(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161146
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】トランジスタ、半導体装置、メモリ、中央演算処理回路及び半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241108BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241108BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20241108BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241108BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L29/78 617S
H01L29/78 618B
H01L29/78 617K
H01L29/78 618C
H01L29/78 617T
H01L29/78 613B
H10B12/00 671Z
H10B12/00 621C
H10B12/00 801
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146192
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023100549の分割
【原出願日】2012-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2011067213
(32)【優先日】2011-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】郷戸 宏充
(72)【発明者】
【氏名】竹村 保彦
(57)【要約】
【課題】微細化した半導体集積回路において用いられる、オフ電流の小さな電界効果トラ
ンジスタ(FET)を提供する。
【解決手段】絶縁表面に略垂直に形成された厚さが1nm以上30nm以下の薄片状の酸
化物半導体と、前記酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜
を覆って形成されたストライプ状の幅10nm以上100nm以下のゲートを有する電界
効果トランジスタ。この構成では、薄片状の酸化物半導体の三方の面をゲートが覆うこと
となるため、ソース、ドレインから注入される電子を効率的に排除し、ソースとドレイン
の間をほぼ空乏化領域とでき、オフ電流を低減できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上面と接する領域と、前記酸化物半導体層の第1の側面と接する領域と、前記酸化物半導体層の第2の側面と接する領域と、を有するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上面と接する領域と、前記ゲート絶縁膜の第1の側面と接する領域と、前記ゲート絶縁膜の第2の側面と接する領域と、を有するゲートと、
前記酸化物半導体層と電気的に接続するソース及びドレインと、を有し、
前記ゲートと前記酸化物半導体層とが重なる領域において、前記酸化物半導体層の前記ゲート絶縁膜に挟まれた領域の厚さは、前記酸化物半導体層の高さより小さく、
前記ゲート絶縁膜は、前記酸化物半導体層と重なり、且つ、前記ゲートと重ならない領域を有する、トランジスタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記酸化物半導体層は酸化インジウムを有する、トランジスタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ゲート絶縁膜は、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、珪酸ハフニウム、酸窒化シリコン、窒化シリコンから選ばれた1つ以上の材料を含む、トランジスタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記酸化物半導体層の断面形状は、角が曲がっている、トランジスタ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記酸化物半導体層は、底面が上面よりも広い、トランジスタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の前記トランジスタを第1のトランジスタとして有し、
前記第1のトランジスタの下方に第2のトランジスタを有し、
前記第2のトランジスタのソース及びドレインのいずれか一方は、前記第1のトランジスタのソース及びドレインのいずれか一方と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の前記トランジスタ、又は請求項6に記載の前記半導体装置を有するメモリ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の前記トランジスタ、又は請求項6に記載の前記半導体装置を有する中央演算処理回路。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の前記トランジスタ、又は請求項6に記載の前記半導体装置を有する半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタおよびそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路等に用いられる電界効果トランジスタ(以下、FET)はシリコン
等の半導体によって形成されてきた(例えば、非特許文献1参照)。近年、バンドギャッ
プが2.5電子ボルト以上の酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタが報告されてい
る。特に、半導体層中のドナー濃度を極めて低くすることにより、そのオフ電流を通常の
方法では測定できないレベルにまで低下できることが明らかとなった(例えば、特許文献
1参照)。
【0003】
例えば、シリコンを用いたFETでは、チャネル幅1μmあたりのオフ電流は通常、1×
10-15A/μm以上であるのに対し、インジウム-ガリウム-亜鉛系酸化物(In-
Ga-Zn系酸化物)半導体を用いたFETでは1×10-18A/μm以下とすること
ができる。これはバンドギャップが大きいために真性半導体では熱励起キャリアが極めて
低濃度となるためであり、バンドギャップが3電子ボルト以上であると、理論的なオフ電
流の下限は1×10-31A/μm以下となる。
【0004】
このようなオフ電流が極めて低いFETを、1つのFETと1つのキャパシタにより構成
されるダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(1T1C型DRAM)に用いれば、
リフレッシュの間隔を十分に長くすることができる。理想的にはリフレッシュを半永久的
におこなわなくても、データを保持できる(特許文献2参照)。
【0005】
また、2つのトランジスタと1つのキャパシタとにより構成されるゲインセル型メモリ(
特許文献3参照)に用いれば、半永久的に不揮発なメモリとできる。なお、これまで提案
されてきたゲインセル型メモリは大容量のキャパシタが不要であるため、1T1C型DR
AMの欠点を補うものとして考えられてきたが、多くの場合、オフ電流を十分に小さくす
ることができないため、実用化されることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2011/0148455号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2011/0156027号明細書
【特許文献3】米国特許第7468901号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hisamoto et al. ”A Folded-channel MOSFET for Deep-sub-tenth Micron Era”, IEDM Tech. Dig., pp.1032―1034, 1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の研究の結果、このような極めて低いオフ電流は、チャネル長が
十分に長い場合にこそ達成できるが、チャネル長が100nm以下となると、短チャネル
効果により実現が困難であることがわかった。
【0009】
その理由を
図10を用いて説明する。
図10(A)はチャネル長が十分に長い場合である
。膜状の酸化物半導体201aには、オーミック接触するソース204a、ドレイン20
