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特開2024-161073電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161073
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20241108BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20241108BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241108BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20241108BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241108BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241108BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241108BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/264
H01M50/209
H01M50/262 S
H01M50/262 M
H01M50/262 Z
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/625
H01M10/6554
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141888
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2021537672の分割
【原出願日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019145726
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
(57)【要約】
【課題】電池セルの積層数が多くなった場合でも、伝熱シートで適切に熱結合状態させて放熱性を確保する。
【解決手段】電源装置100は、外装缶を角型とする複数の電池セル1と、複数の電池セル1を積層した電池積層体10の両側端面を押圧する押圧面21を有する一対のエンドプレート20と、複数の電池セル1の積層方向に沿って延長された板状で、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート20同士を締結する複数の締結部材15と、電池積層体10を上面側に載置して、該電池積層体10を放熱するための放熱プレート50と、放熱プレート50の上面と、電池積層体10の下面との間に介在されて、放熱プレート50と電池積層体10とを熱結合状態とする伝熱シート40とを備える。エンドプレート20の下面であって、伝熱シート40と対向する部位を、伝熱シート40の上面と同じ高さか、これよりも上方に配置している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶を角型とする複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを積層した電池積層体の両側端面を押圧する押圧面を有する一対のエンドプレートと、
前記複数の電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、
前記電池積層体を上面側に載置して、該電池積層体を放熱するための放熱プレートと、
前記放熱プレートの上面と、前記電池積層体の下面との間に介在されて、前記放熱プレートと電池積層体とを熱結合状態とする伝熱シートと、
を備える電源装置であって、
前記エンドプレートの下面の左右端部から金属製のスペーサ部を突出させて、前記エンドプレートの下面を凹部に形成し、
前記スペーサ部同士の間であって、前記エンドプレートの底面と前記放熱プレートの上面との間に、隙間を形成してなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記エンドプレートは、金属で形成されてなる電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記エンドプレートは、前記スペーサ部同士の間であって、前記エンドプレートの底面が、前記二次電池セルの底面よりも上に位置するように配置されてなる電源装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記エンドプレートが、該エンドプレートの下面に前記スペーサ部を一体に形成してなる電源装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記エンドプレートの下面を、前記伝熱シートの端面から離間させてなる電源装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池積層体の中間に介在されて、両側面でそれぞれ電池積層体を中間から押圧する中間プレートを備えてなる電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源装置であって、
前記放熱プレートが、前記中間プレートの位置で分割されてなる電源装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記伝熱シートの上面に、前記電池積層体と摩擦抵抗を低減する低摩擦抵抗領域を設けてなる電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電源装置であって、
