(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161096
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】防火設備
(51)【国際特許分類】
C09K 21/02 20060101AFI20241108BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20241108BHJP
C09K 21/14 20060101ALI20241108BHJP
C09K 21/04 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C09K21/02
E06B5/16
C09K21/14
C09K21/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144063
(22)【出願日】2024-08-26
(62)【分割の表示】P 2021149007の分割
【原出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
(57)【要約】
【課題】熱膨張性耐火材が高湿下や水に接触する環境下で使用されても、外観不良や耐火性の低下が生じにくい防火設備を提供する。
【解決手段】60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が3%以下である熱膨張性耐火材を少なくとも一部に搭載された防火設備。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス成分(但し、塩化ビニル樹脂及び塩素化ビニル樹脂を除く。)、熱膨張性黒鉛及び無機充填材を含有し、
60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が3%以下である防火設備用熱膨張性耐火材。
【請求項2】
前記マトリックス成分が、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、及びウレタンゴムからなる群から選択されるいずれか1種以上を含有する請求項1に記載の防火設備用熱膨張性耐火材。
【請求項3】
リン成分を実質的に含有しない請求項1又は2に記載の防火設備用熱膨張性耐火材。
【請求項4】
前記熱膨張性黒鉛の含有量が15~60質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の防火設備用熱膨張性耐火材。
【請求項5】
前記無機充填材の含有量が3~50質量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の防火設備用熱膨張性耐火材。
【請求項6】
前記無機充填材が、金属酸化物、金属炭酸塩、金属水酸化物及び亜リン酸金属塩からなる群から選択される1種以上を含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の防火設備用熱膨張性耐火材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性耐火材が搭載された、建具などの防火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の開口部などの延焼のおそれがある部分には、従来、防火設備が設けられている。防火設備には、熱膨張性黒鉛などの熱膨張材料が配合された熱膨張性耐火材が搭載されることが多い。また、熱膨張性耐火材は、耐火性を向上させるために、熱膨張性黒鉛に加えて、難燃剤、無機充填材などを比較的大量に含有させることが試みられている。
【0003】
一方で、建物の開口部に設けられる建具には、雨水、結露などを外部に排出できるように、下枠、下框などの建具下部に排水孔などを設けて、排水経路を確保することが知られている。排水孔などの排水経路は、防火上の欠損部となるので、火災を延焼させる要因になることがある。そのため、排水孔などの排水経路は、熱膨張性耐火材によって火災時に塞がれるように設計されていることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱膨張性耐火材に使用される難燃剤、無機充填材は、耐水性が低いものが多く、結露や湿気により、内部の材料が溶出し、外観不良、耐火性の低下等の問題が起こることがある。
防火設備の下部、特に排水経路を塞ぐために使用される熱膨張性耐火材は、高湿下に配置され、また、使用時に水に接触したりするので、外観不良、及び耐火性の低下が顕著に生じやすくなる。これら問題が起こった場合、回収、取り換えなどの措置がなされるが、ビルやマンションのような建築物の場合、取り換える際に足場を組む等の工程が必要となり、非常に大きな手間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、熱膨張性耐火材が高湿下や水に接触する環境下に配置されても、外観不良や耐火性の低下が生じにくい防火設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が3%以下となる熱膨張性耐火材を防火設備に使用することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の[1]~[9]のとおりである。
[1]60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が3%以下である熱膨張性耐火材が、少なくとも一部に搭載された防火設備。
[2]前記熱膨張性耐火材が、マトリックス成分と熱膨張性黒鉛を含有する上記[1]に記載の防火設備。
[3]前記熱膨張性耐火材が、さらに無機充填材を含有する上記[2]に記載の防火設備。
[4]前記マトリックス成分が、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、及びPVCからなる群から選択されるいずれか1種以上を含有する上記[2]又は[3]に記載の防火設備。
[5]前記熱膨張性耐火材が、リン成分を実質的に含有しない上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の防火設備。
[6]前記熱膨張性耐火材が防火設備の下部に搭載される上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の防火設備。
[7]ビル及びマンションの少なくともいずれかに用いられる上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の防火設備。
[8]前記防火設備が、排水経路を備え、