5aより電子(キャリア)が注入される。しかしながら、ゲート203aの仕事関数を5
.2電子ボルト以上とすることにより、それらの電子を酸化物半導体201aより排除し
て、広い領域にわたって電子の無い空乏化領域206aを形成することができる。
【0010】
空乏化領域206aが存在することにより、ソース204aとドレイン205a間の電流
を阻止でき、その結果、極めて低いオフ電流を実現できる。このような電子を排除する作
用は、ゲート絶縁膜202aが薄く、誘電率が高いほど、また、ゲート203aの仕事関
数が大きいほど効果的である。
【0011】
図10(B)は、酸化物半導体の厚さを変えずに、チャネル長のみを短くした場合である
。この場合には、特に酸化物半導体201bの下の部分(ゲート絶縁膜202bの反対側
)において、ゲートの作用が及ばず、電子の濃度を十分に小さくできない。すなわち、酸
化物半導体201bのうち、ゲート203b側には空乏化領域206bが形成されるが、
酸化物半導体201bの下の部分にまでおよばない。その結果、ソース204bとドレイ
ン205b間の電流を十分に阻止できないのである。
【0012】
このような問題は、酸化物半導体201bを可能な限り薄くする方法によって解決できる
ことがある。しかしながら、厚さが1nm未満であると酸化物半導体201bの半導体特
性に問題が生じることがある。特に、酸化物半導体201bが何らかの結晶構造を有する
場合には、必要な結晶性が得られないこともある。
【0013】
シリコンを用いたFETでも、チャネル長が短くなることによるオフ電流の上昇やサブス
レショールド特性の悪化は短チャネル効果として知られているが、酸化物半導体ではより
顕著となる。それは、シリコンを用いたFETでは、ソースとチャネル形成領域、あるい
はドレインとチャネル形成領域の間をPN接合によって分離することができるが、酸化物
半導体ではチャネルをソースもしくはドレインから分離するためにPN接合を形成するこ
とが困難なためである。
【0014】
一般に、シリコンを用いたFETでは、例えば、ソースとドレインを高濃度なN型とする
場合、チャネル形成領域も適当な濃度のP型とする。このようにして形成されるPN接合
によって、ソースやドレインからチャネルに電子が注入されることを防止できる。チャネ
ル形成領域のP型不純物の濃度が高ければ、電子の注入を防止する作用が強くなる。この
ため、シリコンを用いたFETでは、チャネル長が短くなればチャネル形成領域の不純物
濃度を高くして短チャネル効果を抑制できる。
【0015】
これに対し、多くの場合、酸化物半導体では、シリコンのようにドーピングによって半導
体の型(導電型)を制御することは困難で、例えば、酸化インジウム等のインジウムを含
む酸化物、あるいは酸化亜鉛のように亜鉛を含む酸化物では、N型半導体は作製できるが
、P型半導体は作製できない。したがって、シリコンを用いたFETのようにチャネル形
成領域を高濃度なP型とするような手法は採用できない。
【0016】
微細化を進めるにあたっては、チャネル長を短くすることは必須であり、短チャネルでも
十分に低いオフ電流が得られることが望まれる。本発明の一態様は上記のような短チャネ
ル化に伴うオフ電流の上昇を回避することのできるFETを提供することを課題の一とす
る。また、本発明の一態様は、十分に微細化されたFETを提供することを課題とする。
また、本発明の一態様はFETを有する半導体装置を提供することを課題とする。また、
本発明の一態様は、FETあるいは半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
本発明では以上の課題の少なくとも1つを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、厚さが1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上5nm以下で
、高さが最小加工線幅(Feature Size)の1倍以上で、絶縁表面に略垂直に
形成された薄片状の酸化物半導体と、酸化物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜と、
ゲート絶縁膜を覆って形成されたストライプ状の幅10nm以上100nm以下、好まし
くは10nm以上30nm以下のゲートを有するFETである。なお、本明細書において
「略垂直」とは、対象となる面に対して、70°以上110°以下の角度を有する場合を
いう。
【0018】
また、本発明の一態様は、厚さが1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上5nm
以下で、高さが最小加工線幅の1倍以上で、絶縁表面に略垂直に形成された薄片状の酸化
物半導体と、酸化物半導体の少なくとも3つの面に接するソースおよびドレインと、酸化
物半導体を覆って形成されたゲート絶縁膜とを有するFETである。ここで、ソースとド
レインの間隔は10nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下のF
ETとするとよい。
【0019】
上記において、酸化物半導体は、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫を用いることができ
る。また、二元系金属酸化物である、例えば、In-Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物
、Al-Zn系酸化物、Zn-Mg系酸化物、Sn-Mg系酸化物、In-Mg系酸化物
、In-Sn系酸化物、あるいはIn-Ga系酸化物などを用いることもできる。ここで
、例えば、In-Ga系酸化物とは、インジウム(In)とガリウム(Ga)をそれぞれ
5原子%以上含む酸化物という意味であり、その他の元素が含まれていてもよい。
【0020】
例えば、In-Zn系酸化物を用いる場合、インジウム(In)と亜鉛(Zn)をIn/
Zn=0.5~50、好ましくはIn/Zn=1~20、さらに好ましくはIn/Zn=
1.5~15の比率で含む酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体を形成することができ
る。なお、In-Zn系酸化物の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O
=x:y:zのとき、z>1.5x+yとするとよい。なお、インジウムの比率を高くす
ることにより、FETの移動度を向上させることができる。
【0021】
同様に、酸化物半導体として、三元系金属酸化物である、In-Ga-Zn系酸化物、I
n-Sn-Zn系酸化物、In-Al-Zn系酸化物、Sn-Ga-Zn系酸化物、Al
-Ga-Zn系酸化物、あるいはSn-Al-Zn系酸化物などを用いることができる。
また、四元系金属酸化物である、In-Sn-Ga-Zn系酸化物を用いてもよい。
【0022】
ここで、例えば、In-Ga-Zn系酸化物とは、インジウム(In)とガリウム(Ga
)と亜鉛(Zn)をそれぞれ3.3原子%以上含む酸化物という意味であり、その他の元
素が含まれていてもよい。また、In-Sn-Ga-Zn系酸化物では、インジウム(I
n)と錫(Sn)とガリウム(Ga)と亜鉛(Zn)をそれぞれ、2.5原子%以上含む
酸化物という意味であり、その他の元素が含まれていてもよい。
【0023】
また、上記において酸化物半導体は結晶性を有する領域を有してもよい。また、その領域
の結晶は、c軸が酸化物半導体面に略垂直であるとよい。特にFETのチャネルが形成さ
れる領域(表面上にゲートが設けられる領域あるいはゲートが覆う領域)は、結晶性を有
することが好ましい。
【0024】
このような結晶は、ab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、又は正六
角形の原子配列を有し、且つ、c軸方向に金属原子が層状に配列した相、又はc軸方向に
金属原子と酸素原子が層状に配列した相を有してもよい。このように表面に対し、c軸が
略垂直である結晶を有する酸化物半導体をC Axis Aligned Crysta
lline Oxide Semiconductor(CAAC-OS)という。
【0025】
また、上記において酸化物半導体の一部は、窒素、硼素あるいはリンを有する領域を有し
てもよく、特に、それらの領域は、イオン注入法等の手段によりゲートをマスクとして自
己整合的に形成されてもよい。また、酸化物半導体の全部あるいは一部にはニッケルもし
くは銅のような電子を吸収する作用を有する金属元素あるいは過酸化物を形成する作用を
有する金属元素を0.1原子%乃至5原子%有してもよい。
【0026】
また、上記において、ゲート絶縁膜は酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸
化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、珪酸ハフニウム、酸窒化シリコン、
