(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161125
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】自動運転システム及び自動運転方法
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
A01B69/00 303A
A01B69/00 303B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024145366
(22)【出願日】2024-08-27
(62)【分割の表示】P 2020095932の分割
【原出願日】2020-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄司
(57)【要約】
【課題】穀稈の倒伏状態に応じた走行経路を作成して、倒伏領域でも適切に自動運転を行うことができる
自動運転システム及び自動運転方法を提供する。
【解決手段】
自動運転システムは、圃場内で穀稈が倒伏している倒伏領域
の穀稈の倒伏方向を含む倒伏情報を自動又は手動で設定する倒伏情報設定部61
と、倒伏領域内の穀稈を倒伏方向に対して所定の推奨刈取方向に刈り取る一方向刈対応経路を含む走行経路を作成する走行経路作成部62と、走行経路に従ってコンバイン1の自動走行及び自動刈取を制御する自動運転制御部63と、を備え、自動運転制御部63は、コンバイン1に一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行わせた後、コンバイン1を終了位置側から開始位置側まで後退させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内で穀稈が倒伏している倒伏領域の前記穀稈の倒伏方向を含む倒伏情報を自動又は手動で設定する倒伏情報設定部と、
前記倒伏領域内の前記穀稈を前記倒伏方向に対して所定の推奨刈取方向に刈り取る一方向刈対応経路を含む走行経路を作成する走行経路作成部と、
前記走行経路に従ってコンバインの自動走行及び自動刈取を制御する自動運転制御部と、
を備え、
前記自動運転制御部は、前記コンバインに前記一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行わせた後、前記コンバインを前記終了位置側から前記開始位置側まで後退させる、
自動運転システム。
【請求項2】
前記自動運転制御部は、前記コンバインを前記一方向刈対応経路の前記終了位置側から前記開始位置側まで後退させた後に他の一方向刈対応経路の開始位置に自動走行させる、
請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項3】
前記倒伏情報に基づいて前記コンバインの走行速度又は刈取速度を設定する、
請求項1又は2に記載の自動運転システム。
【請求項4】
前記倒伏情報は、前記穀稈の倒伏角度を含み、
前記穀稈の倒伏角度に基づいて前記コンバインの走行速度又は刈取速度を設定する、
請求項3に記載の自動運転システム。
【請求項5】
圃場内で穀稈が倒伏している倒伏領域の前記穀稈の倒伏方向を含む倒伏情報を自動又は手動で設定することと、
前記倒伏領域内の前記穀稈を前記倒伏方向に対して所定の推奨刈取方向に刈り取る一方向刈対応経路を含む走行経路を作成することと、
コンバインを前記走行経路に従って自動走行及び自動刈取を制御することと、
を有し、
前記コンバインを前記一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行わせた後、前記終了位置側から前記開始位置側まで後退させる、
自動運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の穀稈の倒伏状態に応じた走行経路に従って自動走行及び自動刈取を行う自動運転システム及び自動運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈の刈取を行うコンバインは、GPS等の衛星測位システムを利用して取得した自装置の位置情報に基づいて、予め設定された走行経路に従って自動走行及び自動刈取を行うことができる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される自律走行コンバインの収穫システムでは、事前に入力した刈取経路に基づいて自律走行するコンバインの機体前方上空を刈取経路に対応した飛行経路で飛行する自律式マルチコブターに圃場を映す電子カメラを設け、電子カメラで映した圃場映像をコンバイン側の本機制御部に電送する。コンバインは、本機制御部で圃場映像を映像分析して、障害物や穀稈倒伏程度が所定限度以上の倒伏域を回避する修正刈取経路を形成し、修正刈取経路に従って自律走行する。
【0004】
また、特許文献2に開示される農作業支援システムでは、コンバインは、作業者に穀稈の倒伏状態を入力可能にし、倒伏状態に応じた速度で自動運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-28688号公報
【特許文献2】特開2018-201342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンバインが作物の収穫作業を行うとき、作物の刈取方向は作物の種類や穀稈の倒伏状態によって好ましい方向があり、例えば、収穫する作物が稲や麦であって、穀稈の倒伏角度が大きい場合、作物を追い刈りでゆっくりと刈り取ることが好ましい。従来の自律走行コンバインでは、圃場形状をベースにして走行経路を自動的に作成するので、穀稈が所定角度以上倒伏している倒伏領域において、走行経路に対応する刈取が向い刈りになることがある。このように走行経路が向い刈りとなる倒伏領域では、自動刈取が困難となる。
【0007】
なお、コンバインには、自動運転によって操向を制御する一方、手動操作に応じて速度を制御するオート作業を行うものがあるが、このオート作業では、走行経路が向い刈りとなる倒伏領域を手動操作で迂回したり、手動操作で追い刈りしたりする等の、手動操作の対応が必要であった。また、コンバインには、自動運転によって操向及び速度を制御する無人作業を行うものがある。この無人作業では、走行経路が向い刈りとなる倒伏領域に対して、低速で自動刈取を行うことができるが、追い刈りに比べて的確に作業することが困難である。
【0008】
特許文献1に記載される技術では、コンバインは倒伏領域を回避して自動運転を継続することはできるが、倒伏領域の刈取を行うことができない。そのため、作業者はコンバインを倒伏領域で手動運転して、例えば、倒伏した稲や麦に対して追い刈りを行う必要があり、自動運転と手動運転とを切り替える手間が掛かり、また、手動運転の負担が掛かることになる。
【0009】
また、特許文献2に記載される技術では、コンバインは倒伏状態に応じた速度で自動運転を行うことはできるが、倒伏状態と刈取方向とを適切に対応させることはできない。そのため、倒伏した作物に対して刈取方向が適していない場合でも自動刈取を行い、例えば、倒伏した稲や麦に対して向い刈りとなる場合でもそのまま自動刈取を行うので、倒伏した作物を的確に刈り取ることができない。
【0010】
本発明は、穀稈の倒伏状態に応じた走行経路を作成して、倒伏領域でも適切に自動運転を行うことができる自動運転システム及び自動運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の自動運転システムは、圃場内で穀稈が倒伏している倒伏領域の前記穀稈の倒伏方向を含む倒伏情報を自動又は手動で設定する倒伏情報設定部と、前記倒伏領域内の前記穀稈を前記倒伏方向に対して所定の推奨刈取方向に刈り取る一方向刈対応経路を含む走行経路を作成する走行経路作成部と、前記走行経路に従ってコンバインの自動走行及び自動刈取を制御する自動運転制御部と、を備え、前記自動運転制御部は、前記コンバインに前記一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行わせた後、前記コンバインを前記終了位置側から前記開始位置側まで後退させる。
【0012】