前記熱膨張性耐火材が、加熱により熱膨張すると前記排水経路を塞ぐように配置される上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の防火設備。
[9]前記防火設備が、排水孔を備え、
前記熱膨張性耐火材が、加熱により熱膨張すると前記排水孔を塞ぐように配置される上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の防火設備。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱膨張性耐火材が高湿下や水に接触する環境下に配置されても、外観不良や耐火性の低下が生じにくい防火設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】防火設備を構成する建具を示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る建具の部分的に拡大して示す断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る建具の部分的に拡大して示す断面図である。
【
図4】第3の実施形態に係る建具の部分的に拡大して示す断面図である。
【
図5】第4の実施形態に係る建具の部分的に拡大して示す断面図である。
【
図6】第5の実施形態に係る建具の部分的に拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態を参照しつつ説明する。
本発明の耐火設備は、熱膨張性耐火材が少なくとも一部に搭載されたものである。以下、本発明で使用される熱膨張性耐火材について、詳細に説明する。
【0011】
[熱膨張性耐火材]
本発明で使用する熱膨張性耐火材は、60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が3%以下である。溶出率が3%を超えると、防火設備に搭載された熱膨張性耐火材が高湿下や水に接触する位置に配置されると、熱膨張性耐火材を構成する成分が溶出して、耐火性を低下したり、溶出分が防火設備を汚染して外観不良などが生じたりする。
上記溶出率は、防火設備の外観不良が生じるのを防止して、耐火性をより向上させる観点から、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。また、上記溶出率は低ければ低いほどよく、0%以上であればよい。
溶出率は、熱膨張性耐火材に配合される各成分を適宜選択することで調整できる。具体的には、後述するマトリックス成分、無機充填材、有機難燃剤、その他の添加剤などについて、水に対して溶解性の低い化合物を使用すればよい。
なお、溶出率の具体的な測定方法は、実施例に記載のとおりである。
【0012】
<マトリックス成分>
本発明において、熱膨張性耐火材は、マトリックス成分と熱膨張性黒鉛を備え、該マトリックス成分中に、熱膨張性黒鉛が分散している。マトリックス成分は、樹脂成分、ゴム成分及びエラストマー成分から選択される少なくとも1種である。
【0013】
ゴム成分としては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(HSBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム成分が挙げられる。
【0014】
また、エラストマー成分としては、熱可塑性エラストマーが挙げられ、具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
TPOはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンをハードセグメントとし、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム等のゴムをソフトセグメントとする熱可塑性エラストマーである。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンブロックをハードセクメントとするブロック共重合体が挙げられ、具体的には、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-スチレンブロック共重合体(SES)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)など挙げられる。
【0015】
マトリックス成分における樹脂成分としては、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、耐火性の観点から、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを含有することが好ましい。そのような簡単から、熱可塑性樹脂の中では、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が好ましく、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)がより好ましい。
【0016】
ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマー以外の重合体又は共重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、本発明においては、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化物である塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂も、ポリ塩化ビニル系樹脂に含まれるものとする。
ポリ塩化ビニル樹脂の重合度は500~2,000が好ましく、800~1500がより好ましい。このような範囲であると、樹脂成分の流動性が高まり、膨張倍率を所望の範囲に調整しやすくなる。
【0017】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましくは5~90質量%、より好ましくは8~50質量%、さらに好ましくは12~35質量%である。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.5~15g/10minであり、より好ましくは1~8g/10minである。なお、エチレン-酢酸ビニル共重合体の190℃におけるメルトフローレートは、荷重2.16kgにおける測定値であり、JIS K7210:1999に準拠して測定される。
【0018】