窒化シリコンから選ばれた1つ以上の材料を含んでもよい。
【0027】
また、上記において、ゲート絶縁膜は、構成する酸素以外の元素のうちの50原子%以上
がシリコン、タンタル、ハフニウム、アルミニウム、イットリウム、ランタンから選ばれ
た1つ以上の元素である酸化物よりなってもよい。
【0028】
なお、本明細書で金属元素とは、希ガス元素、水素、ホウ素、炭素、窒素、16族元素(
酸素等)、17族元素(フッ素等)、シリコン、燐、ゲルマニウム、砒素、アンチモン以
外の全ての元素のことである。また、酸化物とは、金属元素以外の元素に占める酸素の比
率が50原子%以上の化合物のことである。
【0029】
本発明の他の一態様は、上記のFETを1つ以上用いたメモリである。メモリとしては1
T1C型RAMおよびゲインセル型メモリを挙げることができる。また、本発明の他の一
態様は、上記のFETを用いて形成されたレジスタを有する中央演算処理回路(CPU)
、あるいはその他の半導体集積回路(LSI)等の半導体回路である。
【発明の効果】
【0030】
上記の構成では、薄片状の酸化物半導体の三方の面をゲートが覆うこととなる。このため
、ソース、ドレインから酸化物半導体に注入される電子を効率的に排除し、ソースとドレ
インの間の部分のほとんどを空乏化領域とでき、オフ電流を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図2】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図3】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図4】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図5】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図6】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図7】本発明の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図8】本発明の一態様のFETの作製方法の例を説明する図である。
【
図9】本発明の一態様のFETの作製方法の例を説明する図である。
【
図10】従来の一態様のFETの例を説明する図である。
【
図13】本発明の一態様のFETと従来のFETの特性の比較を説明する図である。
【
図14】本発明の一態様の応用例を説明する図である。
【
図15】本発明の一態様の応用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異な
る態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、
以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0033】
(実施の形態1)
図1乃至
図4に本実施の形態のFETの形状の概念図を示す。
図1はFETの斜視図であ
り、
図2は面Xでの断面図、
図3は面Yでの断面図、
図4は面Zでの断面図である。
図1
乃至
図4に示すFETは絶縁表面100に接して、厚さtが1nm以上30nm以下、好
ましくは3nm以上5nm以下、高さhが、5nm以上100nm以下、好ましくは10
nm以上50nm以下の薄片状の酸化物半導体101を有する。
【0034】
酸化物半導体101は結晶構造を有することが好ましく、上述のCAAC-OSであるこ
とが好ましい。この場合、酸化物半導体101は、底面以外に少なくとも複数の面を有す
るが、それぞれの面に垂直になるように複数の結晶が配置することが好ましい。このよう
な結晶状態を得るには、薄片状の非晶質の酸化物半導体を形成した後、適切な温度および
雰囲気で加熱処理するとよい。
【0035】
また、酸化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられ
る。ソース104、ドレイン105には、アルミニウム、マグネシウム、クロム、銅、タ
ンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの金属材料、あるいはこれらの金属材料
を主成分とする合金材料の層を用いることができる。合金材料の層としては、例えばCu
-Mg-Al合金材料の層を用いることができる。またはそれらの金属窒化物を用いても
よい。
【0036】
そして、酸化物半導体101、ソース104、ドレイン105を覆い、酸化物半導体10
1と接して設けられるゲート絶縁膜102を有する。ゲート絶縁膜102は単層あるいは
2層以上の積層構造を有し、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化アルミ
ニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、珪酸ハフニウム、酸窒化シリコン、窒化シリ
コンから選ばれた材料を用いて形成すればよい。
【0037】
ゲート103は、ゲート絶縁膜102を覆って形成され、ゲート絶縁膜102に接しても
よいし、接しなくてもよい。また、ゲート103はストライプ状であり、本実施の形態の
FETではソース104、ドレイン105の一部と重なるように形成する。このFETの
チャネル長はソース104とドレイン105の間の間隔L1で定義できる(
図2および図
3参照)。
【0038】
また、チャネル幅は酸化物半導体101の3つの面の長さの和(ほぼ、2h+t)で定義
できる(
図4参照)。hは回路の最小加工線幅とは無関係に大きくできるので、チャネル
幅はチャネル長に比べて十分に大きくできる。そのため、FETのオン電流が大きくなる
。
【0039】
ゲート103は単層あるいは2層以上の積層構造を有し、白金、パラジウム、オスミウム
、等の白金系貴金属あるいはタングステン、モリブデン、チタンから選ばれた金属、ある
いはそれらの窒化物、インジウムを有する金属窒化物あるいは金属酸窒化物、亜鉛を有す
る金属窒化物あるいは金属酸窒化物、p型シリコン等を用いればよい。特に、その仕事関
数が5.2電子ボルト以上の材料をゲート絶縁膜102に面して形成することが好ましい
。例えば、窒化インジウムは仕事関数が5.6電子ボルトであるので好適である。
【0040】
このような仕事関数の大きな材料は抵抗率が高いものが多いが、そのような場合には、仕
事関数の大きな材料をゲート絶縁膜102に面して形成し、その上により導電性の良好な
材料(導電体)を適切な厚さで形成すればよい。より導電性の良好な材料に対しては仕事
関数に関する制約はない。
【0041】
図4に示すように、酸化物半導体101はゲート103により三方の面をゲートにより囲
まれている。このため、ソース、ドレインから酸化物半導体101に注入される電子を効
率的に排除し、ソースとドレインの間に空乏化領域106を形成でき、オフ電流を低減で
きる。また、FETの占有する面積に関らず、FETのチャネル幅を大きくできるので、
集積度を高く保ったまま、高速な半導体回路を構成できる。
【0042】
(実施の形態2)
図5に本実施の形態のFETを示す。
図5(A)は
図2に相当するX面での断面図であり
、
図5(B)は
図3に相当するY面での断面図である。なお、本実施の形態のFETの図
4に相当するZ面での断面図は
図4と同じである。
【0043】
本実施の形態のFETは絶縁表面100に接する酸化物半導体101を有する。また、酸
化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられる。そし
て、酸化物半導体101、ソース104、ドレイン105を覆い、酸化物半導体101と
接して設けられるゲート絶縁膜102を有する。さらに、ゲート絶縁膜102を覆ってゲ
ート103が形成される。本実施の形態では、ゲート103がソース104およびドレイ
ン105と重ならないように形成する点で実施の形態1に示すFETと異なる。
【0044】
図5に示すFETでは、ゲート103がソース104ともドレイン105とも重ならない
構造としたが、いずれか一方のみが重なる構造であってもよい。
図5に示すFETでも、
チャネル長はソース104とドレイン105の間隔L2で定義されるが、チャネル長には
、ソース104とゲート103あるいはドレイン105とゲート103が重なっていない
部分(オフセット領域)も含まれる。
図5(B)に示すオフセット領域の幅xはゲート1
03とソース104およびゲート103とドレイン105の間のリーク電流を防止する上
では10nm以上であることが好ましい。
【0045】
一般にソースとドレインの間にオフセット領域が設けられると、オン電流が低下するが、
本実施の形態のFETは、実施の形態1のFETと同様に、チャネル幅Wが回路の最小加