上記の本発明の自動運転システムにおいて、前記自動運転制御部は、前記コンバインを前記一方向刈対応経路の前記終了位置側から前記開始位置側まで後退させた後に他の一方向刈対応経路の開始位置に自動走行させる。
【0013】
上記の本発明の自動運転システムにおいて、前記倒伏情報に基づいて前記コンバインの走行速度又は刈取速度を設定する。
【0014】
上記の本発明の自動運転システムにおいて、前記倒伏情報は、前記穀稈の倒伏角度を含み、前記穀稈の倒伏角度に基づいて前記コンバインの走行速度又は刈取速度を設定する。
【0015】
上記の本発明の自動運転方法は、圃場内で穀稈が倒伏している倒伏領域の前記穀稈の倒伏方向を含む倒伏情報を自動又は手動で設定することと、前記倒伏領域内の前記穀稈を前記倒伏方向に対して所定の推奨刈取方向に刈り取る一方向刈対応経路を含む走行経路を作成することと、コンバインを前記走行経路に従って自動走行及び自動刈取を制御することと、を有し、前記コンバインを前記一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行わせた後、前記終了位置側から前記開始位置側まで後退させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、穀稈の倒伏状態に応じた走行経路を作成して、倒伏領域でも適切に自動運転を行うことができる自動運転システム及び自動運転方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンバインの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るコンバインの移動局及び基地局のブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るコンバインのブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を枕地と共に示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を枕地と共に示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を示す平面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、走行経路と共に示す平面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、走行経路と共に示す平面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、倒伏領域及び走行経路と共に示す平面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、倒伏領域及び走行経路と共に示す平面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、倒伏影響領域を一方向刈対応領域及び一方向刈不要領域に分割して示す平面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、倒伏影響領域を一方向刈対応領域及び一方向刈不要領域に分割して示す平面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場を、修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図17】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、倒伏領域及び走行経路と共に示す平面図である。
【
図18】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、倒伏影響領域を一方向刈対応領域及び一方向刈不要領域に分割して示す平面図である。
【
図19】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図20】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、倒伏領域及び走行経路と共に示す平面図である。
【
図21】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、倒伏影響領域を一方向刈対応領域及び一方向刈不要領域に分割して示す平面図である。
【
図22】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図23】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、倒伏領域及び走行経路と共に示す平面図である。
【
図24】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、倒伏影響領域を一方向刈対応領域及び一方向刈不要領域に分割して示す平面図である。
【
図25】本発明の実施形態に係るコンバインの第1実施例の圃場の他の例を、修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図26】本発明の実施形態に係るコンバインの第2実施例の圃場を、倒伏領域と共に示す平面図である。
【
図27】本発明の実施形態に係るコンバインの第3実施例の圃場を、倒伏領域と共に示す平面図である。
【
図28】本発明の実施形態に係るコンバインの第2実施例の圃場を、倒伏領域及び走行経路と共に示す平面図である。
【
図29】本発明の実施形態に係るコンバインの第3実施例の圃場を、倒伏領域及び走行経路と共に示す平面図である。
【
図30】本発明の実施形態に係るコンバインの第2実施例の圃場を、倒伏領域及び修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図31】本発明の実施形態に係るコンバインの第2実施例の圃場を、倒伏領域及び修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図32】本発明の実施形態に係るコンバインの第2実施例の圃場を、倒伏領域及び更に修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図33】本発明の実施形態に係るコンバインの第3実施例の圃場を、倒伏領域及び修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図34】本発明の実施形態に係るコンバインの第3実施例の圃場を、倒伏領域及び修正した走行経路と共に示す平面図である。
【
図35】本発明の実施形態に係るコンバインの第3実施例の圃場を、倒伏領域及び更に修正した走行経路と共に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態によるコンバイン1について説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場の穀稈の刈取等の作業を行うものである。例えば、コンバイン1は、自動運転によって操向を制御する一方、手動操作に応じて走行速度を制御するオート作業や、自動運転によって操向及び走行速度を制御する無人作業を行うように構成され、圃場内で自律して走行、旋回及び作業することができる。
【0019】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0020】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられていて、左右一対のクローラ式走行装置11と、トランスミッション(図示せず)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン27から伝達される動力(例えば、回転動力)によって、クローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置11へ伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0021】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられる。刈取部3は、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16とを備える。デバイダ13は、圃場の穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
