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特開2024-161163電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161163
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20241108BHJP
   G01S 13/536 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S13/536
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146820
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2021188191の分割
【原出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】黒田 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐原 徹
(72)【発明者】
【氏名】山本 顕嗣
(72)【発明者】
【氏名】本間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】童 方偉
(57)【要約】
【課題】電波などの送受信により対象の変位を良好な精度で検出し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器は、送信波を送信する送信アンテナと、送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナをそれぞれ複数含む複数の受信アンテナアレイと、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、送信波を反射する対象の変位を検出する信号処理部と、を備える。複数の受信アンテナアレイは、それぞれ異なる向きに配置される。信号処理部は、複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された対象の変位を合成する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナをそれぞれ複数含む複数の受信アンテナアレイと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の変位を検出する信号処理部と、
を備え、
前記複数の受信アンテナアレイは、それぞれ異なる向きに配置され、
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を合成する、電子機器。
【請求項2】
前記複数の受信アンテナアレイは、当該受信アンテナアレイにおいて複数の受信アンテナが並ぶ方向に直交する方向がそれぞれ異なるように配置される、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の受信アンテナアレイは、それぞれ平面型アンテナとして構成され、当該平面型アンテナにおける法線の方向がそれぞれ異なるように配置される、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記複数の受信アンテナアレイは、当該受信アンテナアレイにおける受信面に垂直な方向がそれぞれ異なるように配置される、請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を前記複数次元の座標系に座標変換してから合成する、請求項1から4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位をオイラー角に基づく変換行列を用いて座標変換してから合成する、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記信号処理部は、前記送信信号及び前記受信信号に基づいて、前記対象の振動を検出する、請求項1から6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記信号処理部は、前記送信信号及び前記受信信号に基づいて、前記対象である装置の振動を検出する、請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。
【請求項9】
前記信号処理部は、前記送信信号及び前記受信信号に基づいて、前記対象である人間又は動物の心拍を検出する、請求項1から8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
前記複数の受信アンテナアレイは、3つの受信アンテナアレイを含み、
前記信号処理部は、前記3つの受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を、同じ3次元の座標系において合成する、請求項1から9のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を、同じ複数次元の座標系において合成する、請求項1から10のいずれかに記載の電子機器。
【請求項12】
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の変位を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を合成するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項13】
電子機器に、
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の変位を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を合成するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に関連する産業などの分野において、自車両と所定の物体との間の距離などを測定する技術が重要視されている。特に、近年、ミリ波のような電波を送信し、障害物などの物体に反射した反射波を受信することで、物体との間の距離などを測定するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))の技術が、種々研究されている。このような距離などを測定する技術の重要性は、運転者の運転をアシストする技術、及び、運転の一部又は全部を自動化する自動運転に関連する技術の発展に伴い、今後ますます高まると予想される。
【0003】
また、送信された電波が所定の物体に反射した反射波を受信することで、当該物体の存在などを検出する技術について、種々の提案がされている。例えば特許文献1は、検出対象物の状況を画像化して評価可能にするマイクロ波イメージングシステムを提案している。また、例えば特許文献2は、レーダ信号を利用して、医療用の画像処理を行う方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-113603号公報
【特許文献2】特開平3-73130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置の振動、又は人体の心拍などのような振動を、例えばミリ波のような電波などの送受信により良好な精度で検出できれば、多種多様な分野において役立つことが期待できる。
【0006】
本開示の目的は、電波などの送受信により対象の変位を良好な精度で検出し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナをそれぞれ複数含む複数の受信アンテナアレイと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の変位を検出する信号処理部と、
を備える。
前記複数の受信アンテナアレイは、それぞれ異なる向きに配置される。
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を合成する。
【0008】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の変位を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を合成するステップと、
を含む。
【0009】
一実施形態に係るプログラムは、
電子機器に、
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の変位を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を合成するステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
一実施形態によれば、電波などの送受信により対象の変位を良好な精度で検出し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る電子機器100の使用態様を説明する図である。
図2】一実施形態に係る電子機器100の構成を概略的に示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る電子機器100が処理する信号の構成を説明する図である。
図4】一実施形態に係る電子機器100による信号の処理を説明する図である。
図5】一実施形態に係る電子機器100による信号の処理を説明する図である。
図6】一実施形態に係る電子機器100による信号の処理を説明する図である。
図7】一実施形態に係る電子機器100のアンテナアレイにおけるアンテナの配置の例及び動作原理を概略的に示す図である。
図8】一実施形態に係る電子機器100のアンテナアレイにおけるアンテナの配置の例を示す図である。
図9】一実施形態に係る電子機器100による信号の処理の例を示す図である。
図10】一実施形態に係る電子機器1におけるアンテナの配置の例を示す図である。
図11】一実施形態に係る電子機器1による信号の処理の例を示す図である。
図12】一実施形態に係る電子機器1による信号の処理の例を示す図である。
図13】一実施形態に係る電子機器1による信号の処理の例を示す図である。
図14】一実施形態に係る電子機器1による信号の処理の例を示す図である。
図15】一実施形態に係る電子機器1の構成を概略的に示すブロック図である。
図16】一実施形態に係る電子機器1による信号の処理の例を示す図である。
図17】一実施形態に係る電子機器1のアンテナアレイにおけるアンテナの配置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本開示において、「電子機器」とは、電力により駆動する機器としてよい。また、「ユーザ」とは、一実施形態に係るシステム及び/又は電子機器を使用する者(典型的には人間)又は動物としてよい。ユーザは、一実施形態に係る電子機器を用いて、人間などの対象の監視を行う者を含んでもよい。また、「対象」とは、一実施形態に係る電子機器によって監視される対象となる物体又は生体(例えば人間又は動物)などを含んでもよい。さらに、ユーザは、対象に含まれるものとしてもよい。物体は、エンジン、工作装置、旋盤装置、加工装置、及び自動車などの乗り物などとしてよいが、特に限定されるものではなく、他の任意の装置としてもよい。
【0014】
また、一実施形態に係る電子機器は、装置を対象として、当該装置の変位を検出してもよい。この変位には、例えば、装置の振動が含まれるとしてよい。変位には、周期的な運動、非周期的な運動、及び/又は、ランダムな運動などが任意に組み合わされた運動の変位が含まれるとしてよい。したがって、一実施形態に係る電子機器が利用される場面として想定されるのは、例えば、工場、作業所、又は駐車場などを挙げることができる。一実施形態に係る電子機器は、装置を対象として、所定時間当たりの装置の変位により算出される振動速度を検出してもよい。この場合、一実施形態に係る電子機器は、以下の説明においても変位に変えて、又は変位と共に、振動速度を検出してよい。