工線幅とは無関係に大きくでき、オン電流が十分大きいので、オフセット領域による減少
分を相殺できる。
【0046】
また、特に、オフセット領域の幅xが10nm以上30nm以下、好ましくは10nm以
上20nm以下であれば、オン電流の減少は十分に小さい。さらに、上記の大きさのオフ
セット領域を設けることで、空乏化領域106を広げることができ、より短チャネル効果
を抑制できる。さらには、ゲート103とソース104あるいはドレイン105との寄生
容量を削減できる。
【0047】
なお、ゲート絶縁膜が薄い場合においても、上記の構造のFETではゲート103とソー
ス104あるいはゲート103とドレイン105間のオフ状態でのリーク電流を削減でき
る。この場合のリーク電流は主としてトンネル効果によるものであるので、以下ではトン
ネル電流という。
図5に示すように、空乏化領域106がゲート103とソース104あ
るいはゲート103とドレイン105の中間ぐらいまで広がっている。
【0048】
このような状況では、例えば、ソース104とゲート103の間のトンネル電流は空乏化
領域106とゲート絶縁膜102という2つの障壁を越える必要がある。ソース104か
ら見た空乏化領域106の障壁高さは、酸化物半導体101のバンドギャップの半分ある
いはそれ以上であり、例えば、酸化物半導体のバンドギャップが3.2電子ボルトであれ
ば、1.6電子ボルトである。
【0049】
これは、典型的な絶縁物である酸化シリコンの障壁高さ(4電子ボルト程度あるいはそれ
以下)と比較すると小さいが、トンネル電流を削減するには、障壁が長いことは障壁が高
いことと同じくらいあるいはそれ以上に有効であるため、空乏化領域106が十分に広が
って、障壁が長い場合にはトンネル電流は十分に低減できる。
【0050】
例えば、実施の形態1のFETではオフセット領域が設けられていないので、ソース10
4とゲート103の間のトンネル電流はゲート絶縁膜102の厚さによって決定される。
したがって、トンネル電流をソースとドレイン間に流れる電流と同等あるいはより小さく
するには、ゲート絶縁膜102の物理的な厚さを5nm以上とすることが求められる。ゲ
ート絶縁膜102の厚さが5nm未満では、トンネル電流の寄与が大きくなり、トンネル
電流を含めたオフ電流を低減できなくなる。
【0051】
特に、実施の形態1のFETではソース104とゲート103の重なっている面積が大き
いため、現実的にはゲート絶縁膜102の物理的な厚さを10nm以上とすることが求め
られる。このように、ゲート絶縁膜102が厚くなるとFETのオン電流(すなわち、ス
イッチング速度)が低下する。
【0052】
一方、本実施の形態のFETでは、(1)
図5(B)に示すように、空乏化領域106の
端からゲート103の端部までの距離yとゲート絶縁膜102の厚さの和が5nm以上で
あること、あるいは、(2)空乏化領域106の端からゲート103までの距離が5nm
以上であることという、いずれかの条件を満たせばよい。
【0053】
例えば、距離yが5nmであれば、ゲート絶縁膜102の厚さは0であっても、オフ状態
でのソース104とゲート103の間のトンネル電流を十分に阻止できる。もっとも、オ
ン状態ではゲート絶縁膜102の厚さが有限でないと、FETの正常な動作ができないた
め、現実的には、ゲート絶縁膜102の厚さは0.5nm以上5nm未満、好ましくは0
.5nm以上2nm以下とすればよい。
【0054】
ゲート絶縁膜102の厚さはオン状態でのリーク電流の大きさを勘案して決定すればよい
。消費電力を抑制する上では、ゲート絶縁膜102を厚くすることが望まれ、また、高速
動作が必要な場合は、ゲート絶縁膜を薄くすることが望まれる。例えば、メモリのように
、オン状態の期間がオフ状態の期間の1万分の1以下の用途であれば、ゲート絶縁膜を薄
くしても消費電力が格段に増加することはない。
【0055】
(実施の形態3)
図6に本実施の形態のFETを示す。
図6(A)は
図2に相当するX面での断面図であり
、
図6(B)は
図3に相当するY面での断面図である。なお、本実施の形態のFETの図
4に相当するZ面での断面図は
図4と同じである。本実施の形態のFETは絶縁表面10
0に接する酸化物半導体101を有する。
【0056】
また、酸化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられ
る。そして、酸化物半導体101、ソース104、ドレイン105を覆い、酸化物半導体
101と接して設けられるゲート絶縁膜102を有する。さらに、ゲート絶縁膜102を
覆ってゲート103が形成される。また、ゲート103がソース104およびドレイン1
05と重ならないように形成する点で実施の形態2に示すFETと同じである。
【0057】
本実施の形態のFETは、酸化物半導体101中に、N型領域107およびN型領域10
8を有する点で、実施の形態2のFETと異なる。N型領域107およびN型領域108
はゲート103、ソース104、ドレイン105をマスクとして、窒素、硼素、リン等を
イオン注入法等の手段で酸化物半導体101に導入すればよい。また、N型領域107お
よびN型領域108中の窒素、硼素あるいはリンの濃度は1×1018cm-3以上1×
1022cm-3以下、好ましくは1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下
とするとよい。
【0058】
図6に示すFETでは、2つのN型領域を有する構造としたが、いずれか一方のみを有す
る構造であってもよい。
図6に示すFETでは、チャネル長は、実質的にはゲートの幅L
3で定義できる。本実施の形態のFETは実施の形態2のFETよりもオン電流を大きく
でき、また、実施の形態1のFETよりもゲート103とソース104あるいはドレイン
105との寄生容量を削減できる。
【0059】
(実施の形態4)
図7に本実施の形態のFETを示す。
図7(A)は
図2に相当するX面での断面図であり
、
図7(B)は
図3に相当するY面での断面図である。なお、本実施の形態のFETの図
4に相当するZ面での断面図は
図4と同じである。本実施の形態のFETは絶縁表面10
0に接する酸化物半導体101を有する。
【0060】
また、酸化物半導体101の一部には、ソース104、ドレイン105が接して設けられ
る。また、酸化物半導体101の一部を覆うゲート絶縁膜102を有する。ゲート絶縁膜
102の端部はソース104あるいはドレイン105と接してもよい。
【0061】
さらに、ゲート絶縁膜102を覆ってゲート103が形成される。また、ゲート103の
端部に接して側壁絶縁物109および側壁絶縁物110が設けられ、側壁絶縁物109は
ソース104と、側壁絶縁物110はドレイン105と接するように設けられる。側壁絶
縁物109および側壁絶縁物110は、それぞれ、ソース104およびドレイン105が
ゲート103と接触することを防ぐ。
【0062】
本実施の形態のFETは、酸化物半導体101中に、N型領域107およびN型領域10
8を有する。N型領域107およびN型領域108はゲート103をマスクとして、窒素
、硼素、リン等をイオン注入法等の手段で酸化物半導体101に導入すればよい。また、
N型領域107およびN型領域108中の窒素、硼素あるいはリンの濃度は1×1018
cm-3以上1×1022cm-3以下、好ましくは1×1018cm-3以上1×10
20cm-3以下とするとよい。
【0063】
図7に示すFETでは、チャネル長は、実質的にはゲートの幅L4で定義できる。本実施
の形態のFETは、酸化物半導体101のうちソース104あるいはドレイン105が重
なっている部分もN型領域107およびN型領域108となっているため、実施の形態3
のFETよりもオン電流を大きくでき、また、実施の形態1のFETよりもゲート103
とソース104あるいはドレイン105との寄生容量を削減できる。
【0064】
図7に示すFETと
図10(C)に示す平面型(プレーナ型)FETの特性(ドレイン電
流(I
D)のゲート電位(V
G)依存性)を計算した結果を以下に示す。ここで、
図7に
示すFETにおいてはL4=t=x1=x2=30nm、h=50nmとした。すなわち
、
図7に示すFETではチャネル長は30nmであり、チャネル幅は130nmである。
また
図10(C)に示すFETにおいてL5=x1=x2=30nm、酸化物半導体20
1cの厚さdを30nm、チャネル幅は130nmとした。
【0065】
また、
図7に示すFETと
図10(C)に示すFETにおいて、ゲート絶縁膜102およ
びゲート絶縁膜202cの比誘電率は4.1、ゲート絶縁膜102およびゲート絶縁膜2
02cの厚さは5nm、ゲート103およびゲート203cの仕事関数は5.5電子ボル
ト、酸化物半導体101および酸化物半導体201cのバンドギャップを3.15電子ボ
ルト、酸化物半導体101および酸化物半導体201cの電子親和力を4.6電子ボルト