【0022】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0023】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置21と、風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0024】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク24と、排出装置25とを備える。グレンタンク24は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置25は、オーガ等で構成され、グレンタンク24に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。
【0025】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。排藁搬送装置は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を排藁切断装置へ搬送する。排藁切断装置は、排藁搬送装置によって搬送された排藁を切断して機外へ排出する。
【0026】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、貯留部6の前方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン27を備える。動力部8は、エンジン27が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。
【0027】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、運転席29と、複数の操作具(図示せず)とを備える。運転席29は、作業者が座る座席であり、例えば、右側に設けられる。操作具は、コンバイン1の進行方向を変更し、すなわちコンバイン1を操向操作するためのハンドルを含み、作業者は、ハンドル等の操作具を操作することにより、コンバイン1の走行や作業を操縦できる。また、操作具は、エンジン27の回転速度、すなわちコンバイン1の走行部2の走行速度を調整するアクセルや、刈取部3を昇降させる昇降スイッチを含む。また、操作具は、下記の機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57が撮影した圃場画像等を表示可能なモニタを備える。
【0028】
コンバイン1は、コンバイン1の周囲の画像を撮影する機体カメラ32(
図3参照)を備えている。機体カメラ32は、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。
【0029】
コンバイン1は、
図2に示すように、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する移動局34を備えている。移動局34は、例えば、移動通信機35と、移動GPSアンテナ36と、データ受信アンテナ37とを備える。移動通信機35は、移動GPSアンテナ36によってGPS衛星と通信することにより、移動局34の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を取得する。
【0030】
また、コンバイン1の作業対象となる圃場の周囲の畦等には、
図2に示すように、基地局39が設置されていて、基地局39は、固定通信機40と、固定GPSアンテナ41と、データ送信アンテナ42とを備える。固定通信機40は、固定GPSアンテナ41によってGPS衛星と通信することにより、基地局39の位置情報を取得する。固定通信機40は、基地局39の位置情報に基づく補正情報を、データ送信アンテナ42を介して移動通信機35へ送信する。
【0031】
また、基地局39は、圃場を撮影する固定カメラ43を備えている。固定カメラ43は、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。固定通信機40は、固定カメラ43が撮影した画像を取得して、データ送信アンテナ42を介して移動通信機35へ送信する。
【0032】
移動局34の移動通信機35は、データ受信アンテナ37を介して基地局39の固定通信機40と無線通信を行う。移動通信機35は、補正情報を固定通信機40から受信し、補正情報に基づいて移動局34の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を補正する。移動通信機35は、固定カメラ43が撮影した圃場画像を固定通信機40から受信する。
【0033】
次に、コンバイン1の制御装置50について
図3を参照して説明する。
【0034】
制御装置50は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51に接続されている。記憶部51は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。例えば、制御装置50は、移動局34を制御して移動通信機35からコンバイン1の位置情報を取得する。
【0035】
コンバイン1は、通信部52を備えていて、制御装置50は、通信部52を介して、作業者の保有する携帯端末53等の外部機器と無線通信を行い、携帯端末53との間で各種情報を送受信する。携帯端末53は、コンバイン1を遠隔操作可能な端末であって、例えば、タッチパネルを備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。なお、携帯端末53と同様の操作具が操縦部9に備えられてもよい。携帯端末53は、画像を撮影する携帯カメラ54を備えている。携帯カメラ54は、例えば、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。
【0036】
携帯端末53は、作業対象の圃場に係る圃場情報や、圃場内で穀稈が所定角度以上倒伏している倒伏領域に係る倒伏情報について、タッチパネルのタッチ操作等による入力操作を受け付けるように構成される。携帯端末53は、例えば、圃場外周を構成する圃場端の形状(以下、圃場形状と称する)、圃場端の位置情報(座標等)、圃場における穀稈の条方向等を圃場情報として設定可能な圃場情報設定画面を表示し、また、倒伏領域形状、倒伏領域外周の位置情報(座標等)、穀稈の倒伏方向及び穀稈の倒伏角度等を倒伏情報として設定可能な倒伏情報設定画面を表示する。
【0037】
また、携帯端末53は、圃場情報に基づく圃場マップを表示しつつ、圃場マップ上にコンバイン1の走行経路を進行方向が分かるように表示し、更に圃場マップ上に倒伏領域を表示することもできる。なお、携帯端末53は、倒伏情報設定画面に圃場マップを表示して、圃場マップに対して倒伏領域を指定させてもよい。
【0038】
制御装置50は、通信部52を介して、空撮カメラ57を備えたドローン等の空撮装置56と無線通信を行う。なお、空撮装置56は、携帯端末53と無線通信を行ってもよい。制御装置50又は携帯端末53は、作業者による空撮装置56の動作指示を受け付け、空撮装置56は、通信部52又は携帯端末53から受信した動作指示に応じて動作する。また、制御装置50又は携帯端末53は、作業者による圃場の撮影指示を受け付け、空撮装置56は、通信部52又は携帯端末53から撮影指示を受信する。空撮装置56は、撮影指示に応じて空撮カメラ57を制御し、空撮カメラ57は、圃場を撮影して圃場画像を取得する。空撮装置56は、空撮カメラ57が撮影した圃場画像を通信部52又は携帯端末53へ送信する。
【0039】