前記低摩擦抵抗領域が、伝熱シートと電池積層体の間に介在される、前記伝熱シートよりも摩擦抵抗の少ない摺動シートである電源装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記伝熱シートが、弾性を有する絶縁性の部材で構成されてなる電源装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記放熱プレートが、内部に冷媒の循環経路を備えてなる電源装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一に記載の電源装置を備える車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一に記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、電動車両の駆動用の電源装置や蓄電用の電源装置等に利用されている。このような電源装置は、充放電可能な複数の電池セルを複数枚積層している。また電池セルは、充放電によって外装缶が膨張することが知られている。そこで、電池セルを複数枚積層した電池積層体を、圧縮した状態に締結して保持する。一般的には、図14の斜視図に示すように、電源装置900は角型の外装缶の電池セル901を、絶縁性のスペーサ902と交互に積層した電池積層体の両側の端面に、それぞれエンドプレート903を配置し、エンドプレート903同士を金属製のバインドバー904で締結している。
【0003】
また、このような電源装置では充放電によって電池積層体が発熱するため、放熱機構を設けている。放熱機構としては、電池積層体の下面に伝熱シートを介在させて放熱プレートを設けることが考えられる。
【0004】
一方で、近年の高容量化の要求に伴い、電池積層体を構成する電池セルの積層数が増大する傾向にある。このような構成においては、伝熱シート上に電池積層体を熱結合状態で載置するため、多数の電池セルを積層した状態で圧縮している。しかしながら、電池セルの積層数が多くなると、バインドバー等の締結部材による締結に際して圧縮する際、圧縮の前後で電池積層体の全長の変化が大きくなる。この結果、図15に示すように、最初に電池セルを積層する段階で、特に端部に位置する電池セルが、伝熱シート550の上に乗らない事態が生じうる。これを防ぐためには、長い伝熱シートを用いることが考えられるが、この場合は図16に示すように、電池セル601を積層した電池積層体610を締結して圧縮する際にエンドプレート620が伝熱シート640と干渉して、伝熱シート640にしわが生じて熱結合状態に悪影響が生じる事態が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-84331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一は、電池セルの積層数が多くなった場合でも、伝熱シートで適切に熱結合状態させて放熱性を確保した電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面に係る電源装置は、外装缶を角型とする複数の電池セルと、前記複数の電池セルを積層した電池積層体の両側端面を押圧する押圧面を有する一対のエンドプレートと、前記複数の電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、前記電池積層体を上面側に載置して、該電池積層体を放熱するための放熱プレートと、前記放熱プレートの上面と、前記電池積層体の下面との間に介在されて、前記放熱プレートと電池積層体とを熱結合状態とする伝熱シートとを備える電源装置であって、前記エンドプレートの下面の左右端部から金属製のスペーサ部を突出させて、前記エンドプレートの下面を凹部に形成し、前記スペーサ部同士の間であって、前記エンドプレートの底面と前記放熱プレートの上面との間に、隙間を形成している。
【発明の効果】
【0008】
以上の電源装置によれば、電池積層体を締結部材で締結する際に、電池積層体の両端面をエンドプレートの押圧面で圧縮する作業が、押圧面を伝熱シートの上側に配置したことにより、この伝熱シートで阻害される事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る電源装置を示す斜視図である。
図2図1の電源装置の分解斜視図である。
図3図1の電源装置の模式正面図である。
図4】電池積層体を圧縮する状態を示す図3のIV-IV線における模式断面図である。
図5】変形例に係る伝熱シートを示す拡大断面図である。
図6】実施形態2に係る電源装置を示す斜視図である。
図7図6の電源装置の分解斜視図である。
図8図7の電池積層体を締結する際に圧縮する様子を示す模式断面図である。
図9】変形例に係る電源装置を示す垂直断面図である。
図10】他の変形例に係る電源装置を示す垂直断面図である。
図11】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図12】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図13】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
図14】従来の電源装置を示す分解斜視図である。
図15】多数の電池セルを締結する際に圧縮する様子を示す模式断面図である。
図16】多数の電池セルを締結する際、伝熱シートで圧縮が阻害される様子を示す模式断面図である。
