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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161164
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
H01H39/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146825
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023184218の分割
【原出願日】2019-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】木本 進弥
(72)【発明者】
【氏名】粉間 克哉
(57)【要約】
【課題】アークの消弧を促進する。
【解決手段】遮断装置1は、導電体2と、ハウジング9と、冷却体3と、を備える。導電体2は、外部電路に接続される。ハウジング9は、内部空間90を有する。内部空間90に、導電体2の少なくとも一部が収容される。冷却体3は、内部空間90に配置される。冷却体3は、内部空間90で発生するアークを冷却する。冷却体3は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方から構成された多孔質体30を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを発生させるガス発生器と、
前記ガス発生器の下方に配置され、前記ガス発生器で発生した前記ガスの圧力により下方に移動する動作ピンと、
前記動作ピンの下方に配置される分離部と、前記分離部の一端と繋がる第1端子部と、前記分離部の他端と繋がる第2端子部と、を有する導電体と、
前記分離部の下方に配置される繊維状の部材と、を備え、
前記動作ピンが下方に移動すると、前記分離部は前記第1端子部および前記第2端子部から切り離されて下方に移動し、前記分離部の下面と前記繊維状の部材とが接触する
遮断装置。
【請求項2】
前記動作ピンが下方に移動すると、前記分離部は前記第1端子部および前記第2端子部から切り離されて下方に移動し、前記分離部の前記一端の下部と前記分離部の前記他端の下部とは、前記繊維状の部材と接触する
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項3】
前記導電体には、
前記分離部と前記第1端子部との境界部分に第1溝が設けられ、
前記分離部と前記第2端子部との境界部分に第2溝が設けられ、
前記分離部は、前記第1溝で前記第1端子部と切り離され、前記第2溝で前記第2端子部と切り離される
請求項1または2に記載の遮断装置。
【請求項4】
上方から見て、前記繊維状の部材は、前記第1溝および前記第2溝と重なるように配置される
請求項3に記載の遮断装置。
【請求項5】
前記動作ピンが下方に移動すると、前記分離部は前記第1端子部および前記第2端子部から切り離されて下方に移動し、前記繊維状の部材は圧縮される
請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は遮断装置に関し、より詳細には、電路を遮断する遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の回路遮断器は、電気回路に接続されるように設計された少なくとも1つの導電体と、ハウジングと、マトリクスと、パンチと、火工品を用いたアクチュエータと、を備えている。アクチュエータは、点火されたときにパンチを第1の位置から第2の位置に移動させるように設計されている。パンチ及びマトリクスは、パンチが第1の位置から第2の位置に移動するときに、少なくとも1つの導電体を破断して、少なくとも2つの別個の部分にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-507469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている回路遮断器のような遮断装置では、導電体に大電流が流れているときに導電体を破断すると、破断した箇所でアークが発生することがある。
【0005】
本開示は、アークの消弧を促進することが可能な遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る遮断装置は、ガス発生器と、動作ピンと、導電体と、繊維状の部材と、を備える。前記ガス発生器は、ガスを発生させる。前記動作ピンは、前記ガス発生器の下方に配置され、前記ガス発生器で発生した前記ガスの圧力により下方に移動する。前記導電体は、前記動作ピンの下方に配置される分離部と、前記分離部の一端と繋がる第1端子部と、前記分離部の他端と繋がる第2端子部と、を有する。前記繊維状の部材は、前記分離部の下方に配置される。前記動作ピンが下方に移動すると、前記分離部は前記第1端子部および前記第2端子部から切り離されて下方に移動し、前記分離部の下面と前記繊維状の部材とが接触する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、アークの消弧を促進することが可能となるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の遮断装置の断面斜視図である。
図2図2は、同上の遮断装置の斜視図である。
図3図3は、同上の遮断装置の要部の斜視図である。
図4図4は、同上の遮断装置の一部の部材を取り除いた状態の断面斜視図である。
図5図5は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動される前の状態を示す。
図6図6は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンが駆動された直後の状態を示す。
図7図7は、同上の遮断装置の断面図であって、動作ピンの移動が完了した状態を示す。
図8図8は、変形例1の遮断装置の断面図である。
図9図9は、変形例2の遮断装置の断面図である。
図10図10は、変形例3の遮断装置の断面図である。
図11図11は、変形例4の遮断装置の断面図である。
図12図12は、変形例5の遮断装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る遮断装置について、添付の図面を参照して説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態の遮断装置1は、図1に示すように、導電体2と、冷却体3と、ハウジング9と、を備える。
【0011】
導電体2は、外部電路に接続される。導電体2には、外部電路から供給される電流が流れ得る。導電体2は、少なくとも一部が、ハウジング9の内部空間90内に収容される。
【0012】
冷却体3は、ハウジング9の内部空間90内に配置される。冷却体3は、内部空間90で発生するアークを冷却する。