制御装置50は、機体カメラ32を制御して圃場画像を撮影し、操縦部9のモニタに表示する。また、制御装置50は、移動通信機35を制御して固定カメラ43が撮影した圃場画像を固定通信機40から受信し、操縦部9のモニタに表示する。制御装置50は、通信部52を制御して携帯カメラ54が撮影した圃場画像を携帯端末53から受信し、操縦部9のモニタに表示する。制御装置50は、通信部52を制御して空撮カメラ57が撮影した圃場画像を空撮装置56から受信し、操縦部9のモニタに表示する。
【0040】
また、制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、圃場情報設定部60、倒伏情報設定部61、走行経路作成部62、自動運転制御部63として動作する。圃場情報設定部60、倒伏情報設定部61、走行経路作成部62及び自動運転制御部63は、圃場の穀稈の倒伏状態に応じた走行経路に従って自動走行及び自動刈取を行う自動運転システムや自動運転方法として機能する。
【0041】
圃場情報設定部60は、作業対象の圃場に係る圃場情報を自動又は手動で設定して記憶部51に記憶する。例えば、圃場情報設定部60は、携帯端末53の圃場情報設定画面に対する圃場情報の入力操作に応じて、圃場情報を手動で設定する。あるいは、圃場情報設定部60は、コンバイン1の機体カメラ32、基地局39の固定カメラ43、携帯端末53の携帯カメラ54又は空撮装置56の空撮カメラ57によって圃場を撮影した圃場画像を取得し、圃場画像を画像解析することによって圃場情報を自動で取得する。なお、圃場情報設定部60は、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57のうち、1つのカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよく、2つ以上のカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよい。
【0042】
また、圃場情報設定部60は、携帯端末53を介して手動で設定される圃場情報と、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57の圃場画像から自動で設定される圃場情報と整合性をとることでより正確な圃場情報を取得することもできる。
【0043】
倒伏情報設定部61は、圃場内で穀稈が所定角度以上倒伏している倒伏領域に係る倒伏情報を自動又は手動で設定して記憶部51に記憶する。なお、倒伏領域は、倒伏した穀稈だけに限定されず、倒伏した穀稈を含む範囲であって、穀稈の条方向と、条方向に対する交差方向とに延びる矩形状に設定されるとよい。これにより、倒伏領域を含む刈取領域と、倒伏領域を含まない刈取領域とを明確に識別しやすくなり、それぞれに適した走行経路を設定し易くなる。
【0044】
例えば、倒伏情報設定部61は、携帯端末53の倒伏情報設定画面に対する倒伏情報の入力操作に応じて、倒伏情報を手動で設定する。あるいは、倒伏情報設定部61は、コンバイン1の機体カメラ32、基地局39の固定カメラ43、携帯端末53の携帯カメラ54又は空撮装置56の空撮カメラ57によって圃場を撮影した圃場画像を取得し、圃場画像を画像解析することによって、倒伏領域形状、倒伏領域外周の位置情報、穀稈の倒伏方向及び倒伏角度等の倒伏情報を自動で取得する。例えば、倒伏していない正常な穀稈からなる圃場の画像を予め登録しておいて、登録した正常な圃場の画像と撮影した圃場画像とを比較することで、倒伏情報を解析する。なお、倒伏情報設定部61は、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57のうち、1つのカメラの圃場画像から倒伏情報を解析してもよく、2つ以上のカメラの圃場画像から倒伏情報を解析してもよい。
【0045】
また、倒伏情報設定部61は、携帯端末53を介して手動で設定される倒伏情報と、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57の圃場画像から自動で設定される倒伏情報と整合性をとることでより正確な倒伏情報を取得することもできる。
【0046】
走行経路作成部62は、圃場をコンバイン1が自動運転で自動走行及び自動刈取を行うために参照する走行経路を作成して記憶部51に記憶する。走行経路は、走行に関する走行設定だけでなく、刈取等の作業に関する作業設定も含む。走行設定は、圃場における走行位置に加えて、各走行位置での走行速度及び進行方向(操向方向及び前進又は後退)を含む。作業設定は、各走行位置での刈取の稼働又は停止、刈取速度及び刈取高さ、他の作業に関する情報を含む。走行経路作成部62は、走行しながら刈取を行う経路を直線状に設定し、圃場内の未刈穀稈からなる領域に対して、複数の直線状経路を組み合わせて走行経路を設定するとよい。
【0047】
走行経路作成部62は、未刈穀稈領域において周囲から中央側に向かって刈取を進めるように走行経路を作成するとよく、また、運転席29側が未刈穀稈領域の外側になるように走行経路を作成するとよい。なお、走行経路作成部62は、走行経路の新規作成又は修正において、複数候補の走行経路を仮作成して、より作業効率の良い走行経路を選択してもよい。なお、作業効率は、刈取を伴う走行だけでなく、空走距離や旋回等も考慮して判断される。
【0048】
先ず、走行経路作成部62は、作業対象の圃場に対応する走行経路を予め作成する。走行経路作成部62は、携帯端末53を用いた入力操作に応じて手動で走行経路を設定してもよく、あるいは、圃場情報設定部60で設定された圃場情報に基づいて自動で走行経路を設定してもよい。走行経路作成部62は、往復刈り走行や回り刈り走行等の所定の走行パターンの走行経路を設定する。走行経路には、穀稈の刈取を行う直線状経路以外に、一の直線状経路から他の直線状経路へ移動する空走経路が含まれるところ、走行経路作成部62は、空走経路の空走距離がより短くなるように走行経路を作成するとよい。
【0049】
また、走行経路作成部62は、設定されている走行経路と、圃場情報及び倒伏情報設定部61で設定された倒伏情報とに基づいて、倒伏領域内の走行経路に対応する刈取が適切か否かを判定し、適切でない場合には、その倒伏領域内の穀稈を適切に刈り取るように、走行経路を修正する。走行経路作成部62は、修正後の走行経路を解析して、空走経路の空走距離がより短くなるように走行経路を修正するとよい。
【0050】
例えば、走行経路作成部62は、倒伏領域内の走行経路の進行方向と、倒伏領域内の穀稈の倒伏方向とに基づいて、倒伏領域内の穀稈に対する刈取方向を判定する。進行方向が穀稈の倒伏方向と同方向である場合、刈取方向は追い刈りとなり、進行方向が穀稈の倒伏方向と逆方向である場合、刈取方向は向い刈りとなる。また、進行方向が左倒伏の穀稈に対向している場合、刈取方向は左倒伏刈りとなり、進行方向が右倒伏の穀稈に対向している場合、刈取方向は右倒伏刈りとなる。作物が稲や麦等の場合には、追い刈り又は左倒伏刈りが好ましい推奨刈取方向であり、その他の場合には、向い刈りが推奨刈取方向であってもよい。
【0051】
そして、走行経路作成部62は、倒伏領域の走行経路の刈取方向が所定の推奨刈取方向と異なる場合、例えば、稲や麦等の穀稈に対して追い刈り又は左倒伏刈りと異なる向い刈り等である場合、倒伏領域の走行経路の修正が必要であると判定して、倒伏領域の刈取方向が推奨刈取方向となるように走行経路を修正する。稲や麦等を刈り取る走行経路を修正する場合、走行経路作成部62は、追い刈りを優先的に設定するとよく、空走距離をより短くするために、追い刈りに代えて左倒伏刈りを設定してもよい。走行経路作成部62は、例えば、倒伏領域の刈取方向が向い刈りであれば、進行方向が逆方向となるように走行経路を修正することで、倒伏領域の刈取方向を推奨刈取方向の追い刈りに修正することができる。
【0052】
自動運転制御部63は、走行経路作成部62で作成された走行経路の走行設定及び作業設定に基づいて、動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御して、走行経路に応じた自動走行及び自動刈取を実行させる。自動運転制御部63は、刈取部3によって走行経路上の未刈穀稈を自動的に刈り取る。また、自動運転制御部63は、自動刈取に伴い、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を制御して、刈取後の穀稈の脱穀、脱穀後の穀粒や藁屑の選別、選別後の穀粒の貯留、脱穀後の排藁の処理等を自動的に実行させる。なお、コンバイン1は、ジャイロセンサ及び方位センサを備えてコンバイン1の変位情報及び方位情報を取得し、自動運転制御部63は、変位情報及び方位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を調整してもよい。