上記熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、中でも、耐火性を向上させる観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂は、芳香環を有するエポキシ樹脂でも、芳香環を有しないエポキシ樹脂でもよいが、不燃性を高める観点から、芳香環を有するエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ基を有するエポキシ化合物と、硬化剤とを反応させることにより得られる。
上記した芳香環を有するエポキシ樹脂を得るために用いるエポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ化合物、ビスフェノールF型のエポキシ化合物、ビフェニル型のエポキシ化合物、ナフタレン型のエポキシ化合物、フェノールノボラック型のエポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型のエポキシ化合物、テトラフェノールエタン型のエポキシ化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型のエポキシ化合物、アミノフェノール型のエポキシ化合物、アニリン型のエポキシ化合物、キシレンジアミン型のエポキシ化合物などが挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型のエポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物が好ましい。
【0020】
硬化剤としては、重付加型または触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が例示される。また、触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が例示される。エポキシ化合物の硬化方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。
硬化剤の含有量は、上記エポキシ化合物100質量部に対して50~150質量部の範囲内であることが好ましい。50質量部以上であると、エポキシ化合物が硬化しやすくなり、150質量部以下であると、硬化剤の配合量に応じた効果が得られる。
【0021】
マトリックス成分としては、上記した中では耐水性と耐火性を両立させる観点から、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、及びPVCから選択される少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、耐火性の観点から、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びPVCから選択される少なくとも1種がより好ましく、特に、膨張残渣の硬度を高くしつつ、膨張率も高くする観点から、クロロプレンゴム、及びスチレンブタジエンゴムから選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
マトリックス成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、2種類以上併用する場合には、クロロプレンゴム、及びスチレンブタジエンゴムを併用することが特に好ましい。スチレンブタジエンゴム(SBR)及びクロロプレンゴム(CR)を併用する場合は、これらの含有量比(SBR/CR)は、質量比で90/10~10/90であることが好ましく、80/20~20/80であることがより好ましい。
【0022】
本発明で使用するスチレンブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量は、特に限定されないが、例えば10~60質量%であり、好ましくは15~55質量%であり、より好ましくは20~50質量%である。なお、結合スチレン量は、1H-NMRにより測定することができる。
また、スチレンブタジエンゴムのムーニー粘度[ML(1+4)100℃]は、特に限定されないが、例えば30~150であり、好ましくは35~70であり、より好ましくは40~60である。
また、クロロプレンゴム(CR)のムーニー粘度[ML(1+4)100℃]は、特に限定されないが、例えば25~150であり、好ましくは30~100であり、より好ましくは35~75である。
なお、本明細書においてムーニー粘度は、JIS K6300に準拠して測定した値である。
【0023】
熱膨張性耐火材におけるマトリックス成分の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。マトリックス樹脂の含有量がこれら下限値以上であると、熱膨張性耐火材に配合される膨張性黒鉛、無機充填材がマトリックス成分により適切に保持され、これらの脱落、溶出などを防止しやすくなる。また、膨張後の残渣硬さを高くできる。マトリックス成分の含有量がこれら上限値以下であると後述する熱膨張性黒鉛及び無機充填材の含有量を多くできるため、耐火性が向上しやすくなる。
【0024】
<可塑剤>
本発明の熱膨張性耐火材は、可塑剤を含有してもよい。マトリックスが可塑剤を含有することにより、マトリックス成分が流動しやすくなり、熱膨張性耐火材が膨張し易くなる。また、マトリックス成分としてポリ塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、可塑剤を併用することが好ましい。可塑剤を併用することにより成形性が向上する。
【0025】
可塑剤としては、特に制限されないが、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のアジピン酸エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイル等が挙げられる。可塑剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の熱膨張性耐火材が可塑剤を含有する場合、その含有量は、マトリックス成分100質量部に対して10~90質量部が好ましく、20~80質量部がより好ましい。可塑剤の含有量が前記範囲内であると、熱膨張性耐火材の成形性が向上する傾向があり、また成形体が柔らかくなり過ぎることを抑制することができる。
【0027】
<熱膨張性黒鉛>
熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張するものであり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては、濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。また、強酸化剤としては、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