図17図17A図17Bは伝熱シートの端面の形状の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、以下の構成によって特定されてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る電源装置は、前記エンドプレートが、前記押圧面の両側にそれぞれ、前記伝熱シートの厚さ分突出されたスペーサ部を形成している。上記構成により、スペーサ部によって伝熱シートの厚さ分、押圧面を浮かせて放熱シート上に配置することが可能となる。
【0012】
本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記エンドプレートが、前記押圧面とスペーサ部を一体に形成している。
【0013】
また、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記エンドプレートの下面に、前記押圧面とスペーサ部で凹部が形成されている。また前記凹部と前記伝熱シートとの間に、隙間が形成されている。上記構成により、電池積層体の膨張や収縮によってエンドプレートの位置が変位しても、エンドプレートの変位によって伝熱シートに干渉や負荷が加えられる事態を回避できる。
【0014】
さらに、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記エンドプレートの下面を、前記伝熱シートの端面から離間させている。
【0015】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、さらに、前記電池積層体の中間に介在されて、両側面でそれぞれ電池積層体を中間から押圧する中間プレートを備えている。
【0016】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記放熱プレートが、前記中間プレートの位置で分割されている。
【0017】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記伝熱シートの上面に、前記電池積層体と摩擦抵抗を低減する低摩擦抵抗領域を設けている。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記低摩擦抵抗領域が、伝熱シートと電池積層体の間に介在される、前記伝熱シートよりも摩擦抵抗の少ない摺動シートである。上記構成により、伝熱シートの上面において電池積層体を構成する電池セルが膨張、収縮しても、摩擦抵抗の少ない摺動シートを介在させたことで伝熱シートの表面がしわになることを回避し、電池積層体と伝熱シートとの熱結合状態とを維持できる。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記伝熱シートが、弾性を有する絶縁性の部材で構成されている。
【0020】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記放熱プレートが、内部に冷媒の循環経路を備えている。上記構成により、冷媒冷却によって効率良く電池積層体を放熱、冷却できると共に、伝熱シートによって電池積層体と放熱プレートの熱結合状態を好適に維持できる。
【0021】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る車両は、上記いずれかの電源装置を備えている。この車両は、前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える。
【0022】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る蓄電装置は、上記いずれかの電源装置を備えている。この蓄電装置は、前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えている。前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御する。
【0023】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置の製造方法は、外装缶を角型とする複数の電池セルと、前記複数の電池セルを積層した電池積層体の両側端面を押圧する押圧面を有する一対のエンドプレートと、前記複数の電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、前記電池積層体を上面側に載置して、該電池積層体を放熱するための放熱プレートと、前記放熱プレートの上面と、前記電池積層体の下面との間に介在されて、前記放熱プレートと電池積層体とを熱結合状態とする伝熱シートとを備える電源装置の製造方法である。この電源装置の製造方法は、前記放熱プレートの上面に、前記伝熱シートを載置し、さらに前記伝熱シートの上面に、前記電池積層体を載置した状態で、前記電池積層体の各端面を、前記押圧面の下辺が前記伝熱シートの上面と同じ高さかこれよりも上方に配置された前記エンドプレートで、それぞれ押圧する工程と、前記電池積層体が押圧された状態で、前記締結部材で締結する工程とを含む。これにより、電池積層体を締結部材で締結する際に、電池積層体の両端面をエンドプレートの押圧面で圧縮する作業が、押圧面を伝熱シートの上側に配置したことにより、この伝熱シートで阻害される事態を回避できる。
【0024】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置の製造方法は、前記押圧工程において、前記エンドプレートが、前記放熱プレートの上面から、前記伝熱シートの厚さ分、治具により浮かせて保持させている。これにより、治具によって伝熱シートの厚さ分、押圧面を浮かせて放熱シート上に配置することが可能となる。
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0026】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
