】
製造されるシリコン含有材料の分解温度より高い接触温度の選択の結果は、シリコン含有材料の粒子が工程(c)でのみ形成されることができることである。シリコンと第二出発材料の接触から生じる混合物が分解温度より高く維持される時間期間は、工程(c)から生じる粒子のサイズに影響を与えることができる。適用可能な原理は、粒子のサイズが時間の増大とともに増加することである。なぜならおそらく混合物中のシリコン原子がより大きい液滴を形成するように蓄積するからである。
【0044】
温度が工程(a)及び(b)において分解温度より低くならないためには、上述の場合において、各場合に関与される成分の混合比及び出発温度に注意しなければならない。
【0045】
工程(c)は、以下の二つの工程を含むことが好ましい:
・ 第一に、シリコンの融点より高く、かつ製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い温度に混合物を冷却する工程、
・ 第二に、続いて、例えば急冷によってシリコンの融点より低い温度に冷却する工程。
【0046】
第二の工程では、50℃未満の温度に冷却することが好ましい。
【0047】
冷却は、温度制御ガスの助けで実施されることが好ましい。これは、例えばアルゴン又は水素のような中性ガスであることができる。
【0048】
方法の第一の特に好ましい変形例の第一の好ましい発展例では、これは、以下の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)第一出発材料は、粒子形態の金属シラン又はモノシランであり、特にモノシランである、
(b)第二出発材料は、過熱されたガスと接触すると炭素を放出する炭素源である。
【0049】
より好ましくは、上記の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0050】
第一出発材料が粒子形態の金属シリコンであるとき、第一の好ましい発展例では、工程(a)における接触温度は、シリコンの沸点より高い温度であることがより好ましい。
【0051】
より好ましくは、本発明によれば、この発展例では、シリコンは、モノシラン、及び炭素源からの炭素から形成され、これらは、この方法の変形例では炭化シリコンを与えるための条件で、好ましくは化学量論組成SiCで互いに反応する。
【0052】
炭化シリコンの分解温度は、約2830℃である。従って、接触温度は、この発展例では、この値より上であることが好ましい。もしシリコンと炭素を含有する混合物の温度がこの温度より低い値に下がるなら、固体炭化シリコンの形成が始まる。
【0053】
炭素源は、炭化水素、例えばメタン、プロペン、アセチレン及び/又はエテンであることが好ましい。
【0054】
方法の第一の特に好ましい変形例の第二の好ましい発展例では、これは、以下の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)第一出発材料は、粒子形態の金属シラン又はモノシランであり、特にモノシランである、
(b)第二出発材料は、過熱されたガスと接触すると窒素を放出する窒素源又は窒素である。
【0055】
より好ましくは、上記の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0056】
第一出発材料が粒子形態の金属シリコンであるとき、この第二の好ましい発展例でも、工程(a)で設定される接触温度は、シリコンの沸点より高い温度であることがより好ましい。
【0057】
より好ましくは、本発明によれば、この発展例では、シリコンは、モノシランから形成され、これは、次いでこの方法の変形例では窒化シリコンを与えるための条件下で、好ましくは化学量論のSi3N4で窒素と反応する。
【0058】
窒化シリコンの分解温度は、約1900℃である。従って、この発展例における接触温度は、この値より上であることが好ましい。もしシリコン及び窒素を含有する混合物の温度がその温度より低い値に下がるなら、固体窒化シリコンの形成が始まる。
【0059】
窒素源は、例えばアンモニアである。
【0060】
極めて一般的に、本発明の方法、特に上記の方法の第一の特に好ましい変形例によって、シャープな角又は縁を持たず、かつ特に本質的に球形であることを特徴とする粒子を形成することが可能である。もしモノシランが第一出発材料として使用されるなら、これは、分解されてシリコン原子を形成し、それは、次いで凝縮して小さな略球形の液滴を形成する。第一出発材料として粒状金属シリコンから進めると、使用される粒子は、角及び縁が消えるように少なくとも表面で溶融され、好ましくは完全に溶融され、その結果、略球形の液滴になる。形成された液滴は、次いで第二出発材料又は第二出発材料の成分と反応することができる。冷却後、例えば略球形の炭化シリコン又は窒化シリコン粒子になる。