【0013】
例えば、導電体2に電流が流れている状態において導電体2が内部空間90内で破断されると、内部空間90でアークが発生する場合がある。冷却体3は、内部空間90で発生したアークに接触する。これにより、アークが冷却され、アークの消弧が促進される。なお、アークが冷却体3に接触することで、アークを構成する金属ガスが冷却体3に付着する。そのため、冷却体3があることで、アークの発生に起因する内部空間90の圧力の上昇が抑制され得る。
【0014】
冷却体3は、多孔質体30を有する。冷却体3を構成する多孔質体30は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方から構成される。
【0015】
本開示における多孔質体30は、多数の微細な孔を有する一つの部材であってもよいし、自身又は他の部材との間に隙間を形成するように配置された一又は複数の部材(部材自体は孔を有していても有していなくてもよい)の集まりであってもよい。本実施形態の遮断装置1における多孔質体30は、繊維状の骨格300(図1参照)を備えた複数の部材の集まりである。本実施形態の遮断装置1では、多孔質体30は変形可能である。また、多孔質体30を構成する繊維状の骨格300を備えた部材自体も、変形可能である。多孔質体30を構成する部材は、繊維状の骨格300のみを備えていてもよいし、繊維状の骨格300から枝分かれした一又は複数の側鎖部分を更に備えていてもよい。
【0016】
上述のように、本実施形態の遮断装置1によれば、アークを冷却する冷却体3が、多孔質体30を有する。そのため、表面積が大きくできアークと接触しやすくなる。これにより、本実施形態の遮断装置1によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。なお、本開示において、アークの消弧を促進するとは、発生したアークが持続する時間を短くすること、又は発生するアークのエネルギーを小さくすることを含み得る。
【0017】
また、金属酸化物及び無機酸化物は、溶融してもガスを発生しにくい。そのため、本実施形態の遮断装置1のように、冷却体3を構成する多孔質体30が、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方で構成されていれば、冷却体3は、アークの熱によって溶融してもガスを発生しにくい。そのため、内部空間90内でアークが発生しても、ハウジング9の内部空間90内の圧力が上昇しにくい。そのため、本実施形態の遮断装置1によれば、内部空間90内の圧力の上昇に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【0018】
(1.2)構成
本実施形態の遮断装置1について、図1図7を参照して、より詳細に説明する。
【0019】
遮断装置1は、導電体2、冷却体3、及びハウジング9に加えて、規制体4と、駆動機構7と、動作ピン8と、を備えている。導電体2は、第1端子部21と第2端子部22と分離部23とを備えている。
【0020】
遮断装置1は、例えば、電動車両等に備えられる。遮断装置1は、例えば、電動車両の電源とモータとを接続する電気回路に設けられ、電源からモータへの電流の供給の有無を切り替える。遮断装置1における駆動機構7の動作は、例えば、電動車両に設けられている制御部(ECU:Electronic Control Unit等)によって制御される。
【0021】
以下では、説明の便宜上、動作ピン8の移動方向であって動作ピン8と導電体2とが対向する方向(図5の上下方向)を上下方向と呼び、動作ピン8から見て導電体2側を下側、導電体2から見て動作ピン8側を上側と呼ぶ。また、導電体2の長手方向であって第1端子部21と第2端子部22とが並ぶ方向(図5の左右方向)を左右方向と呼ぶ。また、上下方向及び左右方向の両方と直交する方向(図5の紙面に垂直な方向)を前後方向と呼ぶ。なお、これらの方向は、遮断装置1の構造を説明するための便宜的なものであり、遮断装置1を使用する場合の遮断装置1の向き等を規定するものではない。
【0022】
導電体2は、例えば、銅により形成されている。図3図5に示すように、導電体2は、上下方向に厚さを有する矩形の板状に形成されている。図3に示すように、第1端子部21、第2端子部22、及び分離部23は、幅(前後方向の寸法)及び厚さ(上下方向の寸法)が互いに等しい。
【0023】
第1端子部21及び第2端子部22は、導電体2において、外部電路(電動車両の電気回路)に電気的に接続される部分である。第1端子部21及び第2端子部22の各々は、例えば貫通孔を有している。第1端子部21及び第2端子部22の各々は、貫通孔にねじを通し、このねじを外部電路の端子に結合することで、外部電路に対して電気的に接続され得る。第1端子部21及び第2端子部22は、貫通孔を備える構成に限られず、任意の端子構造を採用可能である。
【0024】
分離部23は、導電体2において、第1端子部21と第2端子部22とをつなぐ部分である。第1端子部21、第2端子部22及び分離部23は、一体に形成されている。導電体2の長手方向において、第1端子部21と、分離部23と、第2端子部22とが、この順に並んでいる。
【0025】
導電体2は、導電体2の長手方向に並ぶ2つの溝24を有している。各溝24は、導電体2の第1の面F1(図5参照)及び第1の面F1とは反対側の第2の面F2(図5参照)のうち、第1の面F1に形成されている。第1の面F1は、動作ピン8と対向する面である。各溝24の深さ方向は、導電体2の厚さ方向に沿っている。2つの溝24の各々は、部分円筒状(円弧状)である。2つの溝24は、同心状に形成されている。2つの溝24は、外側(中心から遠い側)の径が互いに等しく、内側(中心に近い側)の径も互いに等しい。
【0026】
2つの溝24が、第1端子部21と分離部23との境界部分240、及び第2端子部22と分離部23との境界部分240を規定する。境界部分240の破断強度は、第1端子部21及び第2端子部22の破断強度以下である。また、境界部分240の破断強度は、分離部23の破断強度以下である。すなわち、境界部分240は、導電体2の他の箇所に比べて破断しやすい。
【0027】
ハウジング9は、例えば、樹脂により形成されている。ハウジング9は、その内部に空間(内部空間90)を有している。内部空間90は、ハウジング9の外部から隔離された密閉空間である。
【0028】
図1図2図4に示すように、ハウジング9は、第1ボディ91と、第2ボディ92と、第3ボディ93と、第4ボディ94と、第1ホルダ95と、第2ホルダ96と、を備えている。
【0029】
第1ボディ91は、矩形の箱状である。第1ボディ91の上面の中央には、断面円形状の内周面を有し上側に開口する凹所910が形成されている。凹所910の底面は、湾曲面である。
【0030】
第2ボディ92は、矩形の箱状である。第2ボディ92は、第1ボディ91の上面に重ねられる。第2ボディ92の中央には、上下方向に延びる断面円形状の貫通孔920が形成されている。貫通孔920の径は、第1ボディ91の凹所910の径と略等しい。