[実施形態1]
【0027】
本発明の実施形態1に係る電源装置100を、図1図4にそれぞれ示す。これらの図において、図1は実施形態1に係る電源装置100を示す斜視図、図2図1の電源装置100の分解斜視図、図3図1の電源装置100の模式正面図、図4は電池積層体を圧縮する状態を示す図3のIV-IV線における模式断面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層した電池積層体10と、この電池積層体10の両側端面を覆う一対のエンドプレート20と、エンドプレート20同士を締結する複数の締結部材15と、電池積層体10の下面に配置された伝熱シート40と、伝熱シート40の下面に配置された放熱プレート50を備える。放熱プレート50は、この上面に伝熱シート40を介して載置された電池積層体10を冷却する。また伝熱シート40は、放熱プレート50の上面と電池積層体10の下面との間に介在されて、放熱プレート50と電池積層体10との熱結合状態を安定させる。これによって、電池セル1の充放電によって電池積層体10が発熱しても、伝熱シート40を介して放熱プレート50に熱伝導して放熱する。
【0028】
一方で電池セル1は、充放電によって外装缶が膨張、収縮することで、その厚さが変化する。このため、電池セル1を多数積層した電池積層体10の全長が変化する。特に近年の電源装置の高容量化の要求に伴い、電池積層体を構成する電池セルの積層数が増大する傾向にあり、これに伴って電池積層体の変位も大きくなる傾向にある。このように電池セルが膨張や収縮によって放熱プレート50の上面で多少移動しても、熱結合状態を維持する必要がある。
【0029】
電源装置の組み立て時においては、多数の電池セルを積層した電池積層体の両端面を、エンドプレートでそれぞれ押圧した状態で、エンドプレート同士を締結部材で締結している。この際、電池積層体と放熱プレートの熱結合状態を発揮させるため、放熱プレートの上面に伝熱シートを配置し、さらにこの上に電池積層体を載置して、電池積層体を放熱プレート側に押圧した状態として、エンドプレートを締結部材で締結していた。しかしながら、上述の通り電池積層体の全長が電池セルの膨張や収縮によって変化する一方、伝熱シートはこのような熱による全長の変化が殆どない。加えて、電池セルの厚さの製造公差や伝熱シートの全長のばらつきもあり、伝熱シートを電池積層体の全長に合致させることが難しくなる。例えば伝熱シートが電池積層体よりも長くなると、図16の断面図に示すように、放熱プレート650の上面に載置された電池積層体610の端面をエンドプレート620で押圧する際、電池積層体610の下部で伝熱シート640が突出して干渉してしまう。例えば伝熱シート640がエンドプレート620で押し込まれてしわになり、電池積層体610と放熱プレート650との熱結合状態が発揮され難くなる。
【0030】
一方で、このような干渉を避けるために伝熱シートを短く設計すると、図15の断面図に示すように、エンドプレート520と伝熱シート540との干渉は回避されるものの、電池積層体510の端部に位置する電池セル501の下面が、伝熱シート540に接触しなくなって、この電池セル501の放熱性能が低下し、一部の電池セルが劣化し易くなることが考えられる。かといって、伝熱シートの寸法を正確に設計することも困難であり、電池セルの膨張の度合いや製造公差、あるいは伝熱シート自体のばらつきなどの要因のため、現実的でなかった。
【0031】
そこで本実施形態に係る電源装置では、エンドプレート20の下面であって、伝熱シート40と対向する部位を、伝熱シート40の上面と同じ高さか、これよりも上方となるように設計している。このような構成により、電源装置の組み立て時において、電池積層体の両端面をエンドプレート20の押圧面21で圧縮する際、エンドプレート20の下面を伝熱シート40の上面と同じか、ここから浮かせた位置とすることにより、エンドプレート20が伝熱シート40と干渉する事態を回避して、伝熱シート40による電池積層体と放熱プレート50との熱結合状態の信頼性を高めることができる。以下、詳述する。
(電池積層体10)
【0032】
電池積層体10は、図1図2等に示すように、正負の電極端子2を備える複数の電池セル1と、これら複数の電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー(図示せず)を備える。これらのバスバーを介して複数の電池セル1を並列や直列に接続している。電池セル1は、充放電可能な二次電池である。電源装置100は、複数の電池セル1が並列に接続されて並列電池グループを構成すると共に、複数の並列電池グループが直列に接続されて、多数の電池セル1が並列かつ直列に接続される。図1図2に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層して電池積層体10を形成している。また電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート20が配置される。このエンドプレート20同士に、締結部材15の端部を固定して、積層状態の電池セル1を押圧した状態に固定する。
(電池セル1)
【0033】
電池セル1は、幅広面である主面の外形を四角形とし、一定のセル厚さを有する角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。さらに、電池セル1は、充放電できる二次電池であって、リチウムイオン二次電池としている。ただ、本発明は電池セルを角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。電池セルには、充電できる全ての電池、例えばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池や、ニッケル水素電池セルなども使用できる。