、酸化物半導体101および酸化物半導体201cの比誘電率を15、N型領域107、
N型領域108、N型領域207およびN型領域208の抵抗率を0.3Ω・cm、ソー
ス104およびソース204cおよびドレイン105およびドレイン205cの仕事関数
を4.6電子ボルトとした。
【0066】
計算はシノプシス社(Synopsys, Inc.)製デバイスシミュレータ、Sen
taurus Deviceを使用した。計算結果を
図13(A)に示す。なお、ソース
の電位は0V、ドレインの電位は+1Vである。
図13(A)において、構造Aは
図10
(C)に示すFETのものであり、構造Bは
図7に示すFETのものである。
【0067】
図から明らかなように、構造AのFETでは、特にオフ電流を十分に小さくできず、ゲー
トの電位を-3Vとしてもドレイン電流は10-14A以上である。これに対し、構造B
ではゲートの電位を-1Vとしたとき、ドレイン電流は10-18A以下となり、十分に
オフ電流を小さくできる。
【0068】
同じ計算をFETのサイズを変えておこなった。
図7に示すFETにおいてはL4=x1
=x2=30nm、t=5nm、h=15nmとした。すなわち、
図7に示すFETでは
チャネル長は30nmであり、チャネル幅は35nmである。また
図10(C)に示すF
ETにおいてL5=x1=x2=30nm、d=5nm、チャネル幅は35nmとした。
その結果を
図13(B)に示す。なお、ソースの電位は0V、ドレインの電位は+1Vで
ある。
【0069】
図13(B)において、構造Aは
図10(C)に示すFETのものであり、構造Bは
図7
に示すFETのものである。酸化物半導体201cの(チャネル長に対する)薄膜化によ
って、構造AのFETでもオフ電流が低下しつつあるが、それでも構造Bよりは大きく、
例えば、ゲートの電位が0Vの場合、構造Bではドレイン電流が10
-20A以下である
のに対し、構造Aではドレイン電流が10
-18A程度である。
【0070】
チャネル長と酸化物半導体101あるいは酸化物半導体201cの厚さtの比率(L/t
)は、
図13(A)では1であるのに対し、
図13(B)では6である。構造AのFET
が
図13(B)に示すようにそれなりに良好な特性を示したのは、酸化物半導体201c
のチャネル長が変わらないまま、薄くなったことにより短チャネル効果が緩和されたため
である。
【0071】
構造BのFETにおいても、このような酸化物半導体101の相対的な薄膜化により短チ
ャネル効果は緩和できる。加えて、プレーナ型FETでは、十分な特性が得られないよう
なL/tが2以下の構造においても、構造BのFETでは十分な特性が得られることが特
徴である。
【0072】
(実施の形態5)
図8および
図9を用いて本実施の形態のFETの作製方法を説明する。
図8および
図9は
、FETの各作製工程における3つの断面を表記したものであり、非特許文献1のFig
.1に相当する。なお、以下の説明では、公知の半導体作製技術あるいは特許文献1、特
許文献2を参照できる。
【0073】
まず、
図8(A)に示すように絶縁表面100上に薄片状の酸化物半導体101を形成す
る。酸化物半導体の厚さtは1nm以上30nm以下、好ましくは3nm以上5nm以下
、高さhは、5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすると
よい。また、幅wは任意の値とできるが、集積度を高める上では、最小加工線幅Fの2倍
乃至5倍とするとよい。なお、1つの酸化物半導体101に複数のFETを設ける場合は
この限りではない。
【0074】
図8(A)に示す酸化物半導体101は、薄片状の直方体であり、6つの面を有する。こ
のうち、1つの面(底面)は絶縁表面100に含まれる。また、1つの面は絶縁表面10
0と全く接していない。以下、この面をα面と呼ぶ。さらに、他の4つの面は面の一部(
1つの辺)が絶縁表面100と接しているが、このうち、面積の大きな2つの面をβ面、
他の2つの面をγ面と呼ぶ。
【0075】
なお、
図8(A)では酸化物半導体101を完全な直方体として描いているが、その他の
形状であってもよい。例えば、酸化物半導体101のいずれかの断面においてコーナーが
特定の曲率半径を有する曲面であってもよい。その場合、α面とβ面、γ面間の境界は判
然としないこともある。また、底面がα面よりも広くてもよいし、あるいは底面がα面よ
り狭くてもよい。
【0076】
酸化物半導体101を形成後、250℃乃至750℃で熱処理をおこなってもよい。この
熱処理は、好ましくは、水蒸気濃度が極めて低い超乾燥空気(露点が-60℃以下、好ま
しくは-80℃以下)や、高純度の酸素ガス、高純度の窒素ガス(いずれも純度が6N以
上(不純物濃度は1ppm以下)、好ましくは7N以上(不純物濃度は0.1ppm以下
))雰囲気下、あるいは1Pa以下の高真空環境下でおこなうことが好ましい。
【0077】
このような雰囲気で熱処理をおこなうと、酸化物半導体101より水素が脱離する。水素
は、特にバンドギャップが3電子ボルト以上で、電子親和力が4電子ボルト以上である酸
化物半導体においてはドナーとなるので、その濃度を低くすることがFETのオフ電流を
小さくする上で好ましい。
【0078】
酸化物半導体101の材料によっては、上記の熱処理により、各面に対してc軸が垂直な
結晶構造を呈することがある。
【0079】
なお、酸化物半導体101を高真空のような還元的な雰囲気で熱処理すると、水素と同時
に酸素の一部も失われる。酸化物半導体においては、酸素欠損もドナーとなるので、これ
を補うことが好ましく、そのためには、引き続いて、酸化性雰囲気で熱処理することが好
ましい。
【0080】
また、酸素欠損によるキャリア(この場合は電子)濃度の上昇を抑制するためには、酸化
物半導体101に電子を吸収する性質のあるニッケルや銅を0.1原子%乃至5原子%含
有させておいてもよい。
【0081】
次に酸化物半導体101を覆ってゲート絶縁膜102を形成する。ゲート絶縁膜102の
厚さおよび誘電率はトランジスタの特性を決定する上で重要な要素であり、0.5nm以
上20nm以下、好ましくは0.5nm以上10nm以下とするとよい。実施の形態2で
説明したように適切な長さのオフセット領域を設けた場合には、トンネル電流を抑制でき
るため、ゲート絶縁膜102の物理的な厚さを2nm以下とできる。
【0082】
ゲート絶縁膜102には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニ
ウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等の公知の材料
を用いればよい。
【0083】
その後、ゲート絶縁膜102を覆って、第1の導電性材料膜を形成する。第1の導電性材
料膜のうち、ゲート絶縁膜102に接する部分には、仕事関数が5.2電子ボルト以上の
材料(例えば、白金、オスミウム、パラジウム等の白金系貴金属や窒化インジウムあるい
は酸窒化インジウム(In-O-N)、酸窒化インジウムガリウム(In-Ga-O-N
)、酸窒化インジウム亜鉛(In-Zn-O-N)、酸窒化インジウムガリウム亜鉛(I
n-Ga-Zn-O-N)等)を用いるとよい。また、第1の導電性材料膜のその他の部
分はアルミニウム、銅、チタン、タングステン等の導電性の高い金属材料を主成分とする
材料で構成すればよい。
【0084】
さらに、第1の導電性材料膜の上に第1の絶縁性材料膜を形成する。第1の縁性材料膜に
は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム等を用いればよい
。
【0085】
そして、
図8(B)に示すように、第1の導電性材料膜および第1の絶縁性材料膜をエッ
チングして、ストライプ状で、酸化物半導体101のα面の一部およびβ面の一部を覆う
ゲート103およびゲート103上のバリア絶縁物111を形成する。
【0086】
その後、イオン注入法等の手段により、ゲート103およびバリア絶縁物111をマスク
として、酸化物半導体101にリンを注入する。リンの代わりに窒素や硼素を注入しても
よい。いずれの場合も酸化物半導体101はN型を呈する。必要に応じて、イオンを注入
した後、250℃乃至750℃で熱処理してもよい。最適な熱処理の温度および雰囲気は
注入する元素によって異なる。
【0087】
酸化物半導体101の高さhが100nmを超える場合には、酸化物半導体101にこれ
らのイオンを均質に注入できないことがあるため、酸化物半導体101の高さは100n
m以下とすることが好ましい。なお、実施の形態2で説明したオフセット領域を設ける場
合には、このイオン注入工程を省略する。
【0088】
その後、ゲート絶縁膜102およびゲート103、バリア絶縁物111を覆って、第2の
絶縁性材料膜を形成する。第2の絶縁性材料膜は第1の絶縁性材料膜に用いる材料あるい