【0015】
さらに、一実施形態に係る電子機器は、当該電子機器の周囲に存在する人間などの対象の心拍を検出することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器が利用される場面として想定されるのは、例えば、会社、病院、老人ホーム、学校、スポーツジム、及び介護施設などのような、社会活動を行う者が使用する特定の施設などとしてよい。例えば、会社であれば従業員などの健康状態の把握及び/又は管理は、極めて重要である。同様に、病院であれば患者及び医療従事者など、また老人ホームであれば入居者及びスタッフなどの健康状態の把握及び/又は管理は、極めて重要である。一実施形態に係る電子機器が利用される場面は、上述の、会社、病院、及び老人ホームなどの施設に限定されず、対象の健康状態の把握及び/又は管理などが望まれるような任意の施設としてよい。任意の施設は、例えば、ユーザの自宅などの非商業施設も含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器が利用される場面は、屋内に限られず、屋外としてもよい。例えば、一実施形態に係る電子機器が利用される場面は、電車、バス、及び飛行機などの移動体内、並びに、駅及び乗り場などとしてもよい。また、一実施形態に係る電子機器が利用される場面として、自動車、航空機、若しくは船舶などの移動体、ホテル、ユーザの自宅、自宅でのリビングルーム、お風呂、トイレ、又は寝室などとしてもよい。
【0016】
一実施形態に係る電子機器は、例えば、介護施設などにおいて、要看護者又は要介護者などのような対象の心拍を検出又は監視する用途で用いられてよい。また、一実施形態に係る電子機器は、例えば要看護者又は要介護者などのような対象の心拍に異常が認められる場合に、例えば本人及び/又は他の者に所定の警告を発してもよい。したがって、一実施形態に係る電子機器によれば、例えば本人及び/又は介護施設などのスタッフは、例えば要看護者又は要介護者などのような対象の脈拍に異常が認められることを認識し得る。一方、一実施形態に係る電子機器は、例えば要看護者又は要介護者などのような対象の心拍に異常が認められない(例えば正常と認められる)場合に、例えば本人及び/又は他の者にその旨を報知してもよい。したがって、一実施形態に係る電子機器によれば、例えば本人及び/又は介護施設などのスタッフは、例えば要看護者又は要介護者などのような対象の脈拍が正常である(又は異常でない)ことを認識し得る。
【0017】
また、一実施形態に係る電子機器は、人間以外の他の動物を対象として、脈拍を検出してもよい。以下説明する一実施形態に係る電子機器は、一例として、ミリ波レーダのような技術に基づくセンサによって、人間の脈拍を検出するものとして説明する。一実施形態に係る電子機器は、検出対象に、人間及び人間以外の他の動物の、心拍、動悸、鼓動、拍動、又は脈打ちその他の心臓の動きに伴う生体情報を含むとしてよい。一実施形態に係る電子機器は、検出対象に、人間及び人間以外の他の動物の動作を含むとしてよい。
【0018】
一実施形態に係る電子機器は、任意の静止物に設置されてもよいし、任意の移動体に設置されてもよい。一実施形態に係る電子機器は、送信アンテナから、電子機器の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、電子機器に備えられるものとしてもよいし、例えばレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0019】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器は、静止しているものとして説明する。一方、一実施形態に係る電子機器が脈拍を検出する対象(人間又は動物)は、静止していてもよいし、移動していてもよいし、静止した状態で身体を動かしていてもよい。一実施形態に係る電子機器は、通常のレーダセンサと同様に、電子機器の周囲の物体が移動し得るような状況において、電子機器と当該物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、電子機器及び物体の双方が静止していても、電子機器と物体との間の距離などを測定することができる。
【0020】
後述のように、一実施形態に係る電子機器1は、少なくとも1つの送信アンテナアレイと、複数の受信アンテナアレイと、を備える。そこで、まず、一実施形態に係る電子機器1の動作原理を説明するための前提として、一実施形態に係る電子機器1の部分的な構成とし得る電子機器100について、図面を参照して説明する。以下、一実施形態に係る電子機器1の部分的な構成を示す電子機器100を、単に「電子機器100」とも記す。すなわち、以下説明する電子機器100は、一実施形態に係る電子機器1から、いくつかの機能部及び/又は部品を、削除又は省略した構成を示すものとしてよい。
【0021】
まず、一実施形態に係る電子機器100による物体の振動検出の例を説明する。以下の説明では、一実施形態に係る電子機器100が、エンジン、工作装置、旋盤装置、加工装置その他の装置、又は自動車などの乗り物の振動を検出する例を説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る電子機器100の使用態様の一例を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサの機能を備える電子機器100の例を示している。
【0023】
図1に示すように、電子機器100は、後述する送信部及び受信部を備えてよい。後述のように、送信部は送信アンテナアレイ24を備えてよい。また、受信部は受信アンテナアレイ31を備えてよい。電子機器100、送信部、及び受信部の具体的な構成については後述する。図1は、見易さのために、電子機器100が送信アンテナアレイ24及び受信アンテナアレイ31を備える状況を示してある。また、電子機器100は、電子機器100に含まれる信号処理部10(図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。また、電子機器100は、電子機器100に含まれる信号処理部10(図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、電子機器100の外部に備えてもよい。図1において、電子機器100は、移動していてもよいが、移動せずに静止していてよい。
【0024】
図1に示す例において、電子機器100は、送信アンテナアレイ24を備える送信部及び受信アンテナアレイ31を備える受信部を、簡略化して示してある。電子機器100は、例えば複数の送信部及び/又は複数の受信部を備えてもよい。送信部は、複数の送信アンテナから構成される送信アンテナアレイ24を備えてよい。また、受信部は、複数の受信アンテナから構成される受信アンテナアレイ31を備えてよい。ここで、送信部及び/又は受信部が電子機器100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。また、送信部及び/又は受信部の個数は、電子機器100による心拍の検出範囲及び/又は検出精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。
【0025】
電子機器100は、後述のように、送信アンテナアレイ24から送信波として電磁波を送信する。例えば電子機器100の周囲に所定の物体(例えば図1に示す対象装置200)が存在する場合、電子機器100から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えば電子機器100の受信アンテナアレイ31によって受信することにより、電子機器100は、当該対象をターゲットとして検出することができる。
【0026】
送信アンテナアレイ24を備える電子機器100は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、電子機器100は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係る電子機器100は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。さらに、一実施形態に係る電子機器100は、例えば音波又は超音波を送受信して物体を検出する技術に基づくセンサとしてもよい。
【0027】
図1に示す電子機器100は、送信アンテナアレイ24から送信された送信波の反射波を受信アンテナアレイ31から受信する。このようにして、電子機器100は、電子機器100から所定の距離内に存在する所定の対象装置200をターゲットとして検出することができる。例えば、図1に示すように、電子機器100は、電子機器100と所定の対象装置200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器100は、電子機器100と所定の対象装置200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器100は、所定の対象装置200からの反射波が、電子機器100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0028】
図1において、XY平面は、例えば地表にほぼ平行な平面としてよい。この場合、図1に示すZ軸の正方向は、鉛直上向きを示すものとしてよい。図1において、電子機器100は、XY平面と平行な平面上に配置されているものとしてよい。また、図1において、対象装置200は、例えば、XY平面にほぼ平行な地表に立っている状態としてよい。
【0029】
ここで、対象装置200とは、例えば電子機器100の周囲に存在する装置などとしてよい。上述のように、対象装置200は、移動していてもよいし、停止又は静止していてもよい。対象装置200は、エンジン、工作装置、旋盤装置、加工装置その他の装置及び自動車などの乗り物を含むとしてよい。本実施形態の電子機器100は、エンジン、工作装置、旋盤装置、及び/又は加工装置その他の装置の振動を検知するとしてよい。対象装置200は、工場、生産設備、又は研究所などに設置されているとしてよい。
【0030】
本開示において、電子機器100が検出する物体は、任意の物体のような無生物の他に、人、犬、猫、及び馬、その他の動物などの生物も含む。本開示の電子機器100が検出する物体は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含んでもよい。以下、電子機器100の周囲に存在する対象装置200のような物体は、装置であるとして説明する。
【0031】
図1において、電子機器100の大きさと、対象装置200の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、図1において、送信部の送信アンテナアレイ24及び受信部の受信アンテナアレイ31は、電子機器100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、送信部の送信アンテナアレイ24及び/又は受信部の受信アンテナアレイ31は、電子機器100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、送信部の送信アンテナアレイ24及び/又は受信部の受信アンテナアレイ31は、電子機器100の内部に設置して、電子機器100の外観に現れないようにしてもよい。
【0032】