【0031】
第2ボディ92の上面において貫通孔920の周りには、貫通孔920の径よりも径の大きな凹所921が形成されている。この凹所921に、第1ホルダ95の下側の部分が嵌め込まれる。また、第2ボディ92の下面(第1ボディ91の上面と接する面)には、円環状の凹所が形成されている。この凹所に、オーリング61が嵌め込まれる。
【0032】
また、第2ボディ92の上面には、左右方向に延びる嵌合凹所が形成されている。この嵌合凹所に、導電体2の下側の部分が嵌め込まれる。
【0033】
第3ボディ93は、矩形の箱状である。第3ボディ93は、第2ボディ92の上面に重ねられる。第3ボディ93の中央には、上下方向に延びる断面円形状の貫通孔930が形成されている。
【0034】
第3ボディ93の下面において貫通孔930の周りには、貫通孔930の径よりも径の大きな凹所931が形成されている。この凹所931に、第1ホルダ95の上側の部分が嵌め込まれる。
【0035】
また、第3ボディ93の下面には、左右方向に延びる嵌合凹所が形成されている。この嵌合凹所に、導電体2の上側の部分が嵌め込まれる。
【0036】
第4ボディ94は、矩形箱状の部分と、その上面に形成された円柱状の部分と、が組み合わされた形状を有している。第4ボディ94は、第3ボディ93の上面に重ねられる。
【0037】
第4ボディ94の中央には、上下方向に延びる貫通孔が形成されている。また、第4ボディ94の下面(第3ボディ93の上面と接する面)には、円環状の凹所が形成されている。この凹所に、オーリング62が嵌め込まれる。
【0038】
第1ホルダ95は、その軸が上下方向に沿った中空の円筒状に形成されている。第1ホルダ95は、その中央に、上下方向に延びる貫通孔950を有している。貫通孔950は、上下方向に互いにつながる第1孔951と第2孔952とを含む。第1孔951は、断面円形状である。第1孔951は上下方向に延びており、上下方向においてその径が一定である。第1孔951の径は、第2ボディ92の貫通孔920の径と略等しい。第2孔952は、断面円形状である。第2孔952は、第1孔951の上端から上方に延びており、上方に向かう程その径が徐々に広くなるテーパ穴状である。すなわち、第1ホルダ95の内周面は、その上端に、下方に向かうほどその径が徐々に狭くなる部分円錐状の傾斜面を有している。第2孔952の上端の径は、第3ボディ93の貫通孔930の径と略等しい。
【0039】
第1ホルダ95の内周面(貫通孔950の内面)において、第1孔951と第2孔952とがつながる部分には、円環状の段差953が形成されている。
【0040】
図1に示すように、第1ホルダ95は、第1ホルダ95の下側の部分が第2ボディ92の凹所921に嵌め込まれ、第1ホルダ95の上側の部分が第3ボディ93の凹所931に嵌め込まれた状態で、第2ボディ92と第3ボディ93との間で保持される。
【0041】
第1ホルダ95が凹所921に嵌め込まれた状態で、第1ホルダ95の第1孔951の下端と第2ボディ92の貫通孔920の内周面の上端とは、つながっている。第1ホルダ95が凹所931に嵌め込まれた状態で、第1ホルダ95の第2孔952の上端と第3ボディ93の貫通孔930の内周面の下端とは、つながっている。
【0042】
第1ホルダ95の左右の側壁には、左右方向に貫通する貫通孔954が形成されている。貫通孔954の断面形状は、導電体2の断面形状と略同じである。導電体2は、第1ホルダ95の左右の貫通孔954に挿入されることで、第1ホルダ95に保持されている。
【0043】
図1図4に示すように、第1ホルダ95の貫通孔950の第1孔951の径は、導電体2における溝24の径とほぼ等しい。より詳細には、第1孔951の径は、溝24の外側の径よりも小さく、内側の径よりも大きい。導電体2は、溝24が第1孔951の内面と対向する位置で、第1ホルダ95に保持されている。つまり、導電体2において、第1端子部21における分離部23側の端部、及び第2端子部22における分離部23側の端部は、ハウジング9(第1ホルダ95)に保持されている。
【0044】
導電体2が貫通孔954に通され、第1ホルダ95が凹所921,931に嵌め込まれた状態において、導電体2は、第2ボディ92の上面の嵌合凹所及び第3ボディ93の下面の嵌合凹所に嵌め込まれる(図4参照)。
【0045】
導電体2において、分離部23は、ハウジング9の内部空間90に収容されている。図1に示すように、導電体2は、分離部23が動作ピン8の下面と対向するように、配置されている。導電体2において、第1端子部21における分離部23とは反対側の端部、及び第2端子部22における分離部23とは反対側の端部は、ハウジング9の外部へ露出している。
【0046】
図1に示すように、第1ホルダ95の外周面において、貫通孔954が形成されている部分の周りは、他の部分よりも径が大きな拡径部となっている。拡径部の径は、貫通孔954から離れるほど(上下に向かうほど)小さくなっている。この拡径部があることで、第1ホルダ95の強度が向上する。
【0047】
第1ホルダ95は、例えば、第2ボディ92の材料及び第3ボディ93の材料よりも耐熱性の高い材料で形成されていてもよい。
【0048】
第2ホルダ96は、第4ボディ94の貫通孔内に配置されている。第2ホルダ96は、その外周面が第4ボディ94の貫通孔の内周面に沿う形状を有している。
【0049】
第2ホルダ96は、断面円形状の内周面を有し下側に開口する凹所960を有している。凹所960の内周面の径は、第3ボディ93の貫通孔930の径と略等しい。第2ホルダ96が第4ボディ94内に配置された状態で、第2ホルダ96の凹所960の内周面の下端と第3ボディ93の貫通孔930の内周面の上端とは、つながっている。
【0050】
また、第2ホルダ96は、その上端に、円筒状の収容壁961を備えている。収容壁961の内部に、駆動機構7のガス発生器70が配置される。収容壁961とガス発生器70との間には、オーリング64が配置される。ガス発生器70が収容壁961に配置されることで、ハウジング9の内部空間90が密閉される。
【0051】
図4に示すように、ハウジング9の内部空間90(密閉空間)は、第1空間SP1と第2空間SP2とを含む。第1空間SP1と第2空間SP2とは、つながっている。
【0052】
第1空間SP1は、第1ホルダ95の貫通孔950の内面における導電体2(破断される前)よりも上側の部分と、第3ボディ93の貫通孔930の内面と、第2ホルダ96の凹所960の内面と、ガス発生器70の下面と、で囲まれる空間である。すなわち、第1空間SP1は、内部空間90において、導電体2よりも上側の空間である。この第1空間SP1に、動作ピン8が配置される。
【0053】
第2空間SP2は、第1ホルダ95の貫通孔950の内面における導電体2(破断される前)よりも下側の部分と、第2ボディ92の貫通孔920の内面と、第1ボディ91の凹所910の内面と、で囲まれる空間である。すなわち、第2空間SP2は、内部空間90において、導電体2よりも下側の空間である。第2空間SP2は、第1端子部21及び第2端子部22から分離された分離部23が収容される空間である。そのため、以下では、第2空間SP2を「収容空間SP20」ともいう。