はそれらと同様な材料から選べばよいが、第1の絶縁性材料膜とは、エッチングレートが
異なることが好ましい。また、第2の絶縁性材料膜は、ゲート絶縁膜102とエッチング
特性が似ていることが好ましい。
【0089】
その後、異方性エッチング法により、
図9(A)に示すように、ゲート103およびバリ
ア絶縁物111の側面に側壁絶縁物109および側壁絶縁物110を形成する。側壁の幅
は5nm以上、好ましくは10nm以上とするとよい。この際、ゲート絶縁膜102のう
ち側壁絶縁物109および側壁絶縁物110、ゲート103で覆われていない部分もエッ
チングし、酸化物半導体101を露出させる。
【0090】
このとき、
図9(A)に示すように酸化物半導体101(N型領域107およびN型領域
108)もその上部がエッチングされること(オーバーエッチング)がある。これは第2
の絶縁性材料膜と酸化物半導体101のエッチングレート比を十分に大きくできないため
である。
【0091】
特に、第2の絶縁性材料膜を酸化シリコン、酸窒化シリコンとする場合には、ドライエッ
チングでのエッチングレートがインジウムを含む酸化物半導体あるいは亜鉛を含む酸化物
半導体と大差ないので、どうしても酸化物半導体101がエッチングされてしまう。
【0092】
このことは本実施の形態で扱うFETに限らず、
図10(C)に示すプレーナ型のFET
においても、同様に問題となる。特に、
図10(C)に示すプレーナ型FETでは、上述
の通り、オフ電流を十分に低くするためには、酸化物半導体201cを極めて薄くするこ
とが求められる。その場合には、エッチング条件の許容範囲が厳しくなり、許容範囲から
外れると側壁絶縁物やゲート203cで覆われた部分以外のほとんどの部分の酸化物半導
体201cが失われることもある。
【0093】
一方、本実施の形態のFETでは、例えば、酸化物半導体101の高さを十分に大きくで
きるので、多少、酸化物半導体101がエッチングされたとしても、FETの作製を失敗
することはない。
【0094】
一般に、一定の拡がりのある面内でのエッチングでは、エッチング速度が部分によって異
なることがある。
図10(C)に示すプレーナ型FETでは、その面内の全ての場所で、
酸化物半導体201cのオーバーエッチングを酸化物半導体201cの厚さに対して十分
に小さくすることは極めて難しく、歩留まりの低下の大きな要因となる。
【0095】
本実施の形態のFETでは、酸化物半導体101のオーバーエッチングは酸化物半導体1
01の厚さtではなく、高さhに対して十分に小さくすればよく、高さhは厚さtの数倍
あるいはそれ以上となるので、エッチング条件がより緩やかであり、歩留まりも高い。
【0096】
次に、第2の導電性材料膜を形成し、これをエッチングして、
図9(B)に示すように、
ソース104、ドレイン105を形成する。ソース104、ドレイン105は露出した酸
化物半導体101に接して形成される。
図9(B)では、ソース104、ドレイン105
は酸化物半導体101のα面、β面およびγ面に接するように形成されるが、必ずしもγ
面に接する必要はない。
【0097】
酸化物半導体101は大気に触れると水を吸収し劣化するため、FETが外気と接触する
ことを防止するためにバリア性のある適切な絶縁性材料(窒化珪素、酸化アルミニウム、
窒化アルミニウム等)の膜を形成してもよい。なお、以上示したFETでは、酸化物半導
体101のほとんどの部分がゲート103、ソース104およびドレイン105に覆われ
る構造となるため、プレーナ型FETに比べると耐久性が高い。
【0098】
(実施の形態6)
以上の実施の形態では、FETを絶縁表面上に形成する例を示したが、一部が導電性であ
る表面の上にFETを形成してもよい。その場合には、下層と電気的な接続が可能となる
。
図11にそのようなFETとそれを利用した半導体回路(メモリセル)の例を示す。
【0099】
図11には、1つのトランジスタと1つのキャパシタよりなるランダム・アクセス・メモ
リ(RAM)の構造の例を示したものである。同じ回路をシリコン半導体を用いたFET
で構成した場合には、1T1C型DRAMと呼ばれる。シリコン半導体を用いたFETで
は、オフ電流が大きいため、数十ミリ秒ごとにデータを再書き込み(リフレッシュ)する
必要があるためである。
【0100】
しかしながら、上述のように、酸化物半導体を用いたFETでは、オフ電流がシリコン半
導体を用いたFETより十分に小さくできるため、実質的にはリフレッシュが不要な場合
がある。その場合、DRAMと称することは差支えがあるため、以下では単にRAMある
いは、他の構造のRAMと区別する意味では、1T1C型RAMと称する。
【0101】
図11に示すRAMのメモリセルおよびその他の回路の構成を説明する。
図11に示す半
導体回路は、シリコン半導体基板表面に形成された単結晶シリコン半導体を用いたトラン
ジスタを有するドライバ回路部114、メモリセルのセルトランジスタ115、メモリセ
ルのキャパシタ116、およびメモリセルとドライバ回路部の間に設けられたビット線1
13を有する。ビット線113は各種導電性材料を用いて構成すればよい。ビット線11
3はドライバ回路部114と電気的に接続される。
【0102】
メモリセルのセルトランジスタには、実施の形態2で示したオフセット領域を有するFE
Tを使用する。その作製方法および詳細な構造は実施の形態5も参照できる。ここでは、
図5(B)に示す断面図に相当する断面図を表示するが、他の面での断面図は実施の形態
2を参照にすればよい。なお、実施の形態2に示すFETに限らず、その他の実施の形態
で示したFETを使用してもよい。
【0103】
FETは層間絶縁物112、およびビット線113と電気的に接続する導電性領域113
a上に形成され、酸化物半導体101、ゲート絶縁膜102、ゲート103、ソース10
4、ドレイン105を有する。酸化物半導体101の一部、およびソース104の一部は
導電性領域113aと接する。導電性領域113aの表面は平坦であることが好ましい。
一方、ドレイン105は導電性領域113aとは接しない。また、ドレイン105は、接
続電極117を介して、キャパシタ116に接続される。
【0104】
キャパシタ116は下部電極118、キャパシタ絶縁膜119、上部電極120により構
成される。なお、キャパシタの構成に関しては、これに限らず、公知の各種スタック型キ
ャパシタの構造を適用できる。下部電極118、キャパシタ絶縁膜119、上部電極12
0の材料や厚さ、大きさ等に関しても、公知の各種スタック型キャパシタのものを適用で
きる。
【0105】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態2のFETをいわゆるゲインセル型メモリに適用した例に
ついて説明する。なお、使用するFETは、実施の形態2のものに限らず、実施の形態1
、実施の形態3乃至5のものを用いてもよい。
【0106】
ゲインセル型メモリとは、例えば、特許文献3に記載されているメモリで、典型的には、
2つのトランジスタ(書き込みトランジスタと読み出しトランジスタ)と1つのキャパシ
タよりなる。その他に3つのトランジスタよりなるもの、1つのトランジスタと1つのダ
イオードと1つのキャパシタよりなるもの、等がある。
【0107】
2つのトランジスタと1つのキャパシタよりなるもののメモリセルの回路図は
図12(B
)に示される。すなわち、書き込みトランジスタ127のゲートは書き込みワード線に、
キャパシタ126の一方の電極は読み出しワード線に、書き込みトランジスタ127のソ
ースと読み出しトランジスタ128のソースはビット線に、書き込みトランジスタ127
のドレインとキャパシタ126の他方の電極は読み出しトランジスタ128のゲートに、
そして、読み出しトランジスタ128のドレインは電源線に接続される。
【0108】
なお、ゲインセル型メモリにおいても、シリコン半導体を用いたFETで構成した場合に
は、頻繁なリフレッシュが必要であったため、通常はゲインセル型DRAMと称されてい
る。
【0109】
ゲインセル型メモリはキャパシタ126の容量をDRAMのキャパシタに比べて十分に小
さくできるとして研究が進められた。DRAMでは必要なキャパシタの容量がビット線の
寄生容量の相対比で決定されるのに対し、ゲインセル型メモリでは、読み出しトランジス
タ128のゲート容量との相対比で決定される。
【0110】
キャパシタ126の容量が小さくできれば、その充放電に要する時間、すなわち、スイッ
チング時間が短縮できる。DRAMではキャパシタの充放電が律速となって、動作スピー
ドの制約があるのに対し、ゲインセル型メモリではデザインルールの縮小と共に読み出し
トランジスタ128のゲート容量とキャパシタ126の容量が同じ比率で小さくなるため
、非常に高速で応答するメモリが作製できる。
【0111】
具体的には、デザインルールが1/10になれば(FETの寸法が縦・横・高さとの1/
10になれば)、キャパシタ126の容量は1/10となり、FETのオン抵抗も1/1