以下、典型的な例として、電子機器100の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。一方、電子機器100の送信アンテナは、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0033】
図2は、一実施形態に係る電子機器100の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器100の構成の一例について説明する。
【0034】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、このような実施形態について説明する。
【0035】
本開示で利用されるFMCWレーダレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。電子機器100が生成する信号は、FMCW方式の信号に限定されない。電子機器100が生成する信号は、FMCW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。任意の記憶部に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFMCW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0036】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器100は、信号処理部10を備えている。信号処理部10は、信号発生処理部11、受信信号処理部12、及び振動変位抽出処理部14を備えてよい。信号発生処理部11は、送信信号の発生に関する処理を実行してよい。また、受信信号処理部12は、例えば信号発生処理部11によって送信された送信信号が反射された反射波として受信する受信信号に関する処理を実行してよい。具体的には、受信信号処理部12は、対象装置200までの距離、対象装置200との相対速度、及び対象装置200の方位角の少なくとも1つなどを測定(推定)してよい。振動変位抽出処理部14は、振動の変位の抽出に関する処理を実行してよい。
【0037】
また、受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、例えば、マイクロドップラーの成分を抽出する処理を実行してよい。受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、対象装置200の振動の包絡を抽出する処理を実行してもよい。また、受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、振動の時系列データの周波数解析に基づいて、対象装置200の振動変動を算出する処理を実行してもよい。
【0038】
また、本開示の電子機器が、生体を検出対象とした場合、受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、例えば、マイクロドップラーの成分を抽出する処理を実行してよい。また、本開示の電子機器が、生体を検出対象とした場合、受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、対象の心音の包絡を抽出する処理を実行してもよい。本開示の電子機器が、生体を検出対象とした場合、受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、例えば、対象の心拍間隔(RRI)を抽出する処理を実行してもよい。また、本開示の電子機器が、生体を検出対象とした場合、受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、抽出された対象の心拍間隔の時系列データの周波数解析を行う処理を実行してもよい。また、本開示の電子機器が、生体を検出対象とした場合、受信信号処理部12及び/又は振動変位抽出処理部14は、心拍間隔の時系列データの周波数解析に基づいて、対象の心拍変動を算出する処理を実行してもよい。
【0039】
また、図2に示すように、一実施形態に係る電子機器100は、送信部として、送信DAC21、送信回路22、ミリ波送信回路23、及び、送信アンテナアレイ24を備えている。また、一実施形態に係る電子機器100は、受信部として、受信アンテナアレイ31、ミキサ32、受信回路33、及び、受信ADC34を備えている。一実施形態に係る電子機器100は、図2に示す機能部のうち少なくともいずれかを含まなくてもよいし、図2に示す機能部以外の機能部を含んでもよい。図2に示す電子機器100は、ミリ波帯域等の電磁波を用いた一般的なレーダと基本的に同様に構成した回路を用いて構成してよい。一方で、一実施形態に係る電子機器100において、信号処理部10による信号処理は、従来の一般的なレーダとは異なる処理を含んでよい。
【0040】
一実施形態に係る電子機器100が備える信号処理部10は、電子機器100を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器100全体の動作の制御を行うことができる。特に、信号処理部10は、電子機器100が扱う信号について各種の処理を行う。信号処理部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。信号処理部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、信号処理部10は、例えばCPU(ハードウェア)及び当該CPUで実行されるプログラム(ソフトウェア)として構成してよい。信号処理部10は、信号処理部10の動作に必要な記憶部(メモリ)を適宜含んでもよい。
【0041】
信号処理部10の信号発生処理部11は、電子機器100から送信する信号を発生する。一実施形態に係る電子機器100において、信号発生処理部11は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号発生処理部11は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号発生処理部11は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号発生処理部11は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号発生処理部11が生成する信号は、例えば信号処理部10において予め設定されていてもよい。また、信号発生処理部11が生成する信号は、例えば信号処理部10における任意の記憶部などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号発生処理部11によって生成された信号は、送信DAC21に供給される。このため、信号発生処理部11は、送信DAC21に接続されてよい。
【0042】
送信DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)21は、信号発生処理部11から供給されるデジタル信号をアナログ信号に変換する機能を有する。送信DAC21は、一般的なデジタル・アナログ・コンバータを含めて構成してよい。送信DAC21によってアナログ化された信号は、送信回路22に供給される。このため、送信DAC21は、送信回路22に接続されてよい。
【0043】
送信回路22は、送信DAC21によってアナログ化された信号を中間周波数(Intermediate Frequency:IF)の帯域に変換する機能を有する。送信回路22は、一般的なIF帯域の送信回路を含めて構成してよい。送信回路22によって処理された信号は、ミリ波送信回路23に供給される。このため、送信回路22は、ミリ波送信回路23に接続されてよい。
【0044】
ミリ波送信回路23は、送信回路22によって処理された信号を、ミリ波(RF波)として送信する機能を有する。ミリ波送信回路23は、一般的なミリ波の送信回路を含めて構成してよい。ミリ波送信回路23によって処理された信号は、送信アンテナアレイ24に供給される。このため、ミリ波送信回路23は、送信アンテナアレイ24に接続されてよい。また、ミリ波送信回路23によって処理された信号は、ミキサ32にも供給される。このため、このため、ミリ波送信回路23は、ミキサ32にも接続されてよい。
【0045】
送信アンテナアレイ24は、複数の送信アンテナをアレイ状に配列させたものである。図2においては、送信アンテナアレイ24の構成を簡略化して示してある。送信アンテナアレイ24は、ミリ波送信回路23によって処理された信号を、電子機器100の外部に送信する。送信アンテナアレイ24は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる送信アンテナアレイを含めて構成してよい。
【0046】
このようにして、一実施形態に係る電子機器100は、送信アンテナ(送信アンテナアレイ24)を備え、送信アンテナアレイ24から送信波として送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。
【0047】
例えば、図2に示すように、電子機器100の周囲に対象装置200のような物体が存在する場合を想定する。この場合、送信アンテナアレイ24から送信された送信波の少なくとも一部は、対象装置200のような物体によって反射される。送信アンテナアレイ24から送信された送信波のうち、対象装置200のような物体によって反射されるものの少なくとも一部は、受信アンテナアレイ31に向けて反射され得る。
【0048】
受信アンテナアレイ31は、反射波を受信する。ここで、当該反射波は、送信アンテナアレイ24から送信された送信波のうち対象装置200のような物体によって反射されたものの少なくとも一部としてよい。
【0049】
受信アンテナアレイ31は、複数の受信アンテナをアレイ状に配列させたものである。図2においては、受信アンテナアレイ31の構成を簡略化して示してある。受信アンテナアレイ31は、送信アンテナアレイ24から送信された送信波が反射された反射波を受信する。受信アンテナアレイ31は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられる受信アンテナアレイを含めて構成してよい。受信アンテナアレイ31は、反射波として受信された受信信号を、ミキサ32に供給する。このため、受信アンテナアレイ31は、ミキサ32に接続されてよい。
【0050】
ミキサ32は、ミリ波送信回路23によって処理された信号(送信信号)と、受信アンテナアレイ31によって受信された受信信号とを、中間周波数(IF)の帯域に変換する。ミキサ32は、一般的なミリ波レーダにおいて用いられるミキサを含めて構成してよい。ミキサ32は、合成された結果として生成される信号を、受信回路33に供給する。このため、ミキサ32は、受信回路33に接続されてよい。
【0051】
受信回路33は、ミキサ32によってIF帯域に変換された信号をアナログ処理する機能を有する。受信回路33は、一般的なIF帯域に変換する受信回路を含めて構成してよい。受信回路33によって処理された信号は、受信ADC34に供給される。このため、受信回路33は、受信ADC34に接続されてよい。
【0052】
受信ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)34は、受信回路33から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。受信ADC34は、一般的なアナログ・デジタル・コンバータを含めて構成してよい。受信ADC34によってデジタル化された信号は、信号処理部10の受信信号処理部12に供給される。このため、受信ADC34は、信号処理部10に接続されてよい。