【0034】
電池セル1は、正負の電極板を積層した電極体を外装缶1aに収納して、電解液を充填して気密に密閉している。外装缶1aは、底を閉塞する四角い筒状に成形しており、この上方の開口部を金属板の封口板1bで気密に閉塞している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板1bは、外装缶1aと同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板1bは、外装缶1aの開口部に挿入され、封口板1bの外周と外装缶1aの内周との境界にレーザ光を照射して、封口板1bを外装缶1aにレーザ溶接して気密に固定している。
(電極端子2)
【0035】
電池セル1は、図2等に示すように天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。電極端子2は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0036】
電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、図2等に示すように、電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバーで接続することで、隣接する電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。なお、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
【0037】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて、電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、図1図2においては封口板1bが同一平面となるように、複数の電池セル1を積層している。
【0038】
電池積層体10は、隣接して積層される電池セル1同士の間に、絶縁スペーサ16を介在させてもよい。絶縁スペーサ16は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作されている。絶縁スペーサ16は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状とする。この絶縁スペーサ16を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁できる。なお、隣接する電池セル間に配置されるスペーサとしては、電池セルとスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、電池セルの表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブ又はシュリンクフィルムで電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。この場合は、絶縁スペーサを省略してもよい。また、複数の電池セルを多並列、多直列に接続する電源装置においては、互いに直列に接続される電池セル同士の間に絶縁スペーサを介在させて絶縁する一方、互いに並列に接続される電池セル同士においては、隣接する外装缶同士に電圧差が生じないので、これらの電池セルの間の絶縁スペーサを省略することもできる。
【0039】
さらに、図2に示す電源装置100は、電池積層体10の両端面にエンドプレート20を配置している。なおエンドプレート20と電池積層体10の間に端面スペーサを介在させて、これらを絶縁してもよい。端面スペーサも、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作できる。
【0040】
実施形態1に係る電源装置100は、複数の電池セル1が互いに積層される電池積層体10において、互いに隣接する複数の電池セル1の電極端子2同士をバスバーで接続して、複数の電池セル1を並列かつ直列に接続する。また、電池積層体10とバスバーとの間にバスバーホルダを配置してもよい。バスバーホルダを用いることで、複数のバスバーを互いに絶縁し、かつ電池セルの端子面とバスバーとを絶縁しながら、複数のバスバーを電池積層体の上面の定位置に配置できる。
【0041】
バスバーは、金属板を裁断、加工して所定の形状に製造される。バスバーを構成する金属板には、電気抵抗が小さく、軽量である金属、例えばアルミニウム板や銅板、あるいはこれらの合金が使用できる。ただ、バスバーの金属板は、電気抵抗が小さくて軽量である他の金属やこれらの合金も使用できる。
(エンドプレート20)
【0042】
エンドプレート20は、図1図3に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対の締結部材15を介して締結される。エンドプレート20は、電池積層体10の電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサの外側に配置されて電池積層体10を両端から挟着している。
(締結部材15)
【0043】
締結部材15は、両端を電池積層体10の両端面に配置されたエンドプレート20に固定される。複数の締結部材15でもってエンドプレート20を固定し、もって電池積層体10を積層方向に締結している。各締結部材15は、図2等に示すように、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属製で、電池積層体10の両側面に対向して配置されている。この締結部材15には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなる締結部材15は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。