また、上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の中和剤で中和してもよい。脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。アルカリ金属化合物及び上記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0028】
熱膨張性耐火材中の熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下であり、よりさらに好ましくは40質量%以下である。熱膨張性黒鉛の含有量がこれら下限値以上であると、炎の通過を阻止するのに適した膨張を得やすくなり、これら上限値以下であると熱膨張性耐火材の熱膨張残渣の強度が高くなる傾向があり、加工性、成形性なども良好になる。
【0029】
<無機充填材>
本発明の熱膨張性耐火材は、マトリックス成分及び熱膨張性黒鉛に加えて、無機充填材を含有することが好ましい。無機充填材は、熱膨張性黒鉛以外の無機充填材である。無機充填材は、加熱されて膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制しつつ、骨材的に働いて熱膨張残渣の強度を向上させ、耐火性を向上させる。
【0030】
耐火材の成形性を向上させる観点から、無機充填材としては、比重が2.5以上の無機充填材Aを含むことが好ましい。該無機充填材Aを含有させることにより、単位体積あたりのマトリックス成分の量を増加させることができ、これにより耐火材の脆性が改善され、成形性及び膨張後の残渣硬さが向上しやすくなる。このような観点から、上記無機充填材Aの比重は好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。例えば後述する金属酸化物、金属炭酸塩などは、比重が2.5以上の無機充填材Aとして使用することができる。無機充填材Aは、一種を単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。
無機充填材全量基準に対して無機充填材Aの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
無機充填材としては、上記した比重が2.5以上の無機充填材Aを使用することが好ましいが、比重2.5未満の無機充填材を使用することもできる。
【0031】
本発明において使用できる無機充填材としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩、シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム等のリン酸金属塩、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸アルミニウム等の亜リン酸金属塩、ポリリン酸アンモニウム、オルトリン酸金属塩、メタリン酸金属塩、トリポリリン酸金属塩などが挙げられる。無機充填材は一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0032】
これらの中でも、無機充填材としては、耐水性を向上させる観点から、水に不溶な物質を使用することが好ましい。そして、耐水性及び耐火性の観点から、金属酸化物、金属炭酸塩、水難溶性のリン化合物などが好ましい。
【0033】
具体的な無機充填材としては、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、亜リン酸アルミニウムから選択される少なくとも1種以上がより好ましく、酸化鉄、及び炭酸カルシウムから選択される1種がさらに好ましく、酸化鉄、及び炭酸カルシウムを併用することも好ましい。
また、無機充填材が少なくとも酸化鉄を含有する態様も好ましい。酸化鉄を用いることで、熱膨張性耐火材の膨張倍率が比較的大きい場合であっても、熱膨張残渣の強度を維持しやすく、耐火性が向上しやすくなる。
酸化鉄を使用する場合において、その使用量は、無機充填材全量基準において、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
酸化鉄と炭酸カルシウムを併用する場合においてその質量比(酸化鉄/炭酸カルシウム)は、好ましくは10/90~90/10であり、より好ましくは20/80~80/20である。
【0034】
熱膨張性耐火材中の無機充填材の含有量は、残渣硬さの向上、及び耐火性などの観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上であり、そして好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0035】
本発明の熱膨張性耐火材は、上記のとおり熱膨張性黒鉛及び無機充填材を含有することが好ましいが、熱膨張性耐火材における熱膨張性黒鉛及び無機充填材の合計の含有量は35質量%以上であることが好ましい。熱膨張性黒鉛及び無機充填材の合計の含有量が35質量%以上であると、熱膨張性耐火材の膨張倍率及び膨張残渣の強度を向上させやすくなり、耐火性が向上する。熱膨張性黒鉛及び無機充填材の合計の含有量は、耐火性を向上させる観点から、40質量%以上が好ましく、そして、マトリックス成分の配合量を増やしてマトリックス成分により保持性能を確保する観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0036】
<その他成分>
熱膨張性耐火材は、有機系難燃剤を含有してもよい。また、熱膨張性耐火材は、着色剤、酸化防止剤などの上記以外の添加剤を含んでもよい。
有機系難燃剤としては、臭素含有難燃剤、窒素含有難燃剤、リン酸エステル化合物などが挙げられる。なお、本明細書では、エチレンジアミンリン酸塩などの有機物と無機物からなる有機塩も有機系難燃剤とする。
臭素含有難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフエノキシ)エタン、エチレンービス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
【0037】
窒素含有難燃剤としては、例えば、メラミン、ブチルメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、リン酸メラミンなどのメラミン誘導体、シアヌル酸、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレートなどのシアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸、メチルイソシアヌレート、N,N'-ジエチルイソシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、ビス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌル酸誘導体、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、エチレンジアミンリン酸塩などを挙げることができる。