【0053】
信号処理部10の受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に各種の処理を施す機能を有する。例えば、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、電子機器100から対象装置200のような物体までの距離を算出する(測距)。また、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、対象装置200のような物体の電子機器100に対する相対速度を算出する(測速)。さらに、受信信号処理部12は、受信DAC34から供給されるデジタル信号に基づいて、対象装置200のような物体の電子機器100から見た方位角を算出する(測角)。具体的には、受信信号処理部12には、I/Q変換されたデータが入力されてよい。このようなデータが入力されることにより、受信信号処理部12は、距離(Range)方向及び速度(Velocity)方向の高速フーリエ変換(2D-FFT)をそれぞれ行う。その後、受信信号処理部12は、例えばCFAR(Constant False Alarm Rate)などの処理による雑音点の除去による誤警報の抑制及び一定確率化を行ってもよい。そして、受信信号処理部12は、CFARの基準を満たす点に対して到来角度推定を行うことにより、対象装置200のような物体の位置を得てよい。受信信号処理部12によって測距、測速、及び測角された結果として生成される情報は、振動変位抽出処理部14に供給されてよい。
【0054】
振動変位抽出処理部14は、受信信号処理部12よって生成された情報から、心拍に関する情報として、振動の変位を抽出する。振動変位抽出処理部14による心拍に関する情報の抽出動作については、さらに後述する。振動変位抽出処理部14によって抽出された心拍に関する情報は、通信インタフェース50に供給されてよい。このため、振動変位抽出処理部14及び/又は信号処理部10は、通信インタフェース50に接続されてよい。振動変位抽出処理部14によって処理された各種の情報は、通信インタフェース50以外の他の機能部に供給されてもよい。
【0055】
通信インタフェース50は、信号処理部10から供給される情報を例えば外部機器60などに出力する電気的インタフェースを含んで構成されてよい。通信インタフェース50は、対象装置200のような物体の位置、速度、及び角度の少なくともいずれかの情報を、例えばCAN(Controller Area Network)又はUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)などの信号として、外部機器60などに出力してよい。例えば、対象装置200のような物体の位置、速度、角度の少なくともいずれかの情報は、通信インタフェース50を経て、外部機器60などに供給されてよい。このため、通信インタフェース50は、外部機器60などに接続されてよい。
【0056】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器100は、通信インタフェース50を介して、外部機器60に有線及び無線の少なくとも一方によって接続されてよい。一実施形態において、外部機器60は、任意のコンピュータ及び/又は任意の制御機器などを含んで構成されてよい。また、一実施形態に係る電子機器100は、外部機器60を含んで構成されてもよい。外部機器60は、電子機器100が検出する振動、心拍、及び/又は心音の情報が利用される態様に応じて、各種の構成とすることができる。したがって、外部機器60について、より詳細な説明は省略する。
【0057】
図3は、信号処理部10の信号発生処理部11が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0058】
図3は、FCM(Fast-Chirp Modulation(高速チャープ変調))方式を用いた場合における1フレームの時間的構造を示す。図3は、FCM方式の受信信号の一例を示している。FCMは、図3においてc1,c2,c3,c4,…,cnのように示すチャープ信号を、短い間隔(例えば最大測距距離から算出される電磁波のレーダと物標との間の往復時間以上)で繰り返す方式である。FCMにおいては、受信信号の信号処理の都合上、図3に示すようなサブフレーム単位に区分けして、送受信の処理を行うことが多い。
【0059】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。図3に示す例において、信号発生処理部11は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,c3,c4,…,cnのように示してある。図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0060】
図3に示す例において、c1,c2,c3,c4,…,cnのようにいくつかのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,c3,c4,…,cnのようにいくつかのチャープ信号を含んで構成されている。また、図3に示す例において、サブフレーム1,サブフレーム2,…,サブフレームNのようにいくつかのサブフレームを含めて、1つのフレーム(1フレーム)としている。すなわち、図3に示す1フレームは、N個のサブフレームを含んで構成されている。また、図3に示す1フレームをフレーム1として、その後に、フレーム2,フレーム3,…などが続いてよい。これらのフレームは、それぞれフレーム1と同様に、N個のサブフレームを含んで構成されてよい。また、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
【0061】
一実施形態に係る電子機器100において、信号発生処理部11は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号発生処理部11が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば信号処理部10の記憶部などに記憶しておいてよい。
【0062】
このように、一実施形態に係る電子機器100は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器100は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0063】
以下、電子機器100は、図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は任意としてよい。すなわち、一実施形態において、信号発生処理部11は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは任意としてよい。すなわち、一実施形態において、信号発生処理部11は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号発生処理部11は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号発生処理部11は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
【0064】
図4は、図3に示したサブフレームの一部を、他の態様で示した図である。図4は、信号処理部10の受信信号処理部12(図2)において行う処理である2D-FFT(Two Dimensional Fast Fourier Transform)を行った結果として、図3に示した送信信号を受信した受信信号の各サンプルを示したものである。
【0065】
図4に示すように、サブフレーム1,…,サブフレームNのような各サブフレームにおいて各チャープ信号c1,c2,c3,c4,…,cnが格納されている。図4において、各チャープ信号c1,c2,c3,c4,…,cnは、それぞれ横方向に配列された升目によって示す各サンプルから構成されている。図4に示す受信信号は、図2に示した受信信号処理部12によって、2D-FFT、CFAR、及び/又は、各サブフレームの統合信号処理などが施される。
【0066】
図5は、図2に示した受信信号処理部12において、2D-FFT、CFAR、及び各サブフレームの統合信号処理が施された結果、レンジ-ドップラー(距離-速度)平面上の点群が算出された例を示す図である。
【0067】
図5において、横方向はレンジ(距離)を表し、縦方向は速度を表している。図5に示す、塗りつぶされた升目s1は、CFARの閾値処理を超えた信号を示す点群を示す。図5に示す、塗りつぶされていない升s2は、CFARの閾値を超えなかった、点群のないbin(2D-FFTサンプル)を示す。図5において算出されたレンジ-ドップラー平面上の点群は、方向推定によりレーダからの方位を算出されて、対象装置200のような物体を示す点群として、2次元平面上の位置及び速度が算出される。ここで、方向推定は、ビームフォーマ及び/又は部分空間法により算出されてよい。代表的な部分空間法のアルゴリズムには、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及び、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotation Invariance Technique)などがある。
【0068】
図6は、受信信号処理部12が、方向推定を行った後に、図5に示したレンジ-ドップラー平面から、XY平面への点群座標の変換を行った結果の例を示す図である。図6に示すように、受信信号処理部12は、XY平面上に点群PGをプロットすることができる。ここで、点群PGは、各点Pから構成されている。また、それぞれの点Pは、角度θ、及び、極座標における半径方向の速度Vrを有している。
【0069】
受信信号処理部12は、2D-FFT及び角度推定の結果の少なくともいずれかに基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。受信信号処理部12は、それぞれ推定された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。これは、密度に準拠したクラスタリングを行うアルゴリズムである。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。受信信号処理部12において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、例えば、通信インタフェース50を介して、外部機器60などに供給されてもよい。
【0070】
以上のように、電子機器100は、送信アンテナ(送信アンテナアレイ24)と、受信アンテナ(受信アンテナアレイ31)と、信号処理部10とを備えてよい。送信アンテナアレイ24は、送信波Tを送信する。受信アンテナアレイ31は、送信波Tが反射された反射波Rを受信する。そして、信号処理部10は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体(例えば対象装置200のような物体など)を検出する。
【0071】
次に、一実施形態に係る電子機器100のアンテナアレイによる到来波の方向推定について、さらに説明する。
【0072】
図7は、一実施形態に係る電子機器100の受信アンテナアレイ31の構成、及び受信アンテナアレイ31による到来波の方向推定の原理を説明する図である。図7は、受信アンテナアレイ31による電波の受信の例を示している。
【0073】