【0044】
この締結部材15は、電池積層体10の積層方向の両端において、L字状に折曲させた折曲片を設けている。この折曲片を、エンドプレート20に螺合するなどして、エンドプレート20同士を固定する。なお、締結部材15の形状や、エンドプレート20との締結構造は、既知の構造を適宜利用できる。例えば締結部材の両端をL字状に折曲させることなく平板状とし、エンドプレートの側面と螺合するよう構成してもよい。あるいは締結部材がエンドプレートの側面と対向する部分を、段差状に係合する係合構造として、締結部材をエンドプレートの側面に係合構造でもって係合した状態で、さらに螺合させる構造としてもよい。
【0045】
多数の電池セル1を積層している電源装置100は、複数の電池セル1からなる電池積層体10の両端に配置されるエンドプレート20を締結部材15で連結することで、複数の電池セル1を拘束するように構成されている。複数の電池セル1を、高い剛性をもつエンドプレート20や締結部材15を介して拘束することで、充放電や劣化に伴う電池セル1の膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などを抑制できる。
【0046】
また締結部材15と電池積層体10の間には、絶縁シート30が介在される。絶縁シート30は絶縁性を備える材質、例えば樹脂などで構成され、金属製の締結部材15と電池セル1との間を絶縁している。
【0047】
なお、電池積層体や電池積層体の表面が絶縁されている場合、例えば電池セルが絶縁性のケースに収納されていたり、樹脂製の熱収縮性チューブ又は熱収縮性フィルムで覆われている場合、又は締結部材の表面に絶縁性の塗料やコーティングが施されている場合、あるいは締結部材が絶縁性の材質で構成されている場合等は、絶縁シートを不要とできる。また絶縁シートは、上述したバスバーを保持するバスバーホルダと兼用するように構成してもよい。
(伝熱シート40)
【0048】
伝熱シート40は、絶縁性を備えつつ、熱伝導性に優れた材質で構成される。また伝熱シート40は弾性又は可撓性を有しており、放熱プレート50と電池積層体10との間で押圧されて変形し、これらの界面で隙間なく密着して、熱結合状態とする。このような伝熱シート40としては、シリコーン樹脂などが好適に利用できる。また、熱伝導性を増すため酸化アルミニウムなどのフィラーを添加してもよい。
(低摩擦抵抗領域42)
【0049】
また伝熱シート40の上面には、電池積層体10と摩擦抵抗を低減する低摩擦抵抗領域42を設けることが好ましい。このような低摩擦抵抗領域42として、例えば図5の断面図に示すように、別部材の摺動シートを伝熱シート40の上面に配置してもよい。摺動シートは、伝熱シート40よりも摩擦抵抗の少ない材質とする。これによって、伝熱シート40の上面で電池積層体10が膨張、収縮によって変位する際、伝熱シート40の上面を摺動させてしわの発生を避け、熱結合状態を維持できる。このような摺動シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく、特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【0050】
また、伝熱シート40の表面に、摩擦抵抗を限定する領域を設けてもよい。例えば伝熱シート40の表面にフッ素樹脂コーティング等の表面処理や加工を施すことによって摩擦抵抗を低減させる。あるいは伝熱シート40の表面にグリースやオイルなどを塗布してもよい。
(放熱プレート50)
【0051】
放熱プレート50は、熱伝導性に優れた金属製の放熱板等が利用できる。また放熱プレート50は、内部に冷媒の循環経路を備えるなど、冷却機構を備えてもよい。これにより、冷媒冷却によって効率良く電池積層体10を放熱、冷却できると共に、伝熱シート40によって電池積層体10と放熱プレート50の熱結合状態を好適に維持できる。
(スペーサ部22)
【0052】
エンドプレート20は、電池積層体10の両側端面を押圧する押圧面21を有している。さらにエンドプレート20は、図3の正面図に示すように、押圧面21の両側にそれぞれ、伝熱シート40の厚さ分だけ下面側に突出されたスペーサ部22を形成している。スペーサ部22は、エンドプレート20の押圧面21の左右端部から、それぞれ下方に突出されている。またスペーサ部22同士の間隔WSは、伝熱シート40の幅WTよりも広くしている。このようなスペーサ部22を設けたことで、伝熱シート40の厚さ分だけ押圧面21を浮かせることができ、伝熱シート40が電池積層体10の長さよりも長くても、伝熱シート40の端部がエンドプレート20と干渉する事態を回避できる。
【0053】
またエンドプレート20は、押圧面21とスペーサ部22を一体に形成することが好ましい。図3の例では、金属板のエンドプレート20の下面に凹部23を形成して、凹部23の左右を、この凹部23を画成するスペーサ部22としている。これにより、エンドプレート20に押圧面21とスペーサ部22により凹部23が形成される。
【0054】
さらに凹部23と伝熱シート40との間には、隙間を形成することが好ましい。これにより、電池積層体10の膨張、収縮によってエンドプレート20の位置が変位しても、隙間によってエンドプレート20と伝熱シート40を離間させることにより、エンドプレート20の変位によって伝熱シート40に干渉や負荷が加えられる事態を回避し、伝熱シート40による放熱プレート50と電池積層体10との熱結合状態を維持できる。
【0055】