【0038】
リン酸エステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3-ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、トリス(2エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
有機系難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機系難燃剤としては、上記した中ではメラミンシアヌレートなどを使用することが好ましい。熱膨張性耐火材における有機系難燃剤の含有量は、例えば1~35質量%、好ましくは5~30質量%、より好ましくは8~20質量%である。
【0039】
<リン成分>
本発明の熱膨張性耐火材は、リン成分を実質的に含有しないことが好ましい。リン成分を実質的に含有しないことで、熱膨張性耐火材の耐水性を向上させやすくなり、高湿下や、水に接触する環境下で使用されても、耐火性が良好に維持される。また、リン成分を実質的に含有しないことで、溶出されたリン成分により、防火設備が着色されて、外観不良が生じることが防止される。
なお、熱膨張性耐火材が、リン成分を実質的に含有しないとは、熱膨張性耐火材が不可避的に混入されるリン原子以外を含有しないことを意味し、熱膨張性耐火材におけるリン原子含有量が例えば0.5質量%未満であるとよく、好ましくは0.1質量%未満であり、0質量%であることがさらに好ましい。
【0040】
したがって、熱膨張性耐火材には、無機充填材、有機系難燃剤などが配合されるが、これらにはリン原子を含む化合物を用いないことが好ましい。特に、ポリリン酸アンモニウム、エチレンジアミンリン酸など、水難溶性のリン化合物以外のリン原子を含む難燃剤は、耐水性を低くするので、熱膨張性耐火材に含有させないことが好ましい。また、熱膨張性耐火材は、リン成分を含有しなくても、マトリックス成分及び無機充填材の種類を適宜調整し、また、無機充填材の量を多くすることで十分な耐火性が得られる。
【0041】
本発明の熱膨張性耐火材は、特に限定されないが、シート状であることが好ましい。
熱膨張性耐火材の厚さは特に限定されないが、耐火性及び取扱い性の観点から、0.2~10mmが好ましく、0.5~3.0mmがより好ましい。
【0042】
本発明の熱膨張性耐火材は、水に長時間浸漬後でも膨張倍率が高く維持される。具体的には、水に60℃で1週間浸漬した後における膨張倍率は、耐火性及び耐水性の観点から、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、よりさらに好ましくは30倍以上である。また、水に60℃で1週間浸漬した後における膨張倍率は、膨張後でも一定の残渣硬さを維持して耐火性を確保しやすくする観点から、好ましくは70倍以下であり、より好ましくは60倍以下であり、さらに好ましくは55倍以下であり、よりさらに好ましくは50倍以下である。なお、膨張倍率は、実施例に記載の方法で測定される。
【0043】
また、本発明の熱膨張性耐火材は、水に長時間浸漬後に膨張した際の残渣硬さを一定以上に維持できる。具体的には、水に60℃で1週間浸漬した後、膨張させた際の残渣硬さは、耐火性及び耐水性の観点から、好ましくは0.15kgf/cm2以上、より好ましくは0.20kgf/cm2以上、さらに好ましくは0.27kgf/cm2以上、よりさらに好ましくは0.30kgf/cm2以上である。また、水に60℃で1週間浸漬後の上記残渣硬さは、一定の膨張倍率を維持して耐火性を確保しやすくする観点から、好ましくは0.70kgf/cm2以下であり、より好ましくは0.60kgf/cm2以下であり、さらに好ましくは0.55kgf/cm2以下である。なお、上記した膨張倍率及び残渣硬さは、実施例に記載の方法で測定できる。
【0044】
本発明の熱膨張性耐火材は例えば下記のようにして製造することができる。
まず、所定量のマトリックス成分、及び熱膨張性黒鉛、並びに必要に応じて配合される無機充填材、有機系難燃剤、着色剤、酸化防止剤などの添加剤を、混練ロールなどの混練機で混練して、耐火性樹脂組成物を得る。
次に、得られた耐火性樹脂組成物を、例えば、プレス成形、カレンダー成形、押出成形等、公知の成形方法によりシート状などの所望の形状に成形することで熱膨張性耐火材を得ることができる。
【0045】
熱膨張性耐火材は、熱膨張性耐火材単体で使用されてもよいが、適宜他の部材が取り付けられて使用されてもよい。例えば、熱膨張性耐火材は、熱膨張性耐火材以外の部材が積層されていてもよく、基材、粘着剤層などが熱膨張性耐火材に積層されてもよい。
基材は、例えば熱膨張性耐火材の少なくとも一方の面に設けられてもよい。基材は、可燃材料層であってもよいし、準不燃材料層又は不燃材料層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~1mmである。可燃材料層に使用される素材としては、例えば、布材、紙材、木材、樹脂フィルム等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。基材が準不燃材料層又は不燃材料層である場合、使用される素材としては、例えば、金属、無機材等を挙げることができ、より具体的には、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、グラファイト繊維からなる織布又は不織布などが挙げられる。また、これら繊維と金属の複合材料であってもよく、例えば、アルミガラスクロスが好ましい。また、例えば粘着剤層は、上記基材の上に設けられてもよいし、熱膨張性耐火材の表面に直接形成されてもよい。粘着剤層は、粘着剤により構成される層であり、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。
【0046】
[防火設備]
本発明の熱膨張性耐火材は、防火設備の少なくとも一部に搭載されて使用される。防火設備は、各種の建築物の開口部に設けられ、開口部を介して火災が延焼することを防止する。また、防火設備は、建築基準法の第二条第九の二に適合する防火設備である。
また、建築物としては、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の各種の建築物が挙げられるが、ビル、マンションが好ましい。