図7に示すように、受信アンテナアレイ31は、受信アンテナのようなセンサを一直線状に並べたものとしてよい。図7に示すように、一実施形態において、受信アンテナアレイ31は、一直線に並べて配列される複数の受信アンテナを含んで構成されてよい。図7において、受信アンテナアレイ31は、アンテナx、x、x、…、xのような複数のアンテナを小円により示してある。受信アンテナアレイ31は、任意の複数のアンテナにより構成されてよい。また、図7に示すように、受信アンテナアレイ31を構成する複数のアンテナは、それぞれアレイピッチdの間隔だけ離して並べたものとする。このように、各種物理的波動に対応するセンサ(アンテナ、超音波振動子、及びマイクロフォンなど)をアレイ状に配置したセンサアレイは、Uniform Linear Array(ULA)とも呼ばれる。図7に示すように、物理的波動(電磁波及び音波など)は、例えばθ及びθのような様々な方向から到来する。ここで、θ及びθは、上述した到来角としてよい。このように、受信アンテナアレイ31のようなセンサアレイは、物理的波動の到来方向に応じてセンサ間の測定値に生じる位相差を利用して、到来方向(到来角)を推定することができる。このように、波動の到来方向を推定する手法を、到来角推定、又は到来方向推定(Direction of Arrival:DoA)とも記す。
【0074】
一実施形態に係る電子機器100において、送信アンテナアレイ24及び受信アンテナアレイ31の少なくとも一方は、複数のアンテナを直線状に配置したものとしてよい。これにより、例えばミリ波レーダにおいて電波の送受信の際の指向性を適切に狭めることができる。送信波を送信する際には、ビームフォーマにより、送信ビームの方向が制御されることが多い。一方、反射波を受信する際には、ビームフォーマよりも部分空間法(上述したMUSIC及びESPRITなど)により、反射波の到来方向が推定されることが多い。ビームフォーマ及び部分空間法では、図7に示すようなULAにおいて、様々な方向から到来する電磁波に対して、その到来方向に応じてセンサ間の測定値に位相差が生じる。したがって、その位相差を利用して、反射波の到来方向が推定することができる。
【0075】
次に、一実施形態に係る電子機器100のアンテナアレイによる到来波の2方向の角度推定について、さらに説明する。
【0076】
図8は、直交する2つの角度の到来方向を推定するためのアンテナの配置例を示す図である。
【0077】
図8に示すように、一実施形態に係る電子機器100において、送信アンテナアレイ24及び/又は受信アンテナアレイ31は、複数のパッチアンテナユニットのアレイを含んで構成してよい。
【0078】
図8に示す送信アンテナアレイ24において、1つのパッチアンテナユニットは、図に示す方向1の方向に電気的に接続された複数の素子を含んで構成されてよい。それぞれのパッチアンテナユニットにおいて、複数の素子は、例えば基板上のストリップライン等の配線によって電気的に接続されてよい。それぞれのパッチアンテナユニットにおいて、複数の素子のそれぞれは、送信波の波長λの半分よりも短い間隔d1,tだけ離間して配置されてよい。図8において、それぞれのパッチアンテナユニットは、2つ以上の任意の数の素子を電気的に接続したものとしてよい。図8においては、電気的に接続された素子の一部を省略して示してある。
【0079】
また、図8に示すように、送信アンテナアレイ24は、複数のパッチアンテナユニットを、図に示す方向2の方向にアレイした配置としてよい。それぞれのパッチアンテナユニットは、送信波の波長λの半分よりも短い間隔d2,tだけ離間して配置されてよい。一実施形態において、送信アンテナアレイ24は、2つ以上の任意の数のパッチアンテナユニット含んでよい。
【0080】
図8に示すように、一実施形態において、受信アンテナアレイ31は、送信アンテナアレイ24における複数の素子の配置を変更したものとしてよい。すなわち、図8に示す受信アンテナアレイ31において、1つのパッチアンテナユニットは、図に示す方向2の方向に電気的に接続された複数の素子を含んで構成されてよい。それぞれのパッチアンテナユニットにおいて、複数の素子は、例えば基板上のストリップライン等の配線によって電気的に接続されてよい。それぞれのパッチアンテナユニットにおいて、複数の素子のそれぞれは、送信波の波長λの半分よりも短い間隔d2,sだけ離間して配置されてよい。図8において、それぞれのパッチアンテナユニットは、2つ以上の任意の数の素子を電気的に接続したものとしてよい。図8においては、電気的に接続された素子の一部を省略して示してある。
【0081】
また、図8に示すように、受信アンテナアレイ31は、複数のパッチアンテナユニットを、図に示す方向1の方向にアレイした配置としてよい。それぞれのパッチアンテナユニットは、送信波の波長λの半分よりも短い間隔d1,sだけ離間して配置されてよい。一実施形態において、受信アンテナアレイ31は、2つ以上の任意の数のパッチアンテナユニット含んでよい。
【0082】
送信アンテナアレイ24及び受信アンテナアレイ31に含まれる素子は全て同一平面上(例えば同一基板の表層上)に配置されてよい。また、送信アンテナアレイ24と受信アンテナアレイ31とは近接して配置されてよい(モノスタティック)。さらに、図8に示す方向1と方向2とは、幾何学的に直交してよい。
【0083】
図8に示すような送信アンテナアレイ24及び受信アンテナアレイ31によって、送信アンテナ及び受信アンテナのそれぞれの指向性を適切に狭めることができる。また、図8に示すような送信アンテナアレイ24を用いて、送信波(送信信号)を送信するタイミングごとに、それぞれの送信波を送信する方向を制御することにより、図8に示す方向2の方向についてのビームフォーマを実現することができる。さらに、図8に示すような受信アンテナアレイ31を用いることにより、図8に示す方向1の方向について、反射波の到来方向の推定を実現することができる。このようにして、実質的に直交する2つの角度について反射波の到来方向の推定が可能となる。したがって、対象装置200のような物体を示す点群を3次元的に取得することが可能になる。
【0084】
次に、一実施形態に係る電子機器100によって、対象装置200の振動を検出する手法について説明する。
【0085】
一実施形態に係る電子機器100は、ミリ波レーダなどの送信波を対象装置200に対して送信し、対象装置200が反射した反射波を受信した結果に基づいて、対象装置200の振動を検出する。上述のように、対象装置200は、エンジン、工作装置、旋盤装置、及び加工装置、又は自動車などの乗り物などとしてよいが、特に限定されるものではなく、他の任意の装置であってよい。ここで、上述した2D-FFT、CFAR処理、及び到来方向推定を行った結果などから、対象装置200の心拍間を検出する手法について検討する。まず、図4及び図5において行った2D-FFTの結果として、振動の発現の態様について説明する。
【0086】
なお、一実施形態に係る電子機器100が生体情報を検出する場合、電子機器100は、ミリ波レーダなどの送信波を対象装置200に対して送信し、対象の心臓が存在する胸部において反射した反射波を受信した結果に基づいて、対象の心拍を検出する。上述のように、対象は、人間としてもよいし、動物としてもよい。
【0087】
図9は、対象装置200に対して送信された送信波の反射波を受信して2D-FFTの処理を行った結果の例を示す図である。図9は、2D-FFTの結果として、対象装置200の振動を示すスペクトラムを示している。図9は、対象装置200の振動に相当するレンジ-ドップラースペクトラムを示す。図9において、横軸は距離(Range)を表し、縦軸は速度(Velocity)を表す。一実施形態に係る電子機器100の信号処理部10(例えば振動変位抽出処理部14)は、例えば図9に示すようなピークHmが、対象装置200の振動であるとして抽出してもよい。
【0088】
図9に示すピークHmは、ドップラー方向(速度方向)に多くの成分を有している。これは、検出された対象装置200が、多くの振動成分(剛体運動及び/又は微細振動)を含んでいることを示している。実際の振動速度は、2次元信号sに対して、1つのチャープ信号内の一部分を加算した信号である1次元の時系列のIQ信号sの位相を取り出した信号dが、振動体の振動変位となる。実際の振動速度を生じさせる振動体の振動変位は、2次元信号sに対して、1つのチャープ信号内の一部分を加算した信号である1次元の時系列のIQ信号sの位相を取り出した信号dにより示される。上述の2次元信号sは、図9に示すピークHmの信号成分のみを図9に示す2D-FFT平面上でフィルタリングした、2次元信号Sの逆フーリエ変換である。
【0089】
ここで、上述の振動変位dは、振動体からレーダに向かう動径方向の成分しか検出することができない。本来、振動体は、3軸の振動変位を持つものであるが、上述の方法によれば、動径方向に対する射影だけが、dとして得られることになる。したがって、物体の本来の振動をレーダにより復元しようとしても、十分な情報を復元できない恐れがある。
【0090】
上述のように、図8に示したような受信アンテナアレイ31によれば、図8に示す方向2についてのビームフォーマを実現することができ、図8に示す方向1について反射波の到来方向の推定を実現することができる。したがって、実質的に直交する2つの角度について反射波の到来方向の推定が可能となり、対象装置200のような物体を示す点群を3次元的に取得することが可能になる。すなわち、図8に示したようなアンテナを用いて方向推定を行うことにより、距離、アジマス、及びエレベーションの角度を計算することができるため、物体を示す点群を3次元に取得することができる。しかしながら、取得される各データ点が保有している速度の情報は、依然として前述のdのみである。
【0091】
以上説明したように、ドップラーレーダによって例えば人の体動のような振動を検知する場合、一組の送受信アンテナアレイにより、振動する対象の特定の部分の測距、測角(方向推定)、及び振動速度を抽出することができる。しかしながら、上述のような手法では、レーダのドップラーシフトにおいて、対象からレーダに向かう動径方向の速度のみしか計測できない。
【0092】
そこで、以下説明する一実施形態に係る電子機器1は、振動する対象の振動速度を抽出する際に、レーダに向かう動径方向に対する法線方向の速度も含めて計測可能にする。すなわち、一実施形態に係る電子機器1は、例えば準ミリ波帯以上の周波数(例えば20GHz以上)を利用したドップラーレーダを複数組み合わせることにより、1つの機器で2次元以上の振動の計測を可能にする。一実施形態に係る電子機器1は、例えば電磁波又は音波などを用いた距離測定(測距)、角度推定(測角)、及びドップラー速度の検出(測速)を行うドップラーレーダによって、物体の微細振動をマイクロドップラーとして検知可能にする。
【0093】
以下、上述のような一実施形態に係る電子機器1について説明する。
【0094】
一実施形態に係る電子機器1は、主として、次のような観点の特徴を備えるものとしてよい。すなわち、一実施形態に係る電子機器1は、(A)アンテナの配置及び構成に関する特徴、及び/又は、(B)システムの設計に関する特徴、を備えるものとしてよい。以下、これらの特徴について、さらに説明する。
【0095】
(A)アンテナの配置及び構成に関する特徴
一実施形態に係る電子機器1は、受信アンテナ(受信アンテナアレイ)を、少なくとも2つ、例えば3つ備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1における複数の受信アンテナは、それぞれ同じ向きにならないように配置されてよい。例えば、一実施形態に係る電子機器1における複数の受信アンテナは、それぞれ異なる向きに配置されてよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1において、それぞれのアンテナは、各アンテナの中心間が所定の距離以下となるように配置されてよい。ここで、所定の距離は、各アンテナの中心から振動体までの距離がレーダのレンジ(距離)分解能以下となる距離としてよい。また、振動体までの距離は、レーダモジュールの仕様として設定される最小設置距離により決定されてよい。以下、一実施形態に係る電子機器1における上述のような観点の特徴を、単に「特徴A」とも記す。特徴Aの詳細については、さらに後述する。