【0054】
駆動機構7は、ガス発生器70を備えている。駆動機構7は、ガス発生器70で発生したガスの圧力に連動して、動作ピン8を移動させる。ガス発生器70は、収容壁961の内部に配置される。ガス発生器70は、燃料74の燃焼によりガスを発生させる。図1に示すように、ガス発生器70は、燃料74と、ケース71と、通電用の2つのピン電極72と、発熱素子73と、を備えている。
【0055】
ケース71は、中空の円柱状である。ケース71は、その下端に、内部空間を有している。このケース71の内部空間に、燃料74及び発熱素子73が収容される。ケース71は、内部空間を構成する下側の壁に、例えば十字溝が形成されており、この溝が形成された部分が他の部分よりも破断しやすくなっている。
【0056】
燃料74は、温度が上昇すると燃焼してガスを発生させる。燃料74は、例えば、ニトロセルロース、アジ化鉛、黒色火薬、グリシジルアジドポリマ等の火薬である。
【0057】
2つのピン電極72は、ケース71に保持されている。2つのピン電極72の各々の第1端は、ハウジング9の外部に露出している。2つのピン電極72の各々の第2端は、発熱素子73に接続されている。つまり、発熱素子73は、2つのピン電極72の間に接続されている。発熱素子73は、通電されることにより熱を発生する。発熱素子73は、例えばニクロム線、鉄とクロムとアルミの合金線等である。
【0058】
ガス発生器70は、燃料74を燃焼させることによりガスを発生させる。より詳細には、ガス発生器70は、2つのピン電極72の間が通電されると発熱素子73が発熱して、発熱素子73の周りの燃料74の温度を上昇させる。これにより燃料74が燃焼して、ガスが発生する。
【0059】
図1に示すように、動作ピン8は、ハウジング9の内部空間90に配置される。動作ピン8は、ガス発生器70と分離部23との間に配置されている。動作ピン8は、電気絶縁性を有している。動作ピン8は、例えば、材料として樹脂を含む。
【0060】
動作ピン8は、第1柱状部と、第2柱状部と、第3柱状部と、を備えている。第1柱状部は、円柱状であって、分離部23に近い側(下側)に位置する。第3柱状部は、第1柱状部よりも外径が大きな円柱状であって、分離部23から遠い側(上側)に位置する。第2柱状部は、第1柱状部と第3柱状部とをつなぎ、第1柱状部から第3柱状部に向かって徐々に径が大きくなる円錐台状である。つまり、図3に示すように、動作ピン8の外周面80は、第1柱状部の外面に対応する第1側面81と、第2柱状部の外面に対応する第2側面(傾斜面)82と、第3柱状部の外面に対応する第3側面83と、を含む。
【0061】
第1側面81の径は、第1ホルダ95の貫通孔950の第1孔951の径と略等しい。第3側面83の径は、第2ホルダ96の凹所960の内周面の径、及び第3ボディ93の貫通孔930の径と、略等しい。第2側面(傾斜面)82の傾斜は、第1ホルダ95の貫通孔950の第2孔952の傾斜と、略等しい。
【0062】
図3に示すように、動作ピン8の第3柱状部の外周面には、円環状の凹所が形成されている。この凹所に、オーリング65が配置される(図1参照)。オーリング65の外縁は、凹所960の内面に接している。このオーリング65と、動作ピン8及び第2ホルダ96との間の摩擦力により、動作ピン8が、ハウジング9の第1空間SP1内に保持されている。また、動作ピン8の上面には、凹所84が形成されている。
【0063】
動作ピン8は、高さ方向の第1面(上面)がガス発生器70に対向するように、ハウジング9の第1空間SP1内に配置されている。動作ピン8が配置された状態で、ハウジング9内には、動作ピン8の凹所84、ガス発生器70の下面、及び凹所960の内面に囲まれるように、気密な空間(加圧室75)が形成されている(図1参照)。
【0064】
動作ピン8の高さ(上下方向の寸法)は、第1空間SP1の上下方向の寸法よりも小さい。動作ピン8は、動作ピン8の移動方向の先端(導電体2の分離部23と対向する面;下面)と導電体2との間に隙間(以下、「隙間空間SP11」ともいう)を生じるように、ハウジング9の第1空間SP1内に配置されている。
【0065】
冷却体3は、ハウジング9の内部空間90に配置されている。冷却体3は、電気絶縁性を有する。本実施形態の遮断装置1では、冷却体3は、内部空間90における第1空間SP1及び第2空間SP2の両方に配置されている。すなわち、冷却体3は、内部空間90において、導電体2(分離部23)の厚さ方向(上下方向)の両側に配置されている。冷却体3は、導電体2の周囲に配置されている。冷却体3は、導電体2(分離部23)と接している。冷却体3は、動作ピン8の移動方向において、分離部23の投影領域内に配置されている。
【0066】
より詳細には、冷却体3は、第1空間SP1のうちで、導電体2(分離部23)と動作ピン8との間の隙間(隙間空間SP11)に配置されている。冷却体3は、隙間空間SP11の全体に配置されている。以下、冷却体3のうちで、隙間空間SP11に配置されている部分を第1冷却体31ともいう。第1冷却体31は、導電体2(分離部23)の上面に接している。
【0067】
また、冷却体3は、第2空間SP2(収容空間SP20)に配置されている。冷却体3は、収容空間SP20の全体に配置されている。以下、冷却体3のうちで、収容空間SP20に配置されている部分を第2冷却体32ともいう。第2冷却体32は、導電体2(分離部23)の下面に接している。
【0068】
冷却体3は、導電体2の側面とハウジング9の内周面との間の空間に配置されていてもよい。
【0069】
上述のように、冷却体3は、多孔質体30を有する。冷却体3を構成する多孔質体30は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方を含む。ここでは、多孔質体30(冷却体3)の材料は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方である。
【0070】
冷却体3の材料となる金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、及び酸化鉄のうち少なくも1つを含む。また、冷却体3の材料となる無機酸化物は、例えば、酸化ケイ素、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つを含む。冷却体3の材料となる金属酸化物又は無機酸化物は、溶融してもガスを発生しない物質であることが好ましい。なお、「溶融してもガスを発生しない」とは、溶融しても全くガスを発生しないことに限らず、遮断装置1の性能に影響を与えない程度(例えば、内部空間90の圧力を過度に上昇させない程度)であれば、僅かにガスを発生してもよい。
【0071】