【0053】
次に、走行経路作成部62によって、往復刈り走行の走行経路を予め作成した後、倒伏情報に基づいて走行経路を修正する例を第1実施例として説明する。なお、第1実施例では、
図4及び
図5に示すように矩形状に形成されていて稲や麦等を作物とする圃場H1及びH2を作業対象とし、
図4及び
図5の紙面縦方向が圃場H1及びH2の穀稈の条方向である。
図4及び
図5等の各図において、圃場H1及びH2の未刈穀稈領域は、右肩上がりの斜線で示す。
図5に示す圃場H2は、
図4に示す圃場H1よりも条の配列方向が長く、条の数が多い。
【0054】
第1実施例では、先ず、往復刈り走行の自動運転を開始する前に、往復刈り走行時の旋回スペースを確保するために、コンバイン1を手動で操作して走行及び刈取させることにより、
図6及び
図7に示すように圃場H1及びH2の外周に沿った枕地を作成する。
図6及び
図7等の各図において、刈取後の経路は、一点鎖線で示す。作業者は、手動操作によってコンバイン1の動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御して、圃場H1及びH2の内側を圃場端に沿って周回するように走行及び刈取を行う。これにより、自動走行で旋回するための枕地が圃場端に沿って作成される。なお、
図8に示すように、条の配列方向が長い圃場H3では、自動運転を行う未刈穀稈領域を中割Cで分割してもよい。
【0055】
次に、圃場情報設定部60は、自動又は手動で、圃場H1及びH2の未刈穀稈領域の圃場情報として、圃場形状となる未刈穀稈領域の形状、圃場端となる未刈穀稈領域の端部の位置情報、未刈穀稈の条方向等を設定する。
【0056】
走行経路作成部62は、未刈穀稈領域の圃場情報に基づいて、
図9及び
図10に示すように、未刈穀稈領域を往復刈り走行で自動走行及び自動刈取する走行経路S1及びS2を予め作成して記憶部51に記憶する。
図9及び
図10では、条方向に沿って直線状経路が往復する走行経路S1及びS2を示す。なお、
図4に示す圃場H1よりも条の配列方向が長い
図5に示す圃場H2では、未刈穀稈領域を条の配列方向に分割して、分割した領域のそれぞれで往復刈り走行を行うように走行経路S2を設定してよい。また、
図8に示すように条の配列方向が長い圃場H3では、中割Cで分割した領域を順に刈り取るように走行経路を設定してよい。
【0057】
また、倒伏情報設定部61は、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57が取得した圃場画像に基づいて圃場H1又はH2から倒伏領域を検出した場合に、自動で倒伏情報を設定し、あるいは作業者が圃場H1又はH2を視認して倒伏領域を検出した場合に、作業者による携帯端末53の入力操作に応じて手動で倒伏情報を設定して、記憶部51に記憶する。第1実施例では、
図11及び
図12に示すように、倒伏情報設定部61によって、圃場H1及びH2の未刈穀稈領域において穀稈が進行方向と逆方向に倒伏している倒伏領域T1及びT2の倒伏情報が設定される。
図11及び
図12等の各図において、倒伏領域T1及びT2は、左肩上がりの斜線で示し、穀稈の倒伏方向は、白抜き矢印で示す。
【0058】
倒伏情報設定部61によって倒伏情報が設定されると、走行経路作成部62は、この倒伏情報に基づいて往復刈り走行の走行経路S1及びS2を修正する。第1実施例では、
図11及び
図12に示すように、倒伏領域T1及びT2の穀稈が進行方向と逆方向に倒伏しているので、修正前の走行経路S1及びS2の刈取方向が推奨刈取方向と異なる向い刈りとなるため、倒伏領域T1及びT2の進行方向を逆方向にして追い刈りになるように走行経路S1及びS2を修正することになる。走行経路作成部62は、倒伏領域T1及びT2において倒伏した穀稈を適切に刈り取るために、倒伏穀稈に特有の走行設定及び作業設定を倒伏領域T1及びT2の走行経路S1及びS2に対して設定する。例えば、走行経路作成部62は、倒伏穀稈に特有の走行設定として走行速度を低速に設定し、倒伏穀稈に特有の作業設定として刈取速度を高速に設定する。走行経路作成部62は、穀稈の倒伏角度に合わせた走行速度や刈取速度を倒伏領域T1及びT2の走行経路S1及びS2に対して設定してよい。
【0059】
ところで、倒伏領域T1及びT2の走行経路S1及びS2の修正は、倒伏領域T1及びT2を含む条の全体に亘って走行に影響を及ぼし、換言すれば、倒伏領域T1及びT2を通過する直線状経路の全体に亘って走行に影響を及ぼすことになる。そこで、走行経路作成部62は、
図13及び
図14に示すように、刈取方向が推奨刈取方向と異なる倒伏領域T1及びT2を通過する直線状経路を、一方向刈対応経路として判定し、この一方向刈対応経路を含む領域を一方向刈対応領域P1及びP2として判定する。
図13及び
図14等の各図において、一方向刈対応領域P1及びP2は、太線で示す。初めに設定される一方向刈対応領域P1及びP2は、条方向において未刈穀稈領域の条を同じ長さを有する。
【0060】
走行経路作成部62は、一方向刈対応領域P1及びP2では、倒伏領域T1及びT2か否かに拘わらず、倒伏領域T1及びT2に設定すべき推奨刈取方向を一方向刈対応経路の全体に亘って設定し、すなわち、倒伏領域T1及びT2に設定すべき進行方向を一方向刈対応経路の全体に亘って設定し、この進行方向の一方向刈を行うように走行経路S1及びS2を修正する。第1実施例では、
図15及び
図16に示すように、走行経路作成部62は、一方向刈対応経路の進行方向を逆方向にして追い刈りになるように走行経路S1及びS2を修正する。このとき、走行経路作成部62は、一方向刈対応経路において穀稈の倒伏方向側の端部に終了位置を設定し、終了位置と反対側の端部に開始位置を設定する。
【0061】
また、第1実施例の圃場H1及びH2は、複数の条に亘って穀稈が倒伏した倒伏領域T1及びT2を有しているので、走行経路作成部62は、複数の一方向刈対応経路を有する一方向刈対応領域P1及びP2を判定する。この場合、走行経路作成部62は、例えば、
図15及び
図16に示すように、条の配列方向の一端側の一方向刈対応経路から自動刈取を開始し、一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行った後、終了位置から開始位置まで後退し、隣接する他の一方向刈対応経路の一方向刈に移行するように、走行経路S1及びS2を修正する。
図15及び
図16等の各図において、後退は破線で示す。
【0062】
ところで、倒伏領域T1及びT2の走行経路S1及びS2の修正は、倒伏領域T1及びT2を含む直線状経路だけでなく、この直線状経路と連結される他の直線状経路であって倒伏領域T1及びT2を含まない直線状経路の走行にも影響を及ぼすことになる。
図15及び
図16に示す走行経路S1及びS2の往復刈り走行では、倒伏領域T1及びT2を含む直線状経路である一方向刈対応経路を往路又は復路とした場合、倒伏領域T1及びT2を含まない直線状経路が復路又は往路となる。このような往路又は復路の一方向刈対応経路を修正すると、これに連結される復路又は往路の直線状経路の走行に影響を及ぼすことになる。
【0063】
そこで、走行経路作成部62は、
図15及び
図16に示すように、倒伏領域T1及びT2の走行経路S1及びS2の修正に起因して走行が影響を受ける直線状経路を倒伏影響経路として判定し、この倒伏影響経路を含む領域を倒伏影響領域F1及びF2として判定する。従って、倒伏影響経路には一方向刈対応経路が含まれ、倒伏影響領域F1及びF2には一方向刈対応領域P1及びP2が含まれる。走行経路作成部62は、倒伏影響経路のうち、一方向刈対応経路以外の経路を一方向刈不要経路として判定し、倒伏影響領域F1及びF2において、一方向刈対応領域P1及びP2以外の領域を一方向刈不要領域N1及びN2として判定する。
図13及び
図14等の各図において、一方向刈不要領域N1及びN2は、通常線で示す。初めに設定される一方向刈不要領域N1及びN2は、条方向において未刈穀稈領域の条を同じ長さを有する。