【0061】
極めて小さい直径(最大150nm以下)を有する粒子の製造のため、本発明の方法の全ての変形例では、好ましい実施形態において、モノシランが第一出発材料として使用される。より大きい粒子(10μm以下)の製造のためには、金属シリコンが第一出発材料として使用されることが好ましい。
【0062】
方法の上記の第一の特に好ましい変形例で形成された炭化シリコン及び窒化シリコンは、好ましくは1μm~10μmの範囲のメディアンサイズ(d50)を有する少なくとも略球形の粒子の形で形成されることが好ましい。
【0063】
炭素被覆シリコン粒子の製造のために特に好適である方法の第二の特に好ましい変形例では、方法は、以下の工程(a)~(c)の少なくとも一つを具備する:
(a)シリコンの沸点より高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)ガス及びシリコンを含む混合物をシリコンの融点より低い温度に冷却して、第二出発材料と接触させるためのシリコン粒子を製造する工程、
(c)シリコン粒子を、第二出発材料の分解温度より高くかつシリコンの融点より低い接触温度で第二出発材料と接触させる工程。
【0064】
この変形例では、工程(a)及び(c)は、連続的に実施されることができる。ここで、第一出発材料は、過熱されたガスに加えられた後、工程(a)から生じる混合物を冷却する。その後でのみ、第二出発材料は、第一出発材料と接触させられる。
【0065】
工程(a)における接触温度は、工程(a)から生じる混合物の温度を意味し、工程(c)における接触温度は、工程(c)から生じる混合物の温度を意味する。工程(a)における接触温度は、いかなる場合でも工程(c)における接触温度より高い。
【0066】
シリコンの沸点より高い工程(a)における接触温度の選択の結果は、シリコンが蒸気の形態及び/又は小さな液滴の形態で形成されることができることである。続く冷却は、シリコン粒子を形成するが、これらは、第二出発材料がその表面上で分解できるのに十分に高い温度をなお持つ。形成された炭素は、シリコン粒子の表面上に蓄積し、シリコン-炭素複合粒子が形成される。
【0067】
工程(b)における冷却は、温度制御ガスの助けで実施されることが好ましい。これは、例えばアルゴン又は水素のような中性ガスであることができる。
【0068】
工程(c)の後、例えば急冷によって50℃未満の温度に冷却する。
【0069】
方法の第二の特に好ましい変形例の好ましい発展例では、これは、以下の(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特に粒子形態の金属シリコンであること、
(b)第二出発材料が、シリコン粒子と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
【0070】
より好ましくは、上記の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0071】
より好ましくは、本発明によれば、この発展例では、金属シリコンは、粒子形態で溶融及び/又は蒸発され、炭素は、炭素源から形成される。シリコン及び炭素は、ここでは互いに反応しない。なぜならそれらは、比較的低温で接触させられるからである。代わりに、複合材料が形成される。
【0072】
炭素源は、炭化水素、例えばメタン、プロペン、アセチレン及び/又はエテンであることが好ましい。
【0073】
方法の上記の第二の特に好ましい変形例で形成された炭素被覆シリコン粒子は、好ましくは150nmの最大直径を有する少なくとも略球形の粒子の形態で形成されることが好ましい。
【0074】
第二の変形例と同様に、炭素被覆シリコン粒子の製造のために特に好適である方法の第三の特に好ましい変形例では、方法は、以下の工程(a)~(c)の少なくとも一つを具備する:
(a)シリコンの融点より高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)ガス及びシリコンを含む混合物をシリコンの融点より低い温度に冷却して、第二出発材料と接触させるためのシリコン粒子を製造する工程、
(c)シリコン粒子を、第二出発材料の分解温度より高くかつシリコンの融点より低い接触温度で第二出発材料と接触させる工程。
【0075】
この変形例における工程(a)及び(c)は、連続的に実施されることもできる。ここで、第一出発材料は、まず過熱されたガスに加えられた後、工程(a)から生じる混合物を冷却する。その後でのみ、第二出発材料は、第一出発材料と接触させられる。
【0076】
工程(a)における接触温度は、工程(a)から生じる混合物の温度を意味し、工程(c)における接触温度は、工程(c)から生じる混合物の温度を意味する。工程(a)における接触温度は、いかなる場合においても工程(c)における接触温度より高い。