本実施形態の遮断装置1では、冷却体3の材料は、主成分として酸化アルミニウム(Al2O3)及び酸化ケイ素(SiO2)を含む。酸化アルミニウムと酸化ケイ素との比率は、例えば、7:3~9:1程度の範囲である。冷却体3の材料は、例えばムライト(アルミノケイ酸塩鉱物)であってもよい。
【0072】
本実施形態の遮断装置1では、上述のように、冷却体3を構成する多孔質体30は、繊維状の骨格300を備えた複数の部材の集まりである。繊維状の骨格300を備えた部材は、ここではいわゆるミネラルウールであり、より詳細には、酸化アルミニウムを主成分とするアルミナ繊維である。例えば、ミネラルウールの平均径(繊維径)は、数~十数μm程度であり、密度(真比重)は、3~4g/cm3程度である。
【0073】
第1冷却体31と第2冷却体32とは、材料が互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、第1冷却体31と第2冷却体32とは、酸化アルミニウムと酸化ケイ素との比率が、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。本実施形態の遮断装置1では、第1冷却体31と第2冷却体32とは、同じ材料(酸化アルミニウム及び酸化ケイ素)から形成され、酸化アルミニウムと酸化ケイ素との比率が互いに同じである。
【0074】
本実施形態の遮断装置1では、冷却体3の密度は、0.1~0.3g/cm3程度である。冷却体3の空隙率(冷却体3の体積に対する、その中に含まれる隙間の割合)は、例えば、90~95%程度である。そのため、冷却体3は、外部から力を受けた場合に、圧縮変形可能である。冷却体3が導電体2に接するように配置されている場合、冷却体3は、冷却体3が自重により潰れて導電体2から離れてしまわない程度の密度を有していることが好ましい。ただし、冷却体3が自重により潰れて導電体2から離れてしまわない密度は、冷却体3の体積、冷却体3とハウジング9の内部空間90の内面との間の摩擦力等により、変わり得る。
【0075】
第1冷却体31と第2冷却体32とは、密度が互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。本実施形態の遮断装置1では、第1冷却体31の方が、第2冷却体32よりも、密度が大きい。すなわち、冷却体3の密度は、隙間(隙間空間SP11)に配置される部分(第1冷却体31)の方が、収容空間SP20に配置される部分(第2冷却体32)よりも、大きい。本実施形態の遮断装置1では、アルミナ繊維の充填率が異なることで、第1冷却体31の密度が第2冷却体32の密度よりも大きくなっている(図1参照)。
【0076】
規制体4は、ハウジング9の内部空間90に配置されている。規制体4は、第1空間SP1に配置されている。規制体4は、電気絶縁性を有する。規制体4は、ここでは樹脂製である。
【0077】
規制体4は、円板状である。規制体4の外径は、第1孔951の径よりも大きい。規制体4の外径は、第1ホルダ95の円環状の段差953の径と略等しい。規制体4は、段差953に嵌め込まれて、第1ホルダ95に保持されている。規制体4は、動作ピン8と導電体2(分離部23)との間に配置されている。規制体4は、動作ピン8と冷却体3(第1冷却体31)との間に配置されている。規制体4は、第1空間SP1を、隙間空間SP11と、動作ピン8が配置される配置空間SP12と、に区分している。規制体4があるため、隙間空間SP11に配置されている第1冷却体31は、配置空間SP12側には移動し難い。要するに、規制体4は、冷却体3の移動を制限する。
【0078】
規制体4において動作ピン8と対向する面(上面)には、規制体4の外縁と同心状の溝41が形成されている。溝41の径は、動作ピン8の下面の径と略等しい。溝41は、動作ピン8の下面の外縁に対向している。規制体4は、厚さ方向(上下方向)に力を受けたとき、溝41の部分において破断しやすい。なお、規制体4では、溝41に代えて或いは加えて、第1冷却体31と対向する面(下面)に、溝41と同様の溝が形成されていてもよい。
【0079】
動作ピン8は、駆動機構7により駆動される。動作ピン8は、ガス発生器70で発生したガスの圧力により駆動されて、導電体2に向かって移動方向(下方)に移動する。
【0080】
動作ピン8は、駆動機構7により駆動されて下方に移動することで、第1端子部21と第2端子部22との少なくとも一方から、分離部23を分離させる。ここでは、動作ピン8は、第1端子部21及び第2端子部22の両方から、分離部23を分離させる。ここでの動作ピン8は、図6図7に示すように、導電体2を破断させることにより、第1端子部21及び第2端子部22から分離部23を分離させる。動作ピン8は、(ここでは第1冷却体31及び規制体4を介して)分離部23を上方から押し、これにより分離部23を第1端子部21及び第2端子部22から切り離す。これにより、第1端子部21と第2端子部22との間が開離する。
【0081】
(1.3)動作
次に、遮断装置1の動作について、図5図7を参照して説明する。
【0082】
ガス発生器70のピン電極72が通電されず駆動機構7が駆動されていない場合、図5に示すように、第1端子部21と第2端子部22とは、分離部23を介して電気的に接続されている。そのため、導電体2は電路として機能し、導電体2には、第1端子部21及び第2端子部22に電気的に接続されている外部電路から供給される電流が流れる。
【0083】
電動車両の制御部等が、2つのピン電極72間に通電すると、駆動機構7が駆動されて、ピン電極72に接続されている発熱素子73が発熱する。この発熱素子73で発生した熱によって燃料74が点火され、燃料74が燃焼してガスを発生する。ガスは、ケース71において燃料74を収容する内部空間の圧力を上昇させて、内部空間を構成する壁(下壁)を破断し、この破断した部分を通して加圧室75に導入されて加圧室75内の圧力を上昇させる。加圧室75内のガスの圧力により、動作ピン8には、分離部23に向かう向き(下向き)の力が作用する。
【0084】
動作ピン8は、オーリング65の摩擦力に抗して駆動されて下方(移動方向)に移動し、動作ピン8の下面が規制体4を下方に押す。動作ピン8に押された規制体4は、溝41において破断される。
【0085】
動作ピン8は下方へ移動し、(規制体4を介して)第1冷却体31を上方から押す。第1冷却体31は、動作ピン8に押されることにより、上下方向に圧縮される(体積が小さくなる)。
【0086】
動作ピン8は更に下方へ移動し、(規制体4及び圧縮された第1冷却体31を介して)導電体2の分離部23を上方から押す。分離部23が動作ピン8に押されることにより、図6に示すように、導電体2は、第1端子部21と分離部23との境界部分240の溝24、及び第2端子部22と分離部23との境界部分240の溝24において破断される。これにより、分離部23が第1端子部21及び第2端子部22から切り離され、第1端子部21と第2端子部22とが開離される。第1端子部21及び第2端子部22から切り離された分離部23は、動作ピン8に押されて下方の収容空間SP20に入る。