【0064】
一方向刈不要領域N1及びN2は倒伏領域T1及びT2を含まないので、一方向刈不要経路では一方向刈を行う必要はなく刈取方向を自在に設定できる。一方向刈対応経路は一方向刈に制限されるので、走行経路作成部62は、倒伏影響経路のうち、一方向刈対応経路について上記のように走行経路S1及びS2を修正した後、一方向刈に制限されない一方向刈不要経路の走行経路S1及びS2を修正するとよい。
【0065】
なお、第1実施例では、走行経路作成部62が一方向刈不要領域N1及びN2において一方向刈不要経路を往復刈り走行するように走行経路S1及びS2を修正する例を示すが、一方向刈不要領域N1及びN2の修正は往復刈り走行に限定されず、走行経路作成部62は、一方向刈不要領域N1及びN2において回り刈り走行するように走行経路S1及びS2を修正してもよい。また、第1実施例では、修正前の走行経路S1及びS2が一方向刈不要領域N1及びN2から開始されていたので、空走距離を短くするために、修正後の走行経路S1及びS2でも一方向刈不要領域N1及びN2から開始しているが、修正前の走行経路S1及びS2が一方向刈対応領域P1及びP2から開始されていた場合には、修正後の走行経路S1及びS2でも一方向刈対応領域P1及びP2から開始してよい。
【0066】
更に、走行経路作成部62は、一方向刈対応領域P1及びP2における倒伏領域T1及びT2の位置に基づいて、一方向刈対応領域P1及びP2の中で倒伏領域T1及びT2を含まない領域(以下、通常領域と称する)を判定する。そして、走行経路作成部62は、通常領域を倒伏領域T1及びT2と連続して刈り取る場合に比べて、通常領域を倒伏領域T1及びT2とは独立して刈り取る場合に、より良好な作業効率を奏するとき、初めに設定された一方向刈対応領域P1及びP2を修正して、通常領域を更に一方向刈不要領域N1及びN2として判定する。倒伏領域T1及びT2と独立した通常領域の刈取とは、倒伏領域T1及びT2の一方向刈と異なる走行パターンによる刈取であって、通常領域のみに往復刈り走行や回り刈り走行等の所定の走行パターンを設定した場合の刈取である。
【0067】
図15及び
図16に示すように、一方向刈対応経路が、条方向に沿った直線状経路で構成されている場合、一方向刈対応領域P1及びP2は、条の配列方向において倒伏領域T1及びT2と同じ幅を有し、条方向に沿って形成されている。そのため、一方向刈対応領域P1及びP2には、倒伏領域T1及びT2と通常領域とが条方向に並んで配置されることになる。
【0068】
例えば、
図15に示す例の圃場H1では、通常領域が倒伏領域T1の前後に配置されているが、通常領域の条方向の長さが比較的短い。この場合、走行経路作成部62は、通常領域までの空走距離や通常領域での旋回を考慮すると、独立した走行パターンを通常領域に設定して通常領域の自動運転を行うよりも、通常領域と倒伏領域T1とに連続した一方向刈を設定して通常領域の自動運転を行う方が、空走距離が短く、旋回が少なくなるので、作業効率が良いと判定できる。そのため、走行経路作成部62は、初めに設定された一方向刈対応領域P1を修正せず、独立した走行経路S1を通常領域に設定することなく、上記したように一方向刈対応領域P1の全体に亘って一方向刈の走行経路S1を設定することになる。
【0069】
あるいは、
図17に示す例の圃場H4では、通常領域が倒伏領域T4の前後に配置されているところ、倒伏領域T4の後方の通常領域の条方向の長さは比較的短く、倒伏領域T4の前方の通常領域の条方向の長さは比較的長い。この圃場H4でも、走行経路作成部62は、圃場情報に基づいて走行経路S4を設定し、一方向刈対応領域P4及び一方向刈不要領域N4を設定する。
【0070】
走行経路作成部62は、倒伏領域T4の後方の通常領域に対しては、独立した走行経路S4を作業効率良く設定することができないが、倒伏領域T4の前方の通常領域に対しては、独立した走行経路S4を作業効率良く設定することができる。そのため、走行経路作成部62は、
図18に示すように、初めに設定された一方向刈対応領域P4を修正し、前方の通常領域に一方向刈不要領域N4を設定する。そして、
図19に示すように、倒伏領域T4と後方の通常領域とからなる一方向刈対応領域P4に対して一方向刈の走行経路S4を設定し、前方の通常領域からなる一方向刈不要領域N4に対して、倒伏領域T4とは独立した走行経路S4を設定する。
【0071】
なお、
図19に示す例では、前方の通常領域の刈取をした後で、倒伏領域T4及び後方の通常領域の刈取をしているが、他の例では、条方向に従って、倒伏領域T4及び後方の通常領域の刈取をした後で、前方の通常領域の刈取をしてもよい。また、
図19に示す例では、前方の通常領域に対して、回り刈りを設定しているが、往復刈りを設定してもよい。
【0072】
あるいは、
図20に示す例の圃場H5では、通常領域が倒伏領域T5の前後に配置されているところ、倒伏領域T5の前方の通常領域の条方向の長さは比較的短く、倒伏領域T5の後方の通常領域の条方向の長さは比較的長い。この圃場H5でも、走行経路作成部62は、圃場情報に基づいて走行経路S5を設定し、一方向刈対応領域P5及び一方向刈不要領域N5を設定する。
【0073】
走行経路作成部62は、倒伏領域T5の前方の通常領域に対しては、独立した走行経路S5を作業効率良く設定することができないが、倒伏領域T5の後方の通常領域に対しては、独立した走行経路S5を作業効率良く設定することができる。そのため、走行経路作成部62は、
図21に示すように、初めに設定された一方向刈対応領域P5を修正し、後方の通常領域に一方向刈不要領域N5を設定する。そして、
図22に示すように、倒伏領域T5と前方の通常領域とからなる一方向刈対応領域P5に対して一方向刈の走行経路S5を設定し、後方の通常領域からなる一方向刈不要領域N5に対して、倒伏領域T5とは独立した走行経路S5を設定する。
【0074】
なお、
図22に示す例では、後方の通常領域に対して、回り刈りを設定しているが、往復刈りを設定してもよい。
【0075】
あるいは、
図23に示す例の圃場H6では、通常領域が倒伏領域T6の前後に配置されているところ、通常領域の条方向の長さが比較的長い。この圃場H6でも、走行経路作成部62は、圃場情報に基づいて走行経路S6を設定し、一方向刈対応領域P6及び一方向刈不要領域N6を設定する。走行経路作成部62は、倒伏領域T6の前後の通常領域の両方に対して、独立した走行経路S6を作業効率良く設定することができる。そのため、走行経路作成部62は、
図24に示すように、初めに設定された一方向刈対応領域P6を修正し、前後の通常領域に一方向刈不要領域N6を設定する。そして、
図25に示すように、倒伏領域T6からなる一方向刈対応領域P6に対して一方向刈の走行経路S6を設定し、前後の通常領域からなる一方向刈不要領域N6のそれぞれに対して、倒伏領域T6とは独立した走行経路S6を設定する。
【0076】
なお、
図25に示す例では、後方の通常領域、前方の通常領域、倒伏領域T6の順で刈取を行っているが、他の例では、条方向に従って、後方の通常領域、倒伏領域T6、前方の通常領域の順で刈取を行ってもよい。また、
図25に示す例では、各通常領域に対して、回り刈りを設定しているが、往復刈りを設定してもよい。
【0077】
第1実施例において、走行経路作成部62が走行経路S1、S2、S4、S5又はS6を作成及び修正すると、自動運転制御部63は、走行経路S1、S2、S4、S5又はS6に従って走行部2及び刈取部3を制御して、圃場H1、H2、H4、H5又はH6の未刈穀稈領域に対して自動走行及び自動刈取を実行する。
【0078】
なお、上記した第1実施例では、走行経路S1、S2、S4、S5又はS6を予め作成するときに倒伏情報設定部61で倒伏情報を設定すると共に倒伏情報に基づいて走行経路S1、S2、S4、S5又はS6を修正する例を説明したが、本発明において倒伏情報を設定するタイミングや、倒伏情報に基づいて走行経路S1、S2、S4、S5又はS6を作成又は修正するタイミングはこの例に限定されない。例えば、倒伏情報設定部61は、自動走行及び自動刈取の実行中に倒伏領域T1、T2、T4、T5又はT6を検出したときに倒伏情報を設定してもよい。この場合、走行経路作成部62は、自動走行及び自動刈取の実行中に、倒伏情報に基づいて走行経路S1、S2、S4、S5又はS6を修正してよい。走行経路作成部62は、コンバイン1が倒伏領域T1、T2、T4、T5又はT6に差し掛かる前に、自動運転を実行しながら走行経路S1、S2、S4、S5又はS6の修正を行ってもよいが、自動運転を一時停止して走行経路S1、S2、S4、S5又はS6の修正を行ってもよい。