【0096】
(B)システムの設計に関する特徴
一実施形態に係る電子機器1は、上述の特徴Aに記したようなアンテナセットを1つのレーダモジュールに格納してよい。そして、一実施形態に係る電子機器1は、複数系統の受信システムを統合してよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、各アンテナによって検知される角度を、グローバルな座標上の角度に補正することにより一致させてよい。一実施形態に係る電子機器1は、統合された受信システムにより、例えば振動する対象などの変位(又は速度若しくは加速度など)の3次元的な検出を可能にする。以下、一実施形態に係る電子機器1における上述のような観点の特徴を、単に「特徴B」とも記す。特徴Bの詳細については、さらに後述する。
【0097】
次に、上述した特徴A及び特徴Bのそれぞれについて、より詳細に説明する。
【0098】
(特徴Aの詳細)
図10は、一実施形態に係る電子機器1におけるアンテナの配置の例を示す図である。一実施形態に係る電子機器1は、少なくとも1つの送信アンテナアレイ24と、複数の受信アンテナアレイ31と、を備えてよい。図10に示す一実施形態に係る電子機器1は、1つの送信アンテナアレイ24と、3つの受信アンテナアレイ31A、31B、及び31Cとを備えている。以下、受信アンテナアレイ31A、受信アンテナアレイ31B、及び受信アンテナアレイ31Cのような複数の受信アンテナアレイを特に区別しない場合、単に「受信アンテナアレイ31」と記すことがある。
【0099】
ここで、送信アンテナアレイ24は、図2などにおいて説明した電子機器100の送信アンテナアレイ24と同様に構成してもよい。一方、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナアレイ24は、必ずしもアレイとして構成されたアンテナでなくてもよいし、必ずしも複数のアンテナ素子によって構成されていなくてもよい。例えば、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナアレイ24の代わりに、アレイ状に配置されていない複数のアンテナ素子を、送信アンテナとして採用してもよい。また、例えば、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナアレイ24の代わりに、1つのアンテナ素子を、送信アンテナとして採用してもよい。以下、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナは、図10に示すように、例えばパッチアンテナ(マイクロストリップアンテナ)のような、平面型の送信アンテナアレイ24であるものとして説明する。
【0100】
図10に示すように、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナアレイ24は、例えば、x軸上、y軸上、及びz軸上においてそれぞれ原点Oからの距離がαとなる点を通る平面上に配置されてよい。すなわち、送信アンテナアレイ24は、図10に示す原点Oからα/√3の距離にある平面x+y+z-α=0上にあるものとしてよい。また、送信アンテナアレイ24の中心は、例えば、図10に示すx軸、y軸、及びz軸によって規定される空間における直線x=y=z上(又は当該直線の近傍)にあるものとしてよい。ここで、送信アンテナアレイ24の中心とは、送信アンテナアレイ24を構成する(例えばアレイ状に配置された)複数のアンテナ素子の中心としてよい。
【0101】
上述のように送信アンテナを配置することにより、レーダモジュールの中心線を、送信アンテナの中心を通る法線nと一致させることができる。ここで、レーダモジュールとは、送信アンテナ及び/又は受信アンテナを含むモジュールとしてよい。また、このように送信アンテナを配置することにより、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれに、電磁波のエネルギーを均等に配分することができる。
【0102】
一方、受信アンテナアレイ31は、図2などにおいて説明した電子機器100の受信アンテナアレイ31と同様に構成してよい。一実施形態に係る電子機器1は、必要に応じて、2つ以上の送信アンテナアレイ24を備えてもよいし、2つ又は4つ以上の受信アンテナアレイ31を備えてもよい。以下、一実施形態に係る電子機器1において、受信アンテナアレイ31は、図10に示すように、例えばパッチアンテナ(マイクロストリップアンテナ)のような、平面型のアンテナアレイであるものとして説明する。
【0103】
図10に示すように、一実施形態に係る電子機器1において、受信アンテナアレイ31は、それぞれ同じ向きにならないように、例えば、それぞれ異なる向きに配置されてよい。ここで、アンテナの「向き」とは、例えばアンテナアレイの場合、当該アンテナアレイを構成する複数のアンテナが並ぶ方向に直交する方向としてよい。また、アンテナの「向き」とは、例えば平面型アンテナの場合、当該平面型アンテナの平面に垂直な方向としてよい。
さらに、一実施形態において、アンテナの「向き」とは、受信アンテナにおける受信面に垂直な方向としてもよい。一実施形態において、アンテナの「向き」とは、例えば平面型アンテナの放射面に垂直な方向としてもよい。
【0104】
図10に示す受信アンテナアレイ31Aは、XY平面上に配置されている。受信アンテナアレイ31Aは、図10に示すように、XY平面上において、例えば原点Oの近傍などのような位置に配置されてもよい。また、受信アンテナアレイ31Aは、図10に示すXY平面の近傍などに配置されてもよい。図10に示す受信アンテナアレイ31Bは、YZ平面上に配置されている。受信アンテナアレイ31Bは、図10に示すように、YZ平面上において、例えば原点Oの近傍などのような位置に配置されてもよい。また、受信アンテナアレイ31Bは、図10に示すYZ平面の近傍などに配置されてもよい。図10に示す受信アンテナアレイ31Cは、ZX平面上に配置されている。受信アンテナアレイ31Cは、図10に示すように、ZX平面上において、例えば原点Oの近傍などのような位置に配置されてもよい。また、受信アンテナアレイ31Cは、図10に示すZX平面の近傍などに配置されてもよい。図10に示す受信アンテナアレイ31の配置は、一例を示すものである。したがって、受信アンテナアレイ31は、図10に示す配置とは異なるように配置されてもよい。
【0105】
図10に示す例において、受信アンテナアレイ31AはXY平面上に配置され、受信アンテナアレイ31BはYZ平面上に配置され、受信アンテナアレイ31CはZX平面上に配置されている。このため、受信アンテナアレイ31Aの向きは図10に示すZ軸と平行になり、受信アンテナアレイ31Bの向きは図10に示すX軸と平行になり、受信アンテナアレイ31Cの向きは図10に示すY軸と平行になる。
【0106】
次に、複数の受信アンテナアレイ31は、互いの間隔が例えば近距離のような所定の距離内になるように配置されてよい。複数の受信アンテナアレイ31は、同一のターゲットとなる物体を、それぞれ点群の座標として検出可能である。上述のように、各受信アンテナアレイ31の中心間の距離を小さくすることにより、ターゲットに対しての距離差を無視することができる。ここで、受信アンテナアレイ31の中心とは、受信アンテナアレイ31を構成する(例えばアレイ状に配置された)複数のアンテナ素子の中心としてよい。
【0107】
一実施形態において、複数の受信アンテナアレイ31同士の間隔は、それぞれ、ターゲットとなる所定の物体(対象装置200)に対して、レーダの距離(レンジ)分解能よりも小さくなるようにしてよい。例えば、複数の受信アンテナアレイ31のうち任意の2つの受信アンテナアレイiとjとの距離をdijとし、受信アンテナアレイiとターゲットとの距離をDとし、受信アンテナアレイjとターゲットとの距離をDとする。ここで、受信アンテナアレイi、受信アンテナアレイj、及びターゲットの位置は、それぞれ、受信アンテナアレイiの中心の位置、受信アンテナアレイjの中心の位置、及びターゲットの中心の位置としてよい。この場合、以下の式(1)が成り立つ。
【0108】
【数1】
【0109】
上記式(1)において不等号が成り立つ場合、受信アンテナアレイi及びj(の中心点)の位置並びにターゲット(の中心点)の位置は、図11に示すような配置になる。すなわち、上記式(1)において不等号が成り立つ場合、受信アンテナアレイi及びj(の中心点)並びにターゲット(の中心点)は、一直線上に並ばない。
【0110】
一方、上記式(1)において等号が成り立つ場合、受信アンテナアレイi及びj(の中心点)の位置並びにターゲット(の中心点)の位置は、図12に示すような配置になる。すなわち、上記式(1)において等号が成り立つ場合、受信アンテナアレイi及びj(の中心点)並びにターゲット(の中心点)は、一直線上に並ぶ。図12に示すように、受信アンテナアレイi及びj並びにターゲットが一直線上に並ぶのは、図10において対象装置200がいずれかの受信アンテナアレイ31の裏側に存在する場合である。したがって、一実施形態に係る電子機器1の構成においては、上記式(1)において不等号が成立する場合のみを考慮すれば足りる。以上から、一実施形態に係る電子機器1において、3つの受信アンテナアレイ31は、いずれかの2つの受信アンテナアレイ31の中心の間隔がレンジを変化させないように配置されてよい。このため、一実施形態に係る電子機器1において、複数の受信アンテナアレイ31は、任意の2つの受信アンテナアレイiとjとの距離をdijとし、レーダのレンジ分解能をrとして、以下の式(2)を満たすように配置されてよい。
【0111】
【数2】
【0112】
(特徴Bの詳細)
一実施形態に係る電子機器1において、図10に示したような送信アンテナアレイ24及び3つの受信アンテナアレイ31は、1つのレーダモジュールの内部に格納してもよい。このような構成により、一実施形態に係る電子機器1において、1つのデータポイントに対して得られる振動の変位を3次元的なベクトルとして取得することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、ターゲットとなる所定の物体(対象/対象装置200)の振動変位などを3次元的に検出することが可能になる。
【0113】
上述のように、一実施形態に係る電子機器1において、複数の受信アンテナアレイ31は、同一のターゲットとなる物体を、それぞれ点群の座標として検出可能である。また、上述のように、一実施形態に係る電子機器1において、各受信アンテナアレイ31の中心間の距離を小さくして、ターゲットに対しての距離差を無視することができる。このような構成により、複数の受信アンテナアレイ31のそれぞれは、距離(レンジ)及び方向の推定により得られるアジマス及びエレベーションのような2つの角度に基づいて、ターゲットとして検出される点群の座標を計算することができる。
【0114】
一実施形態に係る電子機器1は、上述のように複数の受信アンテナアレイ31によってそれぞれ検出されたターゲットの座標を、例えばオイラー角に基づく変換行列を用いて、座標変換してよい。
【0115】
ここで、オイラー角に基づく座標変換は、以下の(i)乃至(iii)ようにして行うことができる。
(i)z軸周りに角度φの回転を行うことにより、座標(x,y,z)を、座標(x’,y’,z’)に変換する。
(ii)x軸周りに角度θの回転を行うことにより、座標(x’,y’,z’)を、座標(x”,y”,z”)に変換する。