【0087】
分離部23を第1端子部21及び第2端子部22から切り離した後、動作ピン8は更に下方に移動し、(規制体4、圧縮された第1冷却体31、及び分離部23を介して)第2冷却体32を上方から押す。第2冷却体32は、動作ピン8に押されることにより圧縮される(体積が小さくなる)。
【0088】
ここで、導電体2において、分離部23が第1端子部21及び第2端子部22から切り離されると、導電体2において切り離された部分の間で、アークが発生する場合がある。アークは、例えば、第1端子部21と分離部23とをつなぐように、また、第2端子部22と分離部23とをつなぐように、発生し得る。図6には、第1端子部21と分離部23との間に発生するアークA1、及び第2端子部22と分離部23との間に発生するアークA2を、点線で模式的に示してある。
【0089】
上述のように、分離部23と動作ピン8との間には、多孔質体30から構成される第1冷却体31が存在する。そのため、アークA1,A2は、第1冷却体31の隙間内を通り、第1冷却体31を構成する多孔質体30(アルミナ繊維)に接触し得る。第1冷却体31に接触したアークA1,A2は、第1冷却体31に熱を吸収されて冷却され得る。これにより、アークA1,A2の消弧が促進される。
【0090】
また、分離された分離部23が収容される収容空間SP20には、多孔質体30から構成される第2冷却体32が存在する。アークA1,A2の一部は、空隙率の高い第2冷却体32側にも回り込んで、第2冷却体32を構成する多孔質体30(アルミナ繊維)に接触し得る。第2冷却体32に接触したアークA1,A2は、第2冷却体32に熱を吸収されて冷却され得る。これにより、アークA1,A2の消弧が促進される。
【0091】
要するに、冷却体3は、導電体2に電流が流れている状態で分離部23が第1端子部21及び/又は第2端子部22から分離されたときに発生するアークを、冷却する。
【0092】
動作ピン8はさらに移動し、ハウジング9の第1ホルダ95の第2孔952の内面に動作ピン8の傾斜面82が接触する位置で、移動を停止する(図7参照)。つまり、動作ピン8は、ハウジング9によって、過度の移動が規制される。要するに、ハウジング9は、動作ピン8を収容する空間(第1空間SP1)を形成する壁面に、動作ピン8の過度の移動を規制する規制部(第2孔952の内面)を備えている。
【0093】
動作ピン8が移動を停止したとき、第1端子部21と第2端子部22との間には、動作ピン8の第1柱状部が介在している。そのため、第1端子部21と第2端子部22との間が、動作ピン8によって電気的に絶縁される。
【0094】
(1.4)利点
上述のように、本実施形態の遮断装置1は、冷却体3を備えている。冷却体3は、ハウジング9の内部空間90に配置され、内部空間90で発生するアークを冷却する。そのため、内部空間90でアークが発生したとしても、冷却体3がこのアークを冷却することで、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0095】
また、冷却体3は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方から構成された多孔質体30を有する。特に、多孔質体30は、繊維状の骨格300を備え変形可能である。そのため、冷却体3の表面積を大きくすることができ、冷却体3にアークが接触しやすくなり、アークの消弧を更に促進することが可能となる。また、冷却体3が繊維状の骨格300を備える多孔質体30であるため、遮断装置1の取り扱い性が向上する。
【0096】
なお、導電体2に電流が流れていない状態或いは導電体2に流れる電流の大きさが小さい状態で動作ピン8が駆動された場合には、導電体2が破断されたとしても、アークが発生しないこともあり得る。
【0097】
(2)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0098】
(2.1)変形例1
本変形例の遮断装置1Aについて、図8を参照して説明する。本変形例の遮断装置1Aにおいて、基本例の遮断装置1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0099】
図8に示すように、遮断装置1Aは、規制体4(図5参照)を備えていない。また、動作ピン8の下端が貫通孔950の第1孔951に嵌め込まれており、これにより冷却体3(第1冷却体31)の上方への移動が制限されている。その他の構成は、遮断装置1と同様である。
【0100】
なお、本変形例の遮断装置1Aでは、第1冷却体31は、動作ピン8の下面に接しているが、これに限らず、接していなくてもよい。
【0101】
本変形例の遮断装置1Aでも、遮断装置1と同様、冷却体3によって、アークの消弧を促進することが可能となる。また、規制体4を省略することで、構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0102】
ただし、第1冷却体31が繊維状の骨格300を備える場合、第1冷却体31の位置決め及び/又は初期配置の容易性の観点からは、規制体4がある方が望ましい。
【0103】
(2.2)変形例2
本変形例の遮断装置1Bについて、図9を参照して説明する。本変形例の遮断装置1Bにおいて、基本例の遮断装置1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0104】
図9に示すように、遮断装置1Bでは、冷却体3は、第1空間SP1(より詳細には、隙間空間SP11)のみに配置されており、第2空間SP2(収容空間SP20)には配置されていない。すなわち、冷却体3は、第1冷却体31を含むが、第2冷却体32(図5参照)を含まない。また、遮断装置1Bは、規制体4としての第1規制体に加えて、第2規制体42を備えている。
【0105】
第2規制体42は、規制体4と同様の円板状であり、規制体4と同様に上面に円環状の溝を有している。第2規制体42は、第1ホルダ95の内周面に形成された円環状の溝に嵌め込まれて、第1ホルダ95に保持されている。第2規制体42は、導電体2の下面に接するように、ハウジング9の内部空間90内に配置されている。第2規制体42は、第1空間SP1と第2空間SP2とを区分している。第2規制体42は、冷却体3(第1冷却体31)の移動(下方への移動)を規制する。
【0106】
本変形例の遮断装置1Bでも、遮断装置1と同様、冷却体3(第1冷却体31)によって、アークの消弧を促進することが可能となる。また、第2冷却体32を省略することで、構成の簡素化、及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0107】
なお、第2規制体42は、導電体2の上面に接するように、すなわち冷却体3(第1冷却体31)と導電体2との間に、配置されていてもよい。
【0108】
(2.3)変形例3
本変形例の遮断装置1Cについて、図10を参照して説明する。本変形例の遮断装置1Cにおいて、基本例の遮断装置1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0109】