ビル、マンションのような建築物の場合、防火設備に使用される各部品を取り換える際、足場を組む等の煩雑な工程が必要となるが、本発明では、上記のように溶出率が低い熱膨張性耐火材を使用することで、熱膨張性耐火材を長期間使用可能になるので、その回収、取り換えの頻度を少なくできる。さらに溶出率が低いことで溶出による汚染を抑制して、防火設備に外観不良を発生させにくくする。
【0047】
また、本発明において、熱膨張性耐火材は、防火設備下部に搭載されることが好ましい。本発明の熱膨張性耐火材は、溶出率が低いため、雨水、結露などの水分が溜まりやすい防火設備の下部に搭載され、長期間水に接触されたり高湿下に配置されたりしても、良好な耐火性を長期間維持できる。
【0048】
本発明において、防火設備は建具であることが好ましい。建具は、窓、障子、ドア、戸、ふすま等を構成する。
図1は、建具が窓である場合の一実施形態を示す。
図1に示すように、建具10は、例えば建築物の開口部に取り付けられる枠体12と、枠体12の内周側に配置され、枠体12に支持される枠状の框体31と、框体31の内周側に取り付けられる面材30とを備える。
本実施形態において、枠体12の下枠13、及び框体31の下框33が、防火設備(建具10)の下部を構成する。したがって、熱膨張性耐火材は、下枠13、下框33、又はこれらの両方に搭載されることが好ましい。なお、熱膨張性耐火材は、下枠13又は下框33に直接取り付けられてもよいし、これら下枠13又は下框33に取り付けられた部材(例えば、後述する載置部材、突片、補強材など)を介して、下枠13又は下框33に取り付けられてもよい。
【0049】
また、防火設備(建具10)、好ましくは防火設備の下部、具体的には、下枠13、下框33、又はこれらの両方に、排水経路が設けられている。建具10などの防火設備には、雨水、結露などにより水が付着し、その水が建具10の下部に溜まるので、排水経路を設けることで、建具10に付着した水を外部に排水することができる。
また、排水経路は、排水孔を含むとよく、好ましくは防火設備の下部、具体的には、下枠13、下框33、またはこれらの両方に設けられた排水孔を含むとよい。下枠13、下框33の上面などには、水が溜まりやすいが、排水孔を設けることで、建具10に水が溜まるのをより一層防止しやすくなる。
【0050】
また、本発明の熱膨張性耐火材は、火災などの加熱により熱膨張する際に、防火設備(建具10)の下部に設けられる排水経路、特に排水孔を塞ぐように配置されることが好ましい。そのため、熱膨張性耐火材は、排水経路、特に排水孔に近接するように配置されるとよい。なお、熱膨張性耐火材は、加熱膨張前においては、排水経路、好ましくは排水孔に近接しつつもこれらを塞がないように配置される。
排水経路、特に、排水孔は、防火設備内部と外部を通気する部分になるため、火災が発生した際には炎の通り道となり、延焼を生じさせる要因になることがある。そのため、熱膨張性耐火材が熱膨張により排水経路、特に排水孔を塞ぐと、排水経路を介して生じる延焼を防止できる。一方で、熱膨張性耐火材は、60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が所定値以下となるものであり、耐水性に優れる。そのため、熱膨張性耐火材は、排水経路、特に排水孔に近接すると、水に接触され、また高湿環境下に配置されることになるが、そのような環境下でも長期間にわたって高い耐火性を維持することができる。また、耐水性に優れるため、リン化合物などの熱膨張性耐火材を構成する成分が溶出せずに、防火設備の外観不良が生じることを防止できる。
【0051】
以下、
図2~6を参照しつつ、熱膨張性耐火材の建具10の下部における配置位置についてより詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態に係る建具を示す。第1の実施形態に係る建具は、下框33に排水孔が設けられ、かつ熱膨張性耐火材が排水孔に近接した位置に配置される建具である。なお、第1の実施形態は、面材として窓が使用される例である。
【0052】
下框33は、枠状の部材で構成されており、下枠13によって支持される。下框33は、室外側及び室内側の両側壁33A,33Bと、両側壁33A,33Bを接続する上面部33C,及び下面部33Dを備える。
上面部33Cには、その上方に面材30が載せられるものである。下面部33Dは、上面部33Cの下方に配置され、両側壁33A,33B、及び上面部33Cとともに、矩形の中空部33Eを形成し、下框33に一定の強度を付与する。
上面部33C上には、ブロック状の載置部材34が設けられ、載置部材34上に面材30が載置される。載置部材34上に載置された面材30は、載置部材34上のシール部材35により下框33との間がシールされる。面材30はシール部材35を介して下框33により支持される。
【0053】
上面部33Cには、排水孔36Aが設けられている。排水孔36Aは、上面部33C上に溜まった水を排水する排水経路の一部を構成する。また、下面部33Dにも同様に排水孔36Bが設けられる。下面部33Dの排水孔36Bは、上面部33Cの排水孔36Aに一致した位置に配置され、排水孔36Aから排出された水は、排水孔36Bを通って建具の外部に排出することが可能になる。これにより、排水孔36Bは排水経路の一部を構成する。また、下面部33Dの排水孔36Bは、下面部33D上に溜まった水も排水するとよい。
【0054】
上面部33C上に配置された、載置部材34の下面には、凹部34Aが設けられており、凹部34Aが排水孔36Aを覆うように配置される。そして、凹部34Aの内部に熱膨張性耐火材40Aが配置されている。なお、熱膨張性耐火材40は、凹部34Aに嵌め合わされて凹部34Aの内部に配置されてもよいし、粘着剤層などにより凹部34Aの底面に貼付されていてもよい。
以上の構成により、熱膨張性耐火材40Aは、排水孔36Aに近接した位置に配置される。そのため、熱膨張性耐火材40Aは、加熱され熱膨張すると、排水孔36Aを塞ぐことが可能になり、火災が発生した際に排水経路を介して炎が通って延焼することを防止できる。また、熱膨張性耐火材40Aは、上記のとおり、水に浸漬した際の溶出率が低く耐水性に優れる。そのため、熱膨張性耐火材40Aは、排水経路近傍に設けられ、水に接触され、また高湿環境下に配置されることになるが、そのような環境下でも長期間にわたって高い耐火性を良好に維持することができる。また、耐水性に優れるため、リン化合物などの熱膨張性耐火材を構成する成分が溶出せずに、防火設備の外観不良が生じることを防止できる。
【0055】
第1の実施形態では、熱膨張性耐火材は載置部材に取り付けられていたが、熱膨張性耐火材は載置部材に取り付けられる必要はなく、別の部材に取り付けられてもよい。