(iii)上記(ii)の変換後にz”軸周りに角度ψの回転を行うことにより、座標(x”,y”,z”)を、座標(x”’,y”’,z”’)に変換する。
以上の3段階の変換によって座標系を回転することができる。変換後の座標(x”’,y”’,z”’)と元の座標(x,y,z)は、例えば以下の式(3)のように算出することができる。
【0116】
【数3】
【0117】
一実施形態において、例えば図13に示すように、送信アンテナアレイ24を基準とした座標系を設定してもよい。図13に示す座標系は、x”’軸、y”’軸、及びz”’軸によって規定されている。図13に示す座標系において、送信アンテナアレイ24は、x”’y”’平面上に配置されている。また、図13に示す座標系において、送信アンテナアレイ24の中心は、x”’y”’平面の原点(又はその近傍)に一致するように配置されている。図13に示すような送信アンテナアレイ24を基準とした座標系を、以下、「グローバル座標系」とも記す。一実施形態に係る電子機器1は、受信アンテナアレイ31によって検出した対象の点群を、図13に示すようなグローバル座標系における座標に変換してもよい。
【0118】
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、図10に示した受信アンテナアレイ31Aを基準とする座標系を、図13に示すようなグローバル座標系に変換する場合、上記式(3)において、φ=-45°、θ=-45°、ψ=-45°として、座標変換を実行してよい。受信アンテナアレイ31B及び受信アンテナアレイ31Cを基準とする座標系をグローバル座標系に変換する場合も、上記同様に座標変換を実行してよい。一実施形態に係る電子機器1は、上述のようにしてグローバル座標系において生成された対象の点群を、それぞれ重畳してよい。
【0119】
上述したように、一実施形態に係る電子機器1は、例えば装置の振動などの微弱な変位を検出することができる。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、人体の心拍などのような微弱な振動を検出することができる。一実施形態に係る電子機器1によって検出される対象は特に限定されない。一実施形態に係る電子機器1によって検出される対象は、エンジン、工作装置、旋盤装置、及び加工装置、又は自動車などの乗り物などとしてよいが、特に限定されるものではなく、他の任意の装置であってよい。一実施形態に係る電子機器1によって、振動する対象の変位を算出する場合の動作について、さらに説明する。
【0120】
図14は、一実施形態に係る電子機器1において、3つの受信アンテナアレイ31がそれぞれ検出する変位の合成を概念的に示す図である。図14においては、説明のため、一実施形態に係る電子機器1の3つの受信アンテナアレイ31のみを示し、送信アンテナアレイ24の図示は省略してある。
【0121】
図14に示す通り、対象装置200の振動による変位は、対象装置200が検出される点(点群のうちの1つの点)と各受信アンテナアレイ31の中心点とを結んだ直線上において、マイクロドップラーとして算出される。図14に示すベクトルdv,1は、対象装置200が検出される点と受信アンテナアレイ31Aの中心点とを通る直線上において、対象装置200の振動による変位に起因するマイクロドップラーとして算出されるベクトルである。また、図14に示すベクトルdv,2は、対象装置200が検出される点と受信アンテナアレイ31Bの中心点とを通る直線上において、対象装置200の振動による変位に起因するマイクロドップラーとして算出されるベクトルである。また、図14に示すベクトルdv,3は、対象装置200が検出される点と受信アンテナアレイ31Cの中心点とを通る直線上において、対象装置200の振動による変位に起因するマイクロドップラーとして算出されるベクトルである。
【0122】
図14に示すように、ベクトルdv,1、ベクトルdv,2、及びベクトルdv,3は、一次独立である。したがって、対象装置200として検出される振動の変位は、以下の式(4)に示すようなベクトルに基づいて算出することができる。
【0123】
【数4】
【0124】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1において、検出した1つの物体200について得られる振動の変位ベクトルは、dv,1、dv,2、及びdv,3の3つとなる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1において、例えば送信アンテナアレイ24Aが受信する反射波に基づいて、振動の変位ベクトルdv,1が得られる。また、一実施形態に係る電子機器1において、例えば送信アンテナアレイ24Bが受信する反射波に基づいて、振動の変位ベクトルdv,2が得られる。さらに、一実施形態に係る電子機器1において、例えば送信アンテナアレイ24Cが受信する反射波に基づいて、振動の変位ベクトルdv,3が得られる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、ターゲットとなる所定の物体(対象/対象装置200)の振動変位などを3次元的に検出することが可能になる。
【0125】
図15は、一実施形態に係る電子機器1の機能的な構成を示すブロック図である。図15に示す一実施形態に係る電子機器1のブロック図において、図2に示したブロック図と同様な部材又は当該部材に対応する部材は、同様の参照符号を付して示してある。図15に示す一実施形態に係る電子機器1は、図2に示した電子機器100と部分的に重複した構成を有するため、図2に示した電子機器100と同様又は類似の説明は、適宜、簡略化又は省略する。
【0126】
図15に示す一実施形態に係る電子機器1は、図2に示した電子機器100と比べて、受信系に関連する機能部を複数(図15に示す例においては3つ)備えている。すなわち、図15に示す一実施形態に係る電子機器1は、図2に示した受信アンテナアレイ31に代えて、受信アンテナアレイ31A、31B、及び31Cを備えてよい。同様に、図15に示す一実施形態に係る電子機器1は、図2に示したミキサ32に代えて、ミキサ32A、32B、及び32Cを備えてよい。図15に示す一実施形態に係る電子機器1は、図2に示した受信回路33に代えて、受信回路33A、受信回路33B、及び受信回路33Cを備えてよい。図15に示す一実施形態に係る電子機器1は、図2に示した受信ADC34に代えて、受信ADC34A、受信ADC34B、及び受信ADC34Cを備えてよい。これら受信系に関連する各機能部は、それぞれ図2において説明した対応する機能部と同様に機能するものとしてよい。
【0127】
さらに、図15に示す一実施形態に係る電子機器1は、図2に示した電子機器100の信号処理部10に代えて、信号処理部10’を備えてよい。図15に示すように、信号処理部10’は、図2に示した信号処理部10の受信信号処理部12に代えて、受信信号処理部12A、受信信号処理部12B、及び受信信号処理部12Cを備えてよい。また、図15に示すように、信号処理部10’は、図2に示した信号処理部10の振動変位抽出処理部14に代えて、振動変位抽出処理部14A、振動変位抽出処理部14B、及び振動変位抽出処理部14Cを備えてよい。これらの各機能部は、それぞれ図2において説明した対応する機能部と同様に機能するものとしてよい。
【0128】
図15に示すように、一実施形態に係る電子機器1の信号処理部10’は、座標変換処理部13A、13B、及び13Cを備えてよい。以下、座標変換処理部13A、座標変換処理部13B、及び座標変換処理部13Cのような複数の座標変換処理部を特に区別しない場合、単に「座標変換処理部13」と記すことがある。
【0129】
図15に示す座標変換処理部13は、それぞれ接続された受信信号処理部12から供給される座標の情報を、異なる座標系における座標に変換する処理を実行する。一実施形態において、座標変換処理部13は、上述したオイラー角に基づく座標変換(上記式(3)参照)を実行するものとしてよい。座標変換処理部13によってそれぞれ座標変換された座標の情報は、それぞれ図15に示す後段の振動変位抽出処理部14に供給されてよい。振動変位抽出処理部14は、それぞれ方向における振動の変位を抽出してよい。
よい。
【0130】
また、図15に示すように、一実施形態に係る電子機器1の信号処理部10’は、振動変位合成処理部15を備えてよい。振動変位合成処理部15は、各方向の振動変位抽出処理部14から供給される座標変換された座標の情報を合成する処理を行ってよい(上記式(4)参照)。すなわち、振動変位合成処理部15は、それぞれの方向における受信波の到来方向の推定による各受信アンテナアレイ31と振動する対象装置200の検出位置とのなす角の角度に基づいて、それぞれx、y、z方向への射影を行ってよい。これにより、振動変位合成処理部15は、上述のdv,x、dv,y、及びdv,zを算出して、変位ベクトルdv,1、dv,2、及びdv,3を時系列に沿って1つのデータとしてまとめる処理を行ってよい。
【0131】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、少なくとも1つの送信アンテナ(例えば送信アンテナアレイ24)と、複数の受信アンテナアレイ31と、信号処理部10’と、を備えてよい。一実施形態において、複数の受信アンテナアレイ31は、送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナをそれぞれ複数含んでよい。また、複数の受信アンテナアレイ31は、上述したように、それぞれ異なる向きに配置されてよい。信号処理部10’は、送信波として送信される送信信号及び反射波として受信される受信信号に基づいて、送信波を反射する対象の変位を検出する。また、信号処理部10’は、複数の受信アンテナアレイ31によってそれぞれ検出された対象の変位を、同じ複数次元の座標系において合成してよい。
【0132】
一実施形態に係る電子機器1は、例えば、複数の受信アンテナアレイ31として、3つの受信アンテナアレイ31を含んでもよい。この場合、信号処理部10’は、3つの受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された対象の変位を、同じ3次元の座標系において合成してもよい。また、一実施形態において、信号処理部10’は、複数の受信アンテナアレイ31によってそれぞれ検出された前記対象の変位を、例えばオイラー角に基づく変換行列を用いるなどして、複数次元の座標系に座標変換してから合成してもよい。
【0133】
また、一実施形態に係る電子機器1において、信号処理部10’は、送信信号及び受信信号に基づいて、対象の変位に基づいて、対象装置の振動を検出してもよいし、対象である人間又は動物の心拍を検出してもよい。
【0134】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えば装置の振動を良好に検出することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、電波などの送受信により、装置の振動を検出して、装置の状態の推定に利用することができる。
【0135】
また、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えば人体の心拍などのような微弱な振動を良好に検出することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、電波などの送受信により、例えば人体の心拍などを良好な精度で検出することができる。
【0136】
(電子機器1の動作による効果)
以下、一実施形態に係る電子機器1による物体検出の効果について、さらに記す。
【0137】