図10に示すように、遮断装置1Cでは、冷却体3は、第2空間SP2(収容空間SP20)のみに配置されており、第1空間SP1(隙間空間SP11)には配置されていない。すなわち、冷却体3は、第2冷却体32を含むが、第1冷却体31(図5参照)を含まない。また、遮断装置1Cでは、動作ピン8Cの下面が、導電体2の分離部23に直接対向(或いは接触)している。すなわち、動作ピン8Cは、駆動機構7によって駆動されると、導電体2に接触して導電体2を直接押し、分離部23を第1端子部21及び第2端子部22から切り離す。
【0110】
本変形例の遮断装置1Cでも、遮断装置1と同様、冷却体3(第2冷却体32)によって、アークの消弧を促進することが可能となる。また、第1冷却体31を省略することで、構成の簡素化、及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0111】
(2.4)変形例4
本変形例の遮断装置1Dについて、図11を参照して説明する。本変形例の遮断装置1Dにおいて、基本例の遮断装置1と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0112】
図11に示すように、遮断装置1Dでは、第2冷却体32は、収容空間SP20の全体ではなく、収容空間SP20のうちで導電体2に近い領域のみに配置されている。また、遮断装置1Dは、規制体4としての第1規制体に加えて、第2規制体43を備えている。
【0113】
第2規制体43は、規制体4と同様の円板状であり、規制体4と同様に上面に円環状の溝を有している。第2規制体43は、ハウジング9の第2空間SP2の内周面に形成された円環状の溝911(図4参照)に嵌め込まれて、ハウジング9に保持されている。第2規制体43は、第2空間SP2を2つの空間(第2冷却体32が配置される空間と配置されない空間)に区分している。第2規制体43は、冷却体3(第2冷却体32)の移動(下方への移動)を制限する。
【0114】
本変形例の遮断装置1Dでも、遮断装置1と同様、冷却体3によって、アークの消弧を促進することが可能となる。また、第2冷却体32の一部を省略することで、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0115】
本変形例において、変形例3の遮断装置1Cと同様に、第1冷却体31を省略してもよい。
【0116】
(2.5)変形例5
本変形例の遮断装置1Eについて、図12を参照して説明する。
【0117】
本変形例の遮断装置1Eは、いわゆるヒューズである。
【0118】
遮断装置1Eは、導電体2Eと、ハウジング9Eと、冷却体3Eと、を備える。
【0119】
ハウジング9Eは、電気絶縁性を有している。ハウジング9Eは、矩形の箱状に形成されている。ハウジング9Eは、内部に内部空間90Eを有している。
【0120】
導電体2Eは、第1端子部21E、第2端子部22E、及び溶断部24Eを有している。
【0121】
第1端子部21E及び第2端子部22Eは、外部電路に接続される。第1端子部21E及び第2端子部22Eは、ハウジング9Eに保持されている。
【0122】
溶断部24Eは、ハウジング9Eの内部空間90Eに収容されている。溶断部24Eは、許容値以上の電流が流れたときに発熱により溶断する。
【0123】
冷却体3Eは、ハウジング9Eの内部空間90Eに配置される。冷却体3Eは、内部空間90Eの全体に配置されている。冷却体3Eは導電体2に接触している。冷却体3Eは溶断部24Eに接触している。冷却体3Eは多孔質体30(図1参照)を有する。多孔質体30は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方から構成される。
【0124】
本変形例の遮断装置1Eにおいて、導電体2Eに許容値以上の電流が流れると、溶断部24Eが発熱により溶断する。これにより、第1端子部21Eと第2端子部22Eとが開離する。導電体2Eに電流が流れている状態で溶断部24Eが溶断すると、導電体2において溶断した部分の間で、アークが発生する場合がある。このように発生したアークは、冷却体3Eに接触して、その熱が吸収され得る。すなわち、冷却体3Eは、内部空間90Eで発生するアークを冷却する。これにより、アークの消弧が促進される。
【0125】
本変形例の遮断装置1Eでも、遮断装置1と同様、冷却体3Eによって、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0126】
(2.6)その他の変形例
一変形例において、動作ピン8,8Cは、複数の部材から構成されていてもよい。動作ピン8,8Cは、例えば、第1柱状部と、第2柱状部及び第3柱状部とが、異なる材料から形成される別の部材から構成されていてもよい。動作ピン8,8Cにおいて、動作ピン8,8Cの移動後に導電体2(第1端子部21及び第2端子部22)と対向しない部分、例えば第2柱状部及び第3柱状部は、電気絶縁性を有していなくてもよい。
【0127】
一変形例において、動作ピン8,8Cの形状は、例示した形状に限られず、例えば任意の多角柱状等であってもよい。
【0128】
一変形例において、溝24の径及び動作ピン8,8Cの径は、第1ホルダ95の第1孔951の径よりも小さくてもよい。すなわち、導電体2における境界部分240(導電体2において破断される部分)の全体がハウジング9の内部空間90内に位置し、第1端子部21の一部(分離部23側の端部)及び第2端子部22の一部(分離部23側の端部)も、内部空間90内に位置していてもよい。この場合、冷却体3は、境界部分240、第1端子部21の一部及び/又は第2端子部22の一部と接していてもよい。
【0129】
一変形例において、冷却体3は、導電体2と接していなくてもよい。
【0130】
一変形例において、第1冷却体31は、圧縮変形可能でなくてもよい。
【0131】
一変形例において、溝24は、導電体2の第1の面F1に代えて又は加えて、第2の面F2に形成されていてもよい。
【0132】
一変形例において、遮断装置1,1A~1Eは、発生したアークを引き延ばすための永久磁石を備えていてもよい。永久磁石は、例えば、ハウジング9,9E内の空間に配置されてもよいし、ハウジング9,9Eに埋め込まれていてもよい。
【0133】
一変形例において、第1端子部21、第2端子部22、及び分離部23は、一体の導電体2により構成されていなくてもよい。
【0134】
一変形例において、駆動機構7は、ガス発生器70に限られない。駆動機構7は、第1端子部21と第2端子部22とを開離させ得る機構であればよい。
【0135】
一変形例において、冷却体3は、動作ピン8,8Cの投影領域内以外の領域に配置されてもよい。例えば、ハウジング9の第2空間SP2の内壁面に形成された凹所に、冷却体3が配置されてもよい。
【0136】
(3)まとめ
以上説明した実施形態及び変形例等から以下の態様が開示されている。
【0137】