【0079】
若しくは、倒伏情報設定部61は、走行経路作成部62で走行経路S1、S2、S4、S5又はS6が予め作成される前に倒伏領域T1、T2、T4、T5又はT6を検出したときに倒伏情報を設定してもよい。この場合、走行経路作成部62は、圃場情報及び倒伏情報に基づいて、倒伏領域T1、T2、T4、T5又はT6を一方向刈するように走行経路S1、S2、S4、S5又はS6を予め作成してよい。
【0080】
なお、上記した第1実施例では、一方向刈対応領域P1、P2、P4、P5又はP6の走行経路S1、S2、S4、S5又はS6の修正として、一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行った後、終了位置から開始位置まで後退し、隣接する他の一方向刈対応経路の一方向刈に移行する例を説明したが、本発明において一方向刈対応領域P1、P2、P4、P5又はP6の走行経路S1、S2、S4、S5又はS6の修正はこの例に限定されない。例えば、走行経路作成部62は、一方向刈対応領域P1、P2、P4、P5又はP6と一方向刈不要領域N1、N2、N4、N5又はN6とが、条の配列方向に並んでいる場合に、一方向刈対応領域P1、P2、P4、P5又はP6の各一方向刈対応経路を一方向刈の往路とする一方、この往路に対応する復路を一方向刈不要領域N1、N2、N4、N5又はN6に設定するように、走行経路S1、S2、S4、S5又はS6を修正してもよい。これにより、一方向刈対応領域P1、P2、P4、P5又はP6と一方向刈不要領域N1、N2、N4、N5又はN6とで交互に刈取を行うことになり、後退の空走距離を省くことができる。
【0081】
次に、走行経路作成部62によって、回り刈り走行の走行経路を予め作成した後、倒伏情報に基づいて走行経路を修正する例を、第2実施例及び第3実施例として説明する。なお、第2実施例及び第3実施例でも、
図26及び
図27に示すように、矩形状に形成されていて稲や麦等を作物とする圃場H7及びH8を作業対象とし、
図26及び
図27の紙面縦方向が圃場H7及びH8の穀稈の条方向である。
【0082】
第2実施例及び第3実施例では、先ず、コンバイン1は、圃場情報設定部60によって自動又は手動で、圃場H7及びH8の圃場情報として、圃場形状、圃場端の位置情報、穀稈の条方向等を設定する。また、第2実施例及び第3実施例では、走行経路作成部62が走行経路を予め作成する前に、倒伏情報設定部61は、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57の圃場画像に基づいて倒伏領域を検出した場合に自動で倒伏情報を設定し、あるいは作業者が視認して倒伏領域を検出した場合に携帯端末53の入力操作に応じて手動で倒伏情報を設定する。第2実施例及び第3実施例では、
図26及び
図27に示すように、倒伏情報設定部61によって、互いに逆方向に倒伏している倒伏領域T7及びT8の倒伏情報が設定される。なお、倒伏情報設定部61は、回り刈り走行の自動走行及び自動刈取を実行している間に、自動又は手動で倒伏情報を設定してもよい。
【0083】
次に、走行経路作成部62は、圃場情報に基づいて、
図28及び
図29に示すように、圃場H7及びH8を回り刈り走行で自動走行及び自動刈取する走行経路S7及びS8を予め作成して記憶部51に記憶する。走行経路作成部62は、回り刈り走行として、圃場端に沿って周回を開始して圃場H7及びH8の中央側に向かって周回を繰り返し、未刈穀稈領域の外周に沿った刈取を繰り返す渦巻状の走行経路S7及びS8を作成する。回り刈り走行の走行経路S7及びS8は、進行方向を変えながら複数の直線状経路を連結して構成される。走行経路作成部62は、運転席29側を圃場H7及びH8の外側に配置しつつ圃場を周回するように、回り刈り走行の周回方向を設定するとよい。第2実施例及び第3実施例では、運転席29が右側に設けられるため、反時計回りに周回する走行経路S7及びS8の例を示す。
【0084】
あるいは、走行経路作成部62は、圃場全体の走行経路S7及びS8を予め作成せずに、走行しながらの未刈穀稈領域を判定して未刈穀稈領域の外周に沿った走行経路S7及びS8を作成してもよい。自動運転が進行すると未刈穀稈領域の形状が変化するので、走行経路作成部62は、自動運転の時間や距離等の所定間隔毎に未刈穀稈領域を再判定して未刈穀稈領域に沿った走行経路S7及びS8を再作成(更新)する。
【0085】
走行経路作成部62によって回り刈り走行の走行経路S7及びS8が作成されると、自動運転制御部63は、走行経路S7及びS8に従って走行部2及び刈取部3を制御して、圃場H7及びH8の未刈穀稈領域を回り刈り走行する自動走行及び自動刈取を実行する。
【0086】
第2実施例及び第3実施例では、同じ圃場形状の圃場を作業対象としていて、同じ倒伏領域形状の倒伏領域T7及びT8が検出される。
図28に示す第2実施例では、予め作成した走行経路S7が倒伏領域T7に差し掛かるときの進行方向と、倒伏領域T7の穀稈の倒伏方向とが同方向である。
図29に示す第3実施例では、予め作成した走行経路S8が倒伏領域T8に差し掛かるときの進行方向と、倒伏領域T8の穀稈の倒伏方向とが逆方向である。走行経路作成部62は、倒伏情報設定部61で設定された倒伏情報に基づいて回り刈り走行の走行経路S7及びS8を修正する。
【0087】
先ず、第2実施例において回り刈り走行の走行経路S7を修正する動作を説明する。走行経路作成部62は、走行経路S7において現在走行中の直線状経路の進行方向と、進行方向側の倒伏領域T7の倒伏方向とを比較して、その比較結果に基づいて走行経路S7を修正すべきか否かを判定する。倒伏領域T7の倒伏方向が進行方向と同じである第2実施例の場合、走行経路作成部62は、
図30に示すように、進行方向を変更するまで走行経路S7の走行設定を修正することなく維持し、これにより倒伏領域T7で追い刈りを行うことができる。走行経路作成部62は、倒伏領域T7の走行設定を修正しない場合でも、倒伏領域T7の作業設定を、倒伏穀稈に特有の作業設定に修正する。
【0088】
回り刈り走行の走行経路S7が現在の直線状経路から他の直線状経路へ進行方向を変更するとき、走行経路作成部62は、倒伏領域T7の倒伏方向と変更後の進行方向とを比較して、その比較結果に基づいて走行経路S7を修正すべきか否かを判定する。倒伏領域T7の倒伏方向と変更後の進行方向とが異なる第2実施例の場合、走行経路作成部62は、未刈穀稈領域の圃場情報及び倒伏領域T7の倒伏情報に基づいて走行経路S7を修正する。
【0089】
このとき、走行経路作成部62は、往復刈り走行の修正と同様に、倒伏領域T7を通過する条に対して一方向刈対応経路及び一方向刈対応領域を設定する一方、倒伏領域T7を通過しない条に対して一方向刈不要経路及び一方向刈不要領域を設定してよい。走行経路作成部62は、
図30に示すように、倒伏領域T7を迂回して一方向刈不要領域へ移行し、自動運転制御部63は、
図31に示すように、一方向刈不要領域の走行経路S7に従って走行部2及び刈取部3を制御して、一方向刈不要領域に対して自動走行及び自動刈取を実行する。
【0090】
走行経路作成部62は、一方向刈不要領域の刈取完了後に一方向刈対応領域へ移行するように走行経路S7を修正する。第2実施例では、走行経路作成部62は、一方向刈対応領域に対して、
図32に示すように、条の配列方向の一端側の一方向刈対応経路から自動刈取を開始し、一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行った後、終了位置から開始位置まで後退し、隣接する他の一方向刈対応経路の一方向刈に移行するように、走行経路S7を修正する。また、走行経路作成部62は、一方向刈対応経路について、倒伏領域T7の作業設定を、倒伏穀稈に特有の作業設定に修正する。
【0091】