従来、通常のレーダセンサを用いて物体の振動の変位(速度及び/又は加速度)を3次元的に検出することは困難であった。一実施形態に係る電子機器1によれば、例えば図16に示すように、対象の振動の変位を3次元的に検出することができる。図16は、一実施形態に係る電子機器1によって、1点として検出される同一の振動体のx軸方向、y軸方向、及びz軸方向における振動の変位を1秒間にわたって取得した例を示すグラフである。各軸方向における振動の変位は、相関する周波数成分を有するものとなる。このため、物体が振動する変位の時系列的な波形は、各軸方向において類似する部分がある。
一方、物体が振動する変位の各軸方向における時系列的な波形において、周波数の構成及び/又は全体的な振動の変位のレベルは、それぞれ異なるものとなる。
【0138】
このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えばレーダを用いて物体が振動する変位(速度及び/又は加速度)を、3次元的に検出することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えば装置の振動を良好な精度で検出することができる。さらに、一実施形態に係る電子機器1によれば、電波などの送受信により、例えば人体の心拍などを良好な精度で検出することができる。
【0139】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態について説明する。
【0140】
図10に示した例において、一実施形態に係る電子機器1が備える各受信アンテナアレイ31の向きは、それぞれ直交するものとして説明した。しかしながら、一実施形態において、電子機器1が備える各受信アンテナアレイ31の向きは、それぞれ直交しないように配置してもよい。このように、各受信アンテナアレイ31の向きがそれぞれ直交しないように配置される場合、上述同様に、各受信アンテナアレイ31が配置される角度の情報に基づいて、それぞれx、y、z方向への射影を行うことができる。このような処理により、一実施形態に係る電子機器1は、各方向のベクトルdv,x、dv,y、及びdv,zを算出することができる。
【0141】
図10に示した例において、送信アンテナアレイ24及び各受信アンテナアレイ31は、1つのレーダモジュールに格納されるものとして説明した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナアレイ24及び各受信アンテナアレイ31は、適宜、複数のレーダモジュールに分けて格納されてもよい。
【0142】
図10に示した例において、一実施形態に係る電子機器1は、3つの受信アンテナアレイ31を備えるものとして説明した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、例えば2つの受信アンテナアレイ31を備えることにより、物体の振動を2次元的に検出してもよい。
【0143】
図15に示した例において、一実施形態に係る電子機器1は、外部機器60に対して、物体が振動する変位に関する情報を出力するものとして説明した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、信号処理部10’において、物体が振動する変位に基づいて、物体が振動する速度及び/又は物体が振動する加速度などに関する情報を算出することにより出力してもよい。
【0144】
一実施形態において、電子機器1が備える送信アンテナアレイ24及び/又は受信アンテナアレイ31は、図8に示したような配置に限定されない。例えば、一実施形態において、電子機器1が備える受信アンテナアレイ31は、図17に示すような構成のものとしてもよい。図17は、URA(Uniform rectangular array)受信アンテナの例を示す図である。図17に示すようなURA受信アンテナを採用して、送信アンテナアレイ24においてビームフォーマによって指向性を変化させずに、URA受信アンテナのみによって2つの角度の到来方向推定を行ってもよい。
【0145】
また、図2に示した電子機器100において、信号処理部10が、心拍抽出部13及び算出部14のような機能部を備えるものとして説明した。しかしながら、一実施形態において、心拍抽出部13及び/又は算出部14が行う処理は、外部のコンピュータ又はプロセッサなどによって行われるものとしてもよい。
【0146】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0147】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器が実行するプログラムとして実施してもよい。
【0148】
また、上述した実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナアレイ24及び受信アンテナアレイ31など、いわゆるレーダセンサを構成する部品を含むものとして説明した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器は、例えば信号処理部10’のような構成として実施してもよい。この場合、信号処理部10’は、例えば、送信アンテナアレイ24及び受信アンテナアレイ31などが扱う信号を処理する機能を有するものとして実施してよい。
【符号の説明】
【0149】
1 電子機器
10 信号処理部
11 信号発生処理部
12 受信信号処理部
13 座標変換処理部
14 振動変位抽出処理部
15 振動変化合成処理部
21 送信DAC
22 送信回路
23 ミリ波送信回路
24 送信アンテナアレイ
31 受信アンテナアレイ
32 ミキサ
33 受信回路
34 受信ADC
50 通信インタフェース
60 外部機器
100 電子機器
200 対象装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナをそれぞれ複数含む複数の受信アンテナアレイと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の速度及び/又は加速度を検出する信号処理部と、
を備え、
前記複数の受信アンテナアレイは、それぞれ異なる向きに配置され、
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度の情報出力する、電子機器。
【請求項2】
前記複数の受信アンテナアレイは、当該受信アンテナアレイにおいて複数の受信アンテナが並ぶ方向に直交する方向がそれぞれ異なるように配置される、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の受信アンテナアレイは、それぞれ平面型アンテナとして構成され、当該平面型アンテナにおける法線の方向がそれぞれ異なるように配置される、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記複数の受信アンテナアレイは、当該受信アンテナアレイにおける受信面に垂直な方向がそれぞれ異なるように配置される、請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位を前記複数次元の座標系に座標変換してから出力する、請求項1から4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の変位をオイラー角による変換、各座標軸周りの回転、四元数を用いた回転変換、又はロドリゲスの回転公式に基づく変換を用いた回転変換、及び、同次座標系による平行移動の座標変換を含めたアフィン変換をしてから出力する、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記信号処理部は、前記送信信号及び前記受信信号に基づいて、前記対象の振動を検出する、請求項1から6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記信号処理部は、前記送信信号及び前記受信信号に基づいて、前記対象である装置の振動を検出する、請求項1から7のいずれかに記載の電子機器。
【請求項9】
前記信号処理部は、前記送信信号及び前記受信信号に基づいて、前記対象である人間又は動物の心拍、呼吸、体動を検出する、請求項1から8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
前記複数の受信アンテナアレイは、3つの受信アンテナアレイを含み、
前記信号処理部は、前記3つの受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度を、同じ3次元の座標系において出力する、請求項1から9のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度を、同じ複数次元の座標系において出力する、請求項1から10のいずれかに記載の電子機器。
【請求項12】
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の速度及び/又は加速度を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度の情報出力するステップと、
を含む、電子機器の制御方法。
【請求項13】
電子機器に、
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の速度及び/又は加速度を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度の情報出力するステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項14】
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の位置の情報を出力する、請求項1に記載の電子機器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一実施形態に係る電子機器は、
送信波を送信する送信アンテナと、
前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナをそれぞれ複数含む複数の受信アンテナアレイと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の速度及び/又は加速度を検出する信号処理部と、
を備える。
前記複数の受信アンテナアレイは、それぞれ異なる向きに配置される。
前記信号処理部は、前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度の情報出力する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
一実施形態に係る電子機器の制御方法は、
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の速度及び/又は加速度を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度の情報出力するステップと、
を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
一実施形態に係るプログラムは、
電子機器に、
送信アンテナから送信波を送信するステップと、
前記送信波が反射された反射波を、受信アンテナをそれぞれ複数含みそれぞれ異なる向きに配置された複数の受信アンテナアレイから受信するステップと、
前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する対象の速度及び/又は加速度を検出するステップと、
前記複数の受信アンテナアレイによってそれぞれ検出された前記対象の速度及び/又は加速度の情報出力するステップと、
を実行させる。