0となるため、スイッチングに要する時間は1/100となる。一方、DRAMではFE
Tのオン抵抗が1/10となっても、キャパシタの容量は変わらないので、スイッチング
時間は1/10となるにとどまる。すなわち、ゲインセル型メモリではDRAMより10
倍の高速化が可能である。
【0112】
このように優れた特性が期待されるゲインセル型メモリであるが、FETのオフ電流を十
分に抑制できないために、実用に至っていない。一般にデザインルールが1/10となっ
てもFETのオフ電流が1/10となることはなく、むしろ、他のさまざまな要因によっ
て、リーク電流は増加することがある。
【0113】
例えば、オフ状態でPN接合を用いて、ソースドレイン間を絶縁するFETであれば、微
細化とともにPN接合におけるバンド間トンネルによるリークが顕著となる。また、バン
ドギャップが小さな(1.5電子ボルト未満)の半導体では、熱励起キャリアの影響も無
視できない。オフ電流を抑制できなければキャパシタの容量を減らすことは難しい。
【0114】
ゲインセル型メモリの書き込みトランジスタ127を公知のシリコン半導体を用いたFE
Tで構成した場合にはトランジスタを2つ用いることの効果は消失する。例えば、キャパ
シタ126の容量が通常のDRAMのように10fF程度であるとすると、シリコン半導
体を用いたFETではオフ時のリーク電流は最低でも10-14A程度であるため、1秒
ほどでキャパシタ126に蓄積された電荷は消失する。そのため、通常のDRAMと同様
に1秒間に十数回のリフレッシュ動作が必要となる。
【0115】
DRAMより1つ余分にトランジスタを設けるのに同じ容量のキャパシタを使うのではコ
ストに見合わないので、キャパシタの容量を低減する必要がある。DRAMではビット線
の寄生容量との相対比の関係からキャパシタの容量を小さくすると、読み出しでエラーが
生じるが、ゲインセル型メモリでは、キャパシタの容量を1/10にしても、データを読
み出せる。
【0116】
しかしながら、シリコン半導体を用いたFETでは、比較的オフ電流が大きいため、キャ
パシタの容量が1/10になると、リフレッシュの間隔も1/10になる。その分、消費
電力が増大する上、メモリへのアクセスも制約を受ける。同様にキャパシタの容量が1/
100になると、リフレッシュの間隔が1/100となり、実用的ではない。従来は、書
き込みトランジスタ127のリーク電流を十分に低減する手段がなかったため、このよう
なゲインセル型メモリが実用化されることはなかった。
【0117】
書き込みトランジスタ127を、酸化物半導体をチャネルに用いたFETで形成すると、
そのオフ電流が極めて小さくなる。オフ電流が十分に小さくなると、ゲインセル型メモリ
は非常に有望なメモリセルとなる。すなわち、キャパシタ126の容量は、書き込みトラ
ンジスタ127や読み出しトランジスタ128のゲート容量と同程度まで小さくできるの
で、DRAMのような特殊な形状(スタック型やトレンチ型)のキャパシタを設ける必要
はなく、設計の自由度が拡がり、工程も簡単となる。そして、上述のように高速動作の可
能なメモリとなる。
【0118】
例えば、オフ電流をシリコントランジスタの場合の100万分の1(10-20A程度)
とすれば、仮にキャパシタがDRAMの千分の1であったとしても、リフレッシュの間隔
はDRAMの千倍(すなわち、1分に1度)で済む。オフ電流がより小さく、例えば、1
0-24A以下であれば、数日に一度のリフレッシュで済む。
【0119】
書き込みに際しては、上記のようにDRAMに比べて格段に小さな容量のキャパシタへの
充電であるから、書き込みトランジスタ127の特性はそれほど優れたものでなくとも現
在のDRAMと同程度あるいはそれ以上のものとなる。例えば、キャパシタ126の容量
が、DRAMのキャパシタの容量の千分の1であれば、書き込みトランジスタ127もオ
ン電流(あるいは移動度)はDRAMのトランジスタの千分の1でよい。
【0120】
仮に書き込みトランジスタ127の移動度がシリコン半導体を用いたトランジスタの1/
100の移動度であっても、通常のDRAMの10倍の速度で書き込みが実行できる。上
述のように、高速性はデザインルールの縮小とともに顕著になる。
【0121】
なお、書き込みトランジスタ127のオフ電流が十分に小さくなり、リフレッシュが実質
的に不要となると、不揮発性メモリとしての側面も強くなる。リフレッシュが不要であれ
ば、RAMとしてだけではなく、ゲインセル型メモリをNAND構造を有するメモリに適
用できる。NAND構造により集積度を高めることも可能となる。
【0122】
本実施の形態のゲインセル型メモリの概要を
図12(A)に示す。読み出しトランジスタ
128はゲート121とソース123、ドレイン122を有する。ドレイン122は電源
線として機能するか、電源線に接続され、好ましくはワード線方向に延在する。また、ソ
ース123は書き込みトランジスタ127のソース104と接続する。
【0123】
書き込みトランジスタ127は実施の形態2で説明したFETを用いる。しかし、これに
限らず、実施の形態1、実施の形態3乃至実施の形態5で説明したFETを用いてもよい
。また、
図12(A)に示す図面は、
図5(B)に相当するものである。
【0124】
書き込みトランジスタ127は、層間絶縁物112上に、酸化物半導体101、ゲート絶
縁膜102、ゲート103、ソース104、ドレイン105を有し、ドレイン105は読
み出しトランジスタ128のゲート121と接する。なお、ゲート103は書き込みワー
ド線あるいはその一部として機能する。読み出しトランジスタ128のゲート121は、
書き込みトランジスタ127のドレイン105と電気的に接続し、書き込みトランジスタ
127のゲート103とソース104とは電気的に接続しない構造とすることが好ましい
。
【0125】
また、ソース104にはビット線を接続する。さらに、ドレイン105に重なるようにし
て、ゲート絶縁膜102を介して読み出しワード線124が設けられる。読み出しワード
線124とドレイン105とゲート絶縁膜102でキャパシタ126が形成される。読み
出しワード線124はゲート103と同様に、酸化物半導体101の側面をドレイン10
5上から覆う形状となる。
【0126】
このため、読み出しワード線124の幅をL6とすると、キャパシタ126の面積(読み
出しワード線124とドレイン105の重なる部分の面積)は(2h+t)×L6より大
きくなる。一方、読み出しトランジスタ128のゲート121のゲート面積はL6×L6
程度である。酸化物半導体の高さhは回路の最小加工線幅に制約されることなく大きくで
きるので、結果として、キャパシタ126の容量を、読み出しトランジスタ128のゲー
ト容量の2倍あるいはそれ以上とできる。このことは、データの読み出しをおこなう際に
エラーが起こりにくくなることを意味する。
【0127】
図12(A)に示す構造のメモリセルを作製するには以下のようにおこなうとよい。まず
、単結晶シリコン半導体を用いて、読み出しトランジスタ128のゲート121、ソース
123、ドレイン122を作製し、その上に層間絶縁物112を形成する。そして、その
表面を平坦化して、ゲート121を露出させる。
【0128】
その後、薄片状の酸化物半導体101を形成し、層間絶縁物112に読み出しトランジス
タ128のソース123に達するコンタクトホールを形成する。そして、酸化物半導体1
01の一部を覆って、ソース104、ドレイン105を形成する。ドレイン105は読み
出しトランジスタ128のゲート121と、ソース104は同じくソース123と接する
ようにする。
【0129】
そして、ゲート絶縁膜102を形成する。さらに、ゲート絶縁膜102を覆って、ゲート
103、読み出しワード線124を形成する。その後、ソース104に達するコンタクト
ホールを設け、ビット線125を形成する。
【0130】
本実施の形態で説明したゲインセル型メモリは、DRAMとは異なり、データの読み出し
の際に信号の増幅過程やそのための回路が不要であることを利用して、各種半導体回路の
レジスタ(一時的にデータを記憶するメモリ装置)として利用できる。
【0131】
通常の半導体回路中のレジスタは6つのトランジスタを用いたフリップフロップ回路で構
成される。そのため、レジスタの占有面積が大きくなるが、本実施の形態で説明したゲイ
ンセル型メモリは2つのトランジスタと1つのキャパシタより形成され、加えて、2つの
トランジスタは立体的に配置されるため、従来のレジスタよりも占有面積が小さくなる。
【0132】
また、フリップフロップ回路を用いたレジスタは電源が途絶するとデータを消失し、電源
が復旧した後も元の状態を再現できないのに対し、本実施の形態で説明したゲインセル型
メモリは一定の期間、データを保持できるので、電源が復旧した後、速やかに元の状態を
再現できる。
【0133】
この特性を利用すれば、半導体回路として演算をしない時間がわずかでもあれば、即座に