図3は、載置部材以外の部材に熱膨張性耐火材が取り付けられた建具の一態様を第2の実施形態として示す。以下、第2の実施形態について第1の実施形態との相違点のみを説明し、説明を省略する部分は第1の実施形態と同じである。
【0056】
第2の実施形態では、下框33の下面部33Dの排水孔36Bの周辺には、下面部33Dに立設する突片34Fが設けられ、その突片34Fに熱膨張性耐火材40Bが取り付けられる。なお、突片34Fは、下框33と一体で設けられてもよいし、別部材として設けられてもよい。
本実施形態においても、熱膨張性耐火材40Bは、排水孔36Bに近接した位置に配置される。そのため、熱膨張性耐火材40Bは、加熱され膨張すると、排水孔36Bを塞ぐことが可能になり、火災が発生した際に排水経路を介して炎が通って延焼することを防止できる。さらに、熱膨張性耐火材40Bは、水に接触され、また高湿環境下に配置されることになるが、上記した溶出率が所定値以下となり耐水性に優れるため、長期間にわたって高い耐火性を維持することができ、外観不良も生じない。
【0057】
図4は、第3の実施形態に係る建具を示す。以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点のみを説明する。第3の実施形態では、熱膨張性耐火材40Cは、下框33の側壁33Aに取り付けられる。
本実施形態において、熱膨張性耐火材40Cは、粘着剤層などを介して側壁33Aに貼り合わされるとよい。ただし、熱膨張性耐火材40Cは、粘着剤層を介して貼り合わせる必要はなく、例えば下面部33Dや上面部33Cに係止片(図示しない)を設け、熱膨張性耐火材40Cを係止片と側壁33Aの間に配置させ、係止片によって係止させてもよい。
【0058】
本実施形態においても、熱膨張性耐火材40Cは、排水孔36Bに近接した位置に配置される。そのため、熱膨張性耐火材40Cは、加熱され熱膨張すると、排水孔36Bを塞ぐことが可能になり、火災が発生した際に排水経路を介して炎が通って延焼することを防止できる。さらに、熱膨張性耐火材40Cは、水に接触され、また高湿環境下に配置されることになるが、上記した溶出率が所定値以下となり耐水性に優れるため、長期間にわたって高い耐火性を維持することができ、外観不良も生じない。
【0059】
なお、上記各実施形態のように、下框33に排水孔が設けられる場合において、熱膨張性耐火材は、加熱され膨張した際に下框33の排水孔のいずれかを塞げる限り、その配置位置については上記各実施形態の構成に限定されず、様々な位置に配置すること可能である。例えば、熱膨張性耐火材は、上面部33C,下面部33D上などに配置してもよいし、その他の位置に配置してもよい。
さらに、上記各実施形態では、框体33に下面部33Dが設けられたが、下面部33Dが省略されてもよい。その場合、熱膨張性耐火材は、加熱されて膨張した際に、上面部33Cの排水孔36Aを塞ぐような位置に配置させるとよい。また、載置部材34やシール材35などが省略され、面材が別の構成により框体に取り付けられてもよい。
また、以上の各実施形態では、複数の排水孔のうち、1つの排水孔が加熱により膨張する熱膨張性耐火材によって塞がれる態様を示したが、排水経路を構成する複数の排水孔が、加熱により膨張する1又は複数の熱膨張性耐火材により塞がれてもよい。
【0060】
以上の各実施形態では、下框に排水孔が設けられたが、下枠に排水孔が設けられてもよい。
図5は、下枠に排水孔が設けられ、熱膨張性耐火材が下枠の排水孔に近接した位置に配置される建具を第4の実施形態として示す。なお、本実施形態は、面材として引き違い窓が使用される例である。
【0061】
本実施形態では、下枠13には、レール23が設けられ、レール23を介して下框33が下枠13によって支持される。下框33の内周側には面材が取り付けられる。なお、下枠13には、室外側の第1の下枠材13Aと、室内側の第2の下枠材13Bが設けられ、各枠材13A,13Bそれぞれに第1及び第2のレール23A,23Bが設けられる。そして、下框33を構成する第1の下框33Aと、第2の下框(図示しない)はそれぞれ、第1及び第2のレール23A,23Bを介して、第1の下枠材13A、第2の下枠材13Bそれぞれに支持される。第1の下框33A、及び第2の下框(図示しない)それぞれの内周側には、第1の面材30A、及び第2の面材(図示しない)が取り付けられている。
【0062】
第1の下枠材13Aは、室外側の側壁14A、室内側の側壁14B、上面部14C,及び下面部14Dにより枠状に形成され、内部に中空部14Eが形成される。第1の下枠材13A、具体的には、室外側の側壁14A及び上面部14Cには、それぞれ排水孔16A,16Bが設けられる。
また、排水孔16A、16Bの周辺には、突片15A,15Bが設けられ、その突片15A,15Bに熱膨張性耐火材40D,40Eが取り付けられる。突片15Aは、例えば側壁14Aに立設され、突片15Bは上面部14Cに立設される。なお、突片15A,15Bは、下枠材13Aと一体に設けられてもよいし、別部材として設けられてもよい。
【0063】
本実施形態では、下枠13(第1の下枠材13A)の上面に水が溜められても、排水孔16B、中空部14Eの内部、及び排水孔16Aを介して、建具10の外部に水が排水される。また、本実施形態では、熱膨張性耐火材40D、40Eそれぞれが、排水孔16A、16Bそれぞれに近接した位置に配置される。そのため、熱膨張性耐火材40D、40Eは、加熱され熱膨張すると、排水孔16A,16Bを塞ぐことが可能になり、火災が発生した際に排水経路を介して炎が通って延焼することを防止できる。さらに、熱膨張性耐火材40D、40Eは、水に接触され、また高湿環境下に配置されることになるが、上記した溶出率が所定値以下となり耐水性に優れるため、長期間にわたって高い耐火性を維持することができ、外観不良も生じない。
【0064】
図6は、下枠に排水孔が設けられる別の態様を第5の実施形態として説明する。以下、第5の実施形態について、第4の実施形態との相違点を中心に説明し、説明を省略する部分は、第4の実施形態と同様である。
第5の実施形態では、下枠、及び下枠の内部に挿入された補強材に排水孔が設けられ、熱膨張性耐火材が補強材の排水孔に近接した位置に配置される。なお、第5の実施形態は、面材として引き違い窓が使用される例である。
【0065】
本実施形態でも、下枠13には、レール23(第1及び第のレール23A、23B)が設けられ、各レールを介して下框33(第1及び第2の下框33A、33B)が下枠13に支持される。各下框33A、33Bの内周側には窓を構成する面材30A、30Bが取り付けられる。なお、本実施形態では、下枠13は枠材13Xからなり、枠材13Xに第1及び第2のレール23A,23Bが設けられる。
【0066】