第1の態様の遮断装置(1,1A~1B)は、導電体(2,2E)と、ハウジング(9,9E)と、冷却体(3,3E)と、を備える。導電体(2,2E)は、外部電路に接続される。ハウジング(9,9E)は、内部空間(90,90E)を有する。内部空間(90,90E)に、導電体(2,2E)の少なくとも一部が収容される。冷却体(3,3E)は、内部空間(90,90E)に配置される。冷却体(3,3E)は、内部空間(90,90E)で発生するアークを冷却する。冷却体(3,3E)は、金属酸化物又は無機酸化物の少なくとも一方から構成された多孔質体(30)を有する。
【0138】
この態様によれば、冷却体(3,3E)の表面積が大きくできアークと接触しやすくなるため、アークの消弧を促進することが可能となる。また、内部空間(90,90E)内でアークが発生しても、ハウジング(9、9E)の内部空間(90,90E)内の圧力の上昇を抑制することが可能となる。
【0139】
第2の態様の遮断装置(1,1A~1E)では、第1の態様において、多孔質体(30)は、繊維状の骨格(300)を備え変形可能である。
【0140】
この態様によれば、冷却体(3)の空隙率を調整可能となる。
【0141】
第3の態様の遮断装置(1,1A~1E)では、第1又は第2の態様において、冷却体(3,3E)は、導電体(2,2E)と接している。
【0142】
この態様によれば、導電体(2,2E)からアークが発生した場合に、アークが冷却体(3,3E)に接触しやすくなるため、アークの消弧が促進される。
【0143】
第4の態様の遮断装置(1,1A~1D)は、第1~第3の何れか1つの態様において、ガス発生器(70)と、動作ピン(8,8C)と、を更に備える。ガス発生器(70)は、燃料(74)の燃焼によりガスを発生させる。動作ピン(8,8C)は、内部空間(90)に配置される。動作ピン(8,8C)は、ガス発生器(70)で発生したガスの圧力により駆動されて移動方向に移動する。導電体(2)は、端子部(第1端子部21,第2端子部22)と、分離部(23)と、を備える。端子部は、ハウジング(9)に保持されて外部電路に接続される。分離部(23)は、ハウジング(9)の内部空間(90)に収容され、動作ピン(8,8C)の移動により端子部から分離される。冷却体(3)は、導電体(2)に電流が流れている状態で分離部(23)が端子部から分離されたときに発生するアークを、冷却する。
【0144】
この態様によれば、端子部と分離部(23)とが分離されたときに発生するアークの消弧を促進することが可能となる。
【0145】
第5の態様の遮断装置(1,1A,1C,1D)では、第4の態様において、内部空間(90)は、端子部(第1端子部21,第2端子部22)から分離された分離部(23)を収容する収容空間(SP20)を有する。冷却体(3)は、収容空間(SP20)に配置される。
【0146】
この態様によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0147】
第6の態様の遮断装置(1,1A,1B,1D)では、第4の態様において、動作ピン(8)は、導電体(2)との間に隙間(隙間空間SP11)を生じるように内部空間(90)に配置される。冷却体(3)は、隙間に配置される。
【0148】
この態様によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0149】
第7の態様の遮断装置(1,1A,1D)では、第4の態様において、内部空間(90)は、端子部(第1端子部21,第2端子部22)から分離された分離部(23)を収容する収容空間(SP20)を有する。動作ピン(8)は、導電体(2)との間に隙間(隙間空間SP11)を生じるように内部空間(90)に配置される。冷却体(3)は、収容空間(SP20)と隙間との両方に配置される。
【0150】
この態様によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0151】
第8の態様の遮断装置(1,1A,1D)では、第7の態様において、冷却体(3)の密度は、隙間に配置される部分(第1冷却体31)の方が、収容空間(SP20)に配置される部分(第2冷却体32)よりも、大きい。
【0152】
この態様によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0153】
第9の態様の遮断装置(1,1A~1D)では、第4~第8の何れか1つの態様において、冷却体(3)は、動作ピン(8,8C)の移動方向において、分離部(23)の投影領域内に配置される。
【0154】
この態様によれば、端子部と分離部(23)とが分離されたときに発生するアークの消弧を促進することが可能となる。
【0155】
第10の態様の遮断装置(1,1A~1D)では、第4~第9の何れか1つの態様において、冷却体(3)は、動作ピン(8,8C)の移動により、圧縮変形される。
【0156】
この態様によれば、冷却体(3)が動作ピン(8,8C)の移動を阻害しにくくなる。
【0157】
第11の態様の遮断装置(1,1A~1D)は、第1~第10の何れか1つの態様において、規制体(4)を更に備える。規制体(4)は、ハウジング(9)の内部空間(90)に配置される。規制体(4)は、冷却体(3)の移動を制限する。
【0158】
この態様によれば、冷却体(3)の設置が容易になる。
【0159】
第12の態様の遮断装置(1E)では、第1の態様において、導電体(2E)は、許容値以上の電流が流れた場合に発熱により溶断する溶断部(24E)を有する。
【0160】
この態様によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0161】
第13の態様の遮断装置(1,1A~1E)では、第1~第12の何れか1つの態様において、金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、及び酸化鉄のうち少なくも1つを含む。
【0162】
この態様によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。
【0163】
第14の態様の遮断装置(1,1A~1E)では、第1~第13の何れか1つの態様において、無機酸化物は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムのうち少なくとも1つを含む。
【0164】
この態様によれば、アークの消弧を促進することが可能となる。
【符号の説明】
【0165】
1,1A~1E 遮断装置
2,2E 導電体
21 第1端子部(端子部)
22 第2端子部(端子部)
23 分離部
24E 溶断部
3,3E 冷却体
30 多孔質体
300 骨格
4 規制体
70 ガス発生器
8,8C 動作ピン
9,9E ハウジング
90,90E 内部空間
SP11 隙間空間(隙間)
SP20 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12