電源の供給を停止し、演算が必要となった場合に再び電源を供給することにより、消費電
力を低減できる。例えば、画像処理および出力回路においては、17ミリ秒に一度、画像
データを処理し、送出するが、それに必要な時間は1ミリ秒以下であり、残りの16ミリ
秒以上の時間は回路の電源を切っておいてもよい。このようにすることで、回路の消費電
力を低減できる。
【0134】
より大規模な半導体回路であるCPUでは複数の回路がそれぞれ演算をおこなうが、常時
、全ての回路が演算をおこなっているわけではなく、待機しているだけの回路も多い。そ
ういう回路には電源を供給しないことにより消費電力を大幅に低減できる。そういった回
路のレジスタは本実施の形態で説明したゲインセル型メモリを用いて構成することにより
、瞬時に回路への電源の供給および遮断を実行できる。
【0135】
(実施の形態8)
以下では、実施の形態6あるいは実施の形態7で説明したメモリの利用例について
図14
を参照して説明する。
図14は、マイクロプロセッサの構成例を示すブロック図である。
図14に示すマイクロプロセッサは、CPU301、メインメモリ302、クロックコン
トローラ303、キャッシュコントローラ304、シリアルインターフェース305、I
/Oポート306、端子307、インターフェース308、キャッシュメモリ309等が
形成されている。勿論、
図14に示すマイクロプロセッサは、その構成を簡略化して示し
た一例にすぎず、実際のマイクロプロセッサはその用途によって多種多様な構成を有して
いる。
【0136】
CPU301をより高速に動作させるには、それに見合う程度の高速なメモリを必要とす
る。しかし、CPU301の動作スピードにあったアクセスタイムをもつ高速の大容量メ
モリを使用した場合、一般的にコストが高くなってしまう。そこで大容量のメインメモリ
302の他に、メインメモリ302よりも小容量であるが高速のメモリであるSRAMな
どのキャッシュメモリ309を、CPU301とメインメモリ302の間に介在させる。
CPU301がキャッシュメモリ309にアクセスすることにより、メインメモリ302
のスピードによらず、高速で動作することが可能となる。
【0137】
図14に示すマイクロプロセッサでは、メインメモリ302に上述したメモリを用いるこ
とができる。上記構成により、集積度の高いマイクロプロセッサ、信頼性の高いマイクロ
プロセッサを実現することができる。
【0138】
なお、メインメモリ302には、CPU301で実行されるプログラムが格納されている
。そして例えば実行初期において、メインメモリ302に格納されているプログラムは、
キャッシュメモリ309にダウンロードされる。ダウンロードされるプログラムは、メイ
ンメモリ302に格納されているものに限定されず、他の外付のメモリからダウンロード
することもできる。キャッシュメモリ309は、CPU301で実行されるプログラムを
格納するだけでなく、ワーク領域としても機能し、CPU301の計算結果等を一時的に
格納する。
【0139】
なお、CPUは単数に限られず、複数設けていても良い。CPUを複数設け、並列処理を
行なうことで、動作速度の向上を図ることができる。その場合、CPU間の処理速度がま
ちまちだと処理全体で見たときに不都合が起きる場合があるので、スレーブとなる各CP
Uの処理速度のバランスを、マスターとなるCPUでとるようにしても良い。
【0140】
なお、ここではマイクロプロセッサを例示したが、上述したメモリは、マイクロプロセッ
サのメインメモリにその用途が限られるわけではない。例えば表示装置の駆動回路に用い
られるビデオRAMや、画像処理回路に必要となる大容量メモリとしての用途も好ましい
。その他、様々なシステムLSIにおいても、大容量もしくは小型用途のメモリとして用
いることができる。
【0141】
(実施の形態9)
本実施の形態では、実施の形態6あるいは実施の形態7で説明したメモリを有する半導体
装置の例について説明する。当該半導体装置は、本発明の一態様に係るメモリを用いるこ
とで、小型化を実現することが可能である。特に、携帯用の半導体装置の場合、本発明の
一態様に係るメモリを用いることで小型化が実現されれば、使用者の使い勝手が向上する
というメリットが得られる。
【0142】
本発明の一態様に係るメモリは、表示装置、ノート型パーソナルコンピュータ、記録媒体
を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Di
sc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いる
ことができる。
【0143】
その他に、本発明の一態様に係るメモリを用いることができる半導体装置として、携帯電
話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、
ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音
響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミ
リ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機な
どが挙げられる。これら半導体装置の具体例を
図15に示す。
【0144】
図15(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体401、筐体402、表示部403、表示部
404、マイクロホン405、スピーカー406、操作キー407、スタイラス408等
を有する。本発明の一態様に係るメモリは、携帯型ゲーム機の駆動を制御するための集積
回路に用いることができる。携帯型ゲーム機の駆動を制御するための集積回路に本発明の
一態様に係るメモリを用いることで、コンパクトな携帯型ゲーム機を提供することができ
る。なお、
図15(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部403と表示部404
とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
【0145】
図15(B)は携帯電話であり、筐体411、表示部412、音声入力部413、音声出
力部414、操作キー415、受光部416等を有する。受光部416において受信した
光を電気信号に変換することで、外部の画像を取り込むことができる。本発明の一態様に
係るメモリは、携帯電話の駆動を制御するための集積回路に用いることができる。携帯電
話の駆動を制御するための集積回路に本発明の一態様に係るメモリを用いることで、コン
パクトな携帯電話を提供することができる。
【0146】
図15(C)は携帯情報端末であり、筐体421、表示部422、操作キー423等を有
する。
図15(C)に示す携帯情報端末は、モデムが筐体421に内蔵されていても良い
。本発明の一態様に係るメモリは、携帯情報端末の駆動を制御するための集積回路に用い
ることができる。携帯情報端末の駆動を制御するための集積回路に本発明の一態様に係る
メモリを用いることで、コンパクトな携帯情報端末を提供することができる。
【符号の説明】
【0147】
100 絶縁表面
101 酸化物半導体
102 ゲート絶縁膜
103 ゲート
104 ソース
105 ドレイン
106 空乏化領域
107 N型領域
108 N型領域
109 側壁絶縁物
110 側壁絶縁物
111 バリア絶縁物
112 層間絶縁物
113 ビット線
113a 導電性領域
114 ドライバ回路部
115 セルトランジスタ
116 キャパシタ
117 接続電極
118 下部電極
119 キャパシタ絶縁膜
120 上部電極
121 ゲート
122 ドレイン
123 ソース
124 読み出しワード線
125 ビット線
126 キャパシタ
127 書き込みトランジスタ
128 読み出しトランジスタ
201a 酸化物半導体
201b 酸化物半導体
201c 酸化物半導体
202a ゲート絶縁膜
202b ゲート絶縁膜
202c ゲート絶縁膜
203a ゲート
203b ゲート
203c ゲート
204a ソース
204b ソース
204c ソース
205a ドレイン
205b ドレイン
205c ドレイン
206a 空乏化領域
206b 空乏化領域
207 N型領域
208 N型領域
301 CPU
302 メインメモリ
303 クロックコントローラ
304 キャッシュコントローラ
305 シリアルインターフェース
306 I/Oポート
307 端子
308 インターフェース
309 キャッシュメモリ
401 筐体
402 筐体
403 表示部
404 表示部
405 マイクロホン
406 スピーカー
407 操作キー
408 スタイラス
411 筐体
412 表示部
413 音声入力部
414 音声出力部
415 操作キー
416 受光部
421 筐体
422 表示部
423 操作キー