枠材13Xは、内部に中空部14Eが形成される枠状に形成され、室外側の側壁14A及び上面部14Cには、それぞれ排水孔16A,16Bが設けられる。また、中空部14Eに補強材18が挿入されるとともに、補強材18にも排水孔16C,16Dが設けられる。本実施形態では、補熱膨張性耐火材40Fは、補強材18に取り付けられており、これにより、補熱膨張性耐火材40Fは、補強材の排水孔16Cに近接した位置に配置される。
【0067】
本実施形態では、枠材13Xの上面に水が溜められても、排水孔16B,16D,16C,16A(すなわち、排水経路)を介して、建具の外部に水が排水される。また、本実施形態においても、熱膨張性耐火材40Fは、排水経路の一部を構成する排水孔16Cに近接した位置に配置される。そのため、熱膨張性耐火材40Fは、加熱され熱膨張すると、排水孔16Cを塞ぐことが可能になり、火災が発生した際に排水経路を介して炎が通って延焼することを防止できる。さらに、熱膨張性耐火材40Fは、排水孔に近接されるため、水に接触され、また高湿環境下に配置されることになるが、上記した溶出率が所定値以下となり耐水性に優れるため、長期間にわたって高い耐火性を維持することができ、外観不良も生じない。
【0068】
なお、以上の第4,5の実施形態において、熱膨張性耐火材は、下枠13に設けられた突片や、補強材に取り付けられる態様を示したが、加熱され熱膨張された際に、排水孔を塞ぐ位置に配置される限り、他の位置に配置されてもよく、例えば、下枠を構成する枠材自体に取り付けられてもよいし、下枠に設けられる補強材や突片以外の部材に取り付けられてもよい。
また、第4の実施形態では、排水経路を構成する複数の排水孔のそれぞれに近接して、熱膨張性耐火材が設けられる一方で、第5の実施形態では1つの排水孔に近接して1つの熱膨張性耐火材が設けられる態様を示すが、第4の実施形態において、1つの排水孔に近接して1つの熱膨張性耐火材が設けられてもよい。また第5の実施形態において、複数の排水孔のそれぞれに近接して熱膨張性耐火材が設けられてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、熱膨張性耐火材は、排水孔に近接した位置に配置され、熱膨張した際に排水孔を塞ぐ態様を示すが、熱膨張した際に排水経路を塞ぐ限り排水孔以外を塞いでもよい。例えば、第1~第3の実施形態において、下框33の上面部33Cや下面部33Dの上面上において、両側壁33A,33B間が排水経路の一部を構成することがある。そのような場合には、例えば下框33の側壁の内面などに熱膨張性耐火材を設けて、熱膨張した熱膨張性耐火材により、上面部33Cや下面部33Dの上面上において、両側壁間を塞いでもよい。
【実施例0070】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0071】
[評価方法]
(1)溶出率
得られた熱膨張性耐火材から作製した試験片のサンプル重量10g分(本実施例、比較例では2枚)を200gの純水に浸漬し、60℃で密閉容器にて1000時間浸漬した後、サンプルを取り出し、浸漬した純水を60℃にて96時間、蒸発、乾燥させ、発生した析出物の質量を測定した。その値を用い溶出率を以下の式で算出して、耐水性の指標とした。
溶出率(%)=[(析出物の質量)/(純水浸漬前の熱膨張性耐火材の質量)]×100
(2)膨張倍率
得られた熱膨張性耐火材から作製した試験片(長さ:100mm、幅:100mm、厚さ:熱膨張性耐火材の厚さ)を500mLの純水に60℃で密閉容器にて1週間浸漬した後、サンプルを取り出した。該サンプルを60℃にて96時間、蒸発、乾燥させて作成した試験片をステンレス製のホルダー(101mm角、高さ80mm)の底面に設置し、電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した。その後、試験片の一番高い部分における厚さを測定し、((加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ))により、膨張倍率を算出した。
【0072】
(3)残渣硬さ
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、直径1mmの3点圧子で0.1cm/秒の速度で圧縮し、残渣上面からの10mm圧縮までの最大応力を測定し、燃焼後の試験片の圧縮強度(kgf/cm2)を測定した。
【0073】
(実施例1~10、比較例1~3)
下記表1に示す配合にて、マトリックス成分、可塑剤、熱膨張性黒鉛、無機充填材、及び有機系難燃剤をロールに投入して150℃で5分間混練して、耐火性樹脂組成物を得た。得られた耐火性樹脂組成物を、150℃で3分間プレス成形して、厚さ1.5mmの熱膨張性耐火材を得た。各実施例、比較例で使用した各成分は下記のとおりである。
【0074】
(1)マトリックス成分
・CR 東ソー株式会社製「Y-20E」、クロロプレンゴム
ムーニー粘度[ML(1+4)100℃]:43~53
・SBR JSR株式会社製「JSR1500」、スチレンブタジエンゴム
結合スチレン量:23.5質量%、ムーニー粘度[ML(1+4)100℃]:52
・PVC 信越化学工業株式会社製「TK-1000」、平均重合度1030、ポリ塩化ビニル系樹脂
(2)可塑剤
・DOP ジ-2-エチルヘキシルフタレート、株式会社ジェイプラス製「DOP」
(3)熱膨張性黒鉛
・熱膨張性黒鉛 エアウォーター社製「CA-60N」
(4)無機充填材
・酸化鉄:チタン工業株式会社「BL-100」、比重5.1
・酸化亜鉛:堺化学工業株式会社製、商品名「酸化亜鉛1種」、比重5.7
・炭酸カルシウム:備北粉化工業株式会社「ホワイトンBF-300」、比重2.93
・水酸化アルミニウム:林化成株式会社「C-305」、比重2.42
・亜リン酸アルミニウム:太平化学産業社製「APA100」
・ポリリン酸アンモニウム:クラリアント社製「AP422」
(5)有機難燃剤
・メラミンシアヌレート:日産化学工業株式会社製「MC-4000」
・EDAP(エチレンジアミンリン酸塩) Albright & Wilson製「Amgard EDAP」
【0075】
【0076】
各実施例の熱膨張性耐火材は、60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が低く、水に浸漬後でも膨張倍率及び残渣硬さが一定の水準で維持された。そのため、防火設備、特に、水に接触し、または、高湿となりやすい防火設備の下部に搭載されても、長期間にわたって良好な耐火性能を維持できる。
一方で、各比較例の熱膨張性耐火材は、60℃で1000時間水に浸漬した際の溶出率が高い。そのため、防火設備、特に、水に接触し、または、高湿となりやすい防火設備の下部に搭載されると、長期間にわたって良好な耐火性能を維持するのが難しい。さらに、溶出率が高いことから、リン成分などが溶出して防火設備を着色して、防火設備の外観を損なるおそれがある。