また、図17Aの平面図に示すように、伝熱シート40の中間部分の幅WT1は、好ましくは電池セル1の幅と同程度とする。これにより、各電池セル1の底面で、放熱プレート50との熱結合状態を確実に発揮できる。一方で、電池セル1の幅と同程度の伝熱シート40の端縁を、エンドプレート20の凹部23に挿入しようとすれば、エンドプレート20の幅を電池セル1の幅よりもスペーサ部22の2個分だけ大きくする必要がある。この場合はエンドプレート20で端面を保持した電池積層体10の大型化につながる。これを回避するために、伝熱シートの端縁の形状を幅狭にしてもよい。例えば図17Bに示す変形例に係る伝熱シート40Bでは、端縁を中間部分で凸条に突出させた形状とし、この凸条部分の幅をWTとする。これによって、エンドプレート20の幅を大きくすることなく、凹部23に伝熱シート40Bの端縁を通すことが可能となる。また図17Cに示す変形例に係る伝熱シート40Cのように、端縁部分を先細りとなる形状としてもよい。この構成でも、突出部分を幅狭として、エンドプレート20の幅を大きくすることなく凹部23に伝熱シート40Cの端縁を通すことが可能となる。
【0056】
なお、図1の斜視図の例では、伝熱シート40を図示するため、伝熱シート40が大きく凹部23から飛び出した状態に誇張しているが、伝熱シート40は凹部23から突出している必要は必ずしもなく、例えば伝熱シート40の端縁が凹部23の内部で止まっている状態としてもよい。
[実施形態2]
【0057】
以上の例では、スペーサ部22によりエンドプレート20の押圧面21を伝熱シート40よりも高い位置に保持する構成を示した。ただ本発明はこの構成に限られず、電池積層体の膨張、収縮によるエンドプレートと伝熱シートの干渉の発生を回避する他の構成を採用することができる。例えば、エンドプレートを物理的に放熱プレート50の上面に離間させて配置してもよい。このような例を実施形態2に係る電源装置200として、図6図8に示す。これらの図において、図6は実施形態2に係る電源装置200を示す斜視図、図7図6の電源装置200の分解斜視図、図8図6の電源装置200の垂直断面図を、それぞれ示している。これらの図に示す電源装置200は、電池積層体10と、伝熱シート40と、放熱プレート50を備えている。なお、上述した実施形態1に係る電源装置100と同じ部材については同じ符号を付して、詳細説明を適宜省略する。
【0058】
この電源装置200は、図8の模式垂直断面図に示すように、エンドプレート20Bの下面を、放熱プレート50の上面から浮かせている。さらに伝熱シート40の端面からも、エンドプレート20Bの下面を離間させている。このような構成によっても、電源装置200の組み立て時にエンドプレート20Bでもって電池積層体10を押圧し、締結部材15で締結する際に、図16に示したように伝熱シート40の端面がエンドプレート620と干渉する事態を避け、伝熱シート40による放熱プレート50と電池積層体10との熱結合状態をエンドプレート20Bが阻害することがない。このようにエンドプレート20Bを放熱プレート50の上面から浮かせるため、例えばエンドプレート20Bを治具やスペーサを用いて放熱プレート50の上面と所定間隔で離間させるように固定している。図7の例では、エンドプレート20Bと放熱プレート50との界面にスペーサSPを介在させている。この構成であれば、エンドプレート20Bの形状を変形させることなく、従来と同様の形状のエンドプレートを用いながら、伝熱シート40との干渉を避けて電池積層体10の放熱性能の信頼性を維持できる。
【0059】
エンドプレート20Bを放熱プレート50の上面に浮かせた状態に保持するための構造としては、既知の構造が適宜利用できる。例えばエンドプレートを放熱プレート50から離間させた状態に保持する治具を用いる。あるいはエンドプレートの上面を、トッププレートなどを用いて懸吊する。また、電源装置200の組み立て時においてエンドプレート20Bを締結部材15に固定するまでは治具を用いてエンドプレート20Bを保持しつつ、組み立て終了後には治具を外して、電池積層体10でもってエンドプレート20Bを離間姿勢に維持する構成としてもよい。
[変形例]
【0060】
また以上の電源装置は、電池積層体の押圧をエンドプレートのみで行う構成について説明した。ただ本発明は、エンドプレート以外の部材で電池積層体を押圧させてもよい。例えば電池積層体で積層される中に中間プレートを介在させ、中間プレートを介してエンドプレートとの間で電池積層体の一部を押圧するよう構成してもよい。このような構成を、変形例に係る電源装置300として図9に示す。この図に示す電源装置300は、電池積層体10の中間に中間プレート60を備える。
(中間プレート60)
【0061】
中間プレート60は、電池積層体10の中間に介在されており、中間プレート60の両側面でそれぞれ、エンドプレート20Cとの間で電池積層体10の一部を押圧する。図9の例では、電池積層体10の中央で、この電池積層体10を部分電池積層体10a、10bに二分割して、中間プレート60でもって分割された部分電池積層体10a、10bをそれぞれ押圧している。また中間プレート60と一方のエンドプレート20C、中間プレート60と他方のエンドプレート20Cとは、それぞれ締結部材15で締結される。この構造は、2つの電池積層体を、積層方向に一直線上に並べた構成において、中間で対向するエンドプレートを、共通の中間プレートとした構成と近似している。2つの電池積層体を並べる構成よりも、2つのエンドプレートを一の中間プレート60で置き換える分だけ、全長を短くできる利点が得られる。このような構成においても、同様に部分電池積層体10a、10bをエンドプレート20Cと中間プレート60で押圧する際に、伝熱シートと干渉する問題が発生する。そこで、上述した実施形態と同様、中間プレート60やエンドプレート20Cの下面を伝熱シート40の上面と同じ高さかこれよりも高く配置する構成を採用することで、伝熱シート40との干渉を回避して、分割された各部分電池積層体10a、10bと放熱プレート50との熱結合状態を良好な状態に維持できる。図9の例では、伝熱シート40は、中間プレート60によって部分伝熱シート40a、40bに二分割されている。なお中間プレート60の形状は、上述した図3同様の形状や、図8と同様の離間構造を適宜採用できる。