次に、第3実施例において回り刈り走行の走行経路S8を修正する動作を説明する。走行経路作成部62は、走行経路S8において現在走行中の直線状経路の進行方向と、進行方向側の倒伏領域T8の倒伏方向とを比較して、その比較結果に基づいて走行経路S8を修正すべきか否かを判定する。倒伏領域T8の倒伏方向が進行方向と異なる第3実施例の場合、走行経路作成部62は、倒伏領域T8に差し掛かる前に走行経路S8を修正する。
【0092】
この場合、
図33に示すように、コンバイン1の現在位置は倒伏領域T8に対して倒伏方向側にあるので、倒伏領域T8の追い刈りをするためには、現在位置から倒伏領域T8を挟んで反対側に回り込む必要がある。そのため、第3実施例では、倒伏領域T8側の刈取よりも前に現在位置側の刈取を行うと作業効率が良いので、走行経路作成部62は、未刈穀稈領域のうち、条方向において倒伏領域T8側に一方向刈対応経路及び一方向刈対応領域を設定する一方、現在位置側に一方向刈不要経路及び一方向刈不要領域を設定するとよい。
【0093】
走行経路作成部62は、現在位置側の一方向刈不要領域へ移行し、
図33に示すように、回り刈りするように走行経路S8を修正し、自動運転制御部63は、
図34に示すように、一方向刈不要領域の走行経路S8に従って走行部2及び刈取部3を制御して、一方向刈不要領域に対して自動走行及び自動刈取を実行する。
【0094】
走行経路作成部62は、一方向刈不要領域の刈取完了後に一方向刈不要領域へ移行するように走行経路S8を修正する。第3実施例では、走行経路作成部62は、一方向刈対応領域に対して、
図35に示すように、条の配列方向の一端側の一方向刈対応経路から自動刈取を開始し、一方向刈対応経路の開始位置から終了位置まで一方向刈を行った後、終了位置から開始位置まで後退し、隣接する他の一方向刈対応経路の一方向刈に移行するように、走行経路S8を修正する。走行経路作成部62は、一方向刈対応経路について、倒伏領域の作業設定を、倒伏穀稈に特有の作業設定に修正する。
【0095】
第2実施例及び第3実施例の何れにおいても、走行経路作成部62によって走行経路S7及びS8が修正されると、自動運転制御部63は、修正後の走行経路S7及びS8に従って走行部2及び刈取部3を制御して、圃場H7及びH8の未刈穀稈領域に対して自動走行及び自動刈取を実行する。
【0096】
上記のように、本実施形態によれば、コンバイン1は、制御装置50を備えていて、制御装置50は、圃場に対応する走行経路を作成する走行経路作成部62、並びに走行経路に従って自動走行及び自動刈取を制御する自動運転制御部63として機能する。また、制御装置50は、圃場内で穀稈が倒伏している倒伏領域に係る倒伏情報を自動又は手動で設定する倒伏情報設定部61として機能する。そして、走行経路作成部62は、倒伏情報に基づいて、倒伏領域内の穀稈の刈取を含む走行経路を作成する。
【0097】
これにより、コンバイン1は、圃場の作物の倒伏状態を考慮して、倒伏穀稈に適した刈取を行う走行経路を作成するので、作物の倒伏状態に拘わらず、倒伏した穀稈を含む刈取作業が可能な走行経路を作成することができる。コンバイン1は、このように作成された走行経路を用いることにより、倒伏領域でも適切に自動運転を行うことができる。従って、作業者は倒伏領域を手動運転で刈取作業する必要がなく、自動運転と手動運転とを切り替える手間や、手動運転の負担を抑制することができる。
【0098】
なお、倒伏情報設定部61は、走行経路を最初に作成するときだけでなく、走行経路に応じた自動運転を実行中でも、倒伏情報を設定することができる。これにより、倒伏領域に近付いて倒伏状態をより正確に把握してから倒伏情報を設定できるので、より正確名倒伏情報を設定することができる。また、倒伏情報設定部61は、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57の圃場画像に基づいて倒伏領域を検出した場合に自動で倒伏情報を設定できるので、コンバイン1を無人作業で自動運転させることが可能となる。
【0099】
また、本実施形態のコンバイン1において、倒伏情報設定部61は、倒伏情報として穀稈の倒伏方向を設定し、走行経路作成部62は、倒伏領域内の穀稈を倒伏方向に対して所定の推奨刈取方向に刈り取るように走行経路を作成する。
【0100】
これにより、コンバイン1は、刈取方向が適していない倒伏領域のみを走行経路の修正対象とするので、比較的単純なアルゴリズムで走行経路の作成及び修正が可能になる。コンバイン1は、倒伏した穀稈に対して適切な刈取方向で刈取を行うように走行経路を作成することができ、倒伏領域に適切な刈取作業を自動運転で行うことができる。
【0101】
更に、本実施形態のコンバイン1において、走行経路作成部62は、走行経路及び倒伏情報に基づいて、倒伏領域内の走行経路に対応する刈取方向が推奨刈取方向と異なる場合に、この倒伏領域を含む一方向刈対応領域を判定し、一方向刈対応領域内の刈取方向が推奨刈取方向となるように走行経路を修正する。
【0102】
倒伏領域では進行方向が制限されるので、走行経路の修正は倒伏領域の位置に依存することになるが、コンバイン1は、倒伏領域だけでなく、倒伏領域を含む一方向刈対応領域にも同じ修正を走行経路に行うので、倒伏領域の位置に対する依存を軽減して走行経路を修正できるようになり、作業効率の良い走行経路を作成することができる。
【0103】
また、本実施形態のコンバイン1において、走行経路作成部62は、走行経路及び倒伏情報に基づいて、一方向刈対応領域の走行経路の修正に起因して走行経路の走行が影響を受ける倒伏影響領域を判定する。走行経路作成部62は、倒伏影響領域を、一方向刈対応領域と、一方向刈対応領域以外の一方向刈不要領域とに分割する。そして、走行経路作成部62は、一方向刈対応領域における倒伏領域の位置に基づいて、一方向刈対応領域の中で倒伏領域を含まない領域を、更に一方向刈不要領域として分割する。
【0104】
進行方向が制限される一方向刈対応領域では、空走距離が必要になることがあるが、コンバイン1は、一方向刈対応領域を比較的小さくすることができるので、空走距離を比較的短くすることができる。また、進行方向が制限されない一方向刈不要領域では、作業効率の良い走行経路を設定することができるので、全体として作業効率の良い走行経路を作成することができる。
【0105】
また、コンバイン1では、走行経路作成部62が、倒伏領域の走行経路に対して、倒伏穀稈に特有の走行設定及び作業設定を設定し、例えば、走行速度を低速に設定し、刈取速度を高速に設定する。これにより、コンバイン1が走行経路作成部62で作成された走行経路で自動運転を行う場合、倒伏領域で自動的に倒伏穀稈に適した走行及び刈取を行うので、オート作業において、作業者の熟練な操作に依存することなく、作業効率を向上することができる。また、コンバイン1を無人作業で自動運転させる場合でも、倒伏領域で適切な作業を行うことができる。
【0106】
更に、コンバイン1では、走行経路作成部62が、倒伏領域の走行経路に対して、穀稈の倒伏角度に合わせた走行速度や刈取速度を設定する。これにより、穀稈の倒伏状態により適切に合わせて刈取を行うため、作業効率をより向上することができる。
【0107】
上記した実施形態では、自脱型コンバインで構成されるコンバイン1の例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、コンバイン1は、普通型コンバインで構成されてもよい。また、上記した実施形態では、推奨刈取方向を追い刈りに設定する例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、推奨刈取方向は、作物の種類や穀稈の倒伏状態に応じて、左倒伏刈り、右倒伏刈り、向い刈り等の他の刈取方向に設定してもよい。
【0108】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動運転システム及び自動運転方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
32 機体カメラ
34 移動局
39 基地局
43 固定カメラ
50 制御装置
52 通信部
53 携帯端末
54 携帯カメラ
57 空撮カメラ
60 圃場情報設定部
61 倒伏情報設定部
62 走行経路作成部
63 自動運転制御部