【0077】
シリコンの融点より高い工程(a)における接触温度の選択の結果は、シリコンが蒸気の形態及び/又は小さな液滴の形態で形成されることができることである。続く冷却は、シリコン粒子を形成するが、これらは、第二出発材料がその表面上で分解できるのに十分に高い温度をなお持つ。形成された炭素は、シリコン粒子の表面上に蓄積し、シリコン-炭素複合粒子が形成される。
【0078】
工程(b)における冷却は、温度制御ガスの助けで実施されることが好ましい。これは、例えばアルゴン又は水素のような中性ガスであることができる。
【0079】
工程(c)の後、例えば急冷によって50℃未満の温度に冷却することが好ましい。
【0080】
方法の第三の特に好ましい変形例の好ましい発展例では、これは、以下の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)第一出発材料が、モノシランであること、
(b)第二出発材料が、シリコンの融点より低い温度に冷却することによって前述の工程(b)で製造されたシリコン粒子と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
【0081】
より好ましくは、上記の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0082】
より好ましくは、本発明によれば、この発展例では、シリコンは、モノシラン、及び炭素源からの炭素から形成される。シリコン及び炭素は、ここでは互いに反応しない。代わりに、複合材料がここでも形成される。
【0083】
炭素源は、炭化水素、例えばメタン、プロペン、アセチレン及び/又はエテンであることが好ましい。
【0084】
方法の上記の第三の特に好ましい変形例で形成された炭素被覆シリコン粒子は、同様に好ましくは150nmの最大直径を有する少なくとも略球形の粒子の形態で形成されることが好ましい。
【0085】
第一の変形例のように炭化シリコン及び窒化シリコンの製造のために特に好適な方法の第四の特に好ましい変形例では、方法は、以下の工程(a)及び(b)の少なくとも一つを具備する:
(a)シリコンの融点より高い接触温度で、過熱されたガスをシリコン含有の第一出発材料と接触させて、ガス及びシリコンを含む混合物を形成する工程、
(b)混合物中のシリコンを、製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い接触温度で、特に製造されるシリコン含有材料の分解温度より低くかつシリコンの融点より高い温度で第二出発材料と接触させる工程。
【0086】
より好ましくは、上記の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0087】
工程(a)及び(b)は、変形例1と同様に(A)同時に又は連続的に実施されることができる。後者の場合には、(B)第一出発材料がまず過熱されたガスに加えられた後、工程(a)から生じる混合物中に第二出発材料を供給するか、又は(C)第二出発材料は、第一出発材料と接触されるとき、過熱されたガスの少なくとも一部である。
【0088】
(A)の場合において、工程(a)及び(b)における接触温度は、第一及び第二出発材料と過熱されたガスの接触から生じる混合物の温度を意味する。
【0089】
(B)の場合において、工程(a)における接触温度は、工程(a)から生じる混合物の温度を意味し、工程(b)における接触温度は、工程(b)から生じる混合物の温度を意味する。工程(a)及び(b)における接触温度は、本質的に同じであることが好ましい。
【0090】
(C)の場合において、工程(a)及び(b)における接触温度は、少なくとも部分的に第二出発材料からなる過熱されたガスと第一出発材料の接触から生じる混合物の温度を意味する。
【0091】
より好ましくは、工程(a)で選択された接触温度は、シリコンの融点より高くかつ2500℃未満の温度である。これは、特に小さな液滴の形態で、おそらく部分的には蒸気形態で工程(a)のシリコンを与える。
【0092】
製造されるシリコン含有材料の分解温度より低い工程(a)における接触温度の選択の結果は、シリコン含有材料の粒子が第二出発材料の添加直後に形成されることができることである。第一出発材料の添加と第二出発材料の添加の間の時間期間は、工程(b)から生じる粒子のサイズに影響を与えることができる。適用可能な原理は、粒子のサイズが時間期間の増加により増大することである。おそらく混合物中のシリコン原子が蓄積してより大きな液滴を形成するためである。
【0093】
工程(c)の後、例えば急冷によって50℃未満の温度に冷却することが好ましい。
【0094】
方法の第四の特に好ましい変形例の第一の好ましい発展例では、方法は、以下の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、混合物と接触すると炭素を放出する炭素源であること。
【0095】
より好ましくは、上記の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0096】
より好ましくは、本発明によれば、この発展例では、シリコンは、モノシラン、及び炭素源からの炭素から形成され、これらは、この方法の変形例では炭化シリコンを与えるための条件で、好ましくは化学量論組成SiCで互いに反応する。
【0097】
炭化シリコンの分解温度は、既に上述したように、約2830℃である。従って、この発展例における工程(a)での好ましい接触温度は、この値より低いことが好ましい。工程(b)では、接触温度は、同様に2500℃の最大値に設定されることが好ましい。従って、この発展例における工程(a)及び(b)での接触温度は、本質的に同じであることが好ましい。工程(a)と(b)の間の冷却は、ここでは要求されない。
【0098】
炭素源は、炭化水素、例えばメタン、プロペン、アセチレン及び/又はエテンであることが好ましい。
【0099】
方法の第四の特に好ましい変形例の第二の好ましい発展例では、これは、以下の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)第一出発材料が、粒子形態の金属シリコン又はモノシラン、特にモノシランであること、
(b)第二出発材料が、混合物と接触すると窒素を放出する窒素源又は窒素であること。
【0100】
より好ましくは、上記の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0101】
より好ましくは、本発明によれば、この発展例では、シリコンは、モノシランから形成され、これは、次いでこの方法の変形例において窒化シリコンを与えるための条件下で、好ましくは化学量論Si3N4で窒素と反応する。
【0102】
窒化シリコンの分解温度は、上で既に述べたように、約1900℃である。従って、記載された第四の好ましい変形例の工程(a)における接触温度は、おそらくこの値より高く、2500℃の好ましい最大値を持つ。それゆえ、窒化シリコンの分解温度より低い工程(b)のために要求される接触温度を達成するために、第四変形例の工程(b)における接触の前に工程(a)から生じる混合物を冷却することが必要であるかもしれない。
【0103】
冷却は、温度制御ガスの助けで実施されることが好ましい。これは、例えばアルゴン又は水素のような中性ガスであることができる。
【0104】
窒素源は、例えばアンモニアである。
【0105】
方法の上記の第四の特に好ましい変形例に形成された炭化シリコン及び窒化シリコンは、好ましくは1μm~10μmの範囲のメディアンサイズ(d50)を有する少なくとも略球形の粒子の形態で形成されることが好ましい。
【0106】
本発明による装置
方法の性能発揮のために好適な装置を以下に記載する。かかる装置は、以下の特徴(a)~(d)によって特徴づけられる:
(a)装置が、ガスを、ガスが少なくとも部分的にプラズマ形態である過熱された状態に変換させることができる手段を含むこと、
(b)装置が、反応空間、及びその中に開放する過熱されたガスのための第一供給部を含むこと、
(c)装置が、反応空間中に直接開放する第二供給部を含み、第二供給部を通ってシリコン含有の第一出発材料が反応空間中に供給されてガス及びシリコンを含む混合物を形成できること、
(d)装置が、第三供給部を含み、第三供給部を通って、混合物中のシリコンと直接化学反応させることができるか、又は過熱されたガス及び/又は混合物と接触すると熱的に分解する第二出発材料を装置中に供給できること。
【0107】
シリコン含有の第一出発材料と過熱されたガスの接触と加熱の空間分離の実施のためにガスを過熱された状態に変換するための手段及びその可能な構成は、本発明の方法と関連して既に記載された。
【0108】
シリコン含有の第一出発材料が過熱されたガスと接触される反応空間は、過熱されたガスによる熱応力に耐えることができるために耐熱性でなければならない。例えば、反応空間は、この目的のため、グラファイトのような熱安定性材料でライニングされるか又はそれからなることができる。特に、反応空間の壁、特に前述の側壁及び前述の封止要素は、かかる材料から少なくとも部分的に又は完全になることができる。代替的に又は追加的に反応空間は、その環境からそれを熱遮蔽する断熱材を含むことができる。
【0109】
過熱されたガスのための第一供給部は、いかなる特別な構成も要求しない。それは、上から鉛直方向に反応空間中に開放することが好ましい。対照的に、第二供給部は、反応空間中に開放するその口が固体シリコン堆積物によってブロックされることを防ぐために特別な構成を持つことが好ましい。
【0110】
それは、反応空間中に直接開放し、それを通って第一出発材料が反応空間中に供給されることができるノズル通路を有するノズルを含むことが好ましい。装置は、それが過熱されたガスから出る熱応力からノズル通路の口開口を保護するように反応空間中への不活性ガスの導入を可能にする手段を含むことが好ましい。不活性ガスは、一種の熱バリヤーを形成し、それは、過熱されたガスからノズル通路の口開口を遮蔽し、従って反応空間に入るシリコン含有の出発材料が口開口で直接分解又は溶融することを防止する。代わりに、シリコン含有の出発材料の分解及び/又は溶融は、口開口から離れた距離で実施されることができる。
【0111】
好ましくは、本発明によれば、使用される不活性ガスは、シリコン含有の出発材料又は形成されたシリコンと、反応空間中に存在する条件下で関連する程度に反応できないガスである。好適なガスは、原則として過熱されたガスを発生するための手段で加熱されるのと同じガス、特に水素、アルゴンのような貴ガス、及びそれらの混合物である。
【0112】
本発明の好ましい発展例では、装置は、以下の特徴(a)~(c)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)ノズルは、第一ノズル通路としてシリコン含有の第一出発材料を供給するためのノズル通路を有する多相ノズルであること、
(b)多相ノズルは、不活性ガスの導入のための手段として、反応空間中に直接開放する第二ノズル通路を含むこと、
(c)第二ノズル通路は、口開口において開放し、第一ノズル通路の口開口を包囲すること。
【0113】
より好ましくは、上記の特徴(a)~(c)は、互いに組み合わせて実施される。このようにして、口開口の熱遮蔽を特にエレガントな方法で実施することが可能である。
【0114】
より好ましくは、第一ノズル通路の口開口は、丸く、特に円形であり、第二ノズル通路の口開口は、環状である。この開口を通って反応空間中に導入された不活性ガスは、反応空間中に流れるシリコン含有の第一出発材料を包囲する環状不活性ガス流を形成する。
【0115】
本発明のさらに好ましい発展例では、装置は、以下の特徴(a)によって特徴づけられる:
(a)第三供給部が、反応空間中に開放すること。
【0116】
この変形例は、第一及び第二出発材料が過熱されたガスと同時に接触されるときに特に好ましい。もし出発材料が対照的に連続的に加えられるなら、第三供給部が反応空間中ではなく反応空間の下流の空間中に開放し、それを通って反応空間に形成されたシリコン含有混合物が流れることがおそらく極めて好ましい。
【0117】
好ましい実施形態では、第三供給部は、第二供給部と同様に設計されることができ、特に以下の特徴(a)~(c)の少なくとも一つを有する:
(a)第一供給部は、第二出発材料を供給するための第一ノズル通路を有する多相ノズルを含むこと、
(b)多相ノズルは、反応空間中に直接開放する第二ノズル通路を含むこと、
(c)第二ノズル通路は、口開口において開放し、第一ノズルの口開口を包囲する、特にそれを環状形態で包囲すること。
【0118】
より好ましくは、上記の特徴(a)~(c)は、互いに組み合わせて実施される。
【0119】
本発明のさらに好ましい発展例では、装置は、以下の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)装置は、反応空間に形成された混合物が冷却されることができる冷却手段を含むこと、
(b)第三供給部は、空間中に開放し、この空間を通って冷却手段によって冷却された混合物が流れること。
【0120】
冷却手段の助けで、反応空間に接続された空間において第二出発材料と接触される前に、反応空間に形成されたシリコン含有混合物を冷却することが可能である。
【0121】
冷却手段は、特に温度制御ガスが反応空間から出る混合物中に供給されることができる供給部であることができる。環ノズルが特に好適であり、それを通って冷却されるべき混合物が流れる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明のさらなる特徴、詳細、及び効果は、請求の範囲及び要約書(それらの両方の文章は、参考として明細書中に組み入れられる)、以下の本発明の好ましい実施形態の記載及び図面から明らかである。図面は、概略形態で示す。
【
図1】
図1は、本発明の装置の好ましい実施形態(断面図)である。
【
図2】
図2は、本発明の装置の好ましい実施形態(断面図)である。
【
図3】
図3は、本発明の装置の好ましい実施形態(断面図)である。
【
図4】
図4は、シリコン含有出発材料を供給するための多相ノズル(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
図1に示された装置100は、三つの連続する空間101,102,及び103を含み、それらは、壁104によって外側を結合され、通路101a及び102aによって互いに接続される。
【0124】
空間101は、過熱されたガスが供給部105によって供給される反応空間である。供給部では、環状電極106及びピン形状電極107を含む手段があり、それらの電極の間に電圧を付与することによってアークが発生しうる。もしガスが供給部105を通って流れるなら、アークは、ガス中へのエネルギー入力をもたらし、ガスを過熱された状態に変換することができる。
【0125】
アークによって加熱されたガスは、反応空間101に軸方向に入り、そこでそれは、シリコン含有の第一出発材料と接触させられることができる。これは、多相ノズルの形態の供給部108を介して反応空間中に供給されることができる。過熱されたガスと第一出発材料が接触させられるとき、ガス及びシリコンを含む混合物が反応空間101に形成される。
【0126】
混合物中のシリコンと化学反応に入ることができる第二出発材料は、供給部109を介して反応空間101中に供給されることができる。これは、例えばアンモニアであることができる。供給部109は、ここでは供給部108と同様に多相ノズルの形態をとることができる。
【0127】
供給部109は、特にシリコン含有材料が炭化シリコン及び窒化シリコンの製造のために特に好適である本発明の方法の上記の第一の特に好ましい変形例に従って製造されるとき、反応空間中に第二出発材料を供給するために利用される。
【0128】
あるいは、供給部109はまた、モノシランを供給するための用途を見出すことができ、それは、装置の処理量を増加するために好ましい。
【0129】
空間102に入る供給部110及び111は、温度制御ガスを供給するための供給部である。これは、反応空間から出るガス混合物を冷却するために役立ちうる。
【0130】
空間103中に開放する供給部112は、第二出発材料を供給するための用途を見出すことができる。これは、特にシリコン含有材料が本発明の方法の上記の第三又は第四の特に好ましい変形例に従って製造されるときに当てはまる。
【0131】
本発明に従って製造されるシリコン含有材料は、通路103aを介して装置100から除去されることができる。
【0132】
図2に示された装置は、少しの点だけが
図1の装置と異なる。例えば、過熱されたガスのための供給部105は、軸方向ではなく、むしろ接線方向に反応空間101中に開放する。さらに、反応空間101中に開放する一つの供給部108だけがシリコン含有の第一出発材料のために与えられる。
【0133】
図3に示された装置100は、本発明の方法の上記の第二の特に好ましい変形例による炭素被覆シリコン粒子の製造のために特に好適である。固体シリコン粒子を供給部108を介して反応空間101中に供給し、それらを供給部105を介して入る過熱されたガスと直接接触させることがここでは可能である。形成された混合物は、メタンのような、供給部112を介して供給される炭素源と空間103で接触させられることができる。しかしながら、前もって、空間102中の混合物は、炭素源の分解温度より高くかつシリコンの融点より低い温度に冷却される。空間103では、炭素源は、混合物中に存在するシリコン粒子の表面で分解され、そこに蓄積して炭素のシェルを形成することができる。
【0134】
図4は、
図1及び2に示された装置に使用可能なシリコン含有出発材料、通常モノシランを供給するための多相ノズル108を示す。ノズル108は、シリコン含有出発材料を供給するのに役立つノズル108のノズル通路113が反応空間101(口開口113a)中に軸方向に直接開放するように装置100の壁104に一体化され、反応空間101の壁104から離間されている。ノズル108は、グラファイトリング115によって包囲された環状絶縁要素114によって壁104から断熱されている。
【0135】
ノズル113の口開口113aが壁104から間隔dで離間された反応空間101中に開放するようにノズル108が反応空間101中に突出することは容易に明らかである。これは、ノズル108のまわりの固体シリコン堆積物の形成を避けることを意図される。
【0136】
ノズル通路113と同様に、多相ノズル108は、第二ノズル通路116を包含する。これも反応空間101(口開口116a)中に軸方向に直接開放する。ノズル通路113及び116は、同心配置で環状通路壁108a及び108bによって画定される。
【0137】
操作時には、不活性ガス(通常、水素)が環状間隙の形態のノズル通路116の口116aを通って反応空間101中に導入される。これは、環状形態のノズル通路113を通って噴射されるシリコン含有出発材料の流れを包囲し、反応空間101内の熱応力からノズル通路113の口開口113aを遮蔽する。