【0062】
また、図9の例では共通の長い放熱プレート50の上面に、分割された各部分電池積層体10a、10bを配置する例について説明したが、本発明はこの構成に限らず、放熱プレートを分割してもよい。このような例を他の変形例に係る電源装置400として、図10の模式断面図に示す。このように放熱プレート50を部分放熱プレート50a、50bに分割した構成とする場合においても、同様にエンドプレート20Dと中間プレート60Bで部分電池積層体10a、10bを押圧しつつ、各部分放熱プレート50a、50bと部分電池積層体10a、10bとの熱結合状態を、各部分伝熱シート40a、40bでもって良好に維持できる。図10の例では、放熱プレート50が、中間プレート60Bの位置で部分放熱プレート50a、50bに分割されている。特に電池セルの積層数が多い場合など、長尺の放熱プレートを構成し難い場合や、長尺の放熱プレートで均等な放熱性能や冷却能力を発揮できない場合等は、放熱プレートを分割することで対応できる。また図10の例では、中間プレート60Bを一枚として電池積層体10を2分割した例を示したが、この例に限らず、中間プレートを2枚以上使用して、電池積層体を3以上に分割してもよいことは言うまでもない。
(電源装置の製造方法)
【0063】
次に、電源装置の製造方法を説明する。まず、放熱プレート50の上面に、伝熱シート40を載置し、さらに伝熱シート40の上面に、電池積層体10を載置した状態で、電池積層体10の各端面を一対のエンドプレート20で押圧する。この際、エンドプレート20の押圧面21の下辺が、伝熱シート40の上面と同じ高さかこれよりも上方に配置された状態とする。このように電池積層体10が押圧された状態で、エンドプレート20同士を締結部材15で締結する。これにより、電池積層体10を締結部材15で締結する際に、電池積層体10の両端面をエンドプレート20の押圧面21で圧縮する作業が、押圧面21を伝熱シート40の上側に配置したことにより、この伝熱シート40で阻害される事態を回避できる。
【0064】
また、エンドプレート20による押圧工程において、エンドプレート20を、放熱プレート50の上面から、伝熱シート40の厚さ分、治具により浮かせて保持することができる。これにより、治具によって伝熱シート40の厚さ分、押圧面21を浮かせて放熱シート上に配置することが可能となる。
【0065】
以上の電源装置100は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置100を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、電動車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置100を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築した例として説明する。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0066】
図11は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図11に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
(電気自動車用電源装置)
【0067】
また、図12は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
(蓄電装置用の電源装置)
【0068】
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図13は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0069】
図13に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0070】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0071】
以上のような蓄電システムは、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両は、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0073】
100、200、300、400…電源装置
1、501、601…電池セル
1X…端子面
1a…外装缶
1b…封口板
2…電極端子
10、510、610…電池積層体;10a、10b…部分電池積層体
15…締結部材
16…絶縁スペーサ
20、20B、20C、20D、520、620…エンドプレート
21…押圧面
22…スペーサ部
23…凹部
30…絶縁シート
40、40B、40C、540、640…伝熱シート;40a、40b…部分伝熱シート
42…低摩擦抵抗領域
50、550、650…放熱プレート;50a、50b…部分放熱プレート
60、60B…中間プレート
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
900…電源装置
901…電池セル
902…スペーサ
903…エンドプレート
904…バインドバー
WS…スペーサ部同士の間隔
WT…伝熱シートの幅
SP…スペーサ
HV